(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】検出センサ、測定装置、及び試料調製装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/41 20060101AFI20230515BHJP
【FI】
G01N21/41 Z
(21)【出願番号】P 2019058184
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2021-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】新井 竜一
(72)【発明者】
【氏名】小宮 研一
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/132761(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0038417(US,A1)
【文献】特開2010-197152(JP,A)
【文献】特開2018-89621(JP,A)
【文献】特開2012-106208(JP,A)
【文献】国際公開第2007/007613(WO,A1)
【文献】特開2005-143379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/01
G01N 21/17-G01N 21/61
H01P 1/20-H01P 1/219
H01P 7/00-H01P 7/10
B01D 24/00-B01D 37/04
B01D 53/22
B01D 61/00-B01D 71/82
C02F 1/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波の反射率又は透過率の変化によって被検出物を検出する検出装置に用いられる、前記被検出物が堆積され前記電磁波が照射される表面を備えた平板状の検出センサであって、溶液中に配置された、前記被検出物が捕捉されたフィルタから、前記被検出物を前記溶液中に分離させ、分離された前記被検出物を前記表面に堆積させるために、前記表面上に配置され当該検出センサと一体化され、前記表面から上方に超音波を発生する超音波発生素子を有
し、前記検出センサの前記表面上には、凹凸部を含むパターンが形成されており、前記超音波発生素子は、前記表面上に、前記パターン全体の外周を囲むように配置され、または、前記パターンの前記凹凸部と並べて配置されている、検出センサ。
【請求項2】
前記超音波発生素子は、圧電材料からなる、請求項
1に記載の検出センサ。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の検出センサと、
前記表面上の前記被検出物に前記電磁波を照射する照射部と、
前記電磁波の反射率又は透過率の変化を検出する検出器と、
前記検出器で検出した前記電磁波の特性変化に基づいて、前記被検出物中の測定対象物の有無を特定する又は量を測定する制御部と、を具備する、測定装置。
【請求項4】
電磁波の反射率又は透過率の変化によって被検出物を検出する検出装置に用いられる、前記被検出物が堆積され前記電磁波が照射される表面に超音波発生素子を備える平板状の検出センサであって、
前記表面上には、凹凸部を含むパターンが形成されており、前記超音波発生素子は、前記表面上に、前記パターン全体の外周を囲むように配置され、または、前記パターンの前記凹凸部と並べて配置されており、前記被検出物が捕捉されたフィルタの前記被検出物が付着しているフィルタ面に、前記超音波発生素子が向い合うように、溶液が入っている容器の底面に、前記超音波発生素子を上にして配置された検出センサと、
前記超音波発生素子から超音波を発生させることと、
発生した前記超音波により、前記フィルタから前記被検出物を分離させて、前記表面上に前記被検出物が配置された前記検出センサを取得することと、
を制御する制御部を含む、試料調製装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、検出センサ、測定装置、及び試料調製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属微粒子に標的物質を捕捉し、標的物質を光学的に検出する手法が知られている。このような検出における検出用試料の作製では、例えば、金属微粒子と標的物質を含む試料とが混合された後、フィルタを用いたフィルタリングにより、標的物質が結合した金属微粒子を含む被検出物が抽出される。抽出された被検出物がフィルタから分離されて検出センサの表面に添加されることにより、検出用試料が作製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被検出物を確実に検出できる検出センサ、測定装置、及び試料調製装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態は、電磁波の反射率又は透過率の変化によって被検出物を検出する検出装置に用いられる、前記被検出物が堆積され前記電磁波が照射される表面を備えた平板状の検出センサである。検出センサは、溶液中に配置された、前記被検出物が捕捉されたフィルタから、前記被検出物を前記溶液中に分離させ、分離された前記被検出物を前記表面に堆積させるために、前記表面上に配置され当該検出センサと一体化され、前記表面から上方に超音波を発生する超音波発生素子を有する。前記検出センサの前記表面上には、凹凸部を含むパターンが形成されている。前記超音波発生素子は、前記表面上に、前記パターン全体の外周を囲むように配置され、または、前記パターンの前記凹凸部と並べて配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施形態に係る検出センサを含む測定装置の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、検出装置による検出原理を説明する図である。
【
図3】
図3は、検出装置で検出される電磁波の周波数と反射率との関係の一例を示す図である。
【
図6A】
図6Aは、試料作製の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、検出センサの他の例を示す上面図である。
【
図9】
図9は、従来技術における試料作製の様子を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の各実施形態について、図面を参照して説明する。なお、複数の表現が可能な各要素に、一つ以上の他の表現の例を付すことがある。しかし、これは、他の表現が付されていない要素について異なる表現がされることを否定するものではないし、例示されていない他の表現がされることを制限するものでもない。また、各図面は実施形態を概略的に示すものであり、図面に示される各要素の寸法は、実施形態の説明と異なることがある。
【0008】
本実施形態に係る検出センサを含む測定装置は、例えば試料中の細菌などの測定対象物を含む被検出物を検出して測定対象物の量を測定する。測定装置は、所定の周波数の電磁波を検出センサに照射し、検出センサで反射した電磁波を検出する。測定装置は、被検出物を添加する前の検出センサの反射率と被検出物を添加した後の検出センサの反射率とを測定する。測定装置は、添加前後の反射率の変化から、測定対象物の有無又は量を測定する。
【0009】
図1は、測定装置1の一例を示す図である。測定装置1は、検出装置10と、制御装置20とを有している。検出装置10と制御装置20とは、電気的に接続されている。制御装置20は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field programmable Gate Array)などのプロセッサを含む。制御装置20は、検出装置10の以下に説明される各部における各種動作の制御及び各種演算を行う。
【0010】
検出装置10は、電磁波発生源11と、反射部12と、検出センサ13と、ステージ14と、検出器15と、試料導入部16とを有している。これらは、検出装置10として1つの筐体内に配置されてよい。
【0011】
電磁波発生源11は、検出センサ13の表面上に電磁波を照射する照射部として、制御装置20からの制御信号に基づいて所定の周波数の電磁波を出力するように構成されている。電磁波発生源11が出力する電磁波の周波数は、検出センサ13の構造に応じて定まる、検出センサ13の周波数特性に応じて決定される。出力される電磁波は、X線、紫外線、可視光線、赤外線、マイクロ波、電波等であってよい。例えば、電磁波発生源11は、紫外線、可視光線、赤外線の波長域の範囲の電磁波を発生する光源であってよい。電磁波発生源11は、例えば、数テラヘルツ程度の周波数の電磁波を照射するテラヘルツ光源であってよい。
【0012】
反射部12は、例えばミラーである。反射部12は、例えば、第1の反射面12Aと、第2の反射面12Bとを有している。反射部12は、検出装置10の内部に、電磁波発生源11、検出位置(例えば、
図1に実線で示される検出センサ13の位置)にある検出センサ13及び検出器15に対して所定の角度で配置されている。例えば、第1の反射面12Aが、電磁波発生源11から出力された電磁波を検出位置にある検出センサ13に向けて反射するように配置され、第2の反射面12Bが、検出センサ13で反射した電磁波を検出器15に向けて反射するように配置されている。すなわち、反射部12は、電磁波発生源11から出力された電磁波の光路(進行方向)を調整する。また、反射部12は、検出センサ13の表面で反射した電磁波の光路(進行方向)を調整する。
【0013】
検出センサ13は、被検出物が配置される表面を備えている。検出センサ13は、ステージ14上に配置される。ステージ14は、その上に検出センサ13を保持する。ステージ14は、
図1に示されるX、Y及びZ方向に可動域を有している。ステージ14は、モータ等を含む不図示の駆動部により動作される。ステージ14は、制御装置20からの制御信号を受けて駆動部が駆動されることにより移動する。ステージ14は、反射部12で反射された電磁波を検出センサ13の表面の任意の位置に照射するために、駆動部によりX方向及びY方向に移動可能である。また、ステージ14は、検出センサ13に照射される電磁波の焦点位置を調整するために、駆動部によりZ方向に移動可能である。
【0014】
ステージ14は、X方向の移動により、試料導入部16に導かれる。
図1には、試料導入部16と、試料導入部16に位置している検出センサ13及びステージ14が破線で示されている。ステージ14(及びその上に配置された検出センサ13)は、例えば、
図1に実線で示される検出位置と、
図1に破線で示される試料導入位置とに移動可能である。検出位置は、検出センサ13に電磁波を照射することにより被検出物の検出が行われる位置である。試料導入位置は、被検出物を含む検出用試料を検出センサ13に導入する動作が行われる位置である。
【0015】
試料導入部16は、例えば、検出センサ13の表面への試料の導入、ステージ14上への検出センサ13の配置、検出センサ13の取り外し及び交換をするために、検出装置10の外部にアクセス可能になっている。試料の導入や検出センサ13の配置、取り外し、交換等は、制御装置20により制御されてよく、手動で行われてもよい。
【0016】
検出器15は、検出センサ13で反射した電磁波である反射波を検出する。検出器15は、電磁波をエネルギーなどとしてその強度を検出する。検出器15は、検出した電磁波の強度を示す検出信号を制御装置20に出力するように構成されている。つまり、検出器15は、電磁波発生源11から放射された電磁波が検出センサ13で反射したことによる特性変化(例えば、電磁波の反射率の変化)を検出する。
【0017】
検出装置10による検出動作について説明する。
例えば、検出装置10において、制御装置20からの制御信号に基づく不図示の駆動部の動作により、ステージ14が試料導入部16に移動される。試料導入部16では、検出センサ13の表面への試料の導入、及びステージ14上への検出センサ13の配置が行われる。
【0018】
制御装置20からの制御信号に基づく駆動部の動作により、ステージ14及びその上の検出センサ13が、反射部12で反射した電磁波が検出センサ13の表面の所望の位置に照射される検出位置に移動される。
【0019】
電磁波発生源11は、制御装置20からの制御信号に基づいて電磁波L1を出力する。出力された電磁波L1は、反射部12で反射して、検出センサ13の表面上の被検出物に反射した電磁波L2が照射される。照射された電磁波L2は、検出センサ13で反射して電磁波L3として反射部12に戻り、反射部12で再び反射した電磁波である反射波L4が検出器15に到達する。検出器15は、反射波L4の強度を検出して、検出した強度に応じた検出信号を制御装置20に出力する。
【0020】
図2は、検出装置10による検出原理を説明する図である。検出装置10は、
図2の左に示されるように、検出センサ13に検出用試料を導入していない場合に、検出センサ13に電磁波を照射して反射波の強度を検出し、検出した強度に応じた検出信号を制御装置20に出力する。測定装置1は、例えば、この場合に検出された反射波の強度の、照射した電磁波の強度に対する比を基準反射率とする。また、検出装置10は、
図2の中央又は右に示されるように、検出センサ13に検出用試料が導入されている場合に、検出センサ13に電磁波を照射して反射波の強度を検出し、検出した強度に応じた検出信号を制御装置20に出力する。
【0021】
図3に示される例において、電磁波発生源11が出力する電磁波の周波数を周波数F1とする。このとき、被検出物が存在しない場合の検出センサ13の反射率(破線31で示される)が、第1の反射率R1として検出器15での検出信号から取得される。第1の反射率R1は、上述の基準反射率である。また、被検出物が存在する場合の検出センサ13の反射率(一点鎖線32及び実線33で示される)が、それぞれ、第2の反射率R2及び第3の反射率R3として検出器15での検出信号から取得される。制御装置20は、検出器15で検出したこのような反射率の変化の有無に基づいて、被検出物の有無を特定する。また、制御装置20は、基準反射率に対する反射率の変化量に基づいて、被検出物に含まれる測定対象物の量又は特性を特定する。すなわち、制御装置20は、検出器15で検出した電磁波の特性変化(反射率又は透過率の変化)に基づいて、被検出物中の測定対象物の有無を特定する又は量を測定する。
【0022】
例えば、被検出物の量が多くなることで、基準反射率に対する反射率の変化量は大きくなる。制御装置20は、当該変化量に基づいて、測定対象物の量を測定する。例えば、
図2及び
図3の場合には、基準反射率である第1の反射率R1に対する変化量が第2の反射率R2よりも第3の反射率R3について大きいので、測定対象物の量は、
図2の右に示される場合において
図2の中央に示される場合よりも多いことがわかる。
【0023】
制御装置20は、例えば、検出センサ13に検出用試料を導入していない場合の反射波の検出信号と導入した場合の反射波の検出信号とを比較することにより、検出センサ13上に被検出物が存在するか否かを判定する。制御装置20は、比較した2つの検出信号が一致する又は2つの検出信号の差が所定の閾値以下であれば、被検出物がないと判定してよい。制御装置20は、比較した2つの検出信号の差が所定の閾値よりも大きければ、被検出物を検出したと判定し、さらに、その差に基づいて測定対象物の量を算出してよい。制御装置20は、例えば、不図示のメモリに予め記憶されている、検出センサ13についての電磁波の特性変化(周波数特性の変化)と測定対象物の量との関係式から、測定対象物の量を算出する。検出結果及び算出結果は、制御装置20から表示装置などの外部装置に出力されてよい。
【0024】
図4は、検出用試料に含まれる被検出物41の一例を示す図である。被検出物41は、水等の溶媒中に混合された磁性粒子42と測定対象物43とが化学反応等によって結合したものである。すなわち、被検出物41は、磁性粒子42と測定対象物43とからなる。磁性粒子42は、磁性ビーズ等の磁性体であってよい。測定対象物43は、例えば細菌である。例えば、磁性粒子42の表面には、測定対象物43が特異的に反応する表面修飾が予め施されている。
図4では、測定対象物43に特異的に結合する抗体が磁性粒子42に固定されている。当該抗体により、磁性粒子42と測定対象物43とが結合される。
【0025】
検出センサ13の構成について、
図5A及び
図5Bを参照して詳述する。
図5Aは、検出センサ13の一例を示す上面図である。
図5Bは、検出センサ13の一例を示す断面図である。
図5Bは、
図5Aに示されるVB-VB線における断面を示している。
【0026】
検出センサ13は、第1の膜17と、第2の膜18と、第3の膜21とを有している。第1の膜17及び第3の膜21は、例えば金で形成されている。金以外の導体、例えば、銀、銅、ニッケル、クロム、ゲルマニウムなどの金属、あるいは半導体を用いてもよい。第1の膜17及び第3の膜21は、複数の層を備える構造であってもよい。第2の膜18は、例えばシリコンなどの無機材料、ポリエチレンなどの有機材料で形成されている。例えば、第2の膜18は、第1の膜17との接着層としてクロム又はチタンなどの層を備えてもよい。
【0027】
検出センサ13では、空隙のない第2の膜18の上に空隙のある第1の膜17が設けられている。
図5Aに示されるように、第1の膜17には、例えばC型の空隙19が多数並べて形成されている。このように、検出センサ13の表面には、凹凸部を含むパターンが形成されている。
図5A及び
図5Bに示される検出センサ13は、メタマテリアル共振器の代表例であり、相補型分割リング共振器と呼ばれている。
【0028】
相補型分割リング共振器は、所定の周波数帯の電磁波が照射されたときに、特徴的な反射特性を示す。すなわち、電磁波が照射されたとき、第1の膜17のC型の空隙19がある部分は、電気的にLC回路のように振る舞う。このため、このLC回路の共振周波数の近傍の周波数において、照射された電磁波は、相補型分割リング共振器と強く相互作用し、吸収される。その結果、相補型分割リング共振器は、LC回路の共振周波数の近傍で反射率が低下する反射特性を示す。
【0029】
相補型分割リング共振器に被検出物である物質が付着したとき、当該物質がLC回路の主に容量成分を変化させる。その結果、当該LC回路の共振周波数が変化する。
図3を参照して説明したように、相補型分割リング共振器に被検出物があるか否かに応じて、反射率の周波数特性が変化する。
【0030】
この周波数特性の変化を利用することで、相補型分割リング共振器は、検出センサ13として機能する。例えば、検出装置10の電磁波発生源11が出力する電磁波の周波数は、LC回路の共振周波数の近傍の周波数に設定される。電磁波発生源11から出力された電磁波は、検出センサ13に照射される。検出器15は、検出センサ13で反射した電磁波を検出する。制御装置20は、検出された電磁波の強度に基づいて、検出センサ13上の物質の有無又は量などを特定する。
【0031】
なお、上述の検出センサ13の構成は一例である。検出センサ13の空隙の形状はC型に限定されないし、空隙の配置も図示されるものに限定されない。空隙の形状は他の形状であってよいし、空隙の配置は規則的又は周期的な配置であればよい。
【0032】
電磁波の反射率の変化を検出することで被検出物を検出する検出装置10の構成及び検出原理を説明してきたが、検出装置はこれに限定されない。電磁波の周波数特性の変化を利用して被検出物を検出する装置が利用されてよい。例えば、検出装置として、検出センサの裏面の反射特性に基づいて被検出物を検出する検出装置、検出センサの透過特性に基づいて被検出物を検出する検出装置などの他の検出装置が用いられてよい。
【0033】
検出センサ13は、超音波発生素子51を有している。すなわち、検出センサ13と超音波発生素子51とが一体化されている。例えば、矩形の超音波発生素子51が、検出センサ13の第1の膜17上に、C型の空隙19の周囲を囲むように配置され、さらに超音波発生素子51上に第3の膜21が形成されている。つまり、超音波発生素子51が、検出センサ13の表面上に、凹凸部を含むパターン全体の外周を囲むように配置され、第1の膜17及び第3の膜21に挟まれている。
【0034】
超音波発生素子51は、制御装置20からの制御信号に基づいて、不図示の駆動回路により電極として作用する第1の膜17及び第3の膜21より電圧が印加されることで駆動される。超音波発生素子51は、圧電歪定数d31又はd33の圧電セラミックスなどの圧電材料からなる圧電アクチュエータであってよい。超音波発生素子51は、例えば、d31の振動モード(超音波発生素子51の厚み方向、すなわちZ方向に伸縮する振動モード)又はd33の振動モード(超音波発生素子51の長さ方向、すなわちX方向又はY方向に伸縮する振動モード)を用いて、Z方向に超音波を発生する。
【0035】
さて、通常の試料作製では、磁性粒子42を含む溶液に測定対象物43を含む試料が混合されることにより被検出物41が形成された後、フィルタリング、洗浄、分離、抽出及び滴下工程が行われる。各工程について、
図9を参照して説明する。各工程は、制御装置20の制御により測定装置1で行われてよいし、手動で行われてもよい。なお、測定装置1により試料作製が行われる場合には、測定装置1は試料調製装置と称されてよい。
【0036】
まず、フィルタ100によるフィルタリングが行われる。フィルタ100は、多数の孔102が設けられた平板状の基材101により構成された、一般的な濾材である。孔102は、基材101を貫く貫通孔である。孔102の大きさ、すなわち孔径は、磁性粒子42と測定対象物43とからなる被検出物41は通さないが、測定対象物43と結合していない磁性粒子42、すなわち夾雑物は通す大きさに設定されている。例えば、制御装置20が、測定対象物43が結合した磁性粒子42と測定対象物43が結合していない単体の磁性粒子42とを含む溶液をフィルタ100に移動させて、フィルタ100に当該溶液を添加する。これにより、濾別処理が行われる。フィルタリングにより、フィルタ100の基材101上には主に被検出物41が残る。
【0037】
続いて、フィルタリング後のフィルタ100が洗浄される。例えば、制御装置20が、フィルタリング後のフィルタ100に緩衝液などの溶液を添加する。当該添加により、フィルタリング後もフィルタ100に残っている単体の磁性粒子42が孔102を通過し、フィルタ100が洗浄される。緩衝液に代わって純水等が用いられてもよい。洗浄により、フィルタ100の基材101上には残渣として被検出物41が残る。
【0038】
洗浄後、フィルタ100から被検出物41が分離される。被検出物41が残ったフィルタ100が溶液110に晒されることにより、被検出物41がフィルタ100から分離される。例えば、制御装置20が、被検出物41が残ったフィルタ100を溶液110中に移動させることにより、被検出物41がフィルタ100から分離される。
【0039】
被検出物41の分離後、溶液110中から被検出物41を含む液滴又は所定量の溶液が抽出されて、当該液滴又は所定量の溶液が検出センサ13上に滴下される。これにより、検出用試料の作製が完了する。
【0040】
フィルタ100から被検出物41を分離する際に、フィルタ100に付着したままであったり、一旦分離されたもののフィルタ100に再付着したりしてフィルタ100から分離されない被検出物41が存在しうる。このような被検出物41が存在すると、検出センサ13上に滴下される液滴又は所定量の溶液に含まれる被検出物41の量が少なくなりうる。それ故、検出結果に誤差が生じうる。
【0041】
本実施形態では、フィルタ100から被検出物41を分離する際に、検出センサ13上に形成した超音波発生素子51が、溶液110中で超音波を発生する。発生した超音波により、フィルタ100に捕捉されていた被検出物41が溶液110中に全て解離する。
【0042】
図6A及び
図6Bは、本実施形態における試料作製について説明する図である。
図6Aは、試料作製の一例を示すフローチャートである。
図6Bは、試料作製の様子を例示する図である。
【0043】
ACT1において、制御装置20は、上述したような、フィルタ100によるフィルタリングを実行する。制御装置20は、測定対象物43が結合した磁性粒子42と測定対象物43が結合していない単体の磁性粒子42とを含む溶液をフィルタ100に移動させて、フィルタ100に当該溶液を添加する。これにより、濾別処理が行われる。ACT1のフィルタリングにより、フィルタ100の基材101上には主に被検出物41が残る。
【0044】
ACT2において、制御装置20は、上述したような、フィルタリング後のフィルタ100の洗浄を実行する。ACT2の洗浄により、フィルタ100の基材101上には残渣として被検出物41が残る。
【0045】
ACT3において、制御装置20は、被検出物41が残っているフィルタ100を溶液110中に移動させる。ここで、溶液110が入っている容器の底面には、超音波発生素子51を備える検出センサ13が配置されている。溶液110中では、例えば、被検出物41が付着しているフィルタ面が超音波発生素子51と向い合わせにされる。制御装置20は、不図示の駆動回路に駆動信号を送信することで、超音波発生素子51に超音波Uを発生させる。発生した超音波Uは、溶液110中の粒子に振動を引き起こす。フィルタ100に付着している被検出物41に振動が伝達することにより、被検出物41がフィルタ100から分離される。分離された被検出物41は、例えば、溶液110中を沈降して検出センサ13上に堆積する。表面に被検出物41が堆積した検出センサ13を溶液110中から取り出すことにより、検出用試料の作製が完了する。
【0046】
このように、制御装置20は、試料調製装置の制御部として、超音波発生素子51から超音波を発生させることと、発生した超音波により、被検出物41が捕捉されたフィルタ100から被検出物41を分離させて、表面上に被検出物41が配置された検出センサ13を取得することと、を制御する。
【0047】
以上説明したように、本実施形態では、検出センサ13上に超音波発生素子51が形成されている。フィルタ100から被検出物41を分離する際に、溶液110中で超音波発生素子51が超音波を発生することで、フィルタ100に超音波の影響を与える。超音波により、フィルタ100に捕捉されていた被検出物41が全て解離される。フィルタ100から被検出物41が確実に分離されることができる。したがって、溶液110にフィルタ100で捕捉した被検出物41を全て抽出して被検出物41を確実に検出できる検出センサ13、及び測定装置1を提供することができる。
【0048】
また、溶液110が入っている容器の底面に配置した検出センサ13の超音波発生素子51が超音波を発生することで、フィルタ100に付着している被検出物41が検出センサ13上に堆積する。通常の試料作製の工程における抽出及び滴下の工程を削減できる。試料調製装置における試料作製に要する時間の短縮が見込まれる。
【0049】
本実施形態では、検出センサ13と超音波発生素子51とが一体化されている。一体化することで、導電体からなる第1の膜17を、検出センサ13を構成する膜及び超音波発生素子51に電圧を印加するための電極として使用することができる。
【0050】
なお、検出センサ13に設けられる超音波発生素子の形状及び配置は、
図5A及び
図5Bに示されるものに限定されない。
図7は、検出センサ13の他の例を示す上面図である。例えば、円形の超音波発生素子51Aが、C型の空隙19の周囲を囲むように配置されてよい。つまり、超音波発生素子51Aは、検出センサ13の表面上に、凹凸部を含むパターン全体の外周を囲むように配置されてよい。検出センサ13に設けられたパターン(例えばC型の空隙19)の外周に、空隙19を囲むようにして環状の超音波発生素子51を設けてよい。
【0051】
図8Aは、検出センサ13の他の例を示す断面図である。
図8Bは、検出センサ13の他の例を示す上面図である。複数の超音波発生素子51Bが、検出センサ13に設けられたC型の空隙19などのパターンと並ぶようにして配置されてよい。例えば、
図8A及び
図8Bでは、C型の空隙19と超音波発生素子51Bとが交互に(1つおきに)並べて配置されている。C型の空隙19の間に超音波発生素子51Bを配置することで、超音波を発生した際にそこに被検出物が集まりやすくなる。交互の配置以外にも、種々の配置が可能である。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
電磁波の反射率又は透過率の変化によって被検出物を検出する検出装置に用いられる、前記電磁波が照射される表面を備えた検出センサであって、超音波発生素子を有する、検出センサ。
[2]
前記検出センサの前記表面上には、凹凸部を含むパターンが形成されており、
前記超音波発生素子は、前記表面上に、前記パターン全体の外周を囲むように配置されている、[1]に記載の検出センサ。
[3]
前記検出センサの前記表面上には、凹凸部を含むパターンが形成されており、
前記超音波発生素子は、前記表面上に、前記パターンの前記凹凸部と並べて配置されている、[1]に記載の検出センサ。
[4]
前記超音波発生素子は、圧電材料からなる、[1]乃至[3]のいずれか1項に記載の検出センサ。
[5]
[1]乃至[4]のいずれか1項に記載の検出センサと、
前記表面上の前記被検出物に電磁波を照射する照射部と、
前記電磁波の反射率又は透過率の変化を検出する検出器と、
前記検出器で検出した前記電磁波の特性変化に基づいて、前記被検出物中の測定対象物の有無を特定する又は量を測定する制御部と、を具備する、測定装置。
[6]
電磁波の反射率又は透過率の変化によって被検出物を検出する検出装置に用いられる、前記電磁波が照射される表面を備えた検出センサであって、超音波発生素子を備える、検出センサと、
前記超音波発生素子から超音波を発生させることと、
発生した前記超音波により、被検出物が捕捉されたフィルタから前記被検出物を分離させて、前記表面上に前記被検出物が配置された前記検出センサを取得することと、
を制御する制御部を含む、試料調製装置。
【符号の説明】
【0053】
1…測定装置、10…検出装置、11…電磁波発生源、12…反射部、13…検出センサ、14…ステージ、15…検出器、16…試料導入部、20…制御装置、41…被検出物、42…磁性粒子、43…測定対象物、51…超音波発生素子。