(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】ボールねじ装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
F16H 25/22 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
F16H25/22 A
(21)【出願番号】P 2022568728
(86)(22)【出願日】2022-08-03
(86)【国際出願番号】 JP2022029813
【審査請求日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2021136411
(32)【優先日】2021-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021136412
(32)【優先日】2021-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 靖巳
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 諒
(72)【発明者】
【氏名】宮森 智子
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-194174(JP,A)
【文献】特開2008-101646(JP,A)
【文献】国際公開第2019/194143(WO,A1)
【文献】特開2014-145465(JP,A)
【文献】特開2004-169713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に螺旋状の軸側ボールねじ溝を有し、使用時に回転運動する、ねじ軸と、
内周面に螺旋状のナット側ボールねじ溝を有し、使用時に直線運動する、ナットと、
前記軸側ボールねじ溝と前記ナット側ボールねじ溝との間に配置された、複数のボールと、
軸方向一方側の端部が前記ナットの軸方向他方側の端部に嵌合固定され、前記ナットとともに直線運動する、嵌合筒と、
前記ナットと前記嵌合筒との軸方向の相対変位を防止するための止め輪と、
前記ナットおよび前記嵌合筒を軸方向に挿通可能な挿通孔を有するハウジングと、
前記ハウジングに対する前記ナットの相対回転を阻止する回り止め部材と、
を備え、
前記ナット
の外周面は、軸方向他方側の端部に
配置され、かつ、第1止め輪溝を備えた第1嵌合面
と、前記第1嵌合面の軸方向一方側に隣接配置され、かつ、前記第1嵌合面よりも外径の大きい大径面と、前記第1嵌合面と前記大径面との間に配置され、かつ、軸方向他方側を向いた段差面とを有し、
前記嵌合筒は、
前記ナットに対して外嵌固定されており、内周面の軸方向一方側の端部に、径方向に関して前記第1止め輪溝と対向する部分に第2止め輪溝を備えた第2嵌合面を有し、
軸方向一方側の端面を、前記段差面に対して軸方向に突き当てており、
前記止め輪は、前記第1止め輪溝と前記第2止め輪溝との間に掛け渡すように係止されて
おり、
前記挿通孔は、内周面に、前記回り止め部材のうちの径方向に関する外側部分と円周方向に係合可能で、かつ、軸方向に伸長した案内凹溝を有し、
前記ナットは、前記大径面に、前記回り止め部材のうちの径方向に関する内側部分と円周方向に係合可能で、かつ、軸方向他方側を向いた閉塞面を含み、前記段差面に開口した保持凹部を有し、
前記回り止め部材は、径方向に関する内側部分が、前記閉塞面と、前記嵌合筒の軸方向一方側の端面との間に挟まれた状態で、前記保持凹部の内側に配置され、かつ、径方向に関する外側部分が、前記案内凹溝の内側に軸方向に摺動可能に配置されている、
ボールねじ装置。
【請求項2】
外周面に螺旋状の軸側ボールねじ溝を有し、使用時に回転運動する、ねじ軸と、
内周面に螺旋状のナット側ボールねじ溝を有し、使用時に直線運動する、ナットと、
前記軸側ボールねじ溝と前記ナット側ボールねじ溝との間に配置された、複数のボールと、
軸方向一方側の端部が前記ナットの軸方向他方側の端部に嵌合固定され、前記ナットとともに直線運動する、嵌合筒と、
前記ナットと前記嵌合筒との軸方向の相対変位を防止するための止め輪と、
前記ナットおよび前記嵌合筒を軸方向に挿通可能な挿通孔を有するハウジングと、
前記ハウジングに対する前記ナットの相対回転を阻止する回り止め部材と、
を備え、
前記ナットは、
内周面の軸方向他方側の端部に、第1止め輪溝を備えた第1嵌合面を有し、
前記嵌合筒
の外周面は、軸方向一方側の端部に
配置され、かつ、径方向に関して前記第1止め輪溝と対向する部分に第2止め輪溝を備えた第2嵌合面
と、前記第2嵌合面の軸方向他方側に隣接配置され、かつ、前記第2嵌合面よりも外径の大きい大径面と、前記第2嵌合面と前記大径面との間に配置され、かつ、軸方向一方側を向いた段差面とを有し、
前記嵌合筒は、前記ナットに対して内嵌固定されており、前記段差面を、前記ナットの軸方向他方側の端面に対して軸方向に突き当てており、
前記止め輪は、前記第1止め輪溝と前記第2止め輪溝との間に掛け渡すように係止されて
おり、
前記挿通孔は、内周面に、前記回り止め部材のうちの径方向に関する外側部分と円周方向に係合可能で、かつ、軸方向に伸長した案内凹溝を有し、
前記嵌合筒は、前記大径面に、前記回り止め部材のうちの径方向に関する内側部分と円周方向に係合可能で、かつ、軸方向一方側を向いた閉塞面を含み、前記段差面に開口した保持凹部を有し、
前記回り止め部材は、径方向に関する内側部分が、前記閉塞面と、前記ナットの軸方向他方側の端面との間に挟まれた状態で、前記保持凹部の内側に配置され、かつ、径方向に関する外側部分が、前記案内凹溝の内側に軸方向に摺動可能に配置されている、
ボールねじ装置。
【請求項3】
外周面に螺旋状の軸側ボールねじ溝を有し、使用時に回転運動する、ねじ軸と、
内周面に螺旋状のナット側ボールねじ溝を有し、使用時に直線運動する、ナットと、
前記軸側ボールねじ溝と前記ナット側ボールねじ溝との間に配置された、複数のボールと、
軸方向一方側の端部が前記ナットの軸方向他方側の端部に嵌合固定され、前記ナットとともに直線運動する、嵌合筒と、
前記ナットと前記嵌合筒との軸方向の相対変位を防止するための止め輪と、
を備え、
前記ナットは、軸方向他方側の端部に、第1止め輪溝を備えた第1嵌合面を有し、
前記嵌合筒は、軸方向一方側の端部に、径方向に関して前記第1止め輪溝と対向する部分に第2止め輪溝を備えた第2嵌合面を有し、
前記止め輪は、前記第1止め輪溝と前記第2止め輪溝との間に掛け渡すように係止されて
おり、
前記ナットの軸方向他方側の端部と前記嵌合筒の軸方向一方側の端部とのうち、前記止め輪を径方向外側から覆った一方の端部には、径方向に関して前記止め輪と重なる部分に、径方向に貫通した確認用窓孔が設けられている、
ボールねじ装置。
【請求項4】
前記確認用窓孔は、径方向両側にのみ開口している、
請求項3に記載したボールねじ装置。
【請求項5】
前記確認用窓孔は、径方向両側に開口するだけでなく、軸方向にも開口している、
請求項3に記載したボールねじ装置。
【請求項6】
前記止め輪は、円周方向一箇所に不連続部を有しており、
前記確認用窓孔の円周方向に関する幅寸法は、前記不連続部の円周方向に関する幅寸法よりも大きい、
請求項3に記載したボールねじ装置。
【請求項7】
前記止め輪は、円周方向一箇所に不連続部を有しており、
前記確認用窓孔は、前記一方の端部の円周方向複数箇所に備えられており、
円周方向に隣り合う1対の前記確認用窓孔同士の間隔は、前記不連続部の円周方向に関する幅寸法よりも大きい、
請求項3に記載したボールねじ装置。
【請求項8】
請求項3~7のうちのいずれか1項に記載したボールねじ装置の製造方法であって、
前記止め輪が適切に組み付けられているか否かを検査する検査工程を備え、
前記検査工程は、
前記確認用窓孔の内側に検査用治具の先端部を径方向外側から挿入し、前記検査用治具の先端部の挿入深さを測定する工程を含む、
ボールねじ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ボールねじ装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボールねじ装置は、ねじ軸とナットとの間でボールを転がり運動させるため、ねじ軸とナットを直接接触させる滑りねじ装置に比べて、高い効率が得られる。このため、ボールねじ装置は、電動モータなどの駆動源の回転運動を直線運動に変換するために、自動車の電動ブレーキ装置やオートマチックマニュアルトランスミッション(AMT)、工作機械の位置決め装置などの各種機械装置に組み込まれている。
【0003】
ボールねじ装置は、外周面に螺旋状の軸側ボールねじ溝を有するねじ軸と、内周面に螺旋状のナット側ボールねじ溝を有するナットと、軸側ボールねじ溝とナット側ボールねじ溝との間に配置された複数のボールとを備える。ボールねじ装置は、用途に応じて、ねじ軸とナットとのうちの一方を回転運動要素とし、ねじ軸とナットとのうちの他方を直線運動要素として用いられる。
【0004】
ボールねじ装置においては、直線運動要素として用いるナットに、ピストンなどを固定して使用することが行われている。
図23は、特開2016-35322号公報に記載された、ナット102にピストン104を嵌合固定した構造を有する、従来構造のボールねじ装置100を示している。
【0005】
ボールねじ装置100は、ねじ軸101と、ナット102と、複数のボール103と、ピストン104と、ハウジング(キャリパ)105とを備える。
【0006】
ねじ軸101は、外周面に螺旋状の軸側ボールねじ溝106を有しており、使用時に回転運動する。このため、ねじ軸101は、回転運動要素であり、ハウジング105に対して、転がり軸受107により回転自在に支持されている。ねじ軸101には、被動ギヤ108が固定されている。被動ギヤ108には、アイドルギヤ109を介して、図示しない電動モータの出力軸の回転が伝達される。したがって、ねじ軸101は、電動モータへの通電に基づいて回転駆動される。
【0007】
ナット102は、内周面に螺旋状のナット側ボールねじ溝110を有しており、使用時に直線運動する。このため、ナット102は、直線運動要素であり、後述するようにハウジング105に対する相対回転が阻止されている。
【0008】
ねじ軸101は、ナット102の内側に挿通され、ナット102と同軸に配置されている。軸側ボールねじ溝106とナット側ボールねじ溝110とは、径方向に互いに対向するように配置され、螺旋状の負荷路111を構成している。
【0009】
負荷路111の始点と終点とは、図示しない循環手段により接続されている。負荷路111の終点にまで達したボール103は、循環手段を介して、負荷路111の始点にまで戻される。なお、負荷路111の始点と終点とは、ねじ軸101とナット102との軸方向に関する相対変位の方向(相対回転方向)に応じて入れ替わる。
【0010】
ピストン104は、有底円筒形状を有しており、ナット102に対し相対回転不能に外嵌固定されている。特に従来構造のボールねじ装置100においては、ナット102全体を覆うようにピストン104をナット102に外嵌している。換言すれば、ナット102は、ピストン104の内側に全体が挿入されている。
【0011】
従来構造のボールねじ装置100では、ナット102とピストン104との軸方向の相対変位を防止するために、ナット102の軸方向端面を、ピストン104の内周面に備えられた段差面112に突き当て、かつ、ピストン104の内周面に止め輪113を係止している。これにより、ナット102を、段差面112と止め輪113との間で軸方向両側から挟持し、ピストン104に対してナット102が軸方向に相対変位することを防止している。
【0012】
また、ハウジング105に対してナット102が相対回転することを阻止するために、ナット102に対して相対回転不能に外嵌したピストン104の外周面に、軸方向に伸長したキー溝114を設けている。
【0013】
ハウジング105は、ピストン104を軸方向に挿通可能な挿通孔(シリンダ孔)115を有している。挿通孔115の内周面には、嵌合溝116が備えられている。嵌合溝116には、キー117が嵌め込まれている。そして、キー117のうち、挿通孔115の内周面から径方向内側に張り出した部分を、ピストン104の外周面に備えられたキー溝114に対して軸方向に摺動可能に係合させている。このような構成により、ナット102が、ハウジング105に対して相対回転することを阻止し、ナット102の直線運動を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来構造のボールねじ装置100においては、ナット102とピストン104との軸方向の相対変位を防止するために、ナット102全体を覆うようにピストン104をナット102に外嵌し、ピストン104の内周面に備えられた段差面112とピストン104の内周面に係止した止め輪113との間で、ナット102を軸方向両側から挟持している。
【0016】
このため、ナット102の外径(最大外径)よりもピストン104の内径を大きくする必要があり、ボールねじ装置100が大型化しやすい。また、ナット102の外径は、ピストン104の内径による制約を受けるため、ボールねじ装置100の負荷容量を大きくする面で不利になる。
【0017】
これに対して、ピストンの軸方向一部をナットの軸方向一部に直接圧入することのみによって、ナットとピストンとの軸方向の相対変位を防止することが考えられる。しかしながら、この場合には、ナットを構成する金属(たとえば鉄系合金)と、ピストンを構成する金属(たとえばアルミニウム系合金)との組み合わせによっては、熱膨張係数の差に起因して締め代が減少し、ナットとピストンとの軸方向変位を有効に防止できなくなる可能性がある。ナットとピストンとの軸方向変位を有効に防止するためには、圧入締め代の管理を厳密に行う必要があり、ボールねじ装置の製造コストが嵩む原因になる。
【0018】
また、ピストンとナットとを溶接により固定することも考えられるが、この場合にも、ナットを構成する金属(たとえば鉄系合金)とピストンを構成する金属(たとえばアルミニウム系合金)との組み合わせによっては、溶接時に金属間化合物が形成され、接合強度が不十分となる可能性がある。このため、やはり、ナットとピストンとの軸方向変位を有効に防止できなくなる可能性がある。
【0019】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、製造コストを増大させずに、ナットと嵌合筒との軸方向の相対変位を有効に防止でき、かつ、装置全体の小型化および負荷容量の増大を図れる、ボールねじ装置を提供することを目的とする。
【0020】
また、本開示は、必要に応じて、組立後に、止め輪が組み付けられているか否かを容易に確認できる、ボールねじ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本開示の一態様にかかるボールねじ装置は、ねじ軸と、ナットと、複数のボールと、嵌合筒と、止め輪とを備える。
【0022】
前記ねじ軸は、外周面に螺旋状の軸側ボールねじ溝を有し、使用時に回転運動する。
【0023】
前記ナットは、内周面に螺旋状のナット側ボールねじ溝を有し、使用時に直線運動する。
【0024】
前記複数のボールは、前記軸側ボールねじ溝と前記ナット側ボールねじ溝との間に配置される。
【0025】
前記嵌合筒は、軸方向一方側の端部が、前記ナットの軸方向他方側の端部に嵌合固定され、前記ナットとともに直線運動する。
【0026】
前記止め輪は、前記ナットと前記嵌合筒との軸方向の相対変位を防止する。
【0027】
本開示の一態様にかかるボールねじ装置では、前記ナットは、軸方向他方側の端部に、第1止め輪溝を備えた第1嵌合面を有し、前記嵌合筒は、軸方向一方側の端部に、径方向に関して前記第1止め輪溝と対向する部分に第2止め輪溝を備えた第2嵌合面を有する。
【0028】
前記止め輪は、前記第1止め輪溝と前記第2止め輪溝との間に掛け渡すように係止されている。
【0029】
本開示の一態様にかかるボールねじ装置では、前記嵌合筒の最大外径を、前記ナットの最大外径と同じにすることができる。なお、前記嵌合筒部の最大外径を、前記ナットの最大外径と同じにするとは、前記嵌合筒部の最大外径を、前記ナットの最大外径と完全に一致させる場合に限らず、前記嵌合筒部の最大外径を、前記ナットの最大外径と製造上不可避な公差範囲内で実質的に同じにする場合を含む。
【0030】
本開示の一態様にかかるボールねじ装置では、前記嵌合筒を、前記ナットに対して、圧入または隙間嵌めにより嵌合することができる。
【0031】
前記嵌合筒を、前記ナットに対して圧入により嵌合する場合には、前記第1嵌合面と前記第2嵌合面とを、軸方向の全長にわたり締め代を持って接触させることもできるし、軸方向の一部において締め代を持って接触させることもできる。
【0032】
本開示の一態様にかかるボールねじ装置では、前記止め輪の断面形状を、矩形または円形とすることができる。
【0033】
本開示の一態様にかかるボールねじ装置では、前記ナットの軸方向他方側の端面と前記第1嵌合面とを、第1面取り部を介して接続し、前記嵌合筒の軸方向一方側の端面と前記第2嵌合面とを、第2面取り部を介して接続することができる。
【0034】
本開示の一態様にかかるボールねじ装置は、前記ナットを前記ねじ軸に対して軸方向他方側に相対移動させる際に、前記ナットの軸方向他方側の端面または前記嵌合筒の軸方向一方側の端面を利用して、前記ナットと前記嵌合筒との間で軸力の伝達を行い、前記ナットを前記ねじ軸に対して軸方向一方側に相対移動させる際に、前記止め輪を介して、前記ナットと前記嵌合筒との間で軸力の伝達を行うことができる。
【0035】
本開示の一態様にかかるボールねじ装置では、前記ナットの外周面を、前記第1嵌合面と、前記第1嵌合面の軸方向一方側に隣接配置され、かつ、前記第1嵌合面よりも外径の大きい大径面と、前記第1嵌合面と前記大径面との間に配置され、かつ、軸方向他方側を向いた段差面とを有するものとすることができる。
【0036】
そして、前記嵌合筒を、前記ナットに対して外嵌固定し、軸方向一方側の端面を、前記段差面に対して軸方向に突き当てることができる。
【0037】
この場合、前記ナットを前記ねじ軸に対して軸方向他方側に相対移動させる際に、前記嵌合筒の軸方向一方側の端面と前記ナットの前記段差面との突き当て部を介して、前記ナットと前記嵌合筒との間で軸力の伝達を行うことができる。
【0038】
前記嵌合筒を前記ナットに対して外嵌固定する上記構成を採用する場合には、前記第1止め輪溝を、前記ナットの前記段差面を基準に形成し、前記第2止め輪溝を、前記嵌合筒の軸方向一方側の端面を基準に形成することができる。
【0039】
前記嵌合筒を前記ナットに対して外嵌固定する上記構成を採用する場合には、前記第1止め輪溝を、前記ナット側ボールねじ溝から軸方向に外れた部分に備えることができる。
【0040】
前記嵌合筒を前記ナットに対して外嵌固定する上記構成を採用する場合には、前記嵌合筒の外周面の軸方向一方側の端部に、小径段部を備えることができる。
【0041】
前記嵌合筒を前記ナットに対して外嵌固定する上記構成を採用する場合には、前記ナットおよび前記嵌合筒を軸方向に挿通可能な挿通孔を有するハウジングと、前記ハウジングに対する前記ナットの相対回転を阻止する回り止め部材とを備えることができる。
【0042】
この場合、前記挿通孔を、内周面に、前記回り止め部材のうちの径方向に関する外側部分と円周方向に係合可能で、かつ、軸方向に伸長した案内凹溝を有するものとし、前記ナットを、前記大径面に、前記回り止め部材のうちの径方向に関する内側部分と円周方向に係合可能で、かつ、軸方向他方側を向いた閉塞面を含み、前記段差面に開口した保持凹部を有するものとすることができる。
【0043】
また、前記回り止め部材のうち、径方向に関する内側部分を、前記閉塞面と、前記嵌合筒の軸方向一方側の端面との間に挟んだ状態で、前記保持凹部の内側に配置し、かつ、径方向に関する外側部分を、前記案内凹溝の内側に軸方向に摺動可能に配置することができる。
【0044】
この場合、前記回り止め部材の軸方向寸法を、前記閉塞面と、前記嵌合筒の軸方向一方側の端面(ナットの段差面)との間の軸方向距離よりも小さくすることができる。
【0045】
あるいは、前記回り止め部材の軸方向寸法を、前記閉塞面と、前記嵌合筒の軸方向一方側の端面との間の軸方向距離と同じにすることもできる。
【0046】
前記回り止め部材の軸方向寸法を、前記閉塞面と、前記ナットの前記段差面との間の軸方向距離よりも大きくすることもできる。この場合には、前記嵌合筒の軸方向一方側の端面を、前記回り止め部材の軸方向他方側の端面に対して、軸方向に突き当てることができる。
【0047】
本開示の一態様にかかるボールねじ装置では、前記嵌合筒の外周面を、前記第2嵌合面と、前記第2嵌合面の軸方向他方側に隣接配置され、かつ、前記第2嵌合面よりも外径の大きい大径面と、前記第2嵌合面と前記大径面との間に配置され、かつ、軸方向一方側を向いた段差面とを有するものとすることができる。
【0048】
そして、前記嵌合筒を、前記ナットに対して内嵌固定し、前記段差面を、前記ナットの軸方向他方側の端面に対して軸方向に突き当てることができる。
【0049】
この場合、前記ナットを前記ねじ軸に対して軸方向他方側に相対移動させる際に、前記嵌合筒の前記段差面と前記ナットの軸方向他方側の端面との突き当て部を介して、前記ナットと前記嵌合筒との間で軸力の伝達を行うことができる。
【0050】
前記嵌合筒を前記ナットに対して内嵌固定する上記構成を採用する場合には、前記第1止め輪溝を、前記ナットの軸方向他方側の端面を基準に形成し、前記第2止め輪溝を、前記嵌合筒の前記段差面を基準に形成することができる。
【0051】
前記嵌合筒を前記ナットに対して内嵌固定する上記構成を採用する場合には、前記ナットの外周面の軸方向他方側の端部に、小径段部を備えることができる。
【0052】
前記嵌合筒を前記ナットに対して内嵌固定する上記構成を採用する場合には、前記ナットおよび前記嵌合筒を軸方向に挿通可能な挿通孔を有するハウジングと、前記ハウジングに対する前記ナットの相対回転を阻止する回り止め部材と、を備えることができる。
【0053】
この場合、前記挿通孔を、内周面に、前記回り止め部材のうちの径方向に関する外側部分と円周方向に係合可能で、かつ、軸方向に伸長した案内凹溝を有するものとし、前記嵌合筒を、前記大径面に、前記回り止め部材のうちの径方向に関する内側部分と円周方向に係合可能で、かつ、軸方向一方側を向いた閉塞面を含み、前記段差面に開口した保持凹部を有するものとすることができる。
【0054】
また、前記回り止め部材のうち、径方向に関する内側部分を、前記閉塞面と、前記ナットの軸方向他方側の端面との間に挟まれた状態で、前記保持凹部の内側に配置し、かつ、径方向に関する外側部分を、前記案内凹溝の内側に軸方向に摺動可能に配置することができる。
【0055】
この場合、前記回り止め部材の軸方向寸法を、前記閉塞面と、前記ナットの軸方向他方側の端面(嵌合筒の段差面)との間の軸方向距離よりも小さくすることができる。
【0056】
あるいは、前記回り止め部材の軸方向寸法を、前記閉塞面と、前記ナットの軸方向他方側の端面との間の軸方向距離と同じにすることもできる。
【0057】
前記回り止め部材の軸方向寸法を、前記閉塞面と、前記嵌合筒の前記段差面との間の軸方向距離よりも大きくすることもできる。この場合には、前記ナットの軸方向他方側の端面を、前記回り止め部材の軸方向一方側の端面に対して、軸方向に突き当てることができる。
【0058】
本開示の一態様にかかるボールねじ装置では、前記ナットの軸方向他方側の端部と前記嵌合筒の軸方向一方側の端部とのうち、前記止め輪を径方向外側から覆った一方の端部であって、前記止め輪と径方向に重なる部分に、径方向に貫通した確認用窓孔を設けることができる。
【0059】
本開示の一態様にかかるボールねじ装置では、前記確認用窓孔を、径方向両側にのみ開口させることができる。
【0060】
あるいは、前記確認用窓孔を、径方向両側に開口するだけでなく、軸方向にも開口させることができる。
【0061】
本開示の一態様にかかるボールねじ装置では、前記止め輪を、円周方向一箇所に不連続部を有するものとし、前記確認用窓孔の円周方向に関する幅寸法を、前記不連続部の円周方向に関する幅寸法よりも大きくすることができる。
【0062】
あるいは、前記止め輪を、円周方向一箇所に不連続部を有するものとし、前記確認用窓孔を、前記一方の端部の円周方向複数箇所に備え、円周方向に隣り合う1対の前記確認用窓孔同士の間隔を、前記不連続部の円周方向に関する幅寸法よりも大きくすることができる。
【0063】
本開示の一態様にかかるボールねじ装置の製造方法は、本開示の一態様にかかるボールねじ装置を製造するための製造方法であって、前記止め輪が適切に組み付けられているか否かを検査する検査工程を備え、該検査工程には、前記確認用窓孔の内側に検査用治具の先端部を径方向外側から挿入し、前記検査用治具の先端部の挿入深さを測定する工程、あるいは、前記確認用窓孔を利用してセンサにより該センサから対象物(前記止め輪の外周面または前記第1止め輪溝または前記第2止め輪溝の底面)までの距離を測定する工程を含む。
【発明の効果】
【0064】
本開示の一態様のボールねじ装置によれば、製造コストを増大させずに、ナットと嵌合筒との軸方向の相対変位を有効に防止でき、かつ、装置全体の小型化および負荷容量の増大を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1】
図1は、本開示の実施の形態の第1例のボールねじ装置の断面図である。
【
図2】
図2は、第1例のボールねじ装置の部分断面斜視図である。
【
図3】
図3は、第1例のボールねじ装置についての、ハウジングおよび駆動部材を省略し、軸方向一方側から見た正面図である。
【
図7】
図7は、第1例のボールねじ装置を構成するナットの断面斜視図である。
【
図8】
図8は、第1例のボールねじ装置に関して、循環溝と保持凹部との円周方向に関する位置関係を説明するために示す模式図である。
【
図9】
図9(A)および
図9(B)は、第1例のボールねじ装置に関して、ナットに対するピストンの組み付け作業を説明するために示す図である。
【
図10】
図10は、本開示の実施の形態の第2例のボールねじ装置についての
図5に相当する図である。
【
図11】
図11は、本開示の実施の形態の第3例のボールねじ装置についての
図4に相当する断面図である。
【
図12】
図12は、本開示の実施の形態の第4例のボールねじ装置についての、ハウジングおよび駆動部材を省略し、径方向外側から見た平面図である。
【
図13】
図13は、第4例のボールねじ装置についての、ハウジングおよび駆動部材を省略して示す、斜視図である。
【
図16】
図16は、第4例のボールねじ装置の製造工程のうち、検査工程を説明するために示す、
図14の部分拡大図である。
【
図17】
図17は、本開示の実施の形態の第5例のボールねじ装置についての
図12に相当する図である。
【
図19】
図19は、本開示の実施の形態の第6例のボールねじ装置についての
図12に相当する図である。
【
図21】
図21は、本開示の実施の形態の第7例のボールねじ装置についての一部拡大断面図である。
【
図22】
図22は、本開示の実施の形態の第8例のボールねじ装置についての
図14に相当する断面図である。
【
図23】
図23は、従来構造のボールねじ装置を示す断面図である。
【0066】
[第1例]
本開示の実施の形態の第1例について、
図1~
図9を用いて説明する。
【0067】
〔ボールねじ装置の全体構成〕
本例のボールねじ装置1は、たとえば電動ブレーキブースター装置に組み込まれ、駆動源である図示しない電動モータの回転運動を、ピストン5の直線運動に変換する用途で使用されることができる。
【0068】
ボールねじ装置1は、ねじ軸2と、ナット3と、複数のボール4と、嵌合筒であるピストン5と、止め輪6と、ハウジング7と、回り止め部材8とを備える。
【0069】
ねじ軸2は、図示しない駆動源により回転駆動され、使用時に回転運動する回転運動要素である。ねじ軸2は、ナット3の内側に挿通され、ナット3と同軸に配置されている。ナット3は、ナット3に外嵌固定したピストン5とともに、ハウジング7に備えられた挿通孔9の内側を直線運動する、直線運動要素である。ナット3は、止め輪6により、ピストン5に対する軸方向の相対変位が防止されており、回り止め部材8により、ハウジング7に対する相対回転が阻止されている。本例のボールねじ装置1は、ねじ軸2を回転駆動し、ナット3を直線運動させる態様で使用する。
【0070】
ねじ軸2の外周面とナット3の内周面との間には、螺旋状の負荷路10が備えられている。負荷路10には、複数のボール4が転動可能に配置されている。ねじ軸2とナット3とを相対回転させると、負荷路10の終点に達したボール4は、ナット3の内周面に形成された循環溝11(
図7参照)を通じて、負荷路10の始点へと戻される。以下、ボールねじ装置1の各構成部品の構造について説明する。
【0071】
以下の説明において、軸方向、径方向、および円周方向とは、特に断らない限り、ねじ軸に関する軸方向、径方向、および円周方向をいう。また、軸方向一方側とは、
図1、
図2、
図4、
図5、
図7、および
図9の右側を指し、軸方向他方側とは、
図1、
図2、
図4、
図5、
図7、および
図9の左側を指す。
【0072】
〈ねじ軸〉
ねじ軸2は、金属製で、ねじ部12と、ねじ部12の軸方向一方側に隣接配置された嵌合軸部13とを有する。ねじ部12と嵌合軸部13とは、同軸に配置されており、互いに一体に構成されている。嵌合軸部13は、ねじ部12よりも小さい外径を有する。
【0073】
ねじ部12は、外周面に螺旋状の軸側ボールねじ溝14を有する。軸側ボールねじ溝14は、ねじ部12の外周面に、たとえば研削加工(切削加工)または転造加工を施すことにより形成されている。本例では、軸側ボールねじ溝14の条数を1条としている。軸側ボールねじ溝14の断面の溝形状(溝底形状)は、ゴシックアーチ溝またはサーキュラアーク溝とすることができる。
【0074】
嵌合軸部13は、外周面に雄スプライン歯15を全周にわたり有している。このため、嵌合軸部13は、スプライン軸部である。図示の例では、雄スプライン歯15を、インボリュートスプライン歯としているが、角スプライン歯とすることもできる。代替的に、嵌合軸部13を、外周面に雄セレーションを全周にわたり有しているセレーション軸部とすることもできる。
【0075】
ねじ軸2は、ねじ部12をナット3の内側に挿通した状態で、ナット3と同軸に配置されている。なお、本例では、ねじ軸2を、ねじ部12と嵌合軸部13とから構成しているが、ねじ軸2に、ハウジング7などに対して回転自在に支持するための転がり軸受などを固定する支持軸部(第2嵌合軸部)などを備えることもできる。
【0076】
〈ナット〉
ナット3は、たとえば鉄系合金などの金属製で、全体が円筒状に構成されている。ナット3は、内周面に螺旋状のナット側ボールねじ溝16および循環溝11を有する。
【0077】
ナット側ボールねじ溝16は、螺旋形状を有しており、ナット3の内周面に、たとえば研削加工(切削加工)または転造タップ加工(切削タップ加工)を施すことにより形成されている。ナット側ボールねじ溝16は、軸側ボールねじ溝14と同じリードを有する。このため、ねじ軸2のねじ部12をナット3の内側に挿通配置した状態で、軸側ボールねじ溝14とナット側ボールねじ溝16とは径方向に対向するように配置され、螺旋状の負荷路10を構成する。ナット側ボールねじ溝16の条数は、軸側ボールねじ溝14と同様に1条である。ナット側ボールねじ溝16の断面の溝形状も、軸側ボールねじ溝14と同様に、ゴシックアーチ溝またはサーキュラアーク溝とすることができる。
【0078】
循環溝11は、略S字形状を有しており、ナット3の内周面に、たとえば鍛造加工(冷間鍛造加工)によって形成されている。循環溝11は、ナット側ボールねじ溝16のうち、軸方向に隣り合う部分同士をなめらかに接続し、負荷路10の始点と終点とをつないでいる。このため、負荷路10の終点にまで達したボール4は、循環溝11を通じて、負荷路10の始点にまで戻される。なお、負荷路10の始点と終点とは、ねじ軸2とナット3との軸方向に関する相対変位の方向(相対回転方向)に応じて入れ替わる。
【0079】
循環溝11は、略半円形の断面形状を有する。循環溝11は、ボール4の直径よりもわずかに大きな溝幅を有し、循環溝11を移動するボール4が、軸側ボールねじ溝14のねじ山を乗り越えることができる溝深さを有している。本例では、ナット3の内周面に、円周方向に関して等間隔に(90度等配で)、4つの循環溝11を備えている。このため、本例のボールねじ装置1は、4つの回路を備えている。なお、本例のボールねじ装置1では、循環溝11をナット3の内周面に直接形成しているが、循環溝をナットとは別体の循環部品(たとえばコマ)に形成し、該循環部品をナットに対して固定することもできる。
【0080】
本例では、ナット3の外周面を、段付き円筒面により構成している。ナット3は、外周面の軸方向他方側の端部に、ピストン5を外嵌する円筒面状の第1嵌合面17を有し、外周面の軸方向中間部から軸方向一方側部にわたる範囲に、第1嵌合面17よりも大きな外径を有する、円筒面状の大径面18を有する。大径面18は、第1嵌合面17の軸方向一方側に隣接配置されている。また、ナット3の外周面は、第1嵌合面17と大径面18との間に、軸方向他方側を向いた円環状の段差面19を有する。段差面19は、ナット3の中心軸に直交する仮想平面上に存在する平坦面である。本例では、第1嵌合面17の外径は、第1止め輪溝20が形成された部分を除き、軸方向にわたり一定である。また、ナット3の最大外径は、大径面18の外径となる。
【0081】
本例のボールねじ装置1は、止め輪6を利用して、ナット3とピストン5との軸方向の相対変位を防止(バックアップ)する。このため、第1嵌合面17の軸方向中間部に、止め輪6の内径側部分を係止するための第1止め輪溝20を全周にわたり備えている。第1止め輪溝20は、ナット3の外周面に備えられた段差面19を基準として、切削加工などの機械加工により形成されている。第1止め輪溝20は、矩形状の断面形状を有しており、ナット側ボールねじ溝16から軸方向他方側に外れた部分に備えられている。第1止め輪溝20の径方向深さは、止め輪6の径方向幅と同じか、または、該径方向幅よりも少しだけ大きい。また、第1止め輪溝20の軸方向幅は、止め輪6の軸方向厚さよりも少しだけ大きい。
【0082】
ナット3の軸方向他方側の端面3xと第1嵌合面17とは、テーパ面状の第1面取り部21を介して接続されている。ナット3の軸方向他方側の端面3xは、ナット3の中心軸に直交する仮想平面上に存在する平坦面である。
【0083】
本例のボールねじ装置1は、ナット3を直線運動要素として用いる。このため、ナット3の回り止めを図るために、ナット3の外周面に、回り止め部材8を保持するための保持凹部22を有している。保持凹部22は、ナット3の外周面の円周方向複数個所(本例では2個所)に備えられている。保持凹部22は、ナット3の外周面のうち、大径面18の軸方向他方側部に備えられている。
【0084】
保持凹部22は、軸方向に伸長した凹溝である。保持凹部22は、軸方向一方側の端部に、軸方向他方側を向いた閉塞面23を有する。保持凹部22の軸方向他方側の端部は、段差面19に開口している。このため、保持凹部22は、ナット3の外周面および段差面19のそれぞれに開口している。保持凹部22の中心軸は、ナット3の中心軸と平行に配置されている。段差面19から閉塞面23までの軸方向寸法は、回り止め部材8の軸方向寸法よりも少しだけ大きい。閉塞面23は、ナット3の中心軸に直交する仮想平面上に存在する平坦面であり、軸方向視で部分円形状(略半円形状)である。
【0085】
保持凹部22は、回り止め部材8のうちの径方向に関する内側部分と円周方向に係合可能な断面形状を有する。本例では、後述するように、回り止め部材8を円柱形状に構成しているため、
図6に示すように、ナット3の中心軸に直交する仮想平面に関する保持凹部22の断面形状を、円弧形としている。ただし、回り止め部材8および保持凹部22の形状は、回り止め部材8のうちの径方向に関する内側部分と円周方向に係合可能である限り、いずれも任意である。たとえば、保持凹部の断面形状を矩形とすることもできる。この場合、回り止め部材8を円柱形状とすることもできるし、角柱形状とすることもできる。さらに、断面形状が円弧形の保持凹部と、角柱形状の回り止め部材8とを組み合わせることもできる。
【0086】
本例では、保持凹部22は、回り止め部材8の直径Dの1/2と同じかまたは該直径Dの1/2よりもわずかに大きい曲率半径を有する。ナット3の外周面における保持凹部22の円周方向に関する開口幅は、回り止め部材8の直径Dとほぼ同じである。また、保持凹部22のうちで最も径方向の深さが大きくなった部分を通る内接円直径は、第1嵌合面17の外径以上である。ただし、回り止め部材8および保持凹部22の大きさは、回り止め部材8のうちの径方向に関する内側部分と円周方向に係合可能である限り、それぞれの形状に応じて、任意に設定することができる。
【0087】
保持凹部22は、ナット3の外周面に、円周方向に関して等間隔に配置されている。本例では、保持凹部22を2つ備えているため、2つの保持凹部22は、位相が180度異なる位置に配置されている。また、保持凹部22のそれぞれは、ナット3の内周面に備えられたすべての循環溝11から円周方向に位置(位相)をずらして配置されている。
【0088】
具体的には、2つの保持凹部22のうち、一方の保持凹部22(
図7の下方の保持凹部22)を、ナット3の内周面に備えられた循環溝11のうち、保持凹部22と同じ軸方向位置に形成された1つの循環溝11の中央部から、円周方向一方側に45度だけ位置をずらして配置している。また、2つの保持凹部22のうち、他方の保持凹部22(
図7の上方の保持凹部22)を、前記1つの循環溝11の中央部から、円周方向他方側に135度だけ位置をずらして配置している。このため、
図8に示すように、ナット3を軸方向から見た場合に、丸印で表した2つの保持凹部22のそれぞれは、×印で表した、円周方向位置の近い2つの循環溝11に対して、円周方向に関して反対側に45度ずつ位置をずらして配置されている。別の言い方をすれば、一方の保持凹部22は、4つの循環溝11のうち、円周方向に隣り合う2つの循環溝11の円周方向中央位置に配置され、かつ、他方の保持凹部22は、残り2つの循環溝11の円周方向中央位置に配置されている。なお、循環溝を有するコマなどの循環部品を、ナットに対して固定する構成を採用した場合には、保持凹部を、循環部品から円周方向に位置をずらして配置することができる。さらに、循環部品を、円周方向に関して等間隔複数個所に備える場合には、保持凹部を、円周方向位置の近い2つの循環部品に対して、円周方向に関して反対側に同じ角度だけ位置をずらして配置することができる。別の言い方をすれば、保持凹部を、円周方向に関して隣り合う2つの循環部品同士の円周方向中央位置に配置することができる。
【0089】
ナット3は、軸方向一方側の端部に、非回転側係合部24を有する。非回転側係合部24は、ナット3の軸方向一方側の側面の円周方向一部に備えられており、軸方向一方側に向けて突出している。非回転側係合部24は、扇柱形状を有している。図示の例では、ナット3は、非回転側係合部24を含め全体を一体に構成されているが、ナット3を、内周面にナット側ボールねじ溝を有する円筒部材と、別体に構成された非回転側係合部とを結合固定することで構成することもできる。
【0090】
〈ボール〉
ボール4は、所定の直径を有する鋼球であり、負荷路10および循環溝11に転動可能に配置されている。負荷路10に配置されたボール4は、圧縮荷重を受けながら転動するのに対し、循環溝11に配置されたボール4は、圧縮荷重を受けることなく、後続のボール4に押されて転動する。
【0091】
〈ピストン〉
嵌合筒であるピストン5は、たとえばアルミニウム系合金などの金属製で、有底円筒形状を有している。ピストン5は、ナット3に対して圧入により外嵌固定され、ナット3とともに直線運動する。ピストン5は、ナット3と同軸に配置されており、ハウジング7に備えられた挿通孔9に軸方向の移動可能に嵌装されている。ピストン5は、円筒部25と、円筒部25の軸方向他方側の端部開口を塞いだ底板部26とを有する。
【0092】
円筒部25は、内周面の軸方向一方側の端部に、ナット3に外嵌する円筒面状の第2嵌合面27を備えている。本例では、第2嵌合面27の内径は、第2止め輪溝29が形成された部分を除き、軸方向にわたり一定であり、ナット3の第1嵌合面17の外径よりも少しだけ小さい。なお、本例では、円筒部25の内周面のうち、第2嵌合面27から軸方向他方側に外れた部分についても、第2嵌合面27と同じ内径を有している。ただし、円筒部25の内周面のうち、第2嵌合面27を有する部分、すなわち、第1嵌合面17との嵌合部において、ナット3との嵌合のための寸法が管理されている限り、円筒部25の内周面のうち該嵌合部から他方側に外れた部分の内径については,第2嵌合部よりも大きくても小さくてもよい。
【0093】
円筒部25は、外周面の軸方向一方側の端部に、小径段部28を備えている。小径段部28は、第2嵌合面27の径方向外側に配置されており、小径段部28から軸方向に外れた部分に比べて少しだけ外径が小さい。このため、ピストン5の最大外径は、円筒部25のうちで、小径段部28から軸方向に外れた部分の外径となり、ナット3の最大外径と同じにすることができる。なお、ピストン5の最大外径を、ナット3の最大外径と同じにするとは、ピストン5の最大外径を、ナット3の最大外径と完全に一致させる場合に限らず、ピストン5の最大外径を、ナット3の最大外径と製造上不可避な公差範囲内で実質的に同じにする場合を含む。
【0094】
第2嵌合面27は、軸方向中間部に、止め輪6の外径側部分を係止するための第2止め輪溝29を全周にわたり備えている。第2止め輪溝29は、ピストン5の軸方向一方側の端面5xを基準として、切削加工などの機械加工により形成されている。第2止め輪溝29は、矩形状の断面形状を有しており、ピストン5をナット3に外嵌固定した状態で、径方向に関して第1止め輪溝20と対向する部分に備えられている。第2止め輪溝29の径方向深さT29は、第1止め輪溝20の径方向深さよりも小さくなっており、かつ、止め輪6の径方向幅(最大値)T6よりも小さくなっている。ただし、止め輪6を、第1止め輪溝20と第2止め輪溝29との間に掛け渡すように係止することができれば、第2止め輪溝29の径方向深さを、止め輪6の径方向幅よりも大きくすることもできる。また、第2止め輪溝29の軸方向幅は、第1止め輪溝20の軸方向幅と同じである。ピストン5の軸方向一方側の端面5xは、ピストン5の中心軸に直交する仮想平面上に存在する平坦面である。
【0095】
ピストン5の軸方向一方側の端面5xと第2嵌合面27とは、テーパ面状の第2面取り部30を介して接続されている。
【0096】
本例では、ピストン5の軸方向一方側の端部を、ナット3の軸方向他方側の端部に対して、圧入により外嵌固定している。これにより、ナット3の外周面の軸方向他方側の端部に備えられた第1嵌合面17と、ピストン5の内周面の軸方向一方側の端部に備えられた第2嵌合面27とを、軸方向の全長にわたり締め代を持って接触させている。また、ピストン5をナット3に外嵌固定した状態で、ピストン5の軸方向一方側の端面5xを、ナット3の外周面に備えられた段差面19に対し軸方向に突き当てている。
【0097】
〈止め輪〉
止め輪6は、ナット3とピストン5とが軸方向に相対変位するのを防止するための部材である。なお、本例では、ピストン5をナット3に対して圧入により外嵌固定することによっても、ナット3とピストン5との軸方向の相対変位を防止できるため、止め輪6は、ナット3とピストン5との締め代が減少した場合のバックアップとして機能する。
【0098】
止め輪6は、金属製で、矩形状の断面形状を有しており、全体が欠円環状(略C字状)に構成されている。
【0099】
止め輪6は、ナット3の第1止め輪溝20とピストン5の第2止め輪溝29との間に掛け渡すように係止されている。具体的には、止め輪6の内径側部分を第1止め輪溝20に係止し、止め輪6の外径側部分を第2止め輪溝29に係止している。
【0100】
止め輪6の自由状態での外径は、少なくともナット3の外周面に備えられた第1嵌合面17の外径D17よりも大きく、好ましくは、ピストン5の内周面に形成された第2止め輪溝29の溝底径D29よりも大きい。
【0101】
止め輪6の組み付け作業は、たとえば、
図9(A)および
図9(B)に示すようにして行うことができる。
【0102】
まず、
図9(A)に示すように、ナット3の軸方向他方側の端部を、止め輪6の内側に押し込むことにより、第1面取り部21を利用して止め輪6を弾性的に拡径させ、止め輪6を第1止め輪溝20に係止する。次に、
図9(B)に示すように、ピストン5の第2面取り部30を利用して、止め輪6を弾性的に縮径させることで第1止め輪溝20の内側に押し込みながら、ナット3の軸方向他方側の端部を、ピストン5の軸方向一方側の端部に圧入する。そして、ピストン5の軸方向他方側の端面5xがナット3の段差面19に突き当たり、かつ、第1止め輪溝20と第2止め輪溝29との軸方向位置が一致した状態で、止め輪6を弾性的に復元させる。これにより、止め輪6を、ナット3の第1止め輪溝20とピストン5の第2止め輪溝29との間に掛け渡すように係止することができる。なお、本例では、止め輪6として、ナット3の第1止め輪溝20に先に係止する、軸用止め輪を使用した場合について説明したが、代替的に、止め輪6として、ピストン5の第2止め輪溝29に先に係止する、穴用止め輪を使用することもできる。
【0103】
〈ハウジング〉
ハウジング7は、有底円筒形状を有しており、内部に、円形の断面形状を有する挿通孔9を備える。挿通孔9の中心軸は、ねじ軸2の中心軸と同軸に配置されている。挿通孔9は、ナット3およびピストン5を軸方向に挿通可能な内径を有している。具体的には、挿通孔9は、ピストン5の円筒部25およびナット3の大径面18よりもわずかに大きな内径を有する。
【0104】
挿通孔9は、内周面に、回り止め部材8を軸方向に摺動可能に係合させるための案内凹溝31を有する。案内凹溝31は、軸方向に伸長しており、挿通孔9の内周面の円周方向複数個所(本例では2個所)に備えられている。本例では、案内凹溝31は、挿通孔9の軸方向一方側の端部から軸方向中間部にわたる範囲に備えられている。
【0105】
案内凹溝31の軸方向一方側の端部は、ハウジング7の軸方向一方側の端面に開口している。案内凹溝31は、軸方向他方側の端部に、軸方向一方側を向いた突き当て面32を有する。このため、案内凹溝31は、挿通孔9の内周面およびハウジング7の軸方向一方側の端面のそれぞれに開口している。案内凹溝31の中心軸は、挿通孔9の中心軸と平行に配置されている。案内凹溝31の軸方向寸法は、回り止め部材8の軸方向寸法よりも十分に大きく、ナット3およびピストン5に求められるストロークに応じて決定される。
【0106】
案内凹溝31は、回り止め部材8のうちの径方向に関する外側部分と円周方向に係合可能な断面形状を有する。本例では、後述するように、回り止め部材8を円柱形状に構成しているため、
図6に示すように、挿通孔9の中心軸に直交する仮想平面に関する案内凹溝31の断面形状を、円弧形としている。具体的には、案内凹溝31は、中心角がおよそ180度の半円弧形の断面形状を有する。このため、案内凹溝31の円周方向幅は、径方向内側に向かうほど大きくなる。案内凹溝31は、ナット3の外周面に備えられた保持凹部22とほぼ同じ大きさの曲率半径を有する。挿通孔9の内周面における案内凹溝31の円周方向に関する開口幅は、回り止め部材8の直径Dとほぼ同じである。ただし、案内凹溝31の形状も、回り止め部材8のうちの径方向に関する外側部分と円周方向に係合可能である限り、任意である。たとえば、案内凹溝31の断面形状を矩形とすることもできる。また、案内凹溝31の大きさも、回り止め部材8のうちの径方向に関する外側部分と円周方向に係合可能である限り、案内凹溝31と回り止め部材8の形状およびその形状関係に応じて、任意に設定することができる。
【0107】
案内凹溝31は、挿通孔9の内周面に、円周方向に関して等間隔に配置されている。本例では、案内凹溝31を2つ備えているため、2つの案内凹溝31は、位相が180度異なる位置に配置されている。また、ボールねじ装置1の組立状態で、案内凹溝31は、保持凹部22と円周方向に関して同じ位置に配置される。このため、案内凹溝31と保持凹部22とは、径方向に対向して配置される。
【0108】
挿通孔9の内周面のうちで、案内凹溝31よりも軸方向他方側に位置する部分には、複数(図示の例では2つ)のシール凹溝33a、33bが備えられている。シール凹溝33a、33bは、円環形状を有している。シール凹溝33a、33bのそれぞれには、挿通孔9の内周面とピストン5の外周面との間を密封するためのOリング34a、34bが装着されている。
【0109】
本例では、ハウジング7を有底円筒形状に構成しているが、ハウジングの形状は任意であり、その形状を適宜変更することができる。また、本例では、ハウジング7は、内部に挿通孔(シリンダ孔)9のみを備えた構成としているが、ハウジング7の内部に、シリンダ孔の他に、モータを収容するモータ収容部やギヤを収容するギヤ収容部などを備えることもできる。
【0110】
〈回り止め部材〉
回り止め部材8は、ナット3がハウジング7に対して相対回転するのを阻止するための部材であり、金属製で、円柱形状を有している。
【0111】
回り止め部材8は、中心軸を挿通孔9の中心軸と平行に配置した状態で、ナット3の外周面に備えられた保持凹部22と挿通孔9の内周面に備えられた案内凹溝31との間に、径方向に挟まれるようにして配置されている。別な言い方をすれば、回り止め部材8は、保持凹部22と案内凹溝31とに掛け渡されるように配置されている。
【0112】
回り止め部材8のうちの径方向に関する内側部分(
図6の下側部分)は、保持凹部22の内側に配置されている。また、回り止め部材8のうちの径方向に関する内側部分は、
図5に示すように、保持凹部22の閉塞面23とピストン5の軸方向一方側の端面5xとの間で、軸方向に挟まれている。別な言い方をすれば、回り止め部材8の軸方向一方側の端面は、閉塞面23と軸方向に対向しており、かつ、回り止め部材8の軸方向他方側の端面は、ピストン5の軸方向一方側の端面5xと軸方向に対向している。このため、回り止め部材8は、閉塞面23とピストン5の軸方向一方側の端面5xとにより、軸方向に関する抜け止めが図られている。したがって、回り止め部材8のうちの径方向に関する内側部分は、保持凹部22の内側に、軸方向に関する移動不能に配置されている。
【0113】
本例では、回り止め部材8の軸方向寸法を、ナット3の段差面19から保持凹部22の閉塞面23までの軸方向寸法よりも少しだけ小さく設定している。このため、ピストン5をナット3に外嵌固定した状態で、段差面19に突き当てられたピストン5の軸方向一方側の端面5xから閉塞面23までの軸方向距離よりも、回り止め部材8の軸方向寸法が少しだけ小さくなる。したがって、回り止め部材8の軸方向一方側の端面と閉塞面23との間、および/または、回り止め部材8の軸方向他方側の端面とピストン5の軸方向一方側の端面5xとの間には、隙間が形成される。別な言い方をすれば、回り止め部材8の軸方向両側の端面が同時に、軸方向に対向する閉塞面23およびピストン5の軸方向一方側の端面5xに当接することはない。
【0114】
回り止め部材8のうちの径方向に関する外側部分(
図6の上側部分)は、案内凹溝31の内側に配置されている。
図1に示すように、案内凹溝31の軸方向寸法は、回り止め部材8の軸方向寸法よりも十分に大きく設定されているため、回り止め部材8のうちの径方向に関する外側部分は、案内凹溝31の内側に軸方向に摺動可能に配置される。
【0115】
ボールねじ装置1の組立作業時には、グリースを塗布した回り止め部材8を保持凹部22の内側に配置し、回り止め部材8を保持凹部22に貼付することで、回り止め部材8が保持凹部22から脱落することを防止することができる。代替的あるいは追加的に、保持凹部22の内側に配置した回り止め部材8の周囲を覆うようにガイド筒を配置することで、回り止め部材8の脱落を防止することもできる。
【0116】
本例のボールねじ装置1は、ナット3のストロークエンドを規制するためのストッパ35を備える。
【0117】
〈ストッパ〉
ストッパ35は、円環形状を有するボス部36と、突起形状を有する回転側係合部(爪部)37とを有する。
【0118】
ボス部36は、ねじ軸2の嵌合軸部13に対して相対回転不能に外嵌されている。ボス部36は、径方向中央部に、嵌合軸部13を軸方向に挿通可能な係合孔38を有する。本例では、係合孔38を、内周面に雌スプライン歯39が形成されたスプライン孔としている。ボス部36は、係合孔38の内周面に形成された雌スプライン歯39を、嵌合軸部13の外周面に形成された雄スプライン歯15に対してスプライン係合させることで、嵌合軸部13に対して相対回転不能に外嵌されている。
【0119】
ボス部36は、円筒面状の外周面を有している。回転側係合部37は、ボス部36の外周面の円周方向一部に備えられており、径方向外側に向けて突出している。
【0120】
本例のボールねじ装置1は、ねじ軸2を回転駆動するための駆動部材40を備える。
【0121】
〈駆動部材〉
駆動部材40は、歯車やプーリなどの部材であり、電動モータなどの駆動源から入力されたトルクをねじ軸2に伝達することで、ねじ軸2を回転駆動する。駆動部材40は、ストッパ35の軸方向一方側に隣接配置されている。
【0122】
駆動部材40は、基板部41と、円筒状の筒部42と、トルク入力部43とを有する。
【0123】
基板部41は、円形平板形状を有しており、径方向中央部に、軸方向に貫通した取付孔44を有する。取付孔44の内周面には、雌スプライン歯45が形成されている。基板部41は、取付孔44の内周面に形成された雌スプライン歯45を、嵌合軸部13のうち、ストッパ35を外嵌した部分から軸方向一方側に外れた部分に形成された雄スプライン歯15にスプライン係合させることで、嵌合軸部13に対して相対回転不能に外嵌されている。なお、嵌合軸部13が雄セレーションを有する場合には、取付孔44の内周面に雌セレーションを形成して、雄セレーションと雌セレーションをセレーション係合させる。
【0124】
筒部42は、駆動部材40の径方向外側部に備えられている。筒部42の軸方向一方側の端部は、基板部41の径方向外側部に接続されている。筒部42は、ナット3の外径よりもわずかに大きな内径を有する。筒部42は、ねじ部12の軸方向一方側の端部の周囲を覆っている。
【0125】
トルク入力部43は、駆動部材40の外周面に備えられている。本例では、トルク入力部43は、筒部42の外周面に備えられている。このため、トルク入力部43は、径方向に関してねじ部12と重なる位置に配置されている。
【0126】
トルク入力部43は、駆動部材40として歯車を用いた場合には、ギヤ部となり、駆動部材40としてプーリを用いた場合には、ベルトが掛け渡されるベルト受面となり、駆動部材40としてスプロケットを用いた場合には、チェーンが掛け渡される歯部となる。いずれの場合にも、トルク入力部43には、駆動源からのトルクが入力される。あるいは、駆動部材40としてモータの出力軸を用いることができる。この場合、トルク入力部43は該出力軸自体により構成され、出力軸の先端部に嵌合軸部13の雄スプライン歯とスプライン係合する雌スプライン歯39が形成されたスプライン孔を設ける、あるいは、出力軸の先端部に嵌合軸部13の雄セレーションとセレーション係合する雌セレーションが形成されたセレーション孔を設ける。
【0127】
〈ボールねじ装置の動作説明〉
本例のボールねじ装置1は、図示しない駆動源により駆動部材40を介してねじ軸2を回転駆動すると、止め輪6によりピストン5に対する軸方向の相対変位が防止され、かつ、回り止め部材8によりハウジング7に対する相対回転が阻止されたナット3が、ピストン5とともに、挿通孔9の内側を直線運動する。これにより、挿通孔(シリンダ孔)9内に充填した液体または気体を、ハウジング7に備えられた図示しない連通孔を通じて排出または吸入する。回り止め部材8は、ナット3およびピストン5が直線運動する際に、保持凹部22の閉塞面23またはピストン5の軸方向一方側の端面5xにより軸方向に押圧されて、ナット3およびピストン5とともに直線運動する。
【0128】
本例では、ナット3をねじ軸2に対して軸方向他方側に相対移動させ、ピストン5を前進させる際には、ナット3の段差面19とピストン5の軸方向一方側の端面5xとの突き当て部を介して、ナット3とピストン5との間で軸力(アキシアル荷重)の伝達を行う。これに対し、ナット3をねじ軸2に対して軸方向一方側に相対移動させ、ピストン5を後進させる際には、本例のように、ピストン5の軸方向一方側の端部をナット3の軸方向他方側の端部に対して圧入により外嵌固定した構造では、圧入による嵌合部にて、ナット3とピストン5との間で軸力の伝達を行うが、ピストン5の熱膨張などにより、嵌合部における締め代が低下した場合には、止め輪6を介して、ナット3とピストン5との間で動力の伝達を行う。なお、たとえば、ハウジング7の挿通孔9内のブレーキ液が封入され、該ブレーキ液が発生させる圧力により、ピストン5が常に軸方向他方側から荷重を受けている場合、ナット3の移動方向によらず、ピストン5の軸方向一方側の端面5xとナット3の段差面19との突き当て部を通じて、軸力を伝達することもできる。
【0129】
ナット3がねじ軸2に対して軸方向一方側に相対移動してストロークエンドに達すると、ナット3に備えられた非回転側係合部24と、ストッパ35に備えられた回転側係合部37とが円周方向に係合する。これにより、ねじ軸2の回転が阻止される。このように、本例のボールねじ装置1は、ストッパ35により、ナット3がねじ軸2に対して軸方向一方側に相対移動することに関するストロークエンドを規制することができる。なお、ナット3がねじ軸2に対して軸方向他方側に相対移動することに関するストロークエンドは、回り止め部材8の軸方向他方側の端面を、案内凹溝31の閉塞端である突き当て面32に突き当てることで規制することもできるし、あるいは、従来から知られた各種のストローク制限機構を利用して規制することもできる。
【0130】
本例のボールねじ装置1によれば、製造コストを増大させずに、ナット3とピストン5との軸方向の相対変位を有効に防止でき、かつ、装置全体の小型化および負荷容量の増大を図れる。
【0131】
すなわち、本例では、特開2016-35322号公報に記載された従来構造のボールねじ装置100(
図23参照)とは異なり、ナット3全体を覆うようにピストン5をナット3に外嵌するのではなく、ピストン5の軸方向一方側の端部をナット3の軸方向他方側の端部に外嵌している。このため、ピストン5の内径を、ナット3の最大外径よりも大きくしなくて済む。したがって、従来構造のボールねじ装置100に比べて、ボールねじ装置1の径方向寸法を小さくすることが可能になり、小型化を図れる。
【0132】
また、ナット3のうちで、ピストン5を外嵌しない大径面18の外径は、ピストン5の内径による制約を受けずに大きくすることができる。つまり、ピストン5を挿入可能な挿通孔9の内径に対して、ナット3の大径面18を最大化することが可能になる。このため、ボールねじ装置1の負荷容量の増大を図れる。
【0133】
本例では、ピストン5の軸方向一方側の端部をナット3の軸方向他方側の端部に圧入により外嵌するだけでなく、ナット3の第1嵌合面17に備えられた第1止め輪溝20と、ピストン5の第2嵌合面27に備えられた第2止め輪溝29との間に、止め輪6を掛け渡すように係止している。このため、ナット3を鉄系合金製とし、ピストン5をアルミニウム系合金製とすることで、ナット3とピストン5との熱膨張係数の差に起因して、第1嵌合面17と第2嵌合面27との間の締め代が減少した場合にも、止め輪6により、ナット3とピストン5との軸方向変位を有効に防止できる。したがって、本例のボールねじ装置1によれば、製造コストを増大させることなく、ナット3とピストン5との軸方向変位を有効に防止できる。
【0134】
ピストン5の軸方向一方側の端部をナット3の軸方向他方側の端部に圧入により外嵌しているため、ピストン5がナット3に対してがたつくことを防止できる。特に、ねじ軸2に対するナット3の軸方向の移動方向を変更(反転)する際に、ピストン5がナット3に対してがたつくことを防止でき、異音が発生することを抑制できる。
【0135】
ナット3の軸方向他方側の端面3xと第1嵌合面17とを、テーパ面状の第1面取り部21を介して接続しているため、止め輪6を第1止め輪溝20に係止する際に、第1面取り部21を利用して止め輪6を弾性的に拡径することができる。このため、止め輪6の組み付け作業性の向上を図れる。さらに、ピストン5の軸方向一方側の端面5xと第2嵌合面27とを、テーパ面状の第2面取り部30を介して接続しているため、第2面取り部30を利用して、止め輪6を第1止め輪溝20の内側に押し込みながら、ナット3の軸方向他方側の端部を、ピストン5の軸方向一方側の端部に圧入することができる。したがって、この面からも、止め輪6の組み付け作業性の向上を図れる。
【0136】
ナット3の最大外径(大径面18の外径)と、ピストン5の最大外径(円筒部25の外径)とを同じとしているため、ナット3をピストン5の一部と捉えることができる。言い換えれば、ピストン5の全長を、ナット3の分だけ長くしたと考えることができる。したがって、挿通孔9に対するピストン5の傾き(がたつき)を抑制できる。
【0137】
ピストン5の外周面の軸方向一方側の端部に、小径段部28を設けているため、第2嵌合面27を第1嵌合面17に圧入により嵌合する、および/または、第2嵌合面27に第2止め輪溝29を形成することに伴って、小径段部28が拡径した場合にも、拡径に伴い真円度が低下した小径段部28が、挿通孔9の内周面に接触することを有効に防止できる。
【0138】
第1止め輪溝20を、ナット側ボールねじ溝16から軸方向他方側に外れた部分に形成しているため、第1止め輪溝20を形成することにより、ナット3の強度が低下することを抑制できる。
【0139】
第1止め輪溝20を、突き当て面として利用する段差面19を基準として形成し、かつ、第2止め輪溝29を、突き当て面として利用するピストン5の軸方向一方側の端面5xを基準として形成している。このため、ボールねじ装置1の組立作業時に、ピストン5の軸方向一方側の端面5xをナット3の段差面19に突き当てた際に、第1止め輪溝20と第2止め輪溝29との軸方向位置を正確に一致させる(径方向に正確に対向させる)ことができる。
【0140】
本例では、回り止め部材8のうち、保持凹部22の内側に配置した、径方向に関する内側部分を、保持凹部22の閉塞面23とピストン5の軸方向一方側の端面5xとの間で軸方向に挟むことで、回り止め部材8の軸方向に関する抜け止めを図っている。このため、本例のボールねじ装置1は、回り止め部材8の抜け止めを図るために、止め輪やねじ部材などの抜け止め部材を省略できる。また、本例では、ナット3およびハウジング7とは別体の回り止め部材8を使用しているため、たとえばハウジングの内周面にキーを一体成形する場合に比べて、製造コストを十分に抑えることができる。また、回り止め部材8の形状精度は、低コストで良好にできる。したがって、本例のボールねじ装置1によれば、ナット3の回り止めを、少ない部品点数で実現することができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0141】
本例では、ナット3の段差面19に突き当てられたピストン5の軸方向一方側の端面5xから、保持凹部22の閉塞面23までの軸方向距離よりも、回り止め部材8の軸方向寸法を少しだけ小さくし、回り止め部材8の軸方向一方側の端面と閉塞面23との間、および/または、回り止め部材8の軸方向他方側の端面とピストン5の軸方向一方側の端面5xとの間に、隙間を形成している。このため、ナット3とピストン5との間で伝達される軸力が、回り止め部材8を介して伝達されることを防止できる。本例では、ピストン5の軸方向一方側の端面5xとナット3の段差面19との突き当て部を通じて、軸力を伝達することができる。したがって、ナット3とピストン5との同軸度を確保しやすくなるとともに、回り止め部材8に変形が生じることを防止できる。
【0142】
また、保持凹部22のそれぞれを、ナット3の内周面に備えられたすべての循環溝11から円周方向に位置をずらして配置している。具体的には、ナット3を軸方向から見た場合に、2つの保持凹部22のそれぞれを、円周方向位置の近い2つの循環溝11に対して、円周方向に関して反対側に同じ角度だけ(本例では45度ずつ)位置をずらして配置している。このため、保持凹部22を形成することによる、ナット3の強度低下を抑制することができる。したがって、ナット3の外径をいたずらに大きくしなくて済み、ボールねじ装置1の大型化を防止できる。
【0143】
本例では、ピストン5の軸方向一方側の端部を、ナット3の軸方向他方側の端部に対して、圧入により外嵌固定しているが、代替的に、ピストン5の軸方向一方側の端部を、ナット3の軸方向他方側の端部に対して、隙間嵌めにより外嵌固定することもできる。
【0144】
本例では、止め輪6の断面形状を矩形としているが、代替的に、止め輪6の断面形状を円形とすることもできる。この場合には、第1止め輪溝20および第2止め輪溝29のそれぞれの断面形状を、半円形または矩形とすることができる。
【0145】
本例では、ナット3の段差面19から保持凹部22の閉塞面23までの軸方向距離よりも、回り止め部材8の軸方向寸法を少しだけ小さくしているが、代替的に、ナット3の段差面19から保持凹部22の閉塞面23までの軸方向距離よりも、回り止め部材8の軸方向寸法を少しだけ大きくすることもできる。この場合には、ピストン5の軸方向一方側の端面5xと回り止め部材8の軸方向他方側の端面との突き当て部を通じて、軸力を伝達することができる。
【0146】
[第2例]
本開示の実施の形態の第2例について、
図10を用いて説明する。
【0147】
本例では、ナット3の外周面の軸方向他方側の端部に備えられた第1嵌合面17aを、段付き形状としている。第1嵌合面17aは、第1止め輪溝20よりも軸方向他方側部分に、第1止め輪溝20を挟んで反対側に位置する部分に比べて外径の小さい、小径部46を設けている。
【0148】
このため、ピストン5の軸方向一方側の端部を、ナット3の軸方向他方側の端部に対して、圧入により外嵌固定した状態で、第1嵌合面17aと第2嵌合面27とを、軸方向の一部において締め代を持って接触させている。具体的には、第1嵌合面17aのうちで、第1止め輪溝20よりも軸方向一方側に位置する部分のみを、第2嵌合面27に対して締め代を持って接触させている。
【0149】
本例では、第1嵌合面17aのうちで、第1止め輪溝20よりも軸方向他方側部分に小径部46を設けているため、止め輪6を第1止め輪溝20に係止する際の止め輪6の拡径量を、第1例に比べて少なくできる。このため、ボールねじ装置1の組立作業の容易化を図れる。
【0150】
第2例のその他の構成および作用効果については、第1例と同じである。
【0151】
[第3例]
本開示の実施の形態の第3例について、
図11を用いて説明する。
【0152】
本例のボールねじ装置1aは、第1例および第2例のボールねじ装置1とは異なり、ピストン5aを、ナット3aに対して内嵌固定している。
【0153】
本例では、ナット3aの内周面を、段付き円筒面により構成している。ナット3aは、内周面の軸方向他方側の端部に、ピストン5aを内嵌する円筒面状の第1嵌合面17bを有し、内周面の軸方向中間部から軸方向一方側部にわたる範囲に、第1嵌合面17bよりも内径が小さく、かつ、内周面にナット側ボールねじ溝16が形成された小径面47を有する。
【0154】
第1嵌合面17bの内径は、第1止め輪溝20aが形成された部分を除き、軸方向にわたり一定である。
【0155】
第1嵌合面17bは、軸方向中間部に、止め輪6の外径側部分を係止するための第1止め輪溝20aを全周にわたり備えている。第1止め輪溝20aは、矩形状の断面形状を有しており、ナット3aの軸方向他方側の端面3xを基準として、切削加工などの機械加工により形成されている。第1止め輪溝20aの径方向深さは、止め輪6の径方向幅よりも小さい。また、第1止め輪溝20aの軸方向幅は、止め輪6の軸方向厚さよりも少しだけ大きい。
【0156】
ナット3aは、外周面の軸方向他方側の端部に、小径段部48を備えている。小径段部48は、第1嵌合面17bの径方向外側に配置されており、小径段部48から軸方向に外れた部分に比べて少しだけ外径が小さい。ナット3aのうちで、小径段部48から軸方向に外れた部分は、ピストン5aの大径面49と同じ外径を有する。なお、ナット3aのうちで、小径段部48から軸方向に外れた部分は、ピストン5aの大径面49と同じ外径を有するとは、大径面49の外径と完全に一致する外径を有する場合に限らず、大径面49の外径と製造上不可避な公差範囲内で実質的に同じ外径を有する場合を含む。
【0157】
ナット3aの軸方向他方側の端面3xと第1嵌合面17bとは、テーパ面状の第1面取り部21aを介して接続されている。
【0158】
本例では、ピストン5aの外周面を、段付き円筒面により構成している。ピストン5aは、外周面の軸方向一方側の端部に、円筒面状の第2嵌合面27aを有し、外周面の軸方向中間部から軸方向他方側部にわたる範囲に、円筒面状の大径面49を有する。また、ピストン5aの外周面は、第2嵌合面27aと大径面49との間に、軸方向一方側を向いた円環状の段差面50を有する。段差面50は、ピストン5aの中心軸に直交する仮想平面上に存在する平坦面である。大径面49の外径は、ナット3aの外径(最大外径)と同じである。
【0159】
第2嵌合面27aの外径は、第2止め輪溝29aが形成された部分を除き、軸方向にわたり一定であり、ナット3aの第1嵌合面17aの内径よりも少しだけ大きい。
【0160】
第2嵌合面27aは、軸方向中間部に、止め輪6の内径側部分を係止するための第2止め輪溝29aを全周にわたり備えている。第2止め輪溝29aは、ピストン5aの段差面50を基準として、切削加工などの機械加工により形成されている。第2止め輪溝29aは、矩形状の断面形状を有しており、ピストン5aをナット3aに内嵌固定した状態で、径方向に関して第1止め輪溝20aと対向する部分に備えられている。第2止め輪溝29aの径方向深さは、止め輪6の径方向幅と同じか、または、該径方向幅よりも大きくなっている。また、第2止め輪溝29aの軸方向幅は、止め輪6の軸方向厚さよりも少しだけ大きい。
【0161】
ピストン5aの軸方向一方側の端面5xと第2嵌合面27aとは、テーパ面状の第2面取り部30aを介して接続されている。
【0162】
本例では、ピストン5aの軸方向一方側の端部を、ナット3aの軸方向他方側の端部に対して、圧入により内嵌固定している。これにより、第1嵌合面17bと第2嵌合面27aとを、軸方向の全長にわたり締め代を持って接触させている。また、ピストン5aをナット3aに内嵌固定した状態で、ナット3aの軸方向他方側の端面3xを、ピストン5aの外周面に備えられた段差面50に対し軸方向に突き当てている。
【0163】
ピストン5aをナット3aに内嵌固定した状態で、止め輪6を、ナット3aの第1止め輪溝20aとピストン5aの第2止め輪溝29aとの間に掛け渡すように係止している。具体的には、止め輪6の外径側部分を第1止め輪溝20aに係止し、止め輪6の内径側部分を第2止め輪溝29aに係止している。
【0164】
本例では、止め輪6の組み付け作業は、たとえば次のようにして行うことができる。
【0165】
まず、ピストン5aの軸方向一方側の端部を、止め輪6の内側に押し込むことにより、第2面取り部30aを利用して止め輪6を弾性的に拡径させ、止め輪6を第2止め輪溝29aに係止する。次に、ナット3aの第1面取り部21aを利用して、止め輪6を縮径させることで第2止め輪溝29aの内側に押し込みながら、ピストン5aの軸方向一方側の端部を、ナット3aの軸方向他方側の端部に圧入する。そして、ナット3aの軸方向他方側の端面3xがピストン5aの段差面50に突き当たり、かつ、第1止め輪溝20aと第2止め輪溝29aとの軸方向位置が一致した状態で、止め輪6を弾性的に復元させる。これにより、止め輪6を、ナット3aの第1止め輪溝20aとピストン5aの第2止め輪溝29aとの間に掛け渡すように係止することができる。
【0166】
本例では、ナット3aの回り止めを図るために、ピストン5aの外周面に、回り止め部材8を保持するための保持凹部22aを設けている。保持凹部22aは、ピストン5aの外周面の円周方向複数個所(たとえば2個所)に備えられている。保持凹部22aは、ピストン5aの外周面のうち、大径面49の軸方向一方側部に備えられている。
【0167】
保持凹部22aは、軸方向に伸長した凹溝である。保持凹部22aは、軸方向他方側の端部に、軸方向一方側を向いた閉塞面23aを有する。保持凹部22aの軸方向一方側の端部は、段差面50に開口している。このため、保持凹部22aは、ピストン5aの外周面および段差面50のそれぞれに開口している。保持凹部22aの中心軸は、ピストン5aの中心軸と平行に配置されている。段差面50から閉塞面23aまでの軸方向寸法は、回り止め部材8の軸方向寸法よりも少しだけ大きい。閉塞面23aは、ピストン5aの中心軸に直交する仮想平面上に存在する平坦面であり、軸方向視で部分円形状(略半円形状)である。
【0168】
保持凹部22aは、回り止め部材8のうちの径方向に関する内側部分と円周方向に係合可能な断面形状を有する。本例では、回り止め部材8を円柱形状に構成しているため、ピストン5aの中心軸に直交する仮想平面に関する保持凹部22aの断面形状を、円弧形としている。また、保持凹部22aのうちで最も径方向の深さが大きくなった部分を通る内接円直径は、第2嵌合面27aの外径以上である。
【0169】
本例では、ピストン5aの外周面に備えられた保持凹部22aと、図示しないハウジング7の挿通孔9の内周面に備えられた案内凹溝31(
図1参照)との間に、回り止め部材8を径方向に挟むようにして配置している。
【0170】
回り止め部材8のうちの径方向に関する内側部分は、保持凹部22aの内側に配置されている。また、回り止め部材8のうちの径方向に関する内側部分は、保持凹部22aの閉塞面23aとナット3aの軸方向他方側の端面3xとの間で、軸方向に挟まれている。別な言い方をすれば、回り止め部材8の軸方向他方側の端面は、閉塞面23aと軸方向に対向しており、かつ、回り止め部材8の軸方向一方側の端面は、ナット3aの軸方向他方側の端面3xと軸方向に対向している。このため、回り止め部材8は、閉塞面23aとナット3aの軸方向他方側の端面3xとにより、軸方向に関する抜け止めが図られている。したがって、回り止め部材8のうちの径方向に関する内側部分は、保持凹部22aの内側に、軸方向に関する移動不能に配置されている。
【0171】
本例では、回り止め部材8の軸方向寸法を、ピストン5aの段差面50から保持凹部22aの閉塞面23aまでの軸方向寸法よりも少しだけ小さく設定している。このため、ピストン5aをナット3aに内嵌固定した状態で、段差面50に突き当てられたナット3aの軸方向他方側の端面3xから閉塞面23aまでの軸方向距離よりも、回り止め部材8の軸方向寸法が少しだけ小さくなる。したがって、回り止め部材8の軸方向他方側の端面と閉塞面23aとの間、および/または、回り止め部材8の軸方向一方側の端面とナット3aの軸方向他方側の端面3xとの間には、隙間が形成される。別な言い方をすれば、回り止め部材8の軸方向両側の端面は、軸方向に対向する閉塞面23aおよびナット3aの軸方向他方側の端面3xに同時に当接することはない。
【0172】
回り止め部材8のうちの径方向に関する外側部分は、案内凹溝31の内側に、軸方向に関する摺動を可能に配置される。
【0173】
本例の場合にも、製造コストを増大させずに、ナット3aとピストン5aとの軸方向の相対変位を有効に防止でき、かつ、装置全体の小型化および負荷容量の増大を図れる。
【0174】
本例では、ナット3aの外周面の軸方向他方側の端部に、小径段部48を設けているため、第2嵌合面27aを第1嵌合面17bに圧入により嵌合する、および/または、第1嵌合面17bに第1止め輪溝20aを形成することに伴って、小径段部48が拡径した場合にも、拡径に伴い真円度が低下した小径段部48が、挿通孔9の内周面に摺接することを有効に防止できる。
【0175】
第1止め輪溝20aを、ナット3aの軸方向他方側の端面3xを基準として形成し、かつ、第2止め輪溝29aを、ピストン5aに備えられた段差面50を基準として形成しているため、ボールねじ装置1aの組立作業時に、ナット3aの軸方向他方側の端面3xをピストン5aの段差面50に突き当てた際に、第1止め輪溝20aと第2止め輪溝29aとの軸方向位置を正確に一致させることができる。
【0176】
本例では、ピストン5aの外周面に保持凹部22aを形成しており、ナット3aの外周面に保持凹部を形成しなくて済むため、ナット3aの強度確保のために、ナット3aの外径(肉厚)を大きくしなくて済む。このため、ボールねじ装置1aの小型化を図れる。また、保持凹部22aの形成位置を、ナット3aの内周面に備えられた循環溝11(
図7参照)との関係で考慮する必要がない。したがって、ボールねじ装置1aの設計の自由度を向上できるため、ボールねじ装置1aの製造コストの低減を図れる。
【0177】
第3例のその他の構成および作用効果については、第1例と同じである。
【0178】
[第4例]
本開示の実施の形態の第4例について、
図12~
図16を用いて説明する。
【0179】
本例は、第1例の変形例である。第1例のボールねじ装置1は、組立後に、止め輪6を外部から視認することができないため、止め輪6が組み付けられているか否かを外部から確認することができない。そこで、本例のボールねじ装置1bは、止め輪6が組み付けられているか否かを外部から確認するための確認用窓孔51を有している。
【0180】
本例では、ナット3に対してピストン5を外嵌固定している。このため、ピストン5を構成する円筒部25の軸方向一方側の端部が、止め輪6を径方向外側から覆うように配置されている。そこで、円筒部25の軸方向一方側の端部に、径方向に貫通した確認用窓孔51を形成している。確認用窓孔51は、第2嵌合面27に形成された第2止め輪溝29と径方向に重なる部分に形成されている。したがって、確認用窓孔51は、第2止め輪溝29に係止される止め輪6と径方向に重なる部分に形成されている。
【0181】
本例の確認用窓孔51は、円筒部25の径方向両側にのみ開口した、円形状の貫通孔(丸孔)である。つまり、確認用窓孔51は、円筒部25の外周面に備えられた小径段部28、および、円筒部25の内周面に備えられた第2嵌合面27にのみ開口している。確認用窓孔51は、第2止め輪溝29の軸方向幅よりも少しだけ小さい内径を有する。このため、確認用窓孔51は、第2止め輪溝29の溝底に開口している。なお、代替的に、確認用窓孔の内径を、第2止め輪溝の軸方向幅と同じか、または、第2止め輪溝の軸方向幅よりも大きくすることもできる。この場合には、確認用窓孔は、第2止め輪溝を円周方向に分断するように設けられる。また、確認用窓孔の形状は、適宜変更することができる。
【0182】
本例では、確認用窓孔51を、円筒部25の円周方向複数箇所(図示の例では2箇所)に設けている。複数の確認用窓孔51は、円周方向に関して等間隔に配置されている。本例では、
図15に示すように、円周方向に隣り合う1対の確認用窓孔51同士の間隔を、止め輪6の円周方向一箇所に備えられた不連続部52の円周方向に関する幅寸法W
52よりも大きく設定している。なお、確認用窓孔51は、止め輪6の検査工程が終了した後、必要に応じて、ピンなどを用いて蓋をすることができる。
【0183】
〈ボールねじ装置の製造方法〉
本例のボールねじ装置1bを製造する際には、製造工程の中(組立工程の後)に、止め輪6の検査工程を含めることができる。
【0184】
検査工程は、目視により行う方法と、検査用治具53あるいはレーザセンサなどのセンサを用いて行う方法との2種類があり、いずれか一方の方法のみを実施することもできるし、2つの方法を組み合わせて実施することもできる。2つの方法を組み合わせて実施する場合には、目視による方法を実施した後、検査用治具53あるいはセンサを用いた方法を実施する。
【0185】
目視による検査方法は、具体的には、次のようにして行う。
【0186】
ボールねじ装置1bの組立後、確認用窓孔51を通じて、目視により、止め輪6が組み付けられているか否かを確認する。なお、止め輪6の不連続部52と位相が一致する部分に配置された確認用窓孔51によっては、止め輪6が組み付けられているか否かを正しく判定できないため、1つの確認用窓孔51を目視により確認し、止め輪6の存在を確認できない場合には、その他の確認用窓孔51を目視により確認する。このように、目視による検査方法では、止め輪6が組み付けられているか否かを、道具を使用せずに、容易に確認することができる。
【0187】
検査用治具53を用いて行う検査方法は、具体的には、
図16に示すようにして行う。
【0188】
ボールねじ装置1bの組立後、確認用窓孔51の内側に、検査用治具53の先端部54を挿入する。ここで、先端部54は、確認用窓孔51の内側にがたつきなく挿入可能な形状を有しており、図示の例では円柱形状を有している。先端部54の全長Lは、ピストン5の外周面から第1止め輪溝20の溝底面までの径方向寸法Hと同じに設定されている。
【0189】
先端部54の挿入作業は、先端部54の先端面が相手部材に突き当たり、先端部54を確認用窓孔51の内側にそれ以上挿入できなくなるまで行う。そして、この状態で、検査用治具53の先端部54の挿入深さを測定する。挿入深さの測定方法は、特に問わないが、たとえば、先端部54の外周面に付した目盛を、円筒部25の外周面の位置で読むことにより行うことができる。そして、検査用治具53の先端部54の挿入深さにより、止め輪6の有無、および、止め輪6が適切に組み付けられているか否かを判定(検査)する。
【0190】
具体的には、挿入深さの測定値が、前記径方向寸法Hから止め輪6の径方向幅T6を引いた値と一致すれば、止め輪6は、適切に組み付けられていると判定する。
【0191】
これに対し、検査用治具53の先端部54を、2箇所の確認用窓孔51の内側にそれぞれ挿入し、挿入深さの測定値がいずれも、前記径方向寸法Hと一致した場合には、止め輪6は組み付けられていないと判定する。なお、2箇所の確認用窓孔51の内側に先端部54を挿入する理由は、目視による検査方法の場合と同様に、1箇所の確認用窓孔51の位相が止め輪6の不連続部52の位相と一致している可能性があるためである。
【0192】
挿入深さの測定値が、前記径方向寸法Hから前記径方向幅T6を引いた値よりも大きいが、前記径方向寸法Hよりも小さい、または、前記径方向寸法Hから前記径方向幅T6を引いた値よりも小さい場合には、止め輪6は組み付けられているが、適切には組み付けられていないと判定する。
【0193】
以上のように、検査用治具53を用いて行う検査方法によれば、止め輪6の有無だけでなく、止め輪6が適切に組み付けられているか否かを、容易に確認することができる。なお、検査用治具53を用いて行う検査工程は、検査装置を用いて自動的に行うこともできるし、作業者が行うこともできる。なお、センサを用いて行う検査方法の場合も、確認用窓孔51を利用してセンサにより該センサから対象物(止め輪6の外周面または第1止め輪溝20または第2止め輪溝29の底面)までの距離を測定すること以外は、その作用および効果は、検査用治具53を用いて行う検査方法と基本的に同じである。
【0194】
また、目視による方法と、検査用治具53を用いた方法(あるいはレーザを用いた方法)とを組み合わせて実施すれば、まず、目視による方法で、止め輪6の有無を早期かつ容易に判定できるため、止め輪6が組み付けられているものだけを検査対象として、検査用治具53を用いた検査(あるいはレーザを用いた検査)を行うことができる。このため、検査効率の向上を図ることができる。
【0195】
本例のボールねじ装置1bによれば、製造コストを増大させずに、ナット3とピストン5との軸方向の相対変位を有効に防止でき、かつ、装置全体の小型化および負荷容量の増大を図れるとともに、ボールねじ装置1bの組立後に、止め輪6が組み付けられているか否かを容易に確認することができる。
【0196】
特に、本例では、ピストン5を構成する円筒部25の軸方向一方側の端部に備えられた確認用窓孔51を利用して、止め輪6が組み付けられているか否かを、容易に確認することができる。このため、止め輪6の組み付け忘れを未然に防止することができる。
【0197】
また、止め輪6の検査工程として、検査用治具53を用いた方法を実施すれば、止め輪6の有無だけでなく、止め輪6が適切に組み付けられているか否かを、容易に確認することもできる。このため、止め輪6の組み付け状態が不適切であることに起因して、ボールねじ装置1bに破損や損傷などが発生することを防止でき、ボールねじ装置1bの品質保証を行うことができる。
【0198】
第4例のその他の構成および作用効果については、第1例と同じである。
【0199】
[第5例]
本開示の実施の形態の第5例について、
図17および
図18を用いて説明する。
【0200】
本例では、確認用窓孔51aの形状のみを、第4例の構造から変更している。
【0201】
本例では、確認用窓孔51aを、円筒部25の径方向両側に開口するだけでなく、円筒部25の軸方向一方側の端部にも開口した、切り欠き孔(スリット)としている。確認用窓孔51aは、円周方向寸法に比べて軸方向寸法が長い、略長円形状を有している。確認用窓孔51aの軸方向寸法は、第2止め輪溝29(止め輪6)の軸方向幅よりも大きい。
【0202】
本例では、検査用治具として、先端部の形状が、確認用窓孔51aの内側にがたつきなく挿入可能な、板状のものを使用することができる。
【0203】
本例では、確認用窓孔51aを、カッターなどを利用した切削加工により形成することができるため、加工コストの低減を図ることができる。
【0204】
第5例のその他の構成および作用効果については、第1例および第4例と同じである。
【0205】
[第6例]
本開示の実施の形態の第6例について、
図19および
図20を用いて説明する。
【0206】
本例では、確認用窓孔51bの形状、および、確認用窓孔51bの形成数を、第4例および第5例の構造から変更している。
【0207】
本例では、確認用窓孔51bを、円筒部25の径方向両側にのみ開口した、長円形状の貫通孔(長円形孔)としている。また、確認用窓孔51bは、軸方向寸法に比べて円周方向寸法が大きくなっている。確認用窓孔51bの円周方向寸法W51は、止め輪6の不連続部52の円周方向に関する幅寸法W52よりも大きい(W51>W52)。
【0208】
本例では、確認用窓孔51bを、円筒部25の円周方向1箇所にのみ設けている。
【0209】
本例の場合にも、検査用治具として、先端部の形状が、確認用窓孔51bの内側にがたつきなく挿入可能な、板状のものを使用することができる。
【0210】
本例では、確認用窓孔51bの円周方向寸法W51を、止め輪6の不連続部52の円周方向に関する幅寸法W52よりも大きく設定しているため、確認用窓孔51bと不連続部52とが径方向に重なるように配置された場合にも、確認用窓孔51bの内側に、止め輪6の一部を必ず露出させることができる。このため、止め輪6の有無を容易に確認することができる。また、検査用治具を用いた検査工程によれば、止め輪が適切に組み付けられているか否かを容易に確認することができる。このように、本例では、確認用窓孔51bを1つだけ形成するだけで、止め輪6の検査工程を行えるため、加工コストの低減を図ることができる。
【0211】
第6例のその他の構成および作用効果については、第1例および第4例と同じである。
【0212】
[第7例]
本開示の実施の形態の第7例について、
図21を用いて説明する。
【0213】
本例は、第2例の変形例である。本例では、ナット3の外周面の軸方向他方側の端部に備えられた第1嵌合面17aを段付き形状としている。第1嵌合面17aは、第1止め輪溝20よりも軸方向他方側部分に、第1止め輪溝20を挟んで反対側に位置する部分に比べて外径の小さい、小径部46を有している。
【0214】
本例の場合にも、止め輪6を径方向外側から覆うように配置されたピストン5を構成する円筒部25の軸方向一方側の端部に、確認用窓孔51を有している。具体的には、確認用窓孔51を、円筒部25の軸方向一方側の端部のうちで、第2嵌合面27に形成された第2止め輪溝29と径方向に重なる部分に形成している。
【0215】
本例の場合にも、第2例の構造と同様に、止め輪6を第1止め輪溝20に係止する際の止め輪6の拡径量を、第1例に比べて少なくできる。このため、ボールねじ装置1の組立作業の容易化を図れる。
【0216】
第7例のその他の構成および作用効果については、第1例、第2例、および第4例と同じである。
【0217】
[第8例]
本開示の実施の形態の第8例について、
図22を用いて説明する。
【0218】
本例は、第3例の変形例である。すなわち、本例のボールねじ装置1bでは、ピストン5aを、ナット3aに対して内嵌固定している。このため、ナット3aの軸方向他方側の端部が、止め輪6を径方向外側から覆うように配置される。
【0219】
本例では、ナット3aの軸方向他方側の端部に、径方向に貫通した確認用窓孔51を形成している。具体的には、確認用窓孔51は、第1嵌合面17bに形成された第1止め輪溝20aと径方向に重なる部分に形成されている。このため、確認用窓孔51は、第1止め輪溝20aに係止される止め輪6と径方向に重なる部分に形成されている。
【0220】
本例の場合にも、確認用窓孔51は、ナット3aの径方向両側にのみ開口した、円形状の貫通孔(丸孔)である。つまり、確認用窓孔51は、ナット3aの外周面に備えられた小径段部48、および、ナット3aの内周面に備えられた第1嵌合面17bにのみ開口している。確認用窓孔51は、第1止め輪溝20aの軸方向幅よりも少しだけ小さい内径を有している。このため、確認用窓孔51は、第1止め輪溝20aの溝底に開口している。
【0221】
本例では、確認用窓孔51を、ナット3aの円周方向複数箇所に設けている。複数の確認用窓孔51は、円周方向に関して等間隔に配置されている。また、円周方向に隣り合う1対の確認用窓孔51同士の間隔を、止め輪6の不連続部52(
図15参照)の円周方向に関する幅寸法W
52よりも大きく設定している。
【0222】
本例の場合には、ナット3aに備えられた確認用窓孔51を利用して、目視により、および/または、検査用治具を用いて、止め輪6の有無、および、止め輪6が適切に組み付けられているか否かを確認することができる。
【0223】
第8例のその他の構成および作用効果については、第1例、第3例、および第4例と同じである。
【0224】
以上、本開示の実施の形態について説明したが、本開示の内容はこれに限定されることなく、本開示の技術思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。また、本開示の実施の形態の各例の構造は、矛盾を生じない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。
【0225】
本開示の内容を実施する場合に、確認用窓孔の形状は、各例で示した形状に限定されず、止め輪の有無を確認することができる限り、適宜変更することができる。また、確認用窓孔の数および形成位置についても、各例で示した構造に限定されず、適宜変更することができる。
【0226】
本開示の実施の形態の各例では、ハウジングに対するナットの相対回転を阻止するために、ナットまたはピストン(嵌合筒)の外周面に備えられた保持凹部と、ハウジングの挿通孔の内周面に備えられた案内凹溝との間で、回り止め部材を径方向両側から挟持する構造を採用した場合について説明した。ただし、本開示の内容を実施する場合に、ハウジングに対してナットが相対回転するのを阻止するための構造は、このような回り止め部材を用いた構造に限定されず、キー構造やその他の従来から知られた各種構造を適宜採用することができる。
【0227】
本開示の実施の形態の各例では、嵌合筒として、ピストンを用いた場合について説明したが、本開示の内容を実施する場合には、ピストンに限らず、その他の機能を有する部材を用いることもできる。
【符号の説明】
【0228】
1、1a、1b ボールねじ装置
2 ねじ軸
3、3a ナット
3x 端面
4 ボール
5、5a ピストン
5x 端面
6 止め輪
7 ハウジング
8 回り止め部材
9 挿通孔
10 負荷路
11 循環溝
12 ねじ部
13 嵌合軸部
14 軸側ボールねじ溝
15 雄スプライン歯
16 ナット側ボールねじ溝
17、17a、17b 第1嵌合面
18 大径面
19 段差面
20、20a 第1止め輪溝
21、21a 第1面取り部
22、22a 保持凹部
23、23a 閉塞面
24 非回転側係合部
25 円筒部
26 底板部
27、27a 第2嵌合面
28 小径段部
29、29a 第2止め輪溝
30、30a 第2面取り部
31 案内凹溝
32 突き当て面
33a、33b シール凹溝
34a、34b Oリング
35 ストッパ
36 ボス部
37 回転側係合部
38 係合孔
39 雌スプライン歯
40 駆動部材
41 基板部
42 筒部
43 トルク入力部
44 取付孔
45 雌スプライン歯
46 小径部
47 小径面
48 小径段部
49 大径面
50 段差面
51、51a、51b 確認用窓孔
52 不連続部
53 検査用治具
54 先端部
100 ボールねじ装置
101 ねじ軸
102 ナット
103 ボール
104 ピストン
105 ハウジング
106 軸側ボールねじ溝
107 転がり軸受
108 被動ギヤ
109 アイドルギヤ
110 ナット側ボールねじ溝
111 負荷路
112 段差面
113 止め輪
114 キー溝
115 挿通孔
116 嵌合溝
117 キー
【要約】
【課題】製造コストを増大させずに、ナットと嵌合筒との軸方向の相対変位を有効に防止でき、かつ、装置全体の小型化および負荷容量の増大を図れる、ボールねじ装置を提供する。
【解決手段】ナット3は、軸方向他方側の端部に、第1止め輪溝20を備えた第1嵌合面17を有し、嵌合筒5は、軸方向一方側の端部に、径方向に関して第1止め輪溝20と対向する部分に第2止め輪溝29を備えた第2嵌合面27を有し、止め輪6は、第1止め輪溝20と第2止め輪溝29との間に掛け渡すように係止されている。
【選択図】
図1