IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 岩谷産業株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社プレテックの特許一覧

<>
  • 特許-機械特性試験装置 図1
  • 特許-機械特性試験装置 図2
  • 特許-機械特性試験装置 図3
  • 特許-機械特性試験装置 図4
  • 特許-機械特性試験装置 図5
  • 特許-機械特性試験装置 図6
  • 特許-機械特性試験装置 図7
  • 特許-機械特性試験装置 図8
  • 特許-機械特性試験装置 図9
  • 特許-機械特性試験装置 図10
  • 特許-機械特性試験装置 図11
  • 特許-機械特性試験装置 図12
  • 特許-機械特性試験装置 図13
  • 特許-機械特性試験装置 図14
  • 特許-機械特性試験装置 図15
  • 特許-機械特性試験装置 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】機械特性試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/18 20060101AFI20230518BHJP
【FI】
G01N3/18
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019024339
(22)【出願日】2019-02-14
(65)【公開番号】P2020134186
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000158312
【氏名又は名称】岩谷産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519050945
【氏名又は名称】株式会社プレテック
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】吉野 裕
(72)【発明者】
【氏名】堀 義宏
(72)【発明者】
【氏名】半田 梓
(72)【発明者】
【氏名】井料 兼一
(72)【発明者】
【氏名】高浜 裕二
(72)【発明者】
【氏名】石山 秀光
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-230034(JP,A)
【文献】特開昭63-311143(JP,A)
【文献】特開昭57-086740(JP,A)
【文献】特開昭48-047878(JP,A)
【文献】実開昭55-001794(JP,U)
【文献】米国特許第05105626(US,A)
【文献】特開平02-226040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00 - 3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験片を中心とした試験片周辺部を試験容器内に収納して室温から低温の環境下で前記試験片の試験を行う機械特性試験装置であって、
前記試験容器が高圧容器で構成されるとともに、
前記試験容器を構成する壁内に、前記試験片周辺部を収容する収容部を冷却するための冷媒体を流す冷媒体流路が形成され、
前記試験容器を収容可能な大きさの内部空間を有し、前記内部空間に選択的に導入された冷媒体で前記試験容器を極低温環境に冷却する断熱性をもった外側断熱容器が設けられ、
前記外側断熱容器または前記試験容器の少なくとも一方を移動させて、前記外側断熱容器が前記試験容器を囲む包囲位置関係と、前記外側断熱容器と前記試験容器を離して前記試験容器を露出させる露出位置関係とに、前記外側断熱容器と前記試験容器の相対移動を行う移動手段が備えられた
機械特性試験装置。
【請求項2】
前記外側断熱容器が上面に開口を有する有底筒状であり、
前記移動手段が前記外側断熱容器を上下動させるものである
請求項1に記載の機械特性試験装置。
【請求項3】
前記試験容器が前記試験片周辺部を収容する本体部材と、前記本体部材の上端の開口を塞ぐ蓋部材を有し、
前記蓋部材が前記試験片周辺部と共に吊り下げ支持され、
前記本体部材と前記移動手段の少なくとも一方に、前記本体部材と前記移動手段の結合及び分離を可能とする接続機構が設けられるとともに、
前記移動手段が、前記本体部材を前記蓋部材から分離して前記試験片周辺部を露出させる位置まで移動可能に設定された
請求項1または請求項2に記載の機械特性試験装置。
【請求項4】
前記本体部材を降下して前記試験片周辺部を露出させたときの、前記外側断熱容器の下端を基準とする前記本体部材の上端位置の高さが、前記外側断熱容器の高さに前記本体部材の高さを加算した高さよりも低く設定された
請求項3に記載の機械特性試験装置。
【請求項5】
前記移動手段に、前記外側断熱容器の直径よりも大きい窓部を上下に有する枠状の昇降架台が備えられ、
前記昇降架台の上面に、前記接続機構の一部として前記本体部材の被係止部に着脱可能に接合される係止部材が選択的に取り付け可能に備えられるとともに、
前記外側断熱容器の上面に前記昇降架台の前記窓部よりも外周側に張り出す鍔板が選択的に取り付け可能に備えられる
請求項3に記載の機械特性試験装置。
【請求項6】
前記外側断熱容器が真空断熱層を有する真空断熱容器であるとともに、
前記外側断熱容器に、前記内部空間に対して冷媒体を導入する導入路が設けられた
請求項1から請求項のうちいずれか一項に記載の機械特性試験装置。
【請求項7】
前記外側断熱容器の前記内部空間を閉じる着脱可能な断熱蓋を備えた
請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の機械特性試験装置。
【請求項8】
前記試験容器の収容部内に、水素ガス、ヘリウムガス、窒素ガスが選択して送り込まれるように構成された
請求項1から請求項7のうちいずれか一項に記載の機械特性試験装置。
【請求項9】
試験片を中心とした試験片周辺部を試験容器内に収納して低温環境下で前記試験片の試験を行う機械特性試験方法であって、
前記試験容器が高圧容器で構成されるとともに、
前記試験容器を構成する壁内に、前記試験片周辺部を収容する収容部を冷却するための冷媒体を流す冷媒体流路が形成され、
前記試験容器が吊り下げ支持されるとともに、前記試験容器よりも大きい内部空間を有し、前記内部空間に選択的に導入された冷媒体で前記試験容器を極低温環境に冷却する断熱性をもった外側断熱容器を備えて、
極低温環境下での試験時に、前記外側断熱容器で前記試験容器を囲むとともに前記外側断熱容器内に冷媒体をためて、前記試験容器への入熱の抑制と冷媒体流路からの冷媒体により前記試験容器の冷却を行いながら試験を行う一方、
室温から極低温よりも高い低温環境下での試験時に、前記外側断熱容器で前記試験容器を囲んで前記試験容器への入熱の抑制と冷媒体での冷却を行いながら引っ張り試験を行い、または前記外側断熱容器を前記試験容器から離して前記試験容器を露出させた状態で試験を行う
機械特性試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば低歪速度引張試験(SSRT試験)が低温環境下で行える機械特性試験装置に関し、より詳しくは、極低温環境下での試験も可能な機械特性試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
極低温環境下での機械特性試験を行う装置として、下記特許文献1の装置が開示されている。特許文献1の破壊靭性試験装置は、試験片を極低温環境下におくために、試験片取付具を収容する2重真空断熱デュア瓶と、2重真空断熱デュア瓶の外側を覆う液体窒素瓶を有している。2重真空断熱デュア瓶の中には、極低温冷媒体としての液体ヘリウムが試験片取付具を浸すほど貯留れさている。また2重真空断熱デュア瓶と液体窒素瓶との間には隙間が設けられており、この隙間に液体窒素が封入されている。液体窒素瓶は断熱素材からなるものである。
【0003】
この装置では、2重真空断熱デュア瓶内の極低温の液体ヘリウムに浸った状態で試験がなされる。つまり、極低温の液体ヘリウム温度である-268.9℃で試験される。外側の液体窒素瓶は、封入した液体窒素(-195.8℃)で2重真空断熱デュア瓶への入熱を抑制して、高価な液体ヘリウムの消費を抑制する。
【0004】
しかし、試験は2重真空断熱デュア瓶内に収容した極低温の冷媒体の温度で行うのであって、冷媒体を交換しなければ、それよりも高い温度での試験はできない。また、液体ヘリウムを貯留する容器が2重真空断熱デュア瓶であるので、高圧容器とすることができず、高圧条件下での試験もできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平1-254839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、室温から極低温を含む所望の低温(以下、「低温」という)の環境下で試験が行えるうえに、高圧環境下でも所望の低温にして試験が行えるようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのための手段は、試験片を中心とした試験片周辺部を試験容器内に収納して室温から低温の環境下で前記試験片の試験を行う機械特性試験装置であって、前記試験容器が高圧容器で構成されるとともに、前記試験容器を構成する壁内に、前記試験片周辺部を収容する収容部を冷却するための冷媒体を流す冷媒体流路が形成され、前記試験容器を収容可能な大きさの内部空間を有し、前記内部空間に選択的に導入された冷媒体で前記試験容器を極低温環境に冷却する断熱性をもった外側断熱容器が設けられ、試験容器に備えられた冷媒体流路から流される冷媒体により温度制御が可能で、前記外側断熱容器または前記試験容器の少なくとも一方を移動させて、前記外側断熱容器が前記試験容器を囲む包囲位置関係と、前記外側断熱容器と前記試験容器を離して前記試験容器を露出させる露出位置関係とに、前記外側断熱容器と前記試験容器の相対移動を行う移動手段が備えられた機械特性試験装置である。
【0008】
なお、前述の包囲位置関係と露出位置関係における試験容器は、試験を行い得る状態にあるものをいう。つまり、試験容器が本体部材と蓋部材で構成される場合に、これらが結合されて閉じられた状態にある試験容器である。
【0009】
この構成では、極低温での試験を行う場合に、移動手段で外側断熱容器と試験容器を包囲位置関係にして、外側断熱容器の内部空間に極低温の冷媒体を入れるとともに、試験容器の冷媒体流路に冷媒体を流通し試験容器を冷却する。高圧環境下での試験を行う場合には、試験容器として、冷媒体流路を備えた高圧容器を使用する。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、試験容器を包囲する位置と、試験容器を露出する位置とに相対移動可能な外側断熱容器を備えているので、必要に応じて外側断熱容器に適宜の冷媒体を入れることで、外側断熱容器に冷凍機としての機能を持たせることができる。このため、試験容器を外側から冷却して、試験容器内を所望温度の低温環境にすることができる。更に、試験容器は冷媒体流路から流される冷媒体により、温度調整が可能となる。
【0011】
また、試験容器を外側から冷却するので、試験容器内を低温にする試験準備に際しての時間短縮と作業軽減が可能になる。しかも、電気で動作する冷凍機を使用する必要がないので、試験に可燃性ガスを用いる場合でも安全性を確保することに貢献できる。
【0012】
さらに、試験容器の冷却は主に試験容器の冷媒体流路と外側断熱容器内の冷媒体で行えるので、試験容器には所望の試験環境に応じたものを使用でき、前述のように試験容器として高圧容器を用いると、高圧環境下でも所望の低温にして試験が行える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】低歪速度引張試験装置の概略構造とシステムを示す図。
図2】低歪速度引張試験装置の装置本体部を示す一部断面正面図。
図3】外側断熱容器の断面図。
図4】低歪速度引張試験装置の正面図。
図5】昇降架台の平面図。
図6】外側断熱容器の平面図。
図7】昇降架台と外側断熱容器の平面図。
図8】補助板の平面図。
図9】係止部材の斜視図。
図10】係止部材が取り付けられる際の昇降架台の平面図。
図11】本体部材の被係止部に係止部材を係止した状態の一部断面正面図。
図12】露出位置関係にある試験容器と外側断熱容器の正面図。
図13】試験容器の蓋部材の支持高さを説明する説明図。
図14】試験容器の本体部材を降下した状態を示す一部断面正面図。
図15】試験容器の本体部材を上昇させる際の状態を示す一部断面正面図。
図16】包囲位置関係にある試験時の状態を示す一部断面正面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
【0015】
図1に、機械特性試験装置の一例としての低歪速度引張試験装置11(以下、「試験装置」という)の概略構造とシステムを示す。この例では特に、金属材料等の水素適合性の評価を行うため、低温高圧の水素ガス環境下で試験する試験装置を例示する。
【0016】
図1に示すように試験装置11は、試験片12の引張試験を行うための装置本体部13に、外側断熱容器14を付属して構成されている。装置本体部13は、試験片12を中心とした試験片周辺部15を試験容器16内に収納して低温環境下で試験片12の引張試験を行う。外側断熱容器14は、試験容器16を収容可能な大きさの内部空間14aを有し断熱性を備えている。
【0017】
また試験装置11には、外側断熱容器14または試験容器16の少なくとも一方を移動させて、外側断熱容器14が試験容器16を囲む包囲位置関係と、外側断熱容器14と試験容器16を離して試験容器16を露出させる露出位置関係とに、外側断熱容器14と試験容器16の相対移動を行う移動手段17が備えられている。
【0018】
まず、装置本体部13について簡単に説明する。
【0019】
装置本体部13は、下端の基台21から上方に離れた位置に装置本体部13を吊り下げ支持する装置本体固定部22を有している。装置本体固定部22は、支柱23によって適宜高さ支持される。装置本体固定部22より上には、試験片12に引張力を加えるためのアクチュエータ24が設けられており、装置本体固定部22より下には、アクチュエータ24による引張力を試験片12に伝達するプルロッド25が垂設されている。
【0020】
プルロッド25の上部は、装置本体固定部22の下面から下にのびる棒状の吊り部材26の下端に固定された吊り板部27で支えられる。吊り板部27には、プルロッド25を摺動可能なように上端保持部27aが設けられている。また、プルロッド25より上であって、装置本体固定部22と吊り板部27の間には、外部ロードセル28と変位計29が備えられている。外部ロードセル28はプルロッド25にかかる荷重(引っ張り力)を検出するためのもので、主として安全性確保のために設けられている。変位計29は、アクチュエータ24で引っ張られるプルロッド25の変位ストロークを検出するものである。
【0021】
上端保持部27aの下には、図2にも示したように、プルロッド25を内挿する上部保持部30が設けられている。上部保持部30には、プルロッド25に対するシールを行うシール構造(図示せず)が内蔵されている。上部保持部30の下部の下側筒部30aは、適宜の長さに形成され、下端に試験容器16が設けられる。上部保持部30の下側筒部30aの長さは、前述したシール構造を試験容器16から離す機能を有しており、シール構造のシールがいたずらに冷やされないようにしている。
【0022】
試験容器16は、冷媒体流路16aを備えた高圧容器で構成されている。具体的には、試験容器16は本体部材31と蓋部材32を有している。本体部材31には、試験片12とその周辺の部材である前述の試験片周辺部15を収容する収容部31aと、収容部31aに対する試験片周辺部15の出入り口となる開口31bが形成されており、本体部材31は全体として有底筒状、詳しくは有底円筒状である。
【0023】
上端の開口31bの近傍には、外周方向に張り出す大径部31cが形成されており、大径部31cよりも下側の部分は円筒型の円筒部31dであり、円筒部31dの下端は球面状に形成されている。本体部材31は高圧容器であるので、十分な肉厚に形成されており、円筒部31dの外周面には、らせん状の溝が形成されている。この溝が前述した冷媒体流路16aである。
【0024】
冷媒体流路16aの形成位置は、大径部31cより下に適宜下がった位置に設定され、円筒部31dの上端部には冷媒体流路16aのない首部31eが形成されている。この首部31eには、円筒部31dの外周を覆う外装体33が固定される。
【0025】
外装体33は有底円筒状であり、上端部には冷媒体流路16aに冷媒体を導入する導入口33aを有している。また外装体33は、冷媒体流路16aを有する部分の外周面に接する内周面33bを有しており、下端には、冷媒体流路16aを流れた冷媒体を排出する排出口33cが形成されている。排出口33cの先には、可撓性を有するホース34が接続される(図1参照)。
【0026】
蓋部材32は本体部材31の上端の開口31bを塞ぐもので、前述した上部保持部30の下側筒部30aの下端鍔部30bに固定されている。蓋部材32は、本体部材31の開口31bに連通する供給路32aと排出路32bを有している。供給路32aには収容部31a内に送り込む流体が通る。
【0027】
蓋部材32と本体部材31には、図示しないボルトによる結合構造が構成されており、蓋部材32は本体部材31に対して着脱可能である。
【0028】
このように試験容器16は互いに着脱可能な蓋部材32と本体部材31で構成されているので、本体部材31と蓋部材32が互いに結合されて試験が可能な状態にある試験容器16が、前述した包囲位置関係と露出位置関係にある場合の試験容器16となる。
【0029】
プルロッド25の下端には、前述した試験片周辺部15が設けられる。このため試験容器16の蓋部材32は試験片周辺部15と共に吊り下げ支持されることになる。試験片周辺部15は、蓋部材32の下面に垂設された反力台35と、反力台35に固定された一方の試験片取り付け部36と、一方の試験片取り付け部36に対向する他方の試験片取り付け部37と、他方の試験片取り付け部37よりも上方に設けられた内部ロードセル38を有している。
【0030】
試験片周辺部15に備える内部ロードセル38は、試験荷重を測定するためのものであり、試験片12にかかる荷重(引っ張り力)を検出する。この内部ロードセル38には、極低温・高圧環境下においても使用できるものが選定される。
【0031】
試験片12は棒状のものであり、一方の試験片取り付け部36と他方の試験片取り付け部37によって、試験片12は長手方向を鉛直方向に延ばした状態で保持される。
【0032】
図示は省略するが、試験容器16には収容部31a内の圧力を検出する圧力計と、温度を検出する温度計を備えている。
【0033】
前述した試験容器16の蓋部材32の供給路32aには、図1に示したように、高圧水素ガス41と、ヘリウム圧縮機42と、窒素ガス43と、真空ポンプ44が接続され、試験容器16の収容部31a内に水素ガスやヘリウムガス、窒素ガスを選択して送り込めるように構成されている。また、試験容器16の本体部材31の外装体33の導入口33aには、入口側ヒータブロック45を介して液体窒素供給源46が接続されている。外装体33の排出口33cに接続されたホース34の先は、出口側ヒータブロック47を介して窒素ガスを排出する窒素ガス出口(図示せず)に接続されている。入口側ヒータブロック45は、ヒータを備えており、外乱温度振れを調整する機能を有する。出口側ヒータブロック47もヒータを備えており、排出される窒素ガスを室温に近い温度にする機能を有する。
【0034】
また、装置本体部13のアクチュエータ24やその他の必要な部材は制御装置48に接続され、外部ロードセル28、変位計29、試験容器16内の温度を検出する温度計、同じく試験容器16内の圧力を検出する圧力計及び内部ロードセル38は、図1に一点鎖線で示したようにデータ収録装置49に接続される。データ収録装置49は前述した制御装置48と接続されている。制御装置48による制御動作でアクチュエータ24が作動して引張試験が開始されると、通常時においてデータ収録装置49では、変位計29のストローク出力信号と、圧力計の圧力出力信号と、温度計の温度出力信号と、内部ロードセル38の荷重出力信号を入力して、所定のデータ処理を行う。
【0035】
つぎに、外側断熱容器14について説明する。
【0036】
外側断熱容器14は、図3に示したように真空断熱層14bを有する真空断熱容器であり、上面に開口14cを有する有底筒状、詳しくは有底円筒状である。真空断熱層14bには、真空引きするための真空ポンプ51が接続されている(図1参照)。
【0037】
外側断熱容器14の上端には、円環板状の上端板14dを有しており、上端板14dの外周面は外側断熱容器14の外周面と面一であるが、内周面は外側断熱容器14の内周面よりも内側に位置している。つまり、上端板14dは外側断熱容器14の上端において全周にわたって内側に張り出している。
【0038】
前述のように外側断熱容器14は、試験容器16を収容可能な大きさの内部空間14aを有しており、その直径は試験容器16の蓋部材32の直径よりも大きく、高さは本体部材31の全体の高さよりも高いが、これは図4に示したように、試験容器16の外側を外側断熱容器14で囲めるようにするためである。このため、外側断熱容器14の上端板14dの内径は、試験容器16の蓋部材32の直径よりも大きく設定される。
【0039】
外側断熱容器14の底面14eは平らであり、安定して置ける形状である。基台21の上面における外側断熱容器14を置く位置には、載置台52が設けられている。載置台52は、外側断熱容器14の底面14eを受ける凹所52aを有しており、凹所52aの外周縁には逆円錐状の傾斜面52bが形成されている。
【0040】
また外側断熱容器14には、内部空間14aに対して冷媒体を導入する導入路53が設けられている(図1参照)。導入路53は、冷媒体46と入口側ヒータブロック45の間から分岐して延びている。
【0041】
外側断熱容器14の上端面(上端板14d)の内径は、試験容器16の外径よりも大きいので、外側断熱容器14の上面における試験容器16との間の空間を塞ぐため、図4に示したように、外側断熱容器14の内部空間14aを閉じる着脱可能な断熱蓋54を備えている。断熱蓋54は、例えば厚手のウレタンフォームで構成される。断熱蓋54の形状は、外側断熱容器14と試験容器16の間の空間と同じ円環状をなす厚板状であり、この形状を周方向に複数に分割した形の部材からなる。断熱蓋54には、試験容器16の底の排出口33cから延びる前述のホース34などの必要な部材の存在を許容する適宜の必要な切り欠きなどが形成される。
【0042】
つづいて、移動手段17について説明する。
【0043】
移動手段17は、外側断熱容器14と本体部材31を上下動させるものである。移動手段17は、図4に示したように、前述した支柱23に沿って上下動する一対のスライダ61と、スライダ61同士の間に保持された昇降架台62と、スライダ61を駆動するためのモータ63や、支柱23と平行に立設されてモータ63の回転に伴って回転するねじ軸64などで構成されている。
【0044】
スライダ61はねじ軸64の回転に従って、あらかじめ設定された所定の範囲を支柱23に沿って上昇し、また降下するものである。前述したモータ63や、昇降位置を検出する位置センサ(図示せず)、操作スイッチ(図示せず)などの必要な部材は制御部(図示せず)に接続されており、モータ63は、操作スイッチからの入力に従って制御部によって駆動制御される。
【0045】
スライダ61における支柱23間に対応する内側位置には垂下片61aが設けられ、垂下片61aの下端に昇降架台62が固定されている。垂下片61aの高さは、昇降架台62の上面を試験容器16の上端部に対応する位置まで上昇させたときに、吊り板部27より上の部分との干渉を回避する高さである。
【0046】
昇降架台62の形状は、直方体枠状である。つまり、直方体を構成するすべての辺に対応する位置に棒状体、具体的にはアングル材62aの角を並べた形態であり、すべての面に方形状の窓部62bが形成されている。上下2面の窓部62bの大きさは互いに同じであり、その他4つの側面の窓部62bの大きさは互いに同じである。
【0047】
上下2面の窓部62bの大きさは、外側断熱容器14の外周面の直径よりもわずかに大きい正方形である。
【0048】
このような昇降架台62の上面には、図5に示したように2枚の載置板65が固定されている。2枚の載置板65は、互いに同一形状であり、正方形の窓部62bにおける一つの対角線上の直角の角部を、内側に張り出させて平面視4分の1円弧の曲線にするものである。つまり、一対の載置板65は、組み合わされた状態で昇降架台62の上面に固定されたとき、昇降架台62の上面の正方形の枠に対応する形状の2つの直角部65aと、内周縁が4分の1円弧の曲線となる略三角形状の張り出し部65bを有している。換言すれば、2枚の載置板65はそれぞれ、直角部65aと張り出し部65bを1つずつ有している。
【0049】
張り出し部65bの内周の曲線は同径の円弧であり、互いに対向する張り出し部65bの曲線同士の間の距離(内径)は、外側断熱容器14の外周面の直径よりもわずかに大きい。
【0050】
2枚の載置板65は、両端部と、昇降架台62の上面の角部に対応する部分と、角部に対応する部分同士の中間部がボルト66で固定されている。昇降架台62の上面におけるボルト66を固定する部分の下には、適宜厚の板状の介装材67が一体固定されており、この介装材67にボルト固定のためのねじ穴(図示せず)が形成されている。介装材67の存在により、載置板65の特に張り出し部65bは介装材67がある部分とは異なり、昇降架台62の上面に接することなく、浮くことになる。
【0051】
また載置板65における張り出し部65bの内周の曲線よりも大径の円周上には、ボルト66で固定する部位の両側位置を含んで複数のねじ穴65cが形成されている。
【0052】
前述のように載置板65の張り出し部65bの内径は、外側断熱容器14の外周面の直径よりもわずかに大きいので、昇降架台62は外側断熱容器14を置いた状態で上下動させると、外側断熱容器14と非接触で外側断熱容器14のある部分を昇降可能である。
【0053】
このため、外側断熱容器14の上端面、つまり上端板14dの上面には、図6に示したように着脱可能な2枚の鍔板68が備えられる。鍔板68は4分の1円弧の湾曲した板状に形成されており、鍔板68の外径は、外側断熱容器14の外周の直径や、載置板65の張り出し部65bの内径よりも大きく設定されている。鍔板68には、上端板14dに対するボルト止めのための複数の貫通穴68aが円弧状に配設されている。図6中、68bは、載置板65を固定しているボルト66との干渉を防ぐ切り欠きである。
【0054】
図7は、鍔板68を固定した外側断熱容器14を昇降架台62の内側、つまり上下両面の窓部62bに収めた状態の平面図である。この図に示すように、昇降架台62の載置板65より上に外側断熱容器14の鍔板68を位置させると、昇降架台62を上昇させたときに鍔板68が載置板65の張り出し部65bの内周部分に引っかかり、外側断熱容器14を上昇させることができることになる。
【0055】
昇降架台62によって試験容器16の本体部材31を昇降させるため、本体部材31と移動手段17の少なくとも一方に、本体部材31と移動手段17の結合及び分離を可能とする接続機構が設けられる。その接続機構の一部として、昇降架台62の載置板65の上には、図8に示したような2枚一組の補助板69が着脱可能に固定され、補助板69の上には図9に示したような係止部材71が固定される。一方、試験容器16の本体部材31には、係止部材71が係止する被係止部72が形成されている。
【0056】
具体的に説明すると、補助板69は、外側断熱容器14よりも小径である本体部材31に合わせて昇降架台62の上面の中央部分の開口を小さくするためのものであり、2枚の補助板69は互いに同一形状である。
【0057】
補助板69は半円弧形をなす板状で、外径は昇降架台62に収まる大きさであり、内径は本体部材31の大径部31cの外径よりもわずかに大きく設定されている。補助板69の外周部であって、前述した昇降架台62の載置板65のねじ穴65cに対応する位置には、載置板65に対してボルト固定するための貫通穴69aが複数形成されている。また、載置板65を固定しているボルト66に対応する部位には、切り欠き69bが形成されている。
【0058】
補助板69における係止部材71を固定する部位には、係止部材71を固定するための一組のねじ穴69cとルーズホール69dが形成されている。係止部材71を係止する部位は、図10に示したように、平面視正方形をなす昇降架台62の上面の中央Pを中心として、たてよこから所定角度α回転した位置の、等間隔の4か所である。係止部材71を固定するねじ穴69cは三角形を描くように3個配設され、それらで囲まれる中央部に前述した1個のルーズホール69dが形成されている。
【0059】
係止部材71は、図9に示したように、補助板69の上面に固定される固定板73と、固定板73の上に延びる直方体箱状の起立支持部74と、起立支持部74内に吊り下げられる係止片75を有している。固定板73は、補助板69に形成したねじ穴69cに対応する貫通穴73aを有し、3つの貫通穴73aに囲まれる部位に起立支持部74が形成されるとともに、それらの中央部に平面視円形の穴かなる切り欠き73bが形成されている。切り欠き73bの位置は、補助板69のねじ穴69cに対応する位置である。
【0060】
起立支持部74は上端面に水平な天板74aを有し、4つの側面のうち1つの側面に開口面74bを有している。天板74aには、支持軸76の上端部がナット77で挟み付けられて固定されている。支持軸76における起立支持部74内に位置する部位に、前述の係止片75が保持される。係止片75は、水平部78と垂直部79を有して直角をなし、垂直部79は、起立支持部74の開口面74bよりも外側に位置している。係止片75の両側の三角形をなす部分は、水平部78と垂直部79の角度を保つ補強垂れ壁75aである。また水平部78の上面の中央には、内部に支持軸76が通る管体部75bが形成されている。
【0061】
支持軸76における水平部78より下の部位には、係止片75を上方に付勢するためのばね81が挿嵌して保持されている。平面視における支持軸76の固定位置は、固定板73の切り欠き73bと、補助板69のルーズホール69dに対応する位置である。
【0062】
係止片75の垂直部79の下部には、それよりも上側部分よりも両側に張り出す横長の長方形の係止板部79aが形成されている。係止板部79aは、両側におけるボルト挿通用の挿通穴79bと、これらの間における円形の切り欠き穴79cを2個ずつ有している。
【0063】
本体部材31に形成される被係止部72は、図11に示したように、本体部材31の大径部31cにおける外周面の等間隔の4か所に形成されている。被係止部72は、横長の長方形板材からなり、係止部材71における係止片75の係止板部79aと同等の大きさであり、大径部31cの側面に対してボルト85で固定されている。被係止部72のボルト85よりも横方向の外側には、ねじ穴72aを有している。なお図11において、被係止部72は、便宜上、4個のうちの一つを正面に向けて描いてある。
【0064】
被係止部72を固定するボルト85は、前述した係止板部79aの切り欠き穴79cに対応する位置に設けられ、切り欠き穴79cによって干渉が防止される。またねじ穴72aは、係止板部79aの挿通穴79bに対応する位置に形成される。
【0065】
移動手段17における昇降架台62の昇降位置は次のように設定される。
【0066】
試験容器16内の試験片周辺部15に対しては試験片12を着脱する必要があるため、まず、露出位置関係にある試験容器16及び外側断熱容器14と、この位置関係から試験容器16の本体部材31を降下する位置との関連で説明する。
【0067】
図12は、露出位置関係にある試験容器16及び外側断熱容器14の要部の正面図である。すなわち、試験容器16は、本体部材31を蓋部材32に結合した状態において、その下端が載置台52の上に置かれた外側断熱容器14の上方に、適宜の間隔をあけて位置する高さに支持されている。
【0068】
このような露出位置関係にある試験容器16の本体部材31を蓋部材32から分離する昇降架台62は、試験片周辺部15を露出させる位置まで移動可能である。試験片周辺部15の露出は、試験片12の着脱が行えればたりる。つまり、本体部材31を徒に降下させる必要はない。このため、図13の(a)に示したように、試験片周辺部15の下端と本体部材31の上端位置との間に少しの隙間ができる程度の降下でよい。なお図13において、被係止部72は、便宜上、4個のうちの一つを正面に向けて描いてある。
【0069】
試験片12の着脱のために本体部材31を降下させた位置を外側断熱容器14との関係、換言すれば試験装置11における高さで説明すると、本体部材31を降下して試験片周辺部15を露出させたときの、外側断熱容器14の下端である底面14eを基準とする本体部材31の上端位置の高さH1(図13の(a)参照)は、外側断熱容器14の高さH2に本体部材31の高さH3を加算した高さH4よりも低く設定される(図13の(b)参照)。つまり、載置台52の上に置かれた外側断熱容器14の上方で本体部材31を降下させて試験片周辺部15を露出させたときに、本体部材31の下側部分が外側断熱容器14の内部に収まることになる。外側断熱容器14の内部に収まる本体部材31の範囲は、昇降架台62と外側断熱容器14の上端との関係で、適宜設定される。
【0070】
移動手段17の下限位置は、図3に示したように、昇降架台62の上端面、つまり載置板65の高さを、載置台52に置いた外側断熱容器14の上端である鍔板68よりも若干下にする位置である。換言すれば、下限位置の昇降架台62の載置板65と、これよりも上方に位置する、載置台52に置いた外側断熱容器14の鍔板68との間にわずかな隙間Sができるように設定される。
【0071】
移動手段17の上限位置は、図1図4に示したように、外側断熱容器14を包囲位置関係にする位置である。試験片周辺部15を露出させていた本体部材31を上昇させて蓋部材32に接合する位置は、移動手段17の上限位置よりも若干低い。
【0072】
以上のように構成された試験装置11では、極低温環境下での試験時に、外側断熱容器14で試験容器16を囲むとともに外側断熱容器14内に冷媒体をためて、試験容器16への入熱の抑制と試験容器16の冷却を行いながら試験を行う一方、極低温よりも高い低温環境下での試験時に、外側断熱容器14で試験容器16を囲んで試験容器16への入熱の抑制を行いながら引っ張り試験を行い、または外側断熱容器14を試験容器16から離して試験容器16を露出させた状態で試験を行うという試験方法(機械特性試験方法)が実行される。
【0073】
極低温環境下での試験は次のように行う。
【0074】
まず、図14に示したように、外側断熱容器14を載置台52の上に置いた状態で、移動手段17を駆動して試験容器16の本体部材31を降下させる。このとき、移動手段17の昇降架台62の上に補助板69と係止部材71を固定して本体部材31の被係止部72との接合を行う。なお図14において、被係止部72は、便宜上、4個のうちの一つを正面に向けて描いてある。図15においても同じである。
【0075】
本体部材31を下げて試験片周辺部15を露出させたあと、試験片12の取り付けを行い、補助板69と係止部材71を備えた移動手段17を用いて本体部材31を蓋部材32に対して接合して、図15に示したように本体部材31の収容部31aを閉じる。
【0076】
つぎに、試験容器16内の排気を行う。排気には真空ポンプ44を駆動させる(図1参照)。つづいて、試験容器16内にヘリウムを供給し、リークチェックを行ってからヘリウムガスを排気する。排気はバルブを開放するだけでよい。
【0077】
このあと、試験容器16内に水素ガスを供給する。水素ガスの供給で所望圧力まで加圧する。
【0078】
一方で、外側断熱容器14の真空断熱層14bの真空引きを行い、所定圧力まで圧力低下を行ってから外側断熱容器14を上昇させる。
【0079】
すなわち、補助板69と係止部材71を外してから、昇降架台62を下限位置まで下げる。すると、図3に示したように昇降架台62の内側に外側断熱容器14が嵌った状態になるので、外側断熱容器14の上面に鍔板68を固定する。この状態で、移動手段17を駆動して昇降架台62を上昇させると、鍔板68が載置板65に引っかけられて、外側断熱容器14は上昇する。
【0080】
図16に示したように外側断熱容器14を試験容器16に対して包囲位置関係にしてから、移動手段17を停止する。
【0081】
つぎに外側断熱容器14の内部空間14aに対して液体窒素を供給する。液体窒素の量は、冷却を行う期間を考慮して適宜設定される。液体窒素の充填後、断熱蓋54を用いて外側断熱容器14の上面の開口を塞ぐ。冷却を行う冷媒体は、液体窒素に限定されず、例えば液体ヘリウムといった冷媒体でも良い。
【0082】
つづいて、冷媒体流路16aから流される冷媒体により温度制御を行い、試験容器16に、水素ガスを供給し、液体窒素による冷却で試験容器16内の水素ガス圧が低下したら水素ガスを追加供給する。所定の冷却温度に達して温度が安定し、試験容器16内の圧力が所定の圧力に達してから、気密試験を行う。所定の温度とは、-150℃以上である。所定の圧力とは100Mpa以下である。
【0083】
気密状態であることを確認してから、低歪低速度引張試験を開始する。この試験の歪速度条件は、ピストン速度(mm/s)により決定され、サーボモータ回転数で設定される。低歪低速度引張試験は、制御装置48により試験片12の破断を検知するまで行われ、自動的に終了する。
【0084】
このあとは、試験容器16内の水素ガスを排気して圧力を下げてガスパージするなどの処理を行って、冷媒体流路16aからの冷却用の液体窒素の供給を停止し、室温に戻ってから外側断熱容器14を下げて露出位置関係にしてから、試験片12を取り外す。
【0085】
極低温よりも高い低温環境下での試験は次のように行う。
【0086】
試験容器16を外側断熱容器14で囲むだけで試験を行う場合には、前述した工程における外側断熱容器14に対する液体窒素の供給を省略する。
【0087】
試験容器16を外側断熱容器14で包囲せずに試験を行う場合には、外側断熱容器14を載置台52の上に置いた状態のまま、外側断熱容器14に対する液体窒素の供給もせずに、試験を行う。
【0088】
試験結果の評価は、収録データである内部ロードセル出力数値(kN)、及び変位ストローク出力数値(mm)から、以下の方法で行う。
応力(MPa)=内部ロードセル出力数値/試験体平行部所期断面積
歪率(%)=(変位ストローク/試験体平行部初期長さ)×100
本試験装置の最大試験力は、20kNとする。
【0089】
以上のように、外側断熱容器14を選択的に利用して、極低温環境下でも、それより高い温度の低温環境下でも試験が行える。すなわち、包囲位置関係にある外側断熱容器14は、試験容器16を外界から隔絶して、試験容器16を冷媒体流路16aから流される冷媒体により外側から冷却する低温空間を形成する。つまり、外側断熱容器14によって試験容器16に対する入熱を抑制しながら試験容器16を冷媒体流路16aから流される冷媒体により冷却する。
【0090】
極低温よりも高い温度の低温環境下での試験は、試験容器16に対する入熱を抑制して冷媒体流路16aから流される冷媒体により試験容器16を冷却して、また試験容器16に対する入熱の抑制すらせずに行われる。
【0091】
したがって、極低温を含む所望の低温環境下で試験が行える。
【0092】
また、試験容器16内の極低温環境の作出は、外側断熱容器14とその内部に供給した冷媒体及び冷媒体流路16aから流される冷媒体で行うので、試験容器16には前述のように高圧容器を使用できる。このため、極低温で高圧環境下でも試験が可能である。
【0093】
極低温下での試験に際しては、試験容器内を所望の低温にする準備が必要であるが、準備として試験容器16の冷却は外側断熱容器14を移動させて冷媒体を供給するだけで行える。このため作業負担は軽い。また、外側断熱容器14と冷媒体をセットした後は、無人にしても冷却が可能であるため、作業員を拘束する時間を短くできる。しかも電力が不要であるので、前述のように水素ガスのような可燃性ガスを用いる場合でも、安全性の確保に貢献できる。更に、冷媒体が液体窒素である場合は、安全性に加え、検査装置の小型化、運用コストの低減が可能となる。
【0094】
さらに、包囲位置関係と露出位置関係に切り替わる試験容器16と外側断熱容器14であるが、外側断熱容器14は上面に開口14cを有する有底筒状であり、移動手段17により上下動するものであるので、両位置関係の切り替えが比較的簡素な構成で実現できる。
【0095】
これに関して、試験容器16については本体部材31と蓋部材32を有し、蓋部材32が試験片周辺部15と共に吊り下げ支持され、移動手段17との間に相互間の結合及び分離を可能とする接続機構が設けられるとともに、移動手段17は試験片周辺部15を露出させる位置に本体部材31を移動する構成であるので、試験片12の取り付けや取り外しのための本体部材31の移動も比較的簡素な構成で実現できる。
【0096】
しかも、外側断熱容器14と本体部材31の上下動が、ひとつの移動手段17で行えるので、移動のための構成を簡素にすることができ、作業性もよい。
【0097】
移動手段17について、外側断熱容器14との関係では、図3に示したように、外側断熱容器14と昇降架台62とが係止する前の段階で外側断熱容器14の鍔板68と昇降架台62の載置板65との間に前述した隙間Sができるように設定している。また試験容器16の本体部材31との関係では、係止部材71にばね81を備えている。これらの構成を採用しているので、昇降に際して部材同士が接触するときの衝撃を緩和できる。
【0098】
移動手段17の構成について言えば、特に、本体部材31を降下して試験片周辺部15を露出させたときの、外側断熱容器14の下端を基準とする本体部材31の上端位置の高さを、外側断熱容器14の高さに本体部材31の高さを加算した高さよりも低く設定しているので、試験装置11の全体の高さを低く抑えることができる。このため、試験片12の着脱などの作業が行いにくくなることを抑制できる。
【0099】
外側断熱容器14による冷却機能について、外側断熱容器14が真空断熱層14bを有する真空断熱容器であるので、高い断熱性・遮熱性が得られる。しかも、真空ポンプ51を接続して試験に際して真空引きをするように構成しているので、効果は確実に得られる。
【0100】
また外側断熱容器14には、内部空間14aに対して冷媒体を導入する導入路53が設けられているので、必要に応じて所望量の冷媒体を取り入れることができ、所望の冷却機能が得られる、冷凍機を付属するのと同様の冷却が行える。
【0101】
冷却機能については、外側断熱容器14の上端面において試験容器16との間に空間ができる構成ではあるが、着脱可能な断熱蓋54を備えているので、冷却機能を良好に発揮させることができる。
【0102】
以上の構成はこの発明を実施するための一形態の構成であって、この発明は前述の構成のみに限定されるものではなく、その他の構成を採用することができる。
【0103】
例えば、包囲位置関係と露出位置関係に切り替える態様は、外側断熱容器14ではなく、試験容器16を移動させるものでもよく、外側断熱容器14と試験容器16の双方を移動させるものであってもよい。
【0104】
試験は、水素ガス環境下ではなく、ヘリウムガスなど他のガス環境下で行ってもよい。また試験は、引張試験以外の試験であってもよい。また、外側断熱容器14の冷媒体と試験容器16の冷媒体流路16aに流通する冷媒体は同一でなくても良い。
【符号の説明】
【0105】
11…低歪速度引張試験装置
12…試験片
14…外側断熱容器
14a…内部空間
14b…真空断熱層
15…試験片周辺部
16…試験容器
16a…冷媒体流路
17…移動手段
31…本体部材
32…蓋部材
53…導入管
54…断熱蓋
69…補助板
71…係止部材
72…被係止部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16