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特許7280949タンパク質チロシン-チロシン類縁体およびそれを使用する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】タンパク質チロシン-チロシン類縁体およびそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/575 20060101AFI20230517BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20230517BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20230517BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
C07K14/575 ZNA
A61K38/22
A61K45/00
A61K47/54
A61P3/04
A61P3/10
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021523228
(86)(22)【出願日】2019-10-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 US2019058259
(87)【国際公開番号】W WO2020092191
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-04-27
(31)【優先権主張番号】62/754,244
(32)【優先日】2018-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/793,544
(32)【優先日】2019-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100139310
【弁理士】
【氏名又は名称】吉光 真紀
(72)【発明者】
【氏名】ブリエール,ダニエル アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ロペス,ダニエル クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ムッピディ,アビナッシュ
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-505284(JP,A)
【文献】特表2016-519130(JP,A)
【文献】特表2013-505221(JP,A)
【文献】特表2013-510829(JP,A)
【文献】特表2011-520847(JP,A)
【文献】Journal of Peptide Science,2010年,Vol.16,pp.664-673
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含むペプチドチロシン-チロシン(PYY)類縁体:
【化1】

【請求項2】
前記PYY類縁体が、-2を超える電荷を有する、請求項に記載のPYY類縁体。
【請求項3】
前記PYY類縁体が、PYY3-36(配列番号2)の結合親和性よりも大きいNPY2受容体での結合親和性を有する、請求項に記載のPYY類縁体。
【請求項4】
前記PYY類縁体が、ヒトPYY3-36(配列番号2)の半減期よりも長い半減期を有する、請求項に記載のPYY類縁体。
【請求項5】
請求項に記載の少なくとも1つのペプチドチロシン-チロシン(PYY)類縁体またはその塩と、
1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および賦形剤と、を含む医薬組成物。
【請求項6】
追加の治療薬をさらに含む、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記追加の治療薬が、グルカゴン(GCG)、GCG類縁体、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、GLP-17-36-アミド、GLP-1類縁体、胃抑制ペプチド(GIP)、GIP類縁体、オキシントモジュリン(OXM)、OXM類縁体、GIP/GLP-1、GLP-1/GCG、および三重受容体活性を有するインクレチン類縁体からなる群から選択されるインクレチンである、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記追加の治療薬がジペプチジルペプチダーゼ-IV(DPP-IV)阻害剤である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載のペプチドチロシン-チロシン(PYY)類縁体またはその薬学的に許容される塩を含む、肥満の治療用医薬組成物。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載のペプチドチロシン-チロシン(PYY)類縁体またはその薬学的に許容される塩を含む、肥満関連の疾患または障害の治療用医薬組成物。
【請求項11】
請求項1~のいずれか一項に記載のペプチドチロシン-チロシン(PYY)類縁体またはその薬学的に許容される塩を含む、II型糖尿病の治療用医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、生物学および医学に関連し、より具体的には、NPY2受容体などのニューロペプチドY(NPY)受容体に結合することができるペプチドチロシン-チロシン(PYY)類縁体と並んで、それを含む組成物、ならびに肥満およびII型糖尿病(T2DM)などの肥満関連の疾患および障害の治療における、それらの治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
PYYは、膵臓ポリペプチド(PP)ファミリーのメンバーであり、食事(Tatemoto(1982)Proc.Natl.Acad.Sci.79:2514-2518を参照)の後の食物摂取量およびエネルギー消費の調節に関与している。PYYは消化管のL細胞によって分泌され、2つの主要な内因性形態-PYY1-36(配列番号1)およびPYY3-36(配列番号2)を有している。PYY1-36は空腹時のPYY3-36に対して優勢であるのに対して、摂食後はPYY3-36がPYY1-36に対して優勢である。ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-IV)は、Pro-Ile結合でPYY1-36を加水分解して、PYY1-36よりNPY2受容体に対してより選択的であるPYY3-36を生成する。
【0003】
血漿PYY3-36濃度は、典型的には、食物摂取の15分以内に増加して、60~90分以内にピークに達し、ベースラインに戻る前最大6時間にわたり上昇したままである(Adrian et al.(1985)Gastroenterology 89:1070-1077;およびDe Silva&Bloom(2012)Gut Liver 6:10-20を参照)。このように、PYY3-36は、その直接的な中心効果、また腸の運動性への影響(すなわち、食欲抑制効果)を介して食欲に影響を与えると考えられている。さらに、PYY3-36はインスリン感受性を媒介し、それによって血糖値の低下を助けると考えられている(すなわち、その感作効果)。
【0004】
PYY3-36は、その食欲抑制効果に鑑みて、体重調節のため、特に肥満およびそれに関連する疾患および障害(T2DMおよび心血管疾患を含む)を治療するための潜在的な治療薬として調査されてきた(例えば、国際特許出願公開第2002/47712、およびSchwartz&Morton(2002)Nature 418:595-597を参照)。
【0005】
残念ながら、プロテアーゼおよび他のクリアランス機構により、外因的に投与されたPYY3-36は半減期が短く(例えば、約10~15分)(Lluis et al.(1989)Rev.Esp.Fisiol.45:377-384;およびTorang et al.(2016)Am.J.Physiol.Regul.Integr.Comp.Physiol.310:R866-R874を参照)、これは治療薬として使用する際に課題を提示する。このように半減期が短いため、治療効果を発揮するために、PYY3-36を少なくとも1日1回投与する必要があるが、これはそれを必要とする個体にとっては不便である。したがって、PYY3-36の半減期を延長する、および/またはそのNPY2受容体の選択性を高めるための努力がなされてきた。例えば、Rubinstein et al.は、半減期を延長させるために9-フルオレカルボニルカルボニル(Fmoc)または2-スルホ-9-フルオレニル-メトキシカルボニル(FMS)のラジカルを有するPYY類縁体を記載する(国際特許出願公開第2004/089279号を参照)。さらに、DeCarr et al.は、半減期を増加させるためにアミノ末端結合PEG部分を有するPYY類縁体を記載している(DeCarr et al.(2007)Bioorg.Med.Chem.Lett.17:1916-1919を参照;またOrtiz et al.(2007)J.Pharmacol.Exp.Ther.323:692-700も参照)。さらに、Kofoed et al.は、アルブミン結合側鎖、PYYの切断部位に近い少なくとも1つの修飾残基(例えば、目的のアミノ酸残基のN-メチルアミノ酸類縁体)、N-グリシン、および/または半減期を増加するためのアルギニン模倣物を有するPYY類縁体を記載している(国際特許出願公開第2011/033068号を参照)。
【0006】
代謝におけるPYY3-36の役割の理解が大幅に増加したにもかかわらず、さらなるPYY類縁体、特にNPY2受容体における効力および選択性が改善されたPYY類縁体が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、治療用途のための追加のPYY類縁体が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この必要性に対処するために、本開示は、最初に、(天然のヒトPYY1-36(配列番号1)の番号付けに関して)次の塩基アミノ酸配列を含むPYY類縁体を記載する:
PKPEXPX10DASPEEX1718RYYX2223LRHYLNX30LTRQRY36(式I)、式中、Xは、接合に利用できる官能基を持つ任意のアミノ酸であり、官能基はC16~C22脂肪酸に接合され、XはEまたはGであり、X10はEまたはKであり、X17はLまたはWであり、X18はNまたはQであり、X22はAまたはIであり、X23はE、DまたはSであり、X30はEまたはWであり(配列番号3)、ここで、カルボキシ末端(C末端)アミノ酸はアミド化されていてもよい。
特定の例では、位置Xで接合に利用可能な官能基を有するアミノ酸は、C、D、E、KまたはQであり得る。特定の例では、位置Xで接合に利用可能な官能基を有するアミノ酸はKであり、アミノ酸配列は次のいずれかとなり得る:
PKPEKPGEDASPEEWQRYYAELRHYLNWLTRQRY36(配列番号4)、
PKPEKPGEDASPEEWQRYYAELRHYLNELTRQRY36(配列番号5)、
PKPEKPEEDASPEEWQRYYIELRHYLNWLTRQRY36(配列番号6);
PKPEKPGKDASPEEWNRYYADLRHYLNWLTRQRY36(配列番号7)、または
PKPEKPGEDASPEELQRYYASLRHYLNWLTRQRY36(配列番号8)
【0009】
いくつかの例では、C16~C22脂肪酸がリンカーを介して接合に利用可能な官能基を有するアミノ酸に接合される。特定の例では、C16~C22脂肪酸は、-CO-(CH-COHの構造を有し、ここで、は16~22の整数である。特定の例では、脂肪酸は、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸またはエイコサン酸などのC18二酸またはC20二酸、特に飽和C18二酸またはC20二酸である。同様に、場合によっては、リンカーは、[2-(2-アミノ-エトキシ)-エトキシ)]-酢酸(AEEA)、アミノヘキサン酸(Ahx)、グルタミン酸(E)、γ-グルタミン酸(γE)またはそれらの組み合わせの1つ以上の単位であり得る。
【0010】
特定の例では、PYY類縁体は以下のいずれかであり得る:
【化1】

【化2】

【0011】
場合によっては、本明細書のPYY類縁体の塩基構造は、天然のヒトPYY1-36(配列番号1)の2つのアミノ末端(N末端)アミノ酸をさらに含むことができ、これは、その後、in vivoでPYY3-36類縁体へと処理され得る(すなわち、配列番号1のN末端「YP」残基は、PYY類縁体のいずれか1つからin vivoで切断され得る)。
【0012】
場合によっては、PYY類縁体の電荷は-2を超え、特に-3または-4になる。
【0013】
場合によっては、PYY類縁体は、ヒトNPY2受容体において、ヒトPYY3-36(配列番号2)の結合親和性よりも大きい、例えば、約2倍~約10倍大きい、特に約2倍~約3倍大きい結合親和性を有する。
【0014】
場合によっては、PYY類縁体は、ヒトPYY3-36(配列番号2)よりも長い半減期、例えば、約5時間~約24時間長い、特に約12時間の半減期を有する。
【0015】
第2に、本明細書の少なくとも1つのPYY類縁体またはその薬学的に許容される塩(例えば、トリフルオロ酢酸塩、酢酸塩または塩酸塩)と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物が記載される。場合によっては、医薬組成物は、担体、希釈剤および/または賦形剤をさらに含むことができる。
【0016】
さらに、医薬組成物は、例えば、他の抗糖尿病薬または体重減少剤、特にインクレチンなどの追加の治療薬を含むことができる。場合によっては、インクレチンはグルカゴン(GCG)またはGCG類縁体であり得る。他の例では、インクレチンは、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、GLP-1(7-36)アミド、またはGLP-1類縁体であり得る。他の例では、インクレチンは胃抑制ペプチド(GIP)またはGIP類縁体であり得る。他の例では、インクレチンは、オキシントモジュリン(OXM)またはOXM類縁体、GLP-1/GCGまたはGIP/GLP-1などの二重受容体アゴニストであり得る。他の例では、インクレチンは、三重受容体活性を有するインクレチン類縁体(すなわち、GIP、GLP-1およびGCGのそれぞれの受容体で活性を有するインクレチン類縁体)であり得る。他の例では、追加の治療薬は、DPP-IV阻害剤であり得る。
【0017】
第3に、本明細書において、PYY類縁体を使用する方法、特に肥満および肥満関連の疾患および障害(T2DMなど)を治療するためにPYY類縁体を使用する方法が記載される。この方法は、少なくとも、それを必要とする個体に、本明細書に記載の有効量のPYY類縁体またはその薬学的に許容される塩を投与する工程を含む。
【0018】
場合によっては、PYY類縁体を個体に皮下(SQ)投与することができる。同様に、場合によっては、PYY類縁体は、毎日、隔日、週3回、週2回、週1回(すなわち、毎週)、隔週(すなわち、1週間おきに)、または毎月投与することができる。特定の例では、PYY類縁体を、SQで隔日に、SQで週に3回、SQで週に2回、SQで週に1回、SQで1週間おきに、またはSQで月に1回投与することができる。特定の例では、PYY類縁体は週に1回SQで(QW)投与される。
【0019】
あるいは、PYY類縁体を個体に経口投与することができる。上記のように、PYY類縁体は、毎日、隔日、週3回、週2回、週1回(すなわち、毎週)、隔週(すなわち、1週間おきに)、または毎月投与することができる。特定の例では、PYY類縁体を、経口で隔日に、経口で週に3回、経口で週に2回、経口で週に1回、経口で1週間おきに、または経口で月に1回投与することができる。特定の例では、PYY類縁体は週に1回経口投与される。
【0020】
該方法はまた、有効量のDPP-IV阻害剤またはインクレチンなどの追加の治療薬(例えば、GCGもしくはGCG類縁体、GLP-1、GLP-1(7-36)アミドもしくはGLP-1類縁体、GIPもしくはGIP類縁体、OXMもしくはOXM類縁体、GIP/GLP-1、GLP-1/GCG、または三重受容体活性を有するインクレチン)と組み合わせて、少なくとも1つのPYY類縁体を投与することを含み得る。DPP-IV阻害剤またはインクレチンは、PYY類縁体と同時に、別々に、または順次に投与することができる。
【0021】
場合によっては、DPP-IV阻害剤またはインクレチンをPYY類縁体と同じ頻度で(すなわち、隔日、週に2回、または週に1回)投与することができる。他の例では、DPP-IV阻害剤またはインクレチンはPYY類縁体とは異なる頻度で投与される。他の例では、DPP-IV阻害剤またはインクレチンはQWで投与される。さらに他の例では、PYY類縁体をSQで投与し、DPP-IV阻害剤またはインクレチンを経口投与することができる。
【0022】
場合によっては、個体は肥満または太りすぎである。他の例では、個体は糖尿病(PwD)、特にT2DMの人である。特定の例では、個体はT2DMで肥満であるか、T2DMで太りすぎである。
【0023】
該方法はまた、個体の体重および/または血糖および/またはヘモグロビンA1c(HbA1c)を測定または取得し、そのような得られた値を1つ以上のベースライン値または以前に得られた値と比較して治療の有効性を評価するなどの工程を含み得る。
【0024】
これらの方法はまた、食餌療法および運動と組み合わせることができ、および/または上記で論じたもの以外の追加の治療薬と組み合わせることができる。
【0025】
第4に、PYY類縁体に関して、肥満、ならびにT2DMなどの肥満関連の疾患および障害の治療における使用が本明細書において記載され、これは、任意に、DPP-IV阻害剤および/またはGCGもしくはGCG類縁体、GLP-1、GLP-1(7-36)アミドもしくはGLP-1類縁体、GIPもしくはGIP類縁体、OXMもしくはOXM類縁体、GIP/GLP-1、GLP-1/GCG、またはさらには三重受容体活性を有するインクレチンなどのインクレチンと同時に、別々にまたは順次に(すなわち、組み合わせて)投与され得る。
【0026】
第5に、PYY類縁体に関して、肥満、ならびにT2DMなどの肥満関連の疾患および障害の治療用薬剤の製造における使用が本明細書において記載され、この場合、該薬剤は、任意に、DPP-IV阻害剤および/またはGCGもしくはGCG類縁体、GLP-1、GLP-1(7-36)アミドもしくはGLP-1類縁体、GIPもしくはGIP類縁体、OXMもしくはOXM類縁体、GIP/GLP-1、GLP-1/GCG、またはさらには三重受容体活性を有するインクレチンなどのインクレチンをさらに含み得る。
【発明の効果】
【0027】
本明細書におけるPYY類縁体の1つの利点は、それらが体重減少を促進することができるだけでなく、グルコースを低下させることもできることである。このようにして、個体、特にT2DMに罹患しやすい、またはT2DMを罹患している個体は、外因性インスリンへの進行を遅らせることができ、標的とするHbA1cの目標を維持することができる。さらに、本明細書のPYY類縁体は、インスリン感作を改善することによって血糖コントロールを強化することができる。合わせると、GIP/GLP-1とPYY類縁体は、グルコース制御(インクレチン+潜在的なインスリン感作物質)と体重減少(相乗的)の両方に使用できる。特に、本明細書のPYY類縁体は、それを必要とする個体に投与した場合、単独で最大約12%の体重減少を引き起こすことができ、それを必要とする個体に投与した場合、インクレチンなどの追加の治療薬に関連して最大約25%の体重減少を引き起こすことができる。
【0028】
本明細書におけるPYY類縁体の別の利点は、それらが最大約24時間の半減期を有することができ、それにより週に1回の投与を可能にすることである。
【0029】
本明細書におけるPYY類縁体の別の利点は、天然のヒトPYY3-36(配列番号2)と比較した場合に物理化学的安定性および適合性が高められ、天然のヒトPYY3-36(配列番号2)と比較した場合にインクレチンを含む製剤における適合性が高められたことである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
別段に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の方法および材料を、PYY類縁体、医薬組成物、および方法の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法および材料は、本明細書に記載されている。
【0031】
また、不定冠詞「1つの(a)」または「1つの(an)」による要素への言及は、文脈が1つおよび1つのみの要素があることを明確に要求しない限り、複数の要素が存在する可能性を排除しない。よって、不定冠詞「1つの(a)」または「1つの(an)」は、通常「少なくとも1つ」を意味する。
【0032】
定義
【0033】
本明細書で使用される場合、「約」は、例えば、明記された濃度、長さ、分子量、pH、配列同一性、時間枠、温度、体積などの値(複数の場合がある)の統計学的に意味のある範囲内を意味する。このような値または範囲は、所定の値または範囲の典型的には20%以内、より典型的には10%以内、さらにより典型的には5%以内の大きさの範囲内であり得る。「約」によって包含される許容される変動は、研究での特定の系に依存し、当業者によって容易に理解され得る。
【0034】
本明細書で使用される場合、「アミノ酸」は、化学的観点から、1つ以上のアミン基および1つ以上のカルボン酸基の存在を特徴とし、他の官能基を含み得る分子を意味する。当該技術分野で知られているように、標準アミノ酸として指定され、あらゆる生物によって産生されるほとんどのペプチド/タンパク質の構成要素として使用される20個のアミノ酸のセットが存在する。
【0035】
本明細書で使用される場合、「接合に利用可能な官能基を有するアミノ酸」とは、例えば、リンカーによって脂肪酸に接合され得る官能基を有する任意の天然または非天然アミノ酸を意味する。そのような官能基の例としては、アルキニル基、アルケニル基、アミノ基、アジド基、ブロモ基、カルボキシル基、クロロ基、ヨード基、およびチオール基が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、そのような官能基を含む天然アミノ酸の例としては、C(チオール)、D(カルボキシル)、E(カルボキシル)、K(アミノ)およびQ(アミド)が挙げられる。
【0036】
本明細書で使用される場合、「類縁体」は、標的受容体を活性化し、その受容体の天然アゴニストによって誘発される少なくとも1つのin vivoまたはin vitro効果を誘発する、合成のペプチドまたはポリペプチドなどの化合物を意味する。
【0037】
本明細書で使用される場合、「食欲抑制効果」は、食欲を減少させ、結果として食物摂取量を低下させ、最終的に体重減少をもたらす、本明細書のPYY類縁体の能力を意味する。食欲抑制効果はまた、腸の運動性を増加させる本明細書のPYY類縁体の能力を指す場合もある。
【0038】
本明細書で使用される場合、「C16~C22脂肪酸」とは、16~22個の炭素原子を有するカルボン酸を意味する。本明細書での使用に好適なC16~C22脂肪酸は、飽和一酸または飽和二酸であり得る(「二酸」は、各末端にカルボキシル基を有する)。
【0039】
本明細書で使用される場合、「AUC」は、曲線下面積を意味する。
【0040】
本明細書で使用される場合、「有効量」は、それを必要とする個体への単回または複数回投与により、診断または治療中のそのような個体において所望の効果(すなわち、例えば、血糖の低下、HbA1cの低下、および/または体重もしくは体脂肪の低下など、個体の状態に臨床的に測定可能な差異を生じさせ得る)を提供する、本明細書の1つ以上のPYY類縁体、またはその薬学的に許容される塩の量、濃度または用量を意味する。有効量は、既知の手法の使用によって、および同様の状況下で得られた結果を観察することによって、当業者により容易に決定されることができる。個体についての有効量を決定する際には、哺乳動物の種、そのサイズ、年齢、および全身の健康状態、関与する特定の疾患または障害、疾患または障害の関与の程度または重症度、個体の応答、投与される特定のPYY類縁体、投与の様式、投与される調製物の生物学的利用能の特性、選択される投薬レジメン、併用薬の使用、ならびに他の関連する状況を含むが、これらに限定されない、多数の因子が考慮される。
【0041】
本明細書で使用される場合、「半数効果濃度」または「EC50」は、用量反応曲線(例えば、cAMP)などのアッセイエンドポイントの50%の活性化/刺激をもたらす化合物の濃度を意味する。
【0042】
本明細書で使用される場合、「と組み合わせて」は、本明細書の少なくとも1つのPYY類縁体を、1つ以上の追加の治療薬と同時に、順次に、または1つ以上の追加の治療薬と組み合わせた単一の製剤で投与することを意味する。
【0043】
本明細書で使用される場合、「インクレチン類縁体」は、GIP、GLP-1、GCGおよびOXM、特に天然のヒトGIP、GLP-1、GCGおよびOXMのそれぞれと構造的類似性を有するが、それらとは複数の違いを有するペプチドまたはポリペプチドを意味する。いくつかのインクレチン類縁体はまた、GIP、GLP-1およびGCG受容体の2つまたはさらにはそれぞれにおいて親和性および活性を有する(すなわち、OXM、GIP/GLP-1もしくはGLP-1/GCGなどの2つの受容体でのアゴニスト活性、またはさらには3つすべての受容体でのアゴニスト活性)。
【0044】
本明細書で使用する場合、「それを必要とする個体」とは、例えば、本明細書に列挙されるものを含む、治療または治療法を必要とする状態、疾患、障害、または症状を有する、ヒトなどの哺乳動物を意味する。特に、治療される好ましい個体はヒトである。
【0045】
本明細書で使用される場合、「長時間作用型」は、本明細書でのPYY類縁体の結合親和性および活性が、天然のヒトPYY1-36(配列番号1)および/または天然のヒトPYY3-36(配列番号2)よりも長い期間継続することを意味し、少なくとも1日1回またはさらには週3回、週2回、週1回、もしくは月1回と同じくらいの頻度で投与することを可能にする。本明細書でのPYY類縁体の時間作用プロファイルは、以下の実施例で利用されるものなどの既知の薬物動態試験方法を使用して測定され得る。
【0046】
本明細書で使用される場合、「非標準アミノ酸」は、細胞内で自然に発生し得るが、ペプチド合成には関与しないアミノ酸を意味する。非標準アミノ酸はペプチドの構成要素である可能性があり、多くの場合、ペプチド内の標準アミノ酸の修飾によって(すなわち、翻訳後修飾を介して)生成される。非標準アミノ酸には、上記の標準アミノ酸とは反対の絶対キラリティーを有するD-アミノ酸が含まれる場合がある。
【0047】
本明細書で使用される場合、「太りすぎ」または「肥満」は、その個体が30.0kg/m超であるボディ・マス・インデックス(BMI)を有する状態を意味する。一般には、cdc.gov/obesity/adult/defining.htmlで利用可能な疾病管理予防センターによる「Overweight&Obesity」;およびiddk.nih.gov/health-information/weight-management/adult-overweight-obesity/definition-factsにある米国国立衛生研究所による「Definitions&Facts for Adult Overweight&Obesity」を参照。
【0048】
本明細書で使用される場合、「肥満関連の疾患または障害」は、狭心症、心血管疾患、胆嚢炎、胆石症、うっ血性心不全、脂質異常症、脂肪性肝疾患、不妊の合併症、耐糖能異常、痛風、高血圧、甲状腺機能低下症、高インスリン血症、インスリン抵抗性、骨関節炎、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、妊娠合併症、精神障害、睡眠時無呼吸およびその他の呼吸器系の問題、腹圧性尿失禁、脳卒中、T2DM、尿酸腎結石症(腎臓結石)、ならびに乳房、結腸、子宮内膜、食道、胆嚢、腎臓、前立腺および直腸の癌などを含むがこれらに限定されない、肥満によって誘発/悪化される疾患または障害を意味する。
【0049】
本明細書で使用する場合、「過体重」は、個体が25.0kg/mから30kg/m未満程度であるBMIを有する状態を意味する。idを参照。
【0050】
本明細書で使用される場合、「PYY」は、哺乳動物種、特にヒトなどの任意の種から得られた、またはそれに由来するペプチドYYを意味する。PYYは、天然PYY(すなわち、全長)およびそのバリエーション(すなわち、天然PYYの付加、欠失、および/または置換)の両方を含む。特定のPYYには、天然のヒトPYY1-36(配列番号1)および天然のヒトPYY3-36(配列番号2)が含まれるが、これらに限定されない。
【0051】
本明細書で使用される場合、「PYY類縁体」(単数または複数)は、NPY2受容体などの1つ以上のNPY受容体において天然PYYの1つ以上の効果を誘発するPYY様ペプチドまたはポリペプチドを意味する。いくつかの例では、本明細書のPYY類縁体は、NPY受容体、特にヒトNPY2受容体に対してより高いまたは低い親和性で結合することができるが、天然PYY、特に天然ヒトPYY1-36(配列番号1)および天然ヒトPYY3-36(配列番号2)などのヒトPYYと比較した場合、in vivoまたはin vitroにおいてより長い半減期を示すことができる。このように、本明細書のPYY類縁体は、NPY2受容体アゴニストとして作用する合成化合物である。
【0052】
本明細書で使用される場合、「飽和」とは、脂肪酸が炭素-炭素二重結合または三重結合を含まないことを意味する。
【0053】
本明細書で使用される場合、「感作効果」は、インスリンの効果を増加させ、それによって血糖を低下させるのを助ける本明細書のPYY類縁体の能力を意味する。
【0054】
本明細書で使用される場合、「治療する、治療すること」または「治療すること、治療するため」とは、既存の状態、疾患、障害または症状の進行または重症度を軽減、抑制、逆転、減速または停止することを意味する。
【0055】
特定の略語は次のように定義される:「ACR」は尿中アルブミン/尿中クレアチニン比を指す;「amu」は原子質量単位を指す;「tBoc」はtert-ブトキシカルボニルを指す;「cAMP」はサイクリックアデノシン一リン酸を指す;「DMF」はジメチルホルムアミドを指す;「DMSO」はジメチルスルホキシドを指す;「EIA/RIA」とは、酵素イムノアッセイ/ラジオイムノアッセイを指す;「hr」は時間を指す;「HTRF」は、ホモジナス時間分解蛍光を指す;「IV」は静脈内を指す;「kDa」はキロダルトンを指す;「LC-MS」は液体クロマトグラフィー-質量分析を指す;「MS」は質量分析を指す;「OtBu」はO-tert-ブチルを指す;「Pbf」は、NG-2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニルを指す;「RP-HPLC」とは、逆相高速液体クロマトグラフィーを指す;「SQ」は皮下を指す;「SEM」は平均の標準誤差を指す;「TFA」はトリフルオロ酢酸を指す;「Trt」はトリチルを指す。
【0056】
PYY類縁体
【0057】
本明細書のPYY類縁体は、天然のPYYペプチドと構造的に類似しているが、多くの構造上の違いがある。例えば、天然のヒトPYY1-36(配列番号1)および/または天然のヒトPYY3-36(配列番号2)と比較した場合、本明細書に記載のPYY類縁体は、天然のヒトPYY1-36(配列番号1)の番号付けに関して3位、7位、9位、10位、17位、18位、22位、23位、30位および31位の1つ以上における修飾を含む。特定の例では、本明細書におけるPYY類縁体の例示的なアミノ酸配列には、以下が含まれる(天然のヒトPYY(配列番号1)の対応する残基に対する特定の変化は太字で示されている):
PKPEXPX10DASPEEX1718RYYX2223LRHYLNX30LTRQRPY36(配列番号3)
PKPEKPGEDASPEEWQRYYAELRHYLNWLTRQRY36(配列番号4)、
PKPEKPGEDASPEEWQRYYAELRHYLNELTRQRY36(配列番号5)、
PKPEKPEEDASPEEWQRYYIELRHYLNWLTRQRY36(配列番号6)、
PKPEKPGKDASPEEWNRYYADLRHYLNWLTRQRY36(配列番号7)、および
PKPEKPGEDASPEELQRYYASLRHYLNWLTRQRY36(配列番号8)。
【0058】
本明細書のPYY類縁体は、ヒトNPY2受容体では十分な活性をもたらすが、NPY1、NPY4およびNPY5受容体では活性が不十分である。同様に、本明細書のPYY類縁体は、水溶液への溶解性の改善、化学的および物理的製剤の安定性の改善、薬物動態プロファイルの拡張、および免疫原性の可能性の最小化を含む、治療的処置としてのそれらの開発可能性に関連する有益な属性を有する。
【0059】
場合によっては、本明細書のPYY類縁体は、安定性に影響を与えるためにC末端アミノ酸でアミド化されている。本明細書に記載される変化に加えて、類縁体は、類縁体がヒトNPY2受容体に結合し、これを活性化することができるままであるという条件で、1つ以上の追加のアミノ酸修飾を含み得る。
【0060】
本明細書のPYY類縁体は、例えば、リンカーによって、接合に利用可能な官能基を有する天然または非天然アミノ酸に接合された(すなわち、「アシル化」)脂肪酸をさらに含む。場合によっては、接合に利用可能な官能基を有するアミノ酸は、C、D、E、KおよびQであり得る。特定の例では、接合に利用可能な官能基を有するアミノ酸は、Kであり、ここで、接合は、K側鎖のε-アミノ基に対するものである。
【0061】
ここで、PYY類縁体のアシル化は、天然のヒトPYY1~36(配列番号1)と比較した場合、7位にある。このようにして、脂肪酸は、より長時間作用する類縁体を提供するためのアルブミン結合剤として作用することができる。
【0062】
脂肪酸に関しては、直接結合またはリンカーのいずれかによって、接合に利用可能なアミノ酸の官能基に化学的に接合させることができる。脂肪酸の長さおよび組成は、PYY類縁体の半減期、PYY類縁体のin vivoでの効力、ならびにPYY類縁体の溶解性および安定性に影響を与える。C16~C22飽和脂肪一酸または二酸への接合は、望ましい半減期、in vivo動物モデルにおける望ましい効力、ならびに望ましい可溶性および安定性の特性を示すPYY類縁体をもたらす。
【0063】
本明細書の使用のための例示的な飽和C16~C22脂肪酸としては、ヘキサデカン酸(すなわち、パルミチン酸、C16一酸)、ヘキサデカン酸(C16二酸)、ヘプタデカン酸(すなわち、マルガリン酸、C17一酸)、ヘプタデカン二酸(C17二酸)、ステアリン酸(C18一酸)、オクタデカン二酸(C18二酸)、ノナデシル酸(すなわち、ノナデカン酸、C19一酸)、ノナデカン二酸(C19二酸)、エイコサン酸(すなわち、アラキドン酸(arachadic acid)、C20一酸)、エイコサン酸(C20二酸)、ヘンエイコサン酸(すなわち、ヘンイコシル酸、C21一酸)、ヘンエイコサン二酸(C21二酸)、ドコサン酸(すなわち、ベヘン酸、C22一酸)、ドコサン二酸(C22二酸)、ならびにそれらの分岐および置換誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。特定の例では、C16~C22脂肪酸は、飽和C18一酸、飽和C18二酸、飽和C19一酸、飽和C19二酸、飽和C20一酸、飽和C20二酸、ならびにそれらの分岐および置換誘導体であり得る。特定の例では、C16~C22脂肪酸は、パルミチン酸またはヘキサデカン酸(hexadeconic acid)、ステアリン酸もしくはオクタデカン酸(octadeconic acid)、またはアラキジン酸もしくはエイコサン酸であり得る。
【0064】
脂肪酸を、接合に利用可能な官能基を有する天然または非天然アミノ酸に接合させるのを助けるために、本明細書のPYY類縁体はリンカーを含むことができる。場合によっては、リンカーは、AEEA、Ahx、EまたはγEのうちの少なくとも1つ、ならびにそれらの組み合わせであり得る。
【0065】
リンカーがアミノ酸を含む場合、1~4個のEまたはγEアミノ酸残基を持つことができる。場合によっては、リンカーは、1つまたは2つのEおよび/またはγEアミノ酸残基を含むことができる。例えば、リンカーは、1つまたは2つのEおよび/またはγEのいずれかのアミノ酸残基を含むことができる。他の例では、リンカーは、AEEAまたはAhxと組み合わせて使用される1~4個のアミノ酸残基(例えば、EまたはγEアミノ酸など)を含むことができる。具体的には、リンカーは、EおよびγEアミノ酸残基とAEEAまたはAhxとの組み合わせであり得る。さらに他の例では、リンカーは、1つまたは2つのγEアミノ酸残基と1つまたは2つのAEEAまたはAhxとの組み合わせであり得る。特定の例では、リンカーは、(AEEA)・γE部分、Ahx・E・γE部分、またはAEEA・γE部分であり得る。
【0066】
例示的なリンカー脂肪酸部分としては(AEEA)・γE・C20二酸、Ahx・E・γE・C18二酸、またはAEEA・γE・C18二酸が挙げられる。天然ヒトPYY1-36(配列番号1)または天然ヒトPYY3-36(配列番号2)と比較した場合、これらのリンカー脂肪酸部分の構造的特徴は、改善された半減期を有する類縁体を生じる。
【0067】
まとめると、例示的なPYY類縁体は次の通りである:
【化3】

【化4】

【0068】
PYY類縁体は、天然のヒトPYY3-36(配列番号2)のものと同様の34個のアミノ酸を有すると記載されているが、本明細書のPYY類縁体は、天然のヒトPYY1-36(配列番号1)に基づくアミノ酸配列を有し得ることが企図される。すなわち、PYY類縁体は、天然のヒトPYY1-36(配列番号1)の2つのN末端アミノ酸(すなわち、配列番号1の1位および2位の「YP」残基)を含むことができ、これは、その後、天然のヒトPYY1-36(配列番号1)が内因的に放出されるときに起こるように、個体に投与されるとin vivoで切断され得る。
【0069】
本明細書のPYY類縁体の半減期は、例えば、以下の実施例に記載されるものを含む、当該技術分野で知られている手法を使用して測定することができる。同様に、さまざまなヒトNPY受容体(例えば、NPY2R、NPY5R)のそれぞれに対する本明細書のPYY類縁体の親和性は、例えば、以下の実施例に記載されるものを含む、受容体結合レベルを測定するための当該技術分野で知られる手法を使用して測定され得て、一般的には阻害定数(K)値として表される。さらに、受容体の各々での本明細書に記載されるPYY類縁体の活性はまた、例えば、以下に記載されるin vitro活性アッセイを含む、当該技術分野で知られる手法を使用して測定され得て、一般的にはEC50値として表される。
【0070】
上記の修飾の結果として、本明細書のPYY類縁体は、天然のヒトPYY3-36(配列番号2)の半減期よりも長い半減期を有する。例えば、PYY類縁体は、約5時間~約24時間、約6時間~約23時間、約7時間~約22時間、約8時間~約21時間、約9時間~約20時間、約10時間~約19時間、約11時間~約18時間、約12時間~約17時間、約13時間~約16時間、またはさらには約14時間~約15時間の半減期を有することができる。あるいは、本明細書のPPY類縁体は、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、さらには約24時間、特に約12時間である半減期を有し得る。
【0071】
同様に、本明細書のPYY類縁体は、NPY2受容体において、天然のヒトPYY3-36(配列番号2)の結合親和性よりも大きい、例えば、約2倍~約10倍の結合親和性を有する。あるいは、本明細書のPYY類縁体は、天然ヒトPYY3-36(配列番号2)よりも最大約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍約、またはさらには10倍大きい、特に2倍~3倍大きい結合親和性を有することができる。
【0072】
医薬組成物
【0073】
本明細書に記載されるPYY類縁体を、非経口経路(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、または経皮)によって投与することができる医薬組成物として配合することができる。そのような医薬組成物およびそれを調製するための手法は、当該技術分野においてよく知られている。例えば、Remington,「The Science and Practice of Pharmacy」(D.B.Troy ed.,21st Edition Lippincott,Williams&Wilkins,2006)を参照されたい。特定の例では、PYY類縁体はSQで投与される。しかしながら、代替的には、PYY類縁体は、例えば、錠剤または経口投与のための他の固体;徐放性カプセル;およびクリーム、ローション、吸入剤などを含む現在使用されている任意のその他の形態などの他の薬学的に許容される経路のための形態で製剤化され得る。
【0074】
それらのin vivo適合性および有効性を改善するため、本明細書のPYY類縁体は、いくつかの無機および有機酸/塩基のいずれかと反応して、薬学的に許容される酸/塩基付加塩を形成し得る。薬学的に許容される塩およびそれらを調製するための一般的な方法論は、当該技術分野でよく知られている(例えば、Stahl et al.,「Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection and Use,」2nd Revised Edition(Wiley-VCH,2011)を参照)。本明細書での使用のための薬学的に許容される塩としては、ナトリウム塩、トリフルオロ酢酸塩、塩酸塩、および/または酢酸塩が挙げられる。
【0075】
本明細書のPYY類縁体は、医師によって投与されるか、または注射を使用して自己投与され得る。ゲージサイズおよび注入量は、当業者によって容易に決定され得ることが理解される。ただし、注入量は約2mL以下、さらには約1mL以下であり、ニードルゲージは約27G以上または約29G以上であり得る。
【0076】
本開示はまた、本明細書に記載されるPYY類縁体、またはその薬学的に許容される塩を合成する新規な中間体および方法を提供し、したがってこれらを包含する。本明細書の中間体およびPYY類縁体は、当該技術分野でよく知られているさまざまな方法論によって調製することができる。例えば、化学合成を使用する方法は、以下の実施例に例示される。本明細書に記載されるPYY類縁体を調製するために、記載される経路の各々についての具体的な合成工程を種々の方法で組み合わせることができる。試薬および出発材料は、当業者にとって容易に入手可能である。
【0077】
本明細書に記載される特定のPYY類縁体は、一般に、広い投与量範囲にわたって有効である。本明細書のPYY類縁体またはそれを含む医薬組成物の例示的な用量は、個体1キログラム(kg)あたりのミリグラム(mg)、マイクログラム(μg)、ナノグラム(ng)またはピクログラム(pg:picrogram)の量であり得る。このようにして、1日用量は約1μg~約100mgとなり得る。
【0078】
ここで、医薬組成物中のPYY類縁体の有効量は、約0.25mg~約5.0mgの用量であり得る。ただし、当業者は、場合によっては、有効量(すなわち、用量/投薬量)が前述の範囲の下限を下回ってかつ十分すぎる可能性があるのに対し、他の場合には、有効量は、より多くの用量となり得てかつ許容できる副作用を伴って使用され得ることを理解している。
【0079】
PYY類縁体に加えて、医薬組成物はまた、追加の治療薬、特に他の抗糖尿病薬または減量剤を含むことができる。場合によっては、追加の治療薬は、インクレチンまたはDPP-IV阻害剤のうちの少なくとも1つであり得る。例示的なインクレチンとしては、GCG、GLP-1、GLP-1(7-36)アミド、GIP、OXM、GCG類縁体、GLP-1類縁体、GIP類縁体、OXM類縁体、GIP/GLP-1、GLP-1/GCG、または三重受容体活性を有するインクレチン類縁体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
このように、医薬組成物は、有効量の配列番号9のPYY類縁体およびインクレチンもしくはDPP-IV阻害剤、有効量の配列番号10のPYY類縁体およびインクレチンもしくはDPP-IV阻害剤、有効量の配列番号11のPYY類縁体およびインクレチンもしくはDPP-IV阻害剤、有効量の配列番号12のPYY類縁体およびインクレチンもしくはDPP-IV阻害剤、または有効量の配列番号13のPYY類縁体およびインクレチンもしくはDPP-IV阻害剤を含むことができる。
【0081】
インクレチンがGLP-1またはGLP-1類縁体である場合、それは、アルビグルチド、デュラグルチド、リラグルチド、セマグルチド、またはそれらの組み合わせなどのGLP-1またはGLP-1類縁体、特にデュラグルチドであり得る。
【0082】
PYY類縁体の作製および使用方法
【0083】
本明細書のPYY類縁体は、標準的な手動または自動化された固相合成手順を使用して、当該技術分野で知られている任意の数のペプチド合成方法を介して合成することができる。自動ペプチド合成装置は、例えば、Applied Biosystems(カリフォルニア州フォスターシティー)およびProtein Technologies Inc.(アリゾナ州ツーソン)から市販されている。固相合成用の試薬は、商業的供給源から容易に入手できる。固相合成装置を、干渉基のブロック、反応中のアミノ酸の保護、カップリング、脱保護、および未反応のアミノ酸のキャッピングに関する製造業者の指示に従って使用することができる。
【0084】
通常、N-α-カルバモイルで保護されたアミノ酸と、樹脂に結合した成長中のペプチド鎖のN末端アミノ酸は、DMF、N-メチルピロリドン、塩化メチレンなどの不活性溶媒中において、ジイソプロピル1-カルボジイミドや1-ヒドロキシベンゾトリアゾールなどのカップリング剤の合成存在下で、室温でカップリングされる。得られたペプチド樹脂からTFAまたはピペリジンなどの試薬を用いてN-α-カルバモイル保護基を除去し、ペプチド鎖に付加するために次に必要なN-α保護アミノ酸を用いてカップリング反応を繰り返す。適切なアミン保護基は当該技術分野でよく知られており、例えば、Green&Wuts,「Protecting Groups in Organic Synthesis,」(John Wiley and Sons,1991)に記載されている。最も一般的に使用される例としては、tBocおよびFmocが挙げられる。合成の完了後、ペプチドは、酸性条件下で標準的な処理方法を使用して、同時の側鎖の脱保護により固相支持体から切断される。
【0085】
当業者は、本明細書に記載のペプチド鎖がC末端カルボキサミドで合成されることを理解するであろう。C末端アミドペプチドの合成では、典型的には、RinkアミドMBHAまたはRinkアミドAMリンカーが組み込まれた樹脂がFmoc合成で使用されるが、MBHA樹脂は一般にtBoc合成で使用される。
【0086】
通常、C8またはC18カラムでRP-HPLCを使用し、0.05%~0.1%TFAの水-アセトニトリル勾配を使用して粗ペプチドを精製する。純度は分析用RP-HPLCで確認できる。ペプチドの同一性はMSによって確認できる。ペプチドは、広いpH範囲で水性緩衝液に可溶化できる。
【0087】
本明細書におけるPYY類縁体の1つの使用は、個体、特に太りすぎまたは肥満でT2DMを罹患している個体の血糖および/または体重を減少させるためのものである。本明細書に記載されるようにPYY類縁体を投与することは、インスリン感作および体重減少を改善することによって血糖コントロールをもたらすことができる。このように、本明細書のPYY類縁体は、個体がインスリンへの進行することを遅らせ、標的HbA1c目標を維持することができるように、体重減少のさらなる利点とともにグルコース低下効果を示す。
【0088】
これらの方法は、本明細書に記載の工程を含むことができ、これらは、必ずしもではないが、記載された順序で実行され得る。しかしながら、他の順序も考えられる。さらに、個々のまたは複数の工程は、時間的に並行しておよび/または重複して、および/または個別に、または複数回繰り返される工程で実施され得る。さらに、これらの方法は、追加の不特定の工程を含み得る。
【0089】
したがって、そのような方法には、太りすぎでT2DMを罹患している、またはその素因がある個体を選択することが含まれ得る。あるいは、該方法は、肥満であり、T2DMを有するか、または同じ素因を有する個体を選択することを含み得る。
【0090】
該方法はまた、本明細書に記載されるような医薬組成物の形態であり得る、本明細書に記載されるような有効量の少なくとも1つのPYY類縁体を個体に投与することを含み得る。場合によっては、少なくとも1つのPYY類縁体/医薬組成物は、インクレチンまたはDPP-IV阻害剤などの追加の治療薬を含むことができる。
【0091】
少なくとも1つのPYY類縁体および任意のインクレチンまたはDPP-IV阻害剤の濃度/用量/投薬量は、本明細書の他の場所で論じられている。
【0092】
投与経路に関して、少なくとも1つのPYY類縁体またはそれを含む医薬組成物は、例えば、経口;注射(すなわち、動脈内、静脈内、腹腔内、脳内、脳室内、筋肉内、眼内、門脈内または病変内);徐放システム、または埋め込みデバイスなどによる既知の方法に従って投与することができる。特定の例において、少なくとも1つのPYY類縁体またはそれを含む医薬組成物は、ボーラス注射によってまたは連続的にSQ投与することができる。
【0093】
投薬頻度に関して、少なくとも1つのPYY類縁体またはそれを含む医薬組成物は、毎日、隔日、週に3回、週に2回、週に1回(すなわち、毎週)、隔週(すなわち、1週間おきに)、または毎月投与することができる。特定の例において、少なくとも1つのPYY類縁体またはそれを含む医薬組成物は、SQで1日おきに、SQで週に3回、SQで週に2回、SQで週に1回、SQで1週間おきに、またはSQで毎月投与される。特定の例において、少なくとも1つのPYY類縁体またはそれを含む医薬組成物は、週に1回SQ投与(QW)される。
【0094】
あるいは、少なくとも1つのPYY類縁体またはそれを含む医薬組成物を経口投与することができる。上記のように、また投薬頻度に関して、少なくとも1つのPYY類縁体またはそれを含む医薬組成物は、毎日、隔日、週に3回、週に2回、週に1回(すなわち、毎週)、隔週(すなわち、1週間おきに)、または毎月投与することができる。特定の例では、少なくとも1つのPYY類縁体またはそれを含む医薬組成物は、経口で1日おきに、経口で週に3回、経口で週に2回、経口で週に1回、または経口で1週間おきに投与される。特定の例では、PYY類縁体は週に1回経口投与される。
【0095】
少なくとも1つのPYY類縁体またはそれを含む医薬組成物が有効量のインクレチンと組み合わせて投与される場合に関して、インクレチンは、GCGもしくはGCG類縁体、GLP-1、GLP-1(7)-36)アミドもしくはGLP-1類縁体、GIPもしくはGIP類縁体、OXMもしくはOXM類縁体、GIP/GLP-1、GLP-1/GCG、またはさらには三重受容体活性を有するインクレチンであり得る。GCG、GCG類縁体、GLP-1、GLP-1(7-36)アミド、GLP-1類縁体、GIP、GIP類縁体、OXM、OXM類縁体、GIP/GLP-1、GLP-1/GCG、またはインクレチン三重受容体活性は、少なくとも1つのPYY類縁体またはそれを含む医薬組成物とともに、同時に、別々に、または順次に投与することができる。
【0096】
さらに、GCG、GCG類縁体、GLP-1、GLP-1(7-36)アミド、GLP-1類縁体、GIP、GIP類縁体、OXM、OXM類縁体、GIP/GLP-1、GLP-1/GCG、または三重受容体活性を有するインクレチンは、少なくとも1つのPYY類縁体またはそれを含む医薬組成物と同じ頻度で(すなわち、隔日、週に2回、またはさらには毎週)投与することができる。あるいは、GCG、GCG類縁体、GLP-1、GLP-1(7-36)アミド、GLP-1類縁体、GIP、GIP類縁体、OXM、OXM類縁体、GIP/GLP-1、GLP-1/GCG、または三重受容体活性を有するインクレチンは、少なくとも1つのPYY類縁体またはそれを含む医薬組成物とは異なる頻度で投与することができる。他の例では、GCG、GCG類縁体、GLP-1、GLP-1(7-36)アミド、GLP-1類縁体、GIP、GIP類縁体、OXM、OXM類縁体、GIP/GLP-1、GLP-1/GCG、または三重受容体活性を有するインクレチンはQWで投与される。さらに他の例では、PYY類縁体はSQで投与され、GCG、GCG類縁体、GLP-1、GLP-1(7-36)アミド、GLP-1類縁体、GIP、GIP類縁体、OXM、OXM類縁体、GIP/GLP-1、GLP-1/GCG、または三重受容体活性を有するインクレチンは、経口投与され得る。
【0097】
この方法は、食事療法および運動と組み合わせることができ、および/または上記で論じたもの以外の追加の治療薬と組み合わせることができることがさらに企図される。
【実施例
【0098】
以下の非限定的な実施例は、限定ではなく例示の目的で提供される。
【0099】
実施例1:PYY類縁体1.
【0100】
本発明の概念を組み込んだ1つのPYY類縁体は、以下の構造を有し得る
【化5】

【0101】
ここで、N末端はフリーであり、C末端アミノ酸は、C末端第一級アミドとしてアミド化される。7位のKは、(Ahx-E-(γE)-CO-(CH16-COOHによる7位のK側鎖のε-アミノ基への接合により化学的に修飾されている。
【0102】
配列番号9によるPYY類縁体は、RAPP AM-Rink Amide樹脂(H40023ポリスチレンAM RAM、Rapp polymere GmbH)から開始するSymphonyX自動ペプチド合成装置(PTI Protein Technologies Inc.)でのFmoc/t-Bu戦略を使用した固相ペプチド合成によって生成される。アミノ酸カップリングは、10当量のアミノ酸、0.9Mジイソプロピルカルボジイミド(DIC)および0.9M オキシマ(1:1:1モル比)をDMF中で使用し、25℃で3時間行う。DMF中の25%ピペリジン溶液を使用して脱保護を行う。
【0103】
上記のようにペプチド樹脂を伸長した後、7位のKに存在するMTT保護基を、ジクロロメタン(DCM)中の30%ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を使用して除去する。Fmoc/t-Bu戦略を使用して7位の側鎖でKを延長する追加のカップリング/脱保護サイクルには、Fmoc-6-アミノヘキサン酸(Chem-Impex International カタログ番号02490)、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Glu(OH)-OtBu(ChemPep カタログ#100703)およびHOOC-(CH16-COOtBuが含まれる。すべてのカップリングで、3当量のビルディングブロックを、DMF中のPyBOP(3当量)およびDIEA(6当量)とともに25℃で3時間使用する。
【0104】
樹脂からの切断および側鎖保護基の除去を同時に、TFA:トリイソプロピルシラン:1,2-エタンジチオール:メタノール:チオアニソール80:5:5:5:5(v/v)を含む溶液中で25℃で2時間行い、続いて冷エーテルで沈殿させる。粗ペプチドを、フェニルヘキシルカラム(Phenomenex、Luna;5μm、100A)でのRP-HPLCによって99%超の純度(15~20%の精製収率)に精製し、適切な画分をプールして凍結乾燥する。
【0105】
PYY類縁体の純度を分析RP-HPLCで調べ、LC/MSを使用して同一性を確認する(観測:M+3H/3=1659.2(+/-0.2);計算:M+3H/3=1659.2;観測:M+4H/4=1244.6(+/-0.2);計算:M+4H/4=1244.6;観測:M+5H/5=995.9(+/-0.2);計算:M+5H/5=995.9)。
【0106】
実施例2:PYY類縁体2.
【0107】
本発明の概念を組み込んだ1つのPPY類縁体は、以下の構造を有し得る
【化6】

【0108】
実施例1のように、N末端はフリーであり、C末端アミノ酸は、C末端第一級アミドとしてアミド化される。しかしながら、対照的に、7位のKは、([2-(2-アミノ-エトキシ)-エトキシ]-アセチル)-(γE)-CO-(CH18-COOHによるK側鎖のε-アミノ基への接合によって化学的に修飾されている。
【0109】
配列番号10によるPYY類縁体は、上記の実施例1に記載されたものと同様の固相ペプチドによって生成される。したがって、FMOC-NHPEG-CHCOOHおよびHOOC-(CH18-COOtBuは、DMF中のPyBOP(3当量)およびDIEA(6当量)を含む3当量のビルディングブロックを使用した25℃で3時間のMTT切断後に側鎖に結合する。
【0110】
PYY類縁体の純度を分析RP-HPLCで調べ、LC/MSを使用して同一性を確認する(観測:M+3H/3=1665.4(+/-0.2);計算:M+3H/3=1665.5;観測:M+4H/4=1249.3(+/-0.2);計算:M+4H/4=1249.4;観測:M+5H/5=999.7(+/-0.2);計算:M+5H/5=999.7)。
【0111】
実施例3:PYY類縁体3.
【0112】
本発明の概念を組み込んだ1つのPYY類縁体は、以下の構造を有し得る
【化7】

【0113】
実施例1のように、N末端はフリーであり、C末端アミノ酸は、C末端第一級アミドとしてアミド化される。しかしながら、対照的に、7位のKは、([2-(2-アミノ-エトキシ)-エトキシ]-アセチル)-(γE)-CO-(CH16-COOHによるK側鎖のε-アミノ基への接合によって化学的に修飾されている。
【0114】
配列番号11によるPYY類縁体は、上記の実施例1に記載されたものと同様の固相ペプチドによって生成される。したがって、FMOC-NHPEG-CHCOOHおよびHOOC-(CH16-COOtBuは、DMF中のPyBOP(3当量)およびDIEA(6当量)を含む3当量のビルディングブロックを使用した25℃で3時間のMTT切断後に側鎖に結合する。
【0115】
PYY類縁体の純度を分析RP-HPLCで調べ、LC/MSを使用して同一性を確認する(観測:M+3H/3=1664.7(+/-0.2);計算:M+3H/3=1664.9;観測:M+4H/4=1248.9(+/-0.2);計算:M+4H/4=1248.9;観測:M+5H/5=999.3(+/-0.2);計算:M+5H/5=999.3)。
【0116】
実施例4:PYY類縁体4.
【0117】
本発明の概念を組み込んだ1つのPYY類縁体は、以下の構造を有し得る
【化8】

【0118】
実施例1のように、N末端はフリーであり、C末端アミノ酸は、C末端第一級アミドとしてアミド化される。しかしながら、対照的に、7位のKは、([2-(2-アミノ-エトキシ)-エトキシ]-アセチル)-(γE)-CO-(CH16-COOHによるK側鎖のε-アミノ基への接合によって化学的に修飾されている。
【0119】
配列番号12によるPYY類縁体は、上記の実施例1に記載されたものと同様の固相ペプチドによって生成される。したがって、FMOC-NHPEG-CHCOOHおよびHOOC-(CH16-COOtBuは、DMF中のPyBOP(3当量)およびDIEA(6当量)を含む3当量のビルディングブロックを使用した25℃で3時間のMTT切断後に側鎖に結合する。
【0120】
PYY類縁体の純度を分析RP-HPLCで調べ、LC/MSを使用して同一性を確認する(観測:M+3H/3=1664.8(+/-0.2);計算:M+3H/3=1665.5;観測:M+4H/4=1248.9(+/-0.2);計算:M+4H/4=1249.4;観測:M+5H/5=998.9(+/-0.2);計算:M+5H/5=995.7)。
【0121】
実施例5:PYY類縁体5.
【0122】
本発明の概念を組み込んだ1つのPYY類縁体は、以下の構造を有し得る
【化9】

【0123】
実施例1のように、N末端はフリーであり、C末端アミノ酸は、C末端第一級アミドとしてアミド化される。しかしながら、対照的に、7位のKは、([2-(2-アミノ-エトキシ)-エトキシ]-アセチル)-(γE)-CO-(CH18-COOHによるK側鎖のε-アミノ基への接合によって化学的に修飾されている。
【0124】
配列番号13によるPYY類縁体は、上記の実施例1に記載されたものと同様の固相ペプチドによって生成される。したがって、FMOC-NHPEG-CHCOOHおよびHOOC-(CH18-COOtBuは、DMF中のPyBOP(3当量)およびDIEA(6当量)を含む3当量のビルディングブロックを使用した25℃で3時間のMTT切断後に側鎖に結合する。
【0125】
PYY類縁体の純度を分析RP-HPLCで調べ、LC/MSを使用して同一性を確認する(観測:M+3H/3=1732.2(+/-0.2);計算:M+3H/3=1732.3;観測:M+4H/4=1299.4(+/-0.2);計算:M+4H/4=1299.5;観測:M+5H/5=1039.7(+/-0.2);計算:M+5H/5=1039.8)。
【0126】
実施例6:PYY類縁体のin vitroでの活性。
【0127】
(1)hNPY1、hNPY2、hNPY4、およびhNPY5受容体への in vitroでの結合
【0128】
目的:
【0129】
次のヒト(h)受容体:hNPY1R、hNPY2R、hNPY4RおよびhNPY5Rに対するウシ血清アルブミン(BSA)の非存在下での実施例1~5のPYY類縁体のin vitro結合親和性(K)を評価する。膜との競合的放射性リガンド結合アッセイを、各組換え受容体を過剰発現する細胞株から調整し、関連する[125I]標識ペプチドを各シンチレーション近接アッセイ(SPA)法で使用する。関連する天然ペプチド、PYY1-36(配列番号1)、PYY3-36(配列番号2)および膵臓ポリペプチド1-36(PP1-36;配列番号14)に対する結合親和性を、対照として各アッセイで決定する。
【0130】
方法:
【0131】
PYY類縁体、天然、ヒトPYY1-36および対照PYY3-36を、Lilly Research Laboratories(米国インディアナ州インディアナポリス)で合成し、LC/MS、NMR、およびLC/UV分析(純度99.5%)によって特性評価する。ペプチド含有量は80%粉末質量と推定される。ペプチドを、100%DMSO中の10mM原液として調製し、アッセイで試験する直前まで-20℃で凍結保存する。
【0132】
hNPY1Rの場合、CHO細胞を使用して一過性の過剰発現を行う。受容体cDNAをpcDNA3.1発現プラスミドにサブクローニングし、ヒト胎児腎臓(HEK)293細胞にトランスフェクトした後、ジェネティシン(Geneticin)で選択することにより、hNPY2RおよびhNPY4R用に安定的にトランスフェクトされた細胞株を調製する。hNPY5Rクローニングは、Multispan,Inc.(カリフォルニア州ヘイワード)で実施される。
【0133】
hNPY1R、hNPY2R、mNPY2RおよびhNPY4Rの粗細胞膜の調製のため、2つの異なる方法(以下に記載される)を利用する。hNPY5R膜をMultipan,Inc.(#MCG1275)から購入する。
【0134】
方法1-hNPY2RおよびhNPY4R膜の場合、凍結細胞ペレットを、湿潤させた細胞ペースト1グラムあたり50mM Tris HCl、pH7.5、およびEDTAを含むRoche Complete(商標)プロテアーゼ阻害剤(#1169749001)を含む低張ホモジナイゼーション緩衝液10mL中において氷上で溶解する。Teflon(登録商標)乳棒を備えた、ガラス製Potter-Elvehjemホモジナイザーを使用して、25ストロークで細胞懸濁液を破壊する。ホモジネートを4℃、1100×gで10分間遠心分離する。上清を回収し、氷上で保存する一方で、ペレットを均質化緩衝液に再懸濁し、上述のように再ホモジナイズする。ホモジネートを1100×gで10分間、遠心分離する。第2の上清を第1の上清と合わせ、35000×g、4℃で1時間遠心分離する。得られた膜ペレットを、プロテアーゼ阻害剤を約1~3mg/mLで含有する均質化緩衝液に再懸濁し、液体窒素中で急速凍結し、使用するまでアリコートとして-80℃の冷凍庫内で保存する。タンパク質濃度を、BSAを標準としてBCAタンパク質アッセイキット(Pierce、#23225)を使用して決定する。
【0135】
方法2-hNPY1R膜の場合、凍結細胞ペレットを、湿った細胞ペースト1グラムあたり、25mM Tris HCl、pH7.5、1mM MgCl、25単位/mL DNase I(Invitrogen、#18047-019)およびEDTAを含まないRoche Complete(商標)プロテアーゼ阻害剤#11836170001)を含む5mLの低張均質化緩衝液中において氷上で溶解する。Teflon(登録商標)乳棒を備えた、ガラス製Potter-Elvehjemホモジナイザーを使用して、25ストロークで細胞懸濁液を破壊する。ホモジネートを、50mLのコニカルチューブ内で4℃、1800×gで15分間遠心分離する。上清を回収し、氷上で保存する一方で、ペレットを均質化緩衝液に再懸濁し、上述のように再ホモジナイズするが、DNase Iは均質化緩衝液には使用されていない。ホモジネートを1800×gで15分間、遠心分離する。第2の上清を第1の上清と合わせ、25000×g、4℃で30分間遠心分離する。得られた膜ペレットを、プロテアーゼ阻害剤を約2mg/mLで含む均質化緩衝液に再懸濁し、等分して、使用するまで-80℃の冷凍庫に保存する。タンパク質濃度を、BSAを標準としてBCAタンパク質アッセイキット(Pierce、#23225)を使用して決定する。
【0136】
一般的な結合アッセイ法-さまざまな受容体/放射性リガンド相互作用の平衡解離定数(K)を、化合物試験について以下に説明するのと同じ試薬と緩衝液を使用する飽和結合分析から決定する。この研究で使用された受容体調製物について決定したK値は以下の通りである:hNPY2R、0.0047nM;hNPY1R、0.07nM;hNPY4R、0.084nM;およびhNPY5R、0.896nM。
【0137】
hNPY1R受容体結合プロトコル-hNPY1Rに対するPYY類縁体ペプチドおよびPYY1-36の受容体結合親和性(K)を、Perkin Elmer(マサチューセッツ州ウォルサム)から入手したヒト組換え[125]-PYY1-36(#NEX341 2200 Ci/mmol)との競合放射性リガンド結合アッセイから決定する。アッセイを、ポリビニルトルエン(PVT)小麦胚芽凝集素結合SPAビーズ(#RPNQ0001、Perkin Elmer)を使用するSPA法で実施する。アッセイ緩衝液(25mM HEPES、pH7.5、1mM MgCl、2.5mM CaCl、および0.2%w/vバシトラシン(RPI#32000))を試薬の調製に使用する。PYY類縁体およびPYY1-36を解凍し、Tecan Evo液体ハンドラーを使用して、100%DMSO中で3倍ずつ段階希釈する(10ポイント濃度応答曲線)。アッセイ緩衝液中へのペプチドの20倍段階希釈を行って、アッセイプレートに添加する前にDMSOのレベルおよびペプチド濃度を低下させる。次に、5μLの段階希釈ペプチドまたはDMSOを、45μLのアッセイ緩衝液または非標識PYY1-36対照(非特異的結合またはNSB、最終濃度10nM)を含むCorning(登録商標)3632透明底アッセイプレートに移す。次に、50μLの[125I]-PYY1-36(最終濃度0.05nM)および50μLのhNPY1R膜(1.0μg/ウェル)を添加する。最後に添加するのは50μLのWGA SPAビーズ(50μg/ウェル)である。DMSOの最終濃度は0.125%である。プレートを密封し、プレートシェーカー上で1分間混合し(設定6)、室温で10時間インキュベート/静置した後、PerkinElmer Trilux MicroBeta(登録商標)シンチレーションカウンターでプレートを読み取る。応答曲線で試験したペプチドの最終アッセイ濃度範囲は、PYY類縁体(2.5μM~0.13nM)およびPYY1-36(10nM~0.5pM)である。
【0138】
hNPY2受容体結合プロトコル-hNPY2Rに対するPYY類縁体ペプチドおよびPP1-36の受容体結合親和性(K)を、hNPY1Rについて上記したように、競合放射性リガンド結合アッセイから決定する。応答曲線における試験したペプチドの最終アッセイ濃度範囲は、PYY類縁体(0.1μM~5pM)およびPYY3-36(10nM~0.5pM)である。
【0139】
hNPY4R受容体結合プロトコル-hNPY1Rについて上述したように、hNPY4Rに対するPYY類縁体ペプチドおよびPP1-36の受容体結合親和性(K)を競合放射性リガンド結合アッセイから決定する。応答曲線における試験したペプチドの最終アッセイ濃度範囲は、PYY類縁体(2.5μM~0.13nM)およびPYY1-36(10nM~0.5pM)である。
【0140】
hNPY5R受容体結合プロトコル-hNPY1Rについて上述したように、hNPY5Rに対するPYY類縁体ペプチドおよびPYY1-36の受容体結合親和性(K)を競合放射性リガンド結合アッセイから決定する。応答曲線における試験したペプチドの最終的なアッセイ濃度範囲は、PYY類縁体(1μM~10pM)およびPYY1-36(1μM~10pM)である。
【0141】
NPY受容体結合アッセイのデータ分析-PYY類縁体、PYY1-36、PYY3-36、またはPP1-36の濃度曲線のカウント毎分(CPM)の生データを、以下の等式に示すように、個々のCPM値から非特異的結合(NSB、それぞれ、過剰な非標識PYY1-36、PYY3-36、またはPP1-36の存在下での結合)を差し引いて、総結合シグナル(これも非特異的結合を差し引くことで補正される)で除算することによりパーセント特異的阻害に変換する。
【数1】
【0142】
4パラメータ(曲線最大値、曲線最小値、IC50、ヒル勾配)非線形回帰ルーチン(Genedata Screener、バージョン13.0.5、Genedata AG、スイス国バーゼル)を用いてデータを解析する。親和性定数(K)を、等式K=IC50/(1+D/K)に基づき相対IC50値から計算し、式中、D=実験における放射性リガンドの濃度、IC50は結合の50%阻害を引き起こす濃度であり、Kは飽和結合分析(上に収載される)から決定される放射性リガンドの平衡結合解離定数である。修飾子(>)は、競合物質が存在しない場合の最大結合と比較して、データが50%阻害に達しなかったことを示し、これにより、Kをアッセイで試験した化合物の最高濃度を使用して計算する。
【0143】
の報告値を、以下に示すように幾何平均として計算する。
【数2】

【0144】
平均の標準誤差(SEM)を、以下に示すようにデルタ法を使用して計算する;
【数3】

ここで、SDは標準偏差、nは独立した実施の数、ln(10)は10の自然対数である。
【0145】
hNPY2R(Y2)対hNPY5R(Y5)、hNPY4R(Y4)、および/またはhNPY1R(Y1)に対するペプチドの選択性を、nM単位のhNPY2Rの結果で割ることによって計算する。
【0146】
結果:
【0147】
【表1】

【0148】
上に示したように、実施例1~5のPYY類縁体は、hNPY2受容体に対して非常に選択的であり、さらに、天然のヒトPYY3-36(配列番号2)と比較して、hNPY5、hNPY4およびhNPY1受容体への結合親和性の低下を示す。
【0149】
(2)ヒトNPY2受容体に対する in vitroでのcAMP活性
【0150】
目的:
【0151】
組換えヒトNPY2受容体を過剰発現するHEK 293細胞におけるフォルスコリン誘導性細胞内cAMP産生の阻害を測定することによって、天然のヒトPYY3-36と比較して実施例1~5のPYY類縁体のin vitroでの機能活性を決定する。
【0152】
方法:
【0153】
PYY類縁体およびヒトPYY3-36(配列番号2)は、受容体結合アッセイにおいて上記のように合成され、特性評価され、そして保存される。
【0154】
受容体のクローニング-安定的にトランスフェクトされた細胞株を、hNPY2受容体cDNAをpcDNA3.1発現プラスミドにサブクローニングし、HEK 293細胞にトランスフェクトした後、ジェネティシンで選択することにより調製する。9継代での細胞(1×10細胞/mL)のアリコートを作製し、液体窒素タンクの気相中で凍結保存する。これらの凍結アリコートを、アッセイ時に使用する。細胞は数ヶ月間にわたって95%以上の生存率を維持する。
【0155】
hNPY2R cAMPアッセイ-PYY類縁体またはPYY3-36によるフォルスコリン誘導性のcAMP産生の阻害は、組換えhNPY2Rを過剰発現するHEK 293細胞を使用して測定される。細胞の凍結アリコートを37℃の水浴で解凍する。細胞を10mLの培地(Life Tech 10082-147の10%FBSを含むLife Tech 11090-081のMEM細胞培養培地、Life Tech 25030-081の1mM L-グルタミン、Life Tech 11140-050の1×NEAA、Life Tech 11360-070の1mMピルビン酸ナトリウム、Life Tech 15240-062の1×抗生物質-抗真菌剤)を含む50mLチューブに移し、Beckman卓上遠心分離機で1500rpmで5分間遠心分離する。上清を除去し、細胞ペレットを10mLの細胞培養液に再懸濁した後、40μmのストレーナーに通する。細胞数および細胞生存率の正確な数を、Beckman-Coulter製のVi-Cell Analyzer(Vi-Cell XR 2.03)を使用して決定する。Combi-Tip Dispenser(Thermo Scientific)を使用して、1ウェルあたり8000個の細胞を白色の384ウェルアッセイプレート(Corning、ポリ-D-リジンコーティング、白色/不透明、カタログ番号356661)にプレーティングする。プレートを1000rpmで1秒間遠心分離し、5%CO管理したインキュベーター内で37℃で18~20時間インキュベートする。ペーパータオル上で軽くはじくことにより、アッセイプレートから培地を除去する。10μLのアッセイバッファー[1X HBSS(Hyclone、#SH3026801)、20mM HEPES、pH7.5(Hyclone#SH30237.01)、0.1%w/vカゼイン(CTL Scientific Supply Corp.、#440203H)、500μM IBMX(Sigma-Aldrich #I5876)]をウェルに添加した後、Combi-Tip Dispenserを使用して、1500rpmで10秒間遠心分離する。2倍希釈での濃度応答曲線(20ポイント)を、アコースティックディスペンシングテクノロジー(acoustic dispensing technology)(Labcyte Echo 550)を使用して100%DMSOで作成する。細胞を37℃(最終DMSO濃度=1%)で45分間、PYY類縁体またはヒトPYY3-36で処理し、次いで37℃で45分間、1μMフォルスコリン(Sigma-Aldrich、#F6886)で刺激する。CisBio cAMP-G Dynamicキット(#62AM9PEB)を使用して、細胞内cAMPを定量する。簡潔には、細胞溶解バッファー(10μL)中のcAMP-d2コンジュゲートを添加し、続いて同様に細胞溶解バッファー(10μL)中の抗体、抗cAMP-Eu3+-クリプテートを添加することによって、HTRFキット試薬を使用して、細胞内のcAMPレベルを検出する。結果として得られる競合アッセイを、室温で少なくとも60分間インキュベートし、その後、PerkinElmer Envision(商標)機器(320nmでの励起ならびに665nmおよび620nmで発光)を使用して検出する。応答曲線で試験したペプチドの最終アッセイ濃度範囲は、PYY類縁体(0.1μM~0.2pM)およびヒトPYY3-36(10nM~0.02pM)である。既知のcAMP濃度(0.5μM~1pM)の標準曲線をアッセイバッファーで作成する。競合物質が添加されていないウェル、またはヒトPYY3-36が添加されているウェルが、それぞれ最大応答および阻害剤対照として各プレートに含まれている。
【0156】
hNPY2受容体cAMPアッセイに関するデータ解析-時間分解蛍光発光を使用して、存在するcAMPの量に反比例する蛍光比(665nM/620nm)を計算する。PYY類縁体およびヒトPYY3-36のシグナルを、相対応答単位(665nm/620nm*10,000での発光、y軸)対cAMPの濃度(x軸)としてプロットされたcAMP標準曲線を使用してウェルあたりのnM cAMPに変換する。
【0157】
各ウェルで生成されたcAMPの量(nM)を、以下の等式に示されるように、フォルスコリンのみで観察された最大応答のパーセントに変換する。
【数4】


ここで、阻害剤対照は、添加された過剰なヒトPYY3-36の存在下で生成されたcAMPであり、最大応答は、フォルコリンのみの存在下で生成されたcAMPであり、ペプチドは、試験ペプチドの存在下で生成されたcAMPである。
【0158】
特異的阻害率(y軸)を競合物質の濃度(x軸)に対してプロットし、以下に定義されるように、4パラメータ(曲線上部、曲線下部、IC50、ヒル勾配)非線形回帰ルーチン(Genedata Screener、バージョン13.0.5、Genedata AG、スイス国バーゼル)を使用して分析する:
【数5】

【0159】
相対IC50値は、フォルスコリンによって誘発されるcAMP産生を50%阻害する濃度を表す。
【0160】
IC50の報告値を、以下に示すように幾何平均として計算する。
【数6】

【0161】
平均の標準誤差(SEM)を、以下に示すようにデルタ法を使用して計算する;
【数7】


ここで、SDは標準偏差、nは独立した実施の数、ln(10)は10の自然対数である。
【0162】
結果:
【0163】
【表2】
【0164】
上記のように、cAMPアッセイによる結果は、hNPY2受容体に対する実施例1~5のPYY類縁体の機能活性を実証し、実施例2はヒトPYY3-36よりも12倍低い効力の最も弱い効力を示している。
【0165】
(3)hNPR2受容体に対する in vitroでのGTPγSの活性
【0166】
目的:
【0167】
実施例1~5のPYY類縁体によるGタンパク質の受容体媒介性活性化を評価する。受容体媒介性活性化は、非加水分解性GTP類縁体、GTPγ[35S]を用いて測定することができる。アゴニストを介したGタンパク質接合型受容体の刺激は、膜結合型Gαβγタンパク質ヘテロ三量体複合体の活性化をもたらす。これは、細胞外シグナルを伝達して細胞内経路を改変する最初の工程である。本明細書では、GTPγ[35S]機能アッセイを使用して、hNPY2受容体でのさまざまなPYY類縁体の効力を評価する。
【0168】
方法:
【0169】
PYY類縁体、ヒトPYY1-36(配列番号1)および対照ペプチドPYY3-36(配列番号2)は、受容体結合アッセイにおいて上記のように合成され、特性評価され、そして保存される。
【0170】
各試験ペプチドについて、1/3 log希釈(対数濃度-6.52~-12.52)の濃度応答曲線(CRC)を、0.2%バシトラシン(U.S.Biologicals#11805)および0.5%DMSOを補充したアッセイバッファー(20mM HEPES、pH7.4、100mM NaCl、6mM MgCl、1mM EDTA)において、Hamilton NIMBUS液体ハンドラーを用いて完了する。バシトラシンおよびDMSOの最終アッセイ濃度はそれぞれ0.05%と0.125%である。hNPY2R膜(Multispan#HTS066M)を20 uM GDP(Sigma#G-7127)および6 ug/mLサポニン(Sigma#S-4521)を添加したアッセイバッファーで7.5ug/mLの濃度に調製し、hNPY2R膜をアッセイに加える前に室温で20分間インキュベートする。GTPγS[35S](PerkinElmer#NEG030H)を0.6nMの濃度で、アッセイ緩衝液中に調製する。WGA SPAビーズ(PerkinElmer#RPNQ0001)を、アッセイ緩衝液で12mg/mLの濃度に調製する。最終容量200uLに対して最初に100uLをhNPY2R膜に添加し、次にCRCの溶液50uL、次にGTPγS[35S]溶液50uLを添加することにより、96ウェルプレート(Costar#3604)においてアッセイを行う。プレートを覆い、室温でオービタルシェーカー(175rpmで45分間)に置く。次に、25uLのSPAビーズを加え、プレートを再度密封し、ボルテックスして混合した後、オービタルシェーカーに室温で3時間戻す。次にプレートを500rpmで5分間遠心分離し、PerkinElmer 2450マイクロプレートカウンターでウェルあたり1分間カウントする。基礎結合(CPM)を、PYY類縁体またはヒトPYY3-36の不在下で決定し、次の等式により、ペプチドの各濃度の基礎値を超えるパーセントを計算するために使用する:(PYY類縁体、またはヒトPYY3-36、CPM-基礎CPM)/(基礎CPM)*100。EC50(nM)値は、濃度の対数および基礎値のパーセントを、次の等式を使用してGraphPad Prism 7.0の非線形回帰分析(対数(アゴニスト)対応答-変数の傾き(4つのパラメータ))にかけることによって決定される:Y=ボトム+(トップ-ボトム)/(1+10^((LogEC50-X)*ヒル勾配))。平均値の幾何平均および標準誤差をGraphPad Prism 7.0の列の統計関数を使用してEC50(nM)値から計算する。
【0171】
結果:
【0172】
【表3】

【0173】
上記のように、GTPγ[35S]機能アッセイによる結果は、hNPY2受容体に対するPYY類縁体の活性を実証し、実施例2は、ヒトPYY3-36に対して4倍低い効力の最も弱い効力を示している。
【0174】
(4)薬物動態
【0175】
目的:
【0176】
PYY類縁体の薬物動態特性を調査する。
【0177】
方法:
【0178】
LC/MS-さまざまなPYY類縁体の血漿中濃度をLC/MS法によって決定する。該方法は化合物全体、ペプチドおよび関連付けられた時間延長を測定する。アッセイでは、0.1%ギ酸を含むメタノールを使用して、マウス、ラット、またはサルの血漿(50μL)からPYY類縁体および内部標準を抽出する。サンプルを遠心分離し、上清をThermo Protein Precipitation Plateに移す。サンプルを、メタノールおよび水中の0.1%ギ酸で調整したSep-Pak tC18 SPE μElutionプレートにロードする。SPEカラムを、水中の0.1%ギ酸で2回洗浄する。次に、ギ酸/水/アセトロニチル(0.1:15:85)を使用して化合物を溶出した後、これを乾燥して再構成してから、アリコート(10μL)をThermo Acclaim PepMap100 C18、300μm×5mm捕捉カラム、およびThermo Easy Spray PepMap C18、LC/MS分析用の75μm×15cmカラムに注入した。カラム流出液を、検出および定量のためにThermo Q-Exactive Plus質量分析計へと向ける。
【0179】
CD-1マウスにおけるPYY類縁体の薬物動態-PYY類縁体の血漿薬物動態を、200nmol/kgの単回皮下投与後の雄性CD-1マウスで評価する。血液サンプルを、168時間にわたって各時点で2匹の動物から収集する。非連続サンプリングを使用してマウスのPYY類縁体の動態を評価するため、平均濃度対時間のデータを使用して、200nmol/kgの単回皮下投与後のPYY類縁体の薬物動態パラメータを表にする。PYY類縁体の血漿中濃度を、200nmol/kgの単回皮下投与後120時間まで検出する。
【0180】
SDラットにおけるPYY類縁体の薬物動態-PYY類縁体の血漿薬物動態を、50nmol/kgの単回皮下投与後の雄性Sprague Dawleyラットで評価する。血液サンプルを、168時間にわたって各時点で2匹の動物から収集する。連続サンプリングを使用してラットのPYY類縁体の動態を評価するため、個々の動物の平均濃度対時間のデータを使用して、50nmol/kgの単回皮下投与後のPYY類縁体の薬物動態パラメータを表にする。PYY類縁体の血漿中濃度を、50nmol/kgの単回皮下投与後120時間まで検出する。
【0181】
カニクイザルにおけるPYY類縁体の薬物動態-PYY類縁体の血漿薬物動態を、50nmol/kgの単回皮下投与後の雄性および雌性カニクイザルで評価する。血液サンプルを504時間にわたって収集する。連続サンプリングを使用してカニクイザルのPYY類縁体の動態を評価するため、個々の動物の平均濃度対時間のデータを使用して、50nmol/kgの単回皮下投与後のPYY類縁体の薬物動態パラメータを表にする。PYY類縁体の血漿中濃度を、50nmol/kgの単回皮下投与後504時間まで検出する。
【0182】
結果:
【0183】
【表4】

【0184】
【表5】

【0185】
【表6】

【0186】
結果:
【0187】
これらのデータは、上記の化合物が週1回の投与に適した薬物動態プロファイルを有することを示している。
【0188】
(5)溶解性および安定性
【0189】
目的:
【0190】
PYY類縁体の可溶性pH範囲および安定性を決定する。
【0191】
方法:
【0192】
視覚的溶解度範囲の評価-凍結乾燥したPYY類縁体粉末を4mg/mLの濃度で水中で再構成し、クエン酸/リン酸緩衝液でpHをpH4に調整する。系のpHを0.5N NaClでpH8に調整した後、0.5N HClでpH4に滴定した。
【0193】
熱安定性評価-1mg/mLまたは2mg/mL濃度の10mMまたは20mMリン酸ナトリウム、pH7.0中のPYY類縁体溶液を調製し、4℃および40℃で4週間インキュベートする。4週間の時点でのサンプルを、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)およびRP-HPLCによって分析する。
【0194】
SEC法-TOSOH TSKgelG2000SWxl、内径7.8mm×30cm、5 umカラムを使用し、50mMリン酸ナトリウム、300mM NaCl、pH7.0、20%アセトニトリルの移動相組成物により、流速0.5mL/分、λ-214nmで30分間かけて行った。
【0195】
RP法-Cortecs C18、2.7 um、4.6×50mmカラム、0.085%TFAを含む20%~45%アセトニトリル/水を使用して、流速1mL/分、λ-214nmで10分間かけて行った。
【0196】
結果:
【0197】
【表7】

【0198】
上に示したように、すべてのペプチドはpH7.0超で溶解する。RPおよびSECによって評価される安定性は、これらのペプチドが攻撃的な熱ストレス下で比較的安定していることを示唆している。
【0199】
実施例7:PYYのIn Vivoでの効果。
【0200】
(1)正常なマウスの食物摂取量および体重に対する in vivoでの効果
【0201】
目的:
【0202】
単回注射後の正常なマウスの体重を減らし、食物摂取を抑制する実施例1~5のPYY類縁体の効果を比較する。
【0203】
方法:
【0204】
Envigo RMS(インディアナ州インディアナポリス)からの雄性C57Bl/6マウスを、固形飼料(5008;LabDiet、ミズーリ州セントルイス)で飼育し、通常の12:12時間の光サイクルで、餌および水を自由に摂取できる温度管理された施設(74.0°F;23.3℃)内で1匹ずつ収容した。9~10週齢で、絶食していない体重および初期の食物重量を記録し、動物にビヒクルまたはペプチドの単回皮下注射を行い、その後、投与後3日間にわたり体重および食物摂取量を毎日測定する。曲線下面積分析(AUC)を、ビヒクルに対する体重および食物摂取量の両方について計算する。30nmol/kgでの実施例4を、アッセイの各実施における体重および食物摂取に対する100%の効力のベンチマークとして使用する。
【0205】
結果:
【0206】
【表8】
【0207】
上に示したように、体重および食物摂取量の両方の減少は、in vivoでのPYY類縁体の有効性を示し、完全な有効性に必要な用量の比較は、有効性の改善を実証している。
【0208】
(2)食餌誘発性肥満マウスの食物摂取量および体重に対するin vivoでの効果
【0209】
目的:
【0210】
食餌誘発性肥満(DIO)マウスにおいて、2週間にわたって、単独で、またはGLP-1受容体アゴニストと組み合わせて、体重を減少させる実施例1~5のPYY類縁体の毎日の投与の効果を調査する。
【0211】
方法:
【0212】
20週齢のDIO雄性C57Bl/6マウス(Taconic)は、到着時に60%脂肪食で飼育されている(D12492;Research Diets、ニュージャージー州ニューブランズウィック)。12時間の明/暗サイクル(22:00に点灯)で、食餌および水を自由に摂取できる、温度管理された施設(74.0°F;23.3℃)内で動物を個々に収容する。毎日のビヒクル投与の1週間の順応期間の後、非絶食時の体重を測定し、動物を体重によって実験群に無作為化し(n=6)、ビヒクル、GLP-1受容体アゴニスト(GLP-1 RA;配列番号15)、PYY類縁体、またはPYY類縁体とGLP-1 RAの組み合わせの毎日の皮下注射を投与する。投与の2週間後、非絶食時の体重を記録し、ビヒクルに対する平均体重の変化を計算する。GLP-1 RAと組み合わせたPYY類縁体の相加効果または相乗効果を決定するために、GLP-1 RA単独の効果(正味の効果)を超える効果が計算される。
【0213】
結果:
【0214】
【表9】

【0215】
上に示したように、PYY類縁体を単独で、またはGLP-1 RAと組み合わせて使用した場合の体重の減少は、in vivoでのPYY類縁体の有効性を示し、ここでは体重減少の大きさを比較している。
【0216】
(3)糖尿病および肥満(db/db)マウスにおける体重およびグルコースに対する in vivoでの効果
【0217】
目的:
【0218】
肥満および糖尿病マウス(db/db)において10日間にわたって体重および血糖値を低下させる実施例1~5のPYY類縁体の毎日の投与の効果を調査する。
【0219】
方法:
【0220】
Envigo RMS(インディアナ州インディアナポリス)からのLeprdb/db(db/db)雄性マウスを、固形飼料(5008;LabDiet、ミズーリ州セントルイス)で飼育し、通常の12:12時間の光サイクルで、餌および水を自由に摂取できる温度管理された施設(74.0°F;23.3℃)内でケージごとに5匹の動物を収容した。8~9週齢で、Accu-Check(登録商標)血糖値計(Roche Diabetes Care、Inc.、インディアナ州インディアナポリス)を使用して体重および血糖値を測定し、続いてビヒクルまたはペプチドを毎日皮下注射する。投与の10日後、体重および血糖値を測定し、ビヒクル治療に対する変化を計算す。
【0221】
結果:
【0222】
【表10】

【0223】
上に示したように、PYY類縁体による体重および血糖値の低下は、in vivoでのPYY類縁体の有効性を示しており、ここでは、体重減少およびグルコース低下の大きさを比較している。
【0224】
結論として、本明細書のPYY類縁体は、NPY2Rに対して選択性を示す。それらはまた、最も効果的である実施例1、3および4のPYY類縁体で正常マウス、食餌誘発性肥満マウスおよびdb/dbマウスにおいて反映されるように、体重の用量依存的減少、ならびにdb/dbマウスにおける血糖の用量依存的改善を示し、これらはin vitroプロファイルと一致している。
配列
配列番号1-ヒトPYY 1-36
YPIKPEAPGEDASPEELNRYYASLRHYLNLVTRQRY
配列番号2-ヒトPYY 3-36
IKPEAPGEDASPEELNRYYASLRHYLNLVTRQRY
配列番号3-PYY類縁体
PKPEXPX10DASPEEX1718RYYX2223LRHYLNX30LTRQRY
配列番号4-PYY類縁体
PKPEKPGEDASPEEWQRYYAELRHYLNWLTRQRY
配列番号5-PYY類縁体
PKPEKPGEDASPEEWQRYYAELRHYLNELTRQRY
配列番号6-PYY類縁体
PKPEKPEEDASPEEWQRYYIELRHYLNWLTRQRY
配列番号7-PYY類縁体
PKPEKPGKDASPEEWNRYYADLRHYLNWLTRQRY
配列番号8-PYY類縁体
PKPEKPGEDASPEELQRYYASLRHYLNWLTRQRY
【化10】


【化11】


【化12】



【化13】


【化14】

配列番号14-PP 1-36
APLEPVYPGDNATPEQMAQYAADLRRYINMLTRPRY
配列番号15-GLP-1 RA
HGEGTFTSDVSSYLEEQAAKEFIAWLVKGRGGGGGSGGGGSGGGGSESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG
【配列表】
0007280949000001.app