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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】空気調和機の室内機
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/20 20060101AFI20230517BHJP
   F24F 13/08 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
F24F1/0007 401C
F24F13/08
F24F13/20
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021074777
(22)【出願日】2021-04-27
(62)【分割の表示】P 2017166141の分割
【原出願日】2017-08-30
(65)【公開番号】P2021107765
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2021-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】川村 政貴
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-128589(JP,A)
【文献】特開2005-315538(JP,A)
【文献】特許第4382860(JP,B1)
【文献】特開2016-080280(JP,A)
【文献】特開2008-128590(JP,A)
【文献】特開2017-110848(JP,A)
【文献】特開2005-315537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/0007
F24F 13/20
F24F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気の吹出口が設けられた筐体と、
前記吹出口を開閉し、且つ前記吹出口から出る空気を室内に導く導風板と、を備え、
前記導風板は、運転停止状態においては、前記吹出口を閉じる姿勢として前記吹出口を塞ぐ姿勢をとることができ、
前記導風板は、前記吹出口を塞ぐ姿勢をとっているとき、外周縁の少なくとも一部が前記筐体の外周面よりも前記筐体の外側に位置し、
運転状態においては、前記導風板を傾けることにより、前記吹出口の上方を開くとともに前記吹出口からの空気を上方に導風する姿勢と、前記導風板のうち、前記吹出口を閉じる姿勢において前記筐体よりも前方に突出する部分を前記筐体に接触させるように傾けることにより、前記吹出口の下方を開くとともに前記吹出口からの空気を下方に導風する姿勢とをとることが可能な、
空気調和機の室内機。
【請求項2】
前記導風板は、前記吹出口を塞ぐ姿勢をとっているとき、前記外周縁の一部である下端が、前記筐体の前記外周面の一部である下面よりも下方に位置している、
請求項1に記載の空気調和機の室内機。
【請求項3】
前記運転状態において、前記導風板のうち、前記運転停止状態において前記筐体の前記下面よりも下方に突出する部分を前記筐体に接触させるように傾けることにより、前記吹出口の上方を開くとともに前記吹出口からの空気を上方に導風する姿勢をとることが可能な、請求項2に記載の空気調和機の室内機。
【請求項4】
前記導風板は、前記吹出口を塞ぐ姿勢をとっているとき、前記外周縁の一部である上端が、前記筐体の前記外周面の一部である前面よりも前方に位置している、
請求項1~3のいずれか1項に記載の空気調和機の室内機。
【請求項5】
前記導風板は、前記吹出口を塞ぐ姿勢をとっているとき、前記外周縁の一部である左端と右端との少なくとも一方が、前記筐体の前記外周面の一部である側面よりも側方に位置している、
請求項1~のいずれか1項に記載の空気調和機の室内機。
【請求項6】
前記導風板は、前記吹出口を塞ぐ姿勢とっている状態において、上端が下端よりも前方に位置しており、前記上端と前記下端との間の部分が上方かつ後方に向かうように湾曲している、
請求項1~4のいずれか1項に記載の空気調和機の室内機。
【請求項7】
空気の吹出口が設けられた筐体と、
前記吹出口を開閉し、且つ前記吹出口から出る空気を室内に導く導風板と、を備え、
前記導風板は、前記吹出口を閉じる姿勢をとっているとき、前記導風板の外周縁の少なくとも一部が前記筐体の外周面よりも前記筐体の外側に位置し、
前記導風板が、前記吹出口の上方または下方を開く姿勢をとっているとき、前記吹出口を閉じる姿勢をとっているときに前記外周面よりも前記筐体の外側に突出する部分を前記筐体に接触させる、
空気調和機の室内機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機の室内機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機の室内機(以下、室内機と称する)に設けられた運転情報を表示する表示部、及び遠隔操作のための赤外線受信部は、運転停止状態において、外観から目視可能な配置になっている。表示する運転情報として、例えば、タイマーランプのON、及びOFFの区別、冷房運転、及び暖房運転等の区別、電源のON、及びOFFの区別等がある。
【0003】
しかし、室内機の運転状態時に導風板が回動した際、導風板の角度によっては、表示部が隠れてしまい、ユーザーが表示部を目視できなくなるという虞があった。また、同様の理由で赤外線受信部も導風板によって隠れて赤外線受信部の位置をユーザーが確認できなかったり、赤外線受信部が赤外線を受信できなかったりする虞があった。
【0004】
そこで、特許文献1及び特許文献2には、一部が透明な部材で形成された室内機の導風板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-241054号公報
【文献】特許第5062341号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、空気清浄機能を備えた室内機が開発されており、このような室内機は、大型化する傾向にある。このように、室内機が大型化した場合、それに伴って導風板も大型化する。また、冷房や暖房の範囲を広くする場合にも、風を遠くまで送れるように、大型の導風板を備えることが好ましい。
【0007】
このような大型の導風板は、室内機の最も室内側に配置される場合が多く、室内機の外観の大部分を占めることになる。そして、大型の導風板は、室内機の吹出口から室内機の内部構造が室内側から見えることを回避するための目隠しの役目も果たす。
【0008】
そこで、本発明の一態様は、そういった役目を果たしつつ、ユーザーが目視すべき箇所およびユーザーの指示信号を受信すべき箇所についてそれぞれの目的(機能)を妨げることを回避した導風板を備えた、空気調和機の室内機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る空気調和機の室内機は、空気の吹出口と、該吹出口を開閉し、且つ該吹出口から出る空気を室内に導く導風板と、室内へ光を出す出力部と、室内からの光を受ける入力部とが設けられた、空気調和機の室内機であって、前記導風板は、室内に向いた前板部材と、該前板部材の背面側にあって前記吹出口に向いた背板部材とを有し、且つ該前板部材と該背板部材との間に中空構造が設けられており、前記導風板は、前記出力部および前記入力部の少なくとも一方を覆う姿勢をとることができ、前記導風板は、前記出力部および前記入力部の少なくとも一方を覆う部分が、光を通す構成であり、前記背板部材が前記前板部材よりも光透過性が高い構成となっている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、目隠しとしての役目を果たしつつ、且つ、ユーザーが目視すべき箇所およびユーザーの指示信号を受信すべき箇所について、それぞれの目的(機能)を妨げることを回避した導風板を備えた、空気調和機の室内機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態における空気調和機の室内機の外観を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態における空気調和機の室内機から導風板を外した状態を示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態における空気調和機の室内機の出力部及び入力部を説明するための説明図である。
図4】本発明の実施形態における空気調和機の室内機において、導風板によって出力部及び入力部が隠れることを説明するための説明図である。
図5】本発明の実施形態における空気調和機の室内機の導風板の構造を説明するための断面図である。
図6】本発明の他の実施形態における空気調和機の室内機に具備される導風板の構成を説明するための部分断面図である。
図7】本発明の他の実施形態における空気調和機の室内機に具備される導風板の構成を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施形態1〕
本発明に係る空気調和機の室内機の一実施形態を、図面に基づいて以下に説明する。
【0013】
図1は、本実施形態1の空気調和機の室内機10(以下、単に室内機10と称する)の外観を示す斜視図である。
【0014】
(室内機10の概要)
図1に示すように、本実施形態1の室内機10には、その室内側前面に、大型の導風板14が設けられている。そのため、以下において説明する導風板14の背面側にある室内機10の各種構成については、図1では仮想線を用いて図示する。
【0015】
本実施形態1の室内機10には、更に、室内に向けて空気を吹き出す吹出口30が設けられている。吹出口30は、室内機10の最も室内側前面に配置された導風板14の背後にある。言い換えれば、吹出口30の前方に、吹出口30を開閉し、かつ、吹出口30から吹き出す空気を室内に導く導風板14が設けられている。
【0016】
また、室内機10の最も室内側前面に配置された導風板14の背後には、光を室内に向けて出す出力部16と、室内側からの光を受ける入力部18とが設けられている。
【0017】
(出力部16)
図2は、図1に示す室内機10から導風板14を外した状態の斜視図を示している。出力部16は、図2に示す状態の室内機10において室内側前面に設けられている。
【0018】
出力部16としては、光を室内に向けて出す部分であれば特に制限はないが、例えば、図3に示す運転情報提示部24がある。以下、図3に基づいて、運転情報提示部24(出力部16)について説明する。
【0019】
図3に示すように、運転情報提示部24は、空気調和機の運転情報を光出射によって室内に向けて提示する構成を備えている。
【0020】
運転情報提示部24は、例えば、LED(発光ダイオード)により光出射することで運転情報を提示している。本実施形態1においては、運転情報提示部24は、空気調和機の電源がON又はOFFであるかを提示する第1の運転情報提示部24a、空気調和機が冷房運転状態又は暖房運転状態であるかを提示する第2の運転情報提示部24b、空気調和機のタイマーがON又はOFFであるかを提示する第3の運転情報提示部24cにより構成されている。
【0021】
具体的には、第1の運転情報提示部24a、第2の運転情報提示部24bおよび第3の運転情報提示部24cは、点灯しているLEDランプの色の違い、及びLEDランプの消灯により運転状態を提示することができる。
【0022】
要するに、本実施形態1の出力部16は、光の一例である可視光線を、室内に向けて出射する構成となっている部分である。
【0023】
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、出力部16が、いわゆる人感センサーのような赤外線センサーの赤外線出力部として機能してもよい。すなわち、この場合は、出力部16は、光の一例である赤外線を、室内に向けて出射する構成となっている。なお、出力部16として、先述の運転情報提示部24に加えて、該赤外線出力部が備わっていても良い。
【0024】
(入力部18)
入力部18は、図2に示す状態の室内機10において室内側前面に設けられており、出力部16と並んで設けられている。
【0025】
入力部18としては、室内から送信された光を受ける部分であれば特に制限はないが、例えば、図3に示す受信部26がある。以下、図3に基づいて、受信部26(入力部18)について説明する。
【0026】
図3に示すように、受信部26は、室内から送信された室内機10の操作信号を受信する部分である。本実施形態1においては、受信部26は、空気調和機を遠隔操作するための遠隔操作装置から出力された操作信号としての赤外線を受信する。
【0027】
要するに、本実施形態1の入力部18は、光の一例である赤外線を、室内側から受ける構成となっている部分である。
【0028】
入力部18は、遠隔操作装置から出力された操作信号としての赤外線以外にも、いわゆる人感センサーのような赤外線センサーの赤外線受信部として機能してもよい。なお、この場合、入力部18として、先述の遠隔操作装置から出力された操作信号としての赤外線の受信部に加えて、該赤外線センサーの赤外線受信部が備わっていても良い。
【0029】
なお、入力部18は、光を受けるものであればよく、赤外線に限定されない。
【0030】
(導風板14)
導風板14は、図1に示すように、室内に向いた前板部材20と、前板部材20の背面側にあって、吹出口30に向いた背板部材22とを有し、前板部材20と背板部材22の間に中空部21(図5)が設けられた中空構造を有している。
【0031】
導風板14は、先述のように大型で、図1に示すように、室内機10の外観を室内側から見たときに、導風板14以外の室内機10の構成が概ね全体が隠れてしまうほどに、室内側前面の概ね全領域を覆うようなサイズを有している。要するに、導風板14は、導風板14を除く室内機10の外観を構成する筐体の左右方向の長さ(室内機10の横幅と称する場合もある)と同じかそれよりも長い横幅を有している。
【0032】
更に説明すれば、導風板14は、図1に示すように、横幅に対して垂直である方向に規定される縦幅の方向に関して緩やかに湾曲している板状体であり、凸側の面が吹出口30に対向し、凹側の面が室内側となるように室内機10に取り付けられている。
【0033】
導風板14は、例えば、導風板14を支持する左右二箇所のアームを有する従来周知の駆動機構(図示せず)により駆動され、吹出口30の開閉をおこなうだけでなく、吹出口30から吹き出す空気を室内の所定の方向に導くよう姿勢を可変する構成となっている。
【0034】
次に、導風板14の姿勢について図4を用いて説明する。図4は、室内機10の側面図を示している。導風板14は、図4中の(a)、(b)、及び(c)に示すように、それぞれ異なる姿勢をとることができる。
【0035】
具体的には、図4中の(a)は、空気調和機(室内機10)の運転が停止している状態の導風板14の位置(姿勢)を示している。運転停止状態では、導風板14が、図1に示した吹出口30を塞いだ姿勢をとっている。この姿勢をとっている導風板14は、先述のように大型であるため、室内機10の室内側前面に設けられた出力部16及び入力部18の設置箇所において、出力部16及び入力部18を覆って出力部16及び入力部18よりも室内側に位置している。そのため、室内にいるユーザー(図中にユーザーの目を模式的に示している)からは、出力部16及び入力部18を直接視認することができない。
【0036】
また、図4中の(b)は、空気調和機が冷房運転をしている状態の導風板14の位置(姿勢)を示している。冷房運転をしている状態では、導風板14が、図1に示した吹出口30から吹き出す空気(冷風)を室内上方に向けて導くような姿勢をとっている。この姿勢をとっている導風板14であっても、先述のように大型であるため、出力部16及び入力部18を覆っており、室内にいるユーザー(図中にユーザーの目を模式的に示している)からは、出力部16及び入力部18を直接視認することができない。なお、この姿勢は、あくまでも一例であり、冷房運転をしている状態において、空気(冷風)を室内下方に向けて導く姿勢をとってもよい。
【0037】
また、図4中の(c)は、空気調和機が暖房運転をしている状態の導風板14の位置(姿勢)を示している。暖房運転をしている状態では、導風板14が、図1に示した吹出口30から吹き出す空気(温風)を室内板方に向けて導くような姿勢をとっている。この姿勢をとっている導風板14であっても、先述のように大型であるため、出力部16及び入力部18を覆っており、室内にいるユーザー(図中にユーザーの目を模式的に示している)からは、出力部16及び入力部18を直接視認することができない。なお、この姿勢は、あくまでも一例であり、暖房運転をしている状態において、空気(温風)を室内上方に向けて導く姿勢をとってもよい。
【0038】
すなわち、本実施形態1における室内機10の場合、図4中の(a)~(c)に示すいずれの状態においても、出力部16、及び入力部18の両方が、導風板14の背面に隠れ、ユーザーから見えない状態となっている。
【0039】
そこで、本実施形態1に示す室内機10は、導風板14が、光を通す構成となっている。具体的には、本実施形態1の導風板14は、図3に示す運転情報提示部24から出射される可視光線を透過させ、且つ、空気調和機を遠隔操作するための遠隔操作装置から出力された操作信号としての赤外線を透過させる構成となっている。
【0040】
これを実現するために、本実施形態1の導風板14は、前板部材20および背板部材22を、運転情報提示部24から出射される可視光線を透過させ、且つ、空気調和機を遠隔操作するための遠隔操作装置から出力された操作信号としての赤外線を透過させることができる材料から構成している。
【0041】
具体的には、背板部材22を無色透明の材料から構成している。また、前板部材20を、運転情報提示部24から出射される可視光線を透過させ、且つ、空気調和機を遠隔操作するための遠隔操作装置から出力された操作信号としての赤外線を透過させる程度に、着色した材料を用いて構成している。
【0042】
無色透明の材料から構成される背板部材22としては、無色透明の耐衝撃性ポリスチレン(HI-PS)を例示することができる。背板部材22は、無色透明のHI-PSを射出成形することによって製造される。
【0043】
なお、背板部材22は、完全に無色である必要はなく、また、完全に透明である必要もないが、前板部材20が着色材料を用いて構成されるため、無色透明の材料から構成されることが好ましい。
【0044】
着色材料を用いて構成される前板部材20としては、白色系のHI-PSを例示することができる。前板部材20も、白色系の顔料を加えたHI-PSを射出成形することによって製造される。
【0045】
なお、白色系とは、白だけでなく、ベージュなどの白色に近い色も含む。着色材料を用いて構成される前板部材20としては、運転情報提示部24から出射される可視光線を透過させ、且つ、空気調和機を遠隔操作するための遠隔操作装置から出力された操作信号としての赤外線を透過させることができれば、その色は特に制限はない。また、導風板14を除く室内機10の筐体の色と同じ色にすることができる。
【0046】
ここで、運転情報提示部24から出射される可視光線を透過させる点に関し、出射した可視光線を100%透過させなくてもよい。同じく、空気調和機を遠隔操作するための遠隔操作装置から出力された操作信号としての赤外線を透過させる点に関し、遠隔操作装置から出力された赤外線を100%透過させなくてもよい。すなわち、可視光線に関しては、ユーザーが視認できる程度の強さの可視光を透過できればよく、赤外線に関しては、図6に示す受信部26が受信できる程度の強さの赤外線を透過できればよい。
【0047】
勿論、導風板14自体、すなわち背板部材22および前板部材20の双方、が無色透明であれば、光も赤外線も、それらの大部分を透過させることができる。しかしながら、導風板14は、先述のように室内機10の外観の一部を担っており、例えば、運転停止状態の際には、吹出口30を覆って、室内側から吹出口30が見えるのを防ぐ目隠しの役目を果たす。特に、先述のように、大型の導風板14の場合には、導風板14によって、室内機10の室内側前面を広く覆い隠すことにより、室内の景観を損ねることなく、且つ、室内機10を小さく見せる効果も奏する。
【0048】
そこで、本実施形態1の導風板14は、導風板14自体を無色透明にするのではなく、背板部材22が前板部材20よりも光透過性が高い構成としている。このように構成することにより、そのような役目や効果を損なうことなく、且つ、光を遮断しない構成を実現している。なお、背板部材22が前板部材20よりも光透過性が高いとは、出力部16の光に対する光透過性が背板部材22が前板部材20よりも高く、且つ受信部26の赤外線に対する光透過性が背板部材22が前板部材20よりも高いことに限らず、その何れかのみであってもよい。
【0049】
無色透明の材料から構成される背板部材22と、着色材料から構成される前板部材20とは、超音波溶着により接合し、これらの間に中空部21(図5)が設けられていればよい。
【0050】
次に前板部材20および背板部材22の厚さについて説明する。
【0051】
図5は、導風板14の縦幅に沿って切断した状態を示す断面図である。先述のように、導風板14は、前板部材20と背板部材22との間に中空部21が設けられている。
【0052】
図5に示すように、背板部材22は、前板部材20よりも肉厚に形成されている(図5中の矢印で示す箇所)。
【0053】
このように背板部材22を前板部材20よりも肉厚にすることにより、背板部材22が、導風板14自体の形状を維持する骨格としての役目を果たしつつ、光および赤外線の透過を妨げることを抑制することができる。
【0054】
また、背板部材22を肉厚に形成することにより、導風板14の断熱性能を向上させることができる。冷房運転時および暖房運転時のいずれの場合でも、導風板14を挟んで吹出口30側と、室内側とは温度差がある。そのため、吹出口30から吹き出す空気の温度を極力変えることなく、遠くまで送るためには、導風板14に断熱性能が求められる。そこで、背板部材22を肉厚に形成することにより、室内側の温度が、吹出口30から吹き出す空気の温度に影響しない環境を作り出すことができる。
【0055】
厚さは特に制限はないが、例えば背板部材22の厚さは1.5~2.0mm、前板部材の厚さは1.0~1.5mmとすることができる。また、背板部材22の厚さは、前板部材20よりの1~2倍とすることができる。
【0056】
以上のように、本実施形態1によれば、導風板14が目隠しとしての役目を果たしつつ、ユーザーが目視すべき箇所(出力部16)およびユーザーの指示信号を受信すべき箇所(入力部18)についてそれぞれの目的(機能)を妨げることを回避した、空気調和機の室内機10を提供することができる。
【0057】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、上述の実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0058】
上述の実施形態1では、背板部材22が無色透明のHI-PSから構成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、背板部材22は、無色透明のアクリルを射出成形することによって製造することも可能である。
【0059】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、上述の実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0060】
上述の実施形態1では、背板部材22が無色透明のHI-PSから構成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、背板部材22は、無色透明のABS樹脂(acrylonitrile butadiene styrene copolymer)を射出成形することによって製造することも可能である。
【0061】
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、上述の実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0062】
図6は、本実施形態4の室内機10の断面図であり、図4の(a)に対応している。なお、図6において、導風板14を除く室内機10の構成は詳細を省略している。
【0063】
上述の実施形態1の室内機10は、導風板14の背板部材22自体が無色透明の材料から構成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。本実施形態4では、導風板14の背板部材22における、出力部16および入力部18を覆う部分22a、より具体的には背板部材22における運転情報提示部24および受信部26を覆う部分22aのみが無色透明であってもよい。
【0064】
背板部材22における運転情報提示部24および受信部26を覆う部分22aのみを無色透明とした場合、その部分以外の部分22bについては、光や赤外線の透過について考慮する必要はない。そのため、その部分以外の部分22bについては、例えば、白色系の顔料を加えたHI-PSによって作製することができる。
【0065】
本変形例の背板部材22の製造方法としては、運転情報提示部24および受信部26を覆う部分22aと、それ以外の部分22bとを別体で作製し、溶着接着によって接着することにより製造することができる。
【0066】
〔変形例〕
また、本実施形態4の変形例として、背板部材22だけでなく、前板部材20についても、運転情報提示部24および受信部26を覆う部分のみを光および赤外線を透過することを考慮した材料から構成し、当該部分以外の部分についてはそれを考慮しない材料から構成してもよい。
【0067】
なお、本変形例においても、運転情報提示部24および受信部26を覆う部分について、背板部材22が前板部材20よりも光透過性が高い構成となっている。
【0068】
〔実施形態5〕
本発明の他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、上述の実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0069】
本実施形態5と、上述の実施形態1との違いは、導風板の構成にある。
【0070】
図7は、本実施形態5の導風板14´の断面図であり、図5の実施形態1の導風板14の断面図に対応している。
【0071】
本実施形態5の導風板14´は、凹側面に白色系のシート材20bを付加している点において図5の実施形態1の導風板14と構成が異なる。すなわち、導風板14´の前板部材20´が、ベース部材20aに、白色系のシート材20bが貼り付けられてなる。
【0072】
また、本実施形態5の導風板14´の前板部材20は、ベース部材20aを無色透明の材料から構成することができる。無色透明の材料としては、先述で例示したものを採用することができる。
【0073】
本実施形態5によっても、実施形態1と同様に、導風板14´が大型化しても、重量増を抑制することができ、且つ、ユーザーが目視すべき箇所およびユーザーの指示信号を受信すべき箇所について、それぞれの目的(機能)を妨げることを回避した、空気調和機の室内機10を提供することができる。
【0074】
白色系のシート材20bとしては、PET、PE、あるいはPPから構成することできる。例えば、白色系のシート材20bの厚さは0.05~1mmとすることができる。ベース部材20aへの白色系のシート材20bの貼着は、接着剤を用いておこなうことができる。
【0075】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る空気調和機の室内機10は、空気の吹出口30と、吹出口30を開閉し、且つ吹出口30から出る空気を室内に導く導風板14と、室内に向けて光を出す出力部16と、室内からの光を受ける入力部18とが設けられた、空気調和機の室内機10であって、導風板14は、室内に向いた前板部材20と、前板部材20の背面側にあって吹出口30に向いた背板部材22とを有し、且つ該前板部材20と該背板部材22との間に中空構造が設けられており、導風板14は、出力部16および入力部18の少なくとも一方を覆う姿勢をとることができ、導風板14は、出力部16および入力部18の少なくとも一方を覆う部分が、光を通す構成であり、背板部材22が前板部材20よりも光透過性が高い構成となっている。
【0076】
上記の構成によれば、導風板14は、室内機の目隠しとしての役割を果たしつつ、ユーザーが目視すべき箇所およびユーザーの指示信号を受信すべき箇所について、それぞれの目的(機能)を妨げることを回避した、空気調和機の室内機10を提供することができる。
【0077】
具体的には、導風板14は、出力部16および入力部18の少なくとも一方を覆う部分が、光を通す構成となっているので、ユーザーは、光を通す構成となっている部分を通して出力部16から出力された光(運転情報提示部24から出射した光)を確認することができ、また、入力部18(受信部26)に光(赤外線)を入射させることができる。
【0078】
一方で、導風板14は、背板部材22が前板部材20よりも光透過性が高い構成となっているため、室内側から導風板14の背後にある吹出口30を視認することが難しい。
【0079】
すなわち、導風板14は、吹出口30及びその周辺の目隠しとしての役目を果たしつつ、ユーザーが目視すべき箇所およびユーザーの指示信号を受信すべき箇所についてそれぞれの目的(機能)を妨げることを回避した導風板を備えた、空気調和機の室内機を提供することを目的としている。
【0080】
また、導風板14は、中空構造を有しているので、導風板14が大型化しても、導風板14の重量の増加を抑制することができる。そして、導風板14を重量の増加を抑制することができるため、導風板14を回動させる駆動機構への負担を抑制することができる。また、導風板14を室内機10から取り外して掃除するとき等、導風板14を容易に取り扱うことができる。さらに、万が一、導風板14が落下したときの衝撃を抑制することができる。
【0081】
本発明の態様2に係る空気調和機の室内機は、上記態様1において、背板部材22の厚さは、前板部材20の厚さよりも厚い構成としてもよい。
【0082】
上記の構成によれば、背板部材22を肉厚に形成することにより、導風板14の剛性を確保しつつ前板部材20の厚さを薄く形成することができる。
【0083】
また、背板部材22を肉厚に形成することにより、導風板14の断熱性能を向上させることができる。
【0084】
本発明の態様3に係る空気調和機の室内機は、上記態様1から2において、背板部材22は、出力部16および入力部18の少なくとも一方を覆う部分が、透明材料からなる構成としてもよい。
【0085】
本発明の態様4に係る空気調和機の室内機は、上記態様1から3において、前板部材20は、白色系に着色された材料からなる構成としてもよい。
【0086】
本発明の態様5に係る空気調和機の室内機は、上記態様1から4において、出力部16は、空気調和機の運転情報を光出射によって室内に向けて提示する運転情報提示部24である構成としてもよい。
【0087】
上記の構成によれば、運転情報提示部24からの光出射が導風板14によって妨げられることを抑制できるため、ユーザーは、空気調和機の運転情報を確認することができる。
【0088】
本発明の態様6に係る空気調和機の室内機は、上記態様1から5において、入力部18は、遠隔操作装置から送信された室内機10の操作信号を受信する受信部26である構成としてもよい。
【0089】
上記の構成によれば、ユーザーは、受信部26に受信される操作信号(赤外線)が導風板14によって妨げられることを抑制できるため、空気調和機から離れていても良好に空気調和機の運転を操作することができる。
【0090】
本発明の態様7に係る空気調和機の室内機は、上記態様1から6において、前記前板部材20´は、透明材料からなるベース部材20aと、該ベース部材20aの室内側に向いた面に貼着された白色系のシート材20bとを有する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0091】
10 空気調和機の室内機
14、14´ 導風板
16 出力部
18 入力部
20、20´ 前板部材
20a ベース部材
20b シート材
21 中空部
22 背板部材
24 運転情報提示部(出力部)
24a 第1の運転情報提示部(出力部)
24b 第2の運転情報提示部(出力部)
24c 第3の運転情報提示部(出力部)
26 受信部(入力部)
30 吹出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7