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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】顆粒組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20230511BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20230511BHJP
   A23L 29/212 20160101ALI20230511BHJP
   A23L 29/30 20160101ALI20230511BHJP
   A23L 29/262 20160101ALI20230511BHJP
【FI】
A23L5/00 D
A23L33/105
A23L29/212
A23L29/30
A23L29/262
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021200508
(22)【出願日】2021-12-10
(62)【分割の表示】P 2020177948の分割
【原出願日】2020-10-23
(65)【公開番号】P2022022413
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2021-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2019200805
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石 紘太朗
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-061483(JP,A)
【文献】特開2011-178690(JP,A)
【文献】特開2017-178830(JP,A)
【文献】特開2018-184388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00-5/49
A23L 33/00-33/29
A23L 29/00-29/30
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)及び(D);
(A)植物抽出物 20~70質量%
(B)澱粉
(C)糖アルコール 5質量%以上、及び
(D)ヒドロキシアルキルセルロース、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及びそれらの塩から選択される1種以上のセルロース誘導体 0.2~5質量%
を含有する顆粒組成物。
【請求項2】
成分(A)に対する、成分(B)及び成分(C)の合計の質量比[[(B)+(C)]/(A)]が0.3~3.2である、請求項1に記載の顆粒組成物。
【請求項3】
成分(B)の含有量が3質量%以上である、請求項1又は2記載の顆粒組成物。
【請求項4】
成分(C)が還元麦芽糖である、請求項1~のいずれか1項に記載の顆粒組成物。
【請求項5】
成分(B)がデキストリンである、請求項1~のいずれか1項に記載の顆粒組成物。
【請求項6】
成分(D)としてヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースから選択される1種以上を含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の顆粒組成物。
【請求項7】
成分(D)として、更にカルボキシメチルセルロースを含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の顆粒組成物。
【請求項8】
下記の工程(1)~(4):
(1)次の成分(A)、(B)、(C)及び(D)を混合する工程、
(A)植物抽出物 20~70質量%
(B)澱粉
(C)糖アルコール 5質量%以上、及び
(D)ヒドロキシアルキルセルロース、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及びそれらの塩から選択される1種以上のセルロース誘導体 0.2~5質量%
(2)工程(1)後の混合物に水系媒体を添加し、混錬する工程、
(3)工程(2)後の混錬物を造粒する工程、並びに
(4)工程(3)後の造粒物を乾燥し、顆粒組成物を得る工程
を含む、顆粒組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顆粒組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、生理機能を有する様々な素材が提案され、これらを含有する健康飲料、食品が広く上市されている。植物抽出物はこうした生理機能を有する素材の一つとして知られており、毎日継続的に、かつ、簡便に摂取できるよう植物抽出物を配合して顆粒化し経口摂取されるものが多い。
【0003】
このような植物抽出物を配合した顆粒組成物について、例えば、植物抽出物を含む粉末混合物中の水分含量を特定範囲内に制御して押出し造粒することで、口腔内で即時に溶解可能な顆粒が得られることが報告されている(特許文献1)。しかし、植物抽出物の高濃度化については一切検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-61483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、植物抽出物を用いて公知の処方を参考に顆粒化を試みたところ、植物抽出物の配合量が少ないと、生理機能物質を有効量摂取するためには1回当たり多量に摂取する必要があるため、飲みにくく、毎日継続して摂取するうえで障害となりやすいことが判明した。そこで、飲みにくさを改善するために、植物抽出物を高濃度化したところ、造粒負荷が大きく顆粒化できないという課題が生じた。このように、植物抽出物は一般的に粘性を持ち、そのため造粒時に負荷が生じやすく顆粒化が難しいという特有の問題がある。
本発明の課題は、顆粒化が難しい植物抽出物を高濃度に配合しながらも、造粒性が良い顆粒組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、高濃度の植物抽出物に、澱粉と糖アルコールとセルロース誘導体とを含有させることで、植物抽出物を高濃度に含有しながらも顆粒化でき、口腔内で即時に溶解可能な即溶性の顆粒組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)及び(D);
(A)植物抽出物 20~70質量%
(B)澱粉
(C)糖アルコール 5質量%以上、及び
(D)セルロース誘導体
を含有する顆粒組成物を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、下記の工程(1)~(4):
(1)次の成分(A)、(B)、(C)及び(D)を混合する工程,
(A)植物抽出物 20~70質量%
(B)澱粉
(C)糖アルコール 5質量%以上、及び
(D)セルロース誘導体
(2)工程(1)後の混合物に水系媒体を添加し、混錬する工程、
(3)工程(2)後の混錬物を造粒する工程、並びに
(4)工程(3)後の造粒物を乾燥し、顆粒組成物を得る工程
を含む、顆粒組成物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、顆粒化が難しい植物抽出物を高濃度に配合しながらも、造粒性が良く、口腔内で即時に溶解可能な顆粒組成物を提供することができる。また、本発明の顆粒組成物は、経口摂取したとき、1回当たりの摂取量を大幅に低減でき、さらに水無しで簡便に摂取できることから、毎日継続的に摂取する上で障害となりにくく、服用アドヒアランスの向上が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<顆粒組成物>
本発明の顆粒組成物は、常温(20℃±15℃)において固体であり、その形態は、顆粒状である。ここで、本明細書において「顆粒状」とは、粒子径がメジアン径で0.5~2.0mmの範囲内である造粒物をいい、「メジアン径」とは、体積基準の積算分布において頻度50%に相当する粒子径(D50)である。なお、粒度分布は、動的光散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定することが可能であり、具体的には、後掲の実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明の顆粒組成物の水分含量は、通常5質量%以下であり、好ましくは4質量%以下である。
本発明の「顆粒組成物」は、経口摂取に好ましく適用される。
【0011】
〔(A)植物抽出物〕
本発明の顆粒組成物は、成分(A)として植物抽出物を含有する。
本明細書において「植物抽出物」とは、植物の一部又は全部から抽出されたものをいう。抽出方法は特に限定されず、公知の抽出方法を採用することが可能であり、例えば、水、熱水、親水性有機溶媒又は水と親水性有機溶媒との混合液等の溶媒を用いた抽出法であっても、搾汁等のように非溶媒の抽出法であってもよい。植物から抽出された抽出物は、必要によりろ過、精製、乾燥等されていても構わない。
【0012】
成分(A)としては、食用に供される植物の抽出物であれば特に限定されないが、例えば、コーヒー豆、茶、ローズマリー、アスパラガス、ウコン、ガジュツ、大豆、カカオ、ヒハツ、イチョウの葉等の抽出物を挙げることができる。また、植物抽出物は、既知の分解処理(熱や圧力による分解処理、酸やアルカリによる分解処理、酵素による分解処理等)を施したものも用いることもできる。成分(A)は、単独で用いてもよく、また2種類以上を併用してもよい。
【0013】
コーヒー豆は、焙煎コーヒー豆でも、生コーヒー豆でも構わない。
茶としては、例えば、C.sinensis.var.sinensis(やぶきた種を含む)、C.sinensis.var.assamica及びそれらの雑種から選択される茶葉(Camellia sinensis)が挙げられる。
茶葉は、その加工方法により、不発酵茶、半発酵茶、発酵茶に分類することができる。茶葉は、単独で用いてもよく、また2種類以上を併用してもよい。なお、茶葉の茶品種及び採取時期は特に限定されず、また茶葉は火入れ加工が施されていてもよい。不発酵茶としては、例えば、煎茶、深蒸し煎茶、焙じ茶、番茶、玉露、かぶせ茶、碾茶、釜入り茶、茎茶、棒茶、芽茶等の緑茶葉が挙げられる。また、半発酵茶としては、例えば、鉄観音、色種、黄金桂、武夷岩茶等のウーロン茶葉が挙げられる。更に、発酵茶としては、ダージリン、アッサム、スリランカ等の紅茶葉が挙げられる。
中でも、本発明の効果を享受しやすい点で、コーヒー豆、茶及びローズマリーの群から選ばれる1種又は2種以上の植物の抽出物が好ましい。
【0014】
成分(A)の含有量は、本発明の顆粒組成物中に20~70質量%であるが、風味、生理効果の観点から、30質量%以上が好ましく、35質量%以上が好ましく、40質量%以上が更に好ましく、また造粒性の観点から、65質量%以下が好ましく、60質量%以下が更に好ましい。かかる成分(A)の含有量の範囲としては、本発明の顆粒組成物中に、好ましくは30~65質量%であり、より好ましくは35~60質量%であり、更に好ましくは40~60質量%である。なお、本明細書において、成分(A)~(D)の各含有量は、顆粒組成物中に占める各成分の固形分量である。ここで、本明細書において「固形分量」とは、試料を105℃の電気恒温乾燥機で3時間乾燥して揮発物質を除いた残分の質量をいう。
【0015】
なお、植物抽出物の固形分中の生理機能物質の含有量は、0.1~99.9質量%が好ましく、5~65質量%がより好ましく、15~50質量%が更に好ましい。ここで、「植物抽出物の生理機能物質」とは、その植物に含まれる物質のうち生理活性を示す物質をいい、例えば、植物抽出物がコーヒー豆抽出物である場合、生理機能物質はクロロゲン酸類であり、また茶抽出物である場合、生理機能物質は非重合体カテキン類である。なお、「クロロゲン酸類」とは、3-カフェオイルキナ酸、4-カフェオイルキナ酸及び5-カフェオイルキナ酸のモノカフェオイルキナ酸と、3-フェルラキナ酸、4-フェルラキナ酸及び5-フェルラキナ酸のモノフェルラキナ酸を併せての総称であり、クロロゲン酸類の含有量は上記6種の合計量に基づいて定義される。また、「非重合体カテキン類」とは、カテキン、ガロカテキン、エピカテキン及びエピガロカテキン等の非ガレート体と、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレート等のガレート体を併せての総称であり、非重合体カテキン類の含有量は上記8種の合計量に基づいて定義される。
【0016】
また、植物抽出物の固形分中の生理機能物質以外の成分の含有量としては、0.1~99.9質量%が好ましく、35~95質量%がより好ましく、50~85質量%が更に好ましい。
ここで「植物抽出物の生理機能物質以外の成分」とは、植物の一部又は全部に対して抽出を行い、本発明の植物抽出物を得る際に不可避的に混入される成分を指し、例えば、植物を水、熱水、親水性有機溶媒又は水と親水性有機溶媒との混合液等の溶媒を用いた水系抽出にて抽出した際に抽出される成分である。より具体的には、コーヒー豆抽出物を水系抽出し得られるクロロゲン酸以外の成分や、茶抽出物を水系抽出し得られる非重合体カテキン類以外の成分である。植物抽出物の生理機能物質以外の成分の一例としては、ショ糖、タンパク質といった成分が挙げられる。
【0017】
本発明における植物抽出物の固形分中の、生理機能物質と生理機能物質以外の成分との質量比(生理機能物質/生理機能物質以外の成分)は、造粒性の観点から、好ましくは0.1~2であり、より好ましくは0.2~1であり、更に好ましくは0.4~0.8である。なお、生理機能物質以外の成分の質量は、ショ糖及びタンパク質の総量とする。
【0018】
〔(B)澱粉〕
本発明の顆粒組成物は、成分(B)として澱粉を含有する。
成分(B)としては、植物から採取した澱粉、又はそれを加工したもの(以下、「加工澱粉」とも称する)であって、食用に供されるものであれば特に限定されない。成分(B)は、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
植物から採取した澱粉としては、例えば、コーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉等を挙げることができる。なお、植物から採取した澱粉は
、必要により公知の方法を用いて精製しても構わない。
【0019】
加工澱粉としては、原料澱粉を、例えば、加水分解処理、エステル化又はエーテル化等の架橋処理の他、酸化処理、α化処理、加熱処理、湿熱処理、漂白処理、殺菌処理、酸処理、アルカリ処理、酵素処理等したものを挙げることができる。加工澱粉の具体例として、例えば、デキストリンを挙げることができる。
【0020】
ここで、本明細書において「デキストリン」とは、原料澱粉を酵素や酸で分解したものをいう。原料澱粉の分解の程度を把握する指標としてデキストロース当量(DE値)が一般に用いられているが、本発明で使用するデキストリンのDE値は、本発明の効果を享受しやすい点から、2~30が好ましく、2~13がより好ましく、2~5が更に好ましい。なお、DE値は通常知られているデキストロースの測定法により分析することが可能であるが、例えば、ウイルシュテッターシューデル法を挙げることができる。また、デキストリンは、糖がグリコシド結合によって重合した分子構造を有しているが、グリコシド結合は、鎖状に結合していても、環状に結合していても、これらの混合物であっても構わない。糖の結合方式としては、α-1,4結合、α-1,6結合、β-1,2結合、β-1,3結合、β-1,4結合、β-1,6結合等が挙げられ、単一の結合方式のみでも、2種以上の結合方式でも構わない。
【0021】
成分(B)としては、押出し造粒時にハンドリングしやすく、耐吸湿性に優れ、口腔内で良好な溶解性を得やすい点で、デキストリンが好ましい。
【0022】
成分(B)の含有量は、造粒性向上の観点から、本発明の顆粒組成物中に、3質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましく、13質量%以上が更に好ましい。成分(B)の含有量の上限値は成分(B)の種類により適宜設定可能であり、特に限定されないが、押出し造粒時のハンドリング性の観点から、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、18.6質量%以下が更に好ましい。かかる成分(B)の含有量の範囲としては、本発明の顆粒組成物中に、好ましくは3~30質量%であり、より好ましくは8~25.0質量%であり、更に好ましくは13~18.6質量%である。
【0023】
〔(C)糖アルコール〕
本発明の顆粒組成物は、成分(C)として糖アルコールを含有する。
成分(C)としては、例えば、単糖のアルコール、二糖のアルコール、三糖以上のアルコールを挙げることができる。成分(C)は、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
単糖のアルコールとしては、例えば、エリスリトール、キシリトール等のペンチトール、ソルビトール、マンニトール等のヘキシトール等が挙げられる。また、二糖のアルコールとしては、例えば、還元麦芽糖(マルチトール)、ラクチトール(還元乳糖)、還元パラチノース(イソマルト)、トレハロース、パラチノース等が挙げられる。三糖以上のアルコールとしては、例えば、マルトトリイトール、イソマルトトリイトール、パニトール等が挙げられる。
中でも、口腔内での溶解性、耐吸湿性、押出し造粒時のハンドリング性の観点から、単糖のアルコール、及び二糖のアルコールから選ばれる1以上が好ましく、二糖のアルコールがより好ましく、還元麦芽糖(マルチトール)が好ましい。
【0024】
成分(C)の含有量は、成分(A)由来の苦渋味抑制、造粒性の観点から、本発明の顆粒組成物中に、5質量%以上とするが、10質量%以上が好ましい。また、歩留まりの観点から、成分(C)の含有量を、好ましくは50質量%以下とするが、45.3質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましく、35質量%以下がより更に好ましく、28質量%以下がより更に好ましい。かかる成分(C)の含有量の範囲としては、本発
明の顆粒組成物中に、好ましくは5~50質量%であり、より好ましくは5~45.3質量%であり、更に好ましくは5~40質量%であり、より更に好ましくは5~35質量%であり、より更に好ましくは10~28質量%である。
【0025】
本発明の顆粒組成物は、造粒性を向上させる観点から、成分(A)と成分(C)との質量比[(C)/(A)]が、0.15以上が好ましく、0.18以上がより好ましく、0.3以上が更に好ましく、0.35以上がより更に好ましく、そして2以下が好ましく、0.8以下がより好ましく、0.6以下が更に好ましく、0.5以下がより更に好ましい。よって、本発明の顆粒組成物は、上記質量比[(C)/(A)]が、0.15~2であることが好ましく、0.18~0.8がより好ましく、0.3~0.6が更に好ましく、0.35~0.5がより更に好ましい。
【0026】
また、本発明の顆粒組成物は、成分(A)に対する、成分(B)及び成分(C)の合計の質量比[{(B)+(C)}/(A)]が、造粒性及び歩留まりの観点から、0.3以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、0.5以上が更に好ましく、また歩留まりの観点から、3.2以下が好ましく、2.8以下がより好ましく、1.0以下が更に好ましい。かかる質量比[{(B)+(C)}/(A)]の範囲としては、好ましくは0.3~3.2であり、より好ましくは0.4~2.8であり、更に好ましくは0.5~1.0である。
【0027】
〔(D)セルロース誘導体〕
本発明の顆粒組成物は、成分(D)としてセルロース誘導体を含有する。
ここで、本明細書において「セルロース誘導体」とは、置換基を有するセルロースをいい、置換基を有しないセルロース自体は含まれない。セルロース誘導体は、モノマー単位(グルコース)中の全ての水酸基の水素原子が置換基で置換される必要はなく、一部の水酸基の水素原子が置換基で置換されていればよい。モノマー単位中の置換基の個数は、通常1~5個であり、好ましくは1~3個であり、更に好ましくは1個又は2個である。
【0028】
成分(D)としては、例えば、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、カルボキシセルロース、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、又はそれらの塩を挙げることができる。成分(D)は、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0029】
塩としては、例えば、金属塩、酸付加塩、塩基との塩が挙げられる。金属塩としては、例えば、一価の金属(例えば、ナトリウム、カリウム)との塩、2価の金属(例えば、カルシウム、マグネシウム)との塩が挙げられる。酸付加塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸、リン酸)との塩、有機酸(例えば、酢酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、モノメチル硫酸)との塩が挙げられる。塩基との塩としては、例えば、無機塩基(例えば、アンモニア)との塩、有機塩基(例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、エタノールアミン、モノアルキルエタノールアミン、ジアルキルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン)との塩が挙げられる。塩としては、金属塩が好ましい。
【0030】
ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース及びアルキルセルロースにおけるアルキルは、鎖状でも、分岐鎖状でもよく、炭素数は1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~4が更に好ましい。なお、アルキルを2以上有する場合、同一であっても、異なっていてもよい。
【0031】
ヒドロキシアルキルセルロースとしては、例えば、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、ヒドロキシブチルセルロース、ヒドロ
キシペンチルセルロース、ヒドロキシヘキシルセルロースが挙げられる。
【0032】
カルボキシアルキルセルロースとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、カルボキシブチルセルロース、カルボキシペンチルセルロース、カルボキシヘキシルセルロースが挙げられる。
【0033】
アルキルセルロースとしては、例えば、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、プロピルセルロース、ブチルセルロース、ペンチルセルロース、ヘキシルセルロースが挙げられる。
【0034】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースは、ヒドロキシアルキル及びアルキルの双方を有するセルロースであり、例えば、ヒドロキシメチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシブチルメチルセルロースが挙げられる。
【0035】
中でも、押出し造粒時の造粒性に優れる点で、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及びヒドロキシアルキルセルロースから選択される1種以上が好ましく、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースから選択される1種以上が更に好ましい。さらに、カルボキシアルキルセルロース、好ましくはカルボキシメチルセルロースと併用することで、より良好な口腔内溶解性を付与することができる。なお、カルボキシアルキルセルロースは、塩であってもよく、例えば、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩(CMC-Na)を挙げることができる。
また、良好な口腔内溶解性を付与する観点から、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及びヒドロキシアルキルセルロースから選択される1種以上が好ましく、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースから選択される1種以上がより好ましく、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが更に好ましい。
【0036】
なお、成分(D)中に、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及びヒドロキシアルキルセルロースから選択される1種以上を含有する場合には、成分(D)中におけるヒドロキシアルキルアルキルセルロース及びヒドロキシアルキルセルロースの含有量は、造粒性向上の観点から、成分(D)の全量に対して、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、成分(D)がヒドロキシアルキルアルキルセルロース及びヒドロキシアルキルセルロースであってもよい。
【0037】
なお、成分(D)中に、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及びヒドロキシアルキルセルロースから選択される1種以上と、カルボキシアルキルセルロースと併用する場合には、成分(D)中におけるヒドロキシアルキルアルキルセルロース及びヒドロキシアルキルセルロースの含有量は、良好な口腔内溶解性を付与する観点から、成分(D)の全量に対して、30~80質量%が好ましく、32~51質量%がより好ましい。
【0038】
なお、成分(D)中に、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及びヒドロキシアルキルセルロースから選択される1種以上と、カルボキシアルキルセルロースと併用する場合には、成分(D)中におけるヒドロキシアルキルアルキルセルロース及びヒドロキシアルキルセルロースと、カルボキシアルキルセルロースの質量比{(ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及びヒドロキシアルキルセルロース)/(カルボキシアルキルセルロース)}は、良好な口腔内溶解性を付与する観点から、0.3~3が好ましく、0.5~1がより好ましい。
【0039】
成分(D)の含有量は、造粒性向上、溶解性付与の観点から、本発明の顆粒組成物中に
、0.2質量%以上が好ましく、0.5質量%が更に好ましく、そして5質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましい。かかる成分(D)の含有量の範囲としては、本発明の顆粒組成物中に、好ましくは0.2~5質量%であり、より好ましくは0.2~4質量%であり、更に好ましくは0.5~2質量%である。
【0040】
本発明の顆粒組成物は、成分(C)と成分(D)との質量比[(C)/(D)]が、良好な口腔内溶解性を付与する観点から、3以上が好ましく、7以上がより好ましく、8.5以上が更に好ましく、9以上がより更に好ましく、また造粒性を向上させる観点から、60以下が好ましく、55以下がより好ましく、35以下が更に好ましく、15以下がより更に好ましい。よって、本発明の顆粒組成物は、上記質量比[(C)/(D)]が、3~60であることが好ましく、7~55がより好ましく、8.5~35が更に好ましく、9~15がより更に好ましい。
【0041】
〔他の成分〕
本発明の顆粒組成物は、成分(A)、(B)、(C)及び(D)以外の他の成分を含有することができる。
他の成分としては、飲食品や医薬品などの最終的な製品において許容される成分であって、経口摂取可能な成分であれば特に限定されない。例えば、甘味料、酸味料といった矯味剤や、ビタミン類、ミネラル類、抗酸化剤、滑沢剤、着香剤等が挙げられる。他の成分は、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。他の成分の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜設定することができる。
【0042】
甘味料としては、例えば、単糖(ブドウ糖、果糖、ガラクトース等)、二糖(麦芽糖、乳糖、ショ糖等)、オリゴ糖(マルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等)、異性化糖(ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖等)、高甘味度甘味料(アセスルファムK、アスパルテーム、ステビア、スクラロース、ソーマチン等)等が挙げられる。
酸味料としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、酢酸、乳酸、フマル酸、グルコン酸、フィチン酸、コハク酸、リン酸、あるいはこれらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等が挙げられる。
滑沢剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、タルク、硬化油、ポリエチレングリコール、二酸化ケイ素、微粒二酸化ケイ素等が挙げられる。
【0043】
〔製品形態〕
本発明の顆粒組成物は、食品として提供されてもよいし、経口投与用の医薬品として提供されてもよいが、好ましくは食品である。また、本発明の顆粒組成物を打錠し、錠剤として用いてもよい。更に、本発明の顆粒組成物は、食品や医薬品用の容器や袋に収容してもよく、例えば、紙、プラスチック、ガラス、金属製の容器や袋等に収容する態様が挙げられる。また、1回の経口摂取量ごとに小分け包装してもよい。中でも、1回の経口摂取量(例えば、1~2g程度)ごとに小分け包装された形態(スティック包装、分包包装等)が好ましい。包材としては、通常、食品や医薬品に使用されているものであれば限定されないが、例えば、アルミ箔、合成樹脂(ポリエチレンテレフタレート等)、ラミネート紙等を組み合わせたものが使用できる。容器内及び包材内は、品質維持の観点から、窒素ガスを充填してもよい。
【0044】
〔用法〕
本発明の顆粒組成物は、水なし又は少量の水とともに経口摂取することが好ましく、少量の水としては、好ましくは100mL以下、更に好ましくは50mL以下、更に好ましくは20mL以下である。
【0045】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。例えば、本発明の顆粒組成物は、コーヒー豆抽出物、茶抽出物、及びローズマリー抽出物から選ばれる植物抽出物を高含有しつつも、造粒性に優れた顆粒組成物を提供する観点から、下記成分(A)~(D)を含有する顆粒組成物であることが好ましい。
【0046】
即ち、本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)及び(D);
(A)コーヒー豆抽出物、茶抽出物、及びローズマリー抽出物から選ばれる1種以上の植物抽出物 20~70質量%
(B)澱粉
(C)糖アルコール 5~50質量%、及び
(D)セルロース誘導体であって、当該セルロース誘導体中に30質量%以上のヒドロキシアルキルセルロースを含有するセルロース誘導体 0.2~5質量%
を含有する顆粒組成物を提供するものである。
【0047】
また、本発明の顆粒組成物は、コーヒー豆抽出物、茶抽出物、及びローズマリー抽出物から選ばれる植物抽出物を高含有しつつも、造粒性に優れた顆粒組成物を提供する観点から、下記成分(A)~(D)を含有し、成分(A)中の生理機能物質と生理機能物質以外の成分との質量比(生理機能物質/生理機能物質以外の成分)が0.4~0.8である顆粒組成物であることが好ましい。
【0048】
即ち、本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)及び(D);
(A)コーヒー豆抽出物、茶抽出物、及びローズマリー抽出物から選ばれる1種以上の植物抽出物 20~70質量%
(B)澱粉
(C)マルチトール 5~50質量%、及び
(D)セルロース誘導体であって、当該セルロース誘導体中に30質量%以上のヒドロキシアルキルセルロースを含有するセルロース誘導体 0.2~5質量%
を含有し、
成分(A)中の生理機能物質と生理機能物質以外の成分との質量比(生理機能物質/生理機能物質以外の成分)が0.4~0.8である、顆粒組成物を提供するものである。
【0049】
本発明の顆粒組成物は、コーヒー豆抽出物、茶抽出物、及びローズマリー抽出物から選ばれる植物抽出物を高含有しつつも、造粒性に優れ、かつ良好な口腔内溶解性が付与された顆粒組成物を提供する観点から、下記成分(A)~(D)を含有し、成分(A)中の生理機能物質と生理機能物質以外の成分との質量比(生理機能物質/生理機能物質以外の成分)が0.4~0.8であり、成分(C)と成分(D)との質量比[(C)/(D)]が4~60である顆粒組成物であることが好ましい。
【0050】
即ち、本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)及び(D);
(A)コーヒー豆抽出物、茶抽出物、及びローズマリー抽出物から選ばれる1種以上の植
物抽出物 20~70質量%
(B)澱粉
(C)マルチトール 5~50質量%、及び
(D)セルロース誘導体であって、当該セルロース誘導体中に30質量%以上のヒドロキシアルキルセルロースを含有するセルロース誘導体
を含有し、
成分(A)中の生理機能物質と生理機能物質以外の成分との質量比(生理機能物質/生理機能物質以外の成分)が0.4~0.8であり、かつ
成分(C)と成分(D)の質量比[(C)/(D)]が4~60である、顆粒組成物を提
供するものである。
【0051】
<顆粒組成物の製造方法>
本発明の顆粒組成物は、常法にしたがって製造することが可能であり、適宜の方法を採り得る。例えば、粉末原料の混合工程、混練工程及び造粒工程、必要により乾燥工程、整粒工程、篩分け工程に供することよって製造することができる。
【0052】
〔混合〕
まず、原料である、植物抽出物、澱粉、糖アルコール及びセルロース誘導体、必要に応じて他の成分を混合する。なお、原料の形態は、ハンドリング性の観点から、固体が好ましく、粉末が更に好ましい。原料の混合方法としては、原料の各成分を均一に混合できる方法であれば、いかなる方法でもよい。混合機械としては、例えば、コンテナミキサー、V型混合機、リボン型混合機、高速攪拌混合機(ハイスピードミキサー)等が挙げられる。混合温度は特に限定はされないが、10~35℃が好ましく、15~25℃がより好ましい。また、混合時間も特に限定されないが、0.5~5分間が好ましく、1~3分間がより好ましい。
【0053】
〔混練〕
次に、上記の原料混合物に、混練液として水性媒体を添加して混練する。水性媒体としては、水、エタノール、又は水とエタノールの混合液等が挙げられる。また、水とエタノールの混合液(エタノール水溶液)を用いる場合、その混合比は限定されず適宜選択できる。ここで、エタノール水溶液は、市販のエタノール製剤のほか、酒精を用いてもよい。酒精としては、食用として供されるものであれば特に限定はされない。例えば、澱粉質や糖類を含有する天然原料から酵母の酒精発酵作用で生成したもの、又はこれらの成分を含むものがあり、清酒、焼酎、ワイン、ウイスキー、ブランデー等の酒類、みりん等の発酵調味料等のように、エタノールを含有する液を用いることができる。原料混合物に対する水性媒体の添加量は、混練後の混合物が造粒機にて造粒できる量であれば特に限定はされない。また、上記の水性媒体(混練液)には、必要により結合剤を添加してもよく、例えば、単糖類、二糖類、多糖類、セルロース類、糖アルコール類、又はこれらの2種以上の混合物等が挙げられ、製剤学的に許容できるものであれば特に限定はされない。また、添加量も造粒が可能である量であれば特に制限はない。
【0054】
〔造粒〕
次に、上記混練後の混合物を造粒する。造粒方法としては公知の方法を採用することができるが、所望の粒子径の顆粒を得やすく、粒子径の制御が容易であることから、押出し造粒が好ましい。押出し造粒とは、水性媒体を加えて混練し、可塑性を付与した粉末を多数の穴のあいたスクリーン又は所定の孔径を有するダイスからスクリュー、ローラー等により押出して造粒する方法をいう。造粒機械としては、例えば、横押出し式造粒機、前押し出し式造粒機、ドーム押出し式造粒機、ディスクペレッター式造粒機、リングダイ式造粒機、バスケット式造粒機、オシレーティング式造粒機、シリンダー式造粒機等が挙げられる。造粒条件は、適宜設定可能であるが、摂取時の誤嚥防止、即溶性の良好な顆粒嵩比重を得るために、孔径0.5~2mm程度の押出し孔を用いることが好ましく、0.8~1.2mmの押し出し孔を用いることがより好ましい。
【0055】
〔乾燥〕
造粒物の乾燥は、通常の乾燥方法によって行うことができる。乾燥機としては、例えば、恒温乾燥機、通風乾燥機、流動層乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機等が挙げられる。乾燥条件は、適宜設定することが可能である。
【0056】
〔整粒・篩分け〕
必要に応じて、造粒物を整粒工程に供することにより、所望の粒子径に制御することができる。例えば、所定の孔径を有する篩、電動式篩等で篩過させればよい。
【0057】
このようにして、本発明の顆粒組成物を簡便に製造することができるが、好適な態様として、次の製造方法を挙げることができる。
【0058】
即ち、下記の工程(1)~(4):
(1)次の成分(A)、(B)、(C)及び(D)を混合する工程,
(A)植物抽出物 20~70質量%
(B)澱粉
(C)糖アルコール 5~50質量%、及び
(D)セルロース誘導体
(2)工程(1)後の混合物に水系媒体を添加し、混錬する工程、
(3)工程(2)後の混錬物を、孔径0.5~2mmの押出し孔を用いて押出し造粒する工程、並びに
(4)工程(3)後の造粒物を乾燥し、顆粒組成物を得る工程
を含む、顆粒組成物の製造方法である。
【0059】
また、上記した製造方法においては、造粒性の観点から、成分(A)中の生理機能物質と生理機能物質以外の成分との質量比(生理機能物質/生理機能物質以外の成分)を、上記した範囲内に調整することができる。また、良好な口腔内溶解性を付与する観点、造粒性を向上させる観点から、成分(C)と成分(D)の質量比[(C)/(D)]を、上記した範囲内に調整してもよい。更に、造粒性向上の観点から、セルロース誘導体として、当該セルロース誘導体中にヒドロキシアルキルセルロースを上記した量含有するセルロース誘導体を使用することもできる。なお、成分(A)、(B)、(C)及び(D)の具体的態様は、上記において説明したとおりである。
【実施例
【0060】
以下、実施例及び比較例によって本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
【0061】
1.植物抽出物の分析
(1)非重合体カテキン類の分析
試料溶液をフィルター(0.45μm)で濾過し、高速液体クロマトグラフィ(型式SCL-10AVP、島津製作所製)を用い、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラムL-カラムTM ODS(4.6mmφ×250mm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着し、カラム温度40℃にてグラジエント法により分析した。非重合体カテキン類の標準品として、栗田工業製のものを使用し、検量線法で定量した。移動相A液は酢酸を0.1mol/L含有する蒸留水溶液、B液は酢酸を0.1mol/L含有するアセトニトリル溶液とし、試料注入量は20μL、UV検出器波長は280nmの条件で行った。なお、グラジエントの条件は、以下のとおりである。
【0062】
濃度勾配条件
時間(分) A液濃度(体積%) B液濃度(体積%)
0 97% 3%
5 97% 3%
37 80% 20%
43 80% 20%
43.5 0% 100%
48.5 0% 100%
49 97% 3%
60 97% 3%
【0063】
(2)クロロゲン酸類、ロスマリン酸の分析
試料溶液をフィルター(0.45μm)で濾過し、高速液体クロマトグラフ(型式LC-20 Prominence,島津製作所製)を用い、カラム〔Cadenza CD-C18(3μm,4.6mmφ×150mm,Imtakt)〕を装着し、カラム温度35℃にてグラディエント法により行った。移動相C液は酢酸を0.05mol/L、酢酸ナトリウムを0.01mol/L、及びHEDPOを0.1mmol/L含有する5%アセトニトリル溶液、D液はアセトニトリル溶液とし、流速は1mL/分、試料注入量は10μL、UV検出器波長は325nmの条件で行った。なお、グラディエントの条件は、以下のとおりである。
【0064】
濃度勾配条件
時間(分) C液濃度(体積%) D液濃度(体積%)
0 100% 0%
10 100% 0%
15 95% 5%
20 95% 5%
22 92% 8%
50 92% 8%
52 10% 90%
60 10% 90%
60.1 100% 0%
70 100% 0%
【0065】
(3)乾燥減量
試料1gを内径4cmのアルミ皿に万遍なく広げ、105℃オーブンにて3時間加熱後、試料の重量を測定して乾燥減量を算出した。
【0066】
乾燥減量[%]=(P-Q)/P×100
【0067】
〔式中、Pは乾燥前の試料重量を示し、Qは乾燥後の試料重量を示す。〕
【0068】
(4)メジアン径
Camsizer XT(ヴァーダー・サイエンティフィック社製)に試料3gを供し、下記の測定条件により、試料をデジタル画像解析することでメジアン径(D50)を測定した。なお、メジアン径は同試験品顆粒を3回測定した値の平均をとった。
【0069】
・Dispersion Pressure [kPa]:30
・測定範囲 :1μm~2000μm
・測定粒子数:約100万粒子
・測定停止 :粒子が写っていない画像数が150(1秒間に300画像撮影)
【0070】
2.澱粉の分析
試料、及び各濃度の標準溶液1.5mLに、1N-NaOH水溶液を250μLと0.5MのPMP(3-メチル-1-フェニル-5-ピラゾロン)-メタノール溶液を500μL加え、70℃で30分加熱する。得られた溶液に対し、1N-HCl水溶液を250μLにて中和し、5mLのクロロホルムを加え分配し、水層を測定試料とする。上記操作により得られた測定試料について、高速液体クロマトグラフ質量分析を用い、下記条件に
て測定する。
【0071】
分析条件
・HPLC装置:型式ACQUITY UPLC、Waters製
・MS装置 :型式SYNAPT G2-S HDMS型、Waters製
・イオン化 :ESI
・質量範囲 :m/z 100-2500
・カラム :型式Unison UK-C18 UP(2.0×100mm,3μm)、イ
ンタクト社製
・移動相 :E液:ギ酸0.05%水溶液、F液:アセトニトリル(%F=15→90)・流量 :0.6mL/min
・注入量 :1μL
【0072】
3.糖アルコールの分析
糖アルコールの分析は、HPLC(高速液体クロマトグラフィ)法により、次に示す方法にしたがって行った。
分析機器の装置構成は次の通りである。
・検出器 :示差屈折計RID-10A(島津製作所社製)
・カラム :Shodex Asahipak NH2P-50 4E、φ4.6mm×250mm(昭和電工社製)
【0073】
分析条件は次の通りである。
・カラム温度:室温
・移動相 :アセトニトリル及び水の混液(81:19 体積比)
・流量 :1mL/min
・試料注入量:20μL
【0074】
以下の手順にて分析用試料を調製した。
試料を3g量りとり、これに水10mLを加えて溶解し中和した溶液を、超音波洗浄器を用いて超音波抽出を30分間行った。その溶液に水を加えて20mLに定容した。その溶液をメンブレンフィルターでろ過し、試料溶液とした。その試料溶液を高速液体クロマトグラフィ分析に供した。
【0075】
4.セルロース誘導体の分析
セルロース誘導体の分析は、HPLC(高速液体クロマトグラフィ)法により、次に示す方法にしたがって行った。
分析機器の装置構成は次の通りである。
・検出器 :Shodex RI
・カラム :Shodex OHpac SB-806M HQ(8.0mm I.D.×300mm)×2
【0076】
分析条件は次の通りである。
・カラム温度:40℃
・移動相 :0.1M NaCl aq.
・流量 :1mL/min
・試料注入量:20μL
【0077】
5.顆粒組成物の評価
(1)造粒判定
下記の要件(a)~(c)のすべてを満たす場合は、「造粒可」と判断し、(a)~(c)のうちのいずれか1以上を満たさない場合に、「造粒不可」と判断した。
【0078】
(a)造粒時、押出し造粒機に表示される造粒機負荷[電流値:A]が限度(3.6A)を越えないこと
(b)顆粒組成物のメジアン径(D50)が0.5~2.0mmの範囲内にあること
(c)歩留まりが70%以上であること
【0079】
(a)を満たさない場合には造粒することができず、また(b)及び(c)のうち1以上を満たさない場合には服用時のムセ等の課題を生ずる可能性があることから、所望の造粒物を得ることができないと判断した。
【0080】
(i)メジアン径
Camsizer XT(ヴァーダー・サイエンティフィック社製)に試験品顆粒3gを供し、下記の測定条件により、試験品顆粒をデジタル画像解析することでメジアン径(D50)を測定した。なお、メジアン径は同試験品顆粒を3回測定した値の平均をとった。
【0081】
・Dispersion Pressure [kPa]:30
・測定範囲 :1μm~2000μm
・測定粒子数:約100万粒子
・測定停止 :粒子が写っていない画像数が150(1秒間に300画像撮影)
【0082】
(ii)歩留まり
各実施例及び比較例に記載の押出し造粒にて得た試験品顆粒を55℃恒温槽で30分間静置乾燥したのち、30メッシュ(目開き500μm)のステンレス篩を用いて試験品顆粒を篩別し、30メッシュ篩を篩過しなかった顆粒の重量の割合から、下記式により歩留まりを算出した。
【0083】
歩留まり[%]=(30メッシュオンの顆粒重量/回収した全顆粒の重量)×100
【0084】
(2)90%溶解時間
電気伝導時計(HORIBA ES-71)を用い、200gのイオン交換水を満たしたビーカー
に試験品顆粒1.54gを加えた時の電気伝導度[mS/m]の変化を2秒毎に経時的に測
定した。試験品顆粒を溶解後、電気伝導度の値が10秒以上変動しなくなったポイントを試験品顆粒の100%溶解点とした。100%溶解点の電気伝導度の値に0.9を乗じて、その値を試験品顆粒の90%溶解点とし、90%溶解点の電気伝導度に達した時点を90%溶解時間とした。なお、電気伝導度の値は、小数点以下はフレの範疇とする。
【0085】
6.原料
本実施例において使用した原料を以下に示す。
・糖アルコール:レシス微粉(三菱商事ライフサイエンス株式会社製、マルチトール99.5%含有)
・澱粉:サンデック#30(三和澱粉工業株式会社製、DE=2~5)
・セルロース誘導体:HPMC(信越化学株式会社製、品番SE-03)
CMC(日本製紙株式会社製、品番SLD-FM)
HPC(日本曹達株式会社製、品番セルニーSL)
MC(信越化学株式会社製、品番MCE-4)
・矯味剤(バランス):アスパルテーム(味の素ヘルシーサプライ株式会社製)
・水性媒体:99.5%エタノール(日本アルコール販売)
【0086】
製造例1
植物抽出物I
90℃に加温した10kgの湯中に緑茶葉を400g加え、穏やかに攪拌しながら5分間抽出を行なった。抽出後2号ろ紙にて濾過を行ない、濾過液を速やかに室温まで冷却した。この緑茶抽出液を遠心分離し減圧乾燥後、凍結乾燥して緑茶抽出物を得た。緑茶抽出物は、乾燥減量が4.5質量%であった。この緑茶抽出物を「植物抽出物I」とする。
【0087】
製造例2
植物抽出物II
L値50のコーヒー豆(ベトナム)400gをドリップ抽出器に仕込み、ドリップ抽出器下部に底湯0.25Lをはった後、ドリップ抽出器上部からシャワーにより1.02Lの温水を供給し、10分間その状態を保持した。保持後にシャワーにより温水を供給しながら、ドリップ抽出器下部から12.5g/10秒の速度で引抜を行った。採液量が2.4Lに達したときに採液を止め、本採液を抽出液とした。得られた抽出液を、スプレードライヤーを用いて乾燥し、粉末状のコーヒー豆抽出物を得た。コーヒー豆抽出物は、乾燥減量が3.9質量%であった。このコーヒー豆抽出物を「植物抽出物II」とする。
【0088】
製造例3
植物抽出物III
粉末のローズマリー抽出物(日農化学工業株式会社製)を使用した。このローズマリー抽出物を「植物抽出物III」とする。
【0089】
各植物抽出物の分析結果を表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
実施例1、2
粉末の植物抽出物I又は植物抽出物IIと、マルチトールと、デキストリンと、HPMC
と、矯味剤(バランス)とを、表2に表す割合(質量%)で均一に混合して粉末混合物を調製した。そこに、粉末混合物に対して20質量%の99.5%エタノールを混練液として添加し、均一にいきわたるよう混錬した。混練後の粉末混合物を押出し造粒機(株式会社ダルトン製、マルチグランMG-55-1)を用いて、孔径0.8mmのスクリーンにて造粒し、得られた造粒物を55℃恒温槽で30分間静置乾燥し、顆粒組成物を得た。そして、得られた顆粒組成物について、分析、評価を行った。その結果を表2に示す。なお、矯味剤(バランス)として、処方中の他原料との粒子径が同等であり、その他成分の中で比較的造粒性に影響を与えにくいと考えられるアスパルテームを用いた。
【0092】
【表2】
【0093】
実施例3~5
粉末の植物抽出物II、マルチトール、デキストリン、HPMC及び矯味剤(バランス)の配合量を表3に示す量に変更したこと以外は、実施例2と同様の操作により、顆粒組成物を得た。そして、得られた顆粒組成物について、実施例2と同様に分析、評価を行った。その結果を、実施例2の結果とともに表3に示す。
【0094】
【表3】
【0095】
実施例6
粉末の植物抽出物I、マルチトール、デキストリン、HPMC及び矯味剤(バランス)
の配合量を表4に示す量に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により、顆粒組成物を得た。そして、得られた顆粒組成物について、実施例1と同様に分析、評価を行った。その結果を表4に示す。
【0096】
比較例1
粉末の植物抽出物I、マルチトール、デキストリン及びHPMCに加え、更にフェルラ
酸、結晶セルロース、ホタテ末、微硫化二酸化ケイ素及びステアリン酸カルシウムを表4に示す割合で配合したこと以外は、実施例1と同様の操作により、顆粒組成物を得た。そして、得られた顆粒組成物について、実施例1と同様に分析、評価を行った。その結果を表4に示す。
【0097】
【表4】
【0098】
実施例7及び比較例2
粉末の植物抽出物II、マルチトール、デキストリン、HPMC及び矯味剤(バランス)の配合量を表5に示す量に変更したこと以外は、実施例2と同様の操作により、顆粒組成物を得た。そして、得られた顆粒組成物について、実施例2と同様に分析、評価を行った。その結果を表5に示す。
【0099】
【表5】
【0100】
実施例8~12
粉末の植物抽出物II、マルチトール、デキストリン、HPMC及び矯味剤(バランス)の配合量を表6に示す量に変更したこと以外は、実施例2と同様の操作により、顆粒組成物を得た。そして、得られた顆粒組成物について、実施例2と同様に分析、評価を行った。その結果を表6に示す。
【0101】
【表6】
【0102】
実施例13~15及び比較例3
HPMC及び矯味剤(バランス)の配合量を表7に示す量に変更したこと以外は、実施例2と同様の操作により、顆粒組成物を得た。そして、得られた顆粒組成物について、実施例2と同様に分析、評価を行った。その結果を、実施例2及び11の結果とともに表7に示す。
【0103】
実施例16~18
HPMC及び矯味剤(バランス)の配合量を表7に示す量に変更したこと以外は、実施例4と同様の操作により、顆粒組成物を得た。そして、得られた顆粒組成物について、実施例4と同様に分析、評価を行った。その結果を、実施例4の結果とともに表7に示す。
【0104】
【表7】
【0105】
実施例19
矯味剤(バランス)の配合量を表8に示す量に変更し、更に表8に示す陽のCMCを配合したこと以外は、実施例11と同様の操作により、顆粒組成物を得た。そして、得られた顆粒組成物について、実施例11と同様に分析、評価を行った。その結果を、実施例11の結果とともに表8に示す。
【0106】
実施例20
矯味剤(バランス)の配合量を表8に示す量に変更し、更に表8に示す陽のCMCを配合したこと以外は、実施例2と同様の操作により、顆粒組成物を得た。そして、得られた顆粒組成物について、実施例2と同様に分析、評価を行った。その結果を、実施例2の結果とともに表8に示す。
【0107】
実施例21、22
矯味剤(バランス)の配合量を表8に示す量に変更し、更に表8に示す陽のCMCを配合したこと以外は、実施例17と同様の操作により、顆粒組成物を得た。そして、得られた顆粒組成物について、実施例17と同様に分析、評価を行った。その結果を、実施例17の結果とともに表8に示す。
【0108】
実施例23、24
矯味剤(バランス)の配合量を表8に示す量に変更し、更に表8に示す陽のCMCを配合したこと以外は、実施例4と同様の操作により、顆粒組成物を得た。そして、得られた顆粒組成物について、実施例4と同様に分析、評価を行った。その結果を、実施例4の結果とともに表8に示す。
【0109】
【表8】
【0110】
実施例25~27
マルチトール、及び矯味剤(バランス)の配合量を表9に示す量に変更したこと以外は、実施例11と同様の操作により、顆粒組成物を得た。そして、得られた顆粒組成物について、実施例11と同様に分析、評価を行った。その結果を、実施例11の結果とともに表9に示す。
【0111】
【表9】
【0112】
実施例28、29
HPMCに代えて、HPC又はMCを用いたこと以外は、実施例2と同様の操作により、顆粒組成物を得た。そして、得られた顆粒組成物について、実施例2と同様に分析、評価を行った。その結果を、実施例1、2の結果とともに表10に示す。
【0113】
【表10】
【0114】
実施例30
粉末の植物抽出物IIに代えて、粉末の植物抽出物IIIを用いたこと以外は、実施例2と
同様の操作により、顆粒組成物を得た。そして、得られた顆粒組成物について、実施例2と同様に分析、評価を行った。その結果を、実施例1、2の結果とともに表11に示す。
【0115】
【表11】
【0116】
表2~11から、植物抽出物に、澱粉、糖アルコール及びセルロース誘導体を含有させることで、植物抽出物を高濃度に含有しながらも造粒化できるだけでなく、口腔内で即時に溶解可能な顆粒組成物が得られることがわかる。また、表8から、HPMCに加えてCMCを配合することで、顆粒の溶解性をより一層向上できることができる。