(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】合成グラファイト粉末を用いる熱伝導性薄膜の生成方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/373 20060101AFI20230516BHJP
C01B 32/225 20170101ALI20230516BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
H01L23/36 M
C01B32/225
H05K7/20 F
(21)【出願番号】P 2020518034
(86)(22)【出願日】2018-09-28
(86)【国際出願番号】 KR2018011516
(87)【国際公開番号】W WO2019066543
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-08-03
(31)【優先権主張番号】10-2017-0127267
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】318017154
【氏名又は名称】インドン・アドバンスド・マテリアルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Indong Advanced Materials, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】キム・ドンハ
【審査官】多賀 和宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-137860(JP,A)
【文献】国際公開第2015/092871(WO,A1)
【文献】特開2007-129201(JP,A)
【文献】特開2013-230975(JP,A)
【文献】特表2008-512852(JP,A)
【文献】特開2013-149946(JP,A)
【文献】特開2010-070412(JP,A)
【文献】特表2007-538407(JP,A)
【文献】登録実用新案第3147891(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12、23/36-373
C01B 32/225
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性薄膜を作製するための方法であって、
(1)合成グラファイト粉末
を減圧条件下で前処理すること、
(2)インターカラントを前処理された合成グラファイト粉末に加えること、
(3)インターカラントが加えられた合成グラファイト粉末を
1500℃~3000℃で熱処理すること、及び
(4)熱処理された合成グラファイト粉末を圧延すること
を含
み、
前記前処理を、10
-2
~10
-5
トルの減圧条件下で1500~2600℃での前記合成グラファイト粉末の熱処理として実施する、熱伝導性薄膜を作製するための方法。
【請求項2】
工程(1)における合成グラファイト粉末がグラファイト化コークス粉末、キッシュ・グラファイト粉末、又はこれらの混合粉末である、請求項1に記載の熱伝導性薄膜を作製するための方法。
【請求項3】
工程(1)における合成グラファイト粉末が50~200μmの粒径を有する、請求項1に記載の熱伝導性薄膜を作製するための方法。
【請求項4】
インターカラントが、硫酸、硝酸、塩素酸カリウム、硝酸カリウム、及びこれらの混合物から成る群から選択される第1酸化剤を40~60%の濃度で含んで成る、請求項1に記載の熱伝導性薄膜を作製するための方法。
【請求項5】
インターカラントが、過塩素酸、過酸化水素、クロム酸、ホウ酸、及びこれらの混合物から成る群から選択される第2酸化剤をさらに含んで成り、並びに第1酸化剤及び第2酸化剤が1:100~50:100の重量比で含まれる、請求項
4に記載の熱伝導性薄膜を作製するための方法。
【請求項6】
熱処理された合成グラファイト粉末が150~300%の膨張度を有し、及び該膨張度は、グラファイト結晶構造における膨張前のC軸値を基準とする膨張後のC軸値の割合として規定される、請求項1に記載の熱伝導性薄膜を作製するための方法。
【請求項7】
工程(1)における合成グラファイト粉末が50~200μmの粒径を有し
、
インターカラントが、硫酸、硝酸、塩素酸カリウム、硝酸カリウム及びこれらの混合物から成る群から選択される第1酸化剤を40~60%の濃度で含んで成り
、及び
熱伝導性薄膜が、50~1000μmの厚さ、
1.74~2.519g/cm
3の密度、及び300~700W/m・Kの水平方向における熱伝導率を有する、請求項1に記載の熱伝導性薄膜を作製するための方法。
【請求項8】
厚さが50~1000μm、密度が1.74~2.519g/cm
3
、水平方向の熱伝導率が300~700W/m・Kである、請求項1~
7のいずれか1つの方法によって作製される熱伝導性薄膜。
【請求項9】
引張強度が20~50kg/mm
2である、請求項
8に記載の熱伝導性薄膜。
【請求項10】
請求項
8に記載の熱伝導性薄膜が供される物品。
【請求項11】
電子デバイス、電子デバイスケース、照明デバイス、バッテリー、バッテリー・ケース、又はEMIガスケットである、請求項
10に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートフォン等の電子機器(又はデバイス;device)に組み込まれた要素を熱から保護するための熱伝導性薄膜を作製(preparing)するための方法に関する。より具体的には、本発明は、熱伝導率に優れる熱伝導性薄膜を作製するための方法と、原料グラファイト(又は黒鉛;graphite)粉末(又はパウダー;powder)から薄膜への形成に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器は急速に高度に集積化され、薄型化されてきており、そのような機器に組み込まれるチップ性能が強化されてきた。この傾向は、電気/電子機器だけでなく自動車、医療機器等にも広がっている。電子機器で使用されるチップは高度に集積化されるために、熱がより多く発生し、それにより電子機器の性能の劣化、周辺機器の誤動作、基板の熱劣化等、多くの問題をもたらす。特に、LED、OLEDなどを採用する照明機器又は電子機器のためにより薄い放熱材料が要求される。これに関して、ICチップが取り付けられる基板は良好な熱伝導率を有する金属プリント回路基板(PCB)から作製され、又はアルミニウムから作製されるヒート・シンクが使用されて熱を制御する。さらに、炭素系材料、銅箔等を用いる天然グラファイト薄膜及び合成グラファイト薄膜等の熱伝導性薄膜が、電子機器での熱を制御するために主に使用される(韓国特許番号1509494)。
【0003】
これらのうち、天然グラファイト薄膜は、酸及び熱処理により(through)弱いファンデルワールス力によって結合された分子間空間を膨張させ、次いでそれをプレスすることによって一般的に作製される。その厚さは比較的厚い。薄膜がこの方法で作製される場合、引張強度が低く、それにより取り扱いが困難になり、熱伝導率がそれほど高くないという問題がある。
【0004】
さらに、合成グラファイト薄膜は天然グラファイト薄膜よりも熱伝導率において優れている。しかしながら、合成グラファイト薄膜は高価な高分子膜(例えばポリイミド膜)を2000~3000℃の高温で焼成することにより作製されるため、原材料及び設備の点で高コストになり(involve)、最終製品の価格の増大をもたらし、広い幅(例えば1000mm)を有するロール状での薄膜を作製することが困難となる。
【0005】
さらに、銅箔は天然グラファイト薄膜と合成グラファイト薄膜との間の中間レベルの熱伝導率及び引張強度を有する。しかしながら、銅箔は、薄い銅箔の作製は高コスト(involve)を有し、一旦くしゃくしゃ(crumpled)になるとほとんど元に戻せないため銅箔の取り扱いに不便であるという不利がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、合成グラファイト粉末を用いる方法によって、ポリイミド等から作製される従来の合成グラファイト薄膜よりも低コストで、従来の天然グラファイト薄膜又は金属薄膜と比較して優れた熱伝導率を有する熱伝導性薄膜を作製するための方法を供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、上記方法によって作製される熱伝導性薄膜を供することである。
【0008】
さらに本発明の別の目的は、内部に熱伝導性薄膜が供される物品を供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
目的に従って、本発明は熱伝導性薄膜を作製するための方法を供し、
(1)合成グラファイト粉末を加圧又は減圧条件下で前処理すること、
(2)インターカラント(又はインターカラント剤、挿入剤;intercalant)を前処理された合成グラファイト粉末に加えること、
(3)インターカラントが加えられた合成グラファイト粉末を熱処理すること、及び
(4)熱処理された合成グラファイト粉末を圧延すること、
を含む、熱伝導性薄膜を作製するための方法を供する。
【0010】
別の目的に従って、本発明は上記方法によって作製された熱伝導性薄膜を供する。
【0011】
さらに別の目的に従って、本発明は、電子機器、電子機器ケース、照明機器、バッテリー、バッテリー・ケース、又はEMIガスケットである、内部に熱伝導性薄膜が供される物品を供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、合成グラファイト粉末を用いる方法によって、ポリイミド等から作製される従来の合成グラファイト薄膜よりも低コストで、従来の天然グラファイト薄膜又は金属薄膜と比較して優れた熱伝導率を有する熱伝導性薄膜を作製するための方法を供することである。
【0013】
本発明で作製される熱伝導性薄膜はICチップが高度に集積されたスマートフォン、タブレットPC及び照明機器等の電子機器で発生する放熱し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は本発明による熱伝導性薄膜を作製するための方法の一例を示す。
【
図2】
図2は膨張前の合成グラファイト粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の画像である。
【
図3】
図3は合成グラファイト粉末を選別するための篩(又はメッシュ;mesh)の様々な例を示す。
【
図4】
図4は実施例により作製された熱伝導性薄膜の断面のSEM画像である。
【
図5】
図5は減圧条件下で前処理を実施しないで作製された薄膜の断面のSEM画像である。
【
図6】
図6はグラファイトの結晶構造及びC軸値の一例を示す。
【
図7a】
図7aは熱伝導性薄膜が適用された携帯電話の分解図を示す。
【
図7b】
図7bは熱伝導性薄膜が適用された電子機器の断面図を示す。
【
図7c】
図7cは熱伝導性薄膜が適用された電子機器の断面図を示す。
【
図7d】
図7dは熱伝導性薄膜が適用された電子機器の断面図を示す。
【
図8a】
図8aは熱伝導性薄膜が適用された直接型及びエッジ型フラットパネル照明機器の平面図を示す。
【
図8b】
図8bは熱伝導性薄膜が適用された直接型及びエッジ型フラットパネル照明機器の平面図を示す。
【
図9a】
図9aは熱伝導性薄膜が適用された直接型及びエッジ型フラットパネル照明機器の断面図を示す。
【
図9b】
図9bは熱伝導性薄膜が適用された直接型及びエッジ型フラットパネル照明機器の断面図を示す。
【
図10】
図10は熱伝導性薄膜が適用された電球型ランプを示す。
【
図12】
図12は熱伝導性薄膜が適用された電気自動車の斜視図及び電気自動車に取り付けられたバッテリー・セルの拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0016】
熱伝導性薄膜を作製するための方法
本発明の実施形態によると、熱伝導性薄膜を作製するための方法が供され、当該方法は、(1)加圧又は減圧条件下で合成グラファイト粉末を前処理すること、(2)インターカラントを前処理された合成グラファイト粉末に加えること、(3)インターカラントが加えられた合成グラファイト粉末を熱処理すること、及び(4)熱処理された合成グラファイト粉末を圧延すること、を含む。
【0017】
図1は、本発明による熱伝導性薄膜を作製するための方法の一例を例示する。
【0018】
図1を参照すると、本発明の実施形態によると、合成グラファイト粉末が作製される(S100)。当該粉末は粒径に基づいて選別される(S200)。それらは、高温加圧の前処理又は高温減圧の前処理にかけられる(S300)。インターカラントが加えられ、インターカレーションを実施する(S400)。これらは1500~2200℃の温度で熱処理され、合成グラファイト粉末を膨張させる(S500)。これらは圧延工程(又はステップ;step)を経て薄膜化される(S600)。そして、最終的な熱伝導性薄膜が得られる(S700)。
以下に、各々の工程を詳細に説明する。
【0019】
(1)前処理工程
上記工程(1)では、合成グラファイト粉末が加圧又は減圧条件下で作製される。
【0020】
合成グラファイト(又は人工グラファイト)は、グラファイト化可能な炭素材料を人工的に処理することによりグラファイト化された材料であり、自然状態で存在するグラファイトを集めることにより得られる天然グラファイトと区別される。
【0021】
従って、本発明の熱伝導性薄膜の原材料として用いられる合成グラファイト粉末は、グラファイト薄膜の作製で従来用いられてきた天然グラファイト粉末と区別される。即ち、結晶性フレーク状グラファイト粉末又はアモルファスグラファイト粉末等の天然グラファイト粉末は本発明では用いられていない。
【0022】
原材料及び作製方法に従って様々な種類の合成グラファイトがある。一般に、石油又は石炭の副産物であるコークスを高温で熱処理することにより得られるグラファイト化コークスに関する。上述のように、合成グラファイトは、1000~2000℃、必要に応じて2000~3000℃での熱処理を通して通常作製される。従って、純度、結晶性、電気導電率、熱伝導率(又は熱伝導性;thermal conductivity)等の点で天然グラファイトより優れている。
【0023】
さらに、溶銑(molten pig iron)又は鋳鉄(cast iron)の冷却により分離されたグラファイトとスラグの混合物からグラファイト成分のみを精製することにより得られるキッシュ・グラファイト(又はキッシュ黒鉛;kish graphite)も合成グラファイトの幅広い範囲に含まれる。
【0024】
合成グラファイトは六方晶の結晶構造を有し、約12.0の分子量を有し、黒色粉末の概観を有し得る。さらに、合成グラファイトは約2.23~2.25の比重、約3500℃以上の融点、1~2のモース硬度、及び約0.46cal/g・℃の比熱を有し得る。さらに合成グラファイトは約0.4~1.0cal/cm・s・℃の熱伝導率、約1.7×10-6の熱膨張係数、約3.5×105kg/cm2の弾性率、約0.04~0.08Ω・cmの電気抵抗、約0.1~0.2の摩擦係数を有し得る。
【0025】
本発明による合成グラファイト粉末として熱伝導率を有する球状、フレーク状、又は板状の合成グラファイト粉末を選択することが好ましい。それらのメーカーは、サングラフ(Sungraf)、テンリー・カーボン(Tennry Carbon)、及びバイ・シン・グラファイト(Bai Xing Graphite)を含む。
【0026】
図2は合成グラファイト粉末(膨張前)の例示的なSEM画像である。このような合成グラファイト粉末は空隙(又はボイド、又は空間;void)を有し、インターカレーションにより膨張することができる。
【0027】
本発明で用いられる合成グラファイト粉末は、発泡性合成グラファイト粉末である限り、特に制限されない。
【0028】
好ましい例として、合成グラファイト粉末はグラファイト化コークス粉末、キッシュ・グラファイト粉末、又はそれらの混合粉末であり得る。
【0029】
このような合成グラファイト粉末は、鉄鋼分野での電極棒の生成、携帯電話用のカソード材料、原子力用の減速剤等のために従来主に使用されてきた。
【0030】
合成グラファイト粉末は、粒径に応じて炭素含有量、層間隔(又は層間空間;interlayer space)、密度等の物性が異なる。
【0031】
下の表1及び表2は、合成グラファイト粉末の粒径に応じて様々な物理的性質をまとめたものである。
【0032】
【0033】
【0034】
従って、合成グラファイト粉末は、3~20μm、20~50μm、50~100μm、100~500μm、500~1000μm、又は1000~2000μmの粒径を有し得る。
【0035】
好ましくは、合成グラファイト粉末は50~500μmの範囲、50~200μmの範囲、又は100~200μmの範囲、又は100~150μmの範囲の粒径を有し得る。
【0036】
合成グラファイト粉末の粒径が上記の好ましい範囲内である場合、インターカラントがグラファイト粉末の空隙に上手く挿入され、よく膨張するという利点がある。
【0037】
このような合成グラファイト粉末は、加圧又は減圧条件下で前処理される。
【0038】
合成グラファイト粉末及び最終的な薄膜の熱伝導率は、前処理によってさらに向上させることができる。
【0039】
熱伝達の理論によると、熱は自由電子及び分子の移動によって、より具体的には、格子運動によって伝達される。熱エネルギーは高い方から低い方へ伝達される。このような場合、大きな分子間スペース(又は空間;space)又はギャップ(又は間隔;gap)は結果として熱伝達が低下する。下記の式1で示すように、熱伝導率は密度の影響を受けるため、分子間のスペースを可能な限り狭くさせるために、高密度化により最終的な薄膜の熱伝導率をさらに向上する可能性がある。
[式1] λ=ραCp
【0040】
上記の式中における、λは熱伝導率(W/m・K)、ρは密度(g/cm3)、Cpは比熱(J/g・K)、及びαは温度拡散率(m2/s)である。
【0041】
このような最終薄膜の高密度化は、原料である合成グラファイト粉末を加圧又は減圧条件下で前処理することにより達成することができる。
【0042】
一例として、合成グラファイト粉末は、100~2000バールの加圧条件下で前処理され得る。合成グラファイト粉末が、このような加圧条件下での前処理により、硬くなるように凝集し、高密度化が達成される。
【0043】
別の一例として、合成グラファイト粉末は、10-2から10-7トル(Torr)の減圧条件下で前処理され得る。合成グラファイト粉末の微細構造において、インターカレーションのための空間は、膨張度を向上するために、このような減圧条件下での前処理により増加し、その後の圧延で強化された層間構造を有する薄膜が得られ、高密度化を達成する。
【0044】
加圧又は減圧条件下での前処理は、室温又は高温条件下で実施され得る。例えば、熱処理が、前処理時に500~3000℃、500~2500℃、500~2000℃、1500~2600℃、又は1000~3000℃の温度で実施され得る。炭素原子が、グラファイト結晶モデル(例えば、マーシュ・グリフィス(Marsh-Griffiths)モデル)に示されているような高温条件下での前処理により、グラファイト結晶構造をさらに成長するために再配置され、熱伝導率が強化される。さらに、合成グラファイト粉末の膨張度及び粒子間スペースが、減圧条件下での前処理中の温度条件を調整することにより、変化させることができる(表8参照)。
【0045】
好ましい例として、前処理は100~2000バール(bar)の加圧条件下で500~3000℃で合成グラファイト粉末の熱処理として実施され得る。
【0046】
別の好ましい例として、前処理は10-2~10-5トル(Torr)の減圧条件下で500~3000℃で合成グラファイト粉末を熱処理として実施され得る。
【0047】
このような高温での減圧熱処理のために、減圧することができる炉を用いられ得る。炉の種類は、誘導加熱炉又は抵抗加熱炉であり得る。
【0048】
前処理は30分~50時間、30分~30時間、又は30分~10時間に調整され得る。
【0049】
必要な場合、所望の粒径範囲へ合成グラファイト粉末を選別する工程が前処理の前に予め実施され得る。
【0050】
粒径に応じて合成グラファイト粉末の選別が篩を用いて実施され得る。例えば、格子篩が使用され得る。
【0051】
篩の特定の形状のために、
図3を参照して、(i)長方形の穴を有する格子篩、(ii)正方形の穴及び長方形の穴をともに有する格子篩、又は(iii)正方形の穴を有する格子篩が使用され得る。さらに、これらの篩の内の1つ、又はそれらの組合せが使用され得る。
【0052】
一例によると、合成グラファイト粉末の選別は、以下に続く、(i)長方形の穴を有する格子篩を用いる第1の選別(ii)長方形の穴及び正方形の穴をともに有する格子篩を用いる第2の選別(iii)正方形の穴を有する格子篩を用いる第3の選別を含んで成る。
【0053】
篩の材料として、鋼、ステンレス鋼(SUS)、ガラス繊維強化プラスチック(FRP)、又はこれらの組合せが用いられ得る。特に、これらの中でも、不飽和ポリエステル樹脂及びガラス繊維を混合したFRP材が、軽量、硬度、耐久性、経済性の観点から、好ましい。さらに、FRP材は耐薬品性、絶縁性、非磁性特性も有しており、グラファイト処理に有利である。
【0054】
(2)インターカレーション工程
上記工程(2)において、インターカラントが前処理された合成グラファイト粉末に添加される。
【0055】
酸化剤がインターカラントとして用いられ得る。
【0056】
例えば、硫酸、硝酸、塩素酸カリウム、硝酸カリウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される強酸化剤が第1の酸化剤として使用され得る。好ましい例として、硫酸、硝酸、硫酸及び硝酸の混合物、硝酸及び塩素酸カリウムの混合物、又は硫酸及び硝酸カリウムの混合物が第1の酸化剤として使用され得る。
【0057】
しかしながら、第1の酸化剤が単独で使用される場合、硫酸のSO3等の水分子に強く結合したイオンが存在し得るため、インターカレーションは困難になり得る。
【0058】
従って、過塩素酸、過酸化水素、クロム酸、ホウ酸、及びそれらの混合物のから成る群から選択される化合物が、第1の酸化剤を伴う処理にて第2の酸化剤(又は補助酸化剤)としてさらに使用されることが好ましい。
【0059】
この場合、第1の酸化剤及び第2の酸化剤は各々5~60%の濃度で使用され得る。例えば、それらは、各々10~60%の範囲、20~60%の範囲、30~60%の範囲、又は40~60%の濃度で使用され得る。
【0060】
第1の酸化剤と第2の酸化剤の混合重量比は1:100~50:100、より具体的には1:100~20:100、さらにより具体的には1:100~10:100であり得る。
【0061】
好ましい例として、インターカラントは、硫酸、硝酸、塩素酸カリウム、硝酸カリウム、及びそれらの混合物から成る群から選択される第1の酸化剤を40~60%の濃度で含んで成り得る。さらに、そのような場合、インターカラントは、過塩素酸、過酸化水素、クロム酸、ホウ酸、及びそれらの混合物から成る群から選択される第2の酸化剤をさらに含んで成り得る。第1の酸化剤及び第2に酸化剤は、1:100~50:100の重量比で含んで成り得る。
【0062】
(3)熱処理工程
上記工程(3)では、インターカラントを加えられた合成グラファイト粉末が熱処理される。
【0063】
合成グラファイト粉末は熱処理により膨張され得る。
【0064】
熱処理は、約1000~3000℃の温度で実施され得る。より具体的には、1000~2500℃、1500~3000℃、1500~2500℃、1200~2200℃、1500~2200℃、又は1000~2200℃の温度で実施され得る。
【0065】
対照的に、従来の天然グラファイト粉末の作製では、膨張は700~800℃の範囲の温度で一般に実施される。本発明では、上記の好ましい温度範囲で熱処理を実施することにより、熱伝導率がさらに向上する可能性がある。
【0066】
このように熱処理された合成グラファイト粉末は、120~500%、具体的には120~195%、130~170%、又は150~300%の膨張度を有し得る。
【0067】
ここで、膨張度は、グラファイト結晶構造における膨張前のc軸値を基準とする、膨張後のc軸値の百分率として定義され得る。
【0068】
グラファイトの一般的な結晶構造では、
図6に示すように、6つの炭素からなる環(又はリング;ring)が、c軸値(層間隔の2倍)が約6.657オングストロームである層を形成するために接続され、炭素間の結合長は約1.42オングスト
ロームである。さらに、炭素の単位格子は4つの炭素原子を含み、格子定数は約2.456
オングストロームである。
【0069】
このようにして膨張させたグラファイトは、圧延前に、膨張させたグラファイトを凝集させるために添加したバインダー樹脂(又は接着剤)と混合され得る。バインダー樹脂の添加は、所望のグラファイト薄膜の厚さに応じて決定され得る。同じ厚さでさえも高密度の薄膜の生成に使用され得る。バインダー樹脂が加えられる場合、その後の圧延工程で加工率(reduction ratio)をより高くすることができ、向上した熱伝導率を有する薄膜が得られることができる。
【0070】
従来の接着性樹脂がバインダー樹脂として用いられ得る。それらの具体的な例は、セルロース系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂(例えば、メチルメタクリレート、アルキルアクリレートポリマー)、フェノール系樹脂(例えばレゾール、ノボラック、レゾルシール、ホルムアルデヒド、キシレン、フラン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ニトリルゴム、クロロプレン、ナイロン等)、ウレタン系樹脂、(例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン等)、アミノ系樹脂、メラミン系樹脂、酢酸系樹脂、ポリイソシアネート系樹脂を含んで成り得る。
【0071】
バインダー樹脂は、硬化の迅速さ及び板状薄膜を作製する際における引張強度の改良を達成するために紫外線(UV)硬化性樹脂をさらに含んで成り得る。ウレタンアクリレート系樹脂が紫外線硬化性樹脂として使用され得る。紫外線硬化性樹脂は、最終的な板状製品に1重量%未満の量で含まれるように加えられ得る。このような少量でも、板状製品の引張強度及びその作製の迅速さを確保することができる。
【0072】
紫外線硬化性樹脂が添加されたグラファイトは、紫外線硬化工程をさらに受け得る。例えば、紫外線硬化は、315nm~400nmの範囲で、より具体的には350~380nmの範囲の波長で実行され得る。アーク放電ランプが紫外線ランプとして使用され得る。例えば、ガリウムランプ、水銀ランプ、メタルランプ等を用いられ得る。グラファイト薄膜の特性の観点から、それらランプの間で、ガリウムランプを使用して硬化させることがより有利であり得る。
【0073】
(4)圧延工程
上記工程(4)において、熱処理された合成グラファイト粉末が圧延される。
【0074】
圧延は、例えば、プレス(又は押圧、又は圧縮;pressing)のためにプレスローラーを1~5回通過して実行され得る。プレス条件及び圧延の繰り返し回数は、薄膜の所望の厚さを考慮して決定され得る。圧延は、薄膜の厚さを調整し、その密度、熱伝導率、及び引張強度を向上させ得る。
【0075】
このようにして得られた薄膜は、そのまま熱伝導性薄膜として使用され得る。
【0076】
代替として、熱伝導性薄膜が、複合シート(又はコンポジット・シート;composite sheet)を形成するために他の機能層と組み合わせられ得る。例えば、熱伝導性薄膜は、接着特性を付与するために接着層(又は接着剤層;adhesive layer)と組み合わせられ得る。
【0077】
そのような場合、接着層は、熱伝導率をさらに向上するために熱伝導性フィラーを有して成り得る。例えば、接着層は、炭素系フィラー、金属系フィラー、又はそれらの複合フィラーを含んで成り得る。
【0078】
具体的には、接着層は、炭素系フィラー及び金属系フィラー;バインダー樹脂;及び接着剤、を含んで成る複合フィラーを含んで成り得る。
【0079】
一例として、上記工程(4)において、熱処理された合成グラファイト粉末を接着層の少なくとも一方側にコーティングされ、接着層と組み合わされた熱伝導性薄膜を得るために圧延され得る。
【0080】
特に、熱処理により膨張した合成グラファイト粉末が接着層の両側に塗布され、次いで圧延される場合、熱伝導性フィラーの高い充填率を有しながら、優れた引張強度及び柔軟性を有する熱伝導性薄膜を容易に作製することができる。さらに、そのような場合、粉末状固体のフィラーが接着層の両面に塗布され、次いで圧延される場合、接着層の接着成分の一部がフィラー層の中へ浸透し得て、それにより中間層の結合力を向上する副作用を生じる。
【0081】
別の例として、接着層の少なくとも一方側に熱伝導性薄膜を積層する工程が、上記工程(4)に続いてさらに実行され得る。
【0082】
上記のような熱伝導性薄膜を作製するための工程の好ましい例として、工程(1)における合成グラファイト粉末は、50~200μmの粒径を有する。前処理は10-2~10-5トルの減圧条件下500~3000℃での合成グラファイト粉末の熱処理として実施される。インターカラントは、40~60%の濃度で硫酸、硝酸、塩素酸カリウム、硝酸カリウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される第1の酸化剤を含んで成る。工程(3)における熱処理は1500~3000℃の温度で実施される。また、熱伝導性薄膜は、50~1000μmの厚さ、1.5~2.0g/cm3の密度、及び300~700W/m・Kの範囲での熱伝導率を有し得る。
【0083】
熱伝導性薄膜
本発明の別の実施形態によると、上記工程によって作製された熱伝導性薄膜が供される。
【0084】
即ち、熱伝導性薄膜は、膨張した合成グラファイト粉末を圧延することにより得られる熱伝導性薄膜である。
【0085】
具体的には、熱伝導性薄膜は、合成グラファイト粉末にインターカレーションをして、熱膨張して、圧延するためにインターカラントを加えることにより得られ得る熱伝導性薄膜である。
【0086】
図4は、本発明の実施例によって作製された熱伝導性薄膜の断面のSEM画像である。
【0087】
本発明による熱伝導性薄膜は、厚さ、密度、熱伝導率に優れている。
【0088】
例えば、熱伝導性薄膜は、20~3000μmの厚さ、より具体的には30~2000μmの範囲又は50~1000μmの範囲の厚さを有し得る。
【0089】
さらに、熱伝導性薄膜は、1.0~2.5g/cm3の密度、より具体的には1.3~2.2g/cm3の範囲、又は1.5~2.0g/cm3の範囲の密度を有し得る。
【0090】
さらに、熱伝導性薄膜は、200~1000W/m・Kの水平方向の熱伝導率、より具体的には300~900W/m・Kの範囲の熱伝導率、300~800W/m・Kの範囲、又は300~700W/m・Kの範囲の熱伝導率を有し得る。
【0091】
好ましい例として、熱伝導性薄膜は50~1000μmの厚さ、1.5~2.0g/cm3の密度、及び300~700W/m・Kの水平方向の熱伝導率を有し得る。
【0092】
熱伝導性薄膜には、少なくともその一方の側に1つ以上の機能層がさらに供され得る。
【0093】
例えば、熱伝導性薄膜には、接着層がさらに供され得る。
【0094】
そのような場合、接着層は熱伝導性フィラーを有して成り得る。例えば、接着層は、炭素系フィラー、金属系フィラー、又はそれらの複合フィラーを含んで成り得る。
【0095】
具体的な一例は、熱伝導性薄膜には、少なくともその一方に接着層をさらに供され得る。
【0096】
別の一例として、熱伝導性薄膜には その両面に接着層がさらに供され得る。接着層は、炭素系フィラー、金属系フィラー、又はそれらの複合フィラーを含んで成り得る。
【0097】
上記のような接着層を供された熱伝導性薄膜は、引張強度に優れ得る。例えば、接着層を供された熱伝導性薄膜は20~50kg/mm2を有し得る。
【0098】
さらに、熱伝導性薄膜がその両側に接着層を供され、接着材層が上記例で説明されたような熱伝導性薄膜を有して成る場合、フィラーの充填率がさらに向上させられ得る。
【0099】
物品及び放熱方法
本発明のさらに別の実施形態によると、内部に熱伝導性薄膜が供された物品が供される。
【0100】
本発明が適用される物品は、電子機器、電子機器ケース、照明装置、バッテリー、バッテリー・ケース、又はEMIガスケットであり得る。
【0101】
電子機器は、携帯電話、デスクトップPC、ラップトップPC、タブレットPC、仮想現実(VR)機器、セットトップ・ボックス、手持ち式(handheld)のゲーム機、外付けハード・ディスク・ドライブ、MP3プレイヤー、ビーム・プロジェクター、テレビ、モニター、カー・ブラック・ボックス、カー・ナビゲーター、通信機器、電力変換器、動力電源(power supplier)、又は医療用電子機器であり得る。
【0102】
さらに、照明装置は、LED照明装置または電球であり得る。
【0103】
好ましくは、物品は、電気的、電子的、又は化学的作用によって熱を発生する熱源を有し得る。例えば、電子機器は、電子素子、回路基板、又は光源を含んで成り得る。
【0104】
熱伝導性薄膜は、熱源の表面、熱源と密接に接触するヒート・シンクの表面、又は熱源に隣接する物品のケーシングに直接取り付けられ得る。
【0105】
好ましい例として、物品は、熱源を有して成る電子機器、照明機器、又はバッテリーであり、熱伝導性薄膜は、熱源の表面、熱源と密接に接触するヒート・シンクの表面、又は熱源に隣接する物品のケーシングに直接取り付けられ得る。
【0106】
図7a~
図12は、熱伝導性薄膜が様々な物品に使用されている例を示す。具体的には、
図7aは熱伝導性薄膜が適用された携帯電話の分解図を示す。
図7b~7dは熱伝導性薄膜が適用された電子機器の断面図を示す。
図8a~8bは熱伝導性薄膜が適用された直接型及びエッジ型フラットパネル照明機器の平面図を各々示す。
図9a~
図9bは熱伝導性薄膜が適用された直接型及びエッジ型フラットパネル照明機器の断面図を各々示す。
図10は熱伝導性薄膜が適用された電球型ランプを示す。
図11は熱伝導性薄膜が適用されたLED照明機器の断面図を示す。
図12は熱伝導性薄膜が適用された電気自動車の斜視図及び電気自動車に取り付けられたバッテリー・セルの拡大図である。
【0107】
図7aに示されるように、熱伝導性薄膜(1)は、携帯電話のディスプレイ・ユニット(113)又はチップ・セット基板(115)に隣接して配置され得る。
【0108】
さらに、
図7b~
図7dに示されるように、熱伝導性薄膜(1)は、電気機器の熱源(11)(
図7bを参照)に対応する領域におけるケース(13)に、熱源(11)に密接に接触する(
図7cを参照)ヒート・シンク(12)の表面に、又は熱源(11)表面に(
図7dを参照)に直接取り付けられ得る。
【0109】
さらに、
図8a~9aで示されるように、熱伝導性薄膜(1)は、直接型フラットパネル照明装置のLED素子(20)の背面、又はLED素子と密接して接触するヒート・シンク(12)の背面に取り付けられ得る。
図8b~9bに示すように、熱伝導性薄膜(1)は、LED素子(20)が供されるエッジ型フラットパネル照明装置の端部に隣接する位置に、つまり、ケーシングの側面に取り付けられ得る。
【0110】
さらに、
図10に示されるように、熱伝導性薄膜は電球型ランプのケース(13)の内壁に取り付けられ得る。
【0111】
さらに、
図11は、典型的なLED照明装置の断面図を示す。熱伝導性薄膜(1)は、LED素子(20)が供される基板(50)の一方及びヒートシンク(12)の一方に取り付けられ得る。
【0112】
さらに、熱伝導性薄膜(1)は、バッテリー・セルを高温から保護するために、
図12に示されるような、電気自動車に取り付けられるバッテリー・セルの表面に取り付けられ得る。
【0113】
図13a~
図15eは、熱伝導性薄膜が様々な物品に適用される例をさらに詳細に示す。
【0114】
図13aに示されるように、熱伝導性薄膜(1)は、携帯電話(110)で最も熱を発生する要素の一つであるバッテリー(111)の前側(F)又は後側(B)に、又は携帯電話(110)のバッテリー・カバー(112)の前側(F)又は後側(B)に取り付けられ得て、それにより放熱効果を生み出す。
【0115】
さらに
図13bに示されるように、熱伝導性薄膜(1)は、携帯電話から熱を拡散するために、携帯電話本体に加えて携帯電話ケースに取り付けられ得る。例えば、熱伝導性薄膜(1)は、オープン型携帯電話ケース(120)の前側(F)又は後側(B)に、又は折り畳み式携帯電話ケース(130)のカバーユニット(131)の前側(F)又は後側(B)に、又は 折り畳み式携帯電話ケース内に携帯電話(110)を収容するためのハウジング・ユニット(132)の前側(F)又は後側(B)に取り付けらえることにより、放熱効果を生み出す。
【0116】
オープン型携帯電話ケース(120)及び折り畳み式携帯電話ケース(130)は、ポリマー樹脂、天然皮革、合成皮革、金属、ゴム、キュービックジルコニア、及びそれらの組み合わせから選択される材料を有して成り得る。
【0117】
さらに、熱伝導性薄膜(1)は携帯電話以外のモバイル機器に適用され得る。例えば、タブレットPC(200)の後側(B)に(
図14a参照)、ラップトップPC(300)のディスプレイ・ユニット(301)の後側(B)、又はキーボード・ユニット(302)の後側(B)に(
図14b参照)、手持ち式のゲーム機(400)の後側(B)に(
図14c参照)、又はMP3プレーヤー(500)の後側(B)に(
図14d参照)取り付けられ得て、それにより放熱効果を生み出す。
【0118】
さらに、熱伝導性薄膜(1)は、上記に例示した以外の様々な電子機器に適用され得て、外付けハードディスクドライブ(600)の前側(F)又は後側(B)に(
図15a)、セットトップ・ボックス(700)の上側(U)、底側、(L)、又は側面(S)に(
図15b参照)、ビーム・プロジェクター(800)の上側(U)又は底側(L)に(
図15c参照)、又はカー・ブラック・ボックス(900)の前側(F)又は後側(B)に(
図15d参照)取り付けられ得て、それにより放熱効果を生み出す。
【0119】
さらに、熱伝導性薄膜(1)は、電磁波障害(EMI)を抑制するための物品に適用され得る。例えば、EMIガスケット(950)の表面に取り付けられ得て、次いで、ケース(960)(
図15e参照)に取り付けられる。
【0120】
発明の形態
以下、下記実施例を参照して、本発明をより詳細に説明する。しかしながら、本発明の範囲は、実施例のみに制限されない。
【0121】
実施例1:熱伝導性薄膜の作製
1.1.合成グラファイト粉末の選定
球状の合成グラファイト粉末(サングラフ株式会社)を、最初に、篩を用いて粒径50~500μmを有する粉末に選定し、次に、粒径100~300μmの粒径を有する粉末に選定した。最終的に選定された合成グラファイト粉末の平均粒径は、100~200μmであった。
【0122】
1.2.前処理
選定された合成グラファイト粉末を減圧条件下で前処理した。具体的には、合成グラファイト粉末を減圧チャンバー(高温真空水素還元炉、HT-VH-RF-2000、ポリナノテク(Polynanotech)株式会社)に入れ、約10-2トルの減圧条件下で約2000℃で熱処理した。
【0123】
1.3.インターカラントの添加
前処理した合成グラファイト粉末を反応器の装置(又はインプット;input)に入れ、次いでインターカラントを添加することにより処理した。具体的には、最初の酸化剤として50%の濃度で、強力な酸化剤である、硫酸(H2SO4)を反応器に添加し、第2の酸化剤として50%の濃度で、補助酸化剤である、過塩素酸をさらに添加した。この際に、第1の酸化剤と第2の酸化剤の重量比は60:40であった。その後、これらは反応器内で混合し、続いて洗浄し、乾燥した。
【0124】
1.4.熱処理
インターカラントで処理された合成グラファイト粉末が配置された反応器を合成グラファイト粉末を熱処理し、合成グラファイト粉末を膨張させるために、1500℃に加熱した。
【0125】
1.5.圧延
膨張したグラファイトを回収し、厚さを調整するために板状に成型し、続いて加圧ローラーを用いて3~5回圧延することにより、薄膜を作製した。このように得られた薄膜は、長さを調整しながらロール状に巻き取った。
【0126】
試験例1:加圧前処理に関する密度変化の評価
最終的な薄膜の密度を評価するために、前処理を工程1.2で、減圧条件下の代わりに、加圧条件下で実施したことを除いて、実施例1に従って手順を実施した。
【0127】
そのような場合、合成グラファイト粉末を加圧チャンバー(等軸(又は等圧;equiaxed)加圧機、KCIP120、韓国真空(Korea Vacuum))に入れ、以下の表3に示すような100~2000barの加圧下で500~2000℃で熱処理した。
【0128】
加圧前処理により最終的に得られた薄膜の密度を測定し、以下の表3に示した。
【0129】
さらに、同条件で加圧前処理を行っていない薄膜の密度も比較例として示した。
【0130】
【0131】
上記表3に示すように、加圧前処理を実施した場合は、最終的な薄膜の密度の点で、加圧前処理を実施しなかった場合より優れている。
【0132】
試験例2:減圧前処理に関する密度変化の評価
最終的な薄膜の密度を評価するために、前処理を工程1.2で、様々な減圧条件下で実施したことを除いて、実施例1に従って手順を実施した。
【0133】
その際に、合成グラファイト粉末を減圧チャンバー(高温真空水素還元炉、HT-VH-RF-2000ポリナノテク(Polynanotech)株式会社)に入れ、10-1~10-5トルの圧力下で500~2000℃で熱処理した。
【0134】
減圧前処理により最終的に得られた薄膜の密度を測定し、以下の表4~7に示した。また、同条件下で減圧前処理を行っていない薄膜の密度も比較例として示した。
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
上記表4~7に示すように、加圧前処理を実施した場合は、最終的な薄膜の密度の点で、加圧前処理を実施しなかった場合より優れている。薄膜の密度は、温度及び減圧条件によって最大70%以上増加した。
【0140】
さらに、前処理を行った場合と行わなかった場合の最終的に得られた熱伝導性薄膜の断面を電子顕微鏡で観察し、それぞれ
図4及び5に示した。
【0141】
結果として、前処理により作製した薄膜(
図4)はすき間(又はボイド;void)をほとんど有しておらず、還元率は前処理なしで作製した薄膜(
図5)よりも高かった。
【0142】
試験例3:減圧前処理及び前処理温度に対する膨張度の評価
工程1.3での膨張前の減圧前処理を実施した、又は実施しなかったこと、及び前処理温度を評価のために変えたことを除いて、合成グラファイト粉末(粒径50~200μm)を用いて実施例1に従って手順を実施した。その後、合成グラファイト粉末の膨張度を、以下の式2に従って計算し、以下の表8にまとめた。
【0143】
[式2]
合成グラファイト粉末の膨張度(%)=(膨張後のc軸値/グラファイト結晶構造における膨張前のc軸値)×100
【0144】
【0145】
上記表8に示すように、減圧前処理を膨張前に実施すると合成グラファイト粉末の膨張度が向上した。膨張度も前処理温度に伴い向上した。
【0146】
試験例4:インターカラントの濃度に関する評価
工程1.3で使用したインターカラントの濃度を評価のために変更したこと以外は、実施例1に従って手順を実施した。
【0147】
具体的には、インターカラントの濃度を膨張のために20~50%の間で変更し、続いて走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。合成グラファイト粉末の膨張度を、式2に従って計算し、以下の表9にまとめた。
【0148】
【0149】
上記表9に示すように、合成グラファイト粉末の膨張度は、インターカラント濃度が50%だった際に良好に行われた。
【0150】
試験例5:膨張温度に関する評価
工程1.3での熱処理のための温度及び圧力条件を評価のために変更したこと以外は、実施例1に従って手順が実施をした。
【0151】
具体的には、以下の表10に示すように様々な温度及び圧力条件下で実施し、続いてSEMで合成グラファイト粉末の観察を行った。その結果をまとめた。
【0152】
【0153】
上記表10に示すように、合成グラファイト粉末の膨張のための熱処理の温度を1500~2200℃であった際、不純物が十分に除去され、結晶構造が優れていた。
【0154】
一方で、熱処理温度が800~1500℃であった際、空間は狭く、及び結晶構造が良く成長しなかった。
【0155】
試験例6:熱伝導率及び密度の測定
様々な厚さの熱伝導性薄膜を実施例1の手順に従い作製し、その熱伝導率及び密度を測定し、以下の表11にまとめた。そのような場合、レーザーフラッシュ分析(LFA)法に従い水平熱伝導率として熱伝導率を測定した。
【0156】
さらに、市販されている従来の天然グラファイト薄膜の熱伝導率及び密度を比較例として測定し、ともに示した。
【0157】
【0158】
上記表11に示すように、本発明による合成グラファイト粉末から作製された実施例の熱伝導性薄膜は、従来の天然グラファイト薄膜と比較して熱伝導率及び温度拡散率が大幅に向上した。
【符号の説明】
【0159】
1:熱伝導性薄膜 11:熱源
12:ヒート・シンク 13:ケース
20:LED素子 30:導光板
40:光学フィルム 50:基板
60:バッテリー・セル 110:携帯電話
111:バッテリー 112:バッテリー・ケース
113:ディスプレイ・ユニット 114:ブランケット
115:チップ・セット基板 120:オープン型携帯電話ケース
130:折り畳み式携帯電話ケース 131:カバーユニット
132:ハウジング・ユニット 200:タブレットPC
300:ラップトップPC 301:ディスプレイ・ユニット
302:キーボード・ユニット 400:手持ち式(handheld)のゲーム機
500:MP3プレイヤー 600:外付けハード・ディスク・ドライブ
700:セットトップ・ボックス 800:ビーム・プロジェクター
900:車のブラック・ボックス 950:EMIガスケット
960:ケース F:前側
B:後側 U:上側
L:底側 S:側面