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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】脂質微粒子分散物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/04 20060101AFI20230515BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230515BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20230515BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20230515BHJP
   A61K 8/68 20060101ALI20230515BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20230515BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
A61K8/04
A61K8/34
A61K8/46
A61K8/63
A61K8/68
A61K8/92
A61Q19/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018246370
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2019119742
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2021-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2017254874
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 俊輔
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-093840(JP,A)
【文献】特開2006-335693(JP,A)
【文献】特開2001-316217(JP,A)
【文献】特開2013-227294(JP,A)
【文献】国際公開第2004/045566(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/04
A61K 8/34
A61K 8/46
A61K 8/63
A61K 8/68
A61K 8/92
A61Q 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(E)を含有し、成分(A)と成分(B)の合計質量と成分(C)の質量の比(A+B/C)が0.05以上6.0以下であり、pHが3.5以上8.0以下である脂質微粒子分散物であり、当該脂質微粒子の45℃以上80℃以下の温度範囲における融解熱量が0.30J/g以下であり、平均粒子径が200nm未満である脂質微粒子分散物。
(A)コレステロール及びフィトステロールから選ばれる1種以上 0.03質量%以上1.0質量%以下
(B)天然セラミド及び合成セラミドから選ばれる1種以上 0.01質量%以上1質量%以下
(C)N-アシルメチルタウリン塩 0.002質量%以上1.0質量%以下
(D)多価アルコール及びエタノールから選ばれる1種以上 3.0質量%以上30質量%以下
(E)水 70質量%以上97質量%以下
【請求項2】
さらに、成分(F)非イオン性界面活性剤を含有する請求項1記載の脂質微粒子分散物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の脂質微粒子分散物を含有する皮膚化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂質微粒子分散物及び皮膚化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の最外層に存在する角質層を構成する角質細胞の間隙には、角層細胞間脂質と呼ばれる脂質が存在している。この角層細胞間脂質の脂質組成は、約50%がセラミドであり、その他コレステロール、コレステロールエステル、脂肪酸等からなる。このうちセラミドは、荒れ肌、乾燥肌等に深く関与しており、セラミドを外用で補うことにより角質層の状態を改善できることが知られている。
【0003】
かかる観点から、セラミド類等の固体脂を配合した化粧料が種々報告されている。ところが、これらの固体脂は、結晶性が高く、また融点が高いため製剤中での安定化が難しいことから、種々の安定化技術が開発されている。例えば、セラミド含有粒子、融点が30℃以下の脂肪酸、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤等を組み合わせたセラミド分散物(特許文献1)、非イオン性界面活性剤と油分とポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレン共重合体ジアルキルエーテルと水を含有する一相マイクロエマルション組成物(特許文献2)、セラミド類と炭素数12~30の脂肪族アルコールを配合して、90℃で相溶化した脂質組成物(特許文献3)、コレステロール脂肪酸エステル等5種を含有する感温性コレステリック液晶組成物(特許文献4)、セラミドとコレステロール等とを相転移温度以上に加熱し、多価アルコールを添加し、その後冷却して液晶型エマルションとする技術(特許文献5)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2010/38814号パンフレット
【文献】特開2007-15972号公報
【文献】特開2004-331595号公報
【文献】特開平2-191208号公報
【文献】特開平9-124432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記組成物中においてセラミド類等の固体脂は、結晶化してしまう、当該結晶は比較的大きく不安定である、製剤中において液晶状態では不安定であることが多い等の問題があり、これらの組成物を用いた化粧料では経時的にセラミド類等の固体脂の作用を充分発揮させることができなかった。
一方で皮膚の表面は恒常性を維持する一環で弱酸性に保たれている。そのため、低刺激な皮膚化粧料を設計する上では製剤を肌に近いpHとして弱酸性に調整することが好まれる。しかし、セラミド等の固体脂を安定に乳化分散させるために特定のアニオン性界面活性剤を用いる場合には、アルカリ環境下で特に高い界面活性能を発現し、弱酸性から中性のpHではその界面活性能が失活してしまうという問題がある。
従って、本発明は、酸性条件下においてもセラミド類等の固体脂を結晶化させることなく、微細な粒子として安定に乳化分散させた脂質微粒子分散物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、セラミド類等の固体脂の微細分散化及び結晶化防止手段につき種々検討した結果、ステロール類とセラミド類等の固体脂とを併用し、アニオン性界面活性剤と水溶性溶媒を含有させることにより、特定のアニオン性界面活性剤を用いた時に中性からアルカリ性に限らず、酸性条件下においても、セラミド類等の固体脂の結晶性が低く、微細な粒子として安定に乳化分散する脂質微粒子分散物が得られることを見出した。
【0007】
本発明は、次の成分(A)~(E)を含有し、pHが3.5以上8.0以下である脂質微粒子分散物であり、当該脂質微粒子の45℃以上80℃以下の温度範囲における融解熱量が0.30J/g以下であり、平均粒子径が200nm未満である脂質微粒子分散物を提供するものである。
(A)ステロール及びその誘導体から選ばれる1種以上
(B)成分(A)以外の25℃で固体又は半固体の脂質
(C)アニオン性界面活性剤
(D)水溶性溶媒
(E)水
【発明の効果】
【0008】
本発明の脂質微粒子分散物は、酸性条件下においても、セラミド類等の固体脂の結晶性が低く、微細な粒子として安定に乳化分散しており、かつセラミド類等の固体脂の結晶性が低く、微細な粒子として安定に乳化分散することで、これらの固体脂の皮膚に対する作用が十分に発揮される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の脂質微粒子分散物に用いられる成分(A)は、ステロール及びその誘導体から選ばれる1種以上である。成分(A)は、本発明の脂質微粒子分散物中において、成分(B)の脂質の結晶性を低くし、粒子径を小さく安定化するのに寄与する。
成分(A)としては、コレステロール、フィトステロール及びそれらの誘導体が挙げられる。コレステロール及びフィトステロールの誘導体としては、脂肪酸コレステロールエステル、脂肪酸フィトステロールエステルが挙げられる。ここで、脂肪酸コレステロールエステルとしては、炭素数12~24の脂肪酸とのコレステロールエステルが好ましい。より具体的には、ラウリン酸コレステリル、パルミチン酸コレステリル、ミリスチン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、イソステアリン酸コレステリル、リノール酸コレステリルから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。また、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、N-ミリストイル-N-メチルアラニン(フィトステリル/デシルテトラデシル)等のN-アシルアミノ酸のステロールエステルを用いることもでき、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)が好適に例示できる。N-アシルアミノ酸のステロールエステルの市販品としては味の素社、日本精化社より販売されている「エルデュウPS-203」「Plandool-LG2」(N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルデシル))、「エルデュウCL-301」(N-ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル))、「エルデュウCL-202」(N-ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル))、「エルデュウPS-304」「エルデュウPS-306」「Plandool-LG1」「Plandool-LG3」「Plandool-LG4」(N-ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル))「エルデュウAPS-307」(N-ミリストイル-N-メチルアラニン(フィトステリル/デシルテトラデシル))等が例示できる。
【0010】
成分(A)は、1種以上を用いることができ、成分(B)の結晶性を低くし、粒子径を小さく安定化する観点から、本発明の脂質微粒子分散物中に、0.003質量%以上含有するのが好ましく、0.08質量%以上含有するのがより好ましく、0.2質量%以上含有するのがさらに好ましく、0.3質量%以上含有するのがよりさらに好ましく、0.4質量%以上含有するのがよりさらに好ましい。また、同様の観点から5.0質量%以下含有するのが好ましく、1.0質量%以下含有するのがより好ましく、0.8質量%以下含有するのがさらに好ましく、0.6質量%以下含有するのがよりさらに好ましい。具体的には、0.003質量%以上5.0質量%以下含有するのが好ましく、0.08質量%以上1.0質量%以下含有するのがより好ましく、0.2質量%以上0.8質量%以下含有するのがさらに好ましく、0.3質量%以上0.8質量%以下含有するのがよりさらに好ましく、0.4質量%以上0.6質量%以下含有するのがよりさらに好ましい。
【0011】
成分(B)は、成分(A)以外の25℃で固体又は半固体の脂質である。ここで、25℃で固体又は半固体とは、25℃における粘度が10000mPa・sより大きいことをいう。粘度は、B型粘度計(VISCOMETER TVB-10、東機産業社製)、ローターNo.4、12rpm、1分で測定するものである。当該成分(B)は、皮膚に対して保湿作用、バリア機能改善作用等を示し、化粧料の有効成分である。ここで、固体又は半固体の脂質としては、融点が50~150℃である脂質が挙げられる。成分(B)としては、セラミド類、スフィンゴシン類(天然物と合成物を含む)などのスフィンゴ脂質;ステアリン酸、ベヘン酸等の炭素数16~22の脂肪酸;セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、バチルアルコール、キミルアルコールなどの炭素数12~30の脂肪族アルコールなどが挙げられる。
【0012】
セラミド類としては、天然セラミド、スフィンゴシン誘導体などの他、特開昭62-228048号公報、特開昭63-216812号公報、特開昭63-227513号公報、特開昭64-29347号公報、特開昭64-31752号公報、特開平8-319263号公報などに記載のセラミド類似構造物質(合成セラミド)が例示される。具体的には、次の一般式(1)及び(2)から選ばれる化合物が好ましく、特に一般式(1)の化合物が好ましい。
【0013】
【化1】
【0014】
〔式中、R1bは炭素数10~26の炭化水素基、R2bは炭素数9~25の炭化水素基を示し、Xは-(CH2)n-(ここでnは2~6の整数を示す)を示す。〕
【0015】
【化2】
【0016】
(式中、R1及びR2は同一又は異なって炭素数1~40のヒドロキシル化されていてもよい炭化水素基を示し、R3は炭素数1~6のアルキレン基又は単結合を示し、R4は水素原子、炭素数1~12のアルコキシ基又は2,3-ジヒドロキシプロピルオキシ基を示す。ただし、R3が単結合のとき、R4は水素原子である。)
【0017】
なお、前記一般式(1)及び(2)中、炭化水素基としてはアルキル基又はアルケニル基が好ましい。
【0018】
一般式(1)の化合物の例としては、N-(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)-N-ヒドロキシエチルヘキサデカナミドが挙げられ、一般式(2)の化合物の例としては長鎖二塩基酸ビス3-メトキシプロピルアミドが挙げられる。
これらの成分(B)のうち、保湿作用、バリア機能改善作用の観点から、天然セラミド、前記一般式(1)及び(2)等の合成セラミド、炭素数12~30の脂肪族アルコールが好ましい。これらの脂質は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
成分(B)は、保湿作用、バリア機能改善作用の観点から、本発明の脂質微粒子分散物中に0.01質量%以上含有するのが好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上がさらに好ましく、また、結晶性を低くし、粒子径を小さく安定化する観点から、5.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下がさらに好ましい。具体的な範囲としては0.01質量%以上5.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以上3.0質量%以下がより好ましく、0.3質量%以上1.0質量%以下がさらに好ましい。
【0020】
本発明の脂質微粒子分散物における成分(A)と成分(B)の質量比(A/B)は、成分(B)の結晶性を低くし安定化させる観点から、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.3以上がさらに好ましく、また1.0以下が好ましく、0.8以下がより好ましく、0.6以下がさらに好ましい。具体的な範囲としては0.1以上1.0以下が好ましく、0.2以上0.8以下がより好ましく、0.3以上0.6以下がさらに好ましい。
【0021】
成分(C)は、アニオン性界面活性剤である。アニオン性界面活性剤としては、アルカリ、中性条件のみならず酸性条件も含むpH3.5から8.0において十分な界面活性能の発現の観点から、N-アシルアミノ酸塩、N-アシルメチルタウリン塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ジアシルアミノ酸リシン塩等が好ましい。このうち、N-アシルアミノ酸塩、N-アシルメチルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、脂肪酸塩、ジアシルアミノ酸リシン塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルエーテルカルボン酸塩及びジアルキルスルホコハク酸塩から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。さらに、N-アシルアミノ酸塩、N-アシルメチルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、脂肪酸塩、ジアシルアミノ酸リシン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルエーテルカルボン酸塩及びジアルキルスルホコハク酸塩から選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。また、N-アシルアミノ酸塩、N-アシルメチルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、脂肪酸塩及びジアシルアミノ酸リシン塩から選ばれる1種又は2種以上がさらに好ましく、N-アシルアミノ酸塩及びN-アシルメチルタウリン塩から選ばれる1種又は2種以上がよりさらに好ましい。
N-アシルアミノ酸塩としては、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ナトリウム、N-ステアロイル-L-グルタミン酸ナトリウム、N-ステアロイル-L-グルタミン酸アルギニン、N-ミリストイル-L-グルタミン酸ナトリウム、N-ラウロイルサルコシンナトリウム等のN-アシルグルタミン酸塩、N-アシルサルコシン塩等が挙げられる。N-アシルメチルタウリン塩としては、N-ミリストイル-N-メチルタウリンナトリウム、N-ラウロイル-N-メチルタウリンナトリウム、N-ステアロイル-N-メチルタウリンナトリウム等が挙げられる。アルキルリン酸塩としては、モノミリスチルリン酸ナトリウム、モノステアリルリン酸ナトリウム、ジ(C12-C15)パレス-8-リン酸ナトリウム等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルリン酸塩としては、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム等が挙げられる。脂肪酸塩としては、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、ステアリン酸アルギニン塩等の炭素数12~24の脂肪酸塩が挙げられる。アルキル硫酸エステル塩としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩としては、ポリオキシエチレンラウリル硫酸トリエタノールアミン塩等が挙げられる。アルキルエーテルカルボン酸塩としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸塩等が挙げられる。ジアルキルスルホコハク酸塩としては、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム等が挙げられる。ジアシルアミノ酸リシン塩としては、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム等が挙げられる。これらのアニオン性界面活性剤は1種又は2種以上を使用することができる。
【0022】
本発明の脂質微粒子分散物中の成分(C)の含有量は、製剤の安定性と使用する皮膚表面の恒常性の観点から、0.002質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましく、また、3.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましい。具体的には、0.002質量%以上3.0質量%以下が好ましく、0.05質量%以上1.0質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下がさらに好ましい。
【0023】
本発明の脂質微粒子分散物における成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計質量は、保湿作用、バリア機能改善作用の点から、脂質微粒子分散物総量の0.015質量%以上が好ましく、0.33質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、また13.0質量%以下が好ましく、5.0質量%以下がより好ましく、2.0質量%以下がさらに好ましい。具体的な範囲としては、0.015質量%以上13.0質量%以下が好ましく、0.33質量%以上5.0質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上2.0質量%以下がさらに好ましい。
【0024】
本発明の脂質微粒子分散物における成分(A)と成分(B)の合計質量と成分(C)の質量の比(A+B/C)は、保湿作用、バリア機能改善作用や安定性の点から0.05以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、1.0以上がさらに好ましく、2.0以上がよりさらに好ましく、また6.0以下が好ましく、5.5以下がより好ましく、5.0以下がさらに好ましい。具体的な範囲としては、0.05以上6.0以下が好ましく、0.5以上5.5以下がより好ましく、1.0以上5.5以下がさらに好ましく、2.0以上5.5以下がよりさらに好ましい。
【0025】
成分(D)は、水溶性溶媒である。水溶性溶媒は、本発明の脂質微粒子分散物において、成分(A)及び成分(B)、あるいは成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を効率的に均一溶解することや、安定性の向上、使用感の調整に寄与する。(D)水溶性溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(平均分子量1000未満)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(平均分子量:1000未満)、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、イソプレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、メチルグルセス等の多価アルコール、メタノール、エタノール等の低級アルコール等を挙げることができる。このうち、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール等が特に好ましい。これらの成分(D)は1種又は2種以上を使用することができる。
【0026】
成分(D)の含有量は、成分(A)及び成分(B)、あるいは成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を効率的に均一溶解することや、安定性、使用感の点から、本発明の脂質微粒子分散物中に1.0質量%以上が好ましく、2.0質量%以上がより好ましく、3.0質量%以上がさらに好ましく、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。具体的な範囲としては、1.0質量%以上30質量%以下が好ましく、2.0質量%以上25質量%以下がより好ましく、3.0質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。
【0027】
本発明の脂質微粒子分散物はさらに成分(E)水を含有する。本発明の脂質微粒子分散物中の(E)水の含有量は、安定性、使用感の点から50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、また、97質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下がさらに好ましい。具体的な範囲としては、50質量%以上97質量%以下が好ましく、70質量%以上95質量%以下がより好ましく、80質量%以上90質量%以下がさらに好ましい。
【0028】
本発明の脂質微粒子分散物は、さらに成分(F)非イオン性界面活性剤を含有するのが、安定性の点で好ましい。このような(F)非イオン性界面活性剤としては、HLB10~20の非イオン性界面活性剤が好ましく、HLB12~15の非イオン性界面活性剤がより好ましく、HLB12.5~14.5の非イオン性界面活性剤がさらに好ましい。
ここで、HLB(親水性親油性バランス)は、例えば下記式により求めることができるものである。
【0029】
式:〔HLB〕=7+1.171log(Mw/Mo)
(式中、Mwは界面活性剤の親水性基の分子量、Moは界面活性剤の疎水性基の分子量、logは底が10の対数を示す。)
【0030】
また非イオン性界面活性剤として、界面活性剤Xと界面活性剤Yの2種類を併用する場合、それぞれのHLBをHLBX及びHLBYとした時、両者を混合した非イオン性界面活性剤のHLBは、それぞれの質量分率をWX、WYとすると、
式:〔HLB〕=〔(WX×HLBX)+(WY×HLBY)〕÷(WX+WY)
に基づいて求められる。また、非イオン性界面活性剤として3種類以上を併用する場合、前記と同様にしてそれらを混合した非イオン性界面活性剤のHLBを求めることができる。尚、本発明においては、混合した非イオン性界面活性剤のHLBが上記の範囲となることが好ましく、HLB10~20以外の非イオン性界面活性剤も用いることができる。
【0031】
成分(F)の非イオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンフィトスタノールエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロースエーテル、ポリオキシエチレンコレスタノールエーテル、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン、ポリオキシアルキレン・アルキル共変性オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0032】
これらのうち、安定性の点から、オキシエチレン基の平均付加モル数が25~80のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、オキシエチレン基の平均付加モル数が10~140のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、炭素数が12~18のアルキル基でありオキシエチレン基の平均付加モル数が20のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、炭素数が16~22のアルキル基とオキシエチレン基の平均付加モル数が15~25のポリオキシエチレンアルキルエーテル、オキシエチレン基の平均付加モル数が10~20であるポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体が好ましく、オキシエチレン基の平均付加モル数が25~80のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、炭素数が16~22のアルキル基とオキシエチレン基の平均付加モル数が15~25のポリオキシエチレンアルキルエーテルがより好ましく、オキシエチレン基の平均付加モル数が35~65のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、炭素数が16~20のアルキル基とオキシエチレン基の平均付加モル数が20~25のポリオキシエチレンアルキルエーテルがさらに好ましい。
【0033】
また、成分(F)としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40EO)として、エマノーンCH-40(HLB12.5、花王社製)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60EO)として、エマノーンCH-60(K)(HLB14.0、花王社製)、ポリオキシエチレンイソセチルエーテル(20EO)として、EMALEX1620(HLB14、日本エマルジョン社製)、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル(25EO)として、EMALEX1825(HLB14、日本エマルジョン社製)などの市販品を使用することができる。
これらの成分(F)は1種又は2種を使用することができる。
【0034】
本発明の脂質微粒子分散物中の成分(F)の含有量は、安定性の点から、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましく、また、10質量%以下が好ましく、5.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下がさらに好ましい。具体的な範囲としては0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5.0質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上1.0質量%以下がさらに好ましい。
【0035】
本発明の脂質微粒子分散物は、前記成分(A)及び成分(B)が水中に分散乳化した形態であり、そのpHは3.5以上8.0以下である。本発明の脂質微粒子分散物は、pHが3.5以上8.0以下と酸性条件も含め結晶性が低く、微細な粒子として安定に存在するため、皮膚表面の恒常性を保ちながら使用感が良好である。当該pHは、皮膚表面の恒常性、使用感の点から3.5以上7.0以下がより好ましく、3.5以上6.0以下がより好ましく、3.5以上5.5以下がさらに好ましい。
【0036】
本発明の脂質微粒子分散物は、pHを前記範囲に調整するため、更に、塩基及び/又は酸を含有することができる。
塩基としては、特に制限されず、有機塩基であっても無機塩基であっても良い。
有機塩基は、塩基性アミノ酸、アルカノールアミンから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。具体的には、L-アルギニン、リジン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、アミノメチルプロパンジオール、アミノエチルプロパンジオール、トリスヒドロキシメチルアミノエタン等のアルカノールアミンから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
また、無機塩基は、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
これらのうち、L-アルギニン、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
【0037】
また、酸は、有機酸、無機酸のいずれでも良い。
有機酸はモノカルボン酸、ジカルボン酸、オキシカルボン酸、酸性アミノ酸から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。具体的には、酢酸、プロピオン酸、酪酸等のモノカルボン酸;コハク酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸等のジカルボン酸;グリコール酸、クエン酸、乳酸、ピルビン酸、リンゴ酸、酒石酸等のオキシカルボン酸;グルタミン酸、アスパラギン酸等の酸性アミノ酸から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
また、無機酸は、塩酸、硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
これらの中で、アジピン酸及びリン酸から選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
【0038】
これらの塩基及び/又は酸は、本発明の脂質微粒子分散物のpHが前記範囲になるような量を含有するのが好ましい。
【0039】
本発明の脂質微粒子分散物には、さらに前記成分以外に、通常の化粧料に用いられる成分、例えば、油性成分、保湿剤、酸化防止剤、防腐剤、キレート剤、美白剤、紫外線吸収剤、ビタミン類、植物抽出物、その他各種薬効成分、粉体、香料、色材などを含有させることができる。
【0040】
本発明の脂質微粒子分散物は、例えば成分(A)~(D)を含む油性成分を混合し、80~95℃で加熱溶解し、これに(E)水を加えて撹拌し均一に乳化させることにより製造できる。また、成分(A)~(E)、及び必要に応じて用いられるその他の成分の内、油性成分と水性成分とをそれぞれ個別に加熱溶解し、それぞれを一定量で流動させると共に、それらを合流させ、孔径が0.03mm以上20mm以下の細孔に流通させるマイクロミキサーを利用した乳化方法(特許第5086583号公報記載)によっても製造することができる。
【0041】
本発明の脂質微粒子分散物は、成分(A)及び成分(B)を含む微細化された脂質微粒子が、結晶性が低い状態で水中に均一に乳化分散している組成物である。当該脂質微粒子が微細且つ結晶性の低い状態で存在するか否かは、動的光散乱法及び示差走査熱量測定により確認することができる。すなわち、まず、脂質微粒子の存在とその粒子径は動的光散乱法により測定されるキュムラント径により測定できる。また、その脂質微粒子の結晶性が低いものであることについては、示差走査熱量測定で45℃以上80℃以下の温度域における融解熱量が0.30J/g以下であることにより確認できる。
また、本発明の脂質微粒子分散物中に乳化分散している脂質微粒子の平均粒子径は、200nm未満であり、安定性の点で、150nm未満であるのがより好ましく、130nm未満であるのがさらに好ましい。
【0042】
本発明の脂質微粒子分散物は、微細な脂質微粒子が、結晶性の低い状態で水中に均一に乳化分散しているため、従来の脂質微粒子を含まない製剤に比べ使用感としてしっとり感を高めるのみならず、同時に塗布後の肌をモチモチとしながらべたつきを与えずさっぱり滑らかな肌触りにするため、皮膚化粧料として有用である。また、脂質微粒子が結晶性が低い状態で水中に均一に乳化分散しているため、脂質微粒子の膜流動性が高いと考えられ、有効成分の角層への高い浸透性や高いバリア機能改善効果も期待できる。
【0043】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の組成物を開示する。
【0044】
<1>次の成分(A)~(E)を含有し、pHが3.5以上8.0以下である脂質微粒子分散物であり、当該脂質微粒子の45℃以上80℃以下の温度範囲における融解熱量が0.30J/g以下であり、平均粒子径が200nm未満である脂質微粒子分散物。
(A)ステロール及びその誘導体から選ばれる1種以上
(B)成分(A)以外の25℃で固体又は半固体の脂質
(C)アニオン性界面活性剤
(D)水溶性溶媒
(E)水
【0045】
<2>成分(A)が、コレステロール、フィトステロール及びそれらの誘導体から選ばれる1種以上であり、より好ましくはコレステロール、脂肪酸コレステロールエステル、脂肪酸フィトステロールエステル、N-アシルアミノ酸コレステロールエステル及びN-アシルアミノ酸フィトステロールエステルから選ばれる1種以上を含む<1>記載の脂質微粒子分散物。
<3>成分(A)の含有量が、好ましくは0.003質量%以上、より好ましくは0.08質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上、よりさらに好ましくは0.3質量%以上、よりさらに好ましくは0.4質量%以上であり、また好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.8質量%以下、よりさらに好ましくは0.6質量%以下であり、好ましくは0.003質量%以上5.0質量%以下、より好ましくは0.08質量%以上1.0質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以上0.8質量%以下、よりさらに好ましくは0.3質量%以上0.8質量%以下、よりさらに好ましくは0.4質量%以上0.6質量%以下である<1>又は<2>記載の脂質微粒子分散物。
<4>成分(B)が、セラミド類、スフィンゴシン類、炭素数16~22の脂肪酸、及び炭素数12~30の脂肪族アルコールから選ばれる1種以上を含む<1>~<3>のいずれかに記載の脂質微粒子分散物。
<5>セラミド類が、次の一般式(1)及び(2)から選ばれる化合物を含む<4>記載の脂質微粒子分散物。
【0046】
【化3】
【0047】
〔式中、R1bは炭素数10~26の炭化水素基、R2bは炭素数9~25の炭化水素基を示し、Xは-(CH2)n-(ここでnは2~6の整数を示す)を示す。〕
【0048】
【化4】
【0049】
(式中、R1及びR2は同一又は異なって炭素数1~40のヒドロキシル化されていてもよい炭化水素基を示し、R3は炭素数1~6のアルキレン基又は単結合を示し、R4は水素原子、炭素数1~12のアルコキシ基又は2,3-ジヒドロキシプロピルオキシ基を示す。ただし、R3が単結合のとき、R4は水素原子である。)
<6>成分(B)の含有量が、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、また、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以下であり、また、好ましくは0.01質量%以上5.0質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上3.0質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以上1.0質量%以下である<1>~<5>のいずれかに記載の脂質微粒子分散物。
<7>成分(A)と成分(B)の質量比(A/B)が好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.3以上であり、また、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.6以下であり、また好ましくは0.1以上1.0以下、より好ましくは0.2以上0.8以下、さらに好ましくは0.3以上0.6以下である<1>~<6>のいずれかに記載の脂質微粒子分散物。
<8>成分(C)が、好ましくはN-アシルアミノ酸塩、N-アシルメチルタウリン塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩及びジアシルアミノ酸リシン塩から選ばれる1種又は2種以上を含み、より好ましくは、N-アシルアミノ酸塩、N-アシルメチルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、脂肪酸塩、ジアシルアミノ酸リシン塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルエーテルカルボン酸塩及びジアルキルスルホコハク酸塩から選ばれる1種又は2種以上を含み、さらに好ましくは、N-アシルアミノ酸塩、N-アシルメチルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、脂肪酸塩、ジアシルアミノ酸リシン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルエーテルカルボン酸塩及びジアルキルスルホコハク酸塩から選ばれる1種又は2種以上を含み、さらにより好ましくはN-アシルアミノ酸塩、N-アシルメチルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、脂肪酸塩及びジアシルアミノ酸リシン塩から選ばれる1種又は2種以上を含み、特に好ましくはN-アシルアミノ酸塩及びN-アシルメチルタウリン塩から選ばれる1種又は2種以上を含む<1>~<7>のいずれかに記載の脂質微粒子分散物。
<9>成分(C)の含有量が、好ましくは0.002質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、また好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下であり、また、好ましくは0.02質量%以上3.0質量%以下、より好ましくは0.05質量%以上1.0質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以上0.5質量%以下である<1>~<8>のいずれかに記載の脂質微粒子分散物。
<10>成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計質量が、好ましくは0.015質量%以上、より好ましくは0.33質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、また好ましくは13.0質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下、さらに好ましくは2.0質量%以下であり、また、好ましくは0.015質量%以上13.0質量%以下、より好ましくは0.33質量%以上5.0質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以上2.0質量%以下である<1>~<9>のいずれかに記載の脂質微粒子分散物。
<11>成分(A)と成分(B)の合計質量と成分(C)の質量の比(A+B/C)が、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1.0以上、よりさらに好ましくは2.0以上であり、また、好ましくは6.0以下、より好ましくは5.5以下、さらに好ましくは5.0以下であり、また好ましくは0.05以上6.0以下、より好ましくは0.5以上5.5以下、さらに好ましくは1.0以上5.5以下、よりさらに好ましくは2.0以上5.5以下である<1>~<10>のいずれかに記載の脂質微粒子分散物。
<12>成分(D)が、多価アルコール及び低級アルコールから選ばれる1種以上を含み、より好ましくはエタノール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール及び1,3-プロパンジオールから選ばれる1種以上を含む<1>~<11>のいずれかに記載の脂質微粒子分散物。
<13>成分(D)の含有量が、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、さらに好ましくは3.0質量%以上であり、また好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下であり、また好ましくは1.0質量%以上30質量%以下、より好ましくは2.0質量%以上25質量%以下、さらに好ましくは3.0質量%以上20質量%以下である<1>~<12>のいずれかに記載の脂質微粒子分散物。
<14>成分(E)の含有量が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、また、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下であり、また、好ましくは50質量%以上97質量%以下、より好ましくは70質量%以上95質量%以下、さらに好ましくは80質量%以上90質量%以下である<7>~<13>のいずれかに記載の脂質微粒子分散物。
<15>さらに成分(F)非イオン性界面活性剤を含有する<1>~<14>のいずれかに記載の脂質微粒子分散物。
<16>成分(F)が、好ましくはHLB10~20の非イオン性界面活性剤、より好ましくはHLB12~15の非イオン性界面活性剤、さらに好ましくはHLB12.5~14.5の非イオン性界面活性剤を含む<15>記載の脂質微粒子分散物。
<17>成分(F)が、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンフィトスタノールエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロースエーテル、ポリオキシエチレンコレスタノールエーテル、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル及びポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン、ポリオキシアルキレン・アルキル共変性オルガノポリシロキサンから選ばれる1種以上を含む<15>又は<16>記載の脂質微粒子分散物。
<18>成分(F)の含有量が、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以下であり、また好ましくは0.01質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以上5.0質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以上1.0質量%以下である<15>~<17>のいずれかに記載の脂質微粒子分散物。
<19>pHが好ましくは3.5以上7.0以下、より好ましくは3.5以上6.0以下、さらに好ましくは3.5以上5.5以下である<1>~<18>のいずれかに記載の脂質微粒子分散物。
<20>成分(A)及び成分(B)を含む脂質微粒子の結晶性が低く、微細な粒子として水中に均一に乳化分散している<1>~<19>のいずれかに記載の脂質微粒子分散物。
<21>脂質微粒子分散物中に乳化分散している成分(A)及び成分(B)を含む脂質微粒子の平均粒子径が、好ましくは150nm未満、より好ましくは130nm未満である<1>~<20>のいずれかに記載の脂質微粒子分散物。
<22><1>~<21>のいずれかに記載の脂質微粒子分散物を含有する皮膚化粧料。
【実施例
【0050】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0051】
(製造方法)
(1)マイクロミキサー法
表1~4、7~8に記載の組成物及び表6記載の実施例17については、まず成分A、B、D、Fを85℃で加熱溶解し、均一な油相混合物Xを調製した。次に成分C、Eを85℃で加熱溶解し、均一な水相混合物Yを調製した。混合物X及びYを85℃で加熱しながら0.2MPa・sの圧力下でそれぞれを一定量で流動させると共に、それらを合流させ、孔径が0.4mmの細孔に流通させ化粧水状の均一な乳化物Zを得た。一部の成分D、E及び成分A~F以外の成分は混合し、均一溶解を確認した後に乳化物Zに添加することで各試料を得た。
【0052】
(2)ビーカー法
表5に記載の組成物及び表6記載の比較例6については、成分A、B、C、D、Fを85℃で加熱溶解し、均一な油相混合物を得た。この油相混合物に成分Eを撹拌しながら滴下することで乳化物を得た。一部の成分E及び成分A~F以外の成分は混合し、均一溶解を確認した後に乳化物へ添加することで各試料を得た。
【0053】
(評価方法)
(1)粒子状態
実施例及び比較例の脂質微粒子分散物について、粒子径分析装置(ゼータサイザーナノZS マルバーン社製)を用いた動的光散乱法による測定(20倍希釈液)により得られたキュムラント径を求め、以下のA~Dの評価に当てはめた。
A:130nm未満
B:130nm以上150nm未満
C:150nm以上200nm未満
D:200nm以上
(2)結晶状態
実施例及び比較例の脂質微粒子分散物について、示差走査熱量分析装置(μDSCVIIevo リガク社製)を用いた測定(昇温速度:0.3℃/min)により得られた融解曲線の45℃以上80℃以下の温度範囲における全吸熱量から融解熱量を求め、以下のA~Dの評価に当てはめた。
A:熱量0.05J/g未満
B:熱量0.05J/g以上0.15J/g未満
C:熱量0.15J/g以上0.30J/g以下
D:熱量0.30J/gを超える
【0054】
(3)安定性
実施例及び比較例の脂質微粒子分散物について、規格ガラス容器(マイティバイアルNo.7 アズワン社製)に充填し室温及び50℃の環境にて1ヵ月保管し、外観の変化を観察し、評価した。観察時においては製剤に相分離がないこと、クリーミングが起こらないこと、沈殿物あるいは析出物のないことを確認し、いずれの変化も見られなかった場合のみ合格「○」とした。
【0055】
(4)使用感
表6に記載の実施例及び比較例を等量肌に使用した時について、専門パネラにより「しっとり感」、「もちもち感」及び「滑らかさ」について使用感の良い順で4段階評価を行った。評価基準を以下に示す。
A:とても感じる
B:やや感じる
C:僅かに感じる
D:全く感じない
【0056】
表1~8記載の脂質微粒子分散物を製造し、その物性、安定性及び使用感を評価した。その結果も表1~8に併せて示す。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
【表5】
【0062】
【表6】
【0063】
表7記載の脂質微粒子分散物についても、セラミド類等の固体脂の結晶性が低く、微細な粒子として安定に乳化分散しており、安定性及び使用感についても優れたものである。
【0064】
【表7】
【0065】
【表8】