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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】温熱具
(51)【国際特許分類】
   A61F 7/03 20060101AFI20230518BHJP
【FI】
A61F7/08 334Q
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020561187
(86)(22)【出願日】2019-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2019041974
(87)【国際公開番号】W WO2020129408
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-09-05
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/046775
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 貞儒
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-39370(JP,A)
【文献】特開2011-200301(JP,A)
【文献】特開2014-8269(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0087996(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 7/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用時に使用者の両眼を覆う形状を有する本体部と、該本体部に備えられた発熱体と、該本体部に取り付けられ且つ該本体部による使用者の両眼の被覆状態を維持可能な一対の耳掛け部とを備えた温熱具であって、
前記本体部は、使用者の肌に近い側に位置する第1シートと、使用者の肌から遠い側に位置する第2シートとを備え、
第1シートと第2シートとが、両シート間に前記発熱体が保持されるように且つ両シート間に非接合領域が形成されるように接合されており、
前記本体部と前記耳掛け部とが接合されて接合領域が形成されており、該接合領域と、前記非接合領域とが、前記温熱具の厚み方向で重なっている、温熱具。
【請求項2】
第1シートと第2シートとが、接着剤によって接合されているか、融着によって接合されているか、又は超音波接合されている請求項1に記載の温熱具。
【請求項3】
第1シートと第2シートとが、ストライプ状の接合パターンで接合されていることで前記非接合領域が形成されている請求項1又は2に記載の温熱具。
【請求項4】
第1シートと第2シートとが、散点状の接合パターンで接合されていることで前記非接合領域が形成されている請求項1又は2に記載の温熱具。
【請求項5】
前記本体部と前記耳掛け部とが、接着剤によって接合されているか、融着によって接合されているか、又は超音波接合されている請求項1ないし4のいずれか一項に記載の温熱具。
【請求項6】
前記耳掛け部がシート材からなり、該シート材に、耳を通すための挿通部が形成されており、
前記本体部と前記耳掛け部とが一方向に延びる線状接合領域において接合されている請求項1ないし5のいずれか一項に記載の温熱具。
【請求項7】
使用時に使用者の両眼を覆う形状を有する本体部と、該本体部に備えられた発熱体と、該本体部に取り付けられ且つ該本体部による使用者の両眼の被覆状態を維持可能な一対の耳掛け部とを備え、前記本体部は、使用者の肌に近い側に位置する第1シートと、使用者の肌から遠い側に位置する第2シートとを備える温熱具の製造方法であって、
第2シートの一方の面に、非塗布部を有するように接着剤を塗布し、次いで、
第1シートと第2シートの接着剤塗布面とが対向し且つ第1シートと第2シートとの間に前記発熱体が保持されるように、第1シートと第2シートとを接合するとともに、両シート間に非接合領域を形成し、然る後に、
前記本体部と前記耳掛け部とを接合する工程を有し、
前記本体部と前記耳掛け部との接合を、前記本体部と前記耳掛け部との接合領域と、前記非接合領域とが前記温熱具の厚み方向で重なるように行う、温熱具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温熱具に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は先に、着用時に両目を覆う横長のマスク本体と、該マスク本体の横方向両外端部近傍に設けられ且つ着用時に耳を掛ける一対の耳掛け部とを備えたアイマスクを提案した(特許文献1参照)。同文献に記載されているマスク本体は蒸気温熱発生材を有しており、蒸気温熱発生材から発生した蒸気温熱をアイマスクの着用者に均一に適用できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-295779号公報
【発明の概要】
【0004】
本発明は、使用時に使用者の両眼を覆う形状を有する本体部と、該本体部に備えられた発熱体と、該本体部に取り付けられ且つ該本体部による使用者の両眼の被覆状態を維持可能な一対の耳掛け部とを備えた温熱具に関する。
一実施形態では、前記本体部は、使用者の肌に近い側に位置する第1シートと、使用者の肌から遠い側に位置する第2シートとを備える。
一実施形態では、第1シートと第2シートとが、両シート間に前記発熱体が保持されるように且つ両シート間に非接合領域が形成されるように接合されている。
一実施形態では、前記本体部と前記耳掛け部とが接合されて接合領域が形成されており、該接合領域と、前記非接合領域とが、前記温熱具の厚み方向で重なっている。
【0005】
また本発明は、使用時に使用者の両眼を覆う形状を有する本体部と、該本体部に備えられた発熱体と、該本体部に取り付けられ且つ該本体部による使用者の両眼の被覆状態を維持可能な一対の耳掛け部とを備える温熱具の製造方法に関する。
一実施形態では、前記本体部は、使用者の肌に近い側に位置する第1シートと、使用者の肌から遠い側に位置する第2シートとを備える。
一実施形態では、第2シートの一方の面に、非塗布部を有するように接着剤を塗布する。
一実施形態では、次いで、第1シートと第2シートの接着剤塗布面とが対向し且つ第1シートと第2シートとの間に前記発熱体が保持されるように、第1シートと第2シートとを接合するとともに、両シート間に非接合領域を形成する。
一実施形態では、然る後に、前記本体部と前記耳掛け部とを接合する工程を有する。
一実施形態では、前記本体部と前記耳掛け部との接合を、前記本体部と前記耳掛け部との接合領域と、前記非接合領域とが前記温熱具の厚み方向で重なるように行う。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本発明の温熱具の実施形態を示す平面図である。
図2図2は、図1に示す温熱具の分解斜視図である。
図3図3は、図1に示す温熱具の長手方向に沿う断面図である。
図4図4は、第1シート及び第2シートの接合パターンの実施形態を示す平面図である。
図5図5(a)ないし(d)は、第1シート及び第2シートの接合パターンの別の実施形態を示す平面図である。
図6図6(a)は、接合領域及び非接合領域の配置位置を示す平面図である。図6(b)は、図6(a)のA-A線での断面図である。
図7図7(a)は、線状接合領域及び非接合領域の配置位置を示す平面図であり、図7(b)は、線状接合領域及び非接合領域の配置位置を示すB-B線での断面図である。
図8図8は、本発明の温熱具の別の実施形態を示す平面図である。
【発明の詳細な説明】
【0007】
特許文献1に記載の温熱具は、その耳掛け部の連結部が接合されているので、柔軟性が低く、着用者の身体へのフィット性及び柔軟性が低いものとなっており、この点に関して改善の余地があった。
【0008】
したがって、本発明は、温熱具の本体部と耳掛け部との接合強度を保ちつつ、着用者の身体へのフィット性及び柔軟性が向上した温熱具に関する。
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の温熱具の一実施形態が示されている。同図に示す温熱具1は、いわゆるアイマスクタイプのものであり、ヒトの両眼を覆うように当接させて、所定温度に加熱された水蒸気を目及びその周囲に温熱を付与するために用いられるものである。
【0010】
図1に示すように、温熱具1は、使用時に使用者の両眼を覆う形状を有する横方向Xに長い本体部2と、本体部2に備えられた発熱体3と、一対の耳掛け部4,4とを備えている。耳掛け部4は、本体部2の横方向Xの両外端域に設けられており、横方向Xの外方へ向けて反転可能となっている。これによって、各耳掛け部4,4を使用者の耳にそれぞれ掛けて、本体部2による使用者の両眼の被覆状態を維持できるようになっている。
【0011】
図2には、温熱具1の分解斜視図が示されている。また図3には、温熱具1の横方向X(長手方向)に沿う断面図が示されている。これらの図に示す温熱具1における本体部2は、使用者の肌に近い側に位置する第1シート5と、使用者の肌に遠い側に位置する第2シート6とを備えている。すなわち、同図中上方が使用者の肌に近い側であり、同図中下方が使用者の肌に遠い側である。本体部2は、その長手方向が温熱具の横方向Xと一致している。つまり、温熱具1の横方向Xと、本体部2の横方向Xとは互いに一致している。以下の説明では、各部材における横方向は、温熱具1の横方向Xと一致する方向として説明する。
【0012】
本発明の一つの実施形態において、図2及び図3に示す第1シート5及び第2シート6は、これらを重ね合わせた状態でホットメルト接着剤等の接着剤7によって互いに接合されており、これによって、両シートの間に2つの発熱体3,3が離間して保持できるようになっている。なお、第1シート5及び第2シート6は、接着剤7に代えて、符号7に示す領域が、ヒートシール等の融着によって接合されているか、又は超音波によって接合されていてもよい。以下の説明では、両シート5,6が接着剤7によって接合された形態を例にとり説明する。
【0013】
図4及び図5には、第1シート5及び第2シート6の接合パターンの実施形態が示されている。図2及び図4に示すように、発熱体3の外周には第1接着剤71が配されており、第1シート5及び第2シート6を接合して、両シート間に発熱体3を保持可能となっている。また、本体部2の横方向Xの外端域2Sには、第2接着剤72及び第3接着剤73が塗布された領域と、第1シート5及び第2シート6が接着剤7によって接合されていない非接合領域8とが形成されている。つまり、非接合領域8は、外端域2Sにおける接着剤7が存在していない領域である。なお、図5(b)ないし(d)においては、第3接着剤73が塗布された領域が形成されていなくてもよい。
【0014】
第2接着剤72の塗布領域と非接合領域8とはともに、第1接着剤71の塗布領域よりも横方向Xの外方に位置し、且つ第3接着剤73の塗布領域の横方向Xの内方に位置している。図2に示す第2接着剤72の塗布領域及び非接合領域8は、本体部2の縦方向Yに沿って延びるように帯状に複数形成されている。本体部2の外方端には第3接着剤73が塗布されており、第1シート5及び第2シート6の各外方端を接合している。なお図4及び図5は、説明の便宜上、第1シート5を除いたときの第2シート6での非接合領域8の形成状態を示している。なお、縦方向Yは、横方向Xと直交する方向であり、温熱具1の縦方向Yと、本体部2の縦方向Yとは互いに一致している。以下の説明では、各部材における縦方向は、温熱具1の縦方向Yと一致する方向として説明する。
【0015】
詳細には、図4に示す接合パターンは、第2接着剤72の塗布領域及び非接合領域8がともに、縦方向Yに沿って延びる帯状のパターンとなっている。図4に示す接合パターンでは、第2接着剤72の塗布領域及び非接合領域8が横方向Xに交互に配置されている。図5(a)に示す接合パターンでは、第3接着剤73の塗布領域のみ存在しており、第2接着剤72の塗布領域は存在していない。したがって、同図に示す非接合領域8は、第1接着剤71の塗布領域と第3接着剤73の塗布領域との間に形成されており、図4に示す非接合領域8よりも横方向Xの長さが長いものとなっている。
【0016】
また、図5(b)に示す接合パターンは、第2接着剤72の塗布領域及び非接合領域8が、同図の紙面上、右上から左下に延びるように傾斜した帯状のパターンとなっている。つまり、第2接着剤72の塗布領域及び非接合領域8はともに、各領域の一端が、その他端よりも温熱具1の横方向X内方に位置するように傾斜して延び、且つこれらの領域が交互に配された帯状の接合パターンとなっている。図5(c)に示す接合パターンは、第2接着剤72の塗布領域及び非接合領域8が横方向Xに沿って延び、且つこれらの領域が縦方向Yに交互に配された帯状の接合パターンとなっている。また、図5(d)に示す接合パターンは、第2接着剤72の塗布領域及び非接合領域8がともに散点状に形成され、第3接着剤73の塗布領域が存在しない接合パターンとなっている。図5(d)の接合パターンは、第3接着剤73の塗布領域が更に存在していてもよい。
【0017】
非接合領域8の幅W1(図4及び図5参照)は、柔軟性及びフィット性の観点から、3mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましく、また、接合強度の観点から、25mm以下であることが好ましく、20mm以下であることがより好ましく、18mm以下であることが更に好ましい。非接合領域8の幅とは、非接合領域8の延びる方向と直交する方向における長さであり、例えば図4に示す接合パターンでは、第1接着剤71の横方向外端から第1接着剤と隣り合う第2接着剤72までの間隔、第2接着剤72どうしの間隔、及び第2接着剤72の横方向外端から第3接着剤73までの各間隔である。図5(a)に示す接合パターンでは、第1接着剤71の横方向外端から第3接着剤73までの間隔である。図5(b)ないし(d)に示す接合パターンでは、第2接着剤72どうしの間隔である。図4及び図5(b)ないし(d)において、各非接合領域8の幅W1はそれぞれ同じであってもよく、異なってもよい。
【0018】
図4及び図5に示す非接合領域8は、その幅が均一に形成されていたが、これに代えて、接着剤7の塗布幅が不均一である接合パターンで接合されていることによって、幅W1が不均一である非接合領域8が形成されていてもよい。例えば、一つの非接合領域8に着目したときに、一方向に延びる非接合領域8の一端から他端に向かうにつれて幅W1が連続的に、階段状に若しくはこれらの組み合わせで小さくなるか、若しくは大きくなる形状、又は、一方向に延びる非接合領域8の一端から他端までの間に、幅W1が連続的に、階段状に若しくはこれらの組み合わせで小さくなる部分と大きくなる部分との双方が存在する形状等が挙げられる。幅W1が不均一である非接合領域8の形状としては、例えば台形状、六角形状等の多角形状、砂時計状、本体部2の横方向X外方に向けて凸状に湾曲した形状、及び本体部2の横方向X内方に向けて凹状に湾曲した形状並びにこれらの組み合わせ等が挙げられる。いずれの場合であっても、幅W1の平均値が上述の範囲を満たせばよい。
【0019】
また、第2接着剤72の塗布幅W2(図4及び図5参照)は、接合強度及び加工性を向上させる観点から、1mm以上であることが好ましく、2mm以上であることがより好ましく、3mm以上であることが更に好ましく、また、柔軟性及びフィット性を向上させる観点から、10mm以下であることが好ましく、8mm以下であることがより好ましく、7mm以下であることが更に好ましく、5mm以下であることが一層好ましい。第2接着剤72の塗布幅とは、第2接着剤72の塗布領域の延びる方向と直交する方向における長さである。同様に、第3接着剤73の塗布幅W3(図4及び図5参照)は、接合強度及び加工性を向上させる観点から、2mm以上であることが好ましく、3mm以上であることがより好ましく、また、柔軟性及びフィット性を向上させる観点から、10mm以下であることが好ましく、8mm以下であることがより好ましい。第3接着剤73の塗布幅とは、第3接着剤73の横方向Xにおける長さである。図4及び図5(b)ないし(d)において、各第2接着剤の塗布幅W2はそれぞれ同じであってもよく、異なってもよい。
【0020】
各接着剤72,73は、その幅が同一の帯状以外の形状に塗布されていてもよい。例えば、一つの第2接着剤72又は第3接着剤73の塗布領域において、その塗布幅が異なる形状となるように形成されてもよい。例えば、一つの第2接着剤72に着目したときに、一方向に延びる第2接着剤72の一端から他端に向かうにつれて塗布幅W2が連続的に、階段状に若しくはこれらの組み合わせで小さくなるか、若しくは大きくなる形状、又は、一方向に延びる第2接着剤72の一端から他端までの間に、塗布幅W2が連続的に、階段状に若しくはこれらの組み合わせで小さくなる部分と大きくなる部分との双方が存在する形状等が挙げられる。接着剤の塗布幅W2が不均一である塗布形状の具体例としては、台形状、六角形状等の多角形状、砂時計状、本体部2の横方向X外方に向けて凸状に湾曲した形状、及び本体部2の横方向X内方に向けて凹状に湾曲した形状並びにこれらの組み合わせ等が挙げられる。いずれの場合であっても、塗布幅W2の平均値が上述の範囲を満たせばよい。
【0021】
また、第3接着剤73に着目したときに、一方向に延びる第3接着剤73の一端から他端に向かうにつれて塗布幅W3が連続的に、階段状に若しくはこれらの組み合わせで小さくなるか、若しくは大きくなる形状、又は、一方向に延びる第3接着剤73の一端から他端までの間に、塗布幅W3が連続的に、階段状に若しくはこれらの組み合わせで小さくなる部分と大きくなる部分との双方が存在する形状等が挙げられる。接着剤の塗布幅W3が不均一である塗布形状は、例えば上述した第2接着剤72と同様の形状とすることができる。いずれの場合であっても、塗布幅W3の平均値が上述の範囲を満たせばよい。
【0022】
第1シート5及び第2シート6の間に保持される発熱体3は、被酸化性金属、反応促進剤、電解質及び水を含む。発熱体3としては、被酸化性金属、反応促進剤、繊維状物、電解質及び水を含む繊維シートから構成された発熱シートや、被酸化性金属、反応促進剤、保水剤、電解質及び水を含む発熱組成物を備えたものを用いることができる。発熱シート及び発熱組成物は、これらを単独で使用してもよく、発熱シート及び発熱組成物の少なくとも一方を複数のシート材を貼りあわせた袋体内に収容したものを用いることができる。発熱シートや発熱組成物を構成する各種材料としては、例えば特開2003-102761号公報や特開2013-146555号公報に記載の材料を用いることもできる。
【0023】
図3に示す断面図には、発熱シートが袋体内に収容されて形成された発熱体3の固定状態が示されている。同図に示す発熱体3は、温熱具1における第2シート6の内側の面と、接着剤7によって接着固定部7a,7aが形成されて固定されており、それ以外の面は第2シート6と固定されていない。各接着固定部7a,7aは、温熱具1の横方向Xの中央域に設けられており、温熱具1の縦方向Yに沿って延びている。このような構成を有していることによって、温熱具1の使用時に使用者の両眼及びその近傍に発熱体3が首尾よく配されるようになる。
【0024】
図2に戻ると、同図に示す耳掛け部4はシート材からなり、該シート材に、横方向Xに延びる挿通部4Aが形成されている。挿通部4Aは、耳掛け部4を耳に掛ける際に耳を通すための穴である。これに代えて、挿通部4Aは、耳を通すことができる貫通スリット等によって形成されていてもよい。図2及び図3に示すように、耳掛け部4は、横方向Xの両外端域において、本体部2における第1シート5の外面に接合されており、これによって、本体部2と耳掛け部4とが接合された接合領域9が形成されている。
【0025】
図6は、接合領域9の形態を示す平面図及び断面図である。図2及び図6(a)に示す本体部2と耳掛け部4との接合領域9は、接合領域9における横方向Xの内側端である接合端部9sから本体部2の横方向外端部まで連続的に接合されており、接合端部9sを弦とし、本体部2の外側縁が弧となる半楕円形状を有している。図6(b)に示すように、接合領域9は、第1シート5と耳掛け部4とが接合して形成されたものである。接合領域9は、接合端部9sを軸として、耳掛け部4を反転させるときの折り曲げ部としても機能する。
【0026】
また、図6(a)及び(b)に示すように、温熱具1は、本体部2及び耳掛け部4が接合された接合領域9と、第1シート5及び第2シート6が接着剤7によって接合されていない非接合領域8とが、厚み方向Zにおいて互いに重なるように形成されている。
【0027】
非接合領域8と接合領域9との配置形態について詳細に説明すると、図6(a)に示すように、非接合領域8が縦方向Yに沿って帯状に複数形成されている場合、接合領域9における接合端部9sが縦方向Yと交差するように延びているので、以下の(i)ないし(iii)の配置形態が存在する。
【0028】
すなわち、(i)図6(a)中Y方向上方では、横方向Xの最も外方に位置する一本の非接合領域8と接合領域9とが厚み方向Zにおいて部分的に重なっており、該非接合領域よりも横方向X内方に位置する他の非接合領域8と接合領域9とは全く重なっていない。(ii)図6(a)におけるA-A線の位置では、図6(b)に示すように、横方向Xの最も外方に位置する非接合領域8と接合領域9とが厚み方向Zにおいて全体的に重なっており、且つ他の非接合領域8と接合領域9とが厚み方向Zにおいて部分的に重なっている領域と、全く重なっていない領域とが存在する。(iii)図6(a)中Y方向下方では、全ての非接合領域8と接合領域9とが、厚み方向Zにおいて全体的に又は部分的に重なっている。このような構成を有していることによって、温熱具1における接合領域9を有する部位の柔軟性を高めてフィット性を向上することができるとともに、本体部2と耳掛け部4との接合強度を発現できるという利点が奏される。
【0029】
図6(a)に示す形態では、前記(i)ないし(iii)の全ての配置形態が存在するものとなっていたが、これに限られず、前記(i)ないし(iii)のうち一つが存在する配置形態としてもよく、又はこれらの任意の組み合わせが存在する配置形態としてもよい。例えば、図4に示す接合パターンにおける非接合領域8の延びる方向と、接合領域9における接合端部9sの延びる方向とを一致させることによって、前記(i)ないし(iii)のうち一つが存在する非接合領域8及び接合領域9の配置形態とすることができる。つまり、いずれの配置形態であっても、非接合領域8と接合領域9とが、前記温熱具の厚み方向に全体的に重なっている領域及び前記温熱具の厚み方向に部分的に重なっている領域のうち少なくとも一つが存在する形態となっている。
【0030】
発熱体3、耳掛け部4、第1シート5及び第2シート6に用いられ得るシート材は、これらの通気性、透湿性、風合い、伸縮性、強度や、発熱シート及び発熱組成物の構成材料の漏れ出し防止等の性質を考慮して適宜決定すればよく、例えば不織布、織布、紙、樹脂フィルム、又はこれらの組み合わせ等が用いられる。
【0031】
詳細には、前記シート材に用いられる不織布としては、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成繊維を含むスパンボンド不織布、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、メルトブローン不織布等が挙げられる。上述した不織布は、該不織布を熱処理したり、シリコーンや界面活性剤等で表面処理したりする等の二次加工を施したものを用いることもできる。前記シート材に用いられる樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エラストマー、ナイロン、ポリウレタン等の合成繊維を含む透湿性フィルムや、伸縮性フィルム等を用いることができる。また、これらのシート材を組み合わせて、所望の性質を発現させたものを用いることもできる。
【0032】
シート材として通気性のものを用いる場合、第1シート5の通気度は、第2シート6の通気度よりも低いことが好ましい。具体的には、第1シート5の通気度は、0.01秒/100mL以上であることが好ましく、0.1秒/100mL以上であることがより好ましく、10秒/100mL以上であることが更に好ましく、50秒/100mL以上であることが一層好ましく、また、15000秒/100mL以下であることが好ましく、10000秒/100mL以下であることがより好ましい。また、第2シート6の通気度は、100秒/100mL以上であることが好ましく、4000秒/100mL以上であることがより好ましく、また、60000秒/100mL以下であることが好ましく、40000秒/100mL以下であることがより好ましい。通気度は、JIS P8117に記載の方法によって測定される。通気度が大きいことは、空気の通過に時間がかかることを意味しているので、通気性が低いことを意味している。通気性に関して第1シート5及び第2シート6を比較すると、第1シート5の通気性が、第2シート6の通気性よりも高くなっている。また、発熱体3を複数のシート材を組み合わせた袋体の構成とした場合、発熱体3における第1シート5側に配されるシート材は、発熱体3における第2シート6側に配されるシート材の通気度よりも低いことも好ましい。
【0033】
シート材として透湿性のものを用いる場合、第1シート5の透湿度は1000g/(m・24h)以上であることが好ましく、2000g/(m・24h)以上であることがより好ましく、3000g/(m・24h)以上であることが更に好ましい。第2シート6の透湿度は、第1シート5の透湿度と同じでもよく、あるいは第1シート5の透湿度よりも大きいか又は小さくてもよい。このような構成となっていることによって、使用者が温熱を知覚しやすくすることができる。透湿度は、JIS Z0208の方法に従って、測定時間を1時間に変更して測定される。
【0034】
温熱具の目へのフィット性を高める観点から、第1シート5及び第2シート6のうち少なくとも一方が伸縮性を有するシート材で構成されていることが好ましい。また、これとともに、両シート5,6の接合パターンを該両シート5,6の伸縮方向と交差する方向に形成することがより好ましく、接合パターンを両シート5,6の伸縮方向と直交する方向に形成することが更に好ましい。一般的に、温熱具1は、その装着時及び使用時には横方向X(すなわち長手方向)に伸長されて使用されるので、両シート5,6の伸縮方向と、温熱具1の横方向Xとが一致していることが好ましい。伸縮性とは、伸長及び伸長回復性(収縮性)のいずれか一方又は両方の性質を指し、第1シート5及び第2シート6のうち少なくとも一方が一方向に伸長性を有するものであれば良く、また第1シート5及び第2シート6のいずれか一方が伸長性を有し、他方が伸長及び伸長回復性を有するものであっても良い。
【0035】
同様の観点から、耳掛け部4を構成するシート材は、伸長性を有するシートであることも好ましい。耳掛け部4を構成するシート材の伸長性は、5cm×10cmのサンプルを、500mm/minの速度で、長手方向に1.5倍に伸長したときの張力が、10N以下であることが好ましく、5N以下であることがより好ましい。
【0036】
以上の構成を有する本発明の温熱具によれば、第1シート5及び第2シート6が接着剤7によって接合されていない非接合領域8を有しているので、第1シート5及び第2シート6との接合を接着剤7によって連続的に行った場合と比較して、横方向Xの外端域の剛性が低くなり、温熱具1の柔軟性が高いものとなる。その結果、使用者の顔及び動作に追従しやすく、良好なフィット性を発現することができる。特に、本発明の温熱具は、本体部2と耳掛け部4とが接合されて接合領域9が形成されており、接合領域9と非接合領域8とが、温熱具の厚み方向で重なっていることを特徴の一つとしている。このような構成を備えることによって、本体部2と耳掛け部4との接合強度を保ちつつ、温熱具全体の伸縮性を高めることができる。更に、伸縮性の向上によって、温熱具の目へのフィット性を高めることができ、温熱具の柔軟性に優れ、温熱具が着用者の肌によりソフトに接することができるものとなる。
【0037】
温熱具の目へのフィット性を一層高める観点から、第1シート5と第2シート6とがストライプ状の接合パターンで接合されていることで、非接合領域8が形成されていることが好ましい。ストライプ状の接合パターンとしては、例えば図4及び図5(a)に示すように、縦方向Yに沿って延びる帯状の接合パターンとしたり、図5(b)に示すように、同図の紙面上、右上から左下に延びるように傾斜する帯状の接合パターンとしたり、図5(c)に示すように、横方向Xに沿って延びる帯状の接合パターンとすることができる。同様の観点から、図5(d)に示すように、第1シート5と第2シート6とが散点状の接合パターンで接合されていることで、非接合領域8が形成されていることも好ましいパターンである。
【0038】
温熱具の装着のしやすさと、温熱具の目へのフィット性とを首尾よく両立させる観点から、両シート5,6の接合パターンは、図5(b)に示す接合パターンを採用することが好ましく、図4に示す接合パターンを採用することがより好ましく、図5(a)に示す接合パターンを採用することが更に好ましい。特に、第1シート5及び第2シート6のうち少なくとも一方が伸縮性を有するシート材で構成されている場合には上述の効果が更に効果的に奏される。
【0039】
温熱具の目へのフィット性及び温熱具の柔軟性を一層高めるとともに、本体部2と耳掛け部4との接合強度を高めて、本体部2からの耳掛け部4の意図せぬ脱落や破断を防ぐ観点から、本体部2と耳掛け部4とが、接着剤によって接合されているか、融着によって接合されているか、又は超音波接合されていることが好ましい。本体部2と耳掛け部4とを融着によって接合する場合、接合方法として例えばヒートシール等を用いることができ、本体部2と耳掛け部4とを構成する原料又は繊維どうしの融着によって接合する。接合の態様としては、接合領域9を連続的に又は間欠的に形成することができる。接合領域9を間欠的に形成する形態としては、接合領域9と、融着によって接合されていない領域とを含むものとすることができる。具体的な形態としては、例えば上述した非接合領域8で説明した形態と同様の形態を採用することができる。なお、本体部2と耳掛け部4とを接着剤によって接合する場合、融着による接合と同様の接合態様とすることができる。
【0040】
また、本体部2と耳掛け部4とを超音波接合することも可能である。特に、本体部2と耳掛け部4とを超音波接合する場合、温熱具1の平面視において、超音波接合によって形成される接合領域9と、第1シート5及び第2シート6における非接合領域8とは、これらの領域の重複する部分が多くなるように形成することが好ましい。すなわち、接合領域9と、接着剤7の塗布領域との重複する部分が少なくなるように形成することが好ましい。
【0041】
温熱具の目へのフィット性及び温熱具の柔軟性を一層高めるとともに、本体部2と耳掛け部4との接合強度の向上と製造効率の向上とを兼ね備えるものとする観点から、本体部2における第1シート5と耳掛け部4とが、一方向に延びる線状接合領域9Aにおいて接合されていることが好ましい。図7(a)に示す線状接合領域9Aは、温熱具1の横方向X及び縦方向Yの双方と交差する方向に沿って連続して延びている。本発明においては、線状接合領域9Aが連続して延びていることは必須ではなく、例えば一方向に延びる線状接合領域9Aが破線状等の非連続線の形状で間欠的に形成されていてもよい。また、図7(a)に示すように、線状接合領域9Aの横方向Xの外方から、本体部2の横方向Xの外端部までの領域は、第1シート5と耳掛け部4とが接合されていない領域となっている。これに代えて、本発明においては、線状接合領域9Aの横方向Xの外方から、本体部2の横方向Xの外端部までの領域は、第1シート5と耳掛け部4とが部分的に接合する領域を有してもよい。
【0042】
詳細には、図7(a)に示すように、本体部2及び耳掛け部4に、同図の紙面上、横方向Xの右上から左下に延びる方向に傾斜した線状接合領域9Aを形成することができる。すなわち、平面視において、線状接合領域9Aの一端が、その他端よりも横方向Xの内方に位置する線状接合領域9Aを形成することができる。また、これに代えて、温熱具1の縦方向Y又は横方向Xに沿って延びる線状接合領域9Aを形成することができる。線状接合領域9Aの他の形態としては、例えば線状接合領域9Aが、紙面上、横方向Xの左上から右下に延びる方向に傾斜した形態や、複数の線状接合領域9Aが並列したストライプ状の形態等が挙げられる。
【0043】
上述したいずれの形態であっても、図7(a)及び(b)に示すように、線状接合領域9Aと、非接合領域8とは、厚み方向において、これらの領域の重複する部分が多くなるように形成することが好ましく、接合領域9と、接着剤7によって接合されている領域とが重複しないように形成することがより好ましい。このような例としては、図4若しくは図5(a)又は(b)に示すような接合パターンを採用して第1シート及び第2シートとを接合して非接合領域8を形成し、次いで、該非接合領域8内に収まるように、一方向に延びる線状接合領域9Aを形成することができる。
【0044】
線状接合領域9Aの幅W4(図7(a)参照)は、接合強度及び加工性を向上させる観点から、2mm以上であることが好ましく、3mm以上であることがより好ましく、4mm以上であることが更に好ましく、5mm以上であることが一層好ましく、また、柔軟性及びフィット性を向上させる観点から、20mm以下であることが好ましく、15mm以下であることがより好ましく、12mm以下であることが更に好ましく、10mm以下であることが一層好ましい。線状接合領域9Aの幅とは、線状接合領域9Aの延びる方向と直交する方向における長さである。
【0045】
第1シート5及び第2シート6として不織布を用いる場合、第2シート6の坪量は、第1シート5の坪量よりも大きいことが好ましい。第1シート5の坪量は、10g/m以上であることが好ましく、20g/m以上であることがより好ましく、また、200g/m以下であることが好ましく、130g/m以下であることがより好ましい。また、第2シート6の坪量は、10g/m以上であることが好ましく、30g/m以上であることがより好ましく、200g/m以下であることが好ましく、150g/m以下であることがより好ましい。
【0046】
温熱具1における耳掛け部4の形態は、本体部2を使用者の両眼に固定可能な態様であれば、図1及び図2に示すシート状の部材に限定されない。例えば、図8に示すように、ひも状の部材からなる耳掛け部4を採用したり、糸状又は帯状の部材からなる耳掛け部4を採用したりしてもよい。温熱具のフィット感を高める観点から、耳掛け部の構成部材としてゴムなどの弾性体を用いて、伸縮可能な耳掛け部4とすることが好ましい。
【0047】
上述した温熱具1における発熱体3の形態は、2つの発熱体3が離間して保持された形態として説明したが、使用者の両眼及びこれらの周囲に温感を付与可能であれば温熱具の形態は特に限定されない。例えば、使用者の両眼及びその周囲を覆うことができる形状及び大きさを有する1つの発熱体が第1シート5及び第2シート6の間に保持されていてもよく、3つ以上の発熱体が第1シート5及び第2シート6の間に保持されていてもよい。
【0048】
また、図2及び図3に示す発熱体3は、その一部が温熱具1の中央域で固定されているのみであったが、この形態に限られない。例えば、発熱体3と第2シート6とが中央域及び中央域以外の領域で連続的に又は間欠的に接合されていてもよく、第2シート6における発熱体3が配される位置の全面に接着剤を塗布して接合されていてもよい。
【0049】
次に、上述した温熱具1の好適な製造方法を説明する。本製造方法は、第2シート6の一方の面に、非塗布部を有するように接着剤を塗布する工程(塗布工程)と、各シート5,6の間に発熱体3が保持されるように、両シート5,6を接合して、非接合領域8を形成する工程(非接合領域形成工程)と、本体部2と耳掛け部4とを接合する工程(接合工程)との3つの工程に大別される。以下に示す製造方法は、図2及び図4に示す温熱具1における接着剤7の配置態様を例にとり説明する。
【0050】
まず、第2シート6の一方の面に、非塗布部を有するように接着剤7を塗布する(塗布工程)。本工程を経て形成される非塗布部は、温熱具1の外端域2Sにおける非接合領域8の形成予定位置である。詳細には、第2シート6を該シート6の縦方向Yに沿う方向に搬送しながら、第2シート6の横方向Xの両端側に、搬送方向に沿って延びるストライプ状に且つ横方向Xに間欠的に接着剤7を塗布する。これによって形成される接着剤7の塗布部は、温熱具1における第2接着剤72及び第3接着剤73の存在予定位置となる。以上の工程を経て、第2シート6の横方向Xの両端側に接着剤7の非塗布部が非接合領域8の形成予定位置として形成される。
【0051】
発熱体3の保持性を高める観点から、上述の工程と同時に、又は上述の工程の前若しくは後に、第2シート6における発熱体3との対向予定面の外周縁全域に接着剤7を塗布するとともに、第2シート6における発熱体3との対向予定面の一部又は全面に塗布することも好ましい。これによって形成される接着剤7の塗布部は、温熱具1における第1接着剤71の存在予定位置となる。これとともに、第2シート6の横方向Xの両端側において、第1接着剤71と、第2接着剤72又は第3接着剤73との間に、非接合領域8の形成予定位置としての接着剤7の非塗布部が形成される。また、第2シート6における発熱体3との対向予定面の一部に接着剤7を塗布する場合、該対向予定面には、接着固定部7aの存在予定位置となる接着剤7の塗布部と、第1接着剤71に囲まれてなる接着剤7の第2非塗布部とが形成される。
【0052】
次いで、各シート5,6の間に発熱体3が保持されるように、両シート5,6を接合して、非接合領域8が形成された本体部2を形成する(非接合領域形成工程)。詳細には、第2シート6の接着剤7の塗布面上に、別工程にて製造した発熱体3を積層する。その後、発熱体3上に第1シート5を更に積層して、接着剤7を介して、両シート5,6を接合する。この工程を経て、両シート5,6の間に発熱体3が保持された状態で接合された本体部2が形成される。この本体部2は、接着剤7の非塗布部からなる非接合領域8が外端域2Sに形成されたものとなる。両シート5,6の接合に当たっては、例えば、第1シート5、発熱体3及び第2シート6を含んで構成される積層体を一対のプレスロールの間に導入し、これを挟圧することによって両シート5,6間の接合性を高めてもよい。
【0053】
最後に、本体部2と耳掛け部4とを接合する(接合工程)。詳細には、予め挿通部4Aが形成されたシート材からなる耳掛け部4を、本体部2における第1シート5側に積層する。その後、本体部2における非接合領域8と厚み方向Zで重なる位置において、本体部2と耳掛け部4とを、接着、融着あるいは超音波等の接合方法によってによって接合し、接合領域9又は線状接合領域9Aを形成する。本体部2と耳掛け部4とを接着剤によって接合する場合には、耳掛け部4における本体部2との対向面側に、及び/又は、本体部2における耳掛け部4との対向面を形成する第1シート5側に、本体部2における非接合領域8と厚み方向Zで重なる予定の位置に接着剤7を塗布し、その後、耳掛け部4を本体部2に積層して接合すればよい。
【0054】
上述した製造方法における塗布工程は、第2シート6の一方の面に、非塗布部を有するように接着剤を塗布する態様として説明したが、これに代えて、第1シート5の一方の面に、非塗布部を有するように接着剤7を塗布してもよい。この場合、第1シート5を該シート5の縦方向Yに沿う方向に搬送しながら、第1シート5の横方向Xの両端側に、搬送方向に沿って延びるストライプ状に且つ横方向Xに間欠的に接着剤7を塗布する。これによって形成される接着剤7の塗布部は、上述した方法と同様に、温熱具1における第2接着剤72及び/又は第3接着剤73の存在予定位置となる。以上の工程を経て、第1シート5の横方向Xの両端側に接着剤7の非塗布部が非接合領域8の形成予定位置として形成される。
【0055】
また、第1シート5への非塗布部の形成と同時に、又はこれの前若しくは後に、第1シート5における発熱体3との対向予定面の外周縁全域に接着剤7を塗布する。これによって形成される接着剤7の塗布部は、温熱具1における第1接着剤71の存在予定位置となる。これとともに、第1シート5の横方向Xの両端側において、第1接着剤71と、第2接着剤72及び/又は第3接着剤73との間に、非接合領域8の形成予定位置としての接着剤7の非塗布部が形成される。発熱体3の保持性を高める観点から、第1シート5における発熱体3との対向予定面の一部又は全面にも接着剤7を塗布することも好ましい。
【0056】
以上の工程を経て、図2及び図4に示す温熱具1が製造される。図5(a)ないし(d)に示す接合態様の温熱具1を接着剤7を介した接合によって製造する場合には、例えば、図5(a)ないし(d)に示す接合態様に一致する凹凸形状を周面に有するロールを用い、該ロールの凸部表面に接着剤7が配されている状態で、該ロールと、第1シート5及び/又は第2シート6とを接触させて、接着剤7を第1シート5及び/又は第2シート6側へ転写し、図5(a)ないし(d)に示すような配置態様の接着剤7の塗布部と非塗布部とを形成すればよい。その後、両シート5,6の間に発熱体3が保持されるように、両シート5,6を接合して、非接合領域8が形成された本体部2を形成する。その後、上述した方法で、本体部2と耳掛け部4とを接合すればよい。
【0057】
また、図4並びに図5(a)ないし(d)に示す接合態様の温熱具1を融着又は超音波接合によって製造する場合には、第1シート5と第2シート6との間に発熱体3を配したあと、図5(a)ないし(d)に示す所望の接合態様となるように、第1シート5と第2シート6とが重なっている部分に対して熱エンボスや超音波エンボス等の接合加工を行って、本体部2を形成する。その後、上述した方法で、本体部2と耳掛け部4とを接合すればよい。
【0058】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。
【0059】
上述した本発明の実施形態に関し、更に以下の温熱具を開示する。
<1>
使用時に使用者の両眼を覆う形状を有する本体部と、該本体部に備えられた発熱体と、該本体部に取り付けられ且つ該本体部による使用者の両眼の被覆状態を維持可能な一対の耳掛け部とを備えた温熱具であって、
前記本体部は、使用者の肌に近い側に位置する第1シートと、使用者の肌から遠い側に位置する第2シートとを備え、
第1シートと第2シートとが、両シート間に前記発熱体が保持されるように且つ両シート間に非接合領域が形成されるように接合されており、
前記本体部と前記耳掛け部とが接合されて接合領域が形成されており、該接合領域と、前記非接合領域とが、前記温熱具の厚み方向で重なっている、温熱具。
【0060】
<2>
第1シートと第2シートとが、接着剤によって接合されているか、融着によって接合されているか、又は超音波接合されている、前記<1>に記載の温熱具。
<3>
第1シートと第2シートとが、ストライプ状の接合パターンで接合されていることで前記非接合領域が形成されている、前記<1>又は<2>に記載の温熱具。
<4>
前記非接合領域は、該非接合領域の一端が、その他端よりも前記温熱具の横方向内方に位置するように傾斜して延びるように形成されている、前記<3>に記載の温熱具。
<5>
前記非接合領域が、前記温熱具の横方向に沿って延びるように形成されている、前記<3>に記載の温熱具。
<6>
前記非接合領域が、前記温熱具の横方向に直交する方向に沿って延びるように形成されている、前記<3>に記載の温熱具。
【0061】
<7>
一方向に延びる前記非接合領域の一端から他端に向かうにつれて、該非接合領域の幅が連続的に又は階段状に小さくなっている、前記<3>ないし<6>のいずれか一に記載の温熱具。
<8>
一方向に延びる前記非接合領域の一端から他端までの間に、該非接合領域の幅が連続的に、階段状に又はこれらの組み合わせで小さくなる部分と大きくなる部分との双方が存在する、前記<3>ないし<6>のいずれか一に記載の温熱具。
<9>
第1シートと第2シートとが、散点状の接合パターンで接合されていることで前記非接合領域が形成されている、前記<1>又は<2>に記載の温熱具。
<10>
前記非接合領域の幅は、3mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましく、また、25mm以下であることが好ましく、20mm以下であることがより好ましく、18mm以下であることが更に好ましい、前記<1>ないし<8>のいずれか一に記載の温熱具。
<11>
前記発熱体は、被酸化性金属、反応促進剤、電解質及び水を含む、前記<1>ないし<10>のいずれか一に記載の温熱具。
【0062】
<12>
前記温熱具の横方向中央域に接着固定部が設けられており、
前記発熱体と第2シートとは、前記接着固定部によって固定されている、前記<1>ないし<11>のいずれか一に記載の温熱具。
<13>
前記接合領域は、該接合領域の横方向内側端に接合端部を有し、
前記接合端部から前記本体部の横方向外端部まで連続的に接合されている、前記<1>ないし<12>のいずれか一に記載の温熱具。
<14>
前記非接合領域と前記接合領域とが、前記温熱具の厚み方向に全体的に重なっている領域及び前記温熱具の厚み方向に部分的に重なっている領域のうち少なくとも一つが存在する、前記<1>ないし<13>のいずれか一に記載の温熱具。
<15>
第1シート及び第2シートはともに通気性のシート材であり、
第1シートの通気度は、第2シートの通気度よりも低い、前記<1>ないし<14>のいずれか一に記載の温熱具。
<16>
第1シートの通気度は、0.01秒/100mL以上であることが好ましく、0.1秒/100mL以上であることがより好ましく、10秒/100mL以上であることが更に好ましく、50秒/100mL以上であることが一層好ましく、また、15000秒/100mL以下であることが好ましく、10000秒/100mL以下であることがより好ましい、前記<15>に記載の温熱具。
【0063】
<17>
第2シートの通気度は、100秒/100mL以上であることが好ましく、4000秒/100mL以上であることがより好ましく、また、60000秒/100mL以下であることが好ましく、40000秒/100mL以下であることがより好ましい、前記<15>又は<16>に記載の温熱具。
<18>
第1シートは透湿性のシート材であり、
第1シートの透湿度は1000g/(m・24h)以上であることが好ましく、2000g/(m・24h)以上であることがより好ましく、3000g/(m・24h)以上であることが更に好ましい、前記<1>ないし<17>のいずれか一に記載の温熱具。
<19>
第1シート及び第2シートのうち少なくとも一方が伸縮性を有するシート材であり、
第1シート及び第2シートの接合パターンが該シート材の伸縮方向と交差する方向に形成されている、前記<1>ないし<18>のいずれか一に記載の温熱具。
<20>
前記本体部と前記耳掛け部とが、接着剤によって接合されているか、融着によって接合されているか、又は超音波接合されている、前記<1>ないし<19>のいずれか一に記載の温熱具。
<21>
前記接合領域は連続的に又は間欠的に形成されている、前記<1>ないし<20>のいずれか一に記載の温熱具。
【0064】
<22>
前記接合領域と前記非接合領域とは、これらの領域の重複する部分が多くなるように形成されていることが好ましい、前記<1>ないし<21>のいずれか一に記載の温熱具。
<23>
前記耳掛け部がシート材からなり、該シート材に、耳を通すための挿通部が形成されており、
前記本体部と前記耳掛け部とが一方向に延びる線状接合領域において接合されている、前記<1>ないし<22>のいずれか一に記載の温熱具。
<24>
前記耳掛け部は、伸長性を有するシート材で構成されており、
前記シート材の伸長性は、5cm×10cmの該シート材を、500mm/minの速度で長手方向に1.5倍に伸長したときの張力が、10N以下であることが好ましく、5N以下であることがより好ましい、前記<23>に記載の温熱具。
<25>
前記線状接合領域は、前記温熱具の横方向と交差する方向に延びている、前記<23>又は<24>に記載の温熱具。
<26>
前記線状接合領域の横方向外方から前記本体部の横方向外端部までの領域は、第1シートと前記耳掛け部とが接合されていない領域を有する、前記<23>ないし<25>のいずれか一に記載の温熱具。
【0065】
<27>
前記線状接合領域は、該領域の一端が、その他端よりも前記温熱具の横方向内方に位置するように傾斜して形成されている、前記<23>ないし<26>のいずれか一に記載の温熱具。
<28>
前記非接合領域と前記線状接合領域とは、これらの領域の重複する部分が厚み方向において多くなるように形成されていることが好ましい、前記<23>ないし<27>のいずれか一に記載の温熱具。
<29>
前記線状接合領域の幅が、2mm以上であることが好ましく、3mm以上であることがより好ましく、4mm以上であることが更に好ましく、5mm以上であることが一層好ましく、また、20mm以下であることが好ましく、15mm以下であることがより好ましく、12mm以下であることが更に好ましく、10mm以下であることが一層好ましい、前記<23>ないし<28>のいずれか一に記載の温熱具。
<30>
前記耳掛け部はひも状の部材からなる、前記<1>ないし<22>のいずれか一に記載の温熱具。
<31>
前記耳掛け部は弾性体からなる、前記<30>に記載の温熱具。
【0066】
<32>
第1シート及び第2シートはともに不織布であり、第2シートの坪量が第1シートの坪量よりも大きい、前記<1>ないし<31>のいずれか一に記載の温熱具。
<33>
第1シートの坪量は、10g/m以上であることが好ましく、20g/m以上であることがより好ましく、200g/m以下であることが好ましく、130g/m以下であることがより好ましい、前記<32>に記載の温熱具。
<34>
第2シート6の坪量は、10g/m以上であることが好ましく、30g/m以上であることがより好ましく、200g/m以下であることが好ましく、150g/m以下であることがより好ましい、前記<32>又は<33>に記載の温熱具。
<35>
使用時に使用者の両眼を覆う形状を有する本体部と、該本体部に備えられた発熱体と、該本体部に取り付けられ且つ該本体部による使用者の両眼の被覆状態を維持可能な一対の耳掛け部とを備え、 前記本体部は、使用者の肌に近い側に位置する第1シートと、使用者の肌から遠い側に位置する第2シートとを備える温熱具の製造方法であって、
第2シートの一方の面に、非塗布部を有するように接着剤を塗布し、次いで、
第1シートと第2シートの接着剤塗布面とが対向し且つ第1シートと第2シートとの間に前記発熱体が保持されるように、第1シートと第2シートとを接合するとともに、両シート間に非接合領域を形成し、然る後に、
前記本体部と前記耳掛け部とを接合する工程を有し、
前記本体部と前記耳掛け部との接合を、前記本体部と前記耳掛け部との接合領域と、前記非接合領域とが前記温熱具の厚み方向で重なるように行う、温熱具の製造方法。
<36>
使用時に使用者の両眼を覆う形状を有する本体部と、該本体部に備えられた発熱体と、該本体部に取り付けられ且つ該本体部による使用者の両眼の被覆状態を維持可能な一対の耳掛け部とを備え、前記本体部は、使用者の肌に近い側に位置する第1シートと、使用者の肌から遠い側に位置する第2シートとを備える温熱具の製造方法であって、
第1シートの一方の面に、非塗布部を有するように接着剤を塗布し、次いで、
第1シートの接着剤塗布面と第2シートとが対向し且つ第1シートと第2シートとの間に前記発熱体が保持されるように、第1シートと第2シートとを接合するとともに、両シート間に非接合領域を形成し、然る後に、
前記本体部と前記耳掛け部とを接合する工程を有し、
前記本体部と前記耳掛け部との接合を、前記本体部と前記耳掛け部との接合領域と、前記非接合領域とが前記温熱具の厚み方向で重なるように行う、温熱具の製造方法。
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使用時に使用者の両眼を覆う形状を有する本体部と、該本体部に備えられた発熱体と、該本体部に取り付けられ且つ該本体部による使用者の両眼の被覆状態を維持可能な一対の耳掛け部とを備え、前記本体部は、使用者の肌に近い側に位置する第1シートと、使用者の肌から遠い側に位置する第2シートとを備える温熱具の製造方法であって、
第1シートの一方の面と第2シートの一方の面とのそれぞれに、非塗布部を有するように接着剤を塗布し、次いで、
第1シートの接着剤塗布面と第2シートの接着剤塗布面とが対向し且つ第1シートと第2シートとの間に前記発熱体が保持されるように、第1シートと第2シートとを接合するとともに、両シート間に非接合領域を形成し、然る後に、
前記本体部と前記耳掛け部とを接合する工程を有し、
前記本体部と前記耳掛け部との接合を、前記本体部と前記耳掛け部との接合領域と、前記非接合領域とが前記温熱具の厚み方向で重なるように行う、温熱具の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明によれば、温熱具の本体部と耳掛け部との接合強度を保ちつつ、着用者の身体へのフィット性及び柔軟性が向上した温熱具が提供される。
図1
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図8