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特許7281458ポリエステルへのポリオレフィンの改善された接着
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】ポリエステルへのポリオレフィンの改善された接着
(51)【国際特許分類】
   C08F 293/00 20060101AFI20230518BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20230518BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20230518BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20230518BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230518BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20230518BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
C08F293/00
C08L23/06
C08L53/00
C08L67/02
B32B27/00 C
B32B27/18 Z
B65D65/40 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020518456
(86)(22)【出願日】2018-10-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 EP2018076561
(87)【国際公開番号】W WO2019063836
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-10-01
(31)【優先権主張番号】1715831.2
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518089805
【氏名又は名称】インターフェイス ポリマーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【弁理士】
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】ケイ クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】スコット ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ウォディントン サイモン
(72)【発明者】
【氏名】モリス ショーン
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-529011(JP,A)
【文献】国際公開第2017/046009(WO,A1)
【文献】特開2017-125177(JP,A)
【文献】特開2001-342256(JP,A)
【文献】国際公開第2012/108534(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 293/00
C08L 23/06
C08L 53/00
C08L 67/02
B32B 27/00
B32B 27/18
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造のブロックコポリマー。
【化1】
(式中、RおよびR1は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、アルキルまたはアリール基を表し、Xは、水素、または分枝状もしくは直鎖状であってもよいC1-C20アルキル基であ、ポリマーBに結合した芳香環置換基は、ポリマーAに結合した芳香環置換基に対してメタ位またはパラ位にあり、ポリマーAは、エチレンのポリマーまたはコポリマーであり、ポリマーBは、酢酸ビニルのポリマーである)
【請求項2】
以下の構造のブロックコポリマーの使用であって、ポリエチレンおよびポリエチレンテレフタレートの共押出層間の接着を改善するための、ポリエチレンまたはポリエチレンテレフタレート中の添加剤としての使用。
【化2】
(式中、RおよびR1は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、アルキルまたはアリール基を表し、Xは、水素、または分枝状もしくは直鎖状であってもよいC1-C20アルキル基であ、ポリマーBに結合した芳香環置換基は、ポリマーAに結合した芳香環置換基に対してメタ位またはパラ位にあり、ポリマーAは、エチレンのポリマーまたはコポリマーであり、ポリマーBは、酢酸ビニル、C1-C9アクリレートエステル、アクリル酸、およびこれらの混合物から選択されるモノマーのポリマーである)
【請求項3】
リエチレンまたはポリエチレンテレフタレート、および0.1質量%~15質量%の以下の構造のブロックコポリマーを含有する組成物
【化3】
(式中、RおよびR1は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、アルキルまたはアリール基を表し、Xは、水素、または分枝状もしくは直鎖状であってもよいC1-C20アルキル基であ、ポリマーBに結合した芳香環置換基は、ポリマーAに結合した芳香環置換基に対してメタ位またはパラ位にあり、ポリマーAは、エチレンのポリマーまたはコポリマーであり、ポリマーBは、酢酸ビニル、C1-C9アクリレートエステル、アクリル酸、およびこれらの混合物から選択されるモノマーのポリマーである)
【請求項4】
ポリエチレンテレフタレート層に結合したポリエチレン層を含む積層体であって、前記ポリエチレン層および前記ポリエチレンテレフタレート層のうちの少なくとも1つの層が、以下の構造のブロックコポリマーを含有する、積層体。
【化4】
(式中、RおよびR1は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、アルキルまたはアリール基を表し、Xは、水素、または分枝状もしくは直鎖状であってもよいC1-C20アルキル基であ、ポリマーBに結合した芳香環置換基は、ポリマーAに結合した芳香環置換基に対してメタ位またはパラ位にあり、ポリマーAは、エチレンのポリマーまたはコポリマーであり、ポリマーBは、酢酸ビニル、C1-C9アクリレートエステル、アクリル酸、およびこれらの混合物から選択されるモノマーのポリマーである)
【請求項5】
ポリエチレンテレフタレート層に結合したポリエチレン層および前記ポリエチレン層に結合した紙層を含む積層体であって、前記ポリエチレン層および前記ポリエチレンテレフタレート層のうちの少なくとも1つの層が、以下の構造のブロックコポリマーを含有する、積層体
【化5】
(式中、RおよびR1は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、アルキルまたはアリール基を表し、Xは、水素、または分枝状もしくは直鎖状であってもよいC1-C20アルキル基であ、ポリマーBに結合した芳香環置換基は、ポリマーAに結合した芳香環置換基に対してメタ位またはパラ位にあり、ポリマーAは、エチレンのポリマーまたはコポリマーであり、ポリマーBは、酢酸ビニル、C1-C9アクリレートエステル、アクリル酸、およびこれらの混合物から選択されるモノマーのポリマーである)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のブロックコポリマー、ならびにポリエステルとポリオレフィンとの間の接着、特にポリエチレンとポリエチレンテレフタレートとの間の接着、とりわけ、無菌包装を製造するために典型的に紙層と組み合わせられる包装材料として使用され得るポリエチレンとポリエチレンテレフタレートの共押出フィルムの間の接着を改善することにおけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
包装材料の必要条件は様々であり、包装ライン上での要求に応じて機能しなければならず、貯蔵、輸送および店頭での展示に耐えるように堅牢かつ軽量でなければならない。さらに、該包装材料から形成されるパッケージは、水分および蒸気などに対するバリア特性を有し、印刷可能でなければならず、さらには、包装された材料を使用できるように容易に開けられなければならない。プラスチックフィルム、紙およびカードは、包装によく使用される材料であり、特定のフィルムは、特定の特性(例えば、蒸気バリアなど)を有するため、他の所望の特性(密閉性など)を有しなくてもよい。したがって、所望の組み合わせの特性を得るために、2つ以上の異なる材料の層を含む包装材料を用いることが普通である。材料の使用中に層が剥離するのを防ぐために、異なる層が互いに良好な接着を有することが重要である。
Du Pont社テクニカルフェローのI Hwa Lee著の「Bonding 『Unjoinable』 Polymers」という題の白書は、包装材料の開発において生じる困難を示している。
【0003】
その白書は、図2で、ポリエチレン(LDPEおよびHDPE)ならびにポリエステルが、互いに接着しにくいことを示している。それ以外は、ポリエチレンおよびポリエチレンテレフタレートは望ましい特性を有するため、Dow製のAmplify TY Functional Polymersなどの結合層を用いて2つの材料を一緒に結合させることが慣行となっている。
包装で使用する異なるポリマー層は、互いに相容でないことがあり、これは、包装材料を再利用できない、または特別な再利用技術を必要とすることを意味する。包装材料中の層の数を減らすと、再利用を容易にすることができ、本発明が、以前は再利用できなかったポリエチレンテレフタレートとポリエチレンの積層体を再利用できるようにすることも見出した。
PCT出願公開の国際特許第2017/046009号において、本発明者らは、以下の一般構造の2セグメント化ブロックコポリマーを記載している。
【0004】
【化1】
(式中、RおよびR1は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、アルキルまたはアリール基を表し、Xは、水素、または分枝状もしくは直鎖状であってもよいC1-C20アルキル基であってもよく、ポリマーBに結合した芳香環置換基は、ポリマーAに結合した芳香環置換基に対してメタ位またはパラ位にあり、ポリマーAは、メタロセン触媒作用によって形成された非極性ポリマー(またはコポリマー)であり、ポリマーBは、極性モノマー(コポリマーセグメントを形成するように非極性ポリマーを共に用いてもよい)のラジカル触媒作用によって形成されるポリマーである)
これらの材料は、ポリマーの相容性を改善し、かつ/またはポリマーに特定の表面効果を与える(例えば、包装フィルムに有用であり得る印刷可能または塗装可能な表面をポリオレフィン材料にもたらす)、ポリマー系、特にポリマー混合物への添加剤として有用であると考えられている。
【0005】
ポリエチレンフィルムは、優れた水分バリア特性を有することが知られており、この特性によって食品および飲料の包装に特に有用となっている。しかしながら、ポリエチレンフィルムは、ガスバリア特性が不満足である。したがって、ポリエチレンフィルムを、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルムに積層することが知られており、これによって積層フィルムにガスバリア特性が付与される。しかしながら、ポリエチレンフィルムとポリエステルフィルムは共押出法では十分に結合しないので、別々にフィルムを製造し、2つのフィルムの間に接着剤またはDow Chemicals製のAmplify TY4351および4751などのPET結合層を含ませて、特に包装材料として使用できるような十分な強度で確実に互いに結合させる必要があった。典型的な接着剤は、アクリル酸または無水マレイン酸などの極性モノマーをポリマー主鎖にグラフト化したグラフトコポリマーを含む。したがって、材料は三層材料であり、ポリエチレンフィルムとポリエステルフィルムの共押出によって製造できない。共押出法は、2種以上の材料を同時に押し出し、互いに接触させる技術であり、溶融した際の材料の接着特性によって結合させる。
【0006】
米国特許第9,670,383号は、紙にプレコーティングしておいたポリエチレン表面上にポリエチレンテレフタレートを直接コーティングするプロセスによって作製される紙基材/ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレートの三層積層体を開示している。ポリエチレン層とポリエチレンテレフタレート層との間には接着剤層を介在させない。しかしながら、このプロセスは、既に紙フィルムの上に形成しておいたポリエチレン表面上にポリエチレンテレフタレートを押し出すことを含む、特定の溶融加工条件の使用を必要とし、そのため2種のポリマーを共押出しない。加えて、ポリエチレンフィルムの表面を、例えば、コロナ放電によって処理し、表面の接着特性を改善させる。さらに、特別な機器が必要とされる。
【0007】
多くのプラスチック積層体、特に積層フィルムは、材料層を押し出し、溶融状態で接合させ、それらの溶融状態の接着特性により結合させる共押出法によって製造される。これは、経済的かつ効率的なプロセスであるが、溶融押出法によってポリエチレンとポリエチレンテレフタレートとの間に十分に強力な結合を築くことはこれまで不可能だった。現在、本発明者らは、これらの材料のうちの1つ以上に特定のブロックコポリマーを加えると、共押出したポリエチレン層とポリエチレンテレフタレート層との間に改善された接着性を実現できることを発見した。得られる積層フィルムを使用して、ポリエチレン層とポリエチレンテレフタレート層との間に結合層を必要とせずに、多層材料中に所望の特性を付与することができる。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明は、以下の構造のブロックコポリマーを提供する。
【化2】
(式中、RおよびR1は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、アルキルまたはアリール基を表し、Xは、水素、または分枝状もしくは直鎖状であってもよいC1-C20アルキル基であってもよく、ポリマーBに結合した芳香環置換基は、ポリマーAに結合した芳香環置換基に対してメタ位またはパラ位にあり、ポリマーAは、エチレンのポリマー(またはコポリマー)であり、ポリマーBは、酢酸ビニルのポリマーである)
本発明は、以下の構造のブロックコポリマーの使用であって、好ましくは共押出されたポリエチレンおよびポリエチレンテレフタレート層間の接着を改善するための、ポリエチレンまたはポリエチレンテレフタレート中の添加剤としての使用をさらに提供する。
【0009】
【化3】
(式中、RおよびR1は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、アルキルまたはアリール基を表し、Xは、水素、または分枝状もしくは直鎖状であってもよいC1-C20アルキル基であってもよく、ポリマーBに結合した芳香環置換基は、ポリマーAに結合した芳香環置換基に対してメタ位またはパラ位にあり、ポリマーAは、エチレンのポリマー(またはコポリマー)であり、ポリマーBは、酢酸ビニル、C1-C9アクリレートエステル、およびアクリル酸、ならびにこれらの混合物から選択されるモノマーのポリマーである)
【0010】
ブロックコポリマーは、ポリエチレン層、ポリエチレンテレフタレート層または両方に含めることができる。
別の実施形態では、本発明は、0.1質量%~15質量%の以下の構造のブロックコポリマーを含有するポリエチレンを提供する。
【0011】
【化4】
(式中、RおよびR1は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、アルキルまたはアリール基を表し、Xは、水素、または分枝状もしくは直鎖状であってもよいC1-C20アルキル基であってもよく、ポリマーBに結合した芳香環置換基は、ポリマーAに結合した芳香環置換基に対してメタ位またはパラ位にあり、ポリマーAは、エチレンのポリマー(またはコポリマー)であり、ポリマーBは、酢酸ビニル、C1-C9アクリレートエステル、およびアクリル酸、ならびにこれらの混合物から選択されるモノマーのポリマーである)
別の実施形態では、本発明は、0.1質量%~15質量%の以下の構造のブロックコポリマーを含有するポリエチレンテレフタレートを提供する。
【0012】
【化5】
(式中、RおよびR1は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、アルキルまたはアリール基を表し、Xは、水素、または分枝状もしくは直鎖状であってもよいC1-C20アルキル基であってもよく、ポリマーBに結合した芳香環置換基は、ポリマーAに結合した芳香環置換基に対してメタ位またはパラ位にあり、ポリマーAは、エチレンのポリマー(またはコポリマー)であり、ポリマーBは、酢酸ビニル、C1-C9アクリレートエステル、およびアクリル酸、ならびにこれらの混合物から選択されるモノマーのポリマーである)
【0013】
ブロックコポリマーは、ポリエチレンまたはポリエチレンテレフタレート中のブロックコポリマーのマスターバッチとして、調合者に提供され得る。例えば、マスターバッチは、30%~70%のブロックコポリマーを含有してもよく、好ましいマスターバッチは、40%~60%のブロックコポリマーを含有し、バルクポリマーに取り入れる調合者またはフィルム製造者に供給することができる。本発明はまた、このようなマスターバッチも含み、これはペレットとして提供され得る。
さらなる実施形態では、本発明は、ポリエチレンテレフタレート層に結合したポリエチレン層を含む積層体であって、少なくとも1つの層が、以下の構造のブロックコポリマーを含有する積層体を提供する。
【0014】
【化6】
(式中、RおよびR1は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、アルキルまたはアリール基を表し、Xは、水素、または分枝状もしくは直鎖状であってもよいC1-C20アルキル基であってもよく、ポリマーBに結合した芳香環置換基は、ポリマーAに結合した芳香環置換基に対してメタ位またはパラ位にあり、ポリマーAは、エチレンのポリマー(またはコポリマー)であり、ポリマーBは、酢酸ビニル、C1-C9アクリレートエステル、およびアクリル酸、ならびにこれらの混合物から選択されるモノマーのポリマーである)
さらなる実施形態において、本発明は、ポリエチレンテレフタレート層に結合したポリエチレン層に結合した紙層を含む積層体であって、ポリエチレン層およびポリエチレンテレフタレート層のうちの少なくとも一層が、以下の構造のブロックコポリマーを含有する、積層体を提供する。
【0015】
【化7】
(式中、RおよびR1は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、アルキルまたはアリール基を表し、Xは、水素、または分枝状もしくは直鎖状であってもよいC1-C20アルキル基であってもよく、ポリマーBに結合した芳香環置換基は、ポリマーAに結合した芳香環置換基に対してメタ位またはパラ位にあり、ポリマーAは、エチレンのポリマー(またはコポリマー)であり、ポリマーBは、酢酸ビニル、C1-C9アクリレートエステル、およびアクリル酸、ならびにこれらの混合物から選択されるモノマーのポリマーである)
【0016】
本発明はまた、包装材料、特に食品および飲料用の無菌包装としての該積層体の使用も提供する。
さらなる実施形態において、本発明は、共押出されたポリエチレンおよびポリエチレンテレフタレート層を含むポリエチレンおよびポリエチレンテレフタレートの積層体の製造方法であって、少なくとも1つの層が、以下の構造のブロックコポリマーを含有する、製造方法を提供する。
【0017】
【化8】
(式中、RおよびR1は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、アルキルまたはアリール基を表し、Xは、水素、または分枝状もしくは直鎖状であってもよいC1-C20アルキル基であってもよく、ポリマーBに結合した芳香環置換基は、ポリマーAに結合した芳香環置換基に対してメタ位またはパラ位にあり、ポリマーAは、エチレンのポリマー(またはコポリマー)であり、ポリマーBは、酢酸ビニル、C1-C9アクリレートエステル、およびアクリル酸、ならびにこれらの混合物から選択されるモノマーのポリマーである)
【0018】
好ましくは、各RおよびR1基は、独立して、1~4個の炭素原子を有するアルキル基を表す。より好ましくは、RおよびR1は、同一であり、最も好ましくは両方ともメチルである。
好ましくは、ポリマーBに結合した芳香環置換基は、ポリマーAに結合した芳香環置換基に対してメタ位にある。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のブロックコポリマーは、
a)第1の工程では、好ましくはメタロセン触媒系の存在下で、エチレンと、任意選択の、エチレンより高級な1種以上の1-アルケンコモノマー、例えばC2-C8オレフィン、特にヘキセンおよびオクテンと重合させてポリマーAを形成し、該ポリマーAは、1-アルケンコモノマーを起源とするペンダント状アルキル基を任意選択で有するエチレン構造単位からなる鎖であり、この反応は、反応容器中で、式(I)の化合物
【0020】
【化9】
(I)
(式中、R、R1およびXは、前述の通りである。)
の存在下で実施され、反応の経過中、化合物(I)は、末端がポリマーAに組み込まれ、結果として式(II)の末端が不飽和の中間体
【0021】
【化10】
を形成し、
b)任意選択の第2の工程において、第1の工程の反応混合物から中間体(II)を回収し、
c)第3の工程において、後続するラジカル重合反応中で、中間体(II)をその末端の二重結合を、酢酸ビニル、C1-C9アクリレートエステル、およびアクリル酸、ならびにこれらの混合物から選択されるモノマーと反応させてポリマーBを形成する
ことによって調製することができる。
【0022】
任意に、ポリマーAの特性を制御するために、工程a)を水素圧力下で実施してもよい。
本明細書において、用語「末端」は、ポリマー鎖(またはブロック)との関連で使用される場合、単純に、ポリマー鎖(またはブロック)の末端を指し、対象となる鎖(またはブロック)が、重合反応が終わる終端部であるという任意の追加の機構的要件を伝えるものではない。「末端が(に)」の言及も同様に解釈されるものとする。
【0023】
ポリマーAは、結果として得られるポリマー鎖が、飽和脂肪族炭素原子の配列を中断されないまま残し、1-アルケン残基の残りのアルキル基が、ポリマー鎖からのペンダントの飽和アルキル置換基として含まれるように、任意に、エチレンより高級の1-アルケン由来の単位を主鎖に組み込むポリエチレン構造単位の主鎖を有し得る。
ポリマーAが、共に使用されるポリエチレンまたはポリエチレンテレフタレートと相互作用するように曝露されるように、ポリマーAをポリマーBに末端で結合させることが重要である。そのようなものとして、ポリマーAとポリマーBとの間の連結部は、ポリマーAのポリマー鎖の終端部に位置することが重要である。
このポリマーAおよびポリマーB間の結合の末端位置決めを達成するために、コポリマーを作製するプロセスは、ポリマーAの末端官能基に特異的であるべきである。同様に、ポリマーAに形成された末端官能基が、工業で実用的なラジカル重合条件下で後続のポリマーBの形成ができるように十分に反応性であり、一方で、同時に不要な副反応が有意な程度まで生じるほどの高すぎる反応性でないことが重要である。
【0024】
本発明のブロックコポリマーのブロックAは、好ましくは、他のアルケン-1化合物と共に行ってもよいエチレンのメタロセン触媒重合によって生成され、ブロックAの構造および分子量は、ポリエチレンおよびポリエチレンテレフタレートの性質に応じて調整することができる。しかしながら、本発明者らは、実質的に直鎖状であり、1000~10,000の範囲の数平均分子量(Mn)を有するものを優先する。このようなポリマーは、好ましくは、約1~約3、好ましくは約2の分子量分布Mw/Mnを有する。
ブロックコポリマーのブロックBは、好ましくは、フリーラジカル重合によって製造される。ブロックBは、1000~20,000の範囲、好ましくは3000~6000の範囲の分子量(Mn)を有することが好ましい。このようなポリマーは、好ましくは、1.5~3.5、より好ましくは2~3の範囲の分子量分布(Mw/Mn)を有する。
ブロックBは、酢酸ビニルもしくは1種以上のC1-C9アクリレートエステルもしくはアクリル酸またはこれらの混合物の重合によって調製することができる。メチルアクリレート、ブチルアクリレート、およびヘキシルアクリレートが好ましい。
【0025】
本発明のポリエチレンおよびポリエチレンテレフタレートのヒートシール性積層体は、下塗剤または接着剤を使用せずに形成することができる。そのため、積層体は、残留溶媒などによる臭気問題に悩まされずに済む。したがって、ヒートシール性ポリオレフィン層が原因となる可能性のある問題、例えばオレフィン臭および香料成分の吸着は回避され、優れた芳香保持特性が確保される。その上、ポリエチレンテレフタレート層は、ヒートシール適性を有する。
本発明の積層体は、水蒸気バリア特性およびガスバリア特性においても優れている。その上、ポリエチレンテレフタレート層は、ヒートシール適性を有する。したがって、積層体は、ヒートシール性によって容器などに成形することができ、得られる容器などは、食品および飲料用包装材料に必要とされる長期間貯蔵特性に優れている。
一実施形態において、積層体は、両面にポリエチレンテレフタレート層が付与されたポリエチレン層を含んでもよい。この実施形態では、ポリエチレンが、本発明において使用されるブロックコポリマーを含有してもよい、または両方のポリエチレンテレフタレート層が、ブロックコポリマーを含有してもよい。このような積層体は、包装材料を製造するための紙の積層に特に有用であり、片方のポリエチレンテレフタレート層は、紙への積層体の接着を確保することができ、他方の層は、包装材料を最終的に閉じるためのヒートシール性の面を生成する。したがって、紙/ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレートは、ポリエチレンとポリエチレンテレフタレートとの間に下塗剤または接着剤を使用せずに積層することができる。
【0026】
本発明の別の実施形態では、ポリエチレンを、紙基材の少なくとも片面にコーティングしてもよく、ブロックコポリマーを含有するポリエチレンテレフタレートを、溶融押出積層法によってポリエチレン表面上にコーティングし、ここでも、接着剤などを介在させずに強力な積層体を作製することができる。
本発明で使用されるポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と呼んでもよい)は、ジオール成分としてのエチレングリコールとジカルボン酸成分としてのテレフタル酸との脱水縮合によって形成され、まとめて接続されるエステル結合を有するポリエステルから本質的になる。
本発明で使用するためのポリエチレンテレフタレートは、ホモポリエチレンテレフタレートまたはフタル酸の混合物から形成されるまたはコポリマーであってもよい。ホモポリエチレンテレフタレートは、ジオール成分としてのエチレングリコールとジカルボン酸成分としてのテレフタル酸との重縮合によって形成され、他の任意の共重合成分は明確には含まれない。ポリエチレンテレフタレートは、ポリエチレンテレフタレートの調製中に副生成物として生じる不純物成分を含み得る。
本発明の積層体に使用されるポリエチレンテレフタレートの固有粘度(IV)は、0.72~0.88dL/g、特に0.80~0.83dL/gの範囲であることが好ましい。固有粘度がこの範囲より低い場合、成膜特性は不満足であり得、固有粘度がこの範囲より高い場合は、押し出しが困難になり得る。
本発明で使用されるポリエチレンテレフタレートは、ブロッキング防止剤、静電防止剤、潤滑剤、酸化防止剤、および紫外線吸収剤などの配合剤をフィルム用に取り入れることができる。
【0027】
本発明において使用されるポリエチレンは、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などの任意の市販のポリエチレンであってもよい。特に積層体が、紙基材への積層が容易なため、紙にさらに結合される場合、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、または直鎖状低密度ポリエチレンの使用が好ましい。
ポリエチレン層の厚さは限定されないが、一般的に、10~60μmの厚さが好ましい。
本発明の積層体は、ヒートシール性を有するポリエチレンテレフタレート面を含む。したがって、さらなるポリエチレン層を加えずに、積層体を、互いに対してヒートシール性のポリエチレンテレフタレート面によって所定の形状に成形することが可能である。さらに、ポリエチレンテレフタレートを、紙などの他の基材に結合させることが可能である。多くの包装材料は、アルミニウム箔の層を含有してバリア特性を付与している。本発明は、アルミニウムの代わりにポリエチレンテレフタレートを使用して所望のバリア特性を得ることができ、それによって、さらに包装材料の再利用性も改善すると考えられている。
【0028】
紙基材が含まれる場合、慣習的な紙基材を積層体中に使用してよく、紙容器に従来使用される板紙は全て使用できる。例えば、アイボリーボード、カップストック原紙(cup stock base paper)、マニラボード、ダンボール、および合成紙を使用することができる。使用する原紙またはボードの基本質量は限定されないが、好ましくは、180~500g/m2の範囲である。基本質量がこの範囲より低い場合、得られる容器の機械的強度は、この範囲内の紙を使用して得られる容器より劣る可能性がある。一方、基本質量がこの範囲より高い場合、得られる容器は、重くなり過ぎる可能性があり、その取り扱い性および成形性は低質になり得る。
【0029】
本発明の積層体は、2つもしくは3つのポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート層または紙/ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレートの三層に限定されない。例えば、ポリエチレンは、紙の他面にもコーティングされていてもよい。追加すべき追加の層の選択は、用途に応じて選択してもよい。
本発明を、以下の実施例を参照することによって説明する。
【実施例
【0030】
(実施例1)
使用する材料
固有粘度0.80±0.02、密度(D1505)1.4g/cm3、結晶ピーク融点(D3418)245±5℃、ガラス転移温度(D3418)78±2℃のInforma Venturer製のテレフタル酸、イソフタル酸およびモノエチレングリコールのコポリマーの、ポリエチレンテレフタレートRamapet 180(PETと称する)。
Lyondell Basell製の、メルトフローレート(190℃/2.16Kg)4g/10分、密度0.928g/cm3、ビカット軟化点(A/50N)97℃、DSC融点114℃の、低密度ポリエチレンLDPC 3020K(LDPEと称する)。
【0031】
末端が、約20個のモノマー単位(1700Mn)(液相核磁気共鳴(NMR)分光法によって測定した場合)のポリ(酢酸ビニル)(PVAc)ブロックに結合した、数平均分子量(Mn)3200および分散度2(高温ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した場合)のポリエチレンブロックからなるポリエチレン-ブロック-ポリ(酢酸ビニル)(PE-b-PVAc)ブロックコポリマーである、BCX26およびPolarfin PRP027として知られる(本発明の)実験用ブロックコポリマー。
【0032】
BCX26を製造するために使用されるポリエチレンは、半回分式の1ガロン反応器中で、一定の反応器圧力を維持するために必要なエチレンを供給することによって生成した。触媒(トルエン中の二塩化ジシクロペンタジエニルジルコニウムCp2ZrCL2)を必要に応じて投入し、エチレン流量計の10slpm設定でほぼ100%のエチレン取り込みを維持するようにした。反応器の温度を手動で90℃近くに制御した。水素0.4slpmの一定供給量を、試験を通して維持した。液体サンプル(50~100グラム)を、試験を通して20、40、60、90、120、および150分で定期的に採集した。ガスサンプル(1リットル)を、各液体サンプルの2分前に採集した。
【0033】
ポリエチレンを使用して、以下のPE-b-PVAcブロックコポリマーを作製し、PEをジイソプロペニルベンゼンと触媒を用いて反応させてPE-DIBを生成した。PE-DIB(Xg)を、XmLのトルエンと共に1L反応器に追加した。オーバーヘッドスターラーの電源を入れ、500rpmに設定した。
酢酸ビニル(VAc)モノマー(XmL)を滴下漏斗に加えた。
反応器および滴下漏斗を、30分間、N2でパージした。
別々の丸底フラスコ中で、VAcモノマー(XmL)および過酸化ベンゾイル(BP)原液(XmLのトルエン中のXgのBP)を、30分間、N2でパージした。
系をパージしながら、反応器を110℃に加熱した。
パージ後、脱気した注射器を使用して、VAcを反応器中のPE-DIB/トルエン溶液に移した。これにより、内部温度が94℃まで低下した。
XmLのBP溶液を脱気した50mL注射器に追加し、注射器ポンプに取り付けた。
注射器ポンプおよび滴下漏斗からの添加は、同時に開始した。供給速度:VAc=XmL/hr、BP=XmL/hr。
二種の溶液を2時間にわたって反応器に添加し、完了したら、反応液をさらに1時間、110℃に加熱した。
ロータリーエバポレーターを使用して揮発性物質を除去し、約200mLのスラリーが残留し、これを100℃に加熱し、2Lの攪拌したエタノール中に沈降させた。沈降物を静置して沈殿させ、過剰の溶媒をデカンテーションにより除去し、濾過を用いて、PE-b-PVAcブロックコポリマーを得た。フィルターから固形物を採集し、真空オーブン中で終夜乾燥して、すべての残留溶媒を除去した。
本発明の材料を、約180℃で、押出機中にてLDPEと配合した。次いで、材料を、3つの温度域からなる三層インフレーションフィルムダイから押し出した(試験2)。材料を、本発明の材料を含まない同様の材料と比較した(試験1)。
内層は、配合されたLDPE層であり、中間層および外層は、PET層であった。
層は、以下の通りであった。
【0034】
【表1】
押出条件は、以下の通りであった。
【0035】
【表2】
引取速度(Haul Off Speed)(m/min)は、6.5であった。
【0036】
【表3】
内層の接着力は、LDPE内層をPET中間層から剥離させるために要する力を評価することによって決定した。
幅30mmのフィルム細片を切り取り、剥離試験を用いた接着力の評価のための試験片を形成した。
フィルムを、「バブルで」開いて、フィルムの単層を生成した。試験に先立って、PET/LDPE界面での層間剥離を手動で開始し、サンプルの一部をグリップに設置した。この層間剥離は、各試験片の端部を、85℃に加熱した水中に浸漬させ、端部を数分間3~4cm浸漬させ、取り除き、フィルムの面内の二方向に引っ張り、再度浸漬させることを要した。
剥離試験の結果は、以下の通りであった。
【0037】
【表4】
定常状態での剥離が生じる領域に留意し、結果として使用した。層間剥離が定常であり、フィルムがそれ自体に巻き込まれないまたは折り曲げられない場合、これらの領域は試験の一部である。
試験2において、剥離に要する力は、LDPE層における応力白化によって示されるように、剥離試験中にLDPE層中で塑性変形を生じさせるのに十分に大きかった。
【0038】
(実施例2)
実施例1で調製した、NMRによる数平均分子量が1650のポリエチレンジイソプロピルベンゼン反応物質40gを、水冷却器および窒素バブリング器が取り付けられた、300mLのトルエンを含む反応器に供給した。反応器を最大100℃まで加熱し、N2で30分間パージした。V601開始剤(0.0250mol、2当量)5.76gを、30分間パージした50mLのトルエン中に溶解した。アクリル酸メチル(密度=0.956g/mL、1.89mol、150当量)170mLも、30分間パージした。開始剤溶液およびモノマー溶液を、それぞれ50mL/時間および170mL/時間の送達に設定して、注射器に移した。反応器を窒素雰囲気下で放置し、注射器ポンプを開始し、1時間反応させた。1時間後、還流デバイダータップを開き、温度を上げてトルエンおよび未反応モノマーを蒸発除去した。1時間後、トルエン/ポリマー混合物(全容量275mL)を反応器から出して空にした。次いで、ポリマーを、1.25リットルのメタノール中に沈降させた(貧溶媒比4.5:1)。サンプルを終夜放置して沈降させた。上部の透明なメタノール層をデカンテーションし、750mLの新しいメタノールを添加し、1時間攪拌し、終夜放置して沈降させた。メタノール上層をデカンテーションし、生成物を1リットルのロータリーエバポレーターに移し、蒸発して乾燥させた。次いで、生成物を真空オーブン中で終夜乾燥し、分析し、NMRにより分子量5750を有することを発見した。
【0039】
生成物を、1%、5%、および10%のブロックコポリマーの直鎖状低密度ポリエチレンと配合し、Haakeフィルムライン上でフィルムにブローン成形した。フィルムブローイングパラメータは、以下の通りであった。
スクリュー速度 30rpm
ホールオフ 300ユニット
送風時間 1分
送風量 1L/min
【0040】
第1の押出部分がロールの中間部にあり、最後の部分がロールの最外部になるように、フィルムを巻き取った。
小型ホワイトプレス(small white press)を使用して、フィルムサンプルを、ポリエステルフィルムMelinexシートに接着させた。フィルムサンプルをホットプレートで20秒間予熱した後、10トンの圧力を2分20秒間印加した。Melinexに結合させた幾つかのフィルムサンプルを各バッチに生成した。
圧縮成形サンプルを幅40mmの細片に切断した。二成分間の層間剥離を手動で開始し、これらの2つの部分を、50Nロードセルが取り付けられた引張検査機器Lloyds LR50kのグリップに供給した。剥離試験を100mm/分で実施した。これらのサンプルで得られた結果を表5(Table 3)に示す。
【0041】
【表5】