(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】車両のサイドミラー装置
(51)【国際特許分類】
B60R 1/06 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
B60R1/06 Z
(21)【出願番号】P 2019183734
(22)【出願日】2019-10-04
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】日台 英樹
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-049538(JP,U)
【文献】実開昭63-169343(JP,U)
【文献】実開昭58-181638(JP,U)
【文献】米国特許第5889627(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の側部に設けられ、後方に向かって開口するハウジングと、前記ハウジングに収容されるミラー本体と、を備える車両のサイドミラー装置であって、
前記ミラー本体の縁部を保持する保持部と、
前記ミラー本体の鏡面とは反対側の裏面のうち前記縁部とは別の部位である対向部に対向して設けられ、前記対向部に当接することで前記ハウジングの内側への前記ミラー本体の撓み変形を規制する規制部と、を有
し、
前記規制部は、座部と、前記座部に支持されるとともに前記対向部に当接可能な当接部と、を有しており、
前記座部は、前記当接部の外周を取り囲む側壁部を有している、
車両のサイドミラー装置。
【請求項2】
前記対向部は、前記ミラー本体の面方向における中央部である、
請求項1に記載の車両のサイドミラー装置。
【請求項3】
前記規制部は、前記ハウジングとは別体であり、前記ハウジングに取り付けられている、
請求項1または請求項2に記載の車両のサイドミラー装置。
【請求項4】
前記当接部は、軟質材料により形成されている、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の車両のサイドミラー装置。
【請求項5】
前記規制部は、前記対向部に当接している、
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の車両のサイドミラー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のサイドミラー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の両側部には、後方確認のための一対のサイドミラー装置が設けられている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のサイドミラー装置は、車体パネルから延びるベース部材に取り付けられ、車両後方に向かって開口するハウジングと、ハウジングに収容されるミラー本体とを備えている。ハウジングは、ミラー本体の縁部を保持している。ハウジングは、ミラー本体の裏面側、すなわち車両前側に収容空間を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のサイドミラー装置において、例えばミラー本体に対して車両後方から物体が衝突することによってミラー本体に割れが生じるおそれがある。そこで、ミラー本体の割れを抑制するためにミラー本体の板厚を大きくすると、ミラー本体の重量が増大するといった背反が生じる。なお、こうした問題は、ミラー本体の面積が大きくなるほど顕著となる。
【0005】
本発明の目的は、ミラー本体の重量の増大を抑制しつつ、ミラー本体の割れを抑制することのできるサイドミラー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための車両のサイドミラー装置は、車両の側部に設けられ、後方に向かって開口するハウジングと、前記ハウジングに収容されるミラー本体と、を備えるものであって、前記ミラー本体の縁部を保持する保持部と、前記ミラー本体の鏡面とは反対側の裏面のうち前記縁部とは別の部位である対向部に対向して設けられ、前記対向部に当接することで前記ハウジングの内側への前記ミラー本体の撓み変形を規制する規制部と、を有する。
【0007】
同構成によれば、例えばミラー本体に対して車両後方から物体が衝突することにより、ミラー本体がハウジングの内側へ撓み変形しようとすると、ミラー本体の対向部が規制部に当接することでハウジングの内側へのミラー本体の撓み変形が規制される。このため、ミラー本体の割れを抑制することができる。したがって、ミラー本体の重量の増大を抑制しつつ、ミラー本体の割れを抑制することができる。
【0008】
上記車両のサイドミラー装置において、前記対向部は、前記ミラー本体の面方向における中央部であることが好ましい。
ミラー本体は、その面方向における中央部に近づくほど撓みやすい。
【0009】
この点、上記構成によれば、ミラー本体の撓み変形を効果的に規制することができる。
上記車両のサイドミラー装置において、前記規制部は、前記ハウジングとは別体であり、前記ハウジングに取り付けられていることが好ましい。
【0010】
同構成によれば、規制部がハウジングとは別体となるため、規制部の形状をハウジングの形状とは独立して設定できる。したがって、規制部の設計の自由度を高めることができるとともに、規制部及びハウジングの双方を容易に形成することができる。
【0011】
上記車両のサイドミラー装置において、前記規制部は、軟質材料により形成され、前記対向部に当接可能な当接部を有することが好ましい。
同構成によれば、ミラー本体から規制部に印加される荷重が、軟質材料により形成された当接部によって吸収される。また、ミラー本体及び規制部の寸法のばらつきが当接部が弾性変形することによって吸収される。このため、ミラー本体の対向部と規制部との隙間を一層小さく設定すること、あるいは無くすことが可能となる。これらのことから、ミラー本体の撓み変形を一層効果的に規制することができる。
【0012】
上記車両のサイドミラー装置において、前記規制部は、前記対向部に当接していることが好ましい。
同構成によれば、規制部と対向部との隙間が無いため、ハウジングの内側へのミラー本体の撓み変形を一層効果的に規制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ミラー本体の重量の増大を抑制しつつ、ミラー本体の割れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】車両のサイドミラー装置の一実施形態を示す斜視図。
【
図2】同実施形態のミラー本体、規制部、及びハウジングを互いに離間して示す分解斜視図。
【
図4】変更例のサイドミラー装置における
図3に対応する断面図。
【
図5】他の変更例のサイドミラー装置における
図3に対応する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、
図1~
図3を参照して、一実施形態について説明する。
図1に示すように、サイドミラー装置は、自動車の両側部に設けられ、運転席に座った運転者が車両の後方を視認するために使用される。なお、本実施形態のサイドミラー装置は、トラックやバスなどの大型自動車に搭載される。
【0016】
サイドミラー装置は、ハウジング10と、ハウジング10に収容されるミラー本体20とを備えている。ハウジング10は、車体パネルPから延びるステー40の先端に取り付けられている。以降において、車両の前後方向の前方及び後方を、単に前方及び後方として説明する。
【0017】
図2及び
図3に示すように、ハウジング10は、椀状であり、後方に向かって開口する開口部10aを有している。ハウジング10は、硬質の樹脂材料によって形成されている。
【0018】
ハウジング10は、底壁11と、底壁11に連なり、開口部10aに対向する対向壁12とを有している。
対向壁12のうち面方向における中央部には、ハウジング10の内側、すなわち後方へ向けて突出する一対の突出部13が設けられている。一対の突出部13は、車幅方向に互いに間隔をおいて設けられている。各突出部13の後面には、ねじ孔14aを有する取付部14が突設されている。
【0019】
図1及び
図2に示すように、底壁11及び対向壁12に跨がる部分には、ステー40の先端に設けられたボールジョイント(図示略)に連結される連結部15が設けられている。このボールジョイントにより、ハウジング10は、ステー40に対して角度調整可能である。
【0020】
開口部10aの周縁部には、内周側に向けて突出する外側爪部16が全周にわたって設けられている。
ハウジング10の内面において、外側爪部16の内側、すなわち前側には、複数の内側爪部17が設けられている。複数の内側爪部17は、周方向に互いに間隔をおいて設けられている。
【0021】
ハウジング10の内面において、各内側爪部17の内側には、複数のリブ18が設けられている。複数のリブ18は、周方向に互いに間隔をおいて設けられている。
図1~
図3に示すように、ミラー本体20は、その鏡面21Aを後方に向けた姿勢でハウジング10に収容されている。具体的には、ミラー本体20は、その縁部22が外側爪部16と内側爪部17との間に配置されることにより、ハウジング10に収容されている。ミラー本体20は、外側爪部16及び内側爪部17によって、縁部22の後方及び前方への変位が規制されている。外側爪部16と、内側爪部17とで、本発明に係る保持部が構成されている。
【0022】
ミラー本体20は、面方向における中央部23に近づくほど後方に位置するように湾曲している(
図3参照)。
ミラー本体20の鏡面21Aとは反対側の裏面21Bの面方向における中央部23に対向する部分には、規制部30が設けられている。なお、ミラー本体20の裏面21Bの面方向における中央部23が、本発明に係る対向部に相当する。
【0023】
図3に示すように、規制部30は、ハウジング10に取り付けられる座部31と、座部31に支持される当接部35とを有している。
座部31は、ハウジング10の各取付部14に取り付けられた取付座32と、取付座32から後方へ延びる四角筒状の周壁33と、周壁33の後端を連結する後壁34とを有している。座部31は、硬質の樹脂材料によって、ハウジング10とは別体に形成されている。
【0024】
各取付座32には、貫通孔32aが設けられている。
当接部35は、例えば、ブチルゴムなどの軟質材料によって形成されたシート材である。
【0025】
当接部35の前面と後壁34の後面とは、互いに接着されている。
当接部35の後面は、ミラー本体20の裏面21Bの形状に沿って弾性変形している。すなわち、当接部35の後面全体が、ミラー本体20の裏面21Bに当接している。
【0026】
ハウジング10に対する規制部30の取り付けに際しては、取付座32の貫通孔32aにねじ36が後方から挿通されるとともに、取付部14のねじ孔14aにねじ36が螺入される。これにより、突出部13の取付部14に対して座部31の取付座32が締結されている。このようにして、ハウジング10に対して規制部30が取り付けられている。
【0027】
次に、本実施形態の作用について説明する。
ミラー本体20に対して後方から物体が衝突すると、ミラー本体20がハウジング10の内側、すなわち前方へ撓み変形しようとする。こうした現象は、ミラー本体20の面方向における中央部23ほど発生し易い。
【0028】
ここで、
図3に示すように、ミラー本体20の中央部23が規制部30の当接部35に当接している。上記衝突に伴うミラー本体20から規制部30に印加される荷重が、軟質材料により形成された当接部35によって吸収される。これにより、上記衝突によってハウジング10の内側へのミラー本体20の撓み変形が規制される(以上、作用1)。
【0029】
さらに、ミラー本体20及び規制部30の寸法のばらつきが当接部35が弾性変形することによって吸収される(以上、作用2)。
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0030】
(1)車両のサイドミラー装置は、ハウジング10と、ハウジング10に収容されるミラー本体20とを備えている。サイドミラー装置は、ミラー本体20の縁部22を保持する外側爪部16及び内側爪部17と、ミラー本体20の裏面21Bの中央部23に対向して設けられ、中央部23に当接することでハウジング10の内側へのミラー本体20の撓み変形を規制する規制部30とを有している。
【0031】
こうした構成によれば、上述した作用1を奏することから、ミラー本体20の重量の増大を抑制しつつ、ミラー本体20の割れを抑制することができる。
(2)規制部30は、ハウジング10とは別体であり、ハウジング10に取り付けられている。
【0032】
こうした構成によれば、規制部30がハウジング10とは別体となるため、規制部30の形状をハウジング10の形状とは独立して設定できる。したがって、規制部30の設計の自由度を高めることができるとともに、規制部30及びハウジング10の双方を容易に形成することができる。
【0033】
(3)規制部30は、軟質材料により形成され、中央部23に当接可能な当接部35を有する。
こうした構成によれば、上述した作用1及び作用2を奏することから、ミラー本体の中央部23と規制部30との隙間を無くすことができる。このため、ミラー本体20の撓み変形を一層効果的に規制することができる。
【0034】
<変更例>
上記実施形態は、例えば以下のように変更して実施することもできる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0035】
・当接部35は、ミラー本体20が撓んだときに中央部23と当接されるものであればよく、規制部30と僅かに離間している構成であってもよい。
・規制部30の座部31とハウジング10とを、一体に形成してもよい。
【0036】
・座部31とハウジング10との固定態様は、ねじ36によるものに限られるものではない。例えば突出部13を省略し、座部31とハウジングとを接着または熱溶着によって固定する態様であってもよい。または、座部31とハウジングとの間に、ブチルゴムなどの接着シートを介して、双方を固定する態様であってもよい。
【0037】
こうした構成によれば、ハウジングの形状を簡単にすることができる。
・規制部の形状は、上記実施形態のものに限られない。
例えば、
図4に示す座部50は、ハウジング10の前面に開口51aを有する第1凹部51と、第1凹部51の底部に連通する筒状の注入部52と、注入部52に連通され、ミラー本体20の裏面21B側に向けて開口する第2凹部53とを備えている。
【0038】
第2凹部53は、注入部52の後端から外方へ延びるベース壁部53aと、ベース壁部53aを取り囲むとともに後方へ延びる筒状の側壁部53bとを有している。
当接部54は、注入部52を通じて、ベース壁部53a、側壁部53b、及びミラー本体20の裏面21Bで囲まれた空間に、ホットメルト樹脂やウレタンなどの溶融樹脂が注入されることにより形成されている。当接部54の後面は、ミラー本体20の裏面21Bに当接している。なお、座部50と、当接部54とで本発明に係る規制部が構成されている。
【0039】
また、開口51aは、カバー部材55によって前側から覆われている。これにより、意匠性を確保することができる。
・
図4に示すような座部50及び当接部54を一体に形成してもよい。この場合、当接部54が硬質の樹脂材料によって形成される。
【0040】
・規制部が保持部に取り付けられている構成であってもよい。
例えば、
図5に示す周知の傾動機構を備えるサイドミラー装置では、ミラー本体20は、ハウジング10とは別体に形成された保持カバー61に保持されている。保持カバー61は、ミラー本体20の裏面21Bとハウジング10との間に設けられ、同裏面21B全体を、間隔をおいて覆っている。保持カバー61の縁部には、ミラー本体20の縁部22を保持する爪部61bが設けられている。保持カバー61が本発明に係る保持部に相当する。
【0041】
保持カバー61は、ミラー本体20の裏面21Bに向けて延びる筒状の突壁62を有している。保持カバー61には、突壁62によって囲まれる空間に連通する開口61aが設けられている。規制部64は、開口61aを通じて、保持カバー61、突壁62及びミラー本体20の裏面21Bで囲まれた空間に、ホットメルト樹脂やウレタンなどの溶融樹脂が注入されることにより形成されている。傾動機構は、ステー40に連結された駆動部71、駆動部71によって前後方向に進退駆動されるとともに、その後端が保持カバー61に連結されたピストン72、及び駆動部71と保持カバー61の中央部とを連結する軸部73を備えている。
【0042】
こうしたサイドミラー装置の傾動動作に際しては、操作者によって入力された信号に基づいて駆動部71がピストン72を進退させる。このことにより、軸部73を中心として、ミラー本体20がハウジング10に対して傾動される。
【0043】
・ミラー本体20の裏面21Bのうち、中央部23以外の部位のみに対向する規制部を設けることもできる。
・互いに離間する複数の規制部を設けてもよい。
【0044】
・本発明に係るサイドミラー装置は、トラックやバスなどの大型自動車に限られず、普通自動車や小型自動車などその他の車両に適用することもできる。
【符号の説明】
【0045】
10…ハウジング、10a…開口部、11…底壁、12…対向壁、13…突出部、14…取付部、14a…ねじ孔、15…連結部、16…外側爪部(保持部)、17…内側爪部(保持部)、18…リブ、20…ミラー本体、21A…鏡面、21B…裏面、22…縁部、23…中央部(対向部)、30…規制部、31…座部、32…取付座、32a…貫通孔、33…周壁、34…後壁、35…当接部、36…ねじ、40…ステー、50…座部(規制部)、51…第1凹部、51a…開口、52…注入部、53…第2凹部、53a…ベース壁部、53b…側壁部、54…当接部(規制部)、55…カバー部材、61…保持カバー(保持部)、61a…開口、61b…爪部、62…突壁、64…規制部、71…駆動部、72…ピストン、73…軸部。