(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】改善された免疫細胞療法のための標的指向遺伝子挿入
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20230509BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230509BHJP
C12N 15/19 20060101ALI20230509BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230509BHJP
C12N 15/26 20060101ALI20230509BHJP
C12N 15/24 20060101ALI20230509BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230509BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230509BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230509BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230509BHJP
C12N 9/16 20060101ALN20230509BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20230509BHJP
C12N 15/864 20060101ALN20230509BHJP
【FI】
C12N15/09 100
C12N5/10 ZNA
C12N15/19
C12N15/13
C12N15/26
C12N15/24
C12N15/62 Z
A61K35/17
A61P35/00
A61P31/00
C12N9/16 Z
C12N5/0783
C12N15/864 100Z
(21)【出願番号】P 2019520742
(86)(22)【出願日】2017-10-19
(86)【国際出願番号】 EP2017076798
(87)【国際公開番号】W WO2018073391
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-10-01
(32)【優先日】2016-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】512213549
【氏名又は名称】セレクティス
【氏名又は名称原語表記】CELLECTIS
【住所又は居所原語表記】8 rue de la Croix Jarry, 75013 Paris, France
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ビュッセル ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥシャトー フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ジュイレラット アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ポアロ ローラント
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルトン ジュリアン
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-525888(JP,A)
【文献】国際公開第2015/075195(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/180989(WO,A2)
【文献】VOIT, R., et al.,"Nuclease-mediated gene editing by homologous recombination of the human globin locus.",NUCLEIC ACIDS RES.,2014年,Vol.42, No.2,pp.1365-1378
【文献】PEGRAM, H.J., et al.,"Tumor-targeted T cells modified to secrete IL-12 eradicate systemic tumors without need for prior conditioning.",BLOOD,2012年03月03日,Vol.119, No.18,pp.4133-4141,DOI: 10.1182/blood-2011-12-400044
【文献】KERKAR, S.P., et al.,"The power and pitfalls of IL-12.",BLOOD,2012年03月03日,Vol.119, No.18,pp.4096-4097,DOI: 10.1182/blood-2012-03-415018
【文献】REZVANI, K., et al.,"The application of natural killer cell immunotherapy for the treatment of cancer.",FRONTIERS IN IMMUNOLOGY,2015年11月17日,Vol.6,Article 578(pp.1-13),DOI: 10.3389/fimmu.2015.00578,REVIEW
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 1/00- 7/08
C12Q 1/00- 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞免疫療法用の操作されたT細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞を調製するための方法であって、
T細胞またはNK細胞の集団を提供する工程;
該細胞のある割合中に、
(i)PD1、CTLA4、PPP2CA、PPP2CB、PTPN6、PTPN22、LAG3、HAVCR2、BTLA、CD160、TIGIT、CD96、CRTAM、LAIR1、SIGLEC7、SIGLEC9、CD244、TNFRSF10B、TNFRSF10A、CASP8、CASP10、CASP3、CASP6、CASP7、FADD、FAS、TGFBRII、TGFRBRI、SMAD2、SMAD3、SMAD4、SMAD10、SKI、SKIL、TGIF1、IL10RA、IL10RB、HMOX2、IL6R、IL6ST、EIF2AK4、CSK、PAG1、SIT1、FOXP3、PRDM1、BATF、GUCY1A2、GUCY1A3、GUCY1B2、GUCY1B3、CD25、CD69、TGFb、IL-10、IL-10R、GCN2、PRDM1、DCK、HPRT、GGH、もしくはCD52をコードする内在性遺伝子座、またはSpata6、Itga6、Rcbtb2、Cd1d1、St8sia4、Itgae、Fam214a、IL3
、Ccl4、IL21、Gp49a、Nr4a3、Lilrb4、Cd200、Cdkn1a、Gzmc、Nr4a2、Cish、Ccr8、Lad1、Crabp2; Gzmb、Tbx21、Plek、Chek1、Slamf7、Zbtb32、Tigit、Lag3、Gzma、Wee1、IL12rb2、Eea1、およびDtlから選択される内在性遺伝子座に組み込まれる、
IL-2、IL-12、または IL-15をコードする外来性ポリヌクレオチド配列を含む、少なくとも1種類の核酸;
(ii)該選択された内在性遺伝子座を特異的に標的とする、少なくとも1種類の配列特異的試薬
を導入する工程
を含み、該外来性ポリヌクレオチド配列が、該内在性遺伝子座に存在する内在性プロモーターの転写制御下に外来性コード配列を形成するように、該内在性遺伝子座中への標的指向遺伝子組込みによって挿入され、かつ
キメラ抗原受容体(CAR)または改変TCRが、トランスフェクトされたT細胞またはNK細胞において独立して発現している、前記方法。
【請求項2】
前記配列特異的試薬が配列特異的エンドヌクレアーゼ試薬である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
T細胞またはNK細胞中に導入される外来性配列の前または後に、前記内在性遺伝子座の少なくとも一部と共に該外来性コード配列の転写を可能にするための2Aペプチドをコードする配列がある、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項4】
外来性配列が、前記内在性遺伝子座中に最初に存在している少なくとも1種類の内在性ゲノム配列の発現を不活性化する効果を伴って導入される、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記不活性化される内在性ゲノム配列が、TGFb、TGFbR、IL-10、IL-10R、GCN2、またはPRDM1をコードする、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記不活性化される内在性ゲノム配列が、PD1、PDL1、CTLA4、TIM3、またはLAG3をコードする、請求項
4に記載の方法。
【請求項7】
前記不活性化される内在性ゲノム配列が、DCK、HPRT、またはGGHを発現する、請求項
4に記載の方法。
【請求項8】
前記T細胞またはNK細胞がそれぞれ、初代T細胞またはNK細胞である、請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
PD1、CTLA4、PPP2CA、PPP2CB、PTPN6、PTPN22、LAG3、HAVCR2、BTLA、CD160、TIGIT、CD96、CRTAM、LAIR1、SIGLEC7、SIGLEC9、CD244、TNFRSF10B、TNFRSF10A、CASP8、CASP10、CASP3、CASP6、CASP7、FADD、FAS、TGFBRII、TGFRBRI、SMAD2、SMAD3、SMAD4、SMAD10、SKI、SKIL、TGIF1、IL10RA、IL10RB、HMOX2、IL6R、IL6ST、EIF2AK4、CSK、PAG1、SIT1、FOXP3、PRDM1、BATF、GUCY1A2、GUCY1A3、GUCY1B2、GUCY1B3、CD25、CD69、TGFb、IL-10、IL-10R、GCN2、PRDM1、DCK、HPRT、GGH、もしくはCD52をコードする内在性遺伝子座、またはSpata6、Itga6、Rcbtb2、Cd1d1、St8sia4、Itgae、Fam214a、IL3
、Ccl4、IL21、Gp49a、Nr4a3、Lilrb4、Cd200、Cdkn1a、Gzmc、Nr4a2、Cish、Ccr8、Lad1、Crabp2; Gzmb、Tbx21、Plek、Chek1、Slamf7、Zbtb32、Tigit、Lag3、Gzma、Wee1、IL12rb2、Eea1、およびDtlから選択される内在性遺伝子座に存在する内在性遺伝子プロモーターの転写制御下に
IL-2、IL-12、または IL-15をコードする外来性ポリヌクレオチド配列を含む、キメラ抗原受容体または改変TCRを与えられている、操作されたT細胞またはNK細胞。
【請求項10】
前記T細胞またはNK細胞がそれぞれ、初代T細胞またはNK細胞である、請求項
9に記載の操作されたT細胞またはNK細胞。
【請求項11】
前記内在性遺伝子座が、TGFb、TGFbR、IL-10、IL-10R、GCN2、またはPRDM1をコードする、請求項
9または10に記載の操作されたT細胞またはNK細胞。
【請求項12】
前記内在性遺伝子座が、PD1、PDL1、CTLA4、TIM3、またはLAG3をコードする、請求項
9または10に記載の操作されたT細胞またはNK細胞。
【請求項13】
前記内在性遺伝子座が、DCK、HPRT、またはGGHを発現する、請求項
9または10に記載の操作されたT細胞またはNK細胞。
【請求項14】
少なくとも30%の、請求項
9~
13のいずれか一項に記載の細胞を含む、治療上有効な免疫細胞の集団。
【請求項15】
少なくとも50%の、請求項
9~
13のいずれか一項に記載の細胞を含む、請求項
14記載の治療上有効な免疫細胞の集団。
【請求項16】
少なくとも80%の、請求項
9~
13のいずれか一項に記載の細胞を含む、請求項
14記載の治療上有効な免疫細胞の集団。
【請求項17】
請求項
9~
13のいずれか一項に記載の操作されたT細胞またはNK細胞または請求項
14~
16のいずれか一項に記載の免疫細胞集団を含む、薬学的組成物。
【請求項18】
がんの処置のための医薬の製造における請求項
9~
13のいずれか一項に記載の操作されたT細胞またはNK細胞または請求項
14~
16のいずれか一項に記載の免疫細胞集団の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、適応性細胞免疫療法の分野に属する。これは、腫瘍などの免疫耐性を発生する病状に対する初代免疫細胞の機能性を増強し、それによってこれらの免疫細胞の治療的可能性を改善することを目標にする。本発明の方法は、免疫細胞がそれらの免疫応答を感染細胞または悪性細胞に向けることを助ける、外来性コード配列の遺伝的挿入を提供する。これらの外来性コード配列は、より詳細には、免疫細胞活性化時、腫瘍微小環境もしくは命を脅かす炎症状態上で上方制御もしくは下方制御される内在性遺伝子プロモーター、または免疫細胞活性化に対して非感受性であるもしくはプロモーターの転写制御下に挿入される。本発明はまた、前記特定の遺伝子座でそのような標的指向挿入を行うための、配列特異的エンドヌクレアーゼ試薬およびドナーDNAベクター、例えばAAVベクターも提供する。本発明の方法は、細胞療法における操作された初代免疫細胞の効率的な使用のために、それらの治療的可能性および安全性を改善することに寄与する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
造血細胞系列を含む初代免疫細胞集団の有効な臨床応用が、ある範囲の病状、特にHIV感染症および白血病に対して、10年間にわたって多数の臨床試験によって確立されている(Tristen S.J. et al. (2011) Treating cancer with genetically engineered T cells. Trends in Biotechnology. 29(11):550-557(非特許文献1))。
【0003】
しかし、これらの臨床試験の大部分は、患者自身から、または適合ドナーから得られた免疫細胞、主にNK細胞およびT細胞を使用しており、利用可能な免疫細胞の数、それらの適応度、および、患者の免疫系を迂回するまたは低減させるための戦略を既に発達させている疾患を克服するそれらの効率に関して、いくつかの限界をもたらしている。
【0004】
同種異系免疫細胞の調達への根本的な進歩として、「既製の」治療用生成物として利用可能である万能免疫細胞が、遺伝子編集によって作製されている(Poirot et al. (2015) Multiplex Genome-Edited T-cell Manufacturing Platform for “Off-the-Shelf” Adoptive T-cell Immunotherapies Cancer Res. 75: 3853-64(非特許文献2))。これらの万能免疫細胞は、二本鎖切断によってそれらの自己認識遺伝的決定基を破壊する効果を有する、ドナーを起源とする免疫細胞中に特異的な低頻度切断エンドヌクレアーゼを発現させることによって取得可能である。
【0005】
メガヌクレアーゼと最初に呼ばれた、世紀の変わり目までの最初のプログラム可能な配列特異的試薬の出現(Smith et al. (2006) A combinatorial approach to create artificial homing endonucleases cleaving chosen sequences. Nucl. Acids Res. 34 (22):e149.(非特許文献3))以来、様々なタイプの配列特異的エンドヌクレアーゼ試薬が開発され、改善された特異性、安全性、および信頼性を提供している。
【0006】
TALE結合ドメインと切断触媒ドメインとの融合物であるTALEヌクレアーゼ(WO2011072246(特許文献1))は、初代免疫細胞、特に末梢血単核細胞(PBMC)由来のT細胞に成功裡に適用されている。TALEN(登録商標)という名称で市販されているそのようなTALEヌクレアーゼは、特に、TCR(T細胞受容体)およびCD52をコードする遺伝子が破壊されている同種異系治療用T細胞を作製するために、ドナーを起源とするT細胞における遺伝子配列を同時に不活性化するために現在用いられるものである。これらの細胞は、がん患者を処置するためのキメラ抗原受容体(CAR)を与えられ得る(US2013/0315884(特許文献2))。TALEヌクレアーゼは、切断ドメインFok-1の二量体化を得るために不可避のヘテロ二量体型の状態の対でDNAに結合する必要があるため、非常に特異的な試薬である。左および右のヘテロ二量体メンバーは各々、30~50 bpの全体的な特異性の標的配列に共にわたる、約14~20 bpの異なる核酸配列を認識する。
【0007】
他のエンドヌクレアーゼ試薬が、細菌である化膿性連鎖球菌(S. pyogenes)のII型原核生物CRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short palindromic Repeats)適応免疫系の構成要素に基づいて開発されている。RNAガイドヌクレアーゼシステム(Gasiunas, Barrangou et al. 2012; Jinek, Chylinski et al. 2012(非特許文献4))と呼ばれるこの複数構成要素システムは、該ヌクレアーゼをいくつかの特異的なゲノム配列に駆動する能力を有するガイドRNA分子とカップリングしたCas9またはCpf1エンドヌクレアーゼファミリーのメンバーを含む(Zetsche et al. (2015). Cpf1 is a single RNA-guided endonuclease that provides immunity in bacteria and can be adapted for genome editing in mammalian cells. Cell 163:759-771(非特許文献5))。そのようなプログラム可能なRNAガイドエンドヌクレアーゼは、容易に設計し、かつ安価に作製することができるRNAガイドの配列によって切断特異性が決定されるため、作製するのが容易である。しかし、CRISPR/Cas9の特異性は、標的とされる遺伝子配列において特定のモチーフ(PAM)の近くに位置しなければならない、約10 pbのTALヌクレアーゼよりも短い配列に基づく。同様のシステムが、Argonauteタンパク質と組み合わせたDNA一本鎖オリゴヌクレオチド(DNAガイド)を用いて記載されている(Gao, F. et al. DNA-guided genome editing using the Natronobacterium gregoryi Argonaute (2016) doi:10.1038/nbt.3547(非特許文献6))。
【0008】
TALヌクレアーゼ(例えば、MegaTAL)またはZnフィンガーヌクレアーゼと組み合わせたかまたは組み合わせていない、ホーミングエンドヌクレアーゼ(例えば、I-OnuIまたはI-CreI)に由来する他のエンドヌクレアーゼシステムもまた、特異性を証明しているが、これまでのところ、より低い程度までである。
【0009】
並行して、遺伝子導入T細胞受容体またはいわゆるキメラ抗原受容体(CAR)の遺伝的移入を通して、新規の特異性を免疫細胞に付与することができる(Jena et al. (2010) Redirecting T-cell specificity by introducing a tumor-specific chimeric antigen receptor. Blood. 116:1035-1044(非特許文献7))。CARは、単一融合分子において1個または複数個のシグナル伝達ドメインと会合しているターゲティング部分を含む組換え受容体である。概して、CARの結合部分は、可撓性リンカーによって連結されたモノクローナル抗体の軽鎖および重鎖可変断片を含む、一本鎖抗体(scFv)の抗原結合ドメインからなる。受容体またはリガンドドメインに基づく結合部分もまた、成功裡に用いられている。第1世代のCARについてのシグナル伝達ドメインは、CD3ζまたはFc受容体γ鎖の細胞質領域に由来する。第1世代のCARは、T細胞の細胞傷害性を成功裡に再方向づけすることが示されているが、インビボで長期の増大および抗腫瘍活性を提供することはできなかった。CAR改変T細胞の生存を増強し、その増殖を増加させるために、CD28、OX-40(CD134)、ICOS、および4-1BB(CD137)を含む共刺激分子由来のシグナル伝達ドメインが、単独で(第2世代)または組み合わせで(第3世代)付加されている。CARにより、T細胞が、リンパ腫および固形腫瘍を含む種々の悪性腫瘍由来の腫瘍細胞の表面に発現する抗原に対して再方向づけされることが成功裡に可能になっている。
【0010】
TALEヌクレアーゼを用いてそれらのT細胞受容体(TCR)が破壊され、「UCART19」生成物と呼ばれるCD19悪性腫瘍抗原を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)を与えられた、近年操作されたT細胞は、難治性白血病を有する少なくとも2人の乳児において治療的可能性を示している(Leukaemia success heralds wave of gene-editing therapies (2015) Nature 527:146-147(非特許文献8))。そのようなUCART19細胞を得るために、TALEヌクレアーゼを、TCR遺伝子破壊を起こすようにキャップmRNAのエレクトロポレーション時に細胞中に一過性に発現させたのに対して、キメラ抗原受容体(CAR CD19)をコードするカセットを、レトロウイルスベクターを用いてゲノム中にランダムに導入した。
【0011】
この後者のアプローチにおいて、遺伝子不活性化の工程およびキメラ抗原受容体を発現させる工程は、「エクスビボ」でT細胞の活性化を誘導した後に、独立して行われる。
【0012】
しかし、初代免疫細胞の操作は、そのような細胞の成長/生理機能に対して何の結果もないわけではない。特に、1つの主要な難題は、それらの免疫反応および寿命を有意に低減させる細胞の消耗/アネルギーを回避することである。これは、細胞が患者中への注入に先行して人工的に活性化される時に起こる可能性がより高い。これはまた、細胞が、反応性の高すぎるCARを与えられている時でもある。
【0013】
これらの落とし穴を回避するため、本発明者らは、T細胞活性化の間にいくつかの鍵となる遺伝子の転写調節を利用して、免疫細胞の治療的可能性を増加させる外来性遺伝子配列を発現させることを考えた。免疫細胞活性化時に発現するまたは同時発現する外来性遺伝子配列を、配列特異的エンドヌクレアーゼ試薬を用いた遺伝子標的指向挿入によってそれらのコード配列がその遺伝子座に存在する内在性プロモーターの制御下で転写されるように、導入する。あるいは、免疫細胞活性化の間に発現しない遺伝子座を、ゲノムに対していかなる有害な結果も伴わない発現カセットの組込みのための「安全港遺伝子座」として用いることができる。
【0014】
これらの細胞操作戦略は、本発明の通りに、概して初代免疫細胞の治療的可能性を、特にそれらの寿命、残存性、および免疫活性を増加させることによって、ならびに細胞消耗を限定することによって強化する傾向がある。本発明は、自己処置戦略の一部として患者を起源とする、および同種異系処置戦略の一部としてドナーを起源とする、初代細胞に対して実行されてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】WO2011072246
【文献】US2013/0315884
【非特許文献】
【0016】
【文献】Tristen S.J. et al. (2011) Treating cancer with genetically engineered T cells. Trends in Biotechnology. 29(11):550-557
【文献】Poirot et al. (2015) Multiplex Genome-Edited T-cell Manufacturing Platform for “Off-the-Shelf” Adoptive T-cell Immunotherapies Cancer Res. 75: 3853-64
【文献】Smith et al. (2006) A combinatorial approach to create artificial homing endonucleases cleaving chosen sequences. Nucl. Acids Res. 34 (22):e149.
【文献】Gasiunas, Barrangou et al. 2012; Jinek, Chylinski et al. 2012
【文献】Zetsche et al. (2015). Cpf1 is a single RNA-guided endonuclease that provides immunity in bacteria and can be adapted for genome editing in mammalian cells. Cell 163:759-771
【文献】Gao, F. et al. DNA-guided genome editing using the Natronobacterium gregoryi Argonaute (2016) doi:10.1038/nbt.3547
【文献】Jena et al. (2010) Redirecting T-cell specificity by introducing a tumor-specific chimeric antigen receptor. Blood. 116:1035-1044
【文献】Leukaemia success heralds wave of gene-editing therapies (2015) Nature 527:146-147
【発明の概要】
【0017】
非相同末端結合(NHEJ)および相同性指向修復(HDR)は、インビボDNA切断を修復するために用いられる2つの主要な経路である。後者の経路は、鋳型依存的様式で切断を修復する(HDRは天然で、DNA修復鋳型として姉妹染色分体を利用する)。相同組換えは、外来的に供給されたドナー鋳型を用いて、標的指向DNA改変でゲノムを高精度に編集するために、数十年間にわたって用いられている。低頻度切断エンドヌクレアーゼを用いた標的位置での二本鎖切断(DSB)の人工的生成は、相同組換えの効率を相当に増強する(例えば、US 8,921,332)。また、低頻度切断エンドヌクレアーゼと、切断部位に相同なDNA配列を含有するドナー鋳型との同時送達により、遺伝子修正または遺伝子挿入などのHDRベースの遺伝子編集が可能になる。しかし、そのような技法は、数個の技術的限界:アポトーシスをもたらす、そのようなタイプの細胞中へのDNAのトランスフェクトの難しさ、免疫細胞が限定された寿命および世代数を有すること、相同組換えが概して低頻度で起こることのために、初代免疫細胞、特にCAR T細胞において広範には用いられていない。
【0018】
これまでのところ、配列特異的エンドヌクレアーゼ試薬は、NHEJ経路を用いて、遺伝子不活性化のために初代免疫細胞において主に用いられている(例えば、WO2013176915)。
【0019】
概括的な局面において、本発明は、組み込まれた遺伝子転写を内在性プロモーターの制御下にするために、標的細胞において、部位特異的遺伝子編集、特に遺伝子挿入(または多重遺伝子挿入)を行うことに依拠する。
【0020】
概括的な局面において、本発明は、ドナー鋳型におけるシス調節エレメント(例えば、2Aシス作用性ヒドロラーゼエレメント)または内部リボソーム進入部位(IRES)の使用を通して、ネイティブ遺伝子の発現を維持しながら、組み込まれた遺伝子転写を内在性プロモーターの制御下にする、初代免疫細胞における遺伝子編集を行うことに依拠する。
【0021】
概括的な局面において、本発明は、非限定的な例として、初代T細胞において、キメラ抗原受容体(CAR)の、抗腫瘍応答を駆動する重要なサイトカインの、増殖能を増加させる刺激性サイトカインの、腫瘍への輸送を助長するケモカイン受容体の、または、腫瘍によって提供される免疫阻害を遮断する様々な防御的遺伝子もしくは阻害性遺伝子の発現を制御することに依拠する。実際に、本発明の1つの主要な利点は、そのような外来性配列を、その転写活性が免疫細胞活性化の効果によって低減されない内在性プロモーターの制御下に置くことである。
【0022】
例として、外来性コード配列を構成的遺伝子発現のためにTCR遺伝子座に組み込んで発現させた、治療用免疫細胞を操作するための以前の方法と対比してみると、本発明者らは、コード配列を、好ましくはCAR依存的様式で、T細胞活性化の間に特異的に転写される遺伝子座に組み込んだ。
【0023】
1つの局面において、本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)を、免疫細胞活性化時に上方制御される選択された遺伝子座で発現させることに依拠する。CARをコードする外来性配列および内在性遺伝子コード配列は、例として、同様に導入されるシス調節エレメント(例えば、2Aシス作用性ヒドロラーゼエレメント)によりまたは内部リボソーム進入部位(IRES)により分離されることによって、同時転写されてもよい。例として、CARをコードする外来性配列を、腫瘍微小環境によって活性化される内在性遺伝子、例えば、腫瘍の閉じた環境において低酸素および生体異物によってそれぞれ誘導される遺伝子センサーである、転写因子の低酸素誘導性因子であるHIF1a、または芳香族炭化水素受容体(AhR)のプロモーターの転写制御下に置くことができる。
【0024】
本発明は、従って、外来性遺伝子の属性/回路を、腫瘍微小環境(TME)によって影響を受ける内在性T細胞プロモーターの制御下に組み込むことによって、CAR T細胞療法の治療転帰を改善するために有用である。非限定的な例として、アルギニン、システイン、トリプトファン、および酸素の欠乏、ならびに細胞外アシドーシス(乳酸蓄積)を含むTMEの特徴は、特異的な内在性遺伝子を上方制御することが公知である。本発明に準じて、ある特定の腫瘍微小環境においてCAR T細胞の抗腫瘍活性を改善するために、内在性遺伝子の上方制御を「乗っ取って」、関連性のある外来性コード配列を再発現させることができる。
【0025】
好ましい態様において、本発明の方法は、好ましくはAAV6ベースのベクター中にセットされたDNA修復マトリックスの存在下で、配列特異的ヌクレアーゼ試薬、例えば、非限定的な例としてTALEN、ZFN、またはRNAガイドエンドヌクレアーゼを発現させることによって、腫瘍微小環境下で高度に転写される遺伝子座に二本鎖切断を生成する工程を含む。このDNAドナー鋳型は、概して、外来性コード配列と本明細書において呼ばれる唯一のまたは複数のオープンリーディングフレームおよび調節遺伝子エレメント(終止コドンおよびポリA配列)を埋め込む2つの相同性アームを含む。
【0026】
別の局面において、前記外来性配列は、遺伝子不活性化が遺伝子導入と組み合わされるように、前記遺伝子座に存在する内在性コード配列を欠失させるかまたは改変すること(ノックインによるノックアウト)によってゲノム中に導入される。
【0027】
標的とされる遺伝子座および免疫細胞活性におけるその関与に応じて、標的とされる内在性遺伝子は、その元の機能において不活性化されてもよく、または維持されてもよい。万一標的とされる遺伝子が免疫細胞活性のために不可欠であれば、この挿入手順は、遺伝子不活性化を伴わずに単一のノックイン(KI)を生成することができる。反対に、標的とされる遺伝子が免疫細胞の阻害/消耗に関与すると考えられる場合、挿入手順は、好ましくは、導入された外来性コード配列の発現を可能にしながら内在性配列をノックアウトすることによって、外来性遺伝子の発現を阻止するように設計される。
【0028】
より具体的な局面において、本発明は、特異的な遺伝子座、例えば非限定的な例としてPD1、PDL1、CTLA-4、TIM3、LAG3、TNFa、またはIFNgでの、標的指向組込み(ネイティブ遺伝子破壊を伴うかまたは伴わない)によって、CARシグナル伝達経路の活性化時に、標的遺伝子発現を種々の速度論で上方制御することに依拠する。
【0029】
さらにより具体的な局面において、PD1、CD25、またはCD69内在性遺伝子座で、これらの遺伝子座に存在する内在性プロモーターの制御下でのそれらの発現のために組み込まれる、IL-15またはIL-12ポリペプチドをコードする外来性配列を含む、患者中への注入のための操作された免疫細胞、および好ましくは初代免疫細胞が、本明細書に記載される。
【0030】
本発明による免疫細胞は、治療適応症およびレシピエント患者に応じて、[CAR]陽性、[CAR]陰性、[TCR]陽性、または[TCR]陰性であることができる。1つの好ましい局面において、免疫細胞は、同種異系移植のためにさらに[TCR]陰性にされる。これは、特に、TCRの少なくとも1つの構成要素をコードする少なくとも1種類の外来性配列、例えばTRAC(TCRαをコードする遺伝子座)の遺伝子破壊によって、好ましくは、キメラ抗原受容体(CAR)もしくは組換えTCR、またはそれらの構成要素をコードする外来性配列の組込みによって、達成することができる。
【0031】
本発明のさらなる局面によると、免疫細胞は、IL-6受容体ファミリーのサイトカイン受容体、例えば変異GP130と会合し、好ましくは干渉することができるポリペプチドをコードする外来性配列をトランスフェクトされる。特に、本発明は、インターロイキン-6(IL-6)シグナル伝達を干渉し、理想的には遮断することによるサイトカイン放出症候群(CRS)の低減を目標にして、可溶性変異GP130を分泌する免疫細胞、好ましくはT細胞を提供する。CRSは、細胞免疫療法の周知の合併症であり、形質導入された免疫細胞がインビボで活性を有し始める時に現れる自己免疫をもたらす。IL-6のその受容体IL-6Rへの結合後に、複合体は、GP130サブユニットと会合し、シグナル伝達および炎症性応答のカスケードを開始する。特定の局面によると、IgG1抗体のFc部分に融合したGP130の細胞外ドメインを含む二量体タンパク質(sgp130Fc)が、可溶性IL-R/IL-6複合体に特異的に結合してIL-6トランスシグナル伝達の部分的または完全な遮断を達成するために、操作された免疫細胞において発現する。本発明は、従って、免疫療法においてCRSを限定するための方法に言及し、ここで、免疫細胞は、IL-6受容体ファミリーのサイトカイン受容体と会合し、好ましくは干渉することができる可溶性ポリペプチド、例えばsgp130Fcを発現するように遺伝子改変される。好ましい局面によると、IL-6受容体ファミリーのサイトカイン受容体と会合し、好ましくは干渉することができる前記可溶性ポリペプチドをコードするこの配列は、内在性プロモーターの制御下に、好ましくは、T細胞活性化に応答性の1つの遺伝子座、例えば、表6、8、または9から選択される1つ、より特別にはPD1、CD25、またはCD69に組み込まれる。ベクターのポリヌクレオチド配列、外来性コード配列および/または内在性遺伝子座に相同の配列を含むドナー鋳型、結果として生じた操作された細胞に属する配列、ならびに、該操作された細胞の検出を可能にするものはすべて、本開示の一部である。
【0032】
概括的な局面において、本発明は、非限定的な例として、遺伝子の標的指向組込みによって、生物学的な「論理ゲート」(「アンド」または「オア」または「ノット」またはこれらの任意の組み合わせ)の構成要素の発現を制御することに依拠する。電子的論理ゲートと同様に、異なる遺伝子座で発現した細胞構成要素は、例として、免疫細胞の活性化の状態を規定する負および正のシグナルを交換することができる。そのような構成要素は、非限定的な例として、T細胞活性化を制御するために用いられ得る正および負のキメラ抗原受容体、ならびにそれらが発現している操作されたT細胞の結果として生じた細胞傷害性を包含する。
【0033】
好ましい態様によると、本発明は、ssDNA(非限定的な例としてオリゴヌクレオチド)、dsDNA(非限定的な例としてプラスミドDNA)、およびより詳細には非限定的な例としてアデノ随伴ウイルス(AAV)をトランスフェクトすることによって、配列特異的エンドヌクレアーゼ試薬、ならびに/または関心対象の遺伝子および標的遺伝子に相同な配列を含有するドナー鋳型を導入することに依拠する。
【0034】
本発明はまた、上記の方法に属するベクター、ドナー鋳型、試薬、および結果として生じた操作された細胞、ならびに治療におけるそれらの使用にも関する。
[本発明1001]
細胞免疫療法用の操作された初代免疫細胞を調製するための方法であって、
初代免疫細胞の集団を提供する工程;
該初代免疫細胞のある割合中に、
(i)該免疫細胞集団の治療的可能性を改善する少なくとも1種類の分子をコードするように、選択された内在性遺伝子座に組み込まれる、外来性のヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列を含む、少なくとも1種類の核酸;
(ii)該選択された内在性遺伝子座を特異的に標的とする、少なくとも1種類の配列特異的試薬
を導入する工程
を含み、該外来性のヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列が、該内在性遺伝子座に存在する内在性プロモーターの転写制御下に外来性コード配列を形成するように、該内在性遺伝子座中への標的指向遺伝子組込みによって挿入される、前記方法。
[本発明1002]
前記配列特異的試薬がヌクレアーゼである、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記標的指向遺伝子組込みが、前記免疫細胞中への相同組換えまたはNHEJによって作動される、本発明1001または1002の方法。
[本発明1004]
前記内在性プロモーターが、免疫細胞活性化の間に活性を有するように選択される、本発明1001~1003のいずれかの方法。
[本発明1005]
前記外来性コード配列によってコードされる前記分子が、RNAiなどのRNA転写物、または、機能的タンパク質などのポリペプチドである、本発明1001~1004のいずれかの方法。
[本発明1006]
治療的可能性活性を改善する前記分子または前記初代免疫細胞の集団が、薬物に対する免疫細胞の耐性を付与し、免疫細胞の残存性(インビボもしくはインビトロにおいて)またはその安全性を増加させる、本発明1001~1005のいずれかの方法。
[本発明1007]
初代免疫細胞の残存性を増強する前記分子が、サイトカイン受容体、薬物に対する耐性を付与するタンパク質、または、阻害性ペプチドもしくはタンパク質に向けられる分泌型抗体から選択される、本発明1006の方法。
[本発明1008]
前記外来性コード配列が、IL-2、IL-12、またはIL-15をコードする、本発明1001~1006のいずれかの方法。
[本発明1009]
薬物耐性を付与する前記外来性コード配列が、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、イノシン一リン酸デヒドロゲナーゼ2(IMPDH2)、カルシニューリン、またはメチルグアニントランスフェラーゼ(MGMT)、mTORmut、およびLckmutをコードする、本発明1001~1006のいずれかの方法。
[本発明1010]
前記外来性配列が、ケモカインまたはサイトカイン、例えば、IL-2、IL-12、およびIL-15をコードする、本発明1001~1006のいずれかの方法。
[本発明1011]
治療活性を増強する前記外来性配列が、FOXP3の阻害物質をコードする、本発明1001~1006のいずれかの方法。
[本発明1012]
T細胞の治療活性を増強する前記外来性配列が、腫瘍関連マクロファージ(TAM)の分泌型阻害物質、例えば、CCR2/CCL2中和物質をコードする、本発明1001~1006のいずれかの方法。
[本発明1013]
初代免疫細胞の安全性を増強する前記外来性配列が、キメラ抗原受容体(CAR)の構成要素をコードする、本発明1001~1006のいずれかの方法。
[本発明1014]
前記CARが、所与の細胞タイプに対する免疫細胞の改善された特異性に寄与する阻害性CARである、本発明1013の方法。
[本発明1015]
初代免疫細胞の安全性を増強する前記外来性配列が、該細胞を直接、または他の化合物と組み合わせて、または他の化合物を活性化することによって死滅させる能力を有する因子をコードする、本発明1001~1006のいずれかの方法。
[本発明1016]
初代免疫細胞の安全性を増強する前記外来性配列が、アポトーシスCARの構成要素をコードする、本発明1001~1006のいずれかの方法。
[本発明1017]
前記アポトーシスCARが、FasL(CD95)を含む、本発明1016の方法。
[本発明1018]
初代免疫細胞の安全性を増強する前記外来性配列が、シクロホスファミドおよび/またはイソホスファミドなどの薬物に対する前記免疫細胞の高感受性を付与する、シトクロムP450、CYP2D6-1、CYP2D6-2、CYP2C9、CYP3A4、CYP2C19、またはCYP1A2をコードする、本発明1001~1006のいずれかの方法。
[本発明1019]
前記遺伝子が、免疫細胞活性化の間に常に活性を有する内在性プロモーターの転写制御下にある、本発明1001~1018のいずれかの方法。
[本発明1020]
前記遺伝子が、CD3G、Rn28s1、Rn18s、Rn7sk、Actg1、β2m、Rpl18a、Pabpc1、Gapdh、Rpl17、Rpl19、Rplp0、Cfl1、およびPfn1から選択される、本発明1019の方法。
[本発明1021]
前記内在性プロモーターの転写活性が、安定であり、かつ免疫細胞活性化から独立している、本発明1019の方法。
[本発明1022]
安定でありかつ免疫細胞活性化から独立している前記内在性プロモーターの制御下の前記遺伝子が、CD3である、本発明1021の方法。
[本発明1023]
前記遺伝子中に導入される前記配列が、任意でポリペプチドCD3、CD28、または4-1BBとの融合状態の、TCR結合ドメインをコードする、本発明1022の方法。
[本発明1024]
安定でありかつ免疫細胞活性化から独立している活性を有する前記内在性プロモーターの制御下の前記遺伝子中に導入される前記コード配列が、サイトカイン、ケモカイン受容体、生成物に対する耐性を付与する分子、4-1BRLおよびOX40Lなどの共刺激リガンド、または分泌型抗体をコードする、本発明1021の方法。
[本発明1025]
前記内在性プロモーターの転写活性が、免疫細胞活性化に依存している、本発明1001~1018のいずれかの方法。
[本発明1026]
前記内在性プロモーターの前記転写活性が、免疫細胞活性化時に一過性である、本発明1025の方法。
[本発明1027]
前記内在性プロモーターの前記転写活性が、上方制御される、本発明1025の方法。
[本発明1028]
前記転写活性が、強く上方制御される、本発明1027の方法。
[本発明1029]
その転写活性が強く上方制御される前記遺伝子中に導入される前記外来性配列が、より詳細には、サイトカイン、免疫原性ペプチド、または、抗IDO1、抗IL10、抗PD1、抗PDL1、抗IL6、もしくは抗PGE2抗体などの分泌型抗体をコードする、本発明1028の方法。
[本発明1030]
前記転写活性が、弱く上方制御される、本発明1027の方法。
[本発明1031]
その転写活性が一過性であるまたは弱く上方制御される前記遺伝子中に導入される前記配列が、より詳細には阻害性CARまたはアポトーシスCARの成分をコードし、前記免疫細胞の安全性の特異性を改善する、本発明1030の方法。
[本発明1032]
前記プロモーターが、免疫細胞活性化時に12時間未満にわたって上方制御される、本発明1026の方法。
[本発明1033]
前記遺伝子が、Spata6、Itga6、Rcbtb2、Cd1d1、St8sia4、Itgae、およびFam214aから選択される、本発明1032の方法。
[本発明1034]
前記プロモーターが、免疫細胞活性化時に24時間未満にわたって上方制御される、本発明1026の方法。
[本発明1035]
前記遺伝子が、IL3、IL2、Ccl4、IL21、Gp49a、Nr4a3、Lilrb4、Cd200、Cdkn1a、Gzmc、Nr4a2、Cish、Ccr8、Lad1、およびCrabp2から選択される、本発明1034の方法。
[本発明1036]
前記遺伝子が、免疫細胞活性化時に24時間超にわたって上方制御される、本発明1026の方法。
[本発明1037]
前記遺伝子が、Gzmb、Tbx21、Plek、Chek1、Slamf7、Zbtb32、Tigit、Lag3、Gzma、Wee1、IL12rb2、Eea1、およびDtlから選択される、本発明1036の方法。
[本発明1038]
キメラ抗原受容体(CAR)または改変TCRが、トランスフェクトされた免疫細胞において独立して発現している、本発明1001~1037のいずれかの方法。
[本発明1039]
前記CARが、CD22抗原に向けられている、本発明1042の方法。
[本発明1040]
前記内在性プロモーター活性が、トランスフェクトされた免疫細胞中で発現する前記CARに依存している、本発明1038または1039の方法。
[本発明1041]
前記特異的エンドヌクレアーゼ試薬が、RNAもしくはDNAガイドエンドヌクレアーゼ、例えばCas9もしくはCpf1、RNAもしくはDNAガイド、TALエンドヌクレアーゼ、Znフィンガーヌクレアーゼ、ホーミングエンドヌクレアーゼ、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、本発明1001~1040のいずれかの方法。
[本発明1042]
前記特異的エンドヌクレアーゼ試薬が、ポリペプチドとしてまたは細胞中で翻訳されるmRNAの状態でのエレクトロポレーションによって導入される、本発明1001~1041のいずれかの方法。
[本発明1043]
前記コード配列を含む前記外来性核酸が、DNAベクター中に含まれる、本発明1042の方法。
[本発明1044]
前記DNAベクターが、ウイルスベクター、例えばAAVベクターである、本発明1043の方法。
[本発明1045]
前記配列特異的エンドヌクレアーゼ試薬をコードする核酸および前記外来性核酸が両方とも、前記DNAベクター中に含まれる、本発明1043の方法。
[本発明1046]
免疫細胞中に導入される遺伝子配列の前または後に、前記内在性遺伝子の少なくとも一部と共に該遺伝子配列の転写を可能にするための2Aペプチドをコードする配列がある、本発明1001~1045のいずれかの方法。
[本発明1047]
遺伝子配列が、前記遺伝子中に最初に存在している少なくとも1種類の内在性ゲノム配列の発現を不活性化する効果を伴って導入される、本発明1001~1046のいずれかの方法。
[本発明1048]
前記内在性プロモーターが、TCR遺伝子の転写活性を制御しない、本発明1001~1047のいずれかの方法。
[本発明1049]
不活性化されている前記内在性ゲノム配列が、抑制性サイトカイン、キナーゼ、またはそれらの受容体、例えば、TGFb、TGFbR、IL-10、IL-10R、GCN2、またはPRDM1をコードする、本発明1047の方法。
[本発明1050]
不活性化されている前記内在性ゲノム配列が、免疫チェックポイントとして作用するタンパク質、例えば、PD1、PDL1、CTLA4、TIM3、またはLAG3をコードする、本発明1049の方法。
[本発明1051]
不活性化されている前記内在性ゲノム配列が、プロドラッグを活性化する酵素、例えば、DCK、HPRT、またはGGHを発現する、本発明1047の方法。
[本発明1052]
不活性化されている前記内在性ゲノム配列が、免疫枯渇処置に対する受容体、例えば、グルココルチコイド受容体およびCD52を発現する、本発明1047の方法。
[本発明1053]
不活性化されている前記内在性ゲノム配列が、前記免疫細胞、または前記免疫細胞の集団由来の別の免疫細胞によって発現するCARとの親和性を有する表面抗原を発現する、本発明1047の方法。
[本発明1054]
前記免疫細胞が、造血幹細胞HSCである、本発明1001~1053のいずれかの方法。
[本発明1055]
前記免疫細胞が、T細胞またはNK細胞である、本発明1001~1053のいずれかの方法。
[本発明1056]
本発明1001~1055のいずれかの方法によって取得可能である、操作された初代免疫細胞。
[本発明1057]
内在性遺伝子プロモーターの転写制御下に外来性コード配列を含む、操作された初代免疫細胞。
[本発明1058]
前記内在性遺伝子プロモーターが、前記免疫細胞の活性化の間に活性を有する、本発明1056または1057の操作された初代免疫細胞。
[本発明1059]
前記内在性遺伝子プロモーターが、前記免疫細胞の活性化に応答性であり、好ましくは上方制御される、本発明1056~1058のいずれかの操作された初代免疫細胞。
[本発明1060]
前記内在性遺伝子が、表6に列挙されるものの中で選択される、本発明1056~1060のいずれかの操作された初代免疫細胞。
[本発明1061]
前記初代免疫細胞が、T細胞またはNK細胞である、本発明1056~1060のいずれかの操作された初代免疫細胞。
[本発明1062]
前記初代細胞がキメラ抗原受容体を与えられている、本発明1056~1061のいずれかの操作された初代免疫細胞。
[本発明1063]
前記内在性遺伝子プロモーターの前記転写制御が、前記キメラ抗原受容体(CAR)のシグナル活性化に対して応答性である、本発明1062の操作された初代免疫細胞。
[本発明1064]
少なくとも30%、好ましくは50%、より好ましくは80%の、本発明1056~1063のいずれかの細胞を含む、治療上有効な初代免疫細胞の集団。
[本発明1065]
少なくとも30%、好ましくは50%、より好ましくは80%の細胞が、ドナー、好ましくは1人の単一ドナーを起源とする、本発明1064の初代免疫細胞の集団。
[本発明1066]
50%超の前記免疫細胞が、TCR陰性T細胞である、本発明1064の初代免疫細胞の集団。
[本発明1067]
50%超の前記免疫細胞が、CAR陽性細胞である、本発明1064~1066のいずれかの初代免疫細胞の集団。
[本発明1068]
本発明1056~1067のいずれかの操作された初代免疫細胞または免疫細胞集団を含む、薬学的組成物。
[本発明1069]
以下の工程を含む、その必要がある患者を処置するための方法であって、
本発明1056~1067のいずれかの操作された初代免疫細胞の集団を調製する工程;
任意で、該操作された初代免疫細胞を精製または選別する工程;
該操作された初代免疫細胞の集団を、該細胞の該患者中への注入時または注入後に活性化する工程。
[本発明1070]
前記患者が、がんについて処置される、本発明1069の方法。
[本発明1071]
前記患者が、感染症について処置される、本発明1069の方法。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】外来性配列を、特定の免疫細胞タイプにおいて特異的に活性化される内在性プロモーターの転写調節下の特異的な遺伝子座に導入することによって、造血幹細胞(HSC)を操作するための戦略。図は、本発明の通りの所望の造血系列における発現のために、外来性コード配列をその遺伝子座に挿入することができる、特異的な内在性遺伝子の例を列挙する。目標は、患者中に移植されるエクスビボで操作されたHSCを、それらが所望の系列に分化しながら、選択された導入遺伝子を発現するであろう免疫細胞をインビボで産生するために作製することである。
【
図2】IL-15外来性コード配列をCD25およびPD1遺伝子座に、ならびにまた抗CD22 CAR外来性コード配列をTRAC遺伝子座に挿入するために、実験項において用いられたドナー配列の模式的表示。A:免疫細胞によるCD25ポリペプチドおよびIL-15ポリペプチドの同時転写を得るための、CD25遺伝子座でのIL-15の部位特異的挿入用に設計されたドナー鋳型(IL-15m-CD25と称される)。配列は、実施例に詳述する。B:PD1内在性遺伝子のプロモーターの転写活性下でIL-15の転写を得るための、PD1遺伝子座でのIL-15の部位特異的挿入用に設計されたドナー鋳型(IL-15m-PD1と称される)。PD1の右および左の境界配列は、PD1内在性コード配列をインタクトにまたは破壊された状態に保つように選択することができる。この後者の場合、PD1はノックアウトされ、他方で、IL-15はノックインされて転写される。C:TCR遺伝子座(例えば、TRAC)中へのキメラ抗原受容体(例えば、抗CD22 CAR)の部位特異的挿入用に設計されたドナー鋳型。概して、左および右の境界は、患者への同種異系移植に適している[TCR]
陰性[CAR]
陽性の操作された免疫細胞を得るために、TCRを破壊するように選択される。
【
図3】抗CD22 CARもまたTRAC TALEN(登録商標)を用いてTRAC遺伝子座に組み込まれる状況における、それぞれPD1またはCD25 TALEN(登録商標)を用いることによるPD1またはCD25遺伝子座のいずれかでのIL-15mの標的指向組込みの頻度のフローサイトメトリー測定。これらの結果により、共にTRAC遺伝子座でのCAR抗CD22、およびPD1またはCD25遺伝子座でのIL-15コード配列の両方の効率的な標的指向組込みが示される。A:モックトランスフェクトした初代T細胞。B:TCRおよびPD1遺伝子座での二重組込みのために、
図1(BおよびC)に記載されるドナー配列ならびに特異的TALEN(登録商標)をトランスフェクトした初代T細胞。C:TCRおよびCD25遺伝子座での二重組込みのために、
図1(AおよびC)に記載されるドナー配列ならびに特異的TALEN(登録商標)をトランスフェクトした初代T細胞。
【
図4】
図5および6に示される結果を得るために、初代免疫細胞にトランスフェクトする実験項において用いられた外来性配列の模式的表示。
【
図5】抗CD3/CD28非特異的活性化(Dynabeads(登録商標))時およびCAR依存的腫瘍細胞活性化(raji腫瘍細胞)時の、
図4のドナー鋳型および特異的TALEN(登録商標)(TCRおよびCD25)をトランスフェクトした生存可能T細胞の間でのLNGFR発現についてのフローサイトメトリー測定。
図6に示されるように、LNGFR発現は、CAR/腫瘍係合時に[CAR抗CD22]
陽性細胞において特異的に誘導された。
【
図6】抗CD3/CD28非特異的活性化(Dynabeads(登録商標))時およびCAR依存的腫瘍細胞活性化(raji腫瘍細胞)時の、
図4のドナー鋳型および特異的TALEN(登録商標)(TCRおよびCD25)をトランスフェクトした生存可能T細胞の間でのLNGFR発現についてのフローサイトメトリー測定。
図6に示されるように、LNGFR発現は、CAR/腫瘍係合時に[CAR抗CD22]
陽性細胞において特異的に誘導された。
【
図7】抗CD3/CD28非特異的活性化(Dynabeads(登録商標))および腫瘍細胞活性化(raji腫瘍細胞)時の、
図4のドナー鋳型および特異的TALEN(登録商標)(TCRおよびCD25)をトランスフェクトした生存可能T細胞の間でのCD25発現についてのフローサイトメトリー測定。
図8に示されるように、CD25発現は、CAR/腫瘍係合時に[CAR抗CD22]
陽性細胞において特異的に誘導された。
【
図8】抗CD3/CD28非特異的活性化(Dynabeads(登録商標))および腫瘍細胞活性化(raji腫瘍細胞)時の、
図4のドナー鋳型および特異的TALEN(登録商標)(TCRおよびCD25)をトランスフェクトした生存可能T細胞の間でのCD25発現についてのフローサイトメトリー測定。
図8に示されるように、CD25発現は、CAR/腫瘍係合時に[CAR抗CD22]
陽性細胞において特異的に誘導された。
【
図9】
図11および12に示される結果を得るために、初代免疫細胞にトランスフェクトする実験項において用いられた外来性配列の模式的表示。
【
図10】抗CD3/CD28非特異的活性化(Dynabeads(登録商標))および腫瘍細胞活性化(raji腫瘍細胞)時の、
図9のドナー鋳型および特異的TALEN(登録商標)(TCRおよびPD1)をトランスフェクトした生存可能T細胞の間でのLNGFR発現についてのフローサイトメトリー測定。
図11に示されるように、LNGFR発現は、CAR/腫瘍係合時に[CAR抗CD22]
陽性細胞において特異的に誘導された。
【
図11】抗CD3/CD28非特異的活性化(Dynabeads(登録商標))および腫瘍細胞活性化(raji腫瘍細胞)時の、
図9のドナー鋳型および特異的TALEN(登録商標)(TCRおよびPD1)をトランスフェクトした生存可能T細胞の間でのLNGFR発現についてのフローサイトメトリー測定。
図11に示されるように、LNGFR発現は、CAR/腫瘍係合時に[CAR抗CD22]
陽性細胞において特異的に誘導された。
【
図12】TALEN(登録商標)(TCRおよびPD1)の使用を伴う、および伴わない、抗CD3/CD28非特異的活性化(Dynabeads(登録商標))および腫瘍細胞活性化(raji腫瘍細胞)時の、
図9のドナー鋳型をトランスフェクトした生存可能T細胞の間での内在性PD1発現についてのフローサイトメトリー測定。PD1は、TALEN処理によって効率的にノックアウトされた(54%のうち8%はPD1の発現を残している)。
【
図13】IL-15外来性コード配列のPD1遺伝子座中への挿入のために、
図2(B)に記載されるドナー鋳型およびTALEN(登録商標)をトランスフェクトした本発明による[CAR]
陽性(CARm)および[CAR]
陰性の操作された免疫細胞におけるIL-15産生を示す図。その転写が内在性PD1プロモーターの制御下であったIL15は、抗CD3/CD28非特異的活性化(Dynabeads(登録商標))および腫瘍細胞活性化(raji腫瘍細胞)時に効率的に誘導され、培養培地に分泌された。
【
図14】本発明に従って操作された免疫細胞による、活性化後に経時的(日)に分泌されたIL-15の量を示すグラフ。A:
図2A(IL-15m_CD25)および/または2C(CARm)に記載されるDNAドナー鋳型を用いた、CD25遺伝子座でのIL-15コード配列の組込みによって操作された細胞。B:
図2B(IL-15m_PD1)および/または2C(CARm)に記載されるDNAドナー鋳型を用いた、PD1遺伝子座でのIL-15コード配列の組込みによって操作された細胞。両方の遺伝子座での組込みは、類似したIL-15分泌プロファイルを示す。IL-15の分泌は、CARの腫瘍特異的活性化によって有意に増加する。
【
図15】実施例2に記載されるような生存アッセイ(連続死滅アッセイ)における経時的な、CD22抗原を発現するRaji-Luc腫瘍細胞の数(ルシフェラーゼシグナル)を報告するグラフ。免疫細胞(PBMC)を、PD1遺伝子座(A)またはCD25遺伝子座(B)にIL-15コード配列を組み込むように、かつTCR遺伝子座で抗CD22-CARを発現する(それによってTCR発現を破壊する)ように操作している。このアッセイにおいては、腫瘍細胞を定期的に培養培地に添加するが、CAR陽性細胞によって部分的にまたは全体的に排除される。PD1またはCD25の細胞のいずれかでのIL-15の再発現は、CAR陽性細胞による腫瘍細胞の排除を劇的に助ける。
【
図16】PD1遺伝子座にIL-12およびgp130Fcをコードする外来性配列を挿入するための、実験項において用いられるドナー配列の模式的表示。A:IL-12aおよびIL-12bの同時転写を得て、他方でPD1内在性コード配列を破壊するための、PD1遺伝子座でのIL-12aおよびIL-12bコード配列(SEQ ID NO:47および48)の部位特異的挿入用に設計されたドナー鋳型(IL-12m-PD1と称される)。PD1遺伝子座配列に相同な右および左の境界配列は、少なくとも100 pb長、好ましくは少なくとも200 pb長、およびより好ましくは少なくとも300 pb長であり、SEQ ID NO:45および46を含んでいる。配列は、表5に詳述する。B:PD1遺伝子座でPD1プロモーター下での転写を得て、他方でPD1内在性コード配列を破壊するための、gp130Fcコード配列(SEQ ID NO:51)の部位特異的挿入用に設計されたドナー鋳型(gp130Fcm-PD1と称される)。PD1遺伝子座配列に相同な右および左の境界配列は、少なくとも100 pb長、好ましくは少なくとも200 pb長、およびより好ましくは少なくとも300 pb長であり、SEQ ID NO:45および46を含んでいる。配列は、表5に詳述する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(表1)多様なウイルス由来のISUドメインバリアント。
(表2)天然起源および人工起源由来のFPポリペプチドのアミノ酸配列。
(表3)本発明による外来性コード配列を挿入することによって有利に改変または不活性化することができる、免疫細胞阻害経路に関与する遺伝子のリスト。
(表4)実施例1において言及される配列。
(表5)実施例2において言及される配列。
(表6)免疫細胞の治療的可能性を改善するために、遺伝子標的指向挿入が本発明に従って探求される、T細胞活性化時に上方制御されるヒト遺伝子(CAR活性化感受性プロモーター)のリスト。
(表7)免疫細胞活性化の間に絶え間なく転写される(T細胞活性化に依存的または非依存的である)遺伝子の選択。
(表8)T細胞活性化時に一過性に上方制御される遺伝子の選択。
(表9)T細胞活性化時に24時間超にわたって上方制御される遺伝子の選択。
(表10)免疫細胞活性化時に下方制御される遺伝子の選択。
(表11)T細胞活性化時に無変化である遺伝子(安全港遺伝子標的指向組込み遺伝子座)の選択。
(表12)本発明の通りの外来性コード配列の遺伝子組込みに有用な、(複数の腫瘍から集計された)腫瘍消耗浸潤リンパ球において上方制御される遺伝子座のリスト。
(表13)本発明の通りの外来性コード配列の遺伝子組込みに有用な、低酸素腫瘍状態において上方制御される遺伝子座のリスト。
【0037】
発明の詳細な説明
本明細書において具体的に定義されない限り、本明細書において用いられるすべての技術用語および科学用語は、遺伝子治療、生化学、遺伝学、および分子生物学の分野における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0038】
本明細書に記載されるものと同様または等価のすべての方法および材料を、本発明の実施または試験において用いることができるが、適している方法および材料を、本明細書に記載している。本明細書において言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参照文献は、それらの全体が参照により組み入れられる。矛盾する場合は、本明細書が、定義を含めて勝ることになる。さらに、材料、方法、および実施例は、他に特定されない限り、例証となるだけであり、限定するようには意図されない。
【0039】
本発明の実施は、他に示されない限り、当技術分野の技能内である、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、遺伝子導入生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学の従来の技法を使用することになる。そのような技法は、文献において十分に説明されている。例えば、Current Protocols in Molecular Biology (Frederick M. AUSUBEL, 2000, Wiley and son Inc, Library of Congress, USA);Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, (Sambrook et al, 2001, Cold Spring Harbor, New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press);Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait ed., 1984);Mullis et al. 米国特許第4,683,195号;Nucleic Acid Hybridization (B. D. Harries & S. J. Higgins eds. 1984);Transcription And Translation (B. D. Hames & S. J. Higgins eds. 1984);Culture Of Animal Cells (R. I. Freshney, Alan R. Liss, Inc., 1987);Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press, 1986);B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984);Methods In ENZYMOLOGY (J. Abelson and M. Simon, eds.-in-chief, Academic Press, Inc., New York)のシリーズ、具体的には、154および155巻(Wu et al. eds.)ならびに185巻「Gene Expression Technology」(D. Goeddel, ed.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells (J. H. Miller and M. P. Calos eds., 1987, Cold Spring Harbor Laboratory);Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Mayer and Walker, eds., Academic Press, London, 1987);Handbook Of Experimental Immunology, Volumes I-IV (D. M. Weir and C. C. Blackwell, eds., 1986);およびManipulating the Mouse Embryo, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1986)を参照されたい。
【0040】
本発明は、免疫細胞の染色体DNA中への外来性コード配列の遺伝子標的指向組込みを含む、細胞免疫療法用の初代免疫細胞を調製する概括的な方法に注目する。いくつかの局面によると、この組込みは、前記コード配列が、前記細胞にとって内在性の少なくとも1つのプロモーターの転写制御下に置かれ、該内在性プロモーターが、好ましくは、T細胞受容体α定常(TRAC-NCBI Gene ID #28755)を転写するものなどの構成的プロモーターではないようなやり方で行われる。本発明の通りの構成的プロモーターは、例として、CAR活性化から独立して、例えば、T細胞がまだ活性化されていない時に、活性を有するプロモーターである。
【0041】
遺伝子標的指向組込みによる免疫細胞の治療的可能性の改善
ポリヌクレオチド配列特異的試薬、例えば低頻度切断エンドヌクレアーゼを用いた遺伝子編集技法は、初代細胞中への遺伝子改変の導入についての最先端技術になってきている。しかし、それらは、これまでのところ免疫細胞において、外来性コード配列を内在性プロモーターの転写制御下に導入するためには用いられていない。
【0042】
本発明は、遺伝子編集技法を通して、特に遺伝子標的指向組換えによって、免疫細胞の治療的可能性を改善することを目標にする。
【0043】
「遺伝子標的指向組込み」とは、ゲノム配列を生細胞中に挿入するか、置き換えるか、または修正することを可能にする、任意の公知の部位特異的方法を意味する。本発明の好ましい局面によると、前記遺伝子標的指向組込みは、少なくとも1個の外来性ヌクレオチド、好ましくは数個のヌクレオチドの配列(すなわち、ポリヌクレオチド)、およびより好ましくはコード配列の挿入または置き換えを結果としてもたらす、標的とされる遺伝子の遺伝子座での相同遺伝子組換えを含む。
【0044】
「配列特異的試薬」とは、ゲノム遺伝子座の改変を考慮して、長さが好ましくは少なくとも9 bpの、より好ましくは少なくとも10 bpの、およびさらにより好ましくは少なくとも12 pbの、該ゲノム遺伝子座での選択されたポリヌクレオチド配列を特異的に認識する能力を有する任意の活性分子を意味する。本発明の好ましい局面によると、前記配列特異的試薬は、好ましくは配列特異的ヌクレアーゼ試薬である。
【0045】
「免疫細胞」とは、典型的にはCD3陽性細胞またはCD4陽性細胞などの、自然免疫応答および/または適応免疫応答の開始および/または実行に機能的に関与する造血起源の細胞を意味する。本発明による免疫細胞は、樹状細胞、キラー樹状細胞、肥満細胞、NK細胞、B細胞、または、炎症性Tリンパ球、細胞傷害性Tリンパ球、調節性Tリンパ球、もしくはヘルパーTリンパ球からなる群より選択されるT細胞であることができる。細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織を含む、多数の非限定的な供給源から、および、腫瘍、例えば腫瘍浸潤リンパ球から得ることができる。いくつかの態様において、前記免疫細胞は、健常ドナー、がんと診断された患者、または感染症と診断された患者に由来することができる。別の態様において、前記細胞は、例えば、CD4、CD8、およびCD56陽性細胞を含む、様々な表現型特性を提示する、免疫細胞の混合型集団の一部である。
【0046】
「初代細胞」とは、生きている組織(例えば、生検材料)から直接採取され、限定された期間にわたるインビトロでの成長について確立された細胞を意図し、これは、それらが限定された数の集団倍加を経験できることを意味する。初代細胞は、持続的な腫瘍形成性細胞株または人工的に不死化された細胞株とは反対である。そのような細胞株の非限定的な例は、CHO-K1細胞;HEK293細胞;Caco2細胞;U2-OS細胞;NIH 3T3細胞;NSO細胞;SP2細胞;CHO-S細胞;DG44細胞;K-562細胞、U-937細胞;MRC5細胞;IMR90細胞;Jurkat細胞;HepG2細胞;HeLa細胞;HT-1080細胞;HCT-116細胞;Hu-h7細胞;Huvec細胞;Molt 4細胞である。初代細胞は、より機能的であり、かつ腫瘍形成性がより低いと考えられるため、細胞療法において概して用いられる。
【0047】
概して、初代免疫細胞は、例としてSchwartz J.et al. (Guidelines on the use of therapeutic apheresis in clinical practice-evidence-based approach from the Writing Committee of the American Society for Apheresis: the sixth special issue (2013) J Clin Apher. 28(3):145-284)によって概説される白血球搬出技法によるような、当技術分野において公知の様々な方法を通して、ドナーまたは患者から提供される。
【0048】
本発明による初代免疫細胞はまた、幹細胞、例えば、臍帯血幹細胞、前駆細胞、骨髄幹細胞、造血幹細胞(HSC)、および人工多能性幹細胞(iPS)から分化させることもできる。
【0049】
「ヌクレアーゼ試薬」とは、それ自体でまたはガイドRNA/Cas9などの複合体のサブユニットとして、標的細胞におけるヌクレアーゼ触媒反応、好ましくはエンドヌクレアーゼ反応に寄与し、好ましくは核酸配列標的の切断をもたらす核酸分子を意味する。
【0050】
本発明のヌクレアーゼ試薬は、概して「配列特異的試薬」であり、これは、それらが、その延長上で「標的指向遺伝子」と呼ばれる、あらかじめ決められた遺伝子座で細胞においてDNA切断を誘導できることを意味する。配列特異的試薬によって認識される核酸配列は、「標的配列」と呼ばれる。前記標的配列は、http://www.ensembl.org/index.htmlなどのヒトゲノムデータベースから利用可能であるソフトウェアおよびデータを用いて判定できるように、通常、細胞のゲノムにおいて、およびより広範にはヒトゲノムにおいて、まれまたは唯一であるように選択される。
【0051】
「低頻度切断エンドヌクレアーゼ」とは、それらの認識配列が、概して10~50の連続塩基対、好ましくは12~30 bp、およびより好ましくは14~20 bpの範囲である限り、好みの配列特異的エンドヌクレアーゼ試薬である。
【0052】
本発明の好ましい局面によると、前記エンドヌクレアーゼ試薬は、「操作された」または「プログラム可能な」低頻度切断エンドヌクレアーゼ、例えば、例としてArnould S., et al. (WO2004067736)によって記載されているようなホーミングエンドヌクレアーゼ、例としてUrnov F., et al. (Highly efficient endogenous human gene correction using designed zinc-finger nucleases (2005) Nature 435:646-651)によって記載されているようなZnフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、例としてMussolino et al. (A novel TALE nuclease scaffold enables high genome editing activity in combination with low toxicity (2011) Nucl. Acids Res. 39(21):9283-9293)によって記載されているようなTALEヌクレアーゼ、または、例としてBoissel et al. (MegaTALs: a rare-cleaving nuclease architecture for therapeutic genome engineering (2013) Nucleic Acids Research 42 (4):2591-2601)によって記載されているようなMegaTALヌクレアーゼをコードする核酸である。
【0053】
別の態様によると、エンドヌクレアーゼ試薬は、とりわけ、参照により本明細書に組み入れられるDoudna, J., and Chapentier, E., (The new frontier of genome engineering with CRISPR-Cas9 (2014) Science 346 (6213):1077)による教示の通りに、Cas9またはCpf1などのRNAガイドエンドヌクレアーゼと組み合わせて用いられるRNAガイドである。
【0054】
本発明の好ましい局面によると、エンドヌクレアーゼ試薬は、細胞中に一過性に発現し、これは、該試薬が、RNA、より詳細にはmRNA、タンパク質、またはタンパク質および核酸を混合する複合体(例えば、リボ核タンパク質)の場合のように、ゲノム中に組み込まれるかまたは長い期間にわたって残存するとは想定されないことを意味する。
【0055】
概して、エンドヌクレアーゼ試薬の80%は、トランスフェクション後30時間までに、好ましくは24時間までに、より好ましくは20時間までに分解される。
【0056】
mRNA形態下のエンドヌクレアーゼは、好ましくは、例としてKore A.L., et al. (Locked nucleic acid (LNA)-modified dinucleotide mRNA cap analogue: synthesis, enzymatic incorporation, and utilization (2009) J Am Chem Soc. 131(18):6364-5)によって記載されているような、当技術分野において周知の技法に従って、その安定性を増強するようにキャップを伴って合成される。
【0057】
概して、免疫細胞にトランスフェクトするために用いられるエレクトロポレーション工程は、典型的に、参照により組み入れられるWO/2004/083379、特に23ページ25行目~29ページ11行目に記載されているような、平行な平板電極を含み、該平行な平板電極の間に、処理体積を通して実質的に均一の、100ボルト/cmよりも大きく5,000ボルト/cmよりも小さいパルス電場を生じる、閉鎖チャンバーにおいて行われる。1つのそのようなエレクトロポレーションチャンバーは、好ましくは、電極間隙の二乗(cm2)をチャンバー体積(cm3)で割った商によって定義される幾何学的因子(cm-1)を有し、ここで、幾何学的因子は、0.1 cm-1以下であり、細胞の懸濁液および配列特異的試薬は、0.01~1.0ミリジーメンスにわたる範囲の導電率を有するように調整されている媒質中にある。概して、細胞の懸濁液は、1回または複数回のパルス電場を受ける。方法では、懸濁液の処理体積は拡大縮小でき、チャンバーにおける細胞の処理の時間は実質的に均一である。
【0058】
TALEヌクレアーゼは、それらのより高い特異性のために、例としてMussolino et al. (TALEN(登録商標)facilitate targeted genome editing in human cells with high specificity and low cytotoxicity (2014) Nucl. Acids Res. 42(10): 6762-6773)によって報告されているように、特にヘテロ二量体形態下で、すなわち、「右」単量体(「5'」または「順方向」とも呼ばれる)および「左」単量体(「3'」または「逆方向」とも呼ばれる)での対によって働く、治療応用に特に適切な配列特異的ヌクレアーゼ試薬であることが判明している。
【0059】
以前に述べられたように、配列特異的試薬は、好ましくは、核酸の形態下、例えば、低頻度切断エンドヌクレアーゼ、そのサブユニットをコードするDNAまたはRNAの形態下であるが、それらはまた、ポリヌクレオチドおよびポリペプチドを含むコンジュゲート、例えばいわゆる「リボ核タンパク質」の一部であることもできる。そのようなコンジュゲートは、それぞれのヌクレアーゼと複合体形成されることができるRNAまたはDNAガイドを含む、Zetsche, B. et al. (Cpf1 Is a Single RNA-Guided Endonuclease of a Class 2 CRISPR-Cas System (2015) Cell 163(3): 759-771)およびGao F. et al. (DNA-guided genome editing using the Natronobacterium gregoryi Argonaute (2016) Nature Biotech)によって最近それぞれ記載されているような、Cas9もしくはCpf1(RNAガイドエンドヌクレアーゼ)またはArgonaute(DNAガイドエンドヌクレアーゼ)としての試薬で形成させることができる。
【0060】
「外来性配列」とは、選択された遺伝子座に最初に存在しなかった任意のヌクレオチドまたは核酸配列を指す。この配列は、ゲノム配列に相同もしくはその複製であってもよく、または、細胞中に導入される異種配列であってもよい。反対に、「内在性配列」とは、遺伝子座に最初に存在する細胞ゲノム配列を意味する。外来性配列は、好ましくは、その発現が、この外来性配列を遺伝子座に組み込んでいない姉妹細胞を上回る治療的利点を付与するポリペプチドをコードする。本発明の方法の通りのヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの挿入によって遺伝子編集される内在性配列は、異なるポリペプチドを発現するために、広く外来性コード配列と呼ばれる。
【0061】
本発明の方法は、ウイルス形質導入またはナノ粒子を用いたトランスフェクションなどの、物理的、遺伝的形質転換を含む他の方法と関連することができ、また他の遺伝子不活性化および/または導入遺伝子挿入と組み合わされてもよい。
【0062】
1つの局面によると、本発明による方法は、
初代免疫細胞の集団を提供する工程;
該初代免疫細胞のある割合中に、
(i)該免疫細胞集団の治療的可能性を改善する少なくとも1種類の分子をコードするように、選択された内在性遺伝子座に組み込まれる外来性のヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列を含む、少なくとも1種類の核酸;
(ii)該選択された内在性遺伝子座を特異的に標的とする、少なくとも1種類の配列特異的試薬
を導入する工程
を含み、該外来性のヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列は、該内在性遺伝子座中への標的指向遺伝子組込みによって、該遺伝子座に存在する内在性プロモーターの転写制御下に外来性コード配列を形成するように挿入される。
【0063】
本方法の1つの局面によると、配列特異的試薬はヌクレアーゼであり、標的指向遺伝子組込みは、前記免疫細胞中への相同組換えまたはNHEJによって作動される。
【0064】
本発明のさらなる局面によると、前記内在性プロモーターは、免疫細胞活性化の間に活性を有し、好ましくは上方制御されるように選択される。より具体的には、本発明は、細胞免疫療法用の操作された初代免疫細胞を調製するための方法に注目し、該方法は、
初代免疫細胞の集団を提供する工程;
該初代免疫細胞のある割合中に、
(i)該免疫細胞集団の治療的可能性を改善する少なくとも1種類の分子をコードする外来性コード配列を含む、少なくとも1種類の外来性核酸;
(ii)免疫細胞活性化の間に活性を有する内在性プロモーターの制御下である遺伝子を特異的に標的とする、少なくとも1種類の配列特異的ヌクレアーゼ試薬
を導入する工程
を含み、該コード配列は、該遺伝子の少なくとも1種類の内在性プロモーターの転写制御下に置かれるように、標的指向相同組換えによって初代免疫細胞ゲノム中に導入される。
【0065】
「治療的可能性を改善する」とは、操作された免疫細胞が、それらの姉妹の操作されていない免疫細胞と比較して、細胞療法におけるそれらの使用のために少なくとも1つの有利な特性を獲得することを意味する。本発明によって探求される治療特性は、関連性のある科学文献において言及されるような任意の測定可能なものであってもよい。
【0066】
改善された治療的可能性は、より詳細には、薬物に対する免疫細胞の耐性、インビトロもしくはインビボでのそれらの残存性の増加、または、治療用組成物の製造および処置の間のより安全な/より便利な取扱いによって反映され得る。
【0067】
概して、治療的可能性を改善する前記分子は、ポリペプチドであるが、他の遺伝子の発現を指示するまたは抑えることができる核酸、例えば、干渉RNAまたはガイドRNAであることもできる。ポリペプチドは、シグナル伝達物質または転写調節物質のように、直接的または間接的に作用してもよい。
【0068】
本方法の1つの態様によると、外来性配列は、標的指向相同組換えによって内在性染色体DNA中に導入される。従って、免疫細胞中に導入される外来性核酸は、生理的条件下で内在性染色体配列にハイブリダイズすることができる配列と共に、少なくとも1種類のコード配列を含む。概して、そのような相同配列は、挿入遺伝子座に位置する内在性遺伝子配列と少なくとも70%、好ましくは80%、およびより好ましくは90%の配列同一性を示す。これらの相同配列は、例としてUS 6,528,313において既に教示されているように、組換えの精度を改善するためにコード配列に隣接していてもよい。利用可能なソフトウェアおよびオンラインゲノムデータベースを用いて、前記コード配列を含むベクターを、前記配列が、内在性遺伝子のプロモーターである少なくとも1種類の内在性プロモーターの転写制御下に、高精度の遺伝子座に導入されるようなやり方で、設計することが可能である。外来性コード配列は次いで、好ましくは、前記内在性遺伝子と「インフレームで」挿入される。外来性ポリヌクレオチド配列の組込みから結果として生じた配列は、融合タンパク質、タグ付加タンパク質、または変異タンパク質を含む、多くの異なるタイプのタンパク質をコードすることができる。融合タンパク質は、細胞において発現するタンパク質に対して新たな機能的ドメイン、例えば、カスパーゼ-9スイッチなどの、該タンパク質の活性をスイッチオンまたはスイッチオフするために用いられ得る二量体化ドメインを付加することを可能にする。タグ付加タンパク質は、操作された免疫細胞の検出、および該細胞で処置された患者の追跡について有利であり得る。以下にさらに記載するように、タンパク質中への変異の導入は、薬物または免疫枯渇作用物質に対する耐性を付与することができる。
【0069】
薬物または免疫枯渇作用物質に対する耐性の付与
本発明の1つの局面によると、免疫細胞ゲノム遺伝子座中に組み込まれる外来性配列は、薬物に対する該免疫細胞の耐性を付与する分子をコードする。
【0070】
好ましい外来性配列の例は、メトトレキサートなどの葉酸類似体に対する耐性を付与するジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)のバリアント、ミコフェノール酸(MPA)またはそのプロドラッグであるミコフェノール酸モフェチル(MMF)などのIMPDH阻害物質に対する耐性を付与するイノシン一リン酸デヒドロゲナーゼ2(IMPDH2)のバリアント、FK506および/またはCsAなどのカルシニューリン阻害物質に対する耐性を付与するカルシニューリンまたはメチルグアニントランスフェラーゼ(MGMT)のバリアント、ラパマイシンに対する耐性を付与するmTORmutなどのmTORのバリアント、ならびに、イマチニブおよびGleevecに対する耐性を付与するLckmutなどのLckのバリアントである。
【0071】
「薬物」という用語は、がん細胞と相互作用し、それによって細胞の増殖状況または生存状況を低減させるために概して用いられる化合物またはその誘導体、好ましくは標準的な化学療法剤を指すとして、本明細書において用いられる。化学療法剤の例には、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イフォサミド(ifosamide))、代謝拮抗物質(例えば、クロファラビン、フルダラビン、もしくは2'-デオキシアデノシンなどのプリンヌクレオシド抗代謝薬、メトトレキサート(MTX)、5-フルオロウラシルまたはその誘導体)、抗腫瘍抗生物質(例えば、マイトマイシン、アドリアマイシン)、植物由来抗腫瘍剤(例えば、ビンクリスチン、ビンデシン、Taxol)、シスプラチン、カルボプラチン、エトポシドなどが含まれるが、それらに限定されない。そのような作用物質には、さらに、抗がん剤であるTRIMETHOTRIXATE(商標)(TMTX)、TEMOZOLOMIDE(商標)、RALTRITREXED(商標)、S-(4-ニトロベンジル)-6-チオイノシン(NBMPR)、6-ベンジルグアニン(6-BG)、ビス-クロロニトロソ尿素(BCNU)、および CAMPTOTHECIN(商標)、またはそれらのいずれかの治療用誘導体が含まれてもよいが、それらに限定されない。
【0072】
本明細書において用いられる場合、免疫細胞は、該細胞、または細胞の集団が、少なくともインビトロで、該薬物の最大半量阻害濃度(IC50)を含有する培養培地において増殖することができるように改変された時、薬物に対して「耐性または寛容性」にされる(該IC50は、改変されていない細胞または細胞の集団に関して決定される)。
【0073】
特定の態様において、前記薬物耐性は、少なくとも1種類の「薬物耐性コード配列」の発現によって免疫細胞に付与することができる。前記薬物耐性コード配列とは、上記で言及された化学療法剤のうちの1つなどの作用物質に対する「耐性」を付与する核酸配列を指す。本発明の薬物耐性コード配列は、抗代謝薬、メトトレキサート、ビンブラスチン、シスプラチン、アルキル化剤、アントラサイクリン、細胞傷害性抗生物質、抗イムノフィリン、それらの類似体または誘導体などに対する耐性をコードすることができる(Takebe, N., S. C. Zhao, et al. (2001) "Generation of dual resistance to 4-hydroperoxycyclophosphamide and methotrexate by retroviral transfer of the human aldehyde dehydrogenase class 1 gene and a mutated dihydrofolate reductase gene". Mol. Ther. 3(1): 88-96)、(Zielske, S. P., J. S. Reese, et al. (2003) "In vivo selection of MGMT(P140K) lentivirus-transduced human NOD/SCID repopulating cells without pretransplant irradiation conditioning." J. Clin. Invest. 112(10): 1561-70)、(Nivens, M. C., T. Felder, et al. (2004) "Engineered resistance to camptothecin and antifolates by retroviral coexpression of tyrosyl DNA phosphodiesterase-I and thymidylate synthase" Cancer Chemother Pharmacol 53(2): 107-15)、(Bardenheuer, W., K. Lehmberg, et al. (2005). "Resistance to cytarabine and gemcitabine and in vitro selection of transduced cells after retroviral expression of cytidine deaminase in human hematopoietic progenitor cells". Leukemia 19(12): 2281-8)、(Kushman, M. E., S. L. Kabler, et al. (2007) "Expression of human glutathione S-transferase P1 confers resistance to benzo[a]pyrene or benzo[a]pyrene-7,8-dihydrodiol mutagenesis, macromolecular alkylation and formation of stable N2-Gua-BPDE adducts in stably transfected V79MZ cells co-expressing hCYP1A1" Carcinogenesis 28(1): 207-14)。
【0074】
本発明の通りの免疫細胞におけるそのような薬物耐性外来性配列の発現は、より詳細には、細胞療法が化学療法と併用される場合の、またはこれらの薬物で以前に処置された患者中への細胞療法処置スキームにおける、該免疫細胞の使用を可能にする。
【0075】
本発明による薬物耐性を付与するために潜在的に用いられ得る数種類の薬物耐性コード配列が、特定されている。薬物耐性コード配列の1つの例は、例として、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)の変異体または改変型であることができる。DHFRは、細胞におけるテトラヒドロ葉酸塩の量を調節することに関与する酵素であり、DNA合成に不可欠である。メトトレキサート(MTX)などの葉酸類似体は、DHFRを阻害し、従って、診療所において抗新生物剤として用いられる。治療において用いられる抗葉酸薬による阻害に対して耐性を増加させたDHFRの様々な変異型が、記載されている。特定の態様において、本発明による薬物耐性コード配列は、メトトレキサートなどの抗葉酸処置に対する耐性を付与する少なくとも1個の変異を含む、ヒト野生型DHFR(GenBank: AAH71996.1)の変異体型をコードする核酸配列であることができる。特定の態様において、DHFRの変異体型は、位置G15、L22、F31、またはF34、好ましくは位置L22またはF31に少なくとも1個の変異アミノ酸を含む(Schweitzer et al. (1990) "Dihydrofolate reductase as a therapeutic target" Faseb J 4(8): 2441-52;国際出願WO94/24277;および米国特許第6,642,043号)。特定の態様において、前記DHFR変異体型は、位置L22およびF31に2個の変異アミノ酸を含む。本明細書に記載されるアミノ酸位置の対応は、野生型DHFRポリペプチドの形態のアミノ酸の位置に関して頻繁に表現される。特定の態様において、位置15のセリン残基は、好ましくは、トリプトファン残基で置き換えられる。別の特定の態様において、位置22のロイシン残基は、好ましくは、抗葉酸薬に対する変異体DHFRの結合を破壊するであろうアミノ酸で、好ましくは、フェニルアラニンまたはチロシンなどの非荷電アミノ酸残基で置き換えられる。別の特定の態様において、位置31または34のフェニルアラニン残基は、好ましくは、アラニン、セリン、またはグリシンなどの小さな親水性アミノ酸で置き換えられる。
【0076】
薬物耐性コード配列の別の例はまた、グアノシンヌクレオチドの新生合成における律速酵素であるイノシン-5'-一リン酸デヒドロゲナーゼII(IMPDH2)の変異体または改変型であることもできる。IMPDH2の変異体または改変型は、IMPDH阻害物質耐性遺伝子である。IMPDH阻害物質は、ミコフェノール酸(MPA)またはそのプロドラッグであるミコフェノール酸モフェチル(MMF)であることができる。変異体IMPDH2は、野生型ヒトIMPDH2(Genebank: NP_000875.2)のMAP結合部位において少なくとも1個、好ましくは2個の変異を含むことができ、これが、IMPDH阻害物質に対する有意に増加した耐性をもたらす。これらのバリアントにおける変異は、好ましくは、位置T333および/またはS351である(Yam, P., M. Jensen, et al. (2006) "Ex vivo selection and expansion of cells based on expression of a mutated inosine monophosphate dehydrogenase 2 after HIV vector transduction: effects on lymphocytes, monocytes, and CD34+ stem cells" Mol. Ther. 14(2): 236-44)(Jonnalagadda, M., et al. (2013) "Engineering human T cells for resistance to methotrexate and mycophenolate mofetil as an in vivo cell selection strategy." PLoS One 8(6): e65519)。
【0077】
別の薬物耐性コード配列は、カルシニューリンの変異体型である。カルシニューリン(PP2B - NCBI: ACX34092.1)は、多くの生物学的プロセスに関与しており、かつT細胞活性化の中心となる、遍在性に発現するセリン/スレオニンタンパク質ホスファターゼである。カルシニューリンは、触媒サブユニット(CnA;3種類のアイソフォーム)および調節サブユニット(CnB;2種類のアイソフォーム)から構成されるヘテロ二量体である。T細胞受容体の係合の後、カルシニューリンは、転写因子NFATを脱リン酸化し、これが、核、およびIL2などの活性を有する鍵となる標的遺伝子に移行することを可能にする。FKBP12との複合体におけるFK506、またはCyPAとの複合体におけるシクロスポリンA(CsA)は、カルシニューリンの活性部位に対するNFATの接近を遮断して、その脱リン酸化を阻止し、それによってT細胞活性化を阻害する(Brewin et al. (2009) "Generation of EBV-specific cytotoxic T cells that are resistant to calcineurin inhibitors for the treatment of posttransplantation lymphoproliferative disease" Blood 114(23): 4792-803)。特定の態様において、前記変異体型は、位置:V314、Y341、M347、T351、W352、L354、K360に野生型カルシニューリンヘテロ二量体aの少なくとも1個の変異アミノ酸を、好ましくは、位置T351およびL354またはV314およびY341に二重変異を含むことができる。特定の態様において、位置341のバリン残基は、リジンまたはアルギニン残基で置き換えることができ、位置341のチロシン残基は、フェニルアラニン残基で置き換えることができ;位置347のメチオニンは、グルタミン酸、アルギニン、またはトリプトファン残基で置き換えることができ;位置351のスレオニンは、グルタミン酸残基で置き換えることができ;位置352のトリプトファン残基は、システイン、グルタミン酸、またはアラニン残基で置き換えることができ、位置353のセリンは、ヒスチジンまたはアスパラギン残基で置き換えることができ、位置354のロイシンは、アラニン残基で置き換えることができ;位置360のリジンは、アラニンまたはフェニルアラニン残基で置き換えることができる。別の特定の態様において、前記変異体型は、位置:V120、N123、L124、またはK125に野生型カルシニューリンヘテロ二量体bの少なくとも1個の変異アミノ酸を、好ましくは位置L124およびK125に二重変異を含むことができる。特定の態様において、位置120のバリンは、セリン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、またはロイシン残基で置き換えることができ;位置123のアスパラギンは、トリプトファン、リジン、フェニルアラニン、アルギニン、ヒスチジン、またはセリンで置き換えることができ;位置124のロイシンは、スレオニン残基で置き換えることができ;位置125のリジンは、アラニン、グルタミン酸、トリプトファンで置き換えることができ、または、ロイシン-アルギニンもしくはイソロイシン-グルタミン酸などの2個の残基を、アミノ酸配列において位置125のリジンの後に付加することができる。本明細書に記載されるアミノ酸位置の対応は、野生型ヒトカルシニューリンヘテロ二量体bポリペプチド(NCBI: ACX34095.1)の形態のアミノ酸の位置に関して頻繁に表現される。
【0078】
別の薬物耐性コード配列は、ヒトアルキルグアニントランスフェラーゼ(hAGT)をコードするO(6)-メチルグアニンメチルトランスフェラーゼ(MGMT - UniProtKB: P16455)である。AGTは、ニトロソ尿素およびテモゾロミド(TMZ)などのアルキル化剤の細胞傷害作用に対する耐性を付与するDNA修復タンパク質である。6-ベンジルグアニン(6-BG)は、ニトロソ尿素毒性を高め、かつTMZの細胞傷害作用を高めるためにこの剤と同時投与される、AGTの阻害物質である。AGTのバリアントをコードするMGMTの数種類の変異体型は、6-BGによる不活性化に対して高度に耐性であるが、DNA損傷を修復するそれらの能力は保持している(Maze, R. et al. (1999) "Retroviral-mediated expression of the P140A, but not P140A/G156A, mutant form of O6-methylguanine DNA methyltransferase protects hematopoietic cells against O6-benzylguanine sensitization to chloroethylnitrosourea treatment" J. Pharmacol. Exp. Ther. 290(3): 1467-74)。特定の態様において、AGT変異体型は、野生型AGT位置P140の変異アミノ酸を含むことができる。好ましい態様において、位置140の前記プロリンは、リジン残基で置き換えられる。
【0079】
別の薬物耐性コード配列は、多剤耐性タンパク質(MDR1)遺伝子であることができる。この遺伝子は、細胞膜を横切る代謝副産物の輸送に関与するP-糖タンパク質(P-GP)として公知の膜糖タンパク質をコードする。P-Gpタンパク質は、数種類の構造的に無関連の化学療法剤に対して広い特異性を提示する。従って、MDR-1をコードする核酸配列(Genebank NP_000918)の発現によって、薬剤耐性を細胞に付与することができる。
【0080】
bleまたはmcrA遺伝子由来のものなどの別の薬物耐性コード配列は、細胞傷害性抗生物質の産生に寄与することができる。免疫細胞におけるble遺伝子またはmcrAの異所性発現は、それぞれの化学療法剤ブレオマイシンおよびマイトマイシンCに曝露された時に選択的な利点をもたらす(Belcourt, M.F. (1999) "Mitomycin resistance in mammalian cells expressing the bacterial mitomycin C resistance protein MCRA". PNAS. 96(18):10489-94)。
【0081】
別の薬物耐性コード配列は、薬物標的の変異バージョンがコードされた遺伝子、例えば、Lorenz M.C. et al. (1995) "TOR Mutations Confer Rapamycin Resistance by Preventing Interaction with FKBP12-Rapamycin" The Journal of Biological Chemistry 270, 27531-27537によって記載されているようなラパマイシンに対する耐性を付与するmTORの変異バリアント(mTOR mut)、または、Lee K.C. et al. (2010) "Lck is a key target of imatinib and dasatinib in T-cell activation", Leukemia, 24: 896-900によって記載されているようなGleevecに対する耐性を付与するLckのある特定の変異バリアント(Lckmut)に由来することができる。
【0082】
上記のように、本方法の遺伝子改変工程は、内在性遺伝子と外来性核酸との間で相同組換えが起こるように、薬物耐性コード配列をコードする配列および内在性遺伝子の一部分を少なくとも含む外来性核酸の細胞中への導入の工程を含むことができる。特定の態様において、前記内在性遺伝子は、相同組換え後に、野生型遺伝子が、薬物に対する耐性を付与する遺伝子の変異体型によって置き換えられるように、野生型「薬物耐性」遺伝子であることができる。
【0083】
インビボでの免疫細胞の残存性の増強
本発明の1つの局面によると、免疫細胞ゲノム遺伝子座中に組み込まれる外来性配列は、免疫細胞の残存性、特に、腫瘍環境におけるインビボ残存性を増強する分子をコードする。
【0084】
「残存性を増強する」とは、特に操作された免疫細胞が患者中に注射された時点で、寿命に関して免疫細胞の生存を延長させることを意味する。例として、改変された細胞の平均生存が、改変されていない細胞のものよりも少なくとも10%、好ましくは20%、より好ましくは30%、さらにより好ましくは50%有意に長いならば、残存性は増強されている。
【0085】
これは、免疫細胞が同種異系である場合に特に関連する。これは、細胞膜でまたは細胞膜を通して免疫抑制性ポリペプチドを異所的に発現する、かつ/または分泌するコード配列を導入することにより局所的免疫防御を創り出すことによって、なされてもよい。そのようなポリペプチドの種々のパネル、特に、免疫チェックポイントのアンタゴニスト、ウイルスエンベロープに由来する免疫抑制性ペプチド、またはNKG2Dリガンドは、同種異系免疫細胞の患者中の残存性および/または移植を増強することができる。
【0086】
1つの態様によると、前記外来性コード配列によってコードされる免疫抑制性ポリペプチドは、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CD152としても公知のCTLA-4、GenBankアクセッション番号AF414120.1)のリガンドである。前記リガンドポリペプチドは、好ましくは、抗CTLA-4免疫グロブリン、例えば、CTLA-4a IgおよびCTLA-4b Igまたはそれらの機能的バリアントである。
【0087】
1つの態様によると、前記外来性コード配列によってコードされる免疫抑制性ポリペプチドは、PD1のアンタゴニスト、例えば、Ig V様ドメイン、Ig C様ドメイン、疎水性膜貫通ドメイン、および30アミノ酸の細胞質尾部からなる290アミノ酸のI型膜貫通タンパク質をコードするPD-L1(他の名称:CD274、プログラム細胞死1リガンド;参照、ヒトポリペプチド配列についてのUniProt Q9NZQ7)である。そのようなPD-L1リガンドの膜結合型は、ネイティブ型(野生型)、または、例として、細胞内ドメインを除去することによるような短縮型、または1個もしくは複数個の変異を伴って、本発明において意味する(Wang S et al., 2003, J Exp Med. 2003; 197(9): 1083-1091)。注目すべきことに、PD1は、本発明によると、PD-L1リガンドの膜結合型であると解釈されない。別の態様によると、前記免疫抑制性ポリペプチドは、分泌型である。そのような組換え分泌型PD-L1(または可溶性PD-L1)は、PD-L1の細胞外ドメインを免疫グロブリンのFc部分に融合させることによって生成されてもよい(Haile ST et al., 2014, Cancer Immunol. Res. 2(7): 610-615;Song MY et al., 2015, Gut. 64(2):260-71)。この組換えPD-L1は、PD-1を中和し、PD-1媒介性T細胞阻害を抑止することができる。PD-L1リガンドは、両方のさらに増強された残存性のために、CTLA4 Igと同時発現させてもよい。
【0088】
別の態様によると、外来性配列は、例としてHIV-1、HIV-2、SIV、MoMuLV、HTLV-I、-II、MPMV、SRV-1、Syncitin 1もしくは2、HERV-K、またはFELVに由来する、ウイルスenv免疫抑制性ドメイン(ISU)を含むポリペプチドをコードする。
【0089】
以下の表1は、本発明内で発現させることができる多様なウイルス由来のISUドメインのバリアントを示す。
【0090】
(表1)多様なウイルス由来のISUドメインバリアント
【0091】
別の態様によると、外来性配列は、gp41などのFPポリペプチドをコードする。以下の表2は、天然起源および人工起源由来の数種類のFPポリペプチドを表す。
【0092】
(表2)天然起源および人工起源由来のFPポリペプチドのアミノ酸配列
【0093】
別の態様によると、外来性配列は、非ヒトMHCホモログ、特にウイルスMHCホモログ、または、Margalit A. et al. (2003) "Chimeric β2 microglobulin/CD3ζ polypeptides expressed in T cells convert MHC class I peptide ligands into T cell activation receptors: a potential tool for specific targeting of pathogenic CD8+ T cells" Int. Immunol. 15 (11): 1379-1387によって記載されているようなキメラβ2mポリペプチドをコードする。
【0094】
1つの態様によると、外来性配列は、NKG2Dリガンドをコードする。サイトメガロウイルスなどのいくつかのウイルスは、NKG2Dリガンドに結合してその表面発現を阻止することができるタンパク質を分泌することによって、NK細胞媒介性免疫監視を回避し、NKG2D経路を干渉するための機構を獲得している(Welte, S.A et al. (2003) "Selective intracellular retention of virally induced NKG2D ligands by the human cytomegalovirus UL16 glycoprotein". Eur. J. Immunol., 33, 194-203)。腫瘍細胞においては、ULBP2、MICB、またはMICAなどのNKG2Dリガンドを分泌することによってNKG2D応答を逃れる、いくつかの機構が進化している(Salih HR, Antropius H, Gieseke F, Lutz SZ, Kanz L, et al. (2003) Functional expression and release of ligands for the activating immunoreceptor NKG2D in leukemia. Blood 102: 1389-1396)。
【0095】
1つの態様によると、外来性配列は、サイトカイン受容体、例えばIL-12受容体をコードする。IL-12は、免疫細胞活性化の周知のアクチベーターである(Curtis J.H. (2008) "IL-12 Produced by Dendritic Cells Augments CD8+ T Cell Activation through the Production of the Chemokines CCL1 and CCL171". The Journal of Immunology. 181 (12): 8576-8584)。
【0096】
1つの態様によると、外来性配列は、阻害性ペプチドまたはタンパク質に向けられた抗体をコードする。前記抗体は、好ましくは、免疫細胞によって可溶型で分泌される。サメおよびラクダ由来のナノボディは、一本鎖抗体として構成されているため、この点において有利である(Muyldermans S. (2013) "Nanobodies: Natural Single-Domain Antibodies" Annual Review of Biochemistry 82: 775-797)。同一物はまた、より容易に、分泌シグナルポリペプチドおよび可溶性親水性ドメインと融合するとも考えられる。
【0097】
細胞の残存性を増強するために上記で開発された様々な局面は、さらに詳述されるように、外来性コード配列が、β2mまたは別のMHC構成要素をコードする内在性遺伝子を破壊することによって導入される場合に、特に好ましい。
【0098】
免疫細胞の治療活性の増強
本方法の1つの局面によると、免疫細胞ゲノム遺伝子座中に組み込まれる外来性配列は、免疫細胞の治療活性を増強する分子をコードする。
【0099】
「治療活性を増強する」とは、本発明に従って操作された免疫細胞、または細胞の集団が、選択されたタイプの標的細胞に対して、操作されていない細胞または細胞の集団よりも攻撃的になることを意味する。前記標的細胞は、概して、好ましくは共通の表面マーカーによって特徴づけられる、定義されたタイプの細胞または細胞の集団に属する。本明細書において、「治療的可能性」は、インビトロ実験を通して測定されるような治療活性を反映する。一般的にはDaudi細胞などの感受性がん細胞株を用いて、細胞溶解または成長低減の測定を行うことにより該細胞に対する免疫細胞の活性がより高いかまたは低いかを評価する。これはまた、免疫細胞の脱顆粒またはケモカインおよびサイトカインの産生のレベルを測定することによっても評価することができる。実験はまた、腫瘍細胞を注射されたマウスにおいて、結果として生じる腫瘍増大をモニタリングすることによって行うこともできる。活性の増強は、これらの実験において発生する細胞の数が、免疫細胞によって10%超、好ましくは20%超、より好ましくは30%超、さらにより好ましくは50%超低減する場合に、有意と考えられる。
【0100】
本発明の1つの局面によると、前記外来性配列は、ケモカインまたはサイトカイン、例えばIL-12をコードする。IL-12は、免疫細胞活性化を促進するとして文献において大々的に言及されているため、このサイトカインを発現することは特に有利である(Colombo M.P. et al. (2002) "Interleukin-12 in anti-tumor immunity and immunotherapy" Cytokine Growth Factor Rev. 13(2):155-68)。
【0101】
本発明の好ましい局面によると、外来性コード配列は、免疫細胞の他の集団、例えばT調節性細胞に対して、該免疫細胞に対するそれらの阻害効果を緩和するように作用する分泌因子をコードするか、または促進する。
【0102】
本発明の1つの局面によると、前記外来性配列は、フォークヘッド/ウィングドヘリックス転写因子3(FoxP3)のポリペプチド阻害物質であり、より好ましくは、FoxP3の細胞貫通ペプチド阻害物質、例えば、P60と呼ばれるものである、調節性T細胞活性の阻害物質をコードする(Casares N. et al. (2010) "A peptide inhibitor of FoxP3 impairs regulatory T cell activity and improves vaccine efficacy in mice." J Immunol 185(9):5150-9)。
【0103】
「調節性T細胞活性の阻害物質」とは、T細胞によって分泌され、T細胞がそれに対して調節性T細胞によって及ぼされる下方制御活性を逃避することを可能にする分子または該分子の前駆体を意味する。概して、そのような調節性T細胞活性の阻害物質は、該細胞においてFoxP3転写活性を低減させる効果を有する。
【0104】
本発明の1つの局面によると、前記外来性配列は、腫瘍関連マクロファージ(TAM)の分泌型阻害物質、例えばCCR2/CCL2中和作用物質をコードする。腫瘍関連マクロファージ(TAM)は、腫瘍微小環境の重要なモジュレーターである。臨床病理学研究により、腫瘍におけるTAMの蓄積は、不良な臨床転帰と相関することが示唆されている。その証拠と一貫して、実験研究および動物研究により、TAMが、腫瘍の発生および進行を促進するのに好都合な微小環境を提供できるという見解が支持されている(Theerawut C. et al. (2014) "Tumor-Associated Macrophages as Major Players in the Tumor Microenvironment" Cancers (Basel) 6(3): 1670-1690)。単球走化性タンパク質1(MCP1 - NCBI NP_002973.1)とも呼ばれるケモカインリガンド2(CCL2)は、マクロファージによって分泌されるCCケモカインファミリーに属し、単球、リンパ球、および好塩基球に対する化学誘引を生じる、小さなサイトカインである。CCR2(C-Cケモカイン受容体2型 - NCBI NP_001116513.2)は、CCL2の受容体である。
【0105】
免疫細胞の特異性および安全性の増強
キメラ抗原受容体(CAR)を発現させることは、腫瘍または感染細胞を処置するために、初代免疫細胞、例えばT細胞およびNK細胞の特異性を指示するまたは改善するための先端技術になってきている。これらの免疫細胞によって発現するCARは、病的細胞の表面の抗原マーカーを特異的に標的とし、これは、該免疫細胞がインビボでこれらの細胞を破壊することをさらに助ける(Sadelain M. et al. "The basic principles of chimeric antigen receptor design" (2013) Cancer Discov. 3(4):388-98)。CARは通常、特異的抗原への結合に応答して免疫細胞を刺激する活性化ドメインを含むように設計されるが(いわゆる正のCAR)、反対の効果を有する阻害性ドメインを含んでもよい(いわゆる負のCAR)(Fedorov, V. D. (2014) "Novel Approaches to Enhance the Specificity and Safety of Engineered T Cells" Cancer Journal 20 (2):160-165)。標的細胞の表面に存在する種々の抗原に応じて細胞免疫特異性を微調整するために、正および負のCARを組み合わせるか、または同時発現させてもよい。
【0106】
CARをコードする遺伝子配列は、概して、上昇した形質導入効率を有するがランダムな位置に組み込まれるレトロウイルスベクターを用いて、細胞ゲノム中に導入される。ここで、本発明によると、キメラ抗原受容体(CAR)の構成要素は、標的指向遺伝子組換えによって、選択された遺伝子座に、より詳細には内在性プロモーターの制御下に導入することができる。
【0107】
1つの局面によると、正のCARをウイルスベクターによって免疫細胞中に導入する一方で、負のCARを、標的指向遺伝子挿入によって導入することができ、および逆もできて、負のCARは、好ましくは、免疫細胞活性化の間だけ活性を有することができる。従って、阻害性(すなわち負の)CARは、保存される必要がある所与の細胞タイプを免疫細胞が攻撃するのを阻止することによって、改善された特異性に寄与する。また本局面によると、前記負のCARは、アポトーシスCARであることができ、これは、該CARが、細胞死を誘導するシグナルを伝達するアポトーシスドメイン、例えばFasL(CD95 - NCBI: NP_000034.1)またはその機能的バリアントを含むことを意味する(Eberstadt M; et al. "NMR structure and mutagenesis of the FADD (Mort1) death-effector domain" (1998) Nature. 392 (6679): 941-5)。
【0108】
従って、本発明に従って挿入される外来性コード配列は、直接、または他の化合物と組み合わせて、または他の化合物を活性化することによって細胞死を誘導する能力を有する因子をコードすることができる。
【0109】
初代免疫細胞の安全性を増強する別のやり方として、外来性コード配列は、薬物または他の外来性物質に対する免疫細胞の感受性を付与する分子をコードすることができる。そのような分子は、シクロホスファミドおよび/またはイソホスファミドなどの薬物に対する免疫細胞の高感受性を付与する、例えばP450ファミリー由来のシトクロム(Preissner S et al. (2010) "SuperCYP: a comprehensive database on Cytochrome P450 enzymes including a tool for analysis of CYP-drug interactions". Nucleic Acids Res 38 (Database issue): D237-43)、例えば、CYP2D6-1(NCBI - NP_000097.3)、CYP2D6-2(NCBI - NP_001020332.2)、CYP2C9()、CYP3A4(NCBI - NP_000762.2)、CYP2C19(NCBI - NP_000760.1)、またはCYP1A2(NCBI - NP_000752.2.)であることができる。
【0110】
本発明のさらなる局面によると、外来性配列は、特にインビボで、潜在的なサイトカイン放出症候群(CRS)の制御を考慮してIL-6またはIL-8のトランスシグナル伝達を低減させるため、その発現のために免疫細胞に導入される。
【0111】
そのような外来性配列は、例として、IL-6もしくはIL-8に向けられた、またはそれらの受容体であるIL-6RもしくはIL-8Rに向けられた抗体をコードすることができる。
【0112】
好ましい局面によると、前記外来性配列は、GP130の可溶性細胞外ドメイン、例えば、SEQ ID NO.61と少なくとも80%の同一性を示すものをコードすることができる。
【0113】
例としてRose-John S. [The Soluble Interleukine Receptor: Advanced Therapeutic Options in Inflammation (2017) Clinical Pharmacology & Therapeutics, 102(4):591-598]によって記載されている、そのようなGP130の可溶性細胞外ドメインを、免疫グロブリンの断片と融合させることができ、例えばsgp130Fc(SEQ ID NO.62)である。前に述べられたように、前記外来性配列を、部位特異的変異誘発によって(すなわち、配列特異的ヌクレアーゼ試薬を用いて)ゲノム中に安定に組み込み、表6、8、または9に列挙されているものなどの、免疫細胞活性化の間に活性を有し、好ましくは、CAR活性化時に上方制御されるまたはCAR依存的である遺伝子座で、内在性プロモーターの転写活性下に置くことができる。
【0114】
より好ましい態様によると、外来性配列は、CAR陽性免疫細胞中、例えば、SEQ ID NO:31などの抗CD22 CAR T細胞ポリヌクレオチド配列を発現する細胞中に導入される。いくつかのより具体的な態様によると、IL-6受容体ファミリーのサイトカイン受容体、例えば前記GP130の可溶性細胞外ドメインと会合し、好ましくは干渉することができるポリペプチドをコードする前記外来性配列が、PD1、CD25、またはCD69遺伝子座に組み込まれる。本発明の通りに、PD1遺伝子座をコードする内在性配列は、好ましくは、前記外来性配列によって破壊される。
【0115】
本発明は、従って、細胞免疫療法においてCRSを処置するまたは低減させるための方法であって、細胞またはその治療用組成物が患者に投与され、該細胞が、GP130の可溶性細胞外ドメイン、sGP130Fc、抗IL-6もしくは抗IL6R抗体、抗IL-8もしくは抗IL8R抗体、またはそれらの任意の融合物を含むポリペプチドを分泌するように遺伝子改変されている、前記方法を提供する。
【0116】
操作された免疫細胞の好ましい遺伝子型の例は、以下である。
‐[CAR]陽性[GP130]陽性
‐[CAR]陽性[GP130]陽性
‐[CAR]陽性[TCR]陰性[GP130]陽性[PD1]陰性
‐[CAR]陽性[TCR]陰性[GP130]陽性[PD1]陰性
‐[CAR]陽性[GP130]陽性[CD25]陰性
‐[CAR]陽性[TCR]陰性[GP130]陽性[CD25]陰性
【0117】
AAVベクターを用いた初代免疫細胞における遺伝子標的指向挿入の効率の改善
本明細書は、内在性プロモーター、特にPD1およびCD25とインフレームでのコード配列の効率的な挿入を行うのに有用である、図に示されるようなドナー鋳型および配列特異的試薬、ならびに、該遺伝子座での該外来性配列の適正な挿入を検出するための手段および配列を提供する。
【0118】
本発明によるドナー鋳型は、概して、エンドヌクレアーゼ試薬が、活性化して、概してNHEJまたは相同組換えによるゲノム中へのそれらの部位特異的挿入を得る時にドナー鋳型を核中に送達するように促す、当技術分野において記載されている様々なベクター中に含まれ得るポリヌクレオチド配列である。
【0119】
具体的には、本発明は、以下の配列のうちの1種類または数種類を含む、PD1遺伝子座でのIL-15(SEQ ID NO.59)の発現のための特異的ドナーポリヌクレオチドを提供する:
‐IL-15をコードする配列、例えば、SEQ ID NO:50と同一性を示すもの;
‐好ましくはポリヌクレオチド配列SEQ ID NO:45およびSEQ ID NO:46を含む、PD1遺伝子座に相同な上流および下流(左および右とも呼ばれる)の配列;
‐任意で、IL-15受容体の可溶型(sIL-15R)をコードする配列、例えば、SEQ ID NO:50と同一性を示すもの;
‐任意で、少なくとも1個の2Aペプチド切断部位、例えば、SEQ ID NO:53(F2A)、SEQ ID NO:54(P2A)、および/またはSEQ ID NO:55(T2A)のうちの1つ。
【0120】
具体的には、本発明は、以下の配列のうちの1種類または数種類を含む、PD1遺伝子座でのIL-12(SEQ ID NO:58)の発現のための特異的ドナーポリヌクレオチドを提供する:
‐IL-12aをコードする配列、例えば、SEQ ID NO:47と同一性を示すもの;
‐好ましくはポリヌクレオチド配列SEQ ID NO:45およびSEQ ID NO:46を含む、PD1遺伝子座に相同な上流および下流(左および右とも呼ばれる)の配列;
‐任意で、IL12bをコードする配列、例えば、SEQ ID NO:48と同一性を示すもの;
‐任意で、少なくとも1個の2Aペプチド切断部位、例えば、SEQ ID NO:53(F2A)、SEQ ID NO:54(P2A)、および/またはSEQ ID NO:55(T2A)のうちの1つ。
【0121】
具体的には、本発明は、以下の配列のうちの1種類または数種類を含む、PD1遺伝子座での可溶性GP130(SEQ ID NO.61を含む)の発現のための特異的ドナーポリヌクレオチドを提供する:
‐可溶性GP130、好ましくはFcに融合した可溶性gp130をコードする配列、例えば、SEQ ID NO:62と同一性を示すもの;
‐好ましくはポリヌクレオチド配列SEQ ID NO:45およびSEQ ID NO:46を含む、PD1遺伝子座に相同な上流および下流(左および右とも呼ばれる)の配列;
‐任意で、少なくとも1個の2Aペプチド切断部位、例えば、SEQ ID NO:53(F2A)、SEQ ID NO:54(P2A)、および/またはSEQ ID NO:55(T2A)のうちの1つ。
【0122】
具体的には、本発明は、以下の配列のうちの1種類または数種類を含む、CD25遺伝子座でのIL-15(SEQ ID NO.59)の発現のための特異的ドナーポリヌクレオチドを提供する:
‐IL-15をコードする配列、例えば、SEQ ID NO:50と同一性を示すもの;
‐好ましくはポリヌクレオチド配列SEQ ID NO:43およびSEQ ID NO:44を含む、CD25遺伝子座に相同な上流および下流(左および右とも呼ばれる)の配列;
‐任意で、IL-15受容体の可溶型(sIL-15R)をコードする配列、例えば、SEQ ID NO:50と同一性を示すもの;
‐任意で、少なくとも1個の2Aペプチド切断部位、例えば、SEQ ID NO:53(F2A)、SEQ ID NO:54(P2A)、および/またはSEQ ID NO:55(T2A)のうちの1つ。
【0123】
具体的には、本発明は、以下の配列のうちの1種類または数種類を含む、CD25遺伝子座でのIL-12(SEQ ID NO:58)の発現のための特異的ドナーポリヌクレオチドを提供する:
‐IL-12aをコードする配列、例えば、SEQ ID NO:47と同一性を示すもの;
‐好ましくはポリヌクレオチド配列SEQ ID NO:43およびSEQ ID NO:44を含む、CD25遺伝子座に相同な上流および下流(左および右とも呼ばれる)の配列;
‐任意で、IL-12bをコードする配列、例えば、SEQ ID NO:48と同一性を示すもの;
‐任意で、少なくとも1個の2Aペプチド切断部位、例えば、SEQ ID NO:53(F2A)、SEQ ID NO:54(P2A)、および/またはSEQ ID NO:55(T2A)のうちの1つ。
【0124】
具体的には、本発明は、以下の配列のうちの1種類または数種類を含む、CD25遺伝子座での可溶性GP130(SEQ ID NO.61を含む)の発現のための特異的ドナーポリヌクレオチドを提供する:
‐可溶性GP130、好ましくはFcに融合した可溶性gp130をコードする配列、例えば、SEQ ID NO:62と同一性を示すもの;
‐好ましくはポリヌクレオチド配列SEQ ID NO:43およびSEQ ID NO:44を含む、CD25遺伝子座に相同な上流および下流(左および右とも呼ばれる)の配列;
‐任意で、少なくとも1個の2Aペプチド切断部位、例えば、SEQ ID NO:53(F2A)、SEQ ID NO:54(P2A)、および/またはSEQ ID NO:55(T2A)のうちの1つ。
【0125】
本明細書における実施例に示されるように、本発明者らは、AAVベクター、特にAAV6ファミリー由来のベクターを用いることによって、ヒト細胞中への遺伝子標的指向挿入の比率を有意に改善した。
【0126】
本発明の1つの広い局面は、従って、ヒト初代免疫細胞における相同組換え事象を増加させるための、より好ましくはmRNA形態で導入される、TALEエンドヌクレアーゼなどの配列特異的エンドヌクレアーゼ試薬の発現と組み合わせた、これらの細胞におけるAAVベクターの形質導入である。
【0127】
本発明の1つの局面によると、配列特異的エンドヌクレアーゼ試薬は、TALEヌクレアーゼなどの該配列特異的エンドヌクレアーゼ試薬をコードするmRNAのトランスフェクション、より好ましくはエレクトロポレーションによって、細胞中に導入することができる。
【0128】
さらにこの広い局面によると、本発明は、より詳細には、少なくとも以下の工程を含む、細胞における内在性ポリヌクレオチド配列中への外来性核酸配列の挿入の方法を提供する:
‐該外来性核酸配列および標的とされる内在性DNA配列に相同な配列を含むAAVベクターを、該細胞中に形質導入する工程、ならびに
‐挿入の遺伝子座で該内在性配列を切断するために、配列特異的エンドヌクレアーゼ試薬の発現を導入する工程。
【0129】
得られた外来性核酸配列の挿入は、より好ましくはその遺伝子座の内在性遺伝子配列に関して「インフレーム」の、遺伝物質の導入、内在性配列の修正または置き換えを結果としてもたらし得る。
【0130】
本発明の別の局面によると、105~107、好ましくは106~107、より好ましくは約5.106のウイルスゲノムが、1細胞あたりに形質導入される。
【0131】
本発明の別の局面によると、相同組換えをさらに助けるために、細胞を、プロテアソーム阻害物質、例えばボルテゾミブで処理することができる。
【0132】
本発明の1つの目的として、本方法において用いられるAAVベクターは、本明細書において列挙されるものの中から選択される1つの遺伝子座で内在性プロモーターの制御下に置かれるように、本明細書において言及されるもののいずれかのようなプロモーターのない外来性コード配列を含むことができる。
【0133】
本発明の1つの目的として、本方法において用いられるAAVベクターは、2Aペプチド切断部位、およびその後の外来性コード配列を形成するcDNA(開始コドンがない)を含むことができる。
【0134】
本発明の1つの目的として、前記AAVベクターは、キメラ抗原受容体、特に、抗CD19 CAR、抗CD22 CAR、抗CD123 CAR、抗CS1 CAR、抗CCL1 CAR、抗HSP70 CAR、抗GD3 CAR、または抗ROR1 CARをコードする外来性配列を含む。
【0135】
本発明は、従って、本明細書に記載される方法を行うために設計された任意のAAVベクター、特に、表4において言及されるT細胞活性化に応答性の内在性遺伝子のいずれかに位置する挿入の遺伝子座に相同な配列を含むベクターを包含する。
【0136】
当技術分野において公知の多くの他のベクター、例えば、プラスミド、エピソーマルベクター、直鎖状DNAマトリックスなどもまた、本発明の教示に従って用いることができる。
【0137】
前に述べられたように、本発明に従って用いられるDNAベクターは、好ましくは、(1)相同組換えによって挿入される外来性コード配列を含む前記外来性核酸、および(2)該挿入を促進する配列特異的エンドヌクレアーゼ試薬をコードする配列を含む。より好ましい局面によると、(1)の前記外来性核酸は、いかなるプロモーター配列も含まず、他方、(2)の配列は、それ自身のプロモーターを有する。さらにより好ましい局面によると、(1)の核酸は、外来性コード配列が挿入される内在性遺伝子がマルチシストロニックになるように、内部リボソーム進入部位(IRES)または「自己切断」2Aペプチド、例えば、T2A、P2A、E2A、またはF2Aを含む。2AペプチドのIRESは、前記外来性コード配列の前または後にあり得る。
【0138】
本発明の好ましいベクターは、本明細書において以前に記載されたか、または実験項および図において示されるようなドナーポリヌクレオチドを含む、AAV6に由来するベクターである。本発明によるベクターの例は、配列SEQ ID NO:37(IL-15をコードする配列のCD25遺伝子座中への組込みのためのマトリックス)、SEQ ID NO:38(IL-15をコードする配列のPD1遺伝子座中への組込みのためのマトリックス)、SEQ ID NO:39(IL-12をコードする配列のCD25遺伝子座中への組込みのためのマトリックス)、およびSEQ ID NO:40(IL-12をコードする配列のPD1遺伝子座中への組込みのためのマトリックス)と同一性を有するポリヌクレオチドを含むか、またはそれからなる。
【0139】
内在性プロモーターの転写制御下での免疫細胞における遺伝子標的指向組込み
本発明は、その主要な局面の1つにおいて、それらの治療的可能性を改善する外来性配列を発現する、免疫細胞の内在性転写活性を利用することである。
【0140】
本発明は、内在性プロモーターの転写活性のプロファイル、および本発明を実施するのに有用なプロモーター遺伝子座の選択に基づく、数種類の態様を提供する。好ましい遺伝子座とは、その転写活性が、特に細胞がCARを与えられている場合にはCAR活性化に応答して(CAR感受性プロモーター)、免疫細胞活性化時に概して高い、遺伝子座である。
【0141】
従って、本発明は、CARをコードする第1の外来性配列をTCR遺伝子座で発現させ、それによってTCR発現を破壊する工程、および、好ましくは以下のいずれかに依存した、内在性遺伝子座の転写活性下で第2の外来性コード配列を発現させる工程によって、同種異系治療用免疫細胞を作製するための方法を提供する:
‐例として細胞増大を促進するために有用である、dynabeadsなどのCD3/CD28活性化;
‐例として標的に対する免疫細胞機能を活性化するために有用である、例えばCD3ζ経路を通したCAR活性化;
‐例として病気の臓器においてインサイチュで細胞を活性化するために有用である、疾患症状の出現もしくは分子マーカーに連結された転写活性;
‐例として造血細胞がそれらの免疫機能を獲得する時に、分化の所与のレベルの細胞に治療特性を付与するために、もしくは、特定の系列へのタンパク質を発現するために有用である(
図1を参照されたい)、細胞分化;または/ならびに
‐細胞の活性およびそれらの増幅を特定の腫瘍状態(低酸素、低糖など)に再度方向づけるため、または、消耗を阻止し、かつ/もしくは活性化を持続させるために有用である、TME(腫瘍微小環境);
‐CAR T細胞活性に関連する有害事象を和らげるために有用である、CRS(サイトカイン放出症候群)。
【0142】
本発明者らは、本発明の通りの標的指向遺伝子組換えを適用するのに特に適切であることが見出されている内在性遺伝子の第1のリスト(表6)を確立した。このリストを作成するために、それらは、数種類のトランスクリプトームマウスデータベース、特に、オボアルブミン抗原に応答したT細胞活性化時の種々の遺伝子の転写レベルの比較を可能にする、Best J.A. et al. (2013) "Transcriptional insights into the CD8(+) T cell response to infection and memory T cell formation" Nat. Immunol.. 14(4):404-12において言及されるImmunological Genome Project Consortium由来のものから来ている。また、非常に少ないデータしかヒトT細胞活性化に関して利用可能ではないため、これらのデータからいくらかの外挿および解析を行い、ヒト遺伝子に関する利用可能な文献を研究することによって、ヒトの状況と比較しなければならなかった。選択された遺伝子座は、特に、CARをコードする配列の挿入と関連性がある。表6の第1の選択に基づいて、遺伝子のその後の選択を、それらの期待される発現プロファイルに基づいて行った(表7~10)。
【0143】
もう一方で、本発明者らは、外来性プロモーターの転写制御下で外来性コード配列を発現する発現カセットを挿入するのに最も適切であると考えられる、主として不活性である転写遺伝子座の選択を特定した。これらの遺伝子座は、特にT細胞活性化の間に、主として転写が不活性であるものとして、「安全港遺伝子座」と呼ばれる。それらは、免疫細胞のゲノム発現を干渉するリスクを最大限低減させることによって、コード配列を組み込むのに有用である。
【0144】
免疫細胞活性化の間に絶え間なく活性を有している内在性プロモーターの制御下での遺伝子標的指向挿入
本態様に関連する内在性遺伝子座の選択を、表7に列挙する。
【0145】
従って、本発明の方法は、好ましくは、CD3G、Rn28s1、Rn18s、Rn7sk、Actg1、β2m、Rpl18a、Pabpc1、Gapdh、Rpl17、Rpl19、Rplp0、Cfl1、およびPfn1から選択される内在性遺伝子由来の、免疫細胞活性化の間に常に活性を有する内在性プロモーターの制御下で遺伝子標的指向挿入を行う工程を提供する。
【0146】
「絶え間なく活性を有している」とは、初代免疫細胞においてこれらのプロモーターについて観察される転写活性が、免疫細胞の活性化時に負の調節によって影響を受けないことを意味する。
【0147】
他所(Acuto, O. (2008) "Tailoring T-cell receptor signals by proximal negative feedback mechanisms". Nature Reviews Immunology 8:699-712)で報告されているように、TCR遺伝子座に存在するプロモーターは、TCR係合時に様々な負のフィードバック機構に供され、従って、本発明の方法の間、絶え間なく活性を有するわけではなく、または上方制御されない可能性がある。本発明は、T細胞活性化の間に発現する外来性コード配列のための可能性のある挿入部位としてTCR遺伝子座を用いることを回避するように、ある程度設計されている。そのため、本発明の1つの局面によると、外来性コード配列の標的指向挿入は、TCRαまたはTCRβ遺伝子座で行われない。
【0148】
絶え間なく活性を有している内在性プロモーターの制御下でそのような遺伝子座に有利に導入され得る外来性コード配列の例は、サイトカイン、ケモカイン受容体、薬物に対する耐性を付与する分子、4-1BRLおよびOX40Lなどの共刺激リガンド、または分泌型抗体をコードするもの、またはこれらの産生を正に調節するものである。
【0149】
免疫細胞活性化に依存するかまたはCAR活性化に依存する、内在性プロモーター下の遺伝子組込み
前に述べられたように、本発明の方法は、免疫細胞活性化時にその転写活性が好ましくは一過性にまたは10日超にわたるかのいずれかで上方制御される内在性プロモーターの制御下で、遺伝子標的指向挿入を行う工程を提供する。
【0150】
「免疫細胞活性化」とは、所与のタイプの免疫細胞について文献において概して記載されており、かつ一般的に確立されている機構の通りの免疫応答の産生を意味する。例として、T細胞に関して、T細胞活性化は、概して、CD69、CD71、およびCD25(またTreg細胞のマーカー)、ならびにHLA-DR(ヒトT細胞活性化のマーカー)を含む様々なタンパク質の産生による細胞表面発現、パーフォリン、グランザイム、およびグラニュリシンの放出(脱顆粒)、または、サイトカインエフェクターIFN-γ、TNF、およびLT-αの産生からなる変化のうちの1つを特徴とする。
【0151】
本発明の好ましい態様によると、内在性遺伝子の転写活性は、特にCARによる活性化に応答して、免疫細胞において上方制御される。CARは、免疫細胞において独立して発現することができる。「独立して発現する」とは、CARが、例として、レンチウイルスベクターなどのレトロウイルスベクターを用いて、または、そのようなCARをコードするキャップメッセンジャーRNAをエレクトロポレーションによりトランスフェクトすることによって導入される外来性発現カセットから、免疫細胞において転写され得ることを意味する。例として参照文献によって記載されているように、免疫細胞中でCARを発現させる多くの方法が、当技術分野において公知である。
【0152】
その転写活性が上方制御される前記内在性遺伝子は、特に、サイトカイン、例えばIL-12およびIL-15、免疫原性ペプチド、または分泌型抗体、例えば、抗IDO1、抗IL10、抗PD1、抗PDL1、抗IL6、または抗PGE2抗体をコードする外来性配列の組込みに適切である。
【0153】
本発明の好ましい態様によると、内在性プロモーターは、CAR活性化に応答性でありかつより好ましくはCAR活性化に依存しているその転写活性について、選択される。
【0154】
本明細書において示されるように、CD69、CD25、およびPD1はそのような遺伝子座であり、特にCAR陽性免疫細胞中への、免疫細胞が活性化される時に発現する外来性コード配列の発現の挿入に特に適切である。
【0155】
本発明は、従って、免疫細胞中でCARを発現させる任意の方法を、その転写活性が該CARと腫瘍抗原との係合に応答性であるまたはそれに依存している遺伝子座に対して外来性コード配列の部位特異的挿入を行う工程と組み合わせる。特に、本方法は、CAR陽性または組換えTCR陽性の免疫細胞中に、PD1、CD25、およびCD69プロモーターから選択される1つのプロモーターの転写制御下にIL-12またはIL-15をコードする外来性配列を導入する工程を含む。
【0156】
特に、CAR陽性細胞は、免疫細胞、好ましくは初代細胞、およびより好ましくは初代T細胞中で、CARをコードする少なくとも1種類の外来性配列、およびその転写活性が該CARに依存している内在性プロモーター、例えば、PD1、CD25、またはCD71の下に置かれた別の外来性配列を同時発現させる工程に従うことによって、得ることができる。
【0157】
「前記CARに依存している」という表現は、通常、細胞表面に存在するCARの数を抗原が超えている、かつ細胞表面に発現したCARの数が細胞あたり10分子よりも多い、好ましくは100分子よりも多い、およびより好ましくは細胞あたり1000分子よりも多い状況において、CARとその同族抗原との係合の結果として前記内在性プロモーターの転写活性が必ず、10%超、好ましくは20%超、より好ましくは50%超、およびさらにより好ましくは80%超、増加することを意味する。
【0158】
本発明は、従って、好ましくはTCR遺伝子座に挿入され、構成的に発現するCAR配列の発現を教示し、他方、別の遺伝子座に組み込まれた別の外来性配列は、該CARのその同族抗原との係合に応答して、またはそれに依存して同時発現する。前記別の遺伝子座は、例として、CD25、PD1、もしくはCD71、またはCAR活性化時に特異的に転写される任意の遺伝子座である。
【0159】
換言すると、本発明は、CARと少なくとも1種類の外来性コード配列の同時発現を提供し、該外来性配列の発現は、その転写活性がCAR活性によって影響を受ける内在性プロモーターの制御下であり、これは、より良好な免疫応答をもたらす操作された免疫細胞を得ることを考慮して行われる。
【0160】
以前に記載されたように、これは、細胞に、特異的にCAR依存的であるそのような遺伝子座のコード領域を標的とする配列特異的ヌクレアーゼ試薬を、該ゲノム領域に相同な配列を含むドナー鋳型と共にトランスフェクトすることによって行うことができる。配列特異的ヌクレアーゼ試薬は、ドナー鋳型が相同組換えまたはNHEJによって組み込まれることを助ける。
【0161】
好ましい態様によると、外来性コード配列は、内在性遺伝子の発現が保存されるように、該内在性遺伝子とインフレームで組み込まれる。これは、例として、本明細書中の実験項の少なくとも1つの実施例におけるCD25およびCD69に関する場合である。
【0162】
好ましい態様によると、外来性配列は、例として本明細書中の実験項におけるPD1での場合のように、1種類の内在性コード配列の発現を、特にこの発現が免疫細胞機能に対して負の効果を有する時に、阻止するように遺伝子の内在性コード配列を破壊する。
【0163】
さらにより好ましい態様によると、内在性遺伝子配列を破壊する外来性コード配列は、その発現が、同様に実験項に示されるように内在性プロモーターに依存してなされるように、内在性プロモーターとインフレームで置かれる。
【0164】
本発明はまた、本特許出願において例証される様々なTALヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列、特に、CD25遺伝子座での部位特異的挿入を可能にするもの(SEQ ID NO:18および19)、ならびにそれらのそれぞれの標的およびRVD配列にも注目する。
【0165】
本発明はまた、配列特異的エンドヌクレアーゼ試薬をコードするポリヌクレオチドと、該試薬によって標的とされる遺伝子座に外来性配列を組み込むように設計されたドナー配列とを含む、免疫細胞用のキットも包含する。そのようなキットの例は、PD1遺伝子座を標的とする低頻度切断エンドヌクレアーゼ(例えば:PD1 TALEN(登録商標))をコードするmRNAと、IL-12をコードする外来性配列を含むAAVベクターとを含むキット、PD1遺伝子座を標的とする低頻度切断エンドヌクレアーゼ(例えば:PD1 TALEN(登録商標))をコードするmRNAと、IL-15をコードする外来性配列を含むAAVベクターとを含むキット、CD25遺伝子座を標的とする低頻度切断エンドヌクレアーゼ(例えば:CD25 TALEN(登録商標))をコードするmRNAと、IL-12をコードする外来性配列を含むAAVベクターとを含むキット、CD25遺伝子座を標的とする低頻度切断エンドヌクレアーゼ(例えば:CD25 TALEN(登録商標))をコードするmRNAと、IL-15をコードする外来性配列を含むAAVベクターとを含むキット、PD1遺伝子座を標的とする低頻度切断エンドヌクレアーゼ(例えば:PD1 TALEN(登録商標))をコードするmRNAと、可溶性gp130をコードする外来性配列を含むAAVベクターとを含むキット、CD25遺伝子座を標的とする低頻度切断エンドヌクレアーゼ(例えば:CD25 TALEN(登録商標))をコードするmRNAと、可溶性gp130をコードする外来性配列を含むAAVベクターとを含むキット、ならびに、表6に列挙される遺伝子を標的とするエンドヌクレアーゼ試薬と、本明細書において言及されるコード配列を導入するためのドナーマトリックスとを含む任意のキットである。
【0166】
本発明の1つの局面によると、内在性遺伝子は、弱い上方制御について選択される。その転写活性が弱く上方制御される前記内在性遺伝子中に導入される外来性コード配列は、有利に、その発現レベルが概して正のCARのものよりも低いままでなければならない、阻害性CARまたはアポトーシスCARの成分であることができる。そのようなCAR発現の組み合わせ、例として、ウイルスベクターで形質導入される1つと本発明に従って導入されるもう1つは、CAR免疫細胞の特異性または安全性を大きく改善することができる。
【0167】
いくつかの内在性プロモーターは、時には免疫細胞活性化時に12時間未満にわたって、一過性に上方制御され、例えば、内在性遺伝子座Spata6、Itga6、Rcbtb2、Cd1d1、St8sia4、Itgae、およびFam214aから選択されるものである(表8)。他の内在性プロモーターは、免疫活性化時に24時間未満にわたって上方制御され、例えば、内在性遺伝子座IL3、IL2、Ccl4、IL21、Gp49a、Nr4a3、Lilrb4、Cd200、Cdkn1a、Gzmc、Nr4a2、Cish、Ccr8、Lad1、およびCrabp2から選択されるものであり(表9)、他のものは、免疫細胞活性化時に24時間超にわたって、より概括的には10日超にわたって上方制御される。例えば、Gzmb、Tbx21、Plek、Chek1、Slamf7、Zbtb32、Tigit、Lag3、Gzma、Wee1、IL12rb2、Eea1、およびDtlから選択されるものである(表9)。
【0168】
代替的に、本発明者らは、免疫細胞活性化時に下方制御されるプロモーターの転写制御下の内在性遺伝子がまた、本発明による方法にとって関心対象であり得ることを見出した。実際に、本発明者らは、抗アポトーシス因子、例えば、Bcl2ファミリー、BclXL、NF-kB、Survivin、または抗FAP(線維芽細胞活性化タンパク質)、例えば、CAR抗FAPの成分をコードする外来性コード配列を、前記遺伝子座に導入できることを思い付いた。免疫細胞活性化時に下方制御されるプロモーターの転写制御下の前記内在性遺伝子は、より詳細には、Slc6a19、Cd55、Xkrx、Mturn、H2-Ob、Cnr2、Itgae、Raver2、Zbtb20、Arrb1、Abca1、Tet1、Slc16a5、およびAmpd3から選択することができる(表10)。
【0169】
腫瘍微小環境(TME)状態で活性化される内在性プロモーター下での遺伝子組込み
本発明の1つの局面は、より詳細には、腫瘍微小環境(TME)状態において免疫細胞消耗を阻止する方法に関わる。免疫細胞は、多くの場合、腫瘍耐性を助ける腫瘍の微小環境において見出される栄養素枯渇または分子シグナルに応答して消耗する。本方法は、アルギニン、システイン、トリプトファン、および酸素の欠乏、ならびに細胞外アシドーシス(乳酸蓄積)の下で上方制御される内在性プロモーターの制御下に外来性コード配列を組み込むことによって、免疫細胞を操作する工程を含む。
【0170】
そのような外来性配列は、キメラ抗原受容体、インターロイキン、または、免疫細胞の機能もしくは活性化を支え、かつ/または治療的利点を付与するための本明細書中の他所で示される任意のポリペプチドをコードしてもよい。
【0171】
本発明者らは、数多くの消耗した腫瘍浸潤リンパ球(TIL)において上方制御されることが見出されている多数の遺伝子座を列挙し、それらは表12および13に列挙されている、本発明は、腫瘍微小環境において免疫細胞、特にT細胞の消耗を阻止するために、これらの好ましい遺伝子座に外来性コード配列を組み込む工程を提供する。
【0172】
例として、CARをコードする外来性配列を、腫瘍微小環境によって活性化される内在性遺伝子、例えば、転写因子の低酸素誘導性因子であるHIF1a、または芳香族炭化水素受容体(AhR)のプロモーターの転写制御下に置くことができる。これらの遺伝子は、腫瘍の閉じた環境において低酸素および生体異物によってそれぞれ誘導されるセンサーである。
【0173】
本発明は、従って、外来性コード配列、およびより概括的には遺伝的属性/回路を、腫瘍微小環境(TME)によって影響を受ける内在性T細胞プロモーターの制御下に組み込むことによって、CAR T細胞療法の治療転帰を改善するために有用である。
【0174】
本発明に準じて、ある特定の腫瘍微小環境においてCAR T細胞の抗腫瘍活性を改善するために、内在性遺伝子の上方制御を「乗っ取って」、関連性のある外来性コード配列を再発現させることができる。
【0175】
造血幹細胞(HSC)における遺伝子を標的とする挿入および発現
本発明の1つの局面は、より詳細には、造血幹細胞(HSC)中への導入遺伝子の挿入に関わる。
【0176】
造血幹細胞(HSC)は、多能性の自己複製前駆細胞であり、それからすべての分化した血液細胞タイプが、血球新生のプロセス中に生じる。これらの細胞には、免疫系のリンパ球、顆粒球、およびマクロファージ、ならびに循環赤血球および血小板が含まれる。古典的には、HSCは、2種類の系列が制限された、リンパ系および骨髄-赤血球系の少能性(oligopotent)前駆細胞に分化すると考えられている。HSCの自己複製および分化を制御する機構は、多様なセットのサイトカイン、ケモカイン、受容体、および細胞内シグナル伝達分子によって影響を受けると考えられている。HSCの分化は、部分的に、細胞内シグナル伝達経路を活性化する、コロニー刺激因子(CSF)およびインターロイキン(IL)を含む成長因子およびサイトカインによって調節される。下記で示される因子は、HSCの多能性、増殖、および分化系列決定に影響を及ぼすことが公知である。HSCおよびそれらの分化した子孫は、造血幹細胞中の特異的な細胞表面系列マーカー、例えば、分化抗原群(cluster of differentiation)(CD)タンパク質およびサイトカイン受容体の発現によって特定することができる。
【0177】
HSCを用いる遺伝子治療は、免疫疾患を含む造血系の疾患を処置する莫大な可能性を有する。このアプローチにおいては、HSCを患者から収集して、レトロウイルスベクターを組み込むことを用いてエクスビボで遺伝子改変し、次いで、患者中に注入する。現在のところ、レトロウイルスベクターが、HSC遺伝子治療にとって唯一の有効な遺伝子送達システムである。ベクターを組み込むことを用いたHSCへの遺伝子送達は、それによって、HSC由来の成熟造血細胞への効率的な送達を可能にする。しかし、患者中に注入される遺伝子改変細胞は、ポリクローナルな集団であり、そこでは、様々な細胞が、様々な染色体位置に組み込まれたベクタープロウイルスを有し、これは、多くの有害な変異を結果としてもたらし得、これらの変異のいくつかの増殖性/生存性の利点のために増幅される可能性がある(Powers and Trobridge (2013) "Identification of Hematopoietic Stem Cell Engraftment Genes in Gene Therapy Studies" J Stem Cell Res Ther S3:004. doi:10.4172/2157-7633.S3-00)。
【0178】
HSCは、一般的に、動員後の末梢血から採集される(患者は、組換えヒト顆粒球-コロニー刺激因子(G-CSF)を受ける)。患者の末梢血を収集し、CD34+マーカーを用いてHSCを濃縮する。HSCを、次いでエクスビボで培養し、ウイルスベクターに曝露する。エクスビボの培養期間は、1から4日まで変動する。遺伝子改変HSCの注入の前に、移植効率の増強を助けるために、患者を化学療法剤または放射線で処置してもよい。遺伝子改変HSCは、患者の静脈内に再注入される。細胞は、最終的に洞様血管および血管周囲組織に常在する前に、骨髄中へ遊走する。ホーミングおよび血球新生は両方とも、移植の肝要な局面である。ホーミングを通して幹細胞ニッチに到達した細胞は、各々の血液系列由来の成熟した骨髄系細胞およびリンパ系細胞を産生し始めると考えられる。血球新生は、患者の成熟血液細胞の終生の世代にわたる自己複製が可能である、長期HSCの作用、特に、リンパ系共通前駆細胞、例えば、感染細胞および悪性細胞を排除するための鍵となる免疫細胞であるT細胞およびNK細胞の産生を通して続く。
【0179】
本発明は、外来性コード配列を、内在性プロモーター、特に、特定の造血系列の細胞中で、または特定の分化段階、好ましくは分化の後期で特異的に活性化される遺伝子の内在性プロモーターの制御下に導入するために、HSCにおいて遺伝子標的指向挿入を行うことを提供する。HSCは、前の段落において言及されたようなエクスビボ処置の間に、ポリヌクレオチドベクター(ドナー鋳型)、例えばAAVベクターで形質導入することができ、他方、配列特異的ヌクレアーゼ試薬は、選択された遺伝子座でコード配列の挿入を促進するために発現する。結果として生じた操作されたHSCを、次いで、前記外来性コード配列を含むであろう操作された免疫細胞の長期インビボ産生のために、その必要がある患者中に移植することができる。選択された内在性プロモーターの活性に応じて、コード配列は、ある特定の系列において、またはインビボでの免疫細胞の局所的環境に応答して選択的に発現することになり、それによって養子免疫療法を提供する。
【0180】
本発明の1つの好ましい局面によると、外来性コード配列は、その転写活性がリンパ系共通前駆細胞において特異的に誘導される遺伝子、例えば、CD34、CD43、Flt-3/Flk-2、IL-7 Rα/CD127、およびネプリライシン(Neprilysin)/CD10のプロモーターの制御下に置かれる。
【0181】
より好ましくは、外来性コード配列は、その転写活性がNK細胞において特異的に誘導される遺伝子、例えば、CD161、CD229/SLAMF3、CD96、DNAM-1/CD226、FcγRII/CD32、FcγRII/RIII(CD32/CD16)、FcγRIII(CD16)、IL-2 Rβ、インテグリンα2/CD49b、KIR/CD158、NCAM-1/CD56、NKG2A/CD159a、NKG2C/CD159c、NKG2D/CD314、NKp30/NCR3、NKp44/NCR2、NKp46/NCR1、NKp80/KLRF1、Siglec-7/CD328、およびTIGIT、またはT細胞において誘導される遺伝子、例えば、CCR7、CD2、CD3、CD4、CD8、CD28、CD45、CD96、CD229/SLAMF3、DNAM-1/CD226、CD25/IL-2 Rα、L-セレクチン/CD62L、およびTIGITのプロモーターの制御下に置かれる。
【0182】
本発明は、好ましい局面として、CARまたはその構成要素をコードする外来性配列の、好ましくは、HSCにおいて発現していない遺伝子、より好ましくは該HSCによって産生される造血細胞においてのみ発現する遺伝子、およびさらにより好ましくはT細胞またはNK細胞においてのみ発現する遺伝子のプロモーターの転写制御下での、HSC中への導入を含む。
【0183】
胸腺障壁を越えるためのHSCにおける条件的CAR発現
本発明の特定の局面は、外来性コード配列、特にCARまたはその構成要素を発現する造血系免疫細胞、例えばT細胞またはNK細胞の、上記の操作されたHSCによるインビボ産生に関わる。
【0184】
例として、操作されたHSCによる造血系CAR陽性細胞の産生の1つの主要な障壁は、免疫系自体による、特に胸腺によるCAR陽性細胞の拒絶である。
【0185】
血液-胸腺障壁は、循環系と胸腺との間の物質の交換を調節し、未熟なT細胞が発生するための隔離された環境を提供する。障壁はまた、未熟なT細胞が外来抗原と接触することを阻止する(この段階での抗原との接触は、T細胞がアポトーシスによって死ぬことを引き起こすであろうため)。
【0186】
本発明によって提供される1つの解決法は、CAR構成要素をコードする配列を、HSCにおいて、胸腺障壁を通過する時に造血細胞中で有意には転写されないプロモーターの転写調節下に置くことである。胸腺において低減しているかまたは有意ではない転写活性を有する、造血細胞中でのCARの条件的発現を提供する遺伝子の1つの例は、LCK(Uniprot: P06239)である。
【0187】
本発明の好ましい局面によると、CARまたはその構成要素をコードする外来性配列は、T細胞またはNK細胞において、好ましくはこれらのタイプの細胞のみにおいて特異的に発現しているとして記載されている遺伝子の転写制御下で、HSC中に導入される。
【0188】
本発明は、それによって、選択された造血系列において排他的に発現する外来性コード配列を含むHSCを産生する方法であって、該コード配列が、好ましくは、免疫系を刺激するためにCARのまたは抗原の少なくとも1つの構成要素をコードする、前記方法を提供する。
【0189】
より広くには、本発明は、前記HSCによって産生される造血細胞において選択的に発現する外来性コード配列の遺伝子標的指向挿入によって、HSCを操作する方法を提供する。好ましい態様として、前記操作されたHSCによって産生される前記造血細胞は、選択された環境因子またはそれらの治療的可能性を改善するためのインビボ刺激に応答して、前記外来性コード配列を発現する。
【0190】
免疫細胞における標的指向配列挿入と内在性ゲノム配列の不活性化との組み合わせ
本発明の1つの特定の焦点は、ある遺伝子座での初代免疫細胞における遺伝子不活性化を、その発現が該操作された細胞の治療的可能性を改善させる、外来性コード配列の該遺伝子座での組込みによって行うことである。本発明に従って挿入することができる関連性のある外来性コード配列の例は、細胞の治療的可能性に対するそれらの正の効果と関連づけて上記で示されている。本明細書の下記には、好ましくは遺伝子標的指向挿入によって標的とされる内在性遺伝子、およびその不活性化と関連する利点が示される。
【0191】
本発明の好ましい局面によると、コード配列の挿入は、同種異系細胞のレシピエント患者中への導入時に宿主対移植片病(GVHD)反応または免疫拒絶を低減させるために、自己および非自己の認識に関与する遺伝子の発現を低減させるまたは阻止する効果を有する。例として、本方法において用いられる配列特異的試薬のうちの1種類は、初代T細胞におけるTCR、例えば、TCR-αまたはTCR-βをコードする遺伝子の発現を低減させるまたは阻止することができる。
【0192】
別の好ましい局面として、1つの遺伝子編集工程は、β2mタンパク質、および/または、C2TA(Uniprot P33076)などのその調節に関与する別のタンパク質、もしくはHLAタンパク質などのMHC認識に関与する別のタンパク質の発現を低減させるかまたは阻止することである。これにより、操作された免疫細胞が、患者中に注入された時にアロ反応性が低くなることが可能になる。
【0193】
「同種異系治療用途」とは、細胞が、異なるハプロタイプを有する患者中に注入されることを考慮したドナーを起源とすることを意味する。実際に、本発明は、宿主-移植片相互作用および認識に関与する種々の遺伝子座において遺伝子編集されることができる初代細胞を得るための、効率的な方法を提供する。
【0194】
本明細書で後に詳述されるように、操作された初代細胞の活性、治療活性の残存性を改善することを考慮して、他の遺伝子座がまた編集されてもよい。
【0195】
チェックポイント受容体および免疫細胞阻害経路の不活性化
本発明の好ましい局面によると、挿入される外来性コード配列は、免疫細胞阻害経路、特に文献において「免疫チェックポイント」と呼ばれているものに関与するタンパク質の発現を低減させるまたは阻止する効果を有する(Pardoll, D.M. (2012) The blockade of immune checkpoints in cancer immunotherapy, Nature Reviews Cancer, 12:252-264)。本発明の意味において、「免疫細胞阻害経路」とは、悪性細胞または感染細胞に対するリンパ球の細胞傷害活性の低減をもたらす、免疫細胞における任意の遺伝子発現を意味する。これは、例として、T細胞に対するTregの活性(T細胞活性を穏やかにする)を駆動することが公知である、FOXP3の発現に関与する遺伝子であることができる。
【0196】
「免疫チェックポイント」とは、免疫細胞の活性化のシグナルを上向きにする(共刺激分子)かまたはそのシグナルを下向きにするかいずれかの、免疫系における分子である。本発明の通りに、免疫チェックポイントとは、より詳細には、抗原に対するT細胞応答(T細胞受容体(TCR)によって認識されるペプチド-主要組織適合複合体(MHC)分子複合体によって媒介される)を調節する、T細胞と抗原提示細胞(APC)との間のリガンド-受容体相互作用に関与する表面タンパク質を称する。これらの相互作用は、リンパ節において(主要なAPCが樹状細胞である場合)、または末梢組織もしくは腫瘍において(エフェクター応答が調節される場合)、T細胞応答の開始時に生じ得る。共刺激受容体および阻害性受容体の両方に結合する膜結合型リガンドの1つの重要なファミリーは、B7ファミリーである。B7ファミリーメンバーおよびそれらの公知のリガンドのすべては、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する。より最近特定されたB7ファミリーメンバーに対する受容体の多くは、まだ特定されていない。同族TNF受容体ファミリー分子に結合する腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーメンバーは、調節性リガンド-受容体ペアの第2のファミリーに相当する。これらの受容体は主に、それらの同族リガンドによって係合された時に共刺激シグナルを送達する。T細胞の活性化を調節するシグナルの別の主要なカテゴリーは、微小環境における可溶性サイトカインから来ている。他の場合では、活性化T細胞は、APC上の同族受容体と係合するリガンド、例えばCD40Lを上方制御する。A2aR、アデノシンA2a受容体;B7RP1、B7関連タンパク質1;BTLA、BおよびTリンパ球 アテニュエーター;GAL9、ガレクチン9;HVEM、ヘルペスウイルス侵入メディエーター;ICOS、誘導性T細胞共刺激因子;IL、インターロイキン;KIR、キラー細胞免疫グロブリン様受容体;LAG3、リンパ球活性化遺伝子3;PD1、プログラム細胞死タンパク質1;PDL、PD1リガンド;TGFβ、トランスフォーミング成長因子-β;TIM3、T細胞膜タンパク質 3。
【0197】
その発現が、本発明による操作された免疫細胞において活性化を上向きにするように低減され得るかまたは抑制され得る、さらなる内在性遺伝子の例を、表3に列挙する。
【0198】
例として、挿入される外来性コード配列は、PD1(Uniprot Q15116)、CTLA4(Uniprot P16410)、PPP2CA(Uniprot P67775)、PPP2CB(Uniprot P62714)、PTPN6(Uniprot P29350)、PTPN22(Uniprot Q9Y2R2)、LAG3(Uniprot P18627)、HAVCR2(Uniprot Q8TDQ0)、BTLA(Uniprot Q7Z6A9)、CD160(Uniprot O95971)、TIGIT(Uniprot Q495A1)、CD96(Uniprot P40200)、CRTAM(Uniprot O95727)、LAIR1(Uniprot Q6GTX8)、SIGLEC7(Uniprot Q9Y286)、SIGLEC9(Uniprot Q9Y336)、CD244(Uniprot Q9BZW8)、TNFRSF10B(Uniprot O14763)、TNFRSF10A(Uniprot O00220)、CASP8(Uniprot Q14790)、CASP10(Uniprot Q92851)、CASP3(Uniprot P42574)、CASP6(Uniprot P55212)、CASP7(Uniprot P55210)、FADD(Uniprot Q13158)、FAS(Uniprot P25445)、TGFBRII(Uniprot P37173)、TGFRBRI(Uniprot Q15582)、SMAD2(Uniprot Q15796)、SMAD3(Uniprot P84022)、SMAD4(Uniprot Q13485)、SMAD10(Uniprot B7ZSB5)、SKI(Uniprot P12755)、SKIL(Uniprot P12757)、TGIF1(Uniprot Q15583)、IL10RA(Uniprot Q13651)、IL10RB(Uniprot Q08334)、HMOX2(Uniprot P30519)、IL6R(Uniprot P08887)、IL6ST(Uniprot P40189)、EIF2AK4(Uniprot Q9P2K8)、CSK(Uniprot P41240)、PAG1(Uniprot Q9NWQ8)、SIT1(Uniprot Q9Y3P8)、FOXP3(Uniprot Q9BZS1)、PRDM1(Uniprot Q60636)、BATF(Uniprot Q16520)、GUCY1A2(Uniprot P33402)、GUCY1A3(Uniprot Q02108)、GUCY1B2(Uniprot Q8BXH3)、およびGUCY1B3(Uniprot Q02153)から選択される少なくとも1種類のタンパク質の、操作された免疫細胞による発現を低減させるまたは阻止する効果を有することができる。上記のタンパク質をコードする遺伝子に導入される遺伝子編集は、好ましくは、CAR T細胞におけるTCRの不活性化と組み合わされる。
【0199】
非内在性の免疫抑制性ポリペプチド、例えばPD-L1リガンドおよび/またはCTLA-4 Igの発現と組み合わせた、PD1および/またはCTLA4の不活性化が優先される(表1および2のペプチドも参照されたい)。
【0200】
【0201】
抑制性サイトカイン/代謝産物の阻害
本発明の別の局面によると、挿入される外来性コード配列は、抑制性サイトカインまたは代謝産物またはそれらの受容体、特に、TGFβ(Uniprot:P01137)、TGFbR(Uniprot:P37173)、IL10(Uniprot:P22301)、IL10R(Uniprot: Q13651および/またはQ08334)、A2aR(Uniprot: P29274)、GCN2(Uniprot: P15442)、ならびにPRDM1(Uniprot: O75626)をコードするまたは正に調節する遺伝子の発現を低減させるまたは阻止する効果を有する。
【0202】
IL-2、IL-12、またはIL-15をコードする配列が、上記の内在性遺伝子のうちの少なくとも1種類の配列に置き換わる、操作された免疫細胞が優先される。
【0203】
化学療法薬に対する耐性の誘導
本発明の別の局面によると、挿入される外来性コード配列は、がんまたは感染症のための標準治療の処置において用いられる化合物、例えば、化学療法において一般的に用いられる薬物であるプリンヌクレオチド類似体(PNA)または6-メルカプトプリン(6MP)および6チオグアニン(6TG)に対する免疫細胞の感受性を担う遺伝子の発現を、低減させるまたは阻止する効果を有する。そのような化合物の作用の様式に関与する遺伝子(「薬物感作遺伝子」と呼ばれる)を低減させるかまたは不活性化することは、それらに対する免疫細胞の耐性を改善する。
【0204】
薬物感作遺伝子の例は、クロロファラビン(clorofarabine)およびフルダラビンなどのPNAの活性に関するDCK(Uniprot P27707)、6MPおよび6TGなどのプリン抗代謝薬の活性に関するHPRT(Uniprot P00492)、ならびに、抗葉酸薬、特にメトトレキサートの活性に関するGGH(Uniprot Q92820)をコードするものである。
【0205】
これにより、細胞を、従来の抗がん化学療法の後に、または組み合わせて用いることが可能になる。
【0206】
免疫抑制処置に対する耐性
本発明の別の局面によると、挿入される外来性コード配列は、薬物標的である受容体またはタンパク質の発現を低減させるまたは阻止する効果を有し、細胞を免疫枯渇薬物処置に対して耐性にする。そのような標的は、操作された免疫細胞を、グルココルチコイド、または、多くのがん処置においてCD52陽性免疫細胞を枯渇させるために用いられるアレムツズマブなどの抗体を用いた免疫枯渇処置に対して耐性にする、グルココルチコイド受容体または抗原であることができる。
【0207】
また、本発明の方法は、CD52(Uniprot P31358)および/またはGR(NR3C1とも呼ばれるグルココルチコイド受容体‐Uniprot P04150)をコードするまたはその発現を調節する内在性遺伝子における、遺伝子標的指向挿入を含むことができる。
【0208】
CAR陽性免疫細胞の活性および生存の改善
本発明の別の局面によると、挿入される外来性コード配列は、BCMA、CS1、およびCD38などの表面抗原の発現を低減させるまたは阻止する効果を有することができ、ここで、そのような抗原は、免疫細胞によって発現するCARによって標的とされるものである。
【0209】
本態様は、感染細胞または悪性細胞の表面に存在するが、免疫細胞自体によってもある程度発現している抗原を標的とするCARの問題を解決することができる。
【0210】
好ましい態様によると、CARまたはその成分のうちの1つをコードする外来性配列は、免疫細胞の自己破壊を回避するために、該CARによって標的とされる抗原をコードする遺伝子中に組み込まれる。
【0211】
操作された免疫細胞および免疫細胞の集団
本発明はまた、単離された形態の下でまたは細胞の集団の一部として、以前に記載された方法のうちの1つに従って取得可能である、様々な操作された免疫細胞にも注目する。
【0212】
本発明の好ましい局面によると、操作された細胞は、初代免疫細胞、例えばNK細胞またはT細胞であり、これは、概して、様々なタイプの細胞を含み得る細胞の集団の一部である。概して、患者またはドナーに由来する集団は、PBMC(末梢血単核細胞)から白血球搬出によって単離される。
【0213】
本発明の好ましい局面によると、前記集団に含まれる50%超の免疫細胞は、TCR陰性T細胞である。本発明のより好ましい局面によると、前記集団に含まれる50%超の免疫細胞は、CAR陽性T細胞である。
【0214】
本発明は、それぞれかつ独立して上述されている、様々な外来性コード配列と遺伝子不活性化との任意の組み合わせを含む免疫細胞を包含する。これらの組み合わせの中で、免疫細胞活性化の間に絶え間なくかつ好ましくは該活性化から独立して活性を有している内在性プロモーターの転写調節下でのCARの発現と、免疫細胞活性化の間に上方制御されるプロモーターの転写制御下での、サイトカイン、例えば、IL-2、IL-12、またはIL-15をコードする外来性配列の発現とを組み合わせるものが特に好ましい。
【0215】
別の好ましい組み合わせは、CARまたはその成分のうちの1つをコードする外来性配列の、低酸素誘導性因子1遺伝子プロモーター(Uniprot: Q16665)の転写制御下での挿入である。
【0216】
本発明はまた、感染症またはがんの処置のための以前に記載されたような操作された初代免疫細胞または免疫細胞集団を含む薬学的組成物、および、以下を含む、その必要がある患者を処置するための方法に注目する:
以前に記載されたような本発明の方法に従って、操作された初代免疫細胞の集団を調製する工程;
任意で、該操作された初代免疫細胞を精製または選別する工程;
該細胞の該患者中への注入時または注入後に、該操作された初代免疫細胞の集団を活性化する工程。
【0217】
T細胞の活性化および増大
遺伝子改変の前であろうと後であろうと、本発明による免疫細胞を、たとえそれらが抗原結合機構から独立して活性化または増殖することができるとしても、活性化または増大させることができる。T細胞は、特に、例えば、米国特許第6,352,694号;第6,534,055号;第6,905,680号;第6,692,964号;第5,858,358号;第6,887,466号;第6,905,681号;第7,144,575号;第7,067,318号;第7,172,869号;第7,232,566号;第7,175,843号;第5,883,223号;第6,905,874号;第6,797,514号;第6,867,041号;および米国特許出願公開第20060121005号に記載されているような方法を用いて活性化および増大させることができる。T細胞は、インビトロまたはインビボで増大させることができる。T細胞は、概して、T細胞用の活性化シグナルを創り出すための、T細胞の表面上のCD3 TCR複合体および共刺激分子を刺激する作用物質との接触によって増大させる。例えば、カルシウムイオノフォアA23187、ホルボール12-ミリスタート13-アセタート(PMA)、またはフィトヘマグルチニン(PHA)のような分裂促進性レクチンなどの化学物質を用いて、T細胞用の活性化シグナルを創り出すことができる。
【0218】
非限定的な例として、T細胞集団を、例えば、抗CD3抗体、もしくはその抗原結合断片、もしくは表面上に固定化された抗CD2抗体との接触によって、または、カルシウムイオノフォアと組み合わせたタンパク質キナーゼCアクチベーター(例えば、ブリオスタチン)との接触によって、インビトロで刺激してもよい。T細胞の表面上のアクセサリー分子の共刺激のために、アクセサリー分子に結合するリガンドが用いられる。例えば、T細胞の集団を、T細胞の増殖を刺激するのに適切な条件下で、抗CD3抗体および抗CD28抗体と接触させることができる。T細胞培養に適切な条件は、血清(例えば、胎児ウシまたはヒト血清)、インターロイキン-2(IL-2)、インスリン、IFN-g、1L-4、1L-7、GM-CSF、-10、-2、1L-15、TGFp、およびTNF-、または当業者に公知の細胞の成長のための任意の他の添加物を含む、増殖および生存力のために必要な因子を含有し得る適切な培地(例えば、最小必須培地またはRPMI培地1640、またはX-vivo 5(Lonza))を含む。細胞の成長のための他の添加物は、界面活性剤、plasmanate、ならびに、N-アセチルシステインおよび2-メルカプトエタノールなどの還元剤を含むが、それらに限定されない。培地は、RPMI 1640、A1M-V、DMEM、MEM、a-MEM、F-12、X-Vivo 1、およびX-Vivo 20、Optimizerを含むことができ、添加されたアミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、およびビタミンを伴い、無血清であるか、または、適切な量の血清(もしくは血漿)もしくは定義されたセットのホルモン、ならびに/もしくはT細胞の成長および増大に十分な量のサイトカインが補給されているかのいずれかである。抗生物質、例えば、ペニシリンおよびストレプトマイシンは、実験培養においてのみ含まれ、対象中に注入されることになる細胞の培養には含まれない。標的細胞は、成長を支持するのに必要な条件、例えば、適切な温度(例えば、37℃)および大気(例えば、空気+5% CO2)の下で維持される。変動した刺激時間に曝露されたT細胞は、様々な特徴を呈し得る。
【0219】
別の特定の態様において、前記細胞は、組織または細胞と共培養することによって増大させることができる。前記細胞はまた、例えば、該細胞を対象中に投与した後で対象の血液において、インビボで増大させることもできる。
【0220】
治療用組成物および適用
上記の本発明の方法により、操作された初代免疫細胞を、それらが特にその細胞傷害活性に関してその完全な免疫治療的可能性を保つように、約15~30日、好ましくは15~20日の間、および最も好ましくは18~20日の間の限定された時間枠内で作製することが可能になる。
【0221】
これらの細胞は、好ましくは単一のドナーまたは患者を起源とする細胞の集団を形成する。これらの細胞の集団は、最高の製造実践要件を順守するために閉じた培養レシピエントの下で増大させることができ、患者中への注入の前に凍結することができ、それによって「既製の」または「すぐに使える」治療用組成物を提供する。
【0222】
本発明の通りに、同じ白血球搬出を起源とする有意な数の細胞を得ることができ、これは、患者を処置するのに十分な用量を得るために重要である。種々のドナーを起源とする細胞の集団の間でバリエーションが観察され得るが、白血球搬出によって調達される免疫細胞の数は、概して、約108~1010細胞のPBMCである。PBMCは、数種類のタイプの細胞:顆粒球、単球、およびリンパ球を含み、その中で30~60%がT細胞であり、これは概して、1人のドナー由来の108~109個の初代T細胞に相当する。本発明の方法は、概して最後には、概括的には約108個よりも多いT細胞、より概括的には約109個よりも多いT細胞、さらにより概括的には約1010個よりも多いT細胞、および通常は1011個よりも多いT細胞に達する、操作された細胞の集団になる。
【0223】
本発明は、従って、より詳細には、治療上有効な初代免疫細胞の集団であって、該集団における少なくとも30%、好ましくは50%、より好ましくは80%の細胞が、本明細書に記載される方法のいずれか1つに従って改変されている、前記集団に注目する。前記治療上有効な初代免疫細胞の集団は、本発明の通りに、少なくとも1種類の外来性遺伝子配列を、表6に列挙される遺伝子のうちの少なくとも1種類由来の内在性プロモーターの転写調節下に組み込んでいる免疫細胞を含む。
【0224】
そのような組成物または細胞の集団は、そのため、その必要がある患者において、薬剤として;特にがんを処置するため、特にリンパ腫の処置のために用いられ得るが、固形腫瘍、例えば、黒色腫、神経芽腫、神経膠腫、または癌腫、例えば、肺、乳、結腸、前立腺、もしくは卵巣の腫瘍のためにも用いられ得る。
【0225】
本発明は、より詳細には、単一のドナーを起源とする初代TCR陰性T細胞の集団であって、該集団における少なくとも20%、好ましくは30%、より好ましくは50%の細胞が、少なくとも2種類の、好ましくは3種類の異なる遺伝子座において配列特異的試薬を用いて改変されている、前記集団に注目する。
【0226】
別の局面において、本発明は、その必要がある患者を処置するための方法であって、以下の工程のうちの少なくとも1つを含む、前記方法に依拠する:
(a)患者の腫瘍生検の表面に存在する特異的抗原マーカーを決定する工程;
(b)該特異的抗原マーカーに向けられたCARを発現する、以前に記載された本発明の方法のうちの1つによって操作された、操作された初代免疫細胞の集団を提供する工程;
(c)操作された初代免疫細胞の該操作された集団を、該患者に投与する工程。
【0227】
概して、該細胞の集団は、主に、CD4およびCD8陽性免疫細胞、例えばT細胞を含み、これらは、堅牢なインビボT細胞増大を受けることができ、インビトロおよびインビボで長期の時間にわたって残存することができる。
【0228】
本発明による操作された初代免疫細胞を含む処置は、寛解的、治癒的、または予防的であることができる。これは、自己免疫療法の一部、または同種異系免疫療法処置の一部のいずれかであってもよい。自己とは、患者を処置するために用いられる細胞、細胞株、または細胞の集団が、該患者またはヒト白血球抗原(HLA)適合性ドナーを起源とすることを意味する。同種異系とは、患者を処置するために用いられる細胞または細胞の集団が、該患者ではなくドナーを起源とすることを意味する。
【0229】
別の態様において、本発明による前記単離された細胞または該単離された細胞に由来する細胞株を、液性腫瘍、および好ましくはT細胞急性リンパ芽球性白血病の処置のために用いることができる。
【0230】
成人の腫瘍/がんおよび小児の腫瘍/がんが、同様に含まれる。
【0231】
本発明による操作された免疫細胞での処置は、抗体療法、化学療法、サイトカイン療法、樹状細胞療法、遺伝子治療、ホルモン療法、レーザー光治療、および放射線療法の群から選択される、がんに対する1種類または複数種類の治療法と組み合わされてもよい。
【0232】
本発明の好ましい態様によると、前記処置は、免疫抑制処置を受けている患者中に施与することができる。実際に、本発明は、好ましくは、少なくとも1種類の免疫抑制剤に対して、そのような免疫抑制剤に対する受容体をコードする遺伝子の不活性化のために耐性にされている、細胞または細胞の集団に依拠する。本局面において、免疫抑制処置は、患者内での本発明によるT細胞の選択および増大を助けるはずである。
【0233】
本発明による細胞または細胞の集団の投与は、エアロゾル吸入、注射、経口摂取、輸注、埋め込み、または移植によるものを含む、任意の便利な様式において実施されてもよい。本明細書に記載される組成物は、患者に対して、皮下に、皮内に、腫瘍内に、結節内に、髄内に、筋肉内に、静脈内もしくはリンパ内注射によって、または腹腔内に投与されてもよい。1つの態様において、本発明の細胞組成物は、好ましくは、静脈内注射によって投与される。
【0234】
細胞または細胞の集団の投与は、その範囲内のすべての整数値の細胞数を含む、1kg体重あたり104~109細胞、好ましくは、105~106細胞/kg体重の投与からなることができる。本発明は、従って、単一のドナーまたは患者の試料採取を起源とする106~108個の遺伝子編集細胞を含む、10よりも多い、概括的には50よりも多い、より概括的には100よりも多い、および通常は1000よりも多い用量を提供することができる。
【0235】
細胞または細胞の集団は、1または複数の用量において投与することができる。別の態様において、前記有効量の細胞は、単一用量として投与される。別の態様において、前記有効量の細胞は、ある期間にわたって1よりも多い用量として投与される。投与のタイミングは、管理する医師の判断の範囲内であり、患者の臨床状態に依存する。細胞または細胞の集団は、血液バンクまたはドナーなどの任意の供給源から得られてもよい。個々の必要性は変わるが、特定の疾患または状態についての所与の細胞タイプの有効量の最適範囲の決定は、当技術分野の技能内である。有効量とは、治療的または予防的な有益性を提供する量を意味する。投与される投薬量は、レシピエントの年齢、健康、および体重、もしあれば同時処置の種類、処置の頻度、ならびに所望の効果の性質に依存することになる。
【0236】
別の態様において、前記有効量の細胞またはそれらの細胞を含む組成物は、非経口的に投与される。前記投与は、静脈内投与であることができる。前記投与は、腫瘍内の注射によって直接行うことができる。
【0237】
本発明のある特定の態様において、細胞は、抗ウイルス療法、シドフォビルおよびインターロイキン-2、シタラビン(ARA-Cとしても公知である)などの作用物質での処置、またはMS患者のためのナタリジマブ(nataliziimab)処置、または乾癬患者のためのエファリズチマブ(efaliztimab)処置、またはPML患者のための他の処置を含むがそれらに限定されない、任意の数の関連性のある処置様式と組み合わせて(例えば、前に、同時に、または後に)、患者に投与される。さらなる態様において、本発明のT細胞は、化学療法、放射線、免疫抑制剤、例えば、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノラート、およびFK506、抗体、または他の免疫除去(immunoablative)剤、例えば、CAMPATH、抗CD3抗体、もしくは他の抗体療法、cytoxin、フルダリビン(fludaribine)、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、サイトカイン、および放射線と組み合わせて用いられてもよい。これらの薬物は、カルシウム依存性ホスファターゼであるカルシニューリンを阻害する(シクロスポリンおよびFK506)か、または成長因子誘導性シグナル伝達に重要なp70S6キナーゼを阻害する(ラパマイシン)かのいずれかである(Henderson, Naya et al. 1991;Liu, Albers et al. 1992;Bierer, Hollander et al. 1993)。さらなる態様において、本発明の細胞組成物は、骨髄移植;化学療法剤、例えば、フルダラビン、体外照射療法(XRT)、シクロホスファミド、または、OKT3もしくはCAMPATHなどの抗体のいずれかを用いたT細胞除去療法と組み合わせて(例えば、前に、同時に、または後に)、患者に投与される。別の態様において、本発明の細胞組成物は、B細胞除去療法、例えば、CD20と反応する作用物質、例えばRituxanの後に投与される。例えば、1つの態様において、対象は、高用量化学療法での標準的処置、およびその後の末梢血幹細胞移植を受けてもよい。ある特定の態様において、移植後に、対象は、本発明の増大した免疫細胞の注入を受ける。追加的な態様において、増大した細胞は、手術の前または後に投与される。
【0238】
CARが、本発明による免疫細胞または免疫細胞の集団において発現する場合、好ましいCARは、CD22、CD38、CD123、CS1、HSP70、ROR1、GD3、およびCLL1から選択される少なくとも1種類の抗原を標的とするものである。
【0239】
CD22を標的とするCARまたは改変TCRを与えられた本発明による操作された免疫細胞は、好ましくは、急性リンパ芽球性白血病(ALL)などの白血病を処置するために用いられ、CD38を標的とするCARまたは改変TCRを与えられたものは、好ましくは、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)または多発性骨髄腫(MM)などの白血病を処置するために用いられ、CD123を標的とするCARまたは改変TCRを与えられたものは、好ましくは、急性骨髄性白血病(AML)および芽球性形質細胞様樹状細胞新生物(BPDCN)などの白血病を処置するために用いられ、CS1を標的とするCARまたは改変TCRを与えられたものは、好ましくは、多発性骨髄腫(MM)を処置するために用いられる。
【0240】
本発明はまた、特に、SEQ ID NO:36~40によって表される任意の配列にハイブリダイズするプローブまたはプライマーを用いることにより、本明細書において言及される内在性遺伝子座、特に、PD1、CD25、CD69、およびTCR遺伝子座での外来性コード配列の挿入を検出するためのPCR法を用いる工程を実施することによって、所望の遺伝的挿入を含む本発明の操作された細胞を検出するための手段も包含する。
【0241】
CAR、GP130の操作された細胞による発現を検出するために、および、細胞におけるTCR、PD1、IL-6、またはIL-8の発現の欠如または低減を、そのような遺伝子がノックアウトされているまたはそれらの発現が低減している場合に確かめるために、免疫学的アッセイもまた行われてもよい。
【0242】
他の定義
ポリペプチド配列中のアミノ酸残基は、本明細書において1文字表記に従って称され、例えば、Qは、Glnまたはグルタミン残基を意味し、Rは、Argまたはアルギニン残基を意味し、Dは、Aspまたはアスパラギン酸残基を意味する。
【0243】
アミノ酸置換とは、1個のアミノ酸残基の別のものでの置き換えを意味し、例として、ペプチド配列中のアルギニン残基のグルタミン残基での置き換えは、アミノ酸置換である。
【0244】
ヌクレオチドは、以下のように称される:1文字表記が、ヌクレオシドの塩基を称するために用いられ:aはアデニンであり、tはチミンであり、cはシトシンであり、およびgはグアニンである。縮重ヌクレオチドについて、rはgまたはa(プリンヌクレオチド)を表し、kはgまたはtを表し、sはgまたはcを表し、wはaまたはtを表し、mはaまたはcを表し、yはtまたはc(ピリミジンヌクレオチド)を表し、dはg、a、またはtを表し、vはg、a、またはcを表し、bはg、t、またはcを表し、hはa、t、またはcを表し、およびnはg、a、t、またはcを表す。
【0245】
本明細書において用いられる場合、「核酸」または「ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチドおよび/またはポリヌクレオチド、例えば、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)、オリゴヌクレオチド、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって生成される断片、ならびに、ライゲーション、劈開、エンドヌクレアーゼ作用、およびエキソヌクレアーゼ作用のいずれかによって生成される断片を指す。核酸分子は、天然に存在するヌクレオチド(DNAおよびRNAなど)、または天然に存在するヌクレオチドの類似体(例えば、天然に存在するヌクレオチドの鏡像体型)、または両方の組み合わせである単量体から構成され得る。修飾ヌクレオチドは、糖部分に、および/またはピリミジンもしくはプリン塩基部分に変更を有することができる。糖修飾は、例えば、1個もしくは複数個のヒドロキシル基のハロゲン、アルキル基、アミン、およびアジド基での置き換えを含み、または、糖をエーテルもしくはエステルとして官能基化することができる。さらに、糖部分全体を、立体的および電子的に類似した構造、例えば、アザ糖および炭素環式糖類似体で置き換えることができる。塩基部分における修飾の例は、アルキル化プリンおよびピリミジン、アシル化プリンもしくはピリミジン、または他の周知の複素環式置換物を含む。核酸単量体は、ホスホジエステル結合またはそのような連結の類似物によって連結することができる。核酸は、一本鎖または二本鎖のいずれかであることができる。
【0246】
「エンドヌクレアーゼ」という用語は、DNAまたはRNA分子、好ましくはDNA分子内の核酸間の結合の加水分解(切断)を触媒することができる任意の野生型またはバリアントの酵素を指す。エンドヌクレアーゼは、DNAまたはRNA分子を、その配列と無関係には切断しないが、「標的配列」または「標的部位」とさらに呼ばれる特異的なポリヌクレオチド配列でDNAまたはRNA分子を認識して切断する。エンドヌクレアーゼは、典型的には長さが10塩基対(bp)よりも長い、より好ましくは14~55 bpのポリヌクレオチド認識部位を有する場合に、低頻度切断エンドヌクレアーゼとして分類することができる。低頻度切断エンドヌクレアーゼは、定義された遺伝子座にDNA二本鎖切断(DSB)を導入することにより相同組換えを有意に増加させ、それによって、遺伝子修復または遺伝子挿入療法を可能にする(Pingoud, A. and G. H. Silva (2007). Precision genome surgery. Nat. Biotechnol. 25(7): 743-4.)。
【0247】
「DNA標的」、「DNA標的配列」、「標的DNA配列」、「核酸標的配列」、「標的配列」、または「プロセシング部位」とは、本発明による低頻度切断エンドヌクレアーゼによって標的とされ、プロセシングされることができるポリヌクレオチド配列を意図する。これらの用語は、特異的なDNAの位置、好ましくは細胞におけるゲノム上の位置を指すが、遺伝物質の本体から独立して存在することができる遺伝物質の一部分、例えば、プラスミド、エピソーム、ウイルス、トランスポゾン、または、非限定的な例としてミトコンドリアなどのオルガネラ中のものも指す。RNAガイド標的配列の非限定的な例は、RNAガイドエンドヌクレアーゼを所望の遺伝子座に向けるガイドRNAにハイブリダイズすることができるそれらのゲノム配列である。
【0248】
「変異」とは、ポリヌクレオチド(cDNA、遺伝子)またはポリペプチド配列中の最大で1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、20個、25個、30個、40個、50個、またはそれよりも多いヌクレオチド/アミノ酸の置換、欠失、挿入を意図する。変異は、遺伝子のコード配列またはその調節配列に影響を及ぼすことができる。また、ゲノム配列の構造またはコードされるmRNAの構造/安定性にも影響を及ぼし得る。
【0249】
「ベクター」とは、それに連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子を意味する。本発明における「ベクター」は、ウイルスベクター、プラスミド、RNAベクター、または、染色体性、非染色体性、半合成、もしくは合成の核酸からなってもよい、直鎖状もしくは環状のDNAもしくはRNA分子を含むが、それらに限定されない。好ましいベクターは、自己複製が可能であるもの(エピソーマルベクター)、および/またはそれに連結されている核酸の発現が可能であるもの(発現ベクター)である。数多くの適しているベクターが、当業者に公知であり、かつ市販されている。ウイルスベクターには、レトロウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV))、コロナウイルス、オルトミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)などのマイナス鎖RNAウイルス、ラブドウイルス(例えば、狂犬病および水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、麻疹およびセンダイ)、ピコルナウイルスおよびアルファウイルスなどのプラス鎖RNAウイルス、ならびに、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス1型および2型、エプスタイン・バーウイルス、サイトメガロウイルス)、およびポックスウイルス(例えば、ワクシニア、鶏痘、およびカナリアポックス)を含む二本鎖DNAウイルスが含まれる。他のウイルスには、例えば、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポバウイルス、ヘパドナウイルス、および肝炎ウイルスが含まれる。レトロウイルスの例には、トリ白血病肉腫、哺乳動物C型、B型ウイルス、D型ウイルス、HTLV-BLVグループ、レンチウイルス、スプーマウイルスが含まれる(Coffin, J. M., Retroviridae: The viruses and their replication, In Fundamental Virology, Third Edition, B. N. Fields, et al., Eds., Lippincott-Raven Publishers, Philadelphia, 1996)。
【0250】
本明細書において用いられる場合、「遺伝子座」という用語は、ゲノム中の(例えば、遺伝子の)DNA配列の特異的な物理的位置である。「遺伝子座」という用語は、染色体上のまたは感染物質のゲノム配列上の、低頻度切断エンドヌクレアーゼ標的配列の特異的な物理的位置を指すことができる。そのような遺伝子座は、本発明による配列特異的エンドヌクレアーゼによって認識され、かつ/または切断される標的配列を含むことができる。本発明の関心対象の遺伝子座は、細胞の遺伝物質の本体に(すなわち、染色体に)存在する核酸配列だけではなく、該遺伝物質の本体から独立して存在することができる遺伝物質の一部分、例えば、プラスミド、エピソーム、ウイルス、トランスポゾン、または、非限定的な例としてミトコンドリアなどのオルガネラ中のものが適格となり得ることが理解される。
【0251】
「切断」という用語は、ポリヌクレオチドの共有結合性骨格の破損を指す。切断は、ホスホジエステル結合の酵素的または化学的な加水分解を含むがそれらに限定されない、様々な方法によって開始され得る。一本鎖切断および二本鎖切断の両方が可能であり、二本鎖切断は、2つの別個の一本鎖切断事象の結果として起こり得る。二本鎖DNA、RNA、またはDNA/RNAハイブリッドの切断は、平滑末端または付着末端のいずれかの産生を結果としてもたらすことができる。
【0252】
「同一性」とは、2つの核酸分子またはポリヌクレオチドの間の配列同一性を指す。同一性は、比較の目的で整列させてもよい各配列における位置を比較することによって、決定することができる。比較される配列における位置が、同じ塩基によって占められる場合、その時分子は、その位置で同一である。核酸またはアミノ酸の配列間の類似性または同一性の程度は、核酸配列によって共有される位置の同一のまたは一致するヌクレオチドの数の関数である。GCG配列解析パッケージ(University of Wisconsin, Madison, Wis.)の一部として利用可能であり、例えばデフォルト設定で用いることができるFASTAまたはBLASTを含む、種々のアラインメントアルゴリズムおよび/またはプログラムが、2つの配列間の同一性を計算するために用いられてもよい。例えば、本明細書に記載される特定のポリペプチドに対して少なくとも70%、85%、90%、95%、98%、または99%の同一性を有し、かつ好ましくは実質的に同じ機能を呈するポリペプチド、ならびにそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、企図される。
【0253】
本明細書において用いられる「対象」または「患者」という用語は、非ヒト霊長類およびヒトを含む、動物界のすべてのメンバーを含む。
【0254】
本発明の上記の説明は、当業者が同一物を作製し、使用することが可能であるように、それを作製し、使用する様式およびプロセスを提供し、この実施可能性は、特に、元の説明の一部を作り上げる添付の特許請求の範囲の主題のために提供される。
【0255】
数値的限定または範囲が本明細書において述べられる場合、終点が含まれる。また、数値的限定または範囲内のすべての値および部分範囲は、あたかも明示的に完全に書かれているように具体的に含まれる。
【0256】
本発明を概括的に説明してきたが、例証の目的だけで本明細書において提供され、特許請求される発明の範囲を限定するようには意図されていないある特定の具体例を参照することによって、さらなる理解を得ることができる。
【実施例】
【0257】
実施例1:内在性遺伝子のノックアウトを伴う、内在性プロモーターの制御下の種々の遺伝子座でのヒト初代T細胞におけるAAV駆動相同組換え
序文
配列特異的エンドヌクレアーゼ試薬、例えば、TALEN(登録商標)(Cellectis, 8 rue de la Croix Jarry, 75013 PARIS)は、所望の遺伝子座でのゲノムにおける二本鎖切断(DSB)の部位特異的導入を可能にする。細胞酵素によるDSBの修復は、主に、2つの経路:非相同末端結合(NHEJ)および相同性指向修復(HDR)を通して起こる。HDRは、DNAの相同な片(鋳型DNA)を用いて、組換えによりDSBを修復し、鋳型DNAに含まれる任意の遺伝子配列を導入するために用いられ得る。その中で示されるように、前記鋳型DNAは、部位特異的DSBを導入するために、操作されたヌクレアーゼ、例えばTALEN(登録商標)と共に組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)によって送達され得る。
【0258】
組込みマトリックスの設計
1.1. 内在性PD1遺伝子コード配列のノックアウトを伴う、上方制御される遺伝子座におけるアポトーシスCARの挿入
TALEN標的部位の位置を、標的とされる内在性PDCD1遺伝子(PD1と呼ばれるプログラム細胞死タンパク質1 - Uniprot # Q15116)に位置するように設計している。TALEN標的の1000 bp上流および下流を包含する配列を、SEQ ID NO.1およびSEQ ID NO.2に示す。TALEN(SEQ ID: SEQ ID NO.3およびNO.4)の標的配列を、SEQ ID NO.5に示す。組込みマトリックスを、TALEN部位の内在性遺伝子上流に相同な配列(300 bp)(SEQ ID NO.1)、その後の2A調節エレメント(SEQ ID NO.6)、その後の開始コドンを伴わないアポトーシス誘導CARをコードする配列(SEQ ID NO.7)、その後の終止コドン(TAG)、その後のポリアデニル化配列(SEQ ID NO.8)、その後のTALEN部位の内在性遺伝子下流に相同な配列(1000 bp)(SEQ ID NO.2)から構成されるように設計する。挿入マトリックスを、続いて、プロモーターのないrAAVベクター中にクローニングして、AAV6を産生するために用いる。
【0259】
1.2 内在性遺伝子のノックアウトを伴う、上方制御される遺伝子座におけるインターロイキンの挿入
TALEN標的部位の位置を、標的とされる内在性PDCD1遺伝子(プログラム細胞死タンパク質1、PD1)に位置するように設計する。TALEN標的の1000 bp上流および下流を包含する配列を、SEQ ID NO.1およびSEQ ID NO.2に示す。TALEN(SEQ ID: SEQ ID NO.3およびNO.4)の標的配列を、SEQ ID NO.5に示す。組込みマトリックスを、TALEN部位の内在性遺伝子上流に相同な配列(300 bp)(SEQ ID NO.1)、その後の2A調節エレメント(SEQ ID NO.6)、その後の操作された一本鎖のヒトIL-12 p35(SEQ ID NO.9)およびp40(SEQ ID NO.10)サブユニット融合タンパク質をコードする配列、その後の終止コドン(TAG)、その後のポリアデニル化配列(SEQ ID NO.8)、その後のTALEN部位の内在性遺伝子下流に相同な配列(1000 bp)(SEQ ID NO.2)から構成されるように設計する。挿入マトリックスを、続いて、プロモーターのないrAAVベクター中にクローニングして、AAV6を産生するために用いる。
【0260】
1.3 内在性遺伝子のノックアウトを伴わない、弱く発現する遺伝子座におけるアポトーシスCARの挿入‐N末端挿入
TALEN標的部位の位置を、標的とされる内在性LCK遺伝子(LCK、LCKプロトオンコジーン、Srcファミリーチロシンキナーゼ[ホモ・サピエンス(ヒト)])の開始コドンのできるだけ近くに位置するように設計する。開始コドンの1000 bp上流および下流を包含する配列を、SEQ ID NO.11およびSEQ ID NO.12に示す。組込みマトリックスを、開始コドンの内在性遺伝子上流に相同な配列(1000 bp)、その後の開始コドンを含有するアポトーシス誘導CARをコードする配列(SEQ ID NO.13)、その後の2A調節エレメント(SEQ ID NO.8)、その後の開始コドンの内在性遺伝子下流に相同な配列(1000bp)(SEQ ID NO.12)から構成されるように設計する。挿入マトリックスを、続いて、プロモーターのないrAAVベクター中にクローニングして、AAV6を産生するために用いる。
【0261】
1.4 内在性遺伝子のノックアウトを伴わない、弱く発現する遺伝子座におけるアポトーシスCARの挿入‐C末端挿入
TALEN標的部位の位置を、標的とされる内在性LCK遺伝子(LCK、LCKプロトオンコジーン、Srcファミリーチロシンキナーゼ[ホモ・サピエンス(ヒト)])の終止コドンのできるだけ近くに位置するように設計する。終止コドンの1000 bp上流および下流を包含する配列を、SEQ ID NO.14およびSEQ ID NO.15に示す。組込みマトリックスを、終止コドンの内在性遺伝子上流に相同な配列(1000 bp)、その後の2A調節エレメント(SEQ ID NO.8)、その後の開始コドンを有さないアポトーシス誘導CARをコードする配列(SEQ ID NO.7)、その後の終止コドン(TAG)、その後の終止コドンの内在性遺伝子下流に相同な配列(1000 bp)(SEQ ID NO.15)から構成されるように設計する。挿入マトリックスを、続いて、プロモーターのないrAAVベクター中にクローニングして、AAV6を産生するために用いる。
【0262】
形質導入細胞における配列特異的ヌクレアーゼ試薬の発現
TALEN(登録商標) mRNAを、mMessage mMachine T7 Ultraキット(Thermo Fisher Scientific, Grand Island, NY)を用いて、各TALENがT7プロモーターの下流にクローニングされるように合成し、RNeasyカラム(Qiagen, Valencia, CA)を用いて精製して、「cytoporation medium T」(Harvard Apparatus, Holliston, MA)において溶出する。ヒトT細胞を、ALLCELLS(Alameda, CA)によって提供される末梢全血から、20 ng/mlヒトIL-2(Miltenyi Biotech, San Diego, CA)、5%ヒトAB血清(Gemini Bio-Products, West San Francisco, CA)、および1:1のビーズ:細胞比のDynabeads Human T-activator CD3/CD28(Thermo Fisher Scientific, Grand Island, NY)を補給したX-Vivo-15培地(Lonza, Basel, Switzerland)において収集し、活性化する。ビーズを3日後に取り除き、5×106細胞に2種類の妥当なTALEN(登録商標)の各々の10μg mRNAを、Cytopulse(BTX Harvard Apparatus, Holliston, MA)を用いて、0.4 cm間隙のキュベット中で200μlの「cytoporation medium T」(BTX Harvard Apparatus, Holliston, Massachusetts)の最終体積において、3,000 V/cmでの2回の0.1 mSパルス、およびその後の325 V/cmでの4回の0.2 mSパルスを印加することによってエレクトロポレーションする。細胞を直ちに、 20 ng/mL IL-2を含むX-Vivo-15培地に希釈し、37℃、5% CO2でインキュベートする。2時間後、細胞を、1細胞あたり3×105ウイルスゲノム(vg)のAAV6粒子とインキュベートする(37℃、16時間)。細胞を、それぞれの挿入された遺伝子配列の発現についてフローサイトメトリーによって検討するまで、5%ヒトAB血清および20 ng/mL IL-2を補給したX-Vivo-15培地において継代し、維持する。
【0263】
【0264】
実施例2:T細胞におけるIL-15およびCARをコードするマトリックスのTALEN(登録商標)媒介性二重標的指向挿入
材料
X-vivo-15をLonza(カタログ番号BE04-418Q)から、IL-2をMiltenyi Biotech(カタログ番号130-097-748)から、ヒト血清ABをSeralab(カタログ番号GEM-100-318)から、human T activator CD3/CD28をLife Technology(カタログ番号11132D)から、QBEND10-APCをR&D Systems(カタログ番号FAB7227A)から、vioblue標識抗CD3、PE標識抗LNGFR、APC標識抗CD25、およびPE標識抗PD1をMiltenyi(それぞれ、カタログ番号130-094-363、130-112-790、130-109-021、および130-104-892)から、 48ウェル処理プレート(CytoOne, カタログ番号CC7682-7548)を、ヒトIL-15 Quantikine ELISAキットをR&D systems(カタログ番号S1500)から、ONE-GloをPromega(カタログ番号E6110)から入手した。様々なマトリックスを含有するAAV6バッチをVirovekから入手し、PBMC細胞をAllcells(カタログ番号PB004F)から入手し、Raji-ルシフェラーゼ細胞を、ATCC(カタログ番号CCL-86)由来のRaji細胞のホタルルシフェラーゼをコードするレンチウイルス粒子の形質導入後に得た。
【0265】
方法
2.1-トランスフェクション-形質導入
TRACおよびPD1またはCD25遺伝子座での二重標的指向組込みを、以下のように行った。PBMC細胞を、X-vivo-15完全培地(X-vivo-15、5%AB血清、20 ng/mL IL-2)において最初に融解し、洗浄し、再懸濁して培養した。1日後に、細胞を、Dynabeads human T activator CD3/CD28(25μLのビーズ/1E6 CD3陽性細胞)によって活性化し、1E6細胞/mLの密度で3日間、X-vivo完全培地において37℃で、5% CO2の存在下で培養した。細胞を、次いで、新鮮な完全培地において分割し、以下の手順に従って次の日に形質導入/トランスフェクトした。形質導入-トランスフェクションの日に、細胞を最初に、磁気分離(EasySep)によって脱ビーズ化(de-beaded)し、Cytoporation buffer T(BTX Harvard Apparatus, Holliston, Massachusetts)において2回洗浄して、同じ溶液に28E6細胞/mLの最終濃度で再懸濁した。細胞懸濁液を、200μlの最終体積において、TRAC TALEN(登録商標)アーム(SEQ ID NO:16および17)をコードする5μg mRNAと、CD25またはPD1 TALEN(登録商標)のいずれかのアーム(それぞれSEQ ID NO:18および19ならびにSEQ ID NO:20および21)をコードする15μgのmRNAの存在下または非存在下で混合した。TALEN(登録商標)は、TALEとFok-1との融合に起因するTALEヌクレアーゼの標準形式である。トランスフェクションは、Pulse Agile技術を用いて、0.4 cm間隙のキュベット中で200μlのCytoporation buffer T(BTX Harvard Apparatus, Holliston, Massachusetts)の最終体積において、3,000 V/cmでの2回の0.1 mSパルス、およびその後の325 V/cmでの4回の0.2 mSパルスを印加することによって行った。エレクトロポレーションした細胞を、次いで直ちに、1 mLのあらかじめ温めたX-vivo-15無血清培地を含有する12ウェルプレートに移し、37℃で15分間インキュベートした。細胞を、次いで、48ウェルレギュラー処理プレート中で、ドナーマトリックスを含むAAV6粒子(MOI=3E5 vg/細胞)の存在下で、250μLの同じ培地において8E6 細胞/mLに濃縮した。30℃での2時間の培養後に、 250 μLの、10% AB血清および40 ng/ml IL-2を補給したXvivo-15培地を細胞懸濁液に添加し、混合物を24時間、同じ培養条件でインキュベートした。1日後に、細胞を、完全X-vivo-15培地において1E6細胞/mLで播種し、37℃で、5% CO2の存在下で培養した。
【0266】
2.2-ΔLNGFRの活性化依存的発現およびIL15の分泌
操作されたT細胞を、以前に記載されたトランスフェクション-形質導入プロセスから回収し、100μL最終体積の完全X-vivo-15培地において単独で、またはRaji細胞(E:T=1:1)もしくはDynabeads(12.5μL/1E6細胞)の存在下で、1E6細胞/mLで播種した。細胞を、48時間培養し、その後回収し、標識して、フローサイトメトリーによって解析した。細胞を、2種類の独立した抗体のセットで標識した。第1の抗体のセットは、ΔLNGFR、CAR、およびCD3細胞の存在の検出を目標にして、QBEND10-APC(1/10希釈)、vioblue標識抗CD3(1/25希釈)、およびPE標識抗ΔLNGFR(1/25希釈)からなった。第2の抗体のセットは、内在性CD25およびPD1の発現の検出を目標にして、APC標識抗CD25(1/25希釈)およびvioblue標識抗PD1(1/25希釈)からなった。
【0267】
同じ実験設定を用いて、培地中のIL-15分泌を研究した。細胞混合物を、2、4、7、および10日間共培養において保ち、その後、上清を収集して、IL-15特異的ELISAキットを用いて解析した。
【0268】
2.3-連続死滅アッセイ
操作されたCAR T細胞の抗腫瘍活性を評価するために、連続死滅アッセイを行った。このアッセイの原理は、一定量の腫瘍細胞の毎日の添加によって、CAR T細胞抗腫瘍活性に毎日挑戦するものである。腫瘍細胞増殖、制御、および再発を、腫瘍細胞株に安定に組み込まれたルシフェラーゼマーカーのおかげで、発光読み取りを介してモニタリングすることができた。
【0269】
典型的には、CAR T細胞を、1 mLのXvivo 5% AB、20 ng/μL IL-2の総体積において、可変のE:T比(E:T=5:1または1:1)で 2.5×105個のRaji-luc腫瘍細胞の懸濁液と混合する。混合物を24時間インキュベートし、その後、ONE-Glo試薬を用いて25μLの細胞懸濁液の発光を決定する。細胞混合物を、次いでスピンダウンし、古い培地を捨てて、2.5×105個のRaji-Luc 細胞を含有する1 mLの新鮮な完全X-vivo-15培地で置換し、結果として生じた細胞混合物を24時間インキュベートする。このプロトコールを、4日繰り返す。
【0270】
実験および結果
本実施例は、IL-15/可溶性IL-15受容体αヘテロ二量体(IL15/sIL15rα)発現カセットを、PD1およびCD25遺伝子を調節する内在性T細胞プロモーターの制御下に組み込むことによって、CAR T細胞療法の治療転帰を改善する方法を記載する。遺伝子は両方とも、CAR T細胞による腫瘍係合時に上方制御されることが公知であるため、それらを乗っ取って腫瘍の近傍においてのみIL-IL15/sIL15rαを再発現させることができる。本方法は、活性化誘導性T細胞死(AICD)を低減させる、T細胞生存を促進する、T細胞抗腫瘍活性を増強する、およびT細胞アネルギーを逆転させるその能力を維持しながら、IL15/sIL15rα全身性分泌の潜在的な副作用を低減させることを目標にする。
【0271】
IL15/sIL15rαをPD1およびCD25遺伝子座に組み込むように開発された方法は、AAV6によってベクター化されたDNA修復マトリックスの存在下で、TALENを用いて両方の遺伝子座に二本鎖切断を生成することにあった。このマトリックスは、2Aシス作用性エレメントおよび調節エレメント(停止コドンおよびポリA配列)によって分離されるIL15/sIL15rαコード領域を埋め込む、2個の相同性アームからなる。標的とされる遺伝子座およびT細胞活性におけるその関与に応じて、標的とされる内在性遺伝子を、特異的なマトリックス設計を介して不活性化するまたは不活性化しないことができる。CD25遺伝子を標的とする遺伝子座として考えた場合、この遺伝子のタンパク質産物は、T細胞機能にとって不可欠とみなされるため、挿入マトリックスを、CD25を不活性化することなくIL15/sIL15rαをノックイン(KI)するように設計した。対照的に、PD1は、T細胞阻害/T細胞の消耗に関与しているため、挿入マトリックスを、IL15/sIL15rαの発現および分泌を可能にしながら、その発現を阻止するように設計した。
【0272】
このアプローチを例証し、初代T細胞における二重標的指向挿入の実現可能性を実証するために、3種類の異なるマトリックスを設計した(
図2A、2B、および2C)。SEQ ID NO:36によって表される、CARmと名づけられた第1のものは、TRAC TALEN(登録商標)(SEQ ID NO:16および17)の存在下で、TRAC遺伝子座に抗CD22 CAR cDNAを挿入するように設計した。第2のものであるIL-15_CD25m(SEQ ID NO:37)は、CD25 TALEN(登録商標)(SEQ ID NO:18および19)を用いて、CD25内在性コード配列の終止コドンの直前に、2Aシス作用性エレメントによって分離された、IL15、sIL15rα、およびΔLNGFR cDNAと名づけられた表面マーカーを組み込むように設計した。第3のものであるIL-15_PD1m(SEQ ID NO:38)は、同じ発現カセットを含有し、PD1 TALEN(登録商標)(SEQ ID NO:20および21)を用いて、PD1オープンリーディングフレームの中央に組み込むように設計した。3種類のマトリックスは、IL15/sIL15rαおよびCARと、標的とされる内在性遺伝子との同時発現を可能にする、発現カセットの上流に位置する追加的な2Aシス作用性エレメントを含有していた。
【0273】
本発明者らは、T細胞における二重標的指向挿入の効率を、それらにIL15/sIL15rαマトリックスをコードするAAV6(SEQ ID NO:41;pCLS30519)の1つを、CARをコードするものと共に形質導入し、続いて対応するTALEN(登録商標)をトランスフェクトすることによって、最初に評価した。TRAC TALEN(登録商標)(SEQ ID NO:22および23)ならびにPD1 TALEN(登録商標)(SEQ ID NO:24および25)またはCD25 TALEN(登録商標)(SEQ ID NO:26および27)をコードするmRNAの存在下でのマトリックスのAAV6に補助されたベクター化により、操作されたT細胞の最大で46%における抗CD22 CARの発現が可能になった(
図3)。
【0274】
CD25およびPD1遺伝子座でのIL15m組込みの程度を判定するために、操作されたT細胞を、抗CD3/CD28コーティングビーズまたはCD22発現Raji腫瘍細胞のいずれかで活性化した。活性化の2日後に、細胞を回収し、IL15/sIL15rα分泌の代用物としてLNGFR発現を用いて、FACSによって解析した(
図4および5)。本発明者らの結果により、抗CD3/CD28コーティングビーズは、抗CD22 CARの存在から独立して、IL-15m_CD25またはIL-15m_PD1を含有するT細胞によるΔLNGFRの発現を誘導したことが示された(
図4A~B)。しかし、腫瘍細胞は、CARmおよびIL-15mの両方によって処理されたT細胞によるΔLNGFRの発現のみを誘導した。これにより、ΔLNGFRの発現を、CARによる腫瘍細胞係合を通して特異的に誘導できたことが示された(
図5および6)。
【0275】
期待されたように、内在性CD25遺伝子は、活性化された処理T細胞において依然として発現し(
図7および8)、他方、PD1発現は強く損なわれた(
図12)。
【0276】
ΔLNGFRの発現が、培地中のIL15の分泌と相関したことを検証するために、抗CD22 CARおよびΔLNGFRを発現するT細胞を、CD22発現Raji腫瘍細胞(E:T比=1:1)の存在下で、合計で10日間インキュベートした。上清を2、4、7、および10日目に回収し、IL15の存在をELISAアッセイによって定量した。本発明者らの結果により、IL15は、CARmおよびIL15mマトリックスの両方によって、それらの対応するTALEN(登録商標)と共に同時処理されたT細胞によってのみ、培地に分泌されたことが示された(
図13)。これらのマトリックスのいずれか1つで処理されたT細胞は、静止T細胞に関していかなる有意なレベルのIL15も分泌することができなかった。興味深いことに、IL-15分泌レベルは、一過性であることが見出され、最大ピークの中心は4日目であった(
図14)。
【0277】
分泌されたIL-15(SEQ ID NO:59)のレベルがCAR T細胞活性に影響を及ぼし得るかどうかを評価するために、CAR T細胞を、5:1のE:T比の腫瘍細胞の存在下で4日間、共培養した。それらの抗腫瘍活性に、IL-2を欠き、新鮮な腫瘍細胞を含有する培養培地中でそれらをピペッティングし、再懸濁することによって毎日挑戦した。CAR T細胞の抗腫瘍活性を、ルシフェラーゼを発現する残りのRaji腫瘍細胞の発光を測定することによって毎日モニタリングした。本発明者らの結果により、IL-15を同時発現するCAR T細胞は、考えられたすべての時点で、IL15を欠くものよりも高い抗腫瘍活性を有することが示された(
図15)。
【0278】
従って、合わせて本発明者らの結果により、本発明者らが、TRACおよびCD25またはPD1遺伝子座でのCARおよびIL15 cDNAの同時標的指向挿入を可能にする方法を開発したことが示された。この二重標的指向挿入は、抗CD22 CARの堅牢な発現、および培地中のIL15の分泌をもたらした。分泌されたIL15のレベルは、CAR T細胞の活性を増強するのに十分であった。
【0279】
【0280】
【0281】
(表6)T細胞活性化に応答性の好ましいヒト内在性遺伝子座
【0282】
(表7)免疫細胞活性化の間に常に活性を有する(T細胞活性化に依存的または非依存的である)好ましい内在性遺伝子の選択
【0283】
(表8)T細胞活性化時に一過性に上方制御される遺伝子の選択
【0284】
(表9)T細胞活性化時に24時間超にわたって上方制御される遺伝子の選択
【0285】
(表10)免疫細胞活性化時に下方制御される遺伝子の選択
【0286】
(表11)T細胞活性化時に無変化であるヒト遺伝子(安全港遺伝子標的指向組込み遺伝子座)の選択
【0287】
(表12)本発明の通りの外来性コード配列の遺伝子組込みに有用な、(複数の腫瘍から集計された)腫瘍消耗浸潤リンパ球において上方制御される遺伝子座のリスト
【0288】
(表13)本発明の通りの外来性コード配列の遺伝子組込みに有用な、低酸素腫瘍状態において上方制御される遺伝子座のリスト
【配列表】