(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】車両、車両制御方法及び車両制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20230510BHJP
G01C 21/28 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
G08G1/09 V
G08G1/09 F
G01C21/28
(21)【出願番号】P 2022138461
(22)【出願日】2022-08-31
(62)【分割の表示】P 2020219113の分割
【原出願日】2020-12-28
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】510084297
【氏名又は名称】株式会社ブロードリーフ
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】平野 喜丈
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-504301(JP,A)
【文献】特開2019-39767(JP,A)
【文献】特開2018-173304(JP,A)
【文献】特開2002-367097(JP,A)
【文献】特開2018-173764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G01C 21/00-21/36
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の現在位置の情報に基づいて前記車両の走行を制御する車両制御装置と、
前記車両の周囲の外部環境を検出する車載センサと、を具備し、
前記車両制御装置は、
前記車両に搭載されたGNSS受信機を通じて単独測位に必要なGNSS情報を取得し、単独測位によって前記車両の絶対位置を算出する絶対位置算出部と、
外部の基準局から相対測位に必要なGNSS補正情報を受信できるか否かを判定する受信判定部と、
前記GNSS補正情報を受信できると判定された場合に、相対測位によって前記車両の相対位置を算出する相対位置算出部と、
前記相対位置に基づく前記車両の現在位置の情報と、前記車載センサによって得られた前記車両の外部環境の検出情報とに基づいて、前記車両の走行を制御する車両制御部と、を具備する、車両。
【請求項2】
前記車両制御装置は、
前記車両の走行を操作可能な操作装置とネットワークを介して接続されており、
前記相対位置に基づく前記車両の現在位置の情報と、前記車載センサによって得られた前記車両の外部環境の検出情報とを前記操作装置に送信する通信部をさらに具備する、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記車両は、前記車両の加速度及び角速度の情報を含む車両情報を取得する慣性測定装置をさらに具備し、
前記車両制御部は、前記車両の現在位置の情報と、前記車両の外部環境の検出情報と、前記慣性測定装置によって得られた前記車両情報とに基づいて前記車両の走行を制御する、請求項1又は2に記載の車両。
【請求項4】
車両制御装置と、車載センサとを備えた車両を用いた車両制御方法あって、
前記車両の現在位置の情報に基づいて前記車両の走行を制御する前記車両制御装置が、
前記車両に搭載されたGNSS受信機を通じて単独測位に必要なGNSS情報を取得し、単独測位によって前記車両の絶対位置を算出する工程と、
外部の基準局から相対測位に必要なGNSS補正情報を受信できるか否かを判定する工程と、
前記GNSS補正情報を受信できると判定された場合に、相対測位によって前記車両の相対位置を算出する工程と、
前記車両の走行を制御する工程と、を行い、
前記車載センサが、前記車両の周囲の外部環境を検出する工程を行い、
前記車両の走行を制御する工程では、前記相対位置に基づく前記車両の現在位置の情報と、前記車載センサによって得られた前記車両の外部環境の検出情報とに基づいて、前記車両の走行を制御する、車両制御方法。
【請求項5】
車両に搭載され、前記車両の現在位置の情報に基づいて前記車両の走行を制御する車両制御装置としてのコンピュータに、
前記車両に搭載されたGNSS受信機を通じて単独測位に必要なGNSS情報を取得し、単独測位によって前記車両の絶対位置を算出する処理と、
外部の基準局から相対測位に必要なGNSS補正情報を受信できるか否かを判定する処理と、
前記GNSS補正情報を受信できると判定された場合に、相対測位によって前記車両の相対位置を算出する処理と、
前記相対位置に基づく前記車両の現在位置の情報と、前記車両に搭載された、前記車両の周囲の外部環境を検出する車載センサによって得られた前記車両の外部環境の検出情報とに基づいて、前記車両の走行を制御する処理と、を実行させる、車両制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、車両制御方法及び車両制御プログラムに係り、特に、車両の現在位置の情報に基づいて前記車両の走行を制御する車両制御装置を備えた車両、車両制御方法及び車両制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、運転者の安全性、快適性を実現するために、車両自体が周囲の外部環境の情報を把握し、運転者に代わって車両の走行を制御し、自動運転するためのADAS(先進運転支援システム)を搭載した車両が知られている。
また、上記車両の不具合等によって走行障害が発生したときに、安全に停車させることや安全に走行を継続させるべく、ネットワークを介した通信によって車両の走行を操作する遠隔運転の技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の車両の制御装置では、遠隔運転モード、自動運転モード及び運転支援モードのいずれかを選択可能とし、選択された動作モードで車両の制御を行うことができる。遠隔運転モードを選択した場合には、制御装置とネットワークを通じて接続された遠隔運転装置を用いてオペレータが車両を遠隔操作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-164056号公報
【文献】特開2020-32873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のような車両遠隔操作システムでは、走行する車両の現在位置を精度良く測定する技術が求められており、当該技術を自動運転の制御に利用することや、運転者やオペレータに対し目的地までの経路を案内するナビゲーションサービスに利用することが行われている。
例えば、特許文献2に記載の自動運行方法では、車両の走行中にGPS信号を受信して車両の位置(絶対位置)をリアルタイムで取得し、車両の位置精度の信頼性が低下した場合には、GPS(衛星測位システム)に基づく座標及び方位角と、慣性測定装置(IMU)に基づく座標及び方位角とを整合させて上記絶対位置を補正することとしている。
そうしたなかで、走行する車両の現在位置をより正確に測定する技術が求められていた。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、走行する車両の現在位置をより正確に測定することが可能な車両制御装置を備えた車両、車両制御方法及び車両制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の車両によれば、車両の現在位置の情報に基づいて前記車両の走行を制御する車両制御装置と、前記車両の周囲の外部環境を検出する車載センサと、を具備し、前記車両制御装置は、前記車両に搭載されたGNSS受信機を通じて単独測位に必要なGNSS情報を取得し、単独測位によって前記車両の絶対位置を算出する絶対位置算出部と、外部の基準局から相対測位に必要なGNSS補正情報を受信できるか否かを判定する受信判定部と、前記GNSS補正情報を受信できると判定された場合に、相対測位によって前記車両の相対位置を算出する相対位置算出部と、前記相対位置に基づく前記車両の現在位置の情報と、前記車載センサによって得られた前記車両の外部環境の検出情報とに基づいて、前記車両の走行を制御する車両制御部と、を具備すること、により解決される。
上記のように、車両制御装置が、GNSS(全地球衛星測位システム)を利用して単独測位によって車両の絶対位置を算出する絶対位置算出部と、外部の基準局からGNSS補正情報を受信できると判定された場合に、相対測位(例えば、RTK測位)によって車両の相対位置を算出する相対位置算出部と、を有している。そのため、走行する車両の現在位置をより正確に測定することが可能な車両を実現することができる。
【0008】
また前記課題は、車両制御装置と、車載センサとを備えた車両を用いた車両制御方法あって、前記車両の現在位置の情報に基づいて前記車両の走行を制御する前記車両制御装置が、前記車両に搭載されたGNSS受信機を通じて単独測位に必要なGNSS情報を取得し、単独測位によって前記車両の絶対位置を算出する工程と、外部の基準局から相対測位に必要なGNSS補正情報を受信できるか否かを判定する工程と、前記GNSS補正情報を受信できると判定された場合に、相対測位によって前記車両の相対位置を算出する工程と、前記車両の走行を制御する工程と、を行い、前記車載センサが、前記車両の周囲の外部環境を検出する工程を行い、前記車両の走行を制御する工程では、前記相対位置に基づく前記車両の現在位置の情報と、前記車載センサによって得られた前記車両の外部環境の検出情報とに基づいて、前記車両の走行を制御する、車両制御方法によっても解決される。
また前記課題は、車両に搭載され、前記車両の現在位置の情報に基づいて前記車両の走行を制御する車両制御装置としてのコンピュータに、前記車両に搭載されたGNSS受信機を通じて単独測位に必要なGNSS情報を取得し、単独測位によって前記車両の絶対位置を算出する処理と、外部の基準局から相対測位に必要なGNSS補正情報を受信できるか否かを判定する処理と、前記GNSS補正情報を受信できると判定された場合に、相対測位によって前記車両の相対位置を算出する処理と、前記相対位置に基づく前記車両の現在位置の情報と、前記車両に搭載された、前記車両の周囲の外部環境を検出する車載センサによって得られた前記車両の外部環境の検出情報とに基づいて、前記車両の走行を制御する処理と、を実行させる、車両制御プログラムによっても解決される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両、車両制御方法及び車両制御プログラムによれば、走行する車両の現在位置をより正確に測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態の車両遠隔操作システム全体の構成図である。
【
図2】車両遠隔操作システム(操作装置を除く)のハードウェア構成を説明する図である。
【
図3】操作装置のハードウェア構成を説明する図である。
【
図4】車両制御装置、操作装置の機能を説明する図である。
【
図5】位置特定部による処理を説明する図であって、絶対位置、相対位置、補正相対位置の位置精度を比較した図である。
【
図6】本実施形態の車両遠隔操作方法を示す処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について
図1-
図6を参照して説明する。
本実施形態の車両遠隔操作システムSは、
図1に示すように、走行する車両Vの外部環境を把握し、運転者に代わって車両Vの走行経路を計画し、当該走行経路に基づいて車両Vを制御することで走行させる「自動運転」と、車両Vの外部にいるオペレータが車両Vを遠隔操作(外部操作)することで走行させる「遠隔運転」とを実現するシステムであって、自動運転モードと遠隔運転モードの間で切り替える「モード切替処理」を行うことが可能となっている。このほか、車両Vに乗車して運転操作を行う手動運転モード(詳細については後述)があり、上記モード切替処理では、この手動運転モードと自動運転モードを切り替えるほか、手動運転モードと遠隔運転モードを切り替えることも可能である。
なお、オペレータはヒトでなくても良く、例えばAI(人工知能)であっても良い。
【0012】
<車両遠隔操作システムのハードウェア構成>
車両遠隔操作システムSは、
図1-
図3に示すように、車両Vに搭載され、車両Vの走行を総合的に制御する車両制御装置1と、車両Vの周囲の外部環境を検出する車載センサ10と、人工衛星SA及び基準局STからGNSS信号を受信し、車両Vの現在位置を測定する車載ロケータ20と、車両Vの操舵及び加減速等を制御する車載ECU30と、車両Vの外部に設置された操作装置50や外部機器と通信する車載通信装置40と、を備えている。
また、車両遠隔操作システムSは、車両制御装置1とネットワーク(デジタル通信路)を介して接続され、ネットワークを介した通信によって車両Vの走行を操作するための操作装置50を備えている。もちろん、車両制御装置1と操作装置50とが直接通信を行うこととしても良い。
【0013】
車両制御装置1は、
図2に示すように、車載センサ10、車載ロケータ20、車載ECU30及び車載通信装置40と車載ネットワーク(CAN)を通じて接続されたコンピュータである。
具体的には、データの演算・制御処理装置としてのCPUと、記憶装置としてのROM、RAM及びHDD(SSD)と、車載ネットワークを通じて情報データの送受信を行う通信インタフェースと、を備えたコンピュータである。
車両制御装置1の記憶装置には、コンピュータとして必要な機能を果たすメインプログラムに加えて、車両制御プログラムや車両遠隔操作プログラムが記憶されており、これらプログラムがCPUによって実行されることにより、車両制御装置1の機能が発揮されることになる。
なお、車載ECU30(総合ECU31)や操作装置50についても同様のハードウェア構成を備えたコンピュータである。
【0014】
車両制御装置1は、「自動運転」を実行すべく、車載センサ10から得られる外部環境の情報と、車載ロケータ20から得られる現在位置の情報と、車載ECU30から得られる車両情報とに基づいて車載ECU30(総合ECU31)を制御することで、車両Vの走行を制御する。
また、車両制御装置1は、「遠隔運転」を実行すべく、車載通信装置40を通じて操作装置50と無線通信し、外部環境の情報と、現在位置の情報と、車両情報とを操作装置50に向けて送信する。操作装置50は、これら情報を受信し、外部環境の情報と、現在位置の情報とに基づく内容をモニタ51(ナビモニタ52)に表示するほか、オペレータに向けてユーザ報知することができる。
より詳しく述べると、車両制御装置1は、「自動運転機能(車載センサ10、車載ロケータ20、車載ECU30)」を予め搭載した車両Vに対して新たに搭載されることで、既存の「自動運転機能」の性能を高めることと、新たに「遠隔運転機能」を付与するものである。
【0015】
車載センサ10は、車両Vの周囲の外部環境として車両V周辺の移動物体(他の車両や歩行者等)、各種の構造物、道路形状等を検出するものであって、具体的には、複数の撮影装置11と、複数のレーダ12と、複数のライダ13と、から主に構成されている。
なお、車載センサ10は、上記以外の検出センサをさらに有しても良い。
【0016】
撮影装置11は、撮像装置とも称し、車両Vの周囲の外部映像を撮影(撮像)する小型の撮影カメラ(広角カメラ)であって、車両Vの走行制御向けの「センシング機能」と、運転者(オペレータ)向けの「モニタリング機能」を実行すべく、外部映像データを作成し、車両制御装置1に向けて外部映像データを送信する。
撮影装置11は、車両Vに複数搭載されており、車両Vのフロントガラスに取り付けられ、車両Vの前方、右側方、左側方を撮影する第1撮影装置11a、第2撮影装置11b、第3撮影装置11cと、車両Vのバックバンパーに取り付けられ、車両Vの後方を撮影する第4撮影装置11dと、車両Vの左右のミラーに取り付けられ、車両Vの右斜め後方、左斜め後方を撮影する第5撮影装置11e、第6撮影装置11fと、をメインカメラとして備えている。
また、撮影装置11は、サブカメラとして、車両Vのフロントバンパーに取り付けられ、車両Vの前方を撮影する第7撮影装置11gと、車両Vの左右のバックライトの周辺に取り付けられ、車両Vの右斜め後方、左斜め後方を撮影する第8撮影装置11h、第9撮影装置11iと、を備えている。
なお、本実施形態では、撮影装置11が車両Vの所定位置に計9個取り付けられているが、撮影装置11の個数や取り付け位置については車両Vの車種や形状に応じて変更可能である。レーダ12及びライダ13についても同様である。
なお、サブカメラの別例として、第7撮影装置11gが、車両Vのバックガラス(リアガラス)の上部に取り付けられ、当該位置から車両Vの後方を撮影しても良い。その場合、第8撮影装置11hが車両Vのフロントの右Aピラーに取り付けられ、第9撮影装置11iがフロントの左Aピラーに取り付けられていると良い。
【0017】
レーダ12は、照射方向を連続的に変化させながら電波を発信し、対象物体からの反射波を受信することで対象物体を検出し(対象物体の位置と速度を測定し)、3次元の空間イメージングを行うミリ波レーダである。撮影装置11やライダ13と比較して、視界が悪い夜間や悪天候のような環境状況であっても精度良く検出することができる。
レーダ12は、上記対象物体の検出結果データ(検出信号)を取得し、車両制御装置1に向けて検出結果データを送信する。
レーダ12は、車両Vに複数搭載されており、車両Vの左右のフロントライトの周辺に取り付けられる第1レーダ12a、第2レーダ12bと、車両Vの左右のバックライトの周辺に取り付けられる第3レーダ12c、第4レーダ12dと、を備えている。
なお、レーダ12は、ミリ波レーダに特に限定されることなく、レーザーレーダ、超音波センサ等のレーダであっても良い。
【0018】
ライダ13は、レーザー光を照射し、対象物体からの反射光を受光することで対象物体までの距離を測定し、3次元の空間イメージングを行うリモートセンサである。撮影装置11やレーダ12と比較して、周囲の対象物体との距離を数センチ単位で測定することができる。
ライダ13は、上記対象物体との距離を測定した距離測定データを取得し、車両制御装置1に向けて距離測定データを送信する。
ライダ13は、車両Vに複数搭載されており、車両Vの左右のフロントライトの周辺に取り付けられる第1ライダ13a、第2ライダ13bと、車両Vのバックパンパ―に取り付けられる第3ライダ13cと、車両Vの左右のバックライトの周辺に取り付けられる第4ライダ13d、第5ライダ13eと、を備えている。
【0019】
車載ロケータ20は、人工衛星SA及び基準局STを用いた衛生測位システムを利用して車両Vの現在位置を測定し、また現在位置の測定精度を高めるべく、車両Vの加速度及び角速度を測定するものである。
車載ロケータ20は、具体的には、複数の人工衛星SAからGNSS電波(GPS電波)を受信するGNSS受信機21と、車両Vの加速度及び角速度を測定する慣性測定装置22と、を備えている。
【0020】
GNSS受信機21は、具体的には、RTK-GNSS受信機であって、複数(具体的には4個)の人工衛星SAからGNSS電波を受信し、単独測位に必要な「GNSS情報」を生成する。また、外部の基準局STから相対測位に必要な「GNSS補正情報」を受信する。
なお、基準局STは、既知点に設定された固定基準局であって、複数の人工衛星SAからGNSS電波を受信し、「GNSS補正情報」を生成し、GNSS受信機21に向けて送信する。
「GNSS情報」とは、複数の人工衛星SAとGNSS受信機21との距離情報である。
「GNSS補正情報」とは、既知点に位置する基準局STがGNSS電波を受信し、基準局STとGNSS受信機21が通信することで、「GNSS情報」の計測誤差を補正した距離情報である。
【0021】
慣性測定装置22は、IMUとも呼ばれ、3軸のジャイロセンサ(角速度計)と、3軸の加速度センサ(加速度計)とを備えており、車両Vの3次元の角速度及び加速度を測定し、車両制御装置1に向けて車両Vの加速度及び角速度の情報を送信する。
車両制御装置1は、GNSS受信機21から受信したGNSS情報(GNSS補正情報)と、慣性測定装置22から受信した車両Vの角速度及び加速度の情報とを組み合わせて測位することで、より小さい誤差範囲で車両Vの現在位置を測定することができる。
【0022】
車載ECU30は、例えば、ADAS用ECUであって、車両制御装置1と接続され、各種データの送受信を行う上位階層の総合ECU31と、この上位階層としての総合ECU31とそれぞれ接続され、車両Vの操舵及び加減速等を細分化して制御する下位階層としてのハンドルECU32と、アクセルECU33と、ブレーキECU34と、を備えており、階層構造を形成している。
なお、ハンドルECU32は、ドライビングサポートコンピュータとも呼ばれ、アクセルECU33及びブレーキECU34は、パワーマネジメントコントロールユニットとも呼ばれている。
なお、総合ECU31と接続される個々のECUの数や機能については、上記の3つのECU32-34に特に限定されることなく、これらのECUと同階層でその他のECUをさらに備えていても良い。
【0023】
ハンドルECU32は、総合ECU31からの指示に対応して車両Vの電動パワーステアリングV1を制御し、主に車両Vの進行方向を制御する。
電動パワーステアリングV1は、車両Vの前輪を操舵する操舵機構を備えている。例えば、手動運転モードの際には、運転者によるハンドルV1aの操舵操作によって車両Vの前輪を操舵する。
なお、ハンドルV1aにはトルクセンサ及び角度センサが搭載されており、これらセンサの検出結果に基づいて運転モードの「モード切替処理」を行うことができる。
【0024】
アクセルECU33は、総合ECU31からの指示に対応して車両Vの電動スロットルV2を制御し、主に車両Vの加減速を制御する。
電動スロットルV2は、車両Vの駆動車輪を回転させる駆動力を出力する駆動機構を備えている。例えば、手動運転モードの際には、運転者によるアクセルペダルV2aのアクセル操作に対応してエンジンの出力を調整する。
【0025】
ブレーキECU34は、総合ECU31からの指示に対応して車両Vの電磁ブレーキ装置V3を制御し、主に車両Vの減速及び停止を制御する。
電磁ブレーキ装置V3は、車両Vの各車輪に取り付けられ、車輪の回転に抵抗を加えることで車両Vを減速又は停止させる機構を備えている。例えば、手動運転モードの際には、運転者によるブレーキペダルV3aのブレーキ操作に対応して電磁ブレーキ装置V3の作動を調整する。
【0026】
車載通信装置40は、車両Vの外部に設置された操作装置50や不図示の外部サーバーとネットワーク通じて情報通信する装置である。例えば「遠隔運転」に必要な情報として車両制御装置1が取得した外部映像の情報と、現在位置の情報とを操作装置50に向けて送信する。また、オペレータによるユーザ入力を受け付けた操作装置50から車両Vの運転操作情報を受信し、車両制御装置1に向けて送信する。
車載通信装置40は、不図示の外部サーバーと情報通信を行い、例えば、外部サーバーから最新の交通情報や天候情報等を受信することもできる。
【0027】
操作装置50は、
図3に示すように、オペレータによって操作され、車両Vの「遠隔運転」を行うためのコンピュータであって、操作装置50の具体的なハードウェア構成として、複数のモニタ51と、ナビモニタ52と、ハンドル53と、アクセルペダル54と、ブレーキペダル55と、複数の操作スイッチ56と、を備えている。
なお、操作装置50は、スピーカーやマイク、シフトレバー等の構成部品をさらに備えていても良い。
【0028】
モニタ51、ナビモニタ52は、「遠隔運転」を行うための視覚情報を出力する表示部であって、モニタ51には、複数の撮影装置11a-11iによって撮影された車両Vの外部映像を所定のレイアウト情報に基づいて合成した合成映像(合成画像)が表示される。
所定のレイアウト情報とは、例えば、オペレータの死角を作らない、オペレータが操作し易いレイアウトの表示態様である。このときの所定のレイアウト情報は、複数のレイアウト情報を車両Vの所定の記憶部においてレイアウトID(レイアウト識別情報)を対応付けて記憶しておくことも可能である。この場合、後述する操作スイッチ等を用いてレイアウト表示に切り替え後、さらにレイアウト情報の変更操作を行うことで、操作装置50(操作スイッチ56)から車両Vに対して変更後のレイアウトIDが送信される。詳細については後述するが、このとき、車両Vでは、変更後のレイアウトIDに対するレイアウト情報に基づいて外部映像を合成した合成映像が生成され、モニタ51にはその合成映像が表示される。
【0029】
ハンドル53は、オペレータによって操作され、車両Vの操舵角(操舵量)を調整するために用いられる操作部である。
アクセルペダル54、ブレーキペダル55は、それぞれオペレータによって操作され、車両Vの電動スロットルV2の駆動、電磁ブレーキ装置V3の作動を調整するために用いられる操作部である。
複数の操作スイッチ56は、例えば「遠隔運転」を行うための設定情報をユーザ入力するために用いられる。例えばオペレータが操作スイッチ56を適宜操作することで、車両Vの外部映像(合成映像)を所定のレイアウト表示に切り替えることや、自動運転モードと遠隔運転モードの間で運転モードを切り替えることができる。
【0030】
<車両遠隔操作システムの機能>
車両制御装置1は、
図4に示すように、機能面から説明すると、各種プログラム及び各種データを記憶しておく記憶部100と、外部情報取得部101と、絶対位置算出部102と、相対位置算出部103と、補正位置算出部104と、受信判定部105と、位置特定部106と、映像処理部107と、通信部108と、車両制御部109と、速度演算部110と、位置情報選択部111と、を主な構成要素として備えている。
これらは、CPU、ROM、RAM、HDD、通信用インタフェース、及び各種プログラム等によって構成されている。
【0031】
操作装置50についても機能面から説明すると、各種プログラム及び各種データを記憶する記憶部500と、車両制御装置1との間で各種データを送受信する通信部501と、車両Vの外部映像、車両情報をモニタ51に表示し、また車両Vの現在位置の情報に基づく内容(例えば、車両ナビゲーション)をナビモニタ52に表示する画面表示部502と、ユーザ操作の入力を受け付けて操作データを作成する操作データ作成部503と、オペレータに向けてユーザ報知するユーザ報知部504と、を主な構成要素として備えている。
【0032】
以下、車両制御装置1の機能について詳しく説明する。
<<メイン機能>>
外部情報取得部101は、車載センサ10から車両Vの周囲の「外部環境の検出情報」を取得し、また車載ロケータ20から車両Vの「現在位置の測定情報」を取得するものである。
詳しく述べると、「外部環境の検出情報」として、撮影装置11から車両Vの周囲の外部映像データを取得し、レーダ12から車両Vの周囲の対象物体の検出結果データを取得し、ライダ13から車両Vの対象物体との距離を測定した距離測定データを取得する。
また「現在位置の測定情報」として、GNSS受信機21からGNSS情報(GNSS補正情報)を取得し、慣性測定装置22から車両Vの角速度及び加速度の情報を取得する。
なお、外部情報取得部101は、車載ECU30から車両Vの「車両情報」をさらに取得することとしても良い。「車両情報」としては、例えば、ハンドルECU32から得られる「舵角の情報」、アクセルECU33から得られる「スロットル開度の情報」、ブレーキECU34から得られる「ブレーキ踏み込み量の情報」等が挙げられる。
【0033】
絶対位置算出部102は、単独測位に必要な上記「GNSS情報」を取得し、単独測位によって車両Vの「絶対位置」を算出するものである。
車両Vの「絶対位置」とは、複数の人工衛星SAからGNSS電波を受信し、既知点にそれぞれ位置する人工衛星SAと車両Vとの間の距離を測定し、それぞれの測定距離(GNSS情報に相当)から未知点を求める3次元方程式を解くことで得られる車両Vの3次元位置である。
図5に示すように、「絶対位置」の位置精度は±10m程度である。
【0034】
相対位置算出部103は、相対測位に必要な上記「GNSS補正情報」を取得し、相対測位によって「絶対位置」を補正し、車両Vの「相対位置」を算出するものである。
車両Vの「相対位置」とは、既知点に位置する基準局STにおいてもGNSS電波を受信し、基準局STから計測誤差がより小さい距離(それぞれの人工衛星SAと車両Vとの間の距離)を取得し、それぞれの測定距離(GNSS補正情報に相当)から求められる車両Vの3次元位置である。
図5に示すように、「相対位置」の位置精度は±40cm程度であり、絶対位置よりも位置精度が高くなっている。
図5では、「GNSS補正情報」を「GNSS情報+RTK情報」と表現している。
「相対位置」の算出方法としては、RTK測位方式(干渉測位方式)の算出方法と、DGPS測位方式(相対測位方式)の算出方法とがある。いずれの算出方法であっても良い。
なお、上記基準局STは、既知点に位置する複数の基準局STのうち、原則として車両Vに最も近い位置に設置されている基準局である。
【0035】
補正位置算出部104は、車両Vの上記「角速度及び加速度の情報」を取得し、「GNSS情報」と、「加速度及び角速度の情報」とに基づいて車両Vの絶対位置を補正した「補正絶対位置」を算出するものである。
車両Vの「補正絶対位置」とは、GNSS情報と、車両Vの角速度及び加速度の情報(IMU情報とも呼ばれる)とを組み合わせて測位することで得られる車両Vの3次元位置である。
「補正絶対位置」の位置精度は、絶対位置よりも位置精度が高くなっている。
【0036】
また、補正位置算出部104は、「GNSS補正情報」と、「加速度及び角速度の情報」とに基づいて車両Vの相対位置を補正した「補正相対位置」を算出する。
図5に示すように、「補正相対位置」の位置精度は±5cm程度であり、絶対位置及び相対位置よりも位置精度が高くなっている。
図5では、「加速度及び角速度の情報」を「IMU情報」と表現し、「GNSS情報+RTK情報+IMU情報」と記載している。
【0037】
受信判定部105は、GNSS情報をリアルタイムで受信できるか否かを判定し、GNSS情報をリアルタイムで受信できると判定した場合には、続けてGNSS補正情報をリアルタイムで受信できるか否かを判定するものである。
具体的には、受信判定部105は、車両Vの周囲に障害物があって人工衛星SAから電波を受信できない場合、また基準局STとの間でデータの送受信ができない場合を想定し、人工衛星SAから電波を受信できるか否か、また基準局STとの間でデータの送受信ができるか否かを判定する。
【0038】
位置特定部106は、受信判定部105による判定結果に基づいて車両の現在位置を特定するものである。
詳しく述べると、位置特定部106は、
図6に示すように、GNSS情報及びGNSS情報をリアルタイムで受信できると判定された場合には(
図6のS3)、最も位置精度が高い「補正相対位置」を用いて車両Vの現在位置を特定する(
図6のS4)。
また、位置特定部106は、GNSS情報をリアルタイムで受信でき、GNSS補正情報をリアルタイムで受信できないと判定された場合には(
図6のS3)、位置精度が高い「補正絶対位置」を用いて車両Vの現在位置を特定する(
図6のS5)。
さらに、位置特定部106は、GNSS情報及びGNSS補正情報をリアルタイムで受信できないと判定された場合には(
図6のS2)、直前に受信した「GNSS情報」と、「加速度及び角速度の情報」とに基づいて算出された「推測位置」を用いて車両Vの現在位置を特定する(
図6のS6)。
なお、「推測位置」は、直前に受信した「GNSS情報」と、当該「GNSS情報」を受信した過去の時点から現時点までの「加速度及び角速度の情報」とに基づいて算出される車両Vの3次元位置である。「推測位置」の位置精度は、「絶対位置」と同等の位置精度となる。
【0039】
映像処理部107は、複数の撮影装置11a-11iから車両Vの外部映像データをそれぞれ取得し、所定のレイアウト情報に基づいてそれぞれの外部映像を合成した合成映像(合成映像データ)を作成するものである。
上記合成映像を生成し、生成した合成映像データを操作装置50に向けて送信することで、複数の外部映像データを送信する場合と比較して送信するデータ量を少なくし(通信回線数を少なくし)、データ通信にかかるコストを削減することができる。
【0040】
通信部108は、車載通信装置40を利用して車両制御装置1と操作装置50の間でデータの送受信を実行するものである。
具体的には、通信部108は、車両Vの「遠隔運転」に必要な情報として、外部情報取得部101によって得られた「外部環境の検出情報」と、位置特定部106によって特定された「現在位置の情報」とを操作装置50に向けて送信する。
なお、通信部108は、外部情報取得部101によって得られた「車両情報」も合わせて操作装置50に向けて送信して良い。
また、通信部108は、オペレータによるユーザ入力を受け付けた操作装置50から、車両Vの運転操作情報を受信する。
【0041】
車両制御部109は、外部情報取得部101によって得られた「外部環境の検出情報」と、位置特定部106によって特定された「現在位置の情報」とに基づいて総合ECU31を制御し、車両Vの「自動運転」を実行する。
また、車両制御部109は、操作装置50から取得した車両Vの「運転操作情報」に基づいて総合ECU31を制御し、車両Vの「遠隔運転」を実行する。
なお、車両制御部109は、車両Vの「自動運転」を実行するにあたって、車載ECU30から車両Vの「車両情報」を取得し、「車両情報」をさらに組み合わせて総合ECU31を制御しても良い。
【0042】
<<サブ機能>>
車両Vの現在位置を特定するにあたって、位置精度をより高めるべく、車両Vの「速度の情報」をさらに取得することとしても良い。
具体的には、速度演算部110が、車両Vの上記「角速度及び加速度の情報」を取得し、当該加速度及び角速度を積分演算することで車両Vの「速度」を演算する。
そして、補正位置算出部104が、「GNSS情報」と、「角速度及び加速度の情報」と、新たに「速度の情報」とを組み合わせて測位することで、位置精度のより高い「補正絶対位置」を算出することができる。あるいは「補正相対位置」を算出することができる。
なお、速度演算部110は、車両Vの「速度」を演算するにあたって「GNSS情報(GNSS補正情報)」と、「加速度及び角速度の情報」とをカルマンフィルタで処理することで、車両Vの「速度」を演算することとしても良い。このようにすれば、より精度良く「速度」を演算することができる。
なお、車両Vの現在位置を特定するにあたって、車両Vの「舵角の情報」を取得し、「舵角の情報」をさらに組み合わせて演算しても良い。例えば車両Vに舵角センサを新たに搭載することで、舵角センサを通じて「舵角の情報」を取得することができる。
なお、車両Vの「速度の情報」を取得するにあたっては、車両Vに車輪速センサを新たに搭載し、車輪速センサを通じて「速度の情報」を取得しても良い。
【0043】
また、車両Vの周囲に障害物が存在しない環境において車両Vの「自動運転」又は「遠隔運転」を実行するにあたっては、車両Vの現在位置の位置精度よりも、データ通信量やデータ通信にかかるコストの削減を優先することとしても良い。
具体的には、位置情報選択部111が、
図6のS7よりも前において、外部情報取得部101によって得られた外部環境の検出情報に基づいて「相対位置」を用いるか、又は「補正相対位置」を用いるかを選択する。
より具体的には、外部環境の検出情報から車両Vの周囲に移動物体や建物(構造物)が存在しない場合(例えば荒野や草原を走行する場合)には、車両制御装置1のデータ通信量を抑えるために「相対位置」を選択すると良い。すなわち、車両Vの角速度及び加速度の情報を取得しないこととして良い(角速度及び加速度の測定を一時的に中断して良い)。
あるいは、外部環境の検出情報から車両Vの周囲に移動物体や建物が存在する場合(例えば市街地を走行する場合)には、車両Vの現在位置の位置精度を優先し、「補正相対位置」選択すると良い。
このようにすれば、車両Vの周囲の外部環境に対応させて、車両Vの現在位置の特定方法を適宜選択することができる。
位置情報選択部111による選択は、予め設定された選択条件又はユーザ設定された選択条件に従ってなされると良い。
【0044】
上記構成により、車両Vの周囲の外部環境(電波状況やデータ通信状況)に対応させて臨機応変に車両Vの位置情報を測定し、より位置精度の高い現在位置を特定することが可能な車両遠隔操作システムを実現することができる。
【0045】
<車両遠隔操作方法>
次に、車両遠隔操作システムSで実行される車両遠隔操作プログラム(車両遠隔操作方法)の処理について、
図6に基づいて説明する。
本実施形態に係る上記プログラムは、記憶部100を備えた車両制御装置1の機能的な構成要素として、上述した外部情報取得部101と、絶対位置算出部102と、相対位置算出部103と、補正位置算出部104と、受信判定部105と、位置特定部106と、映像処理部107と、通信部108と、車両制御部109とを実現させるためのプログラムであって、車両制御装置1のCPUがこの車両整備支援プログラムを実行する。
上記プログラムは、ユーザ(具体的には、運転手又はオペレータ)からの操作指示を受け付けて実行されるものである。
【0046】
図6に示す車両遠隔操作フローでは、まず、外部情報取得部101が、GNSS受信機21を通じて「GNSS情報」を取得開始するステップS1から始まる。
実際には、外部情報取得部101は、GNSS受信機21を通じて「GNSS情報」及び「GNSS補正情報」を取得開始し、また慣性測定装置22を通じて車両Vの「角速度及び加速度の情報」を取得開始する。
なお、外部情報取得部101は、車載センサ10から車両Vの周囲の「外部環境の検出情報」についても取得開始する。
【0047】
次に、ステップS2で、受信判定部105が、GNSS情報をリアルタイムで受信できるか否かを判定する。
「GNSS情報」を受信できると判定した場合には(ステップS2:Yes)、ステップS3に進み、続けて受信判定部105が「GNSS補正情報」をリアルタイムで受信できるか否かを判定する。
受信判定部105が「GNSS補正情報」も受信できると判定した場合には(ステップS3:Yes)、ステップS4に進む。
【0048】
ステップS4では、絶対位置算出部102、相対位置算出部103及び補正位置算出部104によって、車両Vの「補正相対位置(相対位置)」を算出する。
具体的には、まず、絶対位置算出部102が「GNSS情報」を取得し、単独測位によって車両Vの「絶対位置」を算出する。そして、相対位置算出部103が「GNSS補正情報」を取得し、相対測位によって車両Vの「相対位置」を算出する。そして、補正位置算出部104が「角速度及び加速度の情報」を取得し、車両Vの相対位置を補正した「補正相対位置」を算出する。そして、ステップS7に進む。
当該「補正相対位置」は、最も位置精度が高い位置情報である。
【0049】
上記ステップ3で、受信判定部105が「GNSS補正情報」も受信できないと判定した場合には(ステップS3:Nо)、ステップS5に進む。
ステップS5では、絶対位置算出部102及び補正位置算出部104によって、車両Vの「絶対補正位置(絶対位置)」を算出する。
具体的には、まず、絶対位置算出部102が「GNSS情報」を取得し、単独測位によって車両Vの「絶対位置」を算出する。そして、補正位置算出部104が「角速度及び加速度の情報」を取得し、車両Vの絶対位置を補正した「補正絶対位置」を算出する。
そして、ステップS7に進む。
【0050】
上記ステップS2で、受信判定部105が「GNSS情報」を受信できないと判定した場合には(ステップS2:Nо)、ステップS6に進む。
ステップS6では、位置特定部106によって、車両Vの「推測位置」を算出する。
具体的には、位置特定部106が、直前に受信した「GNSS情報」と、「加速度及び角速度の情報」とに基づいて「推測位置」を算出する(推測位置算出部に相当する)。
そして、ステップS7に進む。
【0051】
次に、ステップS7で、位置特定部106が、算出された位置情報を用いて車両Vの現在位置を特定する。
上記ステップS4から進んだ場合には、位置特定部106は、最も位置精度が高い「補正相対位置」を用いて車両Vの現在位置を特定する。
上記ステップS5から進んだ場合には、位置特定部106は、「補正絶対位置」を用いて車両Vの現在位置を特定する。
上記ステップS6から進んだ場合には、位置特定部106は、「推測位置」を用いて車両Vの現在位置を特定する。
【0052】
次に、ステップS8で、通信部108が、車両Vの「遠隔運転」に必要な情報として、位置特定部106によって特定された「現在位置の情報」と、外部情報取得部101によって得られた「外部環境の検出情報」とを操作装置50に向けて送信する。
なお、操作装置50は、これら情報を受信し、現在位置の情報と、外部環境の検出情報とに基づく内容をモニタ51及びナビモニタ52に表示し、必要に応じてオペレータにユーザ報知する。
【0053】
上記ステップS1からステップS8を経ながら、最終的にユーザから遠隔操作の停止を受け付けた場合には(ステップS9:Yes)、
図6のプロセスを終了する。
一方で、遠隔操作の停止を受け付けていない場合には(ステップS9:Nо)、ステップS2に戻る。
上記の車両遠隔操作プログラムの構成により、車両Vの周囲の外部環境に対応させて、車両Vの現在位置をより正確に測定することが可能となる。
【0054】
<その他の実施形態>
上記実施形態では、
図2に示すように、車両遠隔操作システムSが、車両制御装置1と、車載ECU30とを備えており、「自動運転機能(車載ECU30)」を搭載した車両Vに対して「遠隔運転機能(車両制御装置1)」を新たに付与するものであったが、特に限定されることなく変更可能である。
例えば、車両制御装置1が車載ECU30の機能も備えることとしても良い。すなわち、車両遠隔操作システムSが、車両制御装置1(車載ECU30の機能を含む)と、車載センサ10と、車載ロケータ20と、車載通信装置40と、操作装置50と、から主に構成されていても良い(車載ECU30を構成から外しても良い)。
【0055】
上記実施形態では、
図2に示すように、車両遠隔操作システムSが、車両制御装置1と、車載ロケータ20とを備えているが、特に限定されることなく、車両制御装置1が車載ロケータ20を有することとしても良い。
その場合、車載ロケータ20が、車両Vの絶対位置を算出する絶対位置算出部102と、車両Vの相対位置を算出する相対位置算出部103と、車両Vの補正相対位置を算出する補正位置算出部104とを有していると良い。そして、車両制御装置1が、車両Vの絶対位置、相対位置、補正相対位置の情報をそれぞれ取得すると良い。
【0056】
上記実施形態では、
図2、
図4に示すように、補正位置算出部104が、慣性測定装置22から車両Vの加速度及び角速度の情報を取得し、車両Vの補正相対位置を算出しているが、特に限定されることなく変更可能である。
例えば、車両制御装置1が車両Vの現在位置を特定するにあたって、車両Vの加速度及び角速度の情報を取得しない(利用しない)こととしても良い。その場合には、車両Vの「絶対位置」、「相対位置」を用いて車両Vの現在位置を特定することになる。
また例えば、車両制御装置1が車両Vの現在位置を特定するにあたって、車両Vの加速度及び角速度の情報を取得せず(利用せず)、車両Vの速度の情報を取得する(利用する)こととしても良い。
【0057】
上記実施形態では、
図2に示すように、撮影装置11が、車載センサ10の一部として車両Vの周囲の外部環境の情報を検出するものであるが、特に限定されることなく、撮影装置11は、車両Vの周囲の外部映像を取得するだけであっても良い。
すなわち、レーダ12及びライダ13が、車載センサ10として車両Vの周囲の外部環境の情報を検出する機能を果たすものであっても良い。
【0058】
上記実施形態では、車両制御装置1が読み取り可能な記録媒体に車両遠隔操作プログラムが記憶されており、車両制御装置1が当該プログラムを読み出して実行することによって処理が実行される。ここで車両制御装置1が読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。
そのほか、車両制御装置1となる端末(携帯端末)を利用して専用ウェブアプリを起動させて、ウェブブラウザ上で車両遠隔操作プログラムが実行されることとしても良い。
【0059】
上記実施形態では、主として本発明に係る車両遠隔操作システム及び車両遠隔操作方法に関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0060】
S 車両遠隔操作システム
V 車両
V1 電動パワーステアリング
V1a ハンドル
V2 電動スロットル
V2a アクセルペダル
V3 電磁ブレーキ装置
V3a ブレーキペダル
1 車両制御装置
10 車載センサ
11 撮影装置
11a-11i 第1撮影装置-第9撮影装置
12 レーダ(ミリ波レーダ)
12a-12d 第1レーダ-第4レーダ
13 ライダ
13a-13e 第1ライダ-第5ライダ
20 車載ロケータ
21 GNSS受信機(RTK-GNSS受信機)
22 慣性測定装置(IMU)
30 車載ECU
31 総合ECU
32 ハンドルECU
33 アクセルECU
34 ブレーキECU
40 車載通信装置
50 操作装置
51 表示モニタ
52 表示ナビモニタ
53 ハンドル
54 アクセルペダル
55 ブレーキペダル
56 操作スイッチ
100 記憶部
101 外部情報取得部
102 絶対位置算出部
103 相対位置算出部
104 補正位置算出部
105 受信判定部
106 位置特定部
107 映像処理部
108 通信部(第1通信部)
109 車両制御部
110 速度演算部
111 位置情報選択部
500 記憶部
501 通信部(第2通信部)
502 画面表示部
503 操作データ作成部
504 ユーザ報知部
SA 人工衛星
ST 基準局