(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】センサユニット
(51)【国際特許分類】
F16C 41/00 20060101AFI20230511BHJP
F16C 19/06 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
F16C41/00
F16C19/06
(21)【出願番号】P 2019186474
(22)【出願日】2019-10-10
【審査請求日】2022-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 知之
(72)【発明者】
【氏名】杉田 澄雄
(72)【発明者】
【氏名】岡村 俊彦
【審査官】日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-189128(JP,A)
【文献】特開2013-32970(JP,A)
【文献】特開平8-254172(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102011084261(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 41/00-41/04
F16C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状の厚肉部と、前記厚肉部から径方向内側へ延び且つ前記厚肉部よりも厚さが薄い板状の薄肉部と、を有する、円環状の支持体と、
前記支持体の前記薄肉部に固定されるセンサと、を備え、
前記厚肉部に、前記径方向と直交する、軸方向に延びる位置決め穴が設けられる、
センサユニット。
【請求項2】
前記支持体の前記厚肉部は、センサユニットが取り付けられる被取付部材に固定部材を介して固定され、
前記固定部材には、前記支持体の前記位置決め穴と重なる位置決め用貫通孔が設けられる、
請求項1に記載のセンサユニット。
【請求項3】
前記支持体の前記位置決め穴と前記固定部材の前記位置決め用貫通孔とには、前記位置決め穴の穴径及び前記位置決め用貫通孔の孔径よりも細い径を有する位置決めピンが挿入されている、
請求項2に記載のセンサユニット。
【請求項4】
前記支持体の前記位置決め穴と前記固定部材の前記位置決め用貫通孔とには、圧入ピンが圧入されている、
請求項2に記載のセンサユニット。
【請求項5】
センサユニットが取り付けられる被取付部材には、位置決め用穴が設けられ、
前記支持体の前記位置決め穴と前記被取付部材の前記位置決め用穴とには、圧入ピンが圧入されている、
請求項1に記載のセンサユニット。
【請求項6】
前記支持体の前記薄肉部は、径方向中央部に挿通孔が設けられた円環状の形状を有し、
前記挿通孔には、回転シャフトが挿入され、
前記回転シャフトは、軸受を介して、センサユニットが取り付けられる被取付部材に対して相対的に回転可能であり、
前記センサは、加速度センサ及び温度センサの少なくともいずれかである、
請求項1から5のいずれか1項に記載のセンサユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、センサユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
軸受装置において、センサを搭載した間座側のセンサユニットを軸受装置に隣接して被取付部材に装着する場合がある(例えば、特許文献1参照)。間座側のセンサユニットには、加速度センサや温度センサなどの状態を監視するセンサ類が設けられることがある。加速度センサは検出軸があり、測定したい振動方向とセンサの検出軸を合わせことで、精度の高い値を検出することができる。また、温度センサを測定したい位置(例えば、軸受の負荷圏)に合わせて設置することで、温度上昇の兆候をいち早く捉えることが出来る。このようにセンサの種類やアプリケーション等によってセンサユニットの位置を合わせる必要が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、センサユニットはリング形状を有する場合が多いため、形状のみでセンサユニットの周方向の位置を特定して被取付部材に装着することは難しい。また、加速度軸などをセンサ自体にマーキングすることは可能だが、マークを目印に被取付部材に装着することは、作業者への負担が大きく、またセンサユニットの位置(例えば検出軸の精度)を一定の範囲で保証することは困難である。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、被取付部材に対する周方向の位置決めを簡単に行うことが可能なセンサユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様のセンサユニットは、円環状の厚肉部と、前記厚肉部から径方向内側へ延び且つ前記厚肉部よりも厚さが薄い板状の薄肉部と、を有する、円環状の支持体と、前記支持体の前記薄肉部に固定されるセンサと、を備え、前記厚肉部に、前記径方向と直交する、軸方向に延びる位置決め穴が設けられる。これによれば、位置決め穴を用いて、センサユニットの周方向の位置決めを簡単に行うことができ、センサの周方向の位相を一意に定めることが容易となる。
【0007】
上記のセンサユニットの他の態様として、前記支持体の前記厚肉部は、センサユニットが取り付けられる被取付部材に固定部材を介して固定され、前記固定部材には、前記支持体の前記位置決め穴と重なる位置決め用貫通孔が設けられることが望ましい。これによれば、支持体の位置決め穴の位置を定める場合に、固定部材の位置決め用貫通孔と重なる位置にすることにより、位置決め穴の正当な位置が定まる。よって、支持体の周方向の位置決め作業がより容易になる。
【0008】
上記のセンサユニットの他の態様として、前記支持体の前記位置決め穴と前記固定部材の前記位置決め用貫通孔とには、前記位置決め穴の穴径及び前記位置決め用貫通孔の孔径よりも細い径を有する位置決めピンが挿入されていることが望ましい。これによれば、位置決めピンによって、固定部材の貫通孔と支持体の位置決め穴との位置が固定されるため、振動等の外部荷重が支持体に入力されても支持体の位置ズレが発生しにくいため、センシングデータの信頼性を向上することができる。また、位置決めピンは、支持体の位置決め穴の穴径及び固定部材の位置決め用貫通孔の孔径よりも細い径を有するため、位置決めピンを位置決め穴及び位置決め用貫通孔に容易に挿入することができる。
【0009】
上記のセンサユニットの他の態様として、前記支持体の前記位置決め穴と前記固定部材の前記位置決め用貫通孔とには、圧入ピンが圧入されていることが望ましい。これによれば、固定部材の位置決め用貫通孔と支持体の位置決め穴との双方に圧入ピンが圧入されることにより、支持体を固定部材に強固に固定することができる。従って、支持体に振動等の外部荷重が入力されても支持体の位置ズレがより発生しにくい。
【0010】
上記のセンサユニットの他の態様として、センサユニットが取り付けられる被取付部材には、位置決め用穴が設けられ、前記支持体の前記位置決め穴と前記被取付部材の前記位置決め用穴とには、圧入ピンが圧入されていることが望ましい。これによれば、被取付部材の位置決め用穴と支持体の位置決め穴との双方に圧入ピンが圧入されることにより、固定部材を用いずに支持体を被取付部材に固定することができる。また、圧入ピンを介して、支持体を被取付部材に固定するため、支持体の取付剛性が高くなり、支持体に振動等の外部荷重が入力されても支持体の位置ズレがより発生しにくい。
【0011】
上記のセンサユニットの他の態様として、前記支持体の前記薄肉部は、径方向中央部に挿通孔が設けられた円環状の形状を有し、前記挿通孔には、回転シャフトが挿入され、前記回転シャフトは、軸受を介して、センサユニットが取り付けられる被取付部材に対して相対的に回転可能であり、前記センサは、加速度センサ及び温度センサの少なくともいずれかであることが望ましい。これによれば、加速度センサによって、例えば軸受の振動を検出することができ、温度センサによって、例えば軸受の周囲温度を検出することができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示に係るセンサユニットによれば、位置決め穴を用いて、支持体の周方向の位置決めを容易に行うことができ、センサの周方向の位相を一意に定めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、第1実施形態のセンサユニットを備えるセンサ付き軸受の斜視図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態のセンサユニットの背面図である。
【
図5】
図5は、回転シャフト、センサ付き軸受及び筐体の断面図である。
【
図7】
図7は、センサユニットの筐体に対する位置決め作業の途中の状態を示す断面図である。
【
図8】
図8は、センサユニットの筐体に対する位置決め作業の途中の状態を示す断面図である。
【
図10】
図10は、リテーナ、マグネット及びスペーサの断面図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態のセンサ付き軸受の一部を拡大した断面図である。
【
図12】
図12は、第1変形例のセンサ付き軸受の一部を拡大した断面図である。
【
図13】
図13は、第2変形例のセンサ付き軸受の一部を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0015】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態のセンサユニットを備えるセンサ付き軸受の斜視図である。
図2及び
図3は、
図1のセンサ付き軸受の分解斜視図である。
図2はセンサ付き軸受をカバー側から見た図であり、
図3はセンサ付き軸受を軸受側から見た図である。
図1から
図3に示すように、センサ付き軸受100は、センサユニット110と、マグネット31と、スペーサ33と、シール材60と、後述するリテーナ50(
図5等参照)と、軸受120と、を備える。
図2及び
図3に示すように、センサユニット110は、カバー10(支持体)と、コイル基板20と、回路基板40と、を備える。
【0016】
カバー10(支持体)は、径方向外側(外周側)の端部に配置された円環状(リング状)の厚肉部11と、厚肉部11の径方向内側(内周側)に配置された薄肉部12と、を有する。薄肉部12は、厚肉部11から径方向内側へ延びる板状の部位である。薄肉部12の径方向中央部には、挿通孔H12が設けられる。挿通孔H12には、後述するように、
図5に示す回転シャフト70が挿入される。厚肉部11は、薄肉部12よりも厚い。換言すると、薄肉部12の外周端部に、裏面12a側(軸受120側)に向けて突出する厚肉部11が設けられる。厚肉部11には、詳細に後述する位置決め穴11eが設けられる。
図1に示すように、検出軸のX軸及びY軸がマーキングされている。X軸は、平面視で、軸心Axから位置決め穴11eに向かう径方向に延びる。Y軸は、周方向に沿って直線状に延びる。なお、図示しないが、Z軸は軸心Axに沿って延びる。X軸、Y軸及びZ軸は、互いに直交する。カバー10は、ケイ素鋼板、炭素鋼(JIS規格 SS400又はS45C)、マルテンサイト系ステンレス(JIS規格 SUS420)又はフェライト系ステンレス(JIS規格 SUS430)のいずれかのような磁性を有する材料で形成される。
【0017】
図3に示すように、回路基板40及びコイル基板20は、薄肉部12の裏面12aに取り付けられている。ここで、裏面12aは、軸受120と対向する面である。後述する
図5等で説明する薄肉部12の表面12dは、軸受120とは反対側の面である。回路基板40は、電源基板41と、センサ基板42とを有する。例えば、
図1及び
図2に示すように、薄肉部12に開けられた雌ねじ穴に、黄銅など非磁性材料のボルト19Bが締結することで、電源基板41とセンサ基板42とが薄肉部12の裏面12aに固定される。
図1及び
図2に示すように、ボルト19Bは、カバー10に取り付けられた状態で、カバー10から突出しない長さを有する。
【0018】
また、カバー10には、孔が開けられ、樹脂などの非磁性材料で形成された非磁性蓋17で密閉されている。後述するように、センサ基板42には、アンテナ47(
図4参照)が実装される。
【0019】
図4は、第1実施形態のセンサユニットの背面図である。
図4に示すように、薄肉部12の裏面12aには、電源基板41とセンサ基板42とが取り付けられている。電源基板41とセンサ基板42は、平面視で、厚肉部11とコイル基板20との間に位置する。電源基板41には、電源部43が実装されている。コイル基板20とマグネット31とで発電部が構成される。電源部43は、発電部から供給された単相交流電力を直流電圧に変換して、センサ基板42へ供給する。
【0020】
センサ基板42には、センサ44と、通信回路を有する制御部45と、アンテナ47とが実装されている。電源部43からの直流電力は、センサ44及び制御部45に供給される。センサ44、制御部45及びアンテナ47は、別々のIC(Integrated Circuit)チップで構成されていてもよいし、それらの一部又は全部が1つのICチップで構成されていてもよい。センサ44は、供給される直流電力を使用して、各種の物理量又は化学量を検出する。例えば、センサ44は、軸受120の振動を検出する加速度センサ441と、軸受120の周囲温度を検出する温度センサ442と、を含む。加速度センサ441は、センサ基板42を薄肉部12に固定するボルト19Bの近くに配置している。センサ基板42の部位のうち、ボルト19Bの近傍部は振動等が少ないため、より正確な加速度を検出でき、加速度センサ441を設置する位置として好適である。
【0021】
図4に示すように、コイル基板20は、フレキシブル基板21と、フレキシブル基板21に設けられたコイルパターン23と、フレキシブル基板21に設けられた複数のヨーク25と、を有する。フレキシブル基板21の平面視による形状は、軸心Axを中心とする正円のリング状である。コイルパターン23は、フレキシブル基板21の厚さ方向に積層された複数の平面コイルを有する。平面コイルとは、絶縁体の所定の面上にパターニングされて設けられた導電体のパターンである。本実施形態においては、導電体のパターンが絶縁体の複数の面上に形成されている。これに限られず、導電体のパターンが絶縁体の1つの面上に形成されていてもよい。
【0022】
図4に示すように、コイルパターン23の両端は、リード線16を介して電源基板41に接続される。なお、本実施形態において、コイルパターン23と電源基板41との接続は、リード線16ではなく、FPC(Flexible Printed Circuit)コネクタを介して行われてもよい。または、コイル基板20を延長して電源基板41と直接接続されてもよい。
【0023】
図4に示すように、コイルパターン23は、複数の第1導電部231と、複数の第2導電部232と、を有する。第1導電部231は、軸心Axを中心とする円の周方向に延びる。第2導電部232は、軸心Axを中心とする円の径方向に延びる。第1導電部231と第2導電部232は、交互に直列に接続されている。
【0024】
ヨーク25は、平面視で、第1導電部231の一方の側に位置する第1ヨーク25Aと、第1導電部231の他方の側に位置する第2ヨーク25Bとを有する。例えば、第1ヨーク25Aは、第1導電部231よりも軸心Axから遠い側に位置する。第2ヨーク25Bは、第1導電部231よりも軸心Axから近い側に位置する。但し、第1ヨーク25Aと軸心Axとの距離と、第2ヨーク25Bと軸心Axとの距離は、互いに同じ長さである。
【0025】
例えば、コイルパターン23は、平面視で、軸心Axを中心とする円の円周方向に沿って凹凸が交互に並ぶように延設されている。この凹凸の凹部233にヨーク25が1つずつ配置されている。
【0026】
本実施形態では、マグネット31は、磁気トラックと基材とが一体となったエンコーダマグネットである。例えば、エンコーダマグネットは、金属製の基材の一方の面にプラスチックマグネットが形成され、形成されたプラスチックマグネットの表面にN極とS極とが交互に着磁されることにより形成される。
【0027】
図5は、回転シャフト、センサ付き軸受及び筐体の断面図である。
図6は、
図5の一部を拡大した断面図である。
図7は、センサユニットの筐体に対する位置決め作業の途中の状態を示す断面図である。
図8は、センサユニットの筐体に対する位置決め作業の途中の状態を示す断面図である。
図9は、
図6の一部を拡大した断面図である。
図10は、リテーナ、マグネット及びスペーサの断面図である。なお、以下において、「軸方向」は、回転シャフト70の軸方向を示し、「径方向」は、回転シャフト70の径方向を示す。軸方向と径方向は、交差(直交)する。「周方向」は、回転シャフト70の軸心Axの軸回り方向を示す。
【0028】
図5に示すように、被取付部材となる筐体80の縦壁面80bと、固定部材81と、の間に、センサユニット110と軸受120とが軸方向に挟持される。以下、順を追って説明する。
【0029】
センサユニット110の径方向中央部には、
図2、
図3及び
図6に示す挿通孔H12が設けられる。挿通孔H12には、
図5に示すように、回転シャフト70が挿入されている。回転シャフト70は、軸心Axを中心として回転可能である。回転シャフト70は、大径部71と、小径部72と、を有する。小径部72は、大径部71よりも外径が小さい。よって、小径部72の外周面72aは、大径部71の外周面71aよりも径方向内側に位置する。大径部71の外周面71aと小径部72の外周面72aとの境界部には、第1壁71bが設けられる。第1壁71bは、大径部71の外周面71aにおける小径部72側の端縁と、小径部72の外周面72aにおける大径部71側の端縁と、を連結する。第1壁71bは、径方向に延びる平坦な壁である。
【0030】
筐体80(被取付部材)は、回転シャフト70の径方向外側に回転シャフト70から離隔して配置される。筐体80は、内周面80aと、縦壁面80bと、を有する。内周面80aは、軸心Axを中心として周方向に延びる。縦壁面80bは、径方向に延びる。筐体80は、例えば工作機械等の種々の設備に設けられたケースである。
【0031】
軸受120は、外輪122と、内輪121と、転動体123と、を有する。
【0032】
外輪122は、外周面122aと、内周面122bと、外側壁122cと、内側壁122dと、を有する。外周面122a及び内周面122bは、軸心Axを中心として周方向に延びる。外側壁122c及び内側壁122dは、径方向に延びる平坦な壁である。外側壁122cと内周面122bとの角部には、切欠部122eが設けられる。内側壁122dと内周面122bとの角部には、切欠部122fが設けられる。
【0033】
内輪121は、外周面121b(径方向外側端)と、内周面121aと、外側壁121cと、内側壁121dと、を有する。
図7に示すように、内周面121aと外側壁121cとの角部は、円弧状に湾曲した湾曲部121gの形状を有する。外周面121b及び内周面121aは、軸心Axを中心として周方向に延びる。外側壁121c及び内側壁121dは、径方向に延びる平坦な壁である。外側壁121cと外周面121bとの角部には、切欠部121eが設けられる。内側壁121dと外周面121bとの角部には、切欠部121fが設けられる。転動体123は、外輪122と内輪121との間に設けられる。また、シール材60の外周端部は、切欠部122eに挿入されてはめ込み、加締め、あるいは溶接などで外輪122に固定される。シール材61の外周端部は、切欠部122fに挿入されてはめ込み、加締め、あるいは溶接などで外輪122に固定される。
【0034】
前述のように、
図5及び
図6に示すカバー10は、薄肉部12と、厚肉部11とを有する。薄肉部12の裏面12aには、コイル基板20(発電コイル)と、回路基板40と、が固定される。具体的には、裏面12aにおいて、径方向内側の端部にコイル基板20が位置し、コイル基板20よりも径方向外側に回路基板40が位置する。薄肉部12の裏面12aにコイル基板20が固定されている。コイル基板20は、例えば接着剤を介して固定される。
図6及び
図9に示すように、カバー10の径方向内側端12bは、大径部71の外周面71aよりも径方向内側に位置する。具体的には、径方向内側端12bと外周面71aとの径方向に沿った距離は、第1距離D1である。カバー10の径方向内側の端部10aにおける径方向内側の端縁が径方向内側端12bである。カバー10の径方向内側の端部10aの表面12dと第1壁71bとは、軸方向に沿って第4距離D4だけ離隔される。この第4距離D4は、回転シャフト70が回転する際に軸受120の外輪122と内輪121との軸方向の変位量以上の距離である。
【0035】
内輪121の外側壁121cは、第1壁71bから軸心Axの軸方向に離隔して位置する。外側壁121cと、第1壁71bとの間には、リテーナ50と、マグネット31と、スペーサ33と、が設けられる。
【0036】
リテーナ50は、第3壁54と、第4壁55と、切欠底面56と、底壁51と、第1上壁52と、第2上壁53と、を有する。第4壁55と切欠底面56とで切欠部が構成される。第2上壁53は、第1上壁52よりも径方向外側に位置する。第3壁54は、径方向に延びる平坦な壁である。第3壁54は、第1壁71bと接する。底壁51は、小径部72の外周面72aに接する。第4壁55は、径方向に延びる平坦な壁である。第4壁55は、マグネット31における薄板部31bと接する。
【0037】
マグネット31は、径方向内側の薄板部31bと、径方向外側の厚板部31aと、を有する。マグネット31の径方向外側端31cと、コイル基板20の径方向外側端20aとは、径方向の位置が略同一である。換言すると、径方向外側端31cと径方向外側端20aとは、軸方向に並んで位置する。マグネット31の径方向内側端31dは、切欠底面56の上に載置される。マグネット31の径方向外側端31cは、内輪121の外周面121b(径方向外側端)よりも第2距離D2だけ径方向外側に位置する。
【0038】
スペーサ33は、軸方向の厚さが一定である平板状の形状を有する。スペーサ33は、径方向に延びる。スペーサ33の径方向外側端33aは、切欠部121eよりも径方向内側に位置する。スペーサ33の径方向内側端33bは、切欠底面56に接する。スペーサ33は、外側壁121cに接する。スペーサ33と第4壁55との間に、マグネット31の薄板部31bが挟まれる。
【0039】
このように、軸受120の内輪121における外側壁121cと、回転シャフト70の大径部71における第1壁71bとによって、リテーナ50、マグネット31及びスペーサ33が軸方向に挟まれて固定される。なお、
図10に、リテーナ50、マグネット31及びスペーサ33を組み付けた断面構造を示している。スペーサ33の径方向内側端33bと第1上壁52との径方向に沿った距離は、第3距離D3である。また、軸受120の内輪121における内側壁121dは、図示しない固定手段によって軸方向に固定される。
【0040】
また、
図5に示すように、センサユニット110のカバー10の厚肉部11は、固定部材81と、軸受120の外輪122と、で軸方向に挟持される。
図6に示すように、厚肉部11は、内側面11aと、外側面11bと、外周面11cと、内周面11dと、を有する。厚肉部11の内側面11a及び外側面11bは、径方向に延びる。外周面11c及び内周面11dは、周方向に延びる。
【0041】
固定部材81は、内側面81cと、外側面81dと、外周面81aと、内周面81bと、を有する。固定部材81の内側面81c及び外側面81dは、径方向に延びる。外周面81a及び内周面81bは、周方向に延びる。厚肉部11の内側面11aは、外輪122の外側壁122cに接触する。厚肉部11の外周面11cは、筐体80の内周面80aに接触する。厚肉部11の外側面11bは、固定部材81の内側面81cに接触する。なお、固定部材81には、ボルト孔81fが貫通して設けられる。
【0042】
厚肉部11には、厚さ方向(回転シャフト70の軸方向)に沿って位置決め穴11eが設けられる。位置決め穴11eは、径方向と直交する厚さ方向である軸方向に延びる円筒状の内周面の内側に設けられる。本実施形態では、位置決め穴11eは厚さ方向(軸方向)に貫通するが、いわゆる止まり穴(凹部)であってもよい。この止まり穴(凹部)は、固定部材81が開口し、軸受120側が閉じている。固定部材81には、厚さ方向(回転シャフト70の軸方向)に沿って位置決め用貫通孔81eが設けられる。位置決め用貫通孔81eの径方向の位置及び周方向の位置は、位置決め穴11eの径方向の位置及び周方向の位置と重なっている。位置決め用貫通孔81eの孔径は、位置決め穴11eの穴径と同じである。
【0043】
次に、第1実施形態において、センサユニット110の位置決めを行う手順を簡単に説明する。まず、
図7に示すように、細長い円柱状の位置決めピン200を準備する。位置決めピン200は、位置決め用貫通孔81eの孔径及び位置決め穴11eの穴径よりも径が小さい。
図7に示すように、位置決めピン200を固定部材81の位置決め用貫通孔81eに挿入しておく。そして、ボルト82を、固定部材81のボルト孔81fと筐体80のねじ穴80cとに締結する。このとき、ボルト82を完全に締結しない仮締めの状態とする。この仮締めの状態では、カバー10の厚肉部11が固定部材81と軸受120の外輪122とで強固に押圧されていないため、カバー10を周方向に容易に移動することができる。固定部材81の位置決め用貫通孔81eの位置は、正規な位置であるため、カバー10を周方向に移動させて位置決め穴11eを位置決め用貫通孔81eに合致させる。
【0044】
次に、位置決めピン200をカバー10に向けて押し込むと、
図8に示すように位置決めピン200は位置決め穴11eに挿入される。このときは、カバー10の周方向位置は固定部材81の位置決め用貫通孔81eの位置と合致しているため、そのままボルト82を本締めする。そして、最後に、位置決めピン200を位置決め用貫通孔81e及び位置決め穴11eから抜くと、
図6の状態となる。
【0045】
以上説明したように、第1実施形態に係るセンサユニット110は、厚肉部11と薄肉部12とを有するカバー10(支持体)と、カバー10の薄肉部12に固定されるセンサと、を備える。厚肉部11に、軸方向(厚さ方向)に延びる位置決め穴11eが設けられる。これによれば、位置決め穴11eを用いて、カバー10の周方向の位置決めを行うことにより、センサ44の周方向の位相を一意に定めることができる。
【0046】
また、カバー10の厚肉部11は、センサユニット110が取り付けられる筐体80(被取付部材)に固定部材81を介して固定され、固定部材81には、カバー10の位置決め穴11eと重なる位置決め用貫通孔81eが設けられる。これによれば、カバー10の位置決め穴11eの位置を定める場合に、固定部材81の位置決め用貫通孔81eと重なる位置にすることにより、位置決め穴11eの正規な位置が定まる。よって、カバー10の周方向の位置決め作業がより容易になる。
【0047】
さらに、カバー10の薄肉部12は、径方向中央部に挿通孔H12が設けられた円環状の形状を有し、挿通孔H12には、回転シャフト70が挿入される。回転シャフト70は、軸受120を介して、筐体80(被取付部材)に対して相対的に回転可能である。センサ44は、加速度センサ441及び温度センサ442である。これによれば、加速度センサ441によって、例えば軸受120の振動を検出することができる。温度センサ442によって、例えば軸受120の周囲温度を検出することができる。また、センサ基板42の部位のうち、ボルト19Bの近傍部は振動等が少ないため、加速度センサ441をボルト19Bの近傍部に配置することにより、正確な加速度を検出できる。
【0048】
なお、本実施形態のセンサユニット110は、軸受120の側部に配置される関座型のセンサユニットである。周方向の位相を任意の位置に固定することで、センサユニット110に内蔵された加速度センサ441の検出軸や温度センサ442の位置を簡易的に且つ確実に合わせることが出来る。なお、加速度センサ441には、検出軸があり、測定したい振動方向とセンサの検出軸とを合わせることで精度が高い値を検出することができる。
【0049】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。
図11は、第2実施形態のセンサ付き軸受の一部を拡大した断面図である。
図11に示すように、第2実施形態では、被取付部材となる筐体280の角部の切欠きにセンサユニット110Aが固定される。以下、順を追って説明する。
【0050】
第2実施形態によるセンサユニット110Aは、第1実施形態によるセンサユニット110に対して厚肉部211の構成及びセンサユニット110Aを筐体に固定する構成が相違する。
図11に示すように、カバー10A(支持体)の厚肉部211は、内側面211aと、外側面211bと、外周面211cと、内周面211dと、を有する。厚肉部11の内側面211a及び外側面211bは、径方向に延びる。外周面211c及び内周面211dは、周方向に延びる。厚肉部211の外周面211cは、第1実施形態の厚肉部11の外周面11cよりも径方向外側に位置する。第1実施形態では、厚肉部11の外周面11cは、外輪122の外周面122aの径方向位置と同じであるが、第2実施形態では、厚肉部211の外周面211cは、外輪122の外周面122aの径方向位置よりも径方向外側に配置される。厚肉部211には、厚さ方向(回転シャフト70の軸方向)に沿って位置決め穴211eが貫通して設けられる。
【0051】
筐体280の角部には、切欠きが設けられ、この切欠きにセンサユニット110Aの厚肉部211が突き当てられて固定される。筐体280は、内周面280aと、外周面280dと、側面280cと、切欠き内周面280eと、切欠き側面280fと、を有する。切欠き側面280fには、軸方向に延びる位置決め用穴280gが設けられる。位置決め用穴280gは、止まり穴である。センサユニット110Aの厚肉部211の位置決め穴211eの穴径は、位置決め用穴280gの穴径と同じである。位置決め穴211eの径方向の位置及び周方向の位置は、位置決め用穴280gの径方向の位置及び周方向の位置と合致して重なっている。
【0052】
次に、第2実施形態において、センサユニット110Aの位置決めを行う手順を簡単に説明する。まず、
図11に示すように、位置決めピン200よりも太い円柱状の圧入ピン200Aを準備する。圧入ピン200Aは、位置決め穴211eの穴径及び位置決め用穴280gの径よりも若干太い。
【0053】
圧入ピン200Aをカバー10Aの厚肉部211の位置決め穴211eの途中部まで圧入した状態で、厚肉部211の位置決め穴211eと筐体280の位置決め用穴280gとの位置を合致させる。次に、圧入ピン200Aを切欠き側面280fに向けて押し込むと、
図11に示すように圧入ピン200Aは、位置決め穴211e及び位置決め用穴280gの双方に圧入される。第2実施形態では、圧入ピン200Aが圧入された状態でセンサユニット110Aを使用する。
【0054】
以上説明したように、第2実施形態においては、センサユニット110Aが取り付けられる筐体280(被取付部材)には、位置決め用穴280gが設けられ、カバー10A(支持体)の位置決め用穴280gと筐体280の位置決め用穴280gとには、圧入ピン200Aが圧入されている。これによれば、筐体280の位置決め用穴280gとカバー10Aの位置決め穴211eとの双方に圧入ピン200Aが圧入されることにより、固定部材を用いずにカバー10Aを筐体280に固定することができる。また、圧入ピン200Aを介して、カバー10Aを筐体280に固定するため、カバー10Aの取付剛性が高くなり、カバー10Aに振動等の外部荷重が入力されてもカバー10Aの位置ズレがより発生しにくい。
【0055】
[第1変形例]
次に、第1変形例について説明する。
図12は、第1変形例のセンサ付き軸受の一部を拡大した断面図である。
図12に示すように、第1変形例では、第1実施形態に対して、位置決めピン200を挿入したままの状態でセンサユニット110が使用される。以下、順を追って説明する。
【0056】
第1変形例によるセンサユニット110は、第1実施形態によるセンサユニット110と同一構成を有する。即ち、厚肉部11には、厚さ方向(回転シャフト70の軸方向)に沿って位置決め穴11eが設けられる。固定部材81には、厚さ方向(回転シャフト70の軸方向)に沿って位置決め用貫通孔81eが設けられる。位置決めピン200は、位置決め穴11e及び位置決め用貫通孔81eの双方に挿入されている。
【0057】
次に、第1変形例において、センサユニット110の位置決めを行う手順を簡単に説明する。第1実施形態と同様に、位置決めピン200を固定部材81の位置決め用貫通孔81eに挿入しておく。そして、ボルト82を、固定部材81のボルト孔81fと筐体80のねじ穴80cとに仮締めし、カバー10を周方向に移動させて位置決め穴11eを位置決め用貫通孔81eに合致させる。次に、位置決めピン200をカバー10に向けて押し込むと、
図12に示すように位置決めピン200は位置決め穴11eに挿入される。このときは、カバー10の周方向位置は固定部材81の位置決め用貫通孔81eの位置と合致しているため、そのままボルト82を本締めし、
図12の状態となる。
【0058】
以上説明したように、第1変形例では、カバー10の位置決め穴11eと固定部材81の位置決め用貫通孔81eとには、位置決め穴11eの穴径及び位置決め用貫通孔81eの孔径よりも細い径を有する位置決めピン200が挿入されている。これによれば、位置決めピン200によって、固定部材81の位置決め用貫通孔81eとカバー10の位置決め穴11eとの位置が固定されるため、振動等の外部荷重がカバー10に入力されてもカバー10の位置ズレが発生しにくい。また、位置決めピン200は、カバー10の位置決め穴11eの穴径及び固定部材81の位置決め用貫通孔81eの孔径よりも細い径を有するため、位置決めピン200を位置決め穴11e及び位置決め用貫通孔81eに容易に挿入することができる。
【0059】
[第2変形例]
次に、第2変形例について説明する。
図13は、第2変形例のセンサ付き軸受の一部を拡大した断面図である。
図13に示すように、第2変形例では、第1実施形態に対して、圧入ピン200Aを挿入したままの状態でセンサユニット110が使用される。以下、順を追って説明する。
【0060】
第2変形例によるセンサユニット110は、第1実施形態によるセンサユニット110と同一構成を有する。即ち、厚肉部11には、厚さ方向(回転シャフト70の軸方向)に沿って位置決め穴11eが設けられる。固定部材81には、厚さ方向(回転シャフト70の軸方向)に沿って位置決め用貫通孔81eが設けられる。圧入ピン200Aは、位置決め穴11e及び位置決め用貫通孔81eの双方に圧入されている。
【0061】
次に、第2変形例において、センサユニット110の位置決めを行う手順を簡単に説明する。第1実施形態と同様に、まず、位置決めピン200を固定部材81の位置決め用貫通孔81eに挿入しておく。そして、ボルト82を、固定部材81のボルト孔81fと筐体80のねじ穴80cとに仮締めをし、カバー10を周方向に移動させて位置決め穴11eを位置決め用貫通孔81eに合致させる。次に、位置決めピン200を位置決め穴11eに挿入する。その後、位置決めピン200を位置決め用貫通孔81e及び位置決め穴11eから抜き、圧入ピン200Aを位置決め用貫通孔81e及び位置決め穴11eに圧入する。最後に、圧入ピン200Aを位置決め用貫通孔81e及び位置決め穴11eに圧入したのち、ボルト82を本締めして、
図13の状態となる。
【0062】
以上説明したように、第2変形例では、カバー10の位置決め穴11eと固定部材81の位置決め用貫通孔81eとには、圧入ピン200Aが圧入されている。これによれば、固定部材81の位置決め用貫通孔81eとカバー10の位置決め穴11eとの双方に圧入ピン200Aが圧入されることにより、カバー10を固定部材81に強固に固定することができる。従って、カバー10に振動等の外部荷重が入力されてもカバー10の位置ズレがより発生しにくい。
【0063】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されず、種々の変更及び変形が可能である。例えば、カバー10の位置決め穴11eや固定部材81の位置決め用貫通孔81eは、それぞれ1つずつに設定したが、複数設けてもよい。複数にすることにより、カバー10が周方向に荷重を受けた場合にカバー10の回り止めの作用を奏する。
【符号の説明】
【0064】
10,10A カバー(支持体)
11 厚肉部
11e 位置決め穴
12 薄肉部
44 センサ
70 回転シャフト
80 筐体(被取付部材)
81 固定部材
81e 位置決め用貫通孔
110,110A センサユニット
120 軸受
200 位置決めピン
200A 圧入ピン
211 厚肉部
211e 位置決め穴
280 筐体
280g 位置決め用穴
441 加速度センサ
442 温度センサ
H12 挿通孔