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  • 特許-生活パターン判定装置 図1
  • 特許-生活パターン判定装置 図2A
  • 特許-生活パターン判定装置 図2B
  • 特許-生活パターン判定装置 図2C
  • 特許-生活パターン判定装置 図2D
  • 特許-生活パターン判定装置 図3
  • 特許-生活パターン判定装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】生活パターン判定装置
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/30 20180101AFI20230512BHJP
   G16H 20/30 20180101ALI20230512BHJP
【FI】
G16H50/30
G16H20/30
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019087855
(22)【出願日】2019-05-07
(65)【公開番号】P2020184168
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高柳 直人
(72)【発明者】
【氏名】水本 理恵
【審査官】今井 悠太
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-097401(JP,A)
【文献】特開2009-301286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活動量計で計測された歩行データから生活パターンの変化を判定する判定装置であって、
歩行データの記憶機能、
所定日数の評価期間と、評価期間よりも過去の所定日数の対照期間のそれぞれにおける歩行データの度数分布を算出する機能、
評価期間と対照期間のそれぞれの歩行データの度数分布において、度数が上位1位から所定順位までの階級を抽出する機能、
対照期間で抽出された階級と評価期間で抽出された階級の変化に応じて評価期間での生活パターンの変化の有無を判定する機能、及び
判定結果を出力する機能を備えた判定装置。
【請求項2】
前記階級を抽出する機能により抽出する階級を、度数の上位3位又は4位までの階級とする請求項1記載の判定装置。
【請求項3】
対照期間を、評価期間に連続した所定日数の第1の対照期間と、第1の対照期間に連続した所定日数の第2の対照期間とし、第1の対照期間及び第2の対照期間で抽出された階級と、評価期間で抽出された階級に異なる階級があった場合に評価期間で生活パターンが変化したと判定する請求項1又は2に記載の判定装置。
【請求項4】
対照期間に対して評価期間で新たに抽出された階級があったときに生活パターンが変化したと判定する請求項1~3のいずれかに記載の判定装置。
【請求項5】
対照期間と評価期間とで抽出された階級数が異なる場合に、対照期間に対して評価期間で新たに抽出された階級があり、かつ対照期間で抽出されていたが評価期間で抽出されなかった階級があったときに生活パターンが変化したと判定する請求項1~3のいずれかに記載の判定装置。
【請求項6】
歩行データとして、日々の朝5~10時の範囲内の歩数を使用する請求項1~5のいずれかに記載の判定装置。
【請求項7】
所定日数を7の倍数の日数とする請求項1~6のいずれかに記載の判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
歩行データから生活パターンを判定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
日々の歩数や活動量を適正に維持することは健康の維持管理に有用である。
例えば、将来の変形性膝関節症発症を予防するため、1日の平均歩数を6000歩以上維持することが重要であるとの報告がある(非特許文献1)。また、将来の骨粗鬆症発症を予防するため、1日の歩数を7000歩以上とし、かつ中強度活動時間(3METs以上の活動時間に相当)を7.5分以上維持する必要があるとの報告もある(非特許文献2)。この報告では、骨粗鬆症の他に認知症、うつ病、高血圧、糖尿病などが活動量に関連するとされている。
【0003】
そこで、携帯端末のユーザーが該携帯端末で日々の活動量を計測し、活動量に関するアドバイスの提供地に出向くようにユーザーの行動を誘導し、ユーザーの活動量に対するモチベーションを向上させるシステムが提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、被験者の日々の活動量を計測して蓄積し、予め登録されている活動量のデータと生活パターンとの関係に基づいて被験者の活動量の計測データから生活パターンを判定し、生活パターンの改善についてアドバイスを行うシステムが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許6428262号公報
【文献】特許4449617号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】White DK, et al. Daily walking and the risk of incident functional limitation in knee osteoarthritis: an observational study. Arthritis Care Res, 2014
【文献】青柳幸利「あらゆる病気は歩くだけで治る!」(出版社:SBクリエイティブ)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2における被験者の生活パターンの判定は、被験者の日々の活動量の平均から、予め収集されている一般的な活動量と生活パターンとの関係に基づいて生活パターンを判定し、また、被験者の日々の活動量の平均の履歴から被験者の生活パターンの変化を判定するものでる。しかしながら、被験者が日常の生活パターンを変えていない場合でも、日々の歩数が500歩程度は変動するため、日々の活動量の平均値を比較するだけでは被験者の生活パターンの変化の有無を正確に判定することはできない。
【0008】
これに対し、本発明は歩行データに基づいて生活パターンの変化の有無を正確に判定できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、歩数、歩行速度等の歩行データについて、所定日数の評価期間の度数分布を調べると共に、それよりも過去の所定日数の対照期間の歩行データの度数分布を調べ、対照期間に対して評価期間において度数が上位の階級に変化があった場合に生活パターンが変化していると判定できることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、本発明は、活動量計で計測された歩行データから生活パターンの変化を判定する判定装置であって、
歩行データの記憶機能、
所定日数の評価期間と、評価期間よりも過去の所定日数の対照期間のそれぞれにおける歩行データの度数分布を算出する機能、
評価期間と対照期間のそれぞれの歩行データの度数分布において、度数が上位1位から所定順位までの階級を抽出する機能、
対照期間で抽出された階級と評価期間で抽出された階級の変化に応じて評価期間での生活パターンの変化の有無を判定する機能、及び
判定結果を出力する機能を備えた判定装置、を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、評価期間における歩行データの度数分布と、対照期間における歩行データの度数分布とを対比し、度数が上位の階級の変化に基づいて生活パターンの変化を判定するので、日常生活における日々の歩行データのばらつきによらず、生活パターンの変化の有無を判定することができ、度数分布の変化のパターンによっては生活パターンがどのように変化しているかも判定することができ、その判定結果を被験者に知らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、28日間における1日あたりの歩数の度数分布を示すヒストグラムである。
図2A図2Aは、評価期間と第1の対照期間と第2の対照期間の度数分布において度数が上位の階級を示した表である。
図2B図2Bは、評価期間と対照期間の度数分布において度数が上位の階級を示した表である。
図2C図2Cは、評価期間と対照期間の度数分布において度数が上位の階級を示した表である。
図2D図2Dは、評価期間と対照期間の度数分布において度数が上位の階級を示した表である。
図3図3は、お知らせ機能のフローである。
図4図4は、被験者への判定結果の通知画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
(全体構成)
本発明の生活パターンの判定装置は、活動量計で計測された被験者の所定日数の歩行データの度数分布に基づいて被験者の生活パターンにおける変化の有無を正確に判定し、さらには、歩行データの度数分布の変化のパターンによっては生活パターンがどのように変化しているかも判定することができる装置であり、以下の(i)~(v)の機能を備えている。
【0014】
(i)活動量計で計測された歩数、歩行速度、運動強度、3METs(Metabolic equivalents)以上或いは3METs未満の活動時間、座位時間、活動消費カロリー、総消費カロリー等の歩行データ(活動量データとも言う)を、活動量計から直接的に、又は通信手段を介して受け、記憶する記憶機能、
(ii)評価期間と、評価期間よりも過去の対照期間のそれぞれにおける歩行データの度数分布を算出する度数分布算出機能、
(iii)評価期間と対照期間のそれぞれにおいて、度数分布における上位1位から所定順位までの階級を抽出する上位階級抽出機能、
(iv)対照期間で抽出された階級と評価期間で抽出された階級に異なる階級があった場合に評価期間で生活パターンが変化したと判定する判定機能、
(v)判定結果を出力するお知らせ機能、
【0015】
本発明の装置は、演算装置に上述の機能を組み込むことで得ることができる。
【0016】
ここで、活動量計としては、被験者が日常生活で携帯することのできる、3軸の加速度を計測する加速度センサを内蔵し、加速度センサによる加速度の計測に基づき、歩行データとして、歩数、歩行速度、運動強度、3METs以上或いは3METs未満の活動時間、座位時間、活動消費カロリー、総消費カロリー等の時系列データを出力できるものが好ましい。このような活動量計としては、例えば、パナソニック社製デイカロリEW-NK10等を使用することができる。
【0017】
また、度数分布を計算する歩行データは、例えば、1日の総歩数や歩行速度の平均等とすることができるが、必ずしも1日中の歩行データでなくてもよく、所定時間帯の歩行データとしてもよい。例えば、勤労者の朝の通勤時間帯を考慮した朝5~10時の範囲内の所定時間、好ましくは朝6~9時の歩行データを使用することができる。
【0018】
一方、本発明において生活パターンの変化とは、歩行データに現れる生活パターンの変化であって、歩行習慣の変化ともいうことができる。例えば、出勤において電車やバスに乗らずに歩く区間を設けている生活パターンから、その区間を歩かなくなった生活パターンへの変化、日中のいずれかの時間帯に散歩の時間がある生活パターンから散歩の時間がない生活パターンへの変化、スポーツを楽しむ曜日を設けていた生活パターンからスポーツをしない生活パターンへの変化、又はこれらの逆パターンの変化などをあげることができる。
【0019】
(度数分布算出機能)
本発明の装置は、度数分布算出機能により、所定日数の評価期間と、評価期間よりも過去の所定日数の対照期間のそれぞれについて、歩行データの度数分布を算出する。
【0020】
ここで、所定日数は、連続した日にちで、7の倍数の日数とすることが好ましい。これにより、評価期間にも対照期間にも1週間の各曜日が同数ずつ含まれるので、評価期間の歩行データと対照期間の歩行データとを対比する場合に、曜日によって歩行データが変動することによる影響を解消することができる。また、所定日数は3~5週間とすることが好ましく、特に約1ヶ月単位で生活パターンの変化を調べる点から4週間(28日)とすることが好ましい。
【0021】
評価期間は、直近の所定日数とし、対照期間は、評価期間より過去で評価期間に連続した所定日数の期間とすることが好ましく、特に、図2に示すように、対照期間として、評価期間に連続した所定日数の第1の対照期間と、第1の対照期間に連続した所定日数の第2の対照期間を設け、後述するように、第1の対照期間及び第2の対照期間の歩行データの度数分布と評価期間の歩行データの度数分布とを対比することが好ましい。これにより、評価期間の歩行データの度数分布を第1の対照期間の歩行データの度数分布とだけ対比する場合に比して、生活パターンが確実に変化した場合だけを、生活パターンが変化したと判定することができる。また、直近の所定日数を評価期間とし、それよりも過去の所定日数を対照期間とすることにより、生活パターンが変化したタイミングで生活パターンに変化があったことを検知することが可能となる。
【0022】
評価期間及び対照期間における歩行データの度数分布を算出するにあたり、階級幅は歩行データの日々の変動幅に応じて適宜設定することが好ましい。例えば、歩行データとして1日の歩数を使用する場合、生活パターンが同じでも日々の歩数は、1日あたりの平均歩数±500歩程度で変動するので、所定日数における1日の歩数の度数分布、又は日々の所定時間帯の歩数の度数分布を算出する場合には、階級幅を1000~4000歩とすることが好ましい。階級幅を過度に狭くすると生活パターンの変化に対してノイズが多くなり、反対に階級幅を過度に広くすると、生活パターンの変化が度数分布に反映されにくくなる。
【0023】
また、度数分布はヒストグラムとして出力できるようにすることが、評価期間と対照期間の度数分布のパターンの違いを視覚的に理解しやすくなるので好ましい。例えば、図1は、28日間の評価期間における1日当たりの歩数をヒストグラムに表したものである。同様に、歩行データとして1日の歩行速度を使用する場合、階級幅は0.125~0.500km/hとすることが好ましい。
【0024】
(上位階級抽出機能)
上位階級抽出機能では、評価期間と対照期間のそれぞれの度数分布において上位1位から所定順位までの階級を抽出する。評価期間と対照期間のそれぞれにおいて抽出する階級数は、上位3位又は4位までとすることが、評価期間の生活パターンが対照期間の生活パターンに比して変化したか否かを正確に判定する点で好ましい。これに対し、上位1位だけ又は上位2位までを対比した場合には、生活パターンは変化していないが、歩数に変化があった場合を生活パターンが変化したと誤判定しやすくなる。
【0025】
(判定機能)
判定機能では、対照期間の歩行データの度数分布で抽出された上位の階級と評価期間の歩行データの度数分布で抽出された上位の階級との変化に応じて評価期間での生活パターンの変化の有無を判定する。この場合、上位の階級は、上述の通り上位3位又は4位までとすることが好ましい。また、度数が同じ階級が複数あった場合は、その複数の階級が同じ順位となる。
【0026】
対照期間は、評価期間よりも過去で評価期間と同じ所定日数の単一の期間としてもよいが、評価期間より過去で評価期間に連続した所定日数の第1の対照期間と、第1の対照期間より過去で第1対照期間に連続した所定日数の第2の対照期間の双方を対照期間とし、第1の対照期間及び第2の対照期間で抽出された上位の階級と、評価期間で抽出された上位の階級に異なる階級があった場合に評価区間で生活パターンが変化したと判定することが好ましい。
【0027】
評価期間を第1の対照期間と第2の対照期間の双方と対比する場合に、生活パターンの変化の有無の判定基準としては、(1)第1の対照期間及び第2の対照期間で抽出された上位の階級に対し、評価期間で新たに抽出された階級があった場合に生活パターンが変化したと判定してもよく、あるいは、(2)第1の対照期間及び第2の対照期間で抽出された上位の階級に対し、評価期間で新たに抽出された階級があり、かつ、評価期間で抽出されなくなった階級があった場合に生活パターンが変化したと判定してもよい。例えば、図2Aにおいて、第2の対照期間では度数分布の第1順位の階級が4001~6000歩、第2順位が2001~4000歩、第3順位が6001~8000歩と8001~1000歩であり、第1の対照期間では、第1順位が2001~4000歩と4001~6000歩であり、第3順位が6001~8000歩である。これに対し、評価期間では第1順位が2001~4000歩であり、第2順位が4001~6000歩であり、第3順位が1~2000歩である。したがって、第1の対照期間にも第2の対照期間にも度数が上位3位までに入っていないが、評価期間では上位3位までに入った階級として、1~2000歩の階級があり、また、第1対照期間でも第2対照期間でも6001~8000歩の階級が上位3位までの階級にあるが、評価期間では6001~8000歩の階級が上位3位までの階級からなくなっている。そこで、(2)の判定基準により、評価期間では対照期間に対して生活パターンが変化していると判定することができ、さらに評価期間では対照期間に対して1日の歩数が減少する生活パターンになっていると判定できる。
【0028】
対照期間を評価期間と同じ所定日数の単一の期間とする場合に、上位の度数として抽出された階級数が対照期間と評価期間とで同じ場合と異なる場合とで、生活パターンの変化の有無の判定基準を変えても良い。例えば、図2Bに示すように、上位の階級として抽出された階級数が対照期間と評価期間とで同じ場合には、対照期間に対して評価期間で新たに抽出された階級があるときには、対照期間では上位の度数として抽出されていたが評価期間では上位の度数として抽出されなくなった階級が必ず生じるので、対照期間に対して評価期間で新たに抽出された上位の階級があった場合に生活パターンが変化したと判定することができる。一方、図2C図2Dに示すように、上位の階級として抽出された階級数が対照期間と評価期間とで異なる場合には、上述と同様に(1)対照期間に対して評価期間で新たに抽出された階級があったときに生活パターンが変化したと判定してもよく、あるいは、(2)対照期間に対して評価期間で新たに抽出された階級があり、かつ対照期間で抽出されていたが評価期間で抽出されなかった階級があったときに生活パターンが変化したと判定してもよい。例えば、図2Cに示すように、対照期間に対して評価期間で、度数が上位の階級として新たに歩数6001~8000が抽出されたが、対照期間で上位の度数として抽出されていた階級が評価期間でも引き続き抽出された場合には、上記(1)の判定基準により生活パターンが変化したと判定してもよく、上記(2)の判定基準により生活パターンは変化していないと判定してもよい。また、図2Dに示すように対照期間に対して評価期間で、新たに歩数1~2000が抽出され、対照期間で上位の度数として抽出されていた歩数6001~8000と歩数8001~10000の階級が評価期間では抽出されなかった場合には、(1)、(2)いずれの判定基準でも生活パターンが変化したと判定される。
(2)の判定基準によれば、度数分布に表れるパターンが(1)よりも大きく変化した場合に生活パターンが変化したと判定することができる。
【0029】
(お知らせ機能)
お知らせ機能では、上述の判定結果を任意のディスプレイに出力し、又は印刷し、被験者に知らせる。この場合、複数種の歩行データのそれぞれについて、度数が上位の階級を対照期間と評価期間とで調べ、それらの結果に基づいて生活パターンの変化を判定してもよい。また、被験者の歩行データから、評価期間と第1の対照期間と第2の対照期間のデータを抽出できなかった場合には、被験者にその旨の通知を出力し、生活パターンについては判定をしなくてもよい。このようなお知らせ機能のフローとしては、例えば図3に示すフローをあげることができる。
【0030】
即ち、図3に示したフローでは、歩行データとして、日々の朝6~9時における歩数と、1日の歩行時の速度の平均(日常歩行速度)と、1日の歩数を使用している。また、評価期間、第1の対照期間及び第2の対照期間の日数をそれぞれ28日としている。そこで、このフローでは、まず、携帯端末から被験者の歩行データを読み込んだ日において、評価期間、第1の対照期間及び第2の対照期間の歩行データの合計として85日以上の歩行データが存在するか否か、言い換えると、被験者が携帯端末を装着し、歩行データを収集し始めたのが、本装置における歩行データの読み込み日より85日以上前であるか否かを判断する。そして、被験者における携帯端末の装着開始日が本装置における歩行データの読み込み日より85日以上前ではない場合には、被験者に、現時点での歩行データに基づいて一般的なアドバイスを出力するが、生活パターンの変化については出力しない。例えば、同世代の平均の1日の歩数に比して被験者の1日の歩数が多いか、少ないかの通知や、適正な歩数であった場合にはその歩数を維持し、少ない場合には1日の歩数を増やそうという励ましのメッセージ等を出力し、生活パターンの変化については言及しない。
【0031】
一方、被験者が携帯端末を装着し、歩行データを収集し始めたのが、本装置における歩行データの読み込み日より85日以上前であった場合には、評価期間の歩行データとして直近の28日間の歩行データを抽出し、また、第1の対照期間の歩行データとして読み込み日から29~56日前の歩行データを抽出し、第2の対照期間の歩行データとして読み込み日から57~84日前の歩行データを抽出する。そして、評価期間、第1の対照期間、第2の対照期間として抽出された歩行データにおいて、1日の装着時間が5時間以上であった日が各期間の60%(17日)以上であるか否かを調べ、60%未満の場合には、被験者に現時点での歩行データに基づいて一般的なアドバイスをすると共に、日々の携帯の装着時間を長くすべきとのメッセージを出力する。なお、1日の装着時間が5時間以上であった日が各期間の60%以上であるか否かという閾値は、本発明者の経験により設定された数値である。
【0032】
一方、評価期間、第1の対照期間、第2の対照期間として抽出された歩行データにおいて、1日の装着時間が5時間以上であった日が各期間の60%(17日)以上であった場合には、歩行データとして使用する、日々の朝6~9時における歩数と、1日の歩行時の速度の平均(日常歩行速度)と、1日の歩数のそれぞれについて、評価期間、第1の対照期間、及び第2の対照期間における度数分布を計算し、ヒストグラムに表し、度数の上位3位までの階級を抽出する。
【0033】
評価期間、第1の対照期間、第2の対照期間のそれぞれにおいて、日々の朝6~9時における歩数と、1日の歩行時の速度の平均(日常歩行速度)と、1日の歩数のいずれについても、度数が上位3位までの階級に差異がなかった場合には、現時点での歩行データに基づいて一般的なアドバイスを被験者に出力する。
【0034】
一方、日々の朝6~9時における歩数と、1日の歩行時の速度の平均(日常歩行速度)と、1日の歩数のいずれか一項目のみが変化していた場合において、85日以上前にもその項目のみが変化していた場合には、再通知である旨を被験者に通知し、生活パターンが変化している時期であることを知らせる。また、1項目のみが変化していた場合において、85日以上前にその項目が変化していなかった場合には、初めてその項目が変化したこと、これにより生活パターンが変化していると判定されることを被験者に通知する。
【0035】
また、日々の朝6~9時における歩数と、1日の歩行時の速度の平均(日常歩行速度)と、1日の歩数の2項目以上で度数の上位の階級に変化があった場合にも、被験者にその旨を通知し、生活パターンの変化が顕著であることを通知する。また、2項目以上で度数の上位の階級に変化があった場合は、1項目のみで度数の上位の階級に変化があった場合に比して、生活パターンの変化の大きいことが推定されるので、その旨も通知する。
【0036】
また、歩行データと健康状態のデータを関連付けて蓄積しておくことにより、生活パターンの変化が判定された場合に、その変化から注意すべき健康状態を被験者に示すことが好ましい。例えば、本発明者は、18~65歳の勤労者1500名について日々の歩数とストレス判定(厚生労働省ストレスチェック実施プログラム)との関係を蓄積した結果、高ストレスであると判定された者は、健常者よりも朝6~9時の歩数が300~500歩程度少ないという知見を得ている。そこで、歩行データから朝の歩数が減少している生活パターンに変化したことが判明した場合には、朝の歩数の減少と、高ストレス状態にある危険性があることを被験者に知らせる。
【0037】
この場合の通知画面としては、例えば図4に示すように、評価期間と対照期間の歩行データのヒストグラムと共に、朝(6~9時)の歩数が減っていることを示し、歩行習慣が変化していることを被験者に知らせる。また、この歩行習慣の変化から懸念される高ストレス状態について説明し、高ストレス状態から脱却するための日常生活のアドバイスを記載することが好ましい。
【0038】
また、非特許文献1や非特許文献2の報告に基づき、疾病を予防する為に必要な活動量に満たないユーザーに対して、疾病を予防するためには現状の生活パターンを変化させる必要があることを知らせても良い。また、現状の生活パターンで活動量が充足しているユーザーに対しては、疾病予防の観点から正しい生活パターンであることを知らせても良い。ユーザーへの通知にこのような内容を含めることにより、歩行データに基づいて単に生活パターンの変化の有無を知らせるだけよりも、疾病予防に重要な生活パターンを目指したより具体的なアドバイスが可能となるため、この通知が、ユーザーが歩行習慣の改善を始めるきっかけとなることが期待される。
【0039】
本発明の装置の使い方としては、例えば、特許文献1に記載のアドバイス提供地に設置し、そこで被験者から歩行データの提供を受け、その場で判定結果を印刷する等により被験者に生活パターンの変化を知らせてもよく、また、通信回線により被験者から歩行データの提供を受け、通信回線を介して判定結果を被験者に知らせても良い。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4