(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】送風装置のノズル
(51)【国際特許分類】
D06F 58/00 20200101AFI20230517BHJP
【FI】
D06F58/00 E
D06F58/00 A
(21)【出願番号】P 2021138143
(22)【出願日】2021-08-26
(62)【分割の表示】P 2019024633の分割
【原出願日】2019-02-14
【審査請求日】2021-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】公文 ゆい
【審査官】家辺 信太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-130334(JP,A)
【文献】米国特許第05671321(US,A)
【文献】国際公開第2018/189930(WO,A1)
【文献】特開2015-217110(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0106721(KR,A)
【文献】独国実用新案第202010003303(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 58/00
A45D 20/00-20/52
F04D 25/08
F04D 29/00
B05B 1/04
B05B 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体部と、
前記筐体部の端部に形成された空気入口と、
前記筐体部の他の端部に形成された空気吹出口と、
前記筐体部の内部における前記空気入口と前記空気吹出口との間に設けられた空気ガイド部と、を備え、
前記空気ガイド部は、前記空気入口と前記空気吹出口との間のノズル幅方向の左側領域と右側領域とにそれぞれ設けられ、
前記左側領域に設けられた前記空気ガイド部は、下流側部分が左側に湾曲した左湾曲部を有し、
前記右側領域に設けられた前記空気ガイド部は、下流側部分が右側に湾曲した右湾曲部を有し
、
前記筐体部の内部に、前記空気ガイド部にて仕切られた複数の流路を備えることを特徴とする送風装置のノズル。
【請求項2】
前記空気吹出口は、前記筐体部における前記ノズル幅方向にある面に及んで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の送風装置のノズル。
【請求項3】
前記空気ガイド部は、上流側部分に前記空気入口から入り込む空気の流れ方向と平行となるように形成された直線部を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の送風装置のノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布団乾燥機等の送風装置が備える送風装置のノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
送風装置としての例えば布団乾燥機は、乾燥機本体と接続されたホースの先端部にノズルを有し、ノズルを敷き布団と掛け布団との間に挿入し、ノズルから温風を吹き出すことにより布団を乾燥させる。布団乾燥機に求められる機能は、敷き布団と掛け布団との間の広い範囲に温風を送り込み、それら布団を効率よく乾燥させることである。そのために、ノズルについては、従来様々な工夫がされている。
【0003】
例えば特許文献1に開示されている布団乾燥機では、ノズルは、基部と、横方向に並ぶように基部から分岐した複数の吹出筒部とを有する。複数の吹出筒部は、吹出口側に向かって互いの間隔が広がるように放射状かつ直線状に設けられている。
【0004】
また、特許文献2に開示されている布団乾燥機は、上記のノズルに代えて、乾燥ユニットと呼ばれる例えば箱形状のアタッチメントを有する。アタッチメントは、各面に開口部である吹出し口を有し、それら吹出し口から各方向に温風を吹き出すようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-79236号公報
【文献】特許6151325号公報
【文献】特開2016-47115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように、基部から放射状かつ直線状に分岐した複数の吹出筒部を有するノズルでは、吹出筒部の方向に応じて複数の方向へ風を送り出すことができる。しかしながら、複数の吹出筒部が放射状かつ直線状に分岐しているので、分岐部分での圧損が大きくなる。このため、広い範囲に速い風速にて風を送り出すことができない。この結果、布団の広い範囲を効率よく乾燥させることができない。
【0007】
また、特許文献2のように、各面に吹出し口を有するアタッチメントでは、多数の吹出し口の方向に風を送り出すことができるものの、それら吹出し口から風が吹き出す場合の圧損が大きくなる。このため、同様に、広い範囲に速い風速にて風を送り出すことができない。この結果、同様に、布団の広い範囲を効率よく乾燥させることができない。
【0008】
本発明の一態様は、広い範囲に速い風速にて風を送り出すことができる送風装置のノズルの実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る送風装置のノズルは、筐体部と、前記筐体部の端部に形成された空気入口と、前記筐体部の他の端部に形成された空気吹出口と、前記筐体部の内部における前記空気入口と前記空気吹出口との間に設けられた空気ガイド部と、を備え、前記空気ガイド部は、前記空気入口と前記空気吹出口との間のノズル幅方向の左側領域と右側領域とにそれぞれ設けられ、前記左側領域に設けられた前記空気ガイド部は、下流側部分が左側に湾曲した左湾曲部を有し、前記右側領域に設けられた前記空気ガイド部は、下流側部分が右側に湾曲した右湾曲部を有し、前記筐体部の内部に、前記空気ガイド部にて仕切られた複数の流路を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、広い範囲に速い風速にて風を送り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態の送風装置としての布団乾燥機の使用状態を示す斜視図である。
【
図5】
図1に示したノズルの内部構造を示す平面図である。
【
図6】
図1に示したノズルの内部構造を示す斜視図である。
【
図7】
図5に示した空気ガイド部の直線部の説明図である。
【
図8】
図5に示したノズルの背面図であって、空気ガイド部同士の距離の説明図である。
【
図9】
図5に示した空気ガイド部の湾曲部の説明図である。
【
図10】
図5に示した空気ガイド部の湾曲部の凹面に沿う風の風速が速くなる原理の説明図である。
【
図11】本発明の他の実施形態のノズルを示す斜視図である。
【
図15】本発明のさらに他の実施形態のノズルの内部構造を示す平面図である。
【
図16】本発明のさらに他の実施形態のノズルを示す側面図である。
【
図17】比較例に係るノズルを備えた布団乾燥機の使用状態を示す斜視図である。
【
図20】
図20の(a)は、
図1に示したホースのノズル接続側の端部の形状を示す斜視図、
図20の(b)は、
図20の(a)に示した上記端部での風速を示す説明図である。
【
図21】
図2に示したノズルの空気吹出口の各部の風速を示す説明図である。
【
図22】
図11に示したノズルの空気吹出口の各部の風速を示す説明図である。
【
図23】
図18に示したノズルの空気吹出口3の各部の風速を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
図1は、本実施形態の送風装置としての布団乾燥機の使用状態を示す斜視図である。
【0013】
(布団乾燥機1の概要)
図1に示すように、布団乾燥機1は、乾燥機本体部11、ホース12およびノズル13を備えている。
【0014】
乾燥機本体部11は、上面に操作パネル21を有し、後面から電源コード22が引き出されている。また、乾燥機本体部11は、側面に吸込口(図示せず)を有し、前面にホース引出し口23を有する。ホース引出し口23からはホース12を引き出し可能である。
【0015】
乾燥機本体部11は、図示しないが、内部に送風ファン、送風ダクトおよびヒータを有し、送風ファンが発生する風は送風ダクトを介してホース12に送られる。ヒータは送風ダクト内に設けられ、送風ダクト内を流れる空気を加熱する。
【0016】
ホース12は可撓性を有する。本実施形態において、ホース12は、樹脂成形によって曲げ形状を保持可能な蛇腹状に形成され、伸縮によってホース引出し口23からの引出し長が可変である。ホース12の外径は例えばφ64mmである。
【0017】
ノズル13は、ホース12の先端に着脱可能に嵌合され、嵌合状態においてホース12の周方向に回転可能である。布団乾燥を行う場合、ノズル13は、
図1に示すように、敷き布団31と掛け布団32との間に挿入される。
【0018】
布団乾燥機1では、送風ファンおよびヒータが駆動されると、乾燥機本体部11の吸込口から送風ダクト内に外気が流入し、その外気がヒータにて加熱され、温風がノズル13から送出される。
【0019】
なお、布団乾燥機1は衣類乾燥も可能である。この場合、ホース12の先端にノズル13を取り付け、室内や箪笥等に掛けられた衣類に向けてノズルから温風を送出する。これにより、衣類の乾燥や殺菌を行うことができる。また、布団乾燥機1は、温風によって箪笥等の内部の殺菌を行うことができる。さらに、布団乾燥機1は、室内に温風を送出して、室内の暖房を行うことができる。布団乾燥機1は、送風ダクト内に放出するイオンを発生するイオン発生装置を備えれば、布団や衣類等の殺菌を効果的に行うことができるので、さらに好ましい。
【0020】
(ノズル13の構成)
図2はノズル13の斜視図である。
図3はノズル13の側面図である。
図4はノズル13の背面図である。
図5はノズル13の内部構造を示す平面図である。
図6はノズル13の内部構造を示す斜視図である。
図7は、
図5に示した空気ガイド部45の直線部45aの説明図である。
図8は、
図5に示したノズル13の背面図であって、空気ガイド部45同士の距離の説明図である。
図9は、
図5に示した空気ガイド部45の湾曲部45bの説明図である。なお、
図5から
図7および
図9では、ノズル13の上壁部43aを除去した状態を示している。
【0021】
図2および
図3に示すように、ノズル13は、一端側にホース12と接続される空気入口41を有し、他端側に空気吹出口42を有する。ノズル13は、例えば前後方向の長さが100mm、左右方向の幅が80mm、高さが70mmといったサイズである。
【0022】
ノズル13は、上壁部43aと下壁部43bとからなる筐体部43により、空気入口41および空気吹出口42以外を閉じた構造である。空気吹出口42は、ノズル13の前面から左右の側面に亘って広い範囲に形成されている。
【0023】
下壁部43bは下面が平坦面であるのに対し、上壁部43aは空気入口41から空気吹出口42へ向かって高さが漸次低くなっている。したがって、空気吹出口42は、全体的に開口高さが空気入口41の開口高さよりも低く、絞られた形状である。また、空気吹出口42は、正面から見て、開口高さが空気入口41の開口高さよりも低い、横長形状となっている。なお、上壁部43aは、上壁部43a全体が空気入口41から空気吹出口42へ向かって高さが漸次低くなっている必要はなく、少なくとも空気吹出口42側の部分においてそのようになっていればよい。
【0024】
(空気ガイド部45、空気ガイド壁49の構成)
ノズル13は、
図4から
図6に示すように、内部に複数の空気ガイド部45を有している。空気ガイド部45は、空気入口41からノズル13の内部に入り込み、空気吹出口42から吹き出す空気の流れを案内する。本実施形態において、空気ガイド部45は、左右(ノズル幅方向の左右の領域)に2個ずつ、合計4個設けられている。また、ノズル13は、幅方向の左端の位置および右端の位置に、それぞれ空気ガイド壁(壁部)49を有している。
【0025】
隣り合う空気ガイド部45同士の間、および隣り合う空気ガイド部45と空気ガイド壁49との間は空気の流路46となっている。これにより、
図5の場合には、空気の流路46が、左右にそれぞれ2個および中央部に1個の合計5個形成されている。
【0026】
空気ガイド部45は、空気入口41側の部分である上流側部分が直線部45aであり、空気吹出口42側の部分である下流側部分が湾曲部45bである。同様に空気ガイド壁49は、上流側の壁面が直線面49aであり、下流側の壁面が湾曲面49bである。
【0027】
(直線部45a、直線面49a)
空気ガイド部45の直線部45aおよび空気ガイド壁49の直線面49aは、空気入口41から入り込む空気の流れ方向と平行である。直線部45aは、長手方向においてほぼ均一幅である。また、直線部45aの上流側端部の位置は、
図7に示すように、ノズル幅方向の中央部寄りの空気ガイド部45ほど、空気入口41から遠くなっている。
【0028】
この点について、ノズル幅方向の中央部の二つの空気ガイド部45を空気ガイド部45A、それら空気ガイド部45Aに隣り合う、中央部から離れた左右の空気ガイド部45を空気ガイド部45Bとしてさらに具体的に示す。
図7に示すように、直線部45aの上流側端部と空気入口41との距離は、空気ガイド部45Aが最も長く、空気ガイド部45Bでは空気ガイド部45Aよりも短くなっている。また、空気ガイド壁49の直線面49aの上流側端部の位置は、空気入口41に最も近い位置である。
【0029】
なお、本実施形態では、ノズル13の空気入口41側の端部から、空気ガイド壁49の直線面49aの上流側端部、空気ガイド部45Bの直線部45aの上流側端部、空気ガイド部45Aの直線部45aの上流側端部までの距離を、それぞれ10.5mm、30mm、50mmとしている。
【0030】
また、隣り合う空気ガイド部45の直線部45a同士の距離は、
図8に示すように、ノズル幅方向の中央部寄りのガイド部45同士ほど長くなっている。
【0031】
詳細には、二つの空気ガイド部45Aの直線部45aの上流側端部同士のノズル幅方向の距離は最も短く、空気ガイド部45Aの直線部45aの上流側端部と空気ガイド部45に隣り合う空気ガイド部45Bの直線部45aの上流側端部とのノズル幅方向の距離は広くなっている。また、空気ガイド壁49の直線面49aの上流側端部と空気ガイド壁49に隣り合う空気ガイド部45Bの直線部45aの上流側端部とのノズル幅方向の距離は最も長くなっている。
【0032】
このため、各流路46の上流側端部のノズル幅方向の幅は、空気ガイド部45A同士の間の流路46(以下では適宜、流路46Aと称する)が最も狭く、空気ガイド部45A,45B間の流路46(以下では適宜、流路46Bと称する)が流路46Aよりも広く、空気ガイド部45Bと空気ガイド壁49との間の流路46(以下では適宜、流路46Cと称する)が最も広くなっている。
【0033】
(湾曲部45b、湾曲面49b)
湾曲部45bは、左側(ノズル幅方向の左側領域)の空気ガイド部45では左側へ湾曲し、右側(ノズル幅方向の右側領域)の空気ガイド部45では右側へ湾曲している。同様に、左側の空気ガイド壁49の湾曲面49bは左側へ湾曲し、右側の空気ガイド壁49の湾曲面49bは右側へ湾曲している。左側の空気ガイド部45の湾曲部45bは、流路46を流れる風の向きを徐々に左側へ変化させ、右側の空気ガイド部45の湾曲部45bは、流路46を流れる風の向きを徐々に右側へ変化させるように湾曲している。
【0034】
一例として、ノズル幅方向の中央線47に対する、各湾曲部45bの空気入口41側の面(凹面)における下流側端部の接線48の角度は、
図9に示すように、空気ガイド部45Aでは45°(30°~50°の範囲)であり、空気ガイド部45Bでは85°(70°~90°の範囲)である。なお、空気ガイド壁49の湾曲面49bの空気吹出口42側の面(凸面)における下流側端部の接線50の角度は、90°である。
【0035】
空気ガイド部45の湾曲部45bは、横方向へ湾曲しながら、凸面(前方側面、負圧面)が凹面(後方側面、正圧面)に対して膨らんだ膨らみ部45b1(
図5参照)を有する。具体的には、凸面は、膨らみ部45b1によって上流側から下流側へ向かって徐々に膨らみが増加するように(徐々に凹面との距離が開くように)湾曲し、空気吹出口42に近づいたところで凹面と交わるように湾曲している。また、空気ガイド部45の湾曲部45bは、膨らみ部45b1を有することにより、凸面の曲率が凹面の曲率よりも大きくなっている。
【0036】
なお、空気ガイド壁49の湾曲面49bについても、空気ガイド部45の湾曲部45bの膨らみ部45b1と同形状の膨らみ部49b1を有している。
【0037】
(ノズル13の動作、利点)
上記の構成において、ノズル13の動作および利点について以下に説明する。
【0038】
乾燥機本体部11からホース12を介してノズル13に空気が送り込まれると、この空気は、ノズル13内の複数の流路46(46A~46C)を流れ、空気吹出口42から吹き出される。
【0039】
この場合、上壁部43aは、少なくとも空気吹出口42側の部分において、空気入口41から空気吹出口42へ向かって高さが漸次低くなっているので、流路46は高さが空気吹出口42に向かうにしたがって低くなる状態(絞られた状態)である。これにより、空気吹出口42から吹き出す空気の風速を速くすることができる。
【0040】
なお、本実施形態では、上壁部43aのみを空気入口41から空気吹出口42へ向かって高さが漸次低くなるようにしたが、これに限定されない。すなわち、ノズル13は、上壁部43aと下壁部43bとの少なくとも一方の高さを空気入口41から空気吹出口42へ向かって変化させることにより、流路46の高さが、少なくとも空気吹出口42側の部分において、空気入口41から空気吹出口42へ向かって漸次低くなるような構成であればよい。このような構成によっても上記の効果と同様の効果を得ることができる。
【0041】
また、ノズル13では、空気入口41は円形であり、空気吹出口42は、正面から見て、開口高さが空気入口41の開口高さよりも低い、横長形状となっている。これにより、空気入口41から均一な分布にてノズル13の内部に送り込まれた風は、高さが空気吹出口42に向かって絞られた状態の流路46を通過する。したがって、空気吹出口42から吹き出す空気の風速を速くすることができる。
【0042】
また、ノズル13は下壁部43bの下面が平坦になっているので、ノズル13を例えば敷き布団31の上に配置した場合に、安定に配置することができる。
【0043】
また、ノズル13は、空気入口41と空気吹出口42との間のノズル幅方向の左側領域と右側領域とにそれぞれ空気ガイド部45を備え、ノズル13の下流側部分の湾曲部45bが左側領域では左側に湾曲し、右側領域では右側に湾曲している。また、ノズル13は、空気ガイド部45同士の間に風の流路46A,46Bを有し、空気ガイド部45と筐体部43の空気ガイド壁49との間に風の流路46Cを有している。
【0044】
これにより、風をノズル13の正面方向に加えて横方向(ほぼ180°の方向)にも吹き出すことができる。この場合、ノズル13は、空気ガイド部45の湾曲部45bによって風の向きを横方向に変えているので、空気ガイド部45が直線的に形成されている場合と比較して、風の向きを変える場合の圧損を抑制することができる。したがって、ノズル13を布団乾燥機1のノズルとして使用した場合には、
図1に示すように縦長の布団に対して布団の横からノズル13を挿入することにより、布団の広い範囲を効率よく乾燥させることができる。
【0045】
なお、空気ガイド部45は、ノズル13の左側領域および右側領域にそれぞれ1個ずつ(流路46は合計3個)設けられていてもよいが、2個ずつ(流路46は合計5個)設けられていることがより好ましい。空気ガイド部45が左側領域および右側領域にそれぞれ2個ずつ形成されている構成では、1個ずつ設けられている構成と比較して、左右の横方向の広い範囲において、速度の速い風を安定に吹出すことができる。
【0046】
なお、布団乾燥機1に使用するノズル13は、小型化が求められており、大きくても縦横の寸法が150mm~200mm程度である。この場合。ノズル13の空気ガイド部45の数は、風を左右の横方向に適切に広げようとすると、4個(45°ずつ分割)~6個(30°ずつ分割)程度とすることが好ましい。この場合、ノズル13の構成の簡素化を考慮すると、空気ガイド部45の数は4個とするのが好ましい。
【0047】
また、空気ガイド部45の湾曲部45bの凸面は、上流側から下流側へ向かうにしたがって凹面からの距離が漸次長くなる膨らみ部45b1を有している。したがって、空気ガイド部45が湾曲部45bを有していても、流路46の幅の広がりを膨らみ部45b1によって抑制することができる。これにより、流路46を流れる風を空気ガイド部45に沿わせて円滑に流すことができ、横方向へ吹き出す風の風速の低下を抑制することができる。この結果、ノズル13を布団乾燥機1のノズルとして使用した場合には、布団の広い範囲をさらに効率よく乾燥させることができる。このような効果は、空気ガイド壁49の湾曲面49bが膨らみ部49b1を有することによっても同様である。
【0048】
また、空気ガイド部45の湾曲部45bは、凸面の曲率が凹面の曲率よりも大きくなっているので、
図10に示すように、凹面に沿う風は凸面に沿う風よりも風速が速くなり、風の到達距離を延長することができる。
図10は、湾曲部45bの凹面に沿う風の風速が速くなる原理の説明図である。
図10に示すように、湾曲部45bの曲率が湾曲部45bの凹面よりも凸面の方が大きい場合、凸面に沿って風が流れることにより凸面において揚力が生じ、その反力により凹面に沿って流れる風の到達距離を延長することができる。
【0049】
また、ノズル13の空気ガイド部45は、湾曲部45bよりも上流側に直線部45aを有し、直線部45aは、空気入口41から入り込む空気の流れ方向と平行となるように形成されている。これにより、ノズル13は、空気入口41から風がどのような速度で流入しても、その風を直線部45aによって適切に各流路46に分配することができる。
【0050】
また、ノズル13では、空気ガイド部45の直線部45aの上流側端部と空気入口41との距離は、ノズル幅方向の中央部寄りの空気ガイド部45ほど長くなっている。これにより、ノズル13は、空気入口41から流入した風を複数の空気ガイド部45によって段階的に分割して各流路46に円滑に導き、ノズル13の内部にて生じる風速の低下を抑制することができる。
【0051】
一方、直線部45aの上流側端部と空気入口41との距離が例えば複数の空気ガイド部45において均一になっている場合には、空気入口41から流入した風を複数の直線部45aによって一気に分割することになるので、風速の損失が生じ易い。また、ノズル幅方向の中央部寄りの空気ガイド部45において直線部45aが長くなる場合には、その直線部45aでの圧損が増加する。本実施形態の上記構成では、このような事態を防止することができる。
【0052】
また、ノズル13は、空気入口41から見た場合の流路46の幅、すなわち流路46の上流側端部におけるノズル幅方向の幅は、ノズル幅方向の両端の流路46が最も広く、ノズル幅方向の中央部寄りの流路46ほど狭くなっている。これにより、風量が低下し易い横方向の流路46ほど、多くの風を取り込み易くなるので、左右方向へ吹き出す風量の低下を抑制することができる。したがって、ノズル13を布団乾燥機1のノズルとして使用した場合には、布団の広い範囲をさらに効率よく乾燥させることができる。なお、本実施形態では、流路46の幅は、両端部の流路46C、中間部の流路46B、中央部の流路46Aの順序にて、それぞれ12.35mm、7.9mm、7.1mmとしている。
【0053】
また、ノズル13は、空気吹出口42がほぼ180°(半周)に亘って開口しているので、例えば布団を乾燥させる場合に空気吹出口42の一部が掛け布団32にて塞がれた場合であって、布団乾燥機1の送風ファンの負荷が大幅に増大する事態を防止することができる。
【0054】
なお、本実施形態では、一例として、送風装置が布団乾燥機1である場合について説明した。しかしながら、送風装置は、これに限定されず、空気清浄機やドライヤ等、風を吹き出す装置であればよい。特に、本実施形態のノズル13をドライヤに使用した場合には、ノズル13は中央部および左右方向の広い範囲に速い速度にて風を吹き出すことができる。したがって、髪を乾かす場合に、ドライヤの使用者がドライヤを持ちながら手を左右に振るといった動作の負担を軽減することができる。これらの点は、以下に示す他の実施形態においても同様である。
【0055】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0056】
(ノズル14の構成)
図11は、本実施形態のノズル14を示す斜視図である。
図12は、ノズル14の正面図である。
図13はノズル14の側面図である。
図14はノズル14の背面図である。
【0057】
図11から
図14に示すように、ノズル14は、ノズル幅方向の中央部の高さがノズル幅方向の左右の端部の高さよりも高く、ノズル幅方向の中央部からノズル幅方向の左右の端部に向かって、高さが漸次低くなる形状を有する。したがって、空気吹出口42の開口高さは、中央部が最も高く、両端部に向かうにしたがって低くなっている。この形状により、筐体部43の上壁部43の高さは、空気入口41から空気吹出口42側に亘ってほぼ一定である。
【0058】
また、空気ガイド部45の高さは、中央部の二つの空気ガイド部45Aが最も高く、それらに隣り合う空気ガイド部45Bが空気ガイド部45Aよりも低く、空気ガイド壁49が空気ガイド部45Bよりも低くなっている。したがって、流路46の高さは、高い方から順に、中央部の流路46A、中間部の流路46B、両端部の流路46Bとなっている。ノズル14のその他の構成は、前述したノズル13と同様である。
【0059】
(ノズル14の動作、利点)
ノズル14では、ノズル幅方向の両端側に位置する流路46の高さは、ノズル幅方向の中央部側に位置する流路46の高さよりも低くなっている。これにより、風速が低下し易い横方向の風速を高めることができる。したがって、ノズル14を布団乾燥機1のノズルとして使用した場合に、布団全体をより均一に乾燥し易くなる。
【0060】
また、ノズル14は、ノズル幅方向の中央部側に位置する流路46の高さが相対的に高くなっているので、ノズル14を敷き布団31と掛け布団32との間に挿入した場合に、ノズル14によって掛け布団32を持ち上げることができる。この結果、ノズル14は、敷き布団31と掛け布団32との間に温風を送り込み易くなる。
【0061】
ノズル14のノズル13と同様の構成によるその他の利点は、ノズル13と同様である。
【0062】
なお、ノズル14は、ノズル幅方向の両端側に位置する流路46の高さをノズル幅方向の中央部側に位置する流路46の高さよりも低くした構成であるが、逆に、用途に応じて、ノズル幅方向の両端側に位置する流路46の高さをノズル幅方向の中央部側に位置する流路46の高さよりも高くした構成としてもよい。
【0063】
〔実施形態3〕
本発明のさらに他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0064】
(ノズル15の構成)
図15は、本実施形態のノズル15の内部構造を示す平面図である。ノズル15は、
図15に示すように、ノズル13に対して、空気ガイド壁49の外側の部分を取り除いた構成である。これにより、ノズル15は、ノズル13に対して軽量化、および小型化が可能である。ノズル15のその他の機能および利点は、前述したノズル13の場合と同様である。
【0065】
〔実施形態4〕
本発明のさらに他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0066】
(ノズル16の構成)
図16は、本実施形態のノズル16の構成を示す側面図である。ノズル15は、
図16に示すように、ノズル13の下壁部43bの下面に脚部51を設けた構成である。脚部51は、ノズル13の下壁部43bの下面の中心部に設けられている。ノズル16は脚部51によって安定に立ち上った状態となる。ノズル16のその他の構成は、前述したノズル13の構成と同様である。
【0067】
(ノズル16の動作、利点)
ノズル16は脚部51によって安定に立ち上った状態となるので、下壁部43bの下面が平坦でなくてもよい。また、ノズル16を敷き布団31と掛け布団32との間に配置した場合、脚部51によって高さが高くなっている分、敷き布団31と掛け布団32との間に大きな空間を形成することができるので、布団の乾燥効率を高めることができる。ノズル16のその他の利点はノズル13と同様である。
【0068】
なお、ノズル16の脚部を有する構成は、ノズル13に限定されず、以上の他の実施形態のノズルに対しても同様に適用可能であり、特に、下壁部43bの下面が平坦面となっていないノズルに対して有効である。
【0069】
〔布団の乾燥性能の比較〕
次に、布団乾燥機1に例えばノズル13を使用した場合の布団の乾燥性能について調べた結果について説明する。
図17は、比較例に係るノズル101を備えた布団乾燥機の使用状態を示す斜視図である。
図18は、ノズル101を示す斜視図である。
図19は、ノズル101の縦断面図である。
【0070】
比較例には、先端部がクチバシ形状の従来のノズル101を使用した。ノズル101は、特許文献3に開示されているものである。ノズル101は、
図17から
図19に示すように、空気入口102の高さに対して空気吹出口103の高さが低く、かつ空気吹出口103が幅広形状となっている。なお、ノズル101は、ノズル13の空気ガイド部45に相当する空気ガイド部を有していない。
【0071】
ノズル13およびノズル101による乾燥性能の測定においては、敷き布団31上に150gの水を噴霧し、掛け布団32を二重に敷き、下側の掛け布団32上に100gの水を噴霧し、これを試料とした。これにより、試料に対する水の噴霧量は合計250gである。また、ノズル13,101の空気吹出口42,103から送出される温風の風量は約0.7m3/分、乾燥時間は60分とした。ノズル13,101の乾燥性能は、乾燥前後の試料の重量差とした。
【0072】
ノズル13は、ホース12との連結口の直径が64mm、前後方向の長さが100mm、空気吹出口42の高さが14mmである。一方、ノズル101は、ホース12との連結口の直径が64mm、空気吹出口103の幅が125mm、高さが15mm、前後方向の長さが110mmである。
【0073】
乾燥前後の試料の重量差の平均値は、ノズル101が215g(乾燥率93%)となった。これに対し、ノズル13は253g(乾燥率101%)となった。この結果から、ノズル13は、布団の乾燥性能が従来のノズル101よりも8%以上高いことが分かった。
【0074】
〔空気吹出口からの吹き出し風速の測定結果〕
次に、上記の実施形態に係るノズル13,14および比較例に係るノズル101の空気吹出口42,103から吹き出される風の風速を調べた結果について説明する。
【0075】
図20の(a)は、
図1に示したホース12のノズル接続側の端部の形状を示す斜視図、
図20の(b)は、
図20の(a)に示した上記端部での風速を示す説明図である。
図21は、ノズル13の空気吹出口42の各部の風速を示す説明図である。
図22は、ノズル14の空気吹出口42の各部の風速を示す説明図である。
図23は、ノズル101の空気吹出口103の各部の風速を示す説明図である。なお、
図21から
図23に示す各部の風速は、各部での最大値であり、
図21および
図22に示す各部の風速は、空気吹出口42における流路46A~46C(
図9参照)部分での風速である。
【0076】
布団乾燥機1のホース12のノズル接続側の端部からの風速、すなわちノズル13,14,101の各空気入口41,102から入り込む風の風速は、
図20の(b)のとおりであり、9~10m/sである。これにより、ノズル13,14,101の各空気吹出口42,103から吹き出される風の風速は、それぞれ
図21から
図23のとおりである。
【0077】
ノズル13では、
図21に示すように、空気入口41から取り込んだ風の風速に対し、空気吹出口42から前方向から横方向に亘って、十分な風速にて風を吹き吹き出すことができる。ノズル14では、
図22に示すように、空気入口41から取り込んだ風の風速に対し、構造上、前方向の風速は、ノズル13の前方向の風速よりも低下するものの、横方向には十分な風速にて風を吹き出すことができる。これに対し、ノズル101では、空気入口102から取り込んだ風の風速に対し、空気吹出口42から前方向には十分な風速にて風を吹き出している。しかしながら、斜め前方向(約60°方向)の風速は低下しており、さらに、構造上、横方向には風を吹き出すことができない。
【0078】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る送風装置のノズルは、筐体部と、前記筐体部の端部に形成された空気入口と、前記筐体部の他の端部に形成された空気吹出口と、前記空気入口と前記空気吹出口との間のノズル幅方向の左側領域と右側領域とにそれぞれ設けられ、下流側部分が湾曲部である空気ガイド部であって、前記左側領域の前記湾曲部は左側に湾曲し、前記右側領域の前記湾曲部は右側に湾曲している複数の空気ガイド部と、前記空気ガイド部同士の間、および前記空気ガイド部と前記筐体部の壁部との間に形成される複数の風の流路とを備えている。
【0079】
本発明の態様2に係る送風装置のノズルは、上記態様1において、前記湾曲部の凸面は、上流側から下流側へ向かうにしたがって凹面からの距離が漸次長くなる膨らみ部を有している構成としてもよい。
【0080】
本発明の態様3に係る送風装置のノズルは、上記態様1または2において、前記流路の高さは、少なくとも空気吹出口側の部分において、前記空気入口から前記空気吹出口へ向かって漸次低くなっている構成としてもよい。
【0081】
本発明の態様4に係る送風装置のノズルは、上記態様1から3のいずれか1態様において、前記空気入口は円形であり、前記空気吹出口は横長形状である構成としてもよい。
【0082】
本発明の態様5に係る送風装置のノズルは、上記態様1から4のいずれか1態様において、前記空気ガイド部は、前記左側領域および前記右側領域にそれぞれ2個設けられている構成としてもよい。
【0083】
本発明の態様6に係る送風装置のノズルは、上記態様1,2または5のいずれか1態様において、ノズル幅方向の両端側に位置する前記流路の高さは、ノズル幅方向の中央部側に位置する前記流路の高さよりも低くなっている構成としてもよい。
【0084】
本発明の態様7に係る送風装置のノズルは、上記態様1から6のいずれか1態様において、前記湾曲部は、凸面の曲率が凹面の曲率よりも大きい構成としてもよい。
【0085】
本発明の態様8に係る送風装置のノズルは、上記態様1から7のいずれか1態様において、前記空気ガイド部は、前記湾曲部よりも上流側に直線部を有し、前記直線部は、前記空気入口から入り込む空気の流れ方向と平行となるように形成されている構成としてもよい。
【0086】
本発明の態様9に係る送風装置のノズルは、上記態様8において、前記直線部の上流側端部と前記空気入口との距離は、ノズル幅方向の中央部寄りの前記空気ガイド部ほど長くなっている構成としてもよい。
【0087】
本発明の態様10に係る送風装置のノズルは、上記態様1から9のいずれか1態様において、前記流路の上流側端部におけるノズル幅方向の幅は、ノズル幅方向の両端の流路が最も広く、ノズル幅方向の中央部寄りの前記流路ほど狭くなっている構成としてもよい。
【0088】
本発明の態様11に係る送風装置のノズルは、上記態様1から10のいずれか1態様において、前記筐体部の下面は平坦面である構成としてもよい。
【0089】
本発明の態様12に係る送風装置のノズルは、上記態様1から11のいずれか1態様において、前記ノズルは布団乾燥機用のノズルである構成としてもよい。
【0090】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 布団乾燥機
11 乾燥機本体部
12 ホース
13,14 ノズル
21 操作パネル
31 敷き布団
32 掛け布団
41 空気入口
42 空気吹出口
43 筐体部
43a 上壁部
43b 下壁部
45,45A~45C 空気ガイド部
45a 直線部
45b 湾曲部
45b1,49b1 膨らみ部
46,46A~46C 流路
47 中央線
48,50 接線
49 空気ガイド壁(壁部)
49a 直線面
49b 湾曲面