(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】電動駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 3/72 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
F16H3/72 A
(21)【出願番号】P 2022090059
(22)【出願日】2022-06-02
(62)【分割の表示】P 2017238946の分割
【原出願日】2017-12-13
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 俊郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 英司
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-046162(JP,A)
【文献】特開2006-199077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1モータと、
前記第1モータに接続される第1遊星歯車機構と、
第2モータと、
前記第1遊星歯車機構及び前記第2モータに接続される第2遊星歯車機構と、
前記第1遊星歯車機構に接続される第1出力軸と、
前記第2遊星歯車機構に接続される制動装置と、
締結装置と、を備え、
前記制動装置は、前記第2遊星歯車機構の一部の回転を規制する制動状態と前記第2遊星歯車機構を自由に回転させる非制動状態とを切り替え、
前記締結装置は、前記第1遊星歯車機構又は前記第2遊星歯車機構が有する第1回転体と、前記第1遊星歯車機構又は前記第2遊星歯車機構が有する第2回転体とを互いに締結する締結状態と、前記第1回転体と前記第2回転体とを互いに自由に回転させる非締結状態とを切り替え、
前記非制動状態で且つ前記締結状態において、前記第1モータ及び前記第2モータの一方が駆動すると、前記第1遊星歯車機構及び前記第2遊星歯車機構が回転し、
前記第1遊星歯車機構は、
前記第1モータに接続される第1サンギアと、
前記第1サンギアに噛み合う第1ピニオンギアと、
前記第1ピニオンギアに噛み合う第1リングギアと、
前記第1ピニオンギアを支持し且つ前記第1出力軸に接続される第1キャリアと、を備え、
前記第2遊星歯車機構は、
前記第1リングギアに接続される第2サンギアと、
前記第2サンギアに噛み合う第2ピニオンギアと、
前記第2ピニオンギアを支持する第2キャリアと、
前記第2ピニオンギアに噛み合い且つ前記第1キャリアに接続される第2リングギアと、を備え、
前記制動状態では、前記第2キャリアの回転が規制され、
前記第1回転体は前記第2キャリアであり、
前記第2回転体は前記第2サンギアである、電動駆動装置。
【請求項2】
前記第1モータの動力の一部は、前記第1遊星歯車機構及び前記第2遊星歯車機構のうち前記第1遊星歯車機構のみを介して前記第1出力軸に伝わり、
前記第1モータの動力の他の一部は、前記第1遊星歯車機構及び前記第2遊星歯車機構の両方を介して前記第1出力軸に伝わる、請求項1に記載の電動駆動装置。
【請求項3】
第1モータと、
前記第1モータに接続される第1遊星歯車機構と、
第2モータと、
前記第1遊星歯車機構及び前記第2モータに接続される第2遊星歯車機構と、
前記第1遊星歯車機構に接続される第1出力軸と、
前記第2遊星歯車機構に接続される制動装置と、
締結装置と、を備え、
前記制動装置は、前記第2遊星歯車機構の一部の回転を規制する制動状態と前記第2遊星歯車機構を自由に回転させる非制動状態とを切り替え、
前記締結装置は、前記第1遊星歯車機構又は前記第2遊星歯車機構が有する第1回転体と、前記第1遊星歯車機構又は前記第2遊星歯車機構が有する第2回転体とを互いに締結する締結状態と、前記第1回転体と前記第2回転体とを互いに自由に回転させる非締結状態とを切り替え、
前記非制動状態で且つ前記締結状態において、前記第1モータ及び前記第2モータの一方が駆動すると、前記第1遊星歯車機構及び前記第2遊星歯車機構が回転し、
前記第1モータの動力の一部は、前記第1遊星歯車機構及び前記第2遊星歯車機構のうち前記第1遊星歯車機構のみを介して前記第1出力軸に伝わり、
前記第1モータの動力の他の一部は、前記第1遊星歯車機構及び前記第2遊星歯車機構の両方を介して前記第1出力軸に伝わる、電動駆動装置。
【請求項4】
前記第1出力軸に接続される第3遊星歯車機構と、
前記第3遊星歯車機構に接続される第2出力軸と、をさらに備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の電動駆動装置。
【請求項5】
前記第1出力軸に接続される減速機構と、
前記減速機構に接続される第3出力軸と、をさらに備え、
前記減速機構は、
前記第1出力軸に接続される第1ギアと、
前記第1ギアと噛合い且つ前記第1ギアよりも歯数が多い第2ギアと、を備え、
前記第2ギアに前記第3出力軸が接続される、請求項1から3のいずれか1項に記載の電動駆動装置。
【請求項6】
前記締結装置は、
前記第2遊星歯車機構に接続される第4遊星歯車機構と、
前記第4遊星歯車機構に接続される制動部と、を備え、
前記第4遊星歯車機構は、
前記第2キャリアに接続される第4サンギアと、
前記第2サンギアに接続される第5サンギアと、
前記第4サンギア及び前記第5サンギアと噛合う第4ピニオンギアと、
前記第4ピニオンギアを支持する第4キャリアと、を備え、
前記第4サンギアの歯数と前記第5サンギアの歯数は互いに同一であり、
前記制動部は、前記第4キャリアの回転を規制する制動状態と前記第4キャリアを自由に回転させる非制動状態とを切り替える、請求項1に記載の電動駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車又はハイブリッド車等においては、モータの動力によりホイールが駆動する。モータのみによって大きな動力をホイールに伝える場合、モータ及び周辺機器が大型化する。このため、モータに減速機構が組み合わせられることが多い。特許文献1、2には、変速機構を有するインホイールモータの一例が記載されている。特許文献1、2のインホイールモータは、第1変速状態と、第1変速状態よりも出力軸のトルクが小さい第2変速状態とを実現することで、効率が高められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-51540号公報
【文献】特開2014-66320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電動駆動装置の効率をさらに向上させることが望まれている。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、効率を向上させることができる電動駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の一態様の電動駆動装置は、第1モータと、前記第1モータに接続される第1遊星歯車機構と、第2モータと、前記第1遊星歯車機構及び前記第2モータに接続される第2遊星歯車機構と、前記第1遊星歯車機構に接続される第1出力軸と、前記第2遊星歯車機構に接続される制動装置と、締結装置と、を備え、前記制動装置は、前記第2遊星歯車機構の一部の回転を規制する制動状態と前記第2遊星歯車機構を自由に回転させる非制動状態とを切り替え、前記締結装置は、前記第1遊星歯車機構又は前記第2遊星歯車機構が有する第1回転体と、前記第1遊星歯車機構又は前記第2遊星歯車機構が有する第2回転体とを互いに締結する締結状態と、前記第1回転体と前記第2回転体とを互いに自由に回転させる非締結状態とを切り替え、前記非制動状態で且つ前記締結状態において、前記第1モータ及び前記第2モータの一方が駆動すると、前記第1遊星歯車機構及び前記第2遊星歯車機構が回転し、前記第1遊星歯車機構は、前記第1モータに接続される第1サンギアと、前記第1サンギアに噛み合う第1ピニオンギアと、前記第1ピニオンギアに噛み合う第1リングギアと、前記第1ピニオンギアを支持し且つ前記第1出力軸に接続される第1キャリアと、を備え、前記第2遊星歯車機構は、前記第1リングギアに接続される第2サンギアと、前記第2サンギアに噛み合う第2ピニオンギアと、前記第2ピニオンギアを支持する第2キャリアと、前記第2ピニオンギアに噛み合い且つ前記第1キャリアに接続される第2リングギアと、を備え、前記制動状態では、前記第2キャリアの回転が規制され、前記第1回転体は前記第2キャリアであり、前記第2回転体は前記第2サンギアである。
【0007】
これによれば、制動装置が非制動状態で、且つ締結装置が締結状態の場合に、第1モータ及び第2モータの一方のみが駆動しても、第1遊星歯車機構と第2遊星歯車機構は一体的に回転して、第1出力軸に動力を伝達することができる。また、制動装置が制動状態で、且つ締結装置が締結状態の場合は、第1遊星歯車機構及び第2遊星歯車機構は回転できないため、第1出力軸の回転はロックされる。
【0008】
また、締結装置が締結状態の場合、第2遊星歯車機構の第2サンギア及び第2キャリアは一体となって回転する。
【0009】
望ましい態様として、前記第1モータの動力の一部は、前記第1遊星歯車機構及び前記第2遊星歯車機構のうち前記第1遊星歯車機構のみを介して前記第1出力軸に伝わり、前記第1モータの動力の他の一部は、前記第1遊星歯車機構及び前記第2遊星歯車機構の両方を介して前記第1出力軸に伝わる。これにより、第1出力軸には、第1遊星歯車機構のみを介した動力と、第1遊星歯車機構及び第2遊星歯車機構の両方を介した動力とを合わせた動力が伝わる。このため、電動駆動装置の変速比が大きくなりやすい。また、第1モータの動力が2つの経路に分かれて第1出力軸に伝わるので、第1モータの動力が複数の遊星歯車機構を含む機構内で循環する場合と比較して、第1遊星歯車機構及び第2遊星歯車機構にそれぞれ伝わる動力が小さくなる。
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の一態様の電動駆動装置は、第1モータと、前記第1モータに接続される第1遊星歯車機構と、第2モータと、前記第1遊星歯車機構及び前記第2モータに接続される第2遊星歯車機構と、前記第1遊星歯車機構に接続される第1出力軸と、前記第2遊星歯車機構に接続される制動装置と、締結装置と、を備え、前記制動装置は、前記第2遊星歯車機構の一部の回転を規制する制動状態と前記第2遊星歯車機構を自由に回転させる非制動状態とを切り替え、前記締結装置は、前記第1遊星歯車機構又は前記第2遊星歯車機構が有する第1回転体と、前記第1遊星歯車機構又は前記第2遊星歯車機構が有する第2回転体とを互いに締結する締結状態と、前記第1回転体と前記第2回転体とを互いに自由に回転させる非締結状態とを切り替え、前記非制動状態で且つ前記締結状態において、前記第1モータ及び前記第2モータの一方が駆動すると、前記第1遊星歯車機構及び前記第2遊星歯車機構が回転し、前記第1モータの動力の一部は、前記第1遊星歯車機構及び前記第2遊星歯車機構のうち前記第1遊星歯車機構のみを介して前記第1出力軸に伝わり、前記第1モータの動力の他の一部は、前記第1遊星歯車機構及び前記第2遊星歯車機構の両方を介して前記第1出力軸に伝わる。
【0011】
これによれば、制動装置が非制動状態で、且つ締結装置が締結状態の場合に、第1モータ及び第2モータの一方のみが駆動しても、第1遊星歯車機構と第2遊星歯車機構は一体的に回転して、第1出力軸に動力を伝達することができる。また、制動装置が制動状態で、且つ締結装置が締結状態の場合は、第1遊星歯車機構及び第2遊星歯車機構は回転できないため、第1出力軸の回転はロックされる。また、第1出力軸には、第1遊星歯車機構のみを介した動力と、第1遊星歯車機構及び第2遊星歯車機構の両方を介した動力とを合わせた動力が伝わる。このため、電動駆動装置の変速比が大きくなりやすい。また、第1モータの動力が2つの経路に分かれて第1出力軸に伝わるので、第1モータの動力が複数の遊星歯車機構を含む機構内で循環する場合と比較して、第1遊星歯車機構及び第2遊星歯車機構にそれぞれ伝わる動力が小さくなる。
【0012】
望ましい態様として、前記第1出力軸に接続される第3遊星歯車機構と、前記第3遊星歯車機構に接続される第2出力軸と、をさらに備える。これにより、第3遊星歯車機構は、第1出力軸から出力された動力を減速して第2出力軸に伝えることができる。
【0013】
望ましい態様として、前記第1出力軸に接続される減速機構と、前記減速機構に接続される第3出力軸と、をさらに備え、前記減速機構は、前記第1出力軸に接続される第1ギアと、前記第1ギアと噛合い且つ前記第1ギアよりも歯数が多い第2ギアと、を備え、前記第2ギアに前記第3出力軸が接続される。これにより、減速機構は、第1出力軸から出力された動力を減速して第3出力軸に伝えることができる。
【0014】
望ましい態様として、前記締結装置は、前記第2遊星歯車機構に接続される第4遊星歯車機構と、前記第4遊星歯車機構に接続される制動部と、を備え、前記第4遊星歯車機構は、前記第2キャリアに接続される第4サンギアと、前記第2サンギアに接続される第5サンギアと、前記第4サンギア及び前記第5サンギアと噛合う第4ピニオンギアと、前記第4ピニオンギアを支持する第4キャリアと、を備え、前記第4サンギアの歯数と前記第5サンギアの歯数は互いに同一であり、前記制動部は、前記第4キャリアの回転を規制する制動状態と前記第4キャリアを自由に回転させる非制動状態とを切り替える。
【0015】
これにより、第4サンギアの回転数と第5サンギアの回転数とが互いに同一となる。このため、制動部が制動状態の場合に、第2キャリアの回転数と第2サンギアの回転数とが互いに同一となる。これは、第2サンギアと第2キャリアとが互いに固定された状態と実質的に同じである。また、制動部が非制動状態の場合は、第4遊星歯車機構は動力を伝達しないため、第2サンギアと第2キャリアは互いに自由に回転できる状態となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、効率を向上させることができる電動駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態1の電動駆動装置の模式図である。
【
図2】
図2は、実施形態1の第1低速モードを示す模式図である。
【
図3】
図3は、実施形態1の第2低速モードを示す模式図である。
【
図4】
図4は、実施形態1の第3低速モードを示す模式図である。
【
図5】
図5は、実施形態1の第1高速モードを示す模式図である。
【
図6】
図6は、実施形態1の第2高速モードを示す模式図である。
【
図7】
図7は、実施形態1の第3高速モードにおいてクラッチが締結状態の場合を示す模式図である。
【
図8】
図8は、実施形態1の第3高速モードにおいてクラッチが非締結状態の場合を示す模式図である。
【
図9】
図9は、第1低速モード、第2低速モード、第3低速モード、第1高速モード、第2高速モード及び第3高速モードにおける、第1モータ、第2モータ、ブレーキ及びクラッチの状態を示す図である。
【
図10】
図10は、第1低速モード、第2低速モード及び第3低速モードにおけるモータ回転数と出力トルクとの関係を示すグラフである。
【
図11】
図11は、モータ回転数と出力トルクとの関係において効率が高くなる領域を示すグラフである。
【
図12】
図12は、実施形態1の変形例1における電動駆動装置の模式図である。
【
図13】
図13は、実施形態1の変形例2における電動駆動装置の模式図である。
【
図14】
図14は、実施形態1の変形例3における電動駆動装置の模式図である。
【
図15】
図15は、実施形態1の変形例4における電動駆動装置の模式図である。
【
図16】
図16は、実施形態1の変形例5における電動駆動装置の模式図である。
【
図17】
図17は、実施形態1の変形例6における電動駆動装置の模式図である。
【
図18】
図18は、実施形態1の変形例7における電動駆動装置の模式図である。
【
図19】
図19は、実施形態1の変形例8における電動駆動装置の模式図である。
【
図20】
図20は、変形例8の低速モードの一例を示す模式図である。
【
図21】
図21は、実施形態1の変形例9における電動駆動装置の模式図である。
【
図22】
図22は、実施形態2の電動駆動装置の模式図である。
【
図23】
図23は、実施形態3の電動駆動装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、下記実施形態において、前述したものと同様の構成要素には同一の符号を付して、重複する説明は適宜省略することがある。
【0019】
(実施形態1)
図1は、実施形態1の電動駆動装置の模式図である。
図2は、実施形態1の第1低速モードを示す模式図である。
図3は、実施形態1の第2低速モードを示す模式図である。
図4は、実施形態1の第3低速モードを示す模式図である。
図5は、実施形態1の第1高速モードを示す模式図である。
図6は、実施形態1の第2高速モードを示す模式図である。
図7は、実施形態1の第3高速モードにおいてクラッチが締結状態の場合を示す模式図である。
図8は、実施形態1の第3高速モードにおいてクラッチが非締結状態の場合を示す模式図である。
図9は、第1低速モード、第2低速モード、第3低速モード、第1高速モード、第2高速モード及び第3高速モードにおける、第1モータ、第2モータ、ブレーキ及びクラッチの状態を示す図である。なお、
図2から
図8においては、電動駆動装置1の半分を省略している。
【0020】
図1に示すように、実施形態1の電動駆動装置1は、第1モータ11と、第2モータ12と、第1遊星歯車機構3と、第2遊星歯車機構4と、ブレーキ6(制動装置の一例)と、クラッチ7(締結装置の一例)と、出力軸15(第1出力軸の一例)と、制御装置19と、を備える。
【0021】
第1モータ11及び第2モータ12は、例えば、車両のホイール10の内部又は周辺に配置される。第1モータ11及び第2モータ12は、ホイール10に取り付けられたケースに固定されている。すなわち、第1モータ11及び第2モータ12は、インホイールモータである。第1モータ11は、第1遊星歯車機構3に接続されている。第2モータ12は、第2遊星歯車機構4に接続されている。以下の説明において、第1モータ11の軸方向に沿う方向は単に軸方向と記載される。軸方向に対して直交する方向は単に放射方向と記載される。
【0022】
図1に示すように、第1遊星歯車機構3は、第1サンギア31と、複数の第1ピニオンギア33と、第1リングギア35と、第1キャリア34と、を備える。第1サンギア31は、第1モータ11のシャフトに接続される。第1サンギア31は、第1サンギアシャフト30を含む。第1サンギアシャフト30は、別部材として第1サンギア31に固定されていてもよいし、第1サンギア31と一体に形成されていてもよい。第1サンギアシャフト30が第1モータ11のシャフトに接続される。第1ピニオンギア33は、第1サンギア31に対して放射方向の外側に配置され、第1サンギア31に噛み合う。第1リングギア35は、第1ピニオンギア33に対して放射方向の外側に配置され、第1ピニオンギア33に噛み合う。第1キャリア34は、第1ピニオンギア33に接続される。第1キャリア34は、複数の第1ピニオンギア33を、それぞれの第1ピニオンギア33が自転できるように支持する。第1キャリア34は、複数の第1ピニオンギア33を、第1サンギア31を中心に公転できるように支持する。第1キャリア34は、出力軸15に接続される。出力軸15は、ホイール10に接続される。
【0023】
図1に示すように、第2遊星歯車機構4は、第2サンギア41と、複数の第2ピニオンギア43と、第2リングギア45と、第2キャリア44と、を備える。第2サンギア41は、第1リングギア35に接続されると共に第2モータ12のシャフトに接続される。第2サンギア41は、第2サンギアシャフト40を含む。第2サンギアシャフト40は、別部材として第2サンギア41に固定されていてもよいし、第2サンギア41と一体に形成されていてもよい。第2サンギアシャフト40が第2モータ12のシャフトに接続される。軸方向から見て、第2サンギアシャフト40の中心は第1サンギアシャフト30の中心に重なる。なお、図面においては、第2サンギアシャフト40が第1サンギアシャフト30に対して便宜上ずらされている。第2ピニオンギア43は、第2サンギア41に対して放射方向の外側に配置され、第2サンギア41に噛み合う。第2リングギア45は、第2ピニオンギア43に対して放射方向の外側に配置され、第2ピニオンギア43に噛み合う。第2リングギア45は、出力軸15に接続される。第2キャリア44は、第2ピニオンギア43に接続される。第2キャリア44は、複数の第2ピニオンギア43を、それぞれの第2ピニオンギア43が自転できるように支持する。第2キャリア44は、複数の第2ピニオンギア43を、第2サンギア41を中心に公転できるように支持する。
【0024】
ブレーキ6は、第2キャリア44に接続されている。ブレーキ6は、制御装置19からの制御信号に基づいて、第2キャリア44の回転(公転)を規制する制動状態と、第2キャリア44を自由に回転(公転)させる非制動状態とを切り替える装置である。ブレーキ6は、回転体の回転を制動できる装置であり、例えば、ワンウェイクラッチ、ツーウェイクラッチ、摩擦クラッチ、バンドブレーキ又は電磁クラッチ等である。ブレーキ6は、固定部100に取り付けられている。固定部100は、例えば第1モータ11及び第2モータ12を支持するケースである。
【0025】
クラッチ7は、第2サンギア41と第2キャリア44との間に配置されており、第2サンギアシャフト40と第2キャリア44とに接続されている。クラッチ7は、制御装置19からの制御信号に基づいて、第2サンギア41と第2キャリア44とを互いに締結する締結状態と、第2サンギア41と第2キャリア44とを互いに自由に回転させる非締結状態とを切り替える装置である。クラッチ7は、第2サンギアシャフト40と第2キャリア44とを連結することで、締結状態を実現する。クラッチ7は、第2サンギアシャフト40と第2キャリア44とを切り離すことで、非締結状態を実現する。クラッチ7は、回転体同士を締結できる装置であり、例えば、摩擦クラッチ、電磁クラッチ又はドグクラッチ等である。
【0026】
制御装置19は、コンピュータであり、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入力インターフェース、及び出力インターフェースを含む。制御装置19は、車両に搭載されたECU(Electronic Control Unit)である。制御装置19は、第1モータ11、第2モータ12、ブレーキ6及びクラッチ7を制御する。
【0027】
図9に示すように、電動駆動装置1は、駆動モードとして第1低速モード、第2低速モード、第3低速モード、第1高速モード、第2高速モード及び第3高速モードを備える。制御装置19は、車両に設けられた各種のセンサから得た情報に基づいて、第1低速モード、第2低速モード、第3低速モード、第1高速モード、第2高速モード及び第3高速モードを切り替える。
【0028】
図9に示すように、第1低速モードにおいては、第1モータ11が駆動し、第2モータ12が駆動せず、ブレーキ6が制動状態となり、且つクラッチ7が非締結状態となる。第2低速モードにおいては、第1モータ11が駆動せず、第2モータ12が駆動し、ブレーキ6が制動状態となり、且つクラッチ7が非締結状態となる。第3低速モードにおいては、第1モータ11及び第2モータ12の両方が駆動し、ブレーキ6が制動状態となり、且つクラッチ7が非締結状態となる。第1高速モードにおいては、第1モータ11が駆動し、第2モータ12が駆動せず、ブレーキ6が非制動状態となる。また、第1高速モードにおいては、クラッチ7が締結状態となる。第2高速モードにおいては、第1モータ11が駆動せず、第2モータ12が駆動し、ブレーキ6が非制動状態となる。また、第2高速モードにおいては、クラッチ7が締結状態となる。第3高速モードにおいては、第1モータ11及び第2モータ12の両方が駆動し、ブレーキ6が非制動状態となる。また、第3高速モードにおいては、クラッチ7が締結状態又は非締結状態(どちらでも可)となる。
【0029】
図2に示すように、第1低速モードにおいては、第1モータ11からトルクTaが出力される。第2モータ12からはトルクが出力されない。第2モータ12のシャフトは空転する。トルクTaは、第1サンギア31に入力される。第1遊星歯車機構3においてトルクTaはトルクT1及びトルクT2に分配される。トルクT1は、第1キャリア34から出力軸15に伝達される。トルクT2は、第1リングギア35を介して第2サンギア41に伝達される。トルクT2は、第2ピニオンギア43及び第2リングギア45を介してトルクT3となる。トルクT3は、出力軸15に伝達される。トルクT3は、トルクT1と合流する。出力軸15に伝達されるトルクT4は、トルクT1及びトルクT3の和である。
【0030】
第1遊星歯車機構3の減速比(第1減速比)をi1とする。第1サンギア31の歯数をZs1とする。第1リングギア35の歯数をZr1とする。この時、第1減速比(i1)は下記式(1)で表される。
【0031】
i1=Zr1/Zs1 ・・・(1)
【0032】
第2遊星歯車機構4の減速比(第2減速比)をi2とする。第2サンギア41の歯数をZs2とする。第2リングギア45の歯数をZr2とする。この時、第2減速比(i2)は下記式(2)で表される。
【0033】
i2=Zr2/Zs2 ・・・(2)
【0034】
第1低速モードにおける電動駆動装置1の減速比(全体減速比)をI1とする。第1低速モードにおける全体減速比は、出力軸15の回転数に対する第1モータ11の回転数の比を意味する。この時、全体減速比(I1)は下記式(3)で表される。例えば、第1減速比(i1)が2.5であり第2減速比(i2)が1.8である場合、全体減速比(I1)は8である。
【0035】
I1=i1(1+i2)+1 ・・・(3)
【0036】
出力軸15に出力されるトルクT4は、下記式(4)で表される。例えば第1減速比(i1)が2.5であり第2減速比(i2)が1.8である場合、トルクT4はトルクTaの8倍となる。
【0037】
T4={i1(1+i2)+1}Ta ・・・(4)
【0038】
図3に示すように、第2低速モードにおいては、第2モータ12からトルクTbが出力される。第1モータ11からはトルクが出力されない。第1モータ11のシャフトは空転する。トルクTbは、第2サンギア41に入力される。トルクTbは、第2ピニオンギア43及び第2リングギア45を介してトルクT5となる。トルクT5は、出力軸15に伝達される。トルクT5は、下記式(5)で表される。
【0039】
T5=i2×Tb ・・・(5)
【0040】
図4に示すように、第3低速モードにおいては、第1モータ11からトルクTaが出力され、且つ第2モータ12からトルクTbが出力される。トルクTaは、第1サンギア31に入力される。第1遊星歯車機構3においてトルクTaはトルクT1及びトルクT2に分配される。トルクT1は、第1キャリア34から出力軸15に伝達される。トルクT2は、第1リングギア35を介して第2サンギア41に伝達される。トルクT2は、トルクTbと合流してトルクT6となる。トルクT6は、第2ピニオンギア43及び第2リングギア45を介してトルクT7となる。トルクT7は、出力軸15に伝達される。トルクT7は、トルクT1と合流する。出力軸15に伝達されるトルクT8は、トルクT1及びトルクT7の和である。トルクT8は、下記式(6)で表される。
【0041】
T8={i1(1+i2)+1}Ta+i2×Tb ・・・(6)
【0042】
図5に示すように、第1高速モードにおいては、第1モータ11からトルクTaが出力される。第2モータ12からはトルクが出力されない。第2モータ12のシャフトは空転する。トルクTaは、第1サンギア31に入力される。第1高速モードにおいては、ブレーキ6は非制動状態であり、第2キャリア44は固定部100に固定されていない。これにより、第2遊星歯車機構4は、固定部100から反力を受けない。また、第1高速モードにおいては、クラッチ7は締結状態であり、第2サンギアシャフト40を介して、第1リングギア35、第2サンギア41及び第2キャリア44が一体化している。これにより、第1リングギア35、第2サンギア41及び第2キャリア44は一体となって回転し、第1遊星歯車機構3と第2遊星歯車機構4とが一体的に回転する状態となっている。
【0043】
この状態では、第1サンギア31に入力されたトルクTaは、第1ピニオンギア33でトルクTa1、Ta2に分配される。トルクTa1は第1キャリア34を介して出力軸15に伝達される。トルクTa2は、第1リングギア35と、第1リングギア35と一体的に回転する第2遊星歯車機構4とを介して、出力軸15に伝達される。トルクTa1、Ta2は、出力軸15で合流してトルクTaとなる。このように、第1高速モードでは、第1モータ11から出力軸15にトルクTaが伝達される。第1高速モードにおいて、出力軸15の回転数は第1モータ11の回転数と一致する。
【0044】
図6に示すように、第2高速モードにおいては、第2モータ12からトルクTbが出力される。第1モータ11からはトルクが出力されない。第1モータ11のシャフトは空転する。トルクTbは、第2サンギア41に入力される。第2高速モードにおいては、ブレーキ6は非制動状態であり、第2キャリア44は固定部100に固定されていない。これにより、第2遊星歯車機構4は、固定部100から反力を受けない。また、第2高速モードにおいては、クラッチ7は締結状態であり、第2サンギアシャフト40を介して、第1リングギア35、第2サンギア41及び第2キャリア44が一体化している。これにより、第1リングギア35、第2サンギア41及び第2キャリア44は一体となって回転し、第1遊星歯車機構3と第2遊星歯車機構4とが一体的に回転する状態となっている。
【0045】
この状態では、第2サンギア41に入力されたトルクTbは、第2サンギアシャフト40でトルクTb1、Tb2に分配される。トルクTb1は、第1リングギア35と一体的に回転する第2遊星歯車機構4を介して出力軸15に伝達される。トルクTb2は、第1リングギア35、第1キャリア34を介して出力軸15に伝達される。トルクTb1、Tb2は、出力軸15で合流してトルクTbとなる。このように、第2高速モードでは、第2モータ12から出力軸15にトルクTbが伝達される。第2高速モードにおいて、出力軸15の回転数は第2モータ12の回転数と一致する。
【0046】
第3高速モードにおいては、第1モータ11からトルクTaが出力され、且つ第2モータ12からトルクTbが出力される。上記したように、第3高速モードにおいては、ブレーキ6は非制動状態であり、クラッチ7は締結状態又は非締結状態(どちらでも可)である。
【0047】
図7に示すように、第3高速モードにおいてクラッチ7が締結状態の場合、第2サンギアシャフト40を介して、第1リングギア35、第2サンギア41及び第2キャリア44が一体化している。これにより、第1リングギア35、第2サンギア41及び第2キャリア44は一体となって回転し、第1遊星歯車機構3と第2遊星歯車機構4とが一体的に回転する状態となっている。この状態では、第1モータ11から出力されたトルクTaは、第1ピニオンギア33でトルクTa1、Ta2に分配される。トルクTa1は、第1キャリア34を介して出力軸15に伝達される。トルクTa2は、第1リングギア35と、第1リングギア35と一体的に回転する第2遊星歯車機構4を介して、出力軸15に伝達される。第2モータ12から出力されたトルクTbは、第2サンギア41でトルクTb1、Tb2に分配される。トルクTb1は、第1リングギア35と一体的に回転する第2遊星歯車機構4を介して出力軸15に伝達される。トルクTb2は、第1リングギア35、第1キャリア34を介して出力軸15に伝達される。トルクTa1、Ta2、Tb1、Tb2は、出力軸15で合流してトルクT9となり、出力軸15に伝達される。
【0048】
一方、
図8に示すように、第3高速モードにおいてクラッチ7が非締結状態の場合、第2サンギアシャフト40と第2キャリア44は一体化しておらず、第2キャリア44は固定部100から反力も受けない。これにより、第2遊星歯車機構4は動力を伝達しない。このため、第2モータ12から出力されたトルクTbは、第1リングギア35には伝達されるが、第2リングギア45には伝達されない。第1モータ11から出力されたトルクTaも、第1キャリア34には伝達されるが、第2リングギア45には伝達されない。第1モータ11から出力されたトルクTaと、第2モータ12から出力されたトルクTbは、第1ピニオンギア33で合流してトルクT9となり、出力軸15に伝達される。
【0049】
このように、第3高速モードにおいて、クラッチ7が締結状態、非締結状態のいずれの場合も、トルクTa及びトルクTbは合流してトルクT9となる。トルクT9は、下記式(7)で表される。第3高速モードにおいては、第1モータ11の回転数に対する第2モータ12の回転数の比は一定である。第3高速モードにおいて、出力軸15の回転数は、第1モータ11の回転数に対する第2モータ12の回転数の比に依存する。
【0050】
T9=Ta1+Ta2+Tb1+Tb2=Ta+Tb ・・・(7)
【0051】
図10は、第1低速モード、第2低速モード及び第3低速モードにおけるモータ回転数と出力トルクとの関係を示すグラフである。
図11は、モータ回転数と出力トルクとの関係において効率が高くなる領域を示すグラフである。出力トルクは、出力軸15に出力されるトルクを意味する。
図11は、一般的なモータにおけるモータ回転数と出力トルクとの関係を示す。
【0052】
図10に示すように、第1低速モード、第2低速モード及び第3低速モードにおけるモータ回転数と出力トルクとの関係は互いに異なる。
図11の破線で示す領域Rは、モータの効率が高くなりやすい領域である。実施形態1の電動駆動装置1においては、駆動モードを第1低速モード、第2低速モード、第3低速モード、第1高速モード、第2高速モード及び第3高速モードに切り替えられるので、
図11の領域Rに相当する領域が比較的多くなる。このため、電動駆動装置1によれば効率が向上しやすい。
【0053】
図9に示すように、電動駆動装置1は、パーキングモードを備える。パーキングモードでは、第1モータ11及び第2モータ12がそれぞれ停止する。また、ブレーキ6が制動状態となり、且つクラッチ7が締結状態となる。これにより、第1遊星歯車機構3及び第2遊星歯車機構4は、固定部100に締結されて回転不可となる。このため、電動駆動装置1は、出力軸15の回転をロックすることが可能である。
【0054】
以上説明したように、実施形態1の電動駆動装置1は、第1モータ11と、第1モータ11に接続される第1遊星歯車機構3と、第2モータ12と、第1遊星歯車機構3及び第2モータ12に接続される第2遊星歯車機構4と、第1遊星歯車機構3に接続される出力軸15と、第2遊星歯車機構4に接続されるブレーキ6と、クラッチ7と、を備える。第1遊星歯車機構3は、第1モータ11に接続される第1サンギア31と、第1サンギア31に噛み合う第1ピニオンギア33と、第1ピニオンギア33に噛み合う第1リングギア35と、第1ピニオンギア33を支持し且つ出力軸15に接続される第1キャリア34と、を備える。第2遊星歯車機構4は、第1リングギア35に接続される第2サンギア41と、第2サンギア41に噛み合う第2ピニオンギア43と、第2ピニオンギア43を支持する第2キャリア44と、第2ピニオンギア43に噛み合い且つ第1キャリア34に接続される第2リングギア45と、を備える。ブレーキ6は、第2遊星歯車機構4の一部である第2キャリア44の回転を規制する制動状態と第2遊星歯車機構4を自由に回転させる非制動状態とを切り替える。クラッチ7は、第2サンギア41と第2キャリア44とを互いに締結する締結状態と、第2サンギア41と第2キャリア44とを互いに自由に回転させる非締結状態とを切り替える。ブレーキ6が非制動状態で、且つクラッチ7が締結状態において、第1モータ11及び第2モータ12の一方が駆動すると、第1遊星歯車機構3及び第2遊星歯車機構4が回転する。
【0055】
これにより、ブレーキ6が非制動状態で、且つクラッチ7が締結状態の場合、第1モータ11及び第2モータ12の一方のみが駆動しても、第1遊星歯車機構3と第2遊星歯車機構4は一体的に回転して、出力軸15に動力を伝達することができる。
【0056】
上述の特許文献1、2に開示されたインホイールモータは、2つのモータと複数の遊星歯車機構とを組み合わせ、減速比の大きい低速モードと、減速比の小さい高速モードとの切替を可能となっている。上述の特許文献1、2に開示されたインホイールモータでは、遊星歯車機構の1つの要素と固定部材とが締結されていない状態で、高速モードとなる。この状態で1つのモータだけが駆動しても、遊星歯車機構は反力を受けることができない。このため、上述の特許文献1、2に開示されたインホイールモータは、高速モードでは2つのモータを駆動する必要がある。
【0057】
これに対して、実施形態1の電動駆動装置1では、クラッチ7が第2サンギア41と第2キャリア44とを締結することで、ブレーキ6が非制動状態の場合でも、1つのモータでの運転を可能としている。電動駆動装置1は、高速走行時において必要な走行パワーが小さいときは、第1モータ11及び第2モータ12の一方のみを駆動して、車両を走行させることができる。このように、電動駆動装置1は、高速走行時においても、運転状態に合わせて最適なモータ数を選択することができるため、効率を向上させることができる。
【0058】
また、実施形態1の電動駆動装置1は、パーキングモードを備える。パーキングモードでは、第1遊星歯車機構3及び第2遊星歯車機構4は回転できないため、出力軸15の回転はロックされる。このため、電動駆動装置1は、出力軸15の回転をロックする専用機構(例えば、パーキングロック機構)を省くことができる。これにより、電動駆動装置1の小型化、軽量化が可能である。
【0059】
また、実施形態1の電動駆動装置1において、第1モータ11の動力の一部は、第1遊星歯車機構3及び第2遊星歯車機構4のうち第1遊星歯車機構3のみを介して出力軸15に伝わる。第1モータ11の動力の他の一部は、第1遊星歯車機構3及び第2遊星歯車機構4の両方を介して出力軸15に伝わる。これにより、出力軸15には、第1遊星歯車機構3のみを介した動力と、第1遊星歯車機構3及び第2遊星歯車機構4の両方を介した動力とを合わせた動力が伝わる。このため、変速比が大きくなりやすい。さらに、第1モータ11の動力が2つの経路に分かれて出力軸15に伝わるので、第1モータ11の動力が複数の遊星歯車機構を含む機構内で循環する場合と比較して、第1遊星歯車機構3及び第2遊星歯車機構4にそれぞれ伝わる動力が小さくなる。これにより、電動駆動装置1は、効率をさらに向上させることができる。
【0060】
上記の電動駆動装置1と、後述する電動駆動装置1Aから1D(
図12から
図15参照)、1K(
図22参照)では、第2キャリア44が本開示の「第1回転体」に対応し、第2サンギア41が本開示の「第2回転体」に対応している。
【0061】
(実施形態1の変形例)
図12は、実施形態1の変形例1における電動駆動装置の模式図である。
図12に示すように、実施形態1の変形例1の電動駆動装置1Aは、第3遊星歯車機構5Bと、出力軸16(第2出力軸の一例)と、を備える。
図12に示すように、第3遊星歯車機構5Bは、第3サンギア51と、複数の第3ピニオンギア53と、第3リングギア55と、第3キャリア54と、を備える。
【0062】
第3サンギア51は、出力軸15に接続される。第3ピニオンギア53は、第3サンギア51に対して放射方向の外側に配置され、第3サンギア51に噛み合う。第3リングギア55は、第3ピニオンギア53に対して放射方向の外側に配置され、第3ピニオンギア53に噛み合う。第3キャリア54は、第3ピニオンギア53に接続される。第3キャリア54は、複数の第3ピニオンギア53を、それぞれの第3ピニオンギア53が自転できるように支持する。第3キャリア54は、複数の第3ピニオンギア53を、第3サンギア51を中心に公転できるように支持する。第3キャリア54は、出力軸16に接続される。出力軸16は、ホイール10に接続される。電動駆動装置1Aは、第3遊星歯車機構5Bを備えることで、上述した電動駆動装置1と比較して減速比をさらに大きくすることができる。
【0063】
図13は、実施形態1の変形例2における電動駆動装置の模式図である。
図13に示すように、実施形態1の変形例2の電動駆動装置1Bは、第3遊星歯車機構5Bと、出力軸16と、を備える。
図13に示すように、電動駆動装置1Bにおいて、第3キャリア54は固定部100Cに取り付けられている。また、第3リングギア55は、出力軸16に接続される。電動駆動装置1Bは、上記の構成を有することで、上述した電動駆動装置1と比較して減速比をさらに大きくすることができる。
【0064】
図14は、実施形態1の変形例3における電動駆動装置の模式図である。
図14に示すように、実施形態1の変形例3の電動駆動装置1Cは、減速機構5Cと、出力軸17(第3出力軸の一例)と、を備える。
図14に示すように、減速機構5Cは、小ギア57と、大ギア58と、を備える。小ギア57は、出力軸15に接続される。大ギア58は、小ギア57に噛み合う。大ギア58の歯数は、小ギア57の歯数よりも多い。大ギア58は、出力軸17に接続される。出力軸17は、ホイール10に接続される。電動駆動装置1Cの出力軸15と、ホイール10に接続される出力軸17は、互いに異なる直線上に位置する(別軸である)。電動駆動装置1Cは、減速機構5Cを備えることで、上述した電動駆動装置1と比較して減速比をさらに大きくすることができる。
【0065】
図15は、実施形態1の変形例4における電動駆動装置の模式図である。
図15に示すように、実施形態1の変形例4の電動駆動装置1Dは、減速機構5Cと、出力軸17と、ディファレンシャルギア59と、ドライブシャフト110と、を備える。実施形態1の変形例4において、固定部100Cは車体である。電動駆動装置1Dの第1モータ11、第2モータ12、ブレーキ6及びクラッチは、固定部100Cに取り付けられている。電動駆動装置1Dは、オンボード方式を採用している。出力軸17の一端はホイール10(例えば、左輪)に接続し、出力軸17の他端はディファレンシャルギア59に接続されている。
【0066】
電動駆動装置1Dの出力軸15と、ホイール10に接続される出力軸17は、別軸である。ディファレンシャルギア59は大ギア58と噛合っている。ドライブシャフト110の一端はディファレンシャルギア59に接続し、ドライブシャフト110の一端はホイール10(例えば、右輪)に接続されている。ドライブシャフト110と出力軸17は、同一直線上に位置する(同軸である)。電動駆動装置1Dは、減速機構5Cを備えることで、上述した電動駆動装置1に比較して減速比をさらに大きくすることができる。
【0067】
図16は、実施形態1の変形例5における電動駆動装置の模式図である。
図17は、実施形態1の変形例6における電動駆動装置の模式図である。
図18は、実施形態1の変形例7における電動駆動装置の模式図である。上述の実施形態1では、クラッチ7が第2サンギア41と第2キャリア44との間に配置されている場合を説明した。しかしながら、実施形態1において、クラッチ7の配置は、上記に限定されない。例えば、
図16に示す電動駆動装置1Eのように、クラッチ7は、第2サンギア41と第2リングギア45との間に配置されて、第2サンギアシャフト40と第2キャリア44とに接続していてもよい。
【0068】
電動駆動装置1Eにおいて、クラッチ7は、第2サンギア41と第2リングギア45とを互いに締結する締結状態と、第2サンギア41と第2リングギア45とを互いに自由に回転させる非締結状態とを切り替える。ブレーキ6が非制動状態で、且つクラッチ7が締結状態において、第1モータ11及び第2モータ12の一方が駆動すると、第1遊星歯車機構3及び第2遊星歯車機構4が回転する。
【0069】
これにより、ブレーキ6が非制動状態で、且つクラッチ7が締結状態の場合に、第1モータ11及び第2モータ12の一方のみが駆動しても、第1遊星歯車機構3と第2遊星歯車機構4は一体的に回転して、出力軸15に動力を伝達することができる。電動駆動装置1Eでは、第2リングギア45が本開示の「第1回転体」に対応し、第2サンギア41が本開示の「第2回転体」に対応している。
【0070】
または、
図17に示す電動駆動装置1Fのように、クラッチ7は、第2キャリア44と第2リングギア45との間に配置されていてもよい。電動駆動装置1Fにおいて、クラッチ7は、第2キャリア44と第2リングギア45とを締結する締結状態と、第2キャリア44と第2リングギア45とを互いに自由に回転させる非締結状態とを切り替える。ブレーキ6が非制動状態で、且つクラッチ7が締結状態において、第1モータ11及び第2モータ12の一方が駆動すると、第1遊星歯車機構3及び第2遊星歯車機構4が回転する。
【0071】
これにより、ブレーキ6が非制動状態で、且つクラッチ7が締結状態の場合に、第1モータ11及び第2モータ12の一方のみが駆動しても、第1遊星歯車機構3と第2遊星歯車機構4は一体的に回転して、出力軸15に動力を伝達することができる。電動駆動装置1Fでは、第2キャリア44が本開示の「第1回転体」に対応し、第2リングギア45が本開示の「第2回転体」に対応している。
【0072】
または、
図18に示す電動駆動装置1Gのように、クラッチ7は、第1遊星歯車機構3と第2遊星歯車機構4との間に配置されていてもよい。例えば、クラッチ7は、第1遊星歯車機構3の第1サンギアシャフト30と、第2遊星歯車機構4の第2サンギアシャフト40とに接続している。電動駆動装置1Gにおいて、クラッチ7は、第1サンギア31と第2サンギア41とを締結する締結状態と、第1サンギア31と第2サンギア41とを互いに自由に回転させる非締結状態とを切り替える。ブレーキ6が非制動状態で、且つクラッチ7が締結状態において、第1モータ11及び第2モータ12の一方が駆動すると、第1遊星歯車機構3及び第2遊星歯車機構4が回転する。
【0073】
これにより、ブレーキ6が非制動状態で、且つクラッチ7が締結状態の場合に、第1モータ11及び第2モータ12の一方のみが駆動しても、第1遊星歯車機構3と第2遊星歯車機構4は一体的に回転して、出力軸15に動力を伝達することができる。電動駆動装置1Gでは、第1サンギア31が本開示の「第1回転体」に対応し、第2サンギア41が本開示の「第2回転体」に対応している。
【0074】
図19は、実施形態1の変形例8における電動駆動装置の模式図である。
図20は、変形例8の低速モードの一例を示す模式図である。
図19に示す電動駆動装置1Hのように、第1モータ11は、第1遊星歯車機構3及び第2遊星歯車機構4にそれぞれ接続してもよい。また、第2モータ12も、第1遊星歯車機構3及び第2遊星歯車機構4にそれぞれ接続してもよい。また、クラッチ7は、第1遊星歯車機構3に接続してもよい。クラッチ7は、第1キャリア34と第1リングギア35との間に配置されてもよい。電動駆動装置1Hにおいて、クラッチ7は、第1キャリア34と第1リングギア35とを締結する締結状態と、第1キャリア34と第1リングギア35とを互いに自由に回転させる非締結状態とを切り替える。
【0075】
図19に示す電動駆動装置1Hでは、第1サンギアシャフト30と第2サンギアシャフト40とが直列に接続して、1本のサンギアシャフト210を構成している。第1モータ11の動力は、サンギアシャフト210を介して第1サンギア31と、第2サンギア41とに伝達される。また、第2モータ12の動力は、第1リングギア35と第2キャリア44とに伝達される。
【0076】
図19に示す電動駆動装置1Hは、ブレーキ6を非制動状態で、クラッチ7を締結状態とすることで、高速モードを実現することができる。高速モードにおいて、第1モータ11及び第2モータ12の少なくとも一方が駆動すると、第1キャリア34と、第1リングギア35及び第2キャリア44とが一体となって回転し、出力軸15に動力を伝達することができる。
【0077】
また、電動駆動装置1Hは、ブレーキ6を制動状態とし、クラッチ7を非締結状態とすることで、低速モードを実現することができる。例えば
図20に示すように、低速モードにおいて、第1モータ11からトルクTaが出力されると、第2遊星歯車機構4においてトルクTaはトルクTa1及びトルクTa2に分配される。トルクTa1は、第1サンギア31及び第1ピニオンギア33を介して第1キャリア34に伝達される。トルクTa2は、第2ピニオンギア43、第2キャリア44及び第1リングギア35を介して第1キャリア34に伝達される。また、第2モータ12からトルクTbが出力されると、トルクTbは、第1リングギア35、第1ピニオンギア33を介して第1キャリア34に伝達される。トルクTa1、Ta2、Tbは合流してトルクT10となり、出力される。
【0078】
以上説明したように、実施形態1の変形例8に係る電動駆動装置1Hは、第1モータ11と、第2モータ12と、第1モータ11及び第2モータ12に接続される第1遊星歯車機構3と、第1遊星歯車機構3、第1モータ11及び第2モータ12に接続される第2遊星歯車機構4と、第1遊星歯車機構3に接続される出力軸15と、第2遊星歯車機構4に接続されるブレーキ6と、クラッチ7と、を備える。第1遊星歯車機構3は、第1モータ11に接続される第1サンギア31と、第1サンギア31に噛み合う第1ピニオンギア33と、第1ピニオンギア33に噛み合い且つ第2モータ12に接続される第1リングギア35と、第1ピニオンギア33を支持し且つ出力軸15に接続される第1キャリア34と、を備える。第2遊星歯車機構4は、第1リングギア35に接続され且つ第1モータ11に接続される第2サンギア41と、第2サンギア41に噛み合う第2ピニオンギア43と、第2ピニオンギア43を支持し且つ第1リングギア35と第2モータ12とに接続される第2キャリア44と、第2ピニオンギア43に噛み合う第2リングギア45と、を備える。ブレーキ6は、第2遊星歯車機構4の一部である第2リングギア45の回転を規制する制動状態と、第2遊星歯車機構4を自由に回転させる非制動状態とを切り替える。クラッチ7は、第1遊星歯車機構3が有する第1キャリア34及び第1リングギア35を互いに締結する締結状態と、第1キャリア34及び第1リングギア35を互いに自由に回転させる非締結状態とを切り替える。ブレーキ6が非制動状態で、且つクラッチ7が締結状態において、第1モータ11及び第2モータ12の一方が駆動すると、第1遊星歯車機構3及び第2遊星歯車機構4が回転する。
【0079】
これにより、ブレーキ6が非制動状態で、且つクラッチ7が締結状態の場合、第1モータ11及び第2モータ12の一方のみが駆動しても、第1遊星歯車機構3と第2遊星歯車機構4は一体的に回転して、出力軸15に動力を伝達することができる。電動駆動装置1Hでは、第1キャリア34が本開示の「第1回転体」に対応し、第1リングギア35が本開示の「第2回転体」に対応している。
【0080】
なお、
図19では、第2モータ12は第2キャリア44よりも第1リングギア35に近い位置に配置されているが、これはあくまで一例である。第2モータ12は、第1リングギア35よりも第2キャリア44に近い位置に配置されていてもよい。例えば、電動駆動装置1Hは、第1リングギア35側に配置された第2モータ12に変えて、第2キャリア44側に配置された第2モータ12’を備えてもよい。また、電動駆動装置1Hにおいても、他の変形例と同様に、出力軸15に接続する減速機構5Cを備えてもよい。
【0081】
図21は、実施形態1の変形例9における電動駆動装置の模式図である。
図21に示す電動駆動装置1Jのように、クラッチ7は、第1遊星歯車機構3に接続し、第1サンギア31と第1キャリア34との間に配置されていてもよい。電動駆動装置1Jにおいて、クラッチ7は、第1サンギア31と第1キャリア34とを締結する締結状態と、第1サンギア31と第1キャリア34とを互いに自由に回転させる非締結状態とを切り替える。ブレーキ6が非制動状態で、且つクラッチ7が締結状態において、第1モータ11及び第2モータ12の一方が駆動すると、第1遊星歯車機構3及び第2遊星歯車機構4が回転する。
【0082】
これにより、ブレーキ6が非制動状態で、且つクラッチ7が締結状態の場合、第1モータ11及び第2モータ12の一方のみが駆動しても、第1遊星歯車機構3と第2遊星歯車機構4は一体的に回転して、出力軸15に動力を伝達することができる。電動駆動装置1Jでは、第1キャリア34が本開示の「第1回転体」に対応し、第1サンギア31が本開示の「第2回転体」に対応している。
【0083】
(実施形態2)
図22は、実施形態2の電動駆動装置の模式図である。
図22に示すように、実施形態2の電動駆動装置1Kは、第1モータ11と、第2モータ12と、第1遊星歯車機構3と、第2遊星歯車機構4と、ブレーキ6(以下、第1ブレーキ)と、出力軸15と、制御装置19と、第4遊星歯車機構8と、第2ブレーキ7A(制動部の一例)と、を備える。第4遊星歯車機構8及び第2ブレーキ7Aの組み合わせが、締結装置として機能する。
【0084】
第4遊星歯車機構8は、第4サンギア81と、第5サンギア82と、複数のロングピニオンギア(第4ピニオンギアの一例)83と、第4キャリア84と、を備える。第4サンギア81は第2キャリア44に接続される。第5サンギア82は、第2サンギアシャフト40を介して、第2サンギア41と第2モータ12とに接続される。第4サンギア81及び第5サンギア82は、それぞれ軸方向に長く、同一のロングピニオンギア83に噛合っている。また、第4サンギア81の歯数と第5サンギア82の歯数は、互いに同一である。
【0085】
第2ブレーキ7Aは、第4キャリア84に接続されている。第2ブレーキ7Aは、制御装置19からの制御信号に基づいて、第4キャリア84の回転(公転)を規制する制動状態と、第4キャリア84を自由に回転(公転)させる非制動状態とを切り替える装置である。第2ブレーキ7Aは、回転体の回転を制動できる装置であり、例えば、ワンウェイクラッチ、ツーウェイクラッチ、摩擦クラッチ、バンドブレーキ又は電磁クラッチ等である。第2ブレーキ7Aは、固定部100に取り付けられている。
【0086】
電動駆動装置1Kは、上述した電動駆動装置1と同様に、第1低速モード、第2低速モード、第3低速モード、第1高速モード、第2高速モード及び第3高速モードを備える。各モードにおける第1モータ11、第2モータ12、第1ブレーキ6の状態は
図9に示す通りである。また、各モードにおける第2ブレーキ7Aの状態は、
図9に示すクラッチ7の欄において、締結状態を制動状態と読み替え、非締結状態を非制動状態と読み替えた場合と同じである。
【0087】
電動駆動装置1Kにおいて、第2ブレーキ7Aが制動状態になると、第4キャリア84は固定部100に固定される。これにより、第4遊星歯車機構8は動力を伝達することができるようになり、第2サンギア41の回転が第5サンギア82と、ロングピニオンギア83と、第4サンギア81とを介して、第2キャリア44に伝達されるようになる。上記したように、第4サンギア81と第5サンギア82は同一のロングピニオンギア83と噛合っており、且つ、第4サンギア81の歯数と第5サンギア82の歯数は互いに同一である。
【0088】
これにより、第4サンギア81の回転数と第5サンギア82の回転数は互いに同一となる。第5サンギア82に入力された回転は第4サンギア81から同じ回転数で出力されるため、第5サンギア82の回転数と第2キャリア44の回転数とが互いに同一になる。この状態は、第5サンギア82と第2キャリア44とが互いに固定されている状態と実質的に同じである。したがって、電動駆動装置1Kにおいて、第1ブレーキ6が非制動状態で、且つ第2ブレーキ7Aが制動状態の場合(例えば、第1高速モード又は第2高速モードの場合)、第2遊星歯車機構4は、第1遊星歯車機構3と一体的に回転することができる。
【0089】
以上説明したように、実施形態2の電動駆動装置1Kは、第2遊星歯車機構4に接続される第4遊星歯車機構8と、第4遊星歯車機構8に接続される第2ブレーキ7Aとを備える。第4遊星歯車機構8は、第2キャリア44に接続される第4サンギア81と、第2サンギア41に接続される第5サンギア82と、第4サンギア81及び第5サンギア82と噛合うロングピニオンギア83と、ロングピニオンギア83を支持する第4キャリア84と、を備える。第4サンギア81の歯数と第5サンギア82の歯数は互いに同一である。第2ブレーキ7Aは、第4キャリア84の回転を規制する制動状態と第4キャリア84を自由に回転させる非制動状態とを切り替える。これにより、第4遊星歯車機構8及び第2ブレーキ7Aの組み合わせが、締結装置として機能する。第2ブレーキ7Aは、実施形態1のクラッチ7のように回転体同士を締結する必要は無い。このため、電動駆動装置1Kは、実施形態1の電動駆動装置1と比べて、締結機構が簡単になる。
【0090】
なお、実施形態2において、第4遊星歯車機構8の配置位置は、第2サンギア41と第2キャリア44との間に限定されない。例えば、実施形態1の変形例5で示したクラッチ7と同様に、第4遊星歯車機構8は、第2サンギア41と第2リングギア45との間に配置されてもよい。または、実施形態1の変形例6で示したクラッチ7と同様に、第4遊星歯車機構8は、第2キャリア44と第2リングギア45との間に配置されてもよい。これらの場合も、第2遊星歯車機構4は、第1遊星歯車機構3と一体的に回転することができる。
【0091】
(実施形態3)
実施形態3は、特許文献1に開示されたインホイールモータ(以下、電動駆動装置)にクラッチを追加した態様である。追加したクラッチは、第1遊星歯車機構が有する複数の回転体を互いに締結する締結状態と、複数の回転体を互いに自由に回転させる非締結状態とを切り替える装置である。以下、具体的に説明する。
【0092】
図23は、実施形態3の電動駆動装置の模式図である。
図23に示すように、インホイールモータである電動駆動装置101は、ケーシングGと、第1モータ11と、第2モータ12と、変速機構113と、ホイール軸受150(第1出力軸の一例)とを備える。ケーシングGは、第1モータ11と、第2モータ12と、変速機構113とを収納する。第1モータ11は、第1回転力TAを出力できる。第2モータ12は、第2回転力TBを出力できる。変速機構113は、第1モータ11と連結される。これにより、変速機構113は、第1モータ11が作動すると、第1回転力TAが伝えられる(入力される)。
【0093】
なお、ここでいうモータの作動とは、モータに電力が供給されて出力軸が回転することをいう。また、変速機構113は、第2モータ12と連結される。これにより、変速機構113は、第2モータ12が作動すると、第2回転力TBが伝えられる(入力される)。そして、変速機構113は、ホイール軸受150と連結され、変速された回転力をホイール軸受150に伝える(出力する)。ホイール軸受150は、電動車両のホイール10が取り付けられる。
【0094】
変速機構113は、第1遊星歯車機構120と、第2遊星歯車機構130と、第1クラッチ140(制動装置の一例)と、第2クラッチ145(締結装置の一例)とを備える。第1遊星歯車機構120は、シングルピニオン式の遊星歯車機構である。第1遊星歯車機構120は、第1サンギア121と、第1ピニオンギア122と、第1キャリア123と、第1リングギア124とを備える。第2遊星歯車機構130は、ダブルピニオン式の遊星歯車機構である。第2遊星歯車機構130は、第2サンギア131と、第2ピニオンギア132aと、第3ピニオンギア132bと、第2キャリア133と、第2リングギア134とを備える。
【0095】
第1サンギア121は、回転軸R1を中心に回転(自転)できるようにケーシングG内に支持される。第1サンギア121は、第1モータ11と連結される。よって、第1サンギア121は、第1モータ11が作動すると、第1回転力TAが伝えられる。これにより、第1サンギア121は、第1モータ11が作動すると、回転軸R1を中心に回転する。第1ピニオンギア122は、第1サンギア121と噛み合う。第1キャリア123は、第1ピニオンギア122が第1ピニオン回転軸Rp1を中心に回転(自転)できるように第1ピニオンギア122を保持する。第1ピニオン回転軸Rp1は、例えば、回転軸R1と平行である。
【0096】
第1キャリア123は、回転軸R1を中心に回転(自転)できるようにケーシングG内に支持される。これにより、第1キャリア123は、第1ピニオンギア122が第1サンギア121を中心に、すなわち回転軸R1を中心に公転できるように第1ピニオンギア122を保持することになる。第1リングギア124は、回転軸R1を中心に回転(自転)できる。第1リングギア124は、第1ピニオンギア122と噛み合う。また、第1リングギア124は、第2モータ12と連結される。よって、第1リングギア124は、第2モータ12が作動すると第2回転力TBが伝えられる。これにより、第1リングギア124は、第2モータ12が作動すると、回転軸R1を中心に回転(自転)する。
【0097】
第1クラッチ140は、第1キャリア123の回転を規制できる。具体的には、第1クラッチ140は、ケーシングGに取り付けられている。第1クラッチ140は、第1クラッチ140とケーシングGとを締結したり、離したりする。これにより、第1クラッチ140は、回転軸R1を中心とした第1キャリア123の回転を規制する制動状態と、回転軸R1を中心に第1キャリア123を自由に回転させる非制動状態と、を切り替える。
【0098】
第2サンギア131は、回転軸R1を中心に回転(自転)できるようにケーシングG内に支持される。第2サンギア131は、第1サンギア121を介して第1モータ11と連結される。具体的には、第1サンギア121と第2サンギア131とは、同軸(回転軸R1)で回転できるようにサンギアシャフト114に一体で形成される。そして、サンギアシャフト114は、第1モータ11と連結される。これにより、第2サンギア131は、第1モータ11が作動すると、回転軸R1を中心に回転する。
【0099】
第2ピニオンギア132aは、第2サンギア131と噛み合う。第3ピニオンギア132bは、第2ピニオンギア132aと噛み合う。第2キャリア133は、第2ピニオンギア132aが第2ピニオン回転軸Rp2を中心に回転(自転)できるように第2ピニオンギア132aを保持する。また、第2キャリア133は、第3ピニオンギア132bが第3ピニオン回転軸Rp3を中心に回転(自転)できるように第3ピニオンギア132bを保持する。第2ピニオン回転軸Rp2及び第3ピニオン回転軸Rp3は、例えば、回転軸R1と平行である。
【0100】
第2キャリア133は、回転軸R1を中心に回転(自転)できるようにケーシングG内に支持される。これにより、第2キャリア133は、第2ピニオンギア132a及び第3ピニオンギア132bが第2サンギア131を中心に、すなわち回転軸R1を中心に公転できるように第2ピニオンギア132a及び第3ピニオンギア132bを保持することになる。また、第2キャリア133は、第1リングギア124と連結される。これにより、第2キャリア133は、第1リングギア124が回転(自転)すると、回転軸R1を中心に回転(自転)する。第2リングギア134は、回転軸R1を中心に回転(自転)できる。第2リングギア134は、第3ピニオンギア132bと噛み合う。また、第2リングギア134は、ホイール軸受150と連結される。これにより、第2リングギア134が回転(自転)すると、ホイール軸受150は回転する。
【0101】
第2クラッチ145は、第1サンギア121と第1キャリア123とを互いに固定することができる。具体的には、第1サンギア121と第1キャリア123とを互いに締結する締結状態と、第1サンギア121と第1キャリア123とを互いに自由に回転させる非締結状態とを切り替える。上記の締結状態では、第1サンギア121、第1ピニオンギア122、第1キャリア123及び第1リングギア124は一体化する。これにより、第1遊星歯車機構120は、第2遊星歯車機構130と一体的に回転する。
【0102】
以上説明したように、実施形態3の電動駆動装置101は、第1遊星歯車機構120と、第2遊星歯車機構130と、第1遊星歯車機構120に接続される第1クラッチ140と、第1遊星歯車機構120に接続される第2クラッチ145と、第2遊星歯車機構130に接続されるホイール軸受150と、を備える。第1クラッチ140は、第1キャリア123の回転を規制する制動状態と、第1遊星歯車機構120を自由に回転させる非制動状態とを切り替える。第2クラッチ145は、第1サンギア121と第1キャリア123とを締結する締結状態と、第1サンギア121と第1キャリア123とを互いに自由に回転させる非締結状態とを切り替える。
【0103】
これにより、第1クラッチ140が非制動状態で、第2クラッチ145が締結状態の場合、第1サンギア121と第1キャリア123とが互いに固定されるので、第1遊星歯車機構120は第2遊星歯車機構130と一体的に回転する。このため、第1クラッチ140が非制動状態で、第2クラッチ145が締結状態の場合に、第1モータ11及び第2モータ12の一方のみが駆動しても、ホイール軸受150に動力を伝達することができる。これにより、電動駆動装置101は、高速走行時においても、運転状態に合わせて最適なモータ数を選択することができるため、効率を向上させることができる。
【0104】
また、第1クラッチ140が制動状態で、且つ第2クラッチ145が締結状態の場合は、第1遊星歯車機構120及び第2遊星歯車機構130は回転できないため、ホイール軸受150の回転はロックされる。このため、電動駆動装置101はパーキングロック機構を省くことができる。これにより、電動駆動装置101の小型化、軽量化が可能である。
【0105】
なお、実施形態3において、第2クラッチ145の配置位置は、第1サンギア121と第1キャリア123との間に限定されない。例えば、第2クラッチ145は、第1サンギア121と第1リングギア124との間に配置されてもよい。または、第2クラッチ145は、第1キャリア123と第1リングギア124との間に配置されてもよい。これらの場合も、第1遊星歯車機構120は、第2遊星歯車機構130と一体的に回転することができる。
【符号の説明】
【0106】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1H、1J、1K、101 電動駆動装置
3、120 第1遊星歯車機構
4、130 第2遊星歯車機構
5B 第3遊星歯車機構
5C 減速機構
6 ブレーキ(第1ブレーキ)
7 クラッチ
7A 第2ブレーキ
8 第4遊星歯車機構
10 ホイール
11 第1モータ
12 第2モータ
15、16、17 出力軸
19 制御装置
30 第1サンギアシャフト
31、121 第1サンギア
33、122 第1ピニオンギア
34、123 第1キャリア
35、124 第1リングギア
40 第2サンギアシャフト
41、131 第2サンギア
43、132a 第2ピニオンギア
44、133 第2キャリア
45、134 第2リングギア
51 第3サンギア
53 第3ピニオンギア
54 第3キャリア
55 第3リングギア
57 小ギア
58 大ギア
81 第4サンギア
82 第5サンギア
83 ロングピニオンギア
84 第4キャリア
100 固定部
110 ドライブシャフト
140 第1クラッチ
145 第2クラッチ