(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】波長変換素子及び光学機器
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20230517BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20230517BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20230517BHJP
H01S 5/022 20210101ALI20230517BHJP
F21V 7/26 20180101ALI20230517BHJP
F21V 9/20 20180101ALI20230517BHJP
F21V 9/38 20180101ALI20230517BHJP
F21V 9/40 20180101ALI20230517BHJP
F21V 9/45 20180101ALI20230517BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20230517BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20230517BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20230517BHJP
【FI】
G02B5/20
G02B5/02 B
H01L33/50
H01S5/022
F21V7/26
F21V9/20
F21V9/38
F21V9/40 200
F21V9/45
F21S2/00 311
F21Y115:10
F21Y115:30
(21)【出願番号】P 2022508100
(86)(22)【出願日】2021-01-25
(86)【国際出願番号】 JP2021002362
(87)【国際公開番号】W WO2021186895
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2020047755
(32)【優先日】2020-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】青森 繁
(72)【発明者】
【氏名】由井 英臣
(72)【発明者】
【氏名】菅野 透
(72)【発明者】
【氏名】植木 智子
(72)【発明者】
【氏名】山本 睦子
(72)【発明者】
【氏名】一ノ瀬 裕一
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-054785(JP,A)
【文献】特開2011-009305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
G02B 5/02
H01L 33/50
H01S 5/022
F21V 7/26
F21V 9/20
F21V 9/38
F21V 9/40
F21V 9/45
F21S 2/00
F21Y 115/10
F21Y 115/30
G03B 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレートと、
前記プレートと第一方向に積層され、前記プレートと対向する対向面を有し、入射光とは異なる波長の光を出射する無機波長変換材とを含む波長変換層と、
前記プレートと前記波長変換層との間に配された高分子層と、
を備え、
前記対向面の一部が前記プレートと接触しており、前記対向面の他の部分の少なくとも一部が前記高分子層を介して前記プレートと接合され、
前記波長変換層は、
前記無機波長変換材を含む波長変換材含有層と、
前記プレートと前記波長変換材含有層との間に配され、前記無機波長変換材を含まずに光拡散材料を含む拡散層と、を含み、
前記波長変換材含有層の前記拡散層側の面には、前記プレートから離隔する方向に凹む複数の凹部が設けられ、且つ当該複数の凹部は、互いに前記第一方向と直交する第二方向に離隔しており、
前記拡散層は、当該拡散層の一部が前記複数の凹部の内面を覆うように、前記波長変換材含有層の前記拡散層側の面に重ねて配され、
前記高分子層は、前記拡散層の一部によって覆われた前記複数の凹部内の各々に配されて、前記波長変換層と前記プレートとを接合し、
前記波長変換材含有層の一部は、互いに離隔する前記複数の凹部の間に配されて、前記拡散層を挟んで前記プレートと前記第一方向に対向し、且つ、前記複数の凹部内に配された前記高分子層の各々と、前記拡散層を挟んで前記第二方向に並ぶ、
波長変換素子。
【請求項2】
前記高分子層は、前記波長変換層の弾性率よりも低い弾性率を有する、
請求項1に記載の波長変換素子。
【請求項3】
前記高分子層は、前記波長変換層の線熱膨張係数よりも高い線熱膨張係数を有する、
請求項1または2に記載の波長変換素子。
【請求項4】
前記波長変換層が、無機バインダを含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載の波長変換素子。
【請求項5】
前記高分子層が複数設けられている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の波長変換素子。
【請求項6】
前記複数の高分子層は、一の方向における前記波長変換層の両端部のそれぞれと、前記プレートとの間に配された高分子層を含む、
請求項5に記載の波長変換素子。
【請求項7】
前記複数の高分子層は、マトリクス状に配された複数の高分子層を含む、
請求項5または6に記載の波長変換素子。
【請求項8】
前記高分子層は、シリコーン、ポリイミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂のうちの少なくとも1種を含む、
請求項1~7のいずれか一項に記載の波長変換素子。
【請求項9】
前記高分子層は、無機材を含む、
請求項1~8のいずれか一項に記載の波長変換素子。
【請求項10】
平面視における前記対向面の面積に対する、前記対向面と前記高分子層とが接触している領域の面積の比が20%以上60%以下である、
請求項1~9のいずれか一項に記載の波長変換素子。
【請求項11】
前記プレートが金属プレートである、
請求項1~10のいずれか一項に記載の波長変換素子。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の波長変換素子と、
前記波長変換素子の前記波長変換層に対して光を照射する光源と、
を備える、光学機器。
【請求項13】
前記高分子層は、前記光源からの光が照射されない領域に設けられている、
請求項12に記載の光学機器。
【請求項14】
前記高分子層は、前記光源からの光が照射される領域を含む領域に設けられている、
請求項12に記載の光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換素子及び光学機器に関する。本願は、2020年3月18日に日本で出願された特願2020-4775号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基材と、基材の上に設けられており、蛍光体層を備える波長変換部材が記載されている。蛍光体層は、蛍光体粒子と、隣り合う蛍光体粒子間を結合する透光性セラミックスとからなる。特許文献1には、透光性セラミックスとして、シリカ、リン酸アルミニウム等の無機バインダが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
波長変換素子には、蛍光体層等の波長変換層の剥離を抑制したいという要望がある。
【0005】
本開示の主な目的は、波長変換層が剥離しにくい波長変換素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様に係る波長変換素子は、プレートと、波長変換層と、高分子層とを備える。波長変換層は、プレートと対向する対向面を有する。波長変換層は、入射光とは異なる波長の光を出射する無機波長変換材を含む。高分子層は、プレートと波長変換層との間に配されている。対向面の一部がプレートと接触している。対向面の他の部分の少なくとも一部が高分子層を介して前記プレートと接合されている。
【0007】
一態様に係る光学機器は、一態様に係る波長変換素子と、波長変換素子の波長変換層に対して光を照射する光源とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る波長変換素子の模式的平面図である。
【
図2】
図1の線II-IIにおける模式的断面図である。
【
図3】第2実施形態に係る波長変換素子の模式的平面図である。
【
図4】
図3の線IV-IVにおける模式的断面図である。
【
図5】第3実施形態に係る波長変換素子の模式的平面図である。
【
図6】
図5の線VI-VIにおける模式的断面図である。
【
図7】第1変形例に係る波長変換素子の一部分の模式的平面図である。
【
図8】第2変形例に係る波長変換素子の一部分の模式的平面図である。
【
図9】第4実施形態に係る波長変換素子の模式的断面図である。
【
図10】第5実施形態に係る光学機器の構成を表す模式図である。
【
図11】第5実施形態おける波長変換素子の模式的平面図である。
【
図12】第6実施形態に係る光学機器の構成を表す模式図である。
【
図13】第3変形例に係る波長変換素子の模式的断面図である。
【
図14】
図13の線XIV-XIVにおける模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る波長変換素子1の模式的平面図である。
図2は、
図1の線II-IIにおける模式的断面図である。
【0011】
図2に示すように、波長変換素子1は、プレート10と、波長変換層20と、高分子層30とを備える。
【0012】
プレート10は、例えば、金属プレートやセラミックプレート等により構成することができる。プレート10は、波長変換層20の熱を高い効率で放熱できるように、高い熱伝導率を有することが好ましい。この観点から、プレート10は、金属プレートであることが好ましく、なかでも、例えば、アルミニウムプレートであることがより好ましい。また、プレート10は、例えば、アルミニウムプレート等の金属プレートと、金属プレートの表面を被うコーティング層とにより構成されていてもよい。
【0013】
プレート10の形状寸法は、特に限定されない。プレート10は、例えば、円形状、円板状、多角形状、楕円形状、長円形状等であってもよい。プレート10の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.5mm以上2.0mm以下程度とすることができる。
【0014】
プレート10の上には、波長変換層20が配されている。波長変換層20は、特定の波長の光(励起光)が入射したときに、励起光とは異なる波長の光、典型的には、励起光よりも波長の長い光を出射する層である。
【0015】
波長変換層20は、無機波長変換材を含む。無機波長変換材は、特定の波長の光(励起光)が入射したときに、励起光とは異なる波長の光、典型的には、励起光よりも波長の長い光を出射する。本実施形態では、無機波長変換材は、例えば、無機蛍光体等の無機波長変換材料を含んでいる。
【0016】
無機波長変換材料の具体例としては、例えば、YAG:Ce(Y3Al5O12:Ce3+)、CaAlSiN3:Eu2+、Ca-α-SiAlON:Eu2+、β-SiAlON:Eu2+、Lu3Al5O12:Ce3+(LuAG:Ce)、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6C12:Eu、BaMgAl10O17:Eu2+、(Sr,Ba)3MgSi2O8:Eu2+等が挙げられる。
【0017】
複数の無機波長変換材は、例えば、1種の無機波長変換材料を含有していても良いし、複数種類の無機波長変換材料を含有していてもよい。
【0018】
無機波長変換材の形状は、特に限定されない。無機波長変換材は、例えば、粒子状、球状、楕球状、針状、多角柱状、円柱状等であってもよい。
【0019】
複数の無機波長変換材の粒子径は、特に限定されない。複数の無機波長変換材の平均粒子径は、例えば、1μm以上50μm以下であることが好ましく、5μm以上30μm以下であることがより好ましい。
【0020】
また、複数の異なる平均粒子径の無機波長変換材料が組み合わされていても良い。
【0021】
波長変換層20は、複数の無機波長変換材のみにより構成されていてもよいが、複数の無機波長変換材に加え、バインダをさらに含んでいることが好ましい。波長変換層20は、無機材料からなる無機バインダを含むことがさらに好ましい。好ましく用いられる無機バインダの具体例としては、例えば、アルミナ、シリカ、窒化珪素、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化スズ等が挙げられる。
【0022】
波長変換層20における無機バインダの含有量は、例えば、10体積%以上40体積%以下であることが好ましい。
【0023】
波長変換層20は、実質的に無機材料のみを含んでいることが好ましい。すなわち、波長変換層20は、無機波長変換層であることが好ましい。
【0024】
図2に示すように、波長変換層20は、プレート10と対向する対向面21と、プレート10とは反対側の主面22とを有する。対向面21には、少なくとも1つの凹部25が形成されている。このため、対向面21のうち、凹部25が設けられていない部分の少なくとも一部は、プレート10と接触しており、凹部25が設けられた部分は、プレート10と接触していない。すなわち、対向面の一部は、プレート10と接触している。
【0025】
プレート10と波長変換層20との間には、高分子層30が配されている。詳細には、高分子層30は、波長変換層20の対向面21に設けられた凹部25内に配されている。高分子層30は、凹部25の全体に設けられていることが好ましいが、凹部25の一部に設けられていてもよい。すなわち、凹部25には、高分子層30が位置していない部分が存在していてもよい。
【0026】
具体的には、本実施形態では、
図1に示すように、プレート10と波長変換層20との間に、複数の高分子層30が配されている。複数の凹部25のそれぞれに高分子層30が配されている。複数の高分子層30は、
図1におけるx方向と、x方向に対して傾斜(典型的には直交)したy方向とのそれぞれに沿って、相互に間隔をおいてマトリクス状に配されている。
【0027】
複数の高分子層30のそれぞれの形状は、高分子層30がプレート10と波長変換層20との間に設けられている限りにおいて、特に限定されない。高分子層30は、例えば、平面視において円形状や楕円形状、矩形状であってもよい。
【0028】
高分子層30は、高分子を含む。高分子層30は、例えば、樹脂や樹脂組成物により構成されていることが好ましい。
【0029】
高分子層30は、高い熱的耐久性を有する高分子を含むことが好ましい。高分子層30は、例えば、シリコーン、ポリイミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂のうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。高分子層30は、例えば、シリコーン、ポリイミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂のうちの少なくとも1種と、フィラーとを含む樹脂組成物により構成されていてもよい。好ましく用いられるフィラーの具体例としては、例えば、シリカやアルミナ等が挙げられる。
【0030】
図2に示すように、高分子層30は、対向面21の凹部25が設けられた部分と、プレート10との両方に接触している。本実施形態では、具体的には、高分子層30は、対向面21の凹部25が設けられた部分と、プレート10との両方に接合されている。このため、対向面21のプレート10と接触している部分以外の部分の少なくとも一部は、高分子層30を介してプレート10と接合されている。具体的には、対向面21の凹部25が設けられた部分の少なくとも一部は、高分子層30を介してプレート10と接合されている。
【0031】
ところで、波長変換層に励起光が入射すると、波長変換層の温度が上昇する。通常、プレートの熱膨張係数と、波長変換層の熱膨張係数とは異なる。例えば、プレートが金属プレートであり、波長変換層が無機波長変換材を含んでいる場合は、通常、プレートの熱膨張係数が、波長変換層の熱膨張係数よりも大きい。このため、波長変換層及びプレートの温度が上昇したときの、波長変換層の熱膨張量と、プレートの熱膨張量とが相互に異なる。この波長変換層とプレートとの間の熱膨張量の差に起因して波長変換層がプレートから剥離する虞がある。
【0032】
本実施形態に係る波長変換素子1では、波長変換層20の対向面21の一部がプレート10と接触しており、対向面21の他の部分の少なくとも一部が高分子層30を介してプレート10と接合されている。このため、波長変換層20がプレート10から剥離しにくい。
【0033】
詳細には、波長変換層20の対向面の一部がプレート10と接触している。波長変換層20は、無機波長変換材と、前記無機バインダを含んでいるため、高い熱伝導率を有する。このため、波長変換層20に励起光が入射した際に波長変換層20が発熱しても、波長変換層20の熱がプレート10側に伝達しやすい。よって、波長変換層20の温度上昇を抑制することができる。このため、波長変換層20と、プレート10との間の熱膨張差を小さくすることができる。よって、波長変換層20がプレート10から剥離することを抑制することができる。
【0034】
さらに、本実施形態に係る波長変換素子1では、対向面21の少なくとも一部が高分子層30を介してプレート10と接合されている。この高分子層30が、波長変換層20とプレート10との熱膨張差に起因して発生する応力を緩和する緩衝層として機能し得る。加えて、高分子層30は、高分子を含むため、無機波長変換材を含む波長変換層20よりも高分子層30の方がプレート10に対する密着強度が高い。よって、波長変換層20がプレート10から剥離することをさらに抑制することができる。
【0035】
このように、波長変換層20がプレート10に直接接触すると共に、波長変換層20とプレート10とが高分子層30によって接合されているため、波長変換層20の温度上昇を抑制できる。さらに、高分子層30によって、熱膨張差に起因する応力の緩和、及び、波長変換層20とプレート10との密着強度の向上を図ることができる。従って、波長変換層20がプレート10から剥離することを効果的に抑制することができる。
【0036】
波長変換素子1は、複数の高分子層30を有している。このため、対向面21に、プレート10に直接接触している複数の部分と、高分子層30により接合された複数の部分とを、分散して配置することができる。よって、波長変換層20の局所的な温度上昇を抑制することができる。また、波長変換層20のプレート10に対する密着強度を全体的に高めることができる。さらに、波長変換層20とプレート10との間に発生する応力を全体的に緩和することができる。従って、波長変換層20のプレート10からの剥離をより効果的に抑制することができる。
【0037】
波長変換層20とプレート10との間の高い熱伝導率と、高分子層30を設けることによる剥離の抑制とを両立させる観点から、波長変換素子1において、平面視における対向面21の面積に対する、対向面21と高分子層30とが接触している領域の面積の比は、10%以上70%以下であることが好ましく、20%以上60%以下であることがより好ましい。
【0038】
高分子層30の緩衝効果をより高める観点から、高分子層30は、波長変換層20の弾性率よりも低い弾性率を有することが好ましい。具体的には、高分子層30の弾性率EPと、波長変換層20の弾性率EWの比、EW/EPは10万倍以上であることが好ましく、100万倍以上であることがより好ましい。
【0039】
同様の観点から、高分子層30は、波長変換層20の線熱膨張係数よりも高い線熱膨張係数を有することが好ましい。具体的には、高分子層30の線熱膨張係数は、波長変換層20の線熱膨張係数よりも10倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがより好ましい。
【0040】
波長変換層20からプレート10への熱伝導をより大きくする観点から、波長変換層20は、無機バインダを含むことが好ましい。
【0041】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態に係る波長変換素子1aの模式的平面図である。
図4は、
図3の線IV-IVにおける模式的断面図である。
【0042】
第1実施形態では、複数の高分子層30がマトリクス状に設けられている例について説明した。但し、本発明はこの構成に限定されない。
【0043】
本実施形態に係る波長変換素子1aでは、高分子層30は、波長変換層20の周縁部に設けられている。高分子層30は、額縁状に形成されている。高分子層30は、波長変換層20の周縁部と、プレート10との間に配されている。
【0044】
本実施形態のように、高分子層30が波長変換層20の周縁部に設けられている場合であっても、第1実施形態と同様に波長変換層20の剥離を抑制することができる。また、例えば、波長変換層20の中央部に励起光を照射した場合は、波長変換層20の中央部の温度が上昇しやすく、周縁部の温度が上昇しにくい。このため、波長変換層20には温度の差に起因する応力が発生するが、周縁部に設けられた高分子層30が応力を緩和することにより、高分子層30の密着力が低下することを効果的に抑制することができる。また、周縁部にある高分子層30の温度も上昇しにくいことから、高分子層30の密着力が低下しにくい。従って、波長変換層20の剥離を効果的に抑制することができる。波長変換層20の剥離を効果的に抑制する観点からは、高分子層30が全周にわたって環状に設けられていることが好ましい。
【0045】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態に係る波長変換素子1bの模式的平面図である。
図6は、
図5の線VI-VIにおける模式的断面図である。
【0046】
第1及び第2実施形態では、波長変換素子1、1aが矩形状である例について説明した。但し、本発明はこの構成に限定されない。波長変換素子は、例えば、円板状等であってもよい。本実施形態では、円板状の蛍光ホイールを構成している波長変換素子1bについて説明する。
【0047】
波長変換素子1bにおいて、プレート10は、円板状である。
図6に示すように、プレート10の中央部には、貫通孔10aが形成されている。貫通孔10aには、シャフト40が挿入される。プレート10は、貫通孔10aに挿入されたシャフト40の回転に伴って回転する。
【0048】
波長変換層20は、プレート10の外周部の上に設けられている。波長変換層20は、リング状(円環状)に形成されている。本実施形態では、波長変換層20の全体が同じ波長変換材料を含んでおり、同じ波長の光を出射する。但し、本発明は、この構成に限定されない。波長変換層は、例えば、周方向に沿って配置されており、相互に波長が異なる光を出射する複数の波長変換層を含んでいてもよい。具体的には、波長変換層は、周方向に沿って配置されており、赤色の光を出射する波長変換層と、緑色の光を出射する波長変換層と、青色の光を出射する波長変換層とを含んでいてもよい。
【0049】
図5に示すように、本実施形態では、高分子層30は、波長変換層20の両端部(内側端部及び外側端部)のそれぞれに設けられている。具体的には、波長変換素子1bは、高分子層30として、内側高分子層30aと、外側高分子層30bとを有する。内側高分子層30aは、リング状に形成された波長変換層20の内周部とプレート10との間に配されている。一方、外側高分子層30bは、リング状に形成された波長変換層20の外周部とプレート10との間に形成されている。
【0050】
本実施形態においても上記実施形態と同様に高分子層30が設けられている。このため、波長変換層20の剥離を抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態では、内側高分子層30aと外側高分子層30bとによって波長変換層20の半径方向の両端部のそれぞれの接合力が向上されているため、波長変換層20の剥離をより効果的に抑制することができる。
【0052】
さらに、蛍光ホイールを構成している波長変換素子1bにおいては、通常、波長変換層20の半径方向の中央部に励起光が照射され、中央部が高温になりやすい。このため、内側高分子層30a及び外側高分子層30bの温度が上昇しにくい。従って、内側高分子層30a及び外側高分子層30bの接合力が低下しにくく、波長変換層20の剥離をより効果的に抑制することができる。
【0053】
(第1変形例及び第2変形例)
図7は、第1変形例に係る波長変換素子の一部分の模式的平面図である。
図8は、第2変形例に係る波長変換素子の一部分の模式的平面図である。
【0054】
第3実施形態では、高分子層30が内側高分子層30a及び外側高分子層30bにより構成されている例について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。例えば、
図7に示すように、第1変形例では、高分子層30は、内側高分子層30a及び外側高分子層30bに加え、複数の中央高分子層30cを含む。複数の中央高分子層30cは、波長変換層20の半径方向における中央部とプレート10との間に配置されている。複数の中央高分子層30cは、周方向に沿って相互に間隔をおいて配置されている。複数の中央高分子層30cの平面視形状は、特に限定されないが、例えば、円形である。
【0055】
第1変形例のように、中央高分子層30cを設けることにより、励起光が照射されることにより温度が上昇しやすい波長変換層20の半径方向の中央部とプレート10との剥離を効果的に抑制することができる。
【0056】
波長変換層20の剥離を効果的に抑制する観点からは、内側高分子層30a及び外側高分子層30bのそれぞれの周方向に沿った存在率が、中央高分子層30cの周方向に沿った存在率よりも高いことが好ましい。内側高分子層30a及び外側高分子層30bのそれぞれの半径方向に沿った寸法が、中央高分子層30cの半径方向に沿った寸法よりも大きいことが好ましい。
【0057】
なお、第1変形例では、内側高分子層30a及び外側高分子層30bのそれぞれが円環状である例について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。例えば、
図8に示すように、内側高分子層30a及び外側高分子層30bのそれぞれは、周方向に沿って相互に間隔をおいて配された複数の高分子層により構成されていてもよい。すなわち、例えば、内側高分子層30a、外側高分子層30b及び中央高分子層30cのうちの少なくともひとつがドット状に設けられていてもよい。
【0058】
(第4実施形態)
図9は、第4実施形態に係る波長変換素子の模式的断面図である。
【0059】
第1~第3実施形態では、波長変換層20の全体が波長変換材料を含んでいる例について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。波長変換層20は、例えば、波長変換部材を含む波長変換部材含有部と、波長変換部材を含まない波長変換部材不含有部とを有していてもよい。
【0060】
図9に示すように、本実施形態では、波長変換層20は、波長変換材料含有層20aと、拡散層20bとを有する。波長変換材料含有層20aは、波長変換材料と無機バインダとを含む層である。一方、拡散層20bは、波長変換材料を含有していない。本実施形態では、拡散層20bは、無機バインダと光拡散材料により構成されている。拡散層20bは、波長変換材料含有層20aとプレート10との間に配されている。光拡散材料は、無機バインダとの屈折率の差が大きな材料が好ましく、例えば酸化チタン、酸化ジルコニア、酸化亜鉛、シリカ等からなる粒子状の材料、または無機バインダ内に含まれる空隙の様な空気層を用いることが出来る。これら粒子の平均粒子径は、例えば数100nm~数μmである。
【0061】
本実施形態のように、波長変換層20が拡散層20bを含む場合であっても、高分子層30が設けられているため、第1~第3実施形態と実質的に同様の効果が奏される。
【0062】
(第5実施形態)
図10は、第5実施形態に係る光学機器の構成を表す模式図である。
【0063】
本発明に係る波長変換素子は、種々の光学機器に用いることができる。本実施形態では、光学機器の一種として、一形態に係る波長変換素子を備える投影装置について説明する。
【0064】
図10に示す光学機器2は、投影装置を構成している。光学機器2は、光源51を有する。光源51は、例えば、LED(Light Emitting Diode)や、レーザ素子により構成することができる。本実施形態では、光源51は、青色光Bを出射するLD(Laser Diode)により構成されている例について説明する。
【0065】
光源51の光出射側には、青色光Bの波長を選択的に反射するダイクロイックミラー52が配されている。光源51から出射した青色光Bは、ダイクロイックミラー52により反射される。反射された青色光Bは、波長変換素子1cに入射する。
【0066】
図11は、第5実施形態おける波長変換素子1cの模式的平面図である。
【0067】
波長変換素子1cは、蛍光ホイールを構成している。
図11に示すように、波長変換素子1cでは、プレート10は、周方向に沿った一部が切欠かれた円板状である。本実施形態では、プレート10は、金属プレートにより構成されており、光を反射する。
【0068】
プレート10は、
図10に示す回転装置53に接続されたシャフト40に固定されている。回転装置53によりシャフト40が回転駆動されるに伴ってプレート10が回転する。
【0069】
プレート10の上には、半径方向の内側部分が切欠かれた扇形の波長変換層20が形成されている。波長変換層20とプレート10との間には、内側高分子層30a及び外側高分子層30bを含む高分子層30が配されている。このため、本実施形態においても、波長変換層20のプレート10からの剥離が抑制されている。
【0070】
波長変換層20は、周方向に沿って配された緑色波長変換層20A及び赤色波長変換層20Bを含む。緑色波長変換層20Aは、光源51からの青色光Bが入射したときに緑色光Gを出射する。赤色波長変換層20Bは、光源51からの青色光Bが入射したときに赤色光Rを出射する。緑色波長変換層20A及び赤色波長変換層20Bからの光はプレート10により反射される。
【0071】
回転装置53が駆動され、プレート10が回転すると、光源51からの青色光Bが、波長変換素子1が設けられていない領域、緑色波長変換層20Aが設けられた領域、赤色波長変換層20Bが設けられた領域にこの順番に繰り返し入射する。
【0072】
波長変換素子1が設けられてない領域に入射した青色光Bは、そのまま直進し、
図10に示す光学素子54a、54b及び54cによりダイクロイックミラー52に導光される。青色光Bは、ダイクロイックミラー52により光学素子55側に反射される。
【0073】
緑色波長変換層20Aが設けられた領域に青色光Bが入射すると、緑色光Gが緑色波長変換層20Aから出射する。緑色光Gは、ダイクロイックミラー52を透過して光学素子55に入射する。
【0074】
赤色波長変換層20Bが設けられた領域に青色光Bが入射すると、赤色光Rが赤色波長変換層20Bから出射する。赤色光Rは、ダイクロイックミラー52を透過して光学素子55に入射する。
【0075】
そして、青色光B、緑色光G及び赤色光Rは、それぞれ光学素子55により投影光学系56側に反射され、投影光学系56により投影される。
【0076】
(第6実施形態)
図12は、第6実施形態に係る光学機器の構成を表す模式図である。
【0077】
本実施形態では、波長変換素子を備える光学機器の一例として、
図12に示す、光源装置である光学機器3を例に挙げて説明する。なお、光学機器3は、例えば、透過型レーザヘッドライト(車両用前照灯)等に好適に使用される。
【0078】
光学機器3は、波長変換素子1と、光源60とを備える。光源60は、波長変換素子1の波長変換層20に対して、波長変換層20の励起光を照射する。本実施形態では、プレート10は光源60からの光を透過させる。このため、光源60からの光は、波長変換層20に入射する。波長変換層20から出射された光(例えば、蛍光)は、リフレクタ61により反射され、平行光として出射する。
【0079】
本実施形態においても、高分子層30が設けられているため、波長変換層20のプレート10からの剥離を効果的に抑制することができる。
【0080】
(第3変形例)
図13は、第3変形例に係る波長変換素子の模式的断面図である。
図14は、
図13の線XIV-XIVにおける模式的断面図である。
【0081】
第1実施形態では、高分子層30が島状に設けられている例について説明した。但し、本発明はこの構成に限定されない。高分子層30は、波長変換層20とプレート10との間の一部に設けられている限りにおいて特に限定されない。具体的には、例えば、
図13、
図14に示す波長変換素子のように、高分子層30が、複数の貫通孔を有する板状であってもよい。
【0082】
なお、高分子層30の形状が限定されないのは、第4実施形態においても同様である。