(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】電子機器の二軸式ヒンジ機構
(51)【国際特許分類】
F16C 11/04 20060101AFI20230519BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20230519BHJP
G06F 1/16 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
F16C11/04 F
H05K5/02 V
G06F1/16 312F
G06F1/16 312J
(21)【出願番号】P 2020040503
(22)【出願日】2020-03-10
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】592245432
【氏名又は名称】スタッフ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093687
【氏名又は名称】富崎 元成
(74)【代理人】
【氏名又は名称】町田 光信
(74)【代理人】
【識別番号】100168468
【氏名又は名称】富崎 曜
(72)【発明者】
【氏名】高橋 孝仁
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-23955(JP,A)
【文献】特開2017-180539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 11/04
H02K 5/02
G06F 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する端部が二つ折りに折り畳み可能に連結された第1筐体及び第2筐体の二軸式ヒンジ機構
と、
前記第1筐体及び前記第2筐体の内面間に渡って配置され、表示面の裏面が前記内面側に配置されたフレキシブルディスプレイ
と
を有する電子機器の二軸式ヒンジ機構において、
前記第1筐体の前記端部に
前記表示面と平行な方向に設けられた第1軸と、
前記第1軸に平行に前記第2筐体の前記端部に設けられた第2軸と、
一端が前記第1軸に揺動自在に軸支され、他端が前記第1筐体に前記第1軸の中心軸線に平行な方向に移動可能に係合する第1レバーと、
一端が前記第2軸に揺動自在に軸支され、他端が前記第2筐体に前記第2軸の中心軸線に平行な方向に移動可能に係合する第2レバーと、
前記第1軸と前記第2軸が挿入され、第1固定カム面と第2固定カム面が形成された固定カムと、
前記第1固定カム面に対向して前記第1レバーの一端に設けられ、前記第1固定カム面に対して相対回転可能で、かつ前記第1固定カム面に当接する第1可動カム面と、
前記第2固定カム面に対向して前記第2レバーの一端に設けられ、前記第2固定カム面に対して相対回転可能で、かつ前記第2固定カム面に当接する第2可動カム面と、
前記第1可動カム面及び第2可動カム面を前記第1固定カム面と第2固定カム面側へ付勢する第1ばねと、
前記固定カムに前記第1軸及び前記第2軸の中心軸線に平行な方向に移動可能に支持され、一端が前記第1可動カム面及び前記第2可動カム面に係合離脱可能な移動ピンと、
前記固定カムに前記第1軸及び前記第2軸の中心軸線に直交する方向に移動可能に支持され、前記移動ピンの他端と当接可能な第1スライドカム面を有するスライドカムと、
前記スライドカムを前記第1スライドカム面が前記移動ピンの他端と当接する方向へ付勢する第2ばねと、
前記スライドカムの第2スライドカム面に当接する当接部を有し、前記第2ばねの付勢力に抗して前記スライドカムの第2スライドカム面を押圧して、前記第2ばねが付勢する移動方向とは逆の移動方向に前記スライドカムを移動させる押圧部材と、
前記第1軸と前記第2軸を支持し、前記押圧部材を移動自在に支持する第1支持部材と
からなることを特徴とする電子機器の二軸式ヒンジ機構。
【請求項2】
請求項
1に記載の電子機器の二軸式ヒンジ機構において、
前記第1軸に平行に前記第1筐体の端部に設けられた第3軸に一端が揺動自在に軸支され、他端が前記第1筐体に固定された第3レバーと、前記第2軸に平行に前記第2筐体の端部に設けられた第4軸に一端が揺動自在に軸支され、他端が前記第2筐体に固定された第4レバーと、前記第3軸と前記第4軸を支持する第2支持部材とからなることを特徴とする電子機器の二軸式ヒンジ機構。
【請求項3】
請求項
1に記載の電子機器の二軸式ヒンジ機構において、
前記第1レバーの他端と前記第1筐体との係合部は、
前記第1レバーの他端に形成された長孔と、
前記第1軸に平行に前記第1筐体に固定され、前記長孔に挿入された第5軸とで構成され、
前記第2レバーの他端と前記第2筐体との係合部は、
前記第2レバーの他端に形成された長孔と、
前記第2軸に平行に前記第2筐体に固定され、前記長孔に挿入された第6軸とで構成されている
ことを特徴とする電子機器の二軸式ヒンジ機構。
【請求項4】
請求項
2に記載の電子機器の二軸式ヒンジ機構において、
前記第1軸の中心軸線と前記第3軸の中心軸線が離間して配置され、
前記第2軸の中心軸線と前記第4軸の中心軸線が離間して配置されている
ことを特徴とする電子機器の二軸式ヒンジ機構。
【請求項5】
請求項
1に記載の電子機器の二軸式ヒンジ機構において、
前記第1ばねは一対で構成され、
一方の前記第1ばねが前記第1レバーの前記第1可動カム面を前記第1固定カム面側へ付勢し、
他方の第1ばねが前記第2レバーの前記第2可動カム面を前記第2固定カム面側へ付勢する
ことを特徴とする電子機器の二軸式ヒンジ機構。
【請求項6】
請求項
1に記載の電子機器の二軸式ヒンジ機構において、
前記第1レバーに形成された第1セグメントギヤと、前記第2レバーに形成され、前記第1セグメントギヤに噛み合う第2セグメントギヤとからなる
ことを特徴とする電子機器の二軸式ヒンジ機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モバイル用電子機器等に使用する電子機器の二軸式ヒンジ機構に関する。更に詳しくは、有機ELパネル等のフレキシブルディスプレイ等を、表示面が筐体の内面側になるように円滑に、かつワンタッチで開くことができる電子機器の二軸式ヒンジ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL等を使用したフレキシブルディスプレイが登場している。このフレキシブルディスプレイとして、本を見開きするかのように、フレキシブルディスプレイを筐体の内面側に折り畳むものが提案されている。特許文献1に記載された折り畳み機構は、フレキシブルディスプレイを有した二つの筐体を2軸で内面側に折り畳むものであり、二つの筐体を同期して折り畳むために、歯車で連動させるものである。この歯車は、筐体に一体形成するか、筐体の外側に別部品として形成するものである。本発明者等は、このフレキシブルディスプレイにおいて、形成される円弧の形を想定内に正確に再現できる、2軸のフレキシブルディスプレイ用ヒンジ機構を提案した(特許文献2)。他方、本発明者等は、携帯電話等の電子機器において、筐体を二つ折りにした折り畳み式の筐体をワンタッチ操作で開くことのできる電子機器の開閉装置を提案した(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2017-510065号
【文献】特願2019-156320号
【文献】特開2017-180539号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電子機器の開閉装置において、二軸のヒンジ機構で、ワンタッチ操作で開くことのできる電子機器の開閉装置は提案されていない。特に、前述したフレキシブルディスプレイ用等の平行する二軸で筐体が開閉する二軸式のヒンジ機構において、押圧部材等を押して、ワンタッチ操作で開くことのできる電子機器の開閉装置は知られていない。フレキシブルディスプレイの表示面が筐体の内面側になるように折り曲げるとき、折り曲げ部の円弧状の曲率は、フレキシブルディスプレイを損傷しないように正確に保つ必要がある。このために平行する二軸で二つの筐体を折り畳む構造が採用されている。この平行する二軸で二つの筐体を折り畳む機構において、操作性を高めるためにワンタッチ操作で筐体を開くことができる機構は知られていない。
【0005】
本発明は、以上のような背景により以下の目的を達成するものである。
本発明の目的は、表示画面を開閉できるモバイル用電子機器等において、ワンタッチ操作で筐体を開くことができる、電子機器の二軸式ヒンジ機構を提供することにある。
本発明の他の目的は、フレキシブルディスプレイの表示画面を開閉できるモバイル用電子機器等において、フレキシブルディスプレイの折り曲げ部の円弧状の先端部が損傷する恐れを軽減出来る電子機器の二軸式ヒンジ機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するために、次の手段を採る。
即ち、本発明1の電子機器の二軸式ヒンジ機構は、
隣接する端部が二つ折りに折り畳み可能に連結された第1筐体(201)及び第2筐体(202)の二軸式ヒンジ機構と、
前記第1筐体(201)及び前記第2筐体(202)の内面(201A,202A)間に渡って配置され、表示面(204A)の裏面(204B)が前記内面(201A,202A)側に配置されたフレキシブルディスプレイ(204)と
を有する電子機器の二軸式ヒンジ機構において、
前記第1筐体(201)の前記端部に[前記折り畳み面に直交する]前記表示面(204A)と平行な方向に設けられた第1軸(21)と、
前記第1軸(21)に平行に前記第2筐体(202)の前記端部に設けられた第2軸(21’)と、
一端が前記第1軸(21)に揺動自在に軸支され、他端が前記第1筐体(201)に前記第1軸(21)の中心軸線に平行な方向に移動可能に係合する第1レバー(2)と、
一端が前記第2軸(21’)に揺動自在に軸支され、他端が前記第2筐体(202)に前記第2軸(21’)の中心軸線に平行な方向に移動可能に係合する第2レバー(2’)と、
前記第1軸(21)と前記第2軸(21’)が挿入され、第1固定カム面(31)と第2固定カム面(31’)が形成された固定カム(3)と、
前記第1固定カム面(31)に対向して前記第1レバー(2)の一端に設けられ、前記第1固定カム面(31)に対して相対回転可能で、かつ前記第1固定カム面(31)に当接する第1可動カム面(22)と、
前記第2固定カム面(31’)に対向して前記第2レバー(2’)の一端に設けられ、前記第2固定カム面(31’)に対して相対回転可能で、かつ前記第2固定カム面(31’)に当接する第2可動カム面(22’)と、
前記第1可動カム面(22)及び第2可動カム面(22’)を前記第1固定カム面(31)と第2固定カム面(31’)側へ付勢する第1ばね(41,41’)と、
前記固定カム(3)に前記第1軸(21)及び前記第2軸(21’)の中心軸線に平行な方向に移動可能に支持され、一端が前記第1可動カム面(22)及び前記第2可動カム面(22’)に係合離脱可能な移動ピン(51)と、
前記固定カム(3)に前記第1軸(21)及び前記第2軸(21’)の中心軸線に直交する方向に移動可能に支持され、前記移動ピン(51)の他端と当接可能な第1スライドカム面(521)を有するスライドカム(52)と、
前記スライドカム(52)を前記第1スライドカム面(521)が前記移動ピン(51)の他端と当接する方向へ付勢する第2ばね(42)と、
前記スライドカム(52)の第2スライドカム面(522)に当接する当接部(531)を有し、前記第2ばね(42)の付勢力に抗して前記スライドカム(52)の第2スライドカム面(522)を押圧して、前記第2ばね(42)が付勢する移動方向とは逆の移動方向に前記スライドカム(52)を移動させる押圧部材(53)と、
前記第1軸(21)と前記第2軸(21’)を支持し、前記押圧部材(53)を移動自在に支持する第1支持部材(54)とからなることを特徴とする。
【0007】
本発明2の電子機器の二軸式ヒンジ機構は、本発明1において、前記第1軸(21)に平行に前記第1筐体(201)の端部に設けられた第3軸(61)に一端が揺動自在に軸支され、他端が前記第1筐体(201)に固定された第3レバー(6)と、前記第2軸(21’)に平行に前記第2筐体(202)の端部に設けられた第4軸(61’)に一端が揺動自在に軸支され、他端が前記第2筐体(202)に固定された第4レバー(6’)と、前記第3軸(61)と前記第4軸(61’)を支持する第2支持部材(55)とからなることを特徴とする。
本発明3の電子機器の二軸式ヒンジ機構は、本発明1において、前記第1レバー(2)の他端と前記第1筐体(201)との係合部は、前記第1レバー(2)の他端に形成された長孔(26)と、前記第1軸(21)に平行に前記第1筐体(201)に固定され、前記長孔(26)に挿入された第5軸(23)とで構成され、
前記第2レバー(2’)の他端と前記第2筐体(202)との係合部は、
前記第2レバー(2’)の他端に形成された長孔(26’)と、前記第2軸(21’)に平行に前記第2筐体(202)に固定され、前記長孔(26’)に挿入された第6軸(23’)とで構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明4の電子機器の二軸式ヒンジ機構は、本発明2において、前記第1軸(21)の中心軸線と前記第3軸(61)の中心軸線が離間して配置され、前記第2軸(21’)の中心軸線と前記第4軸(61’)の中心軸線が離間して配置されていることを特徴とする。
本発明5の電子機器の二軸式ヒンジ機構は、本発明1において、前記第1ばね(41,41’)は一対で構成され、一方の前記第1ばね(41)が前記第1レバー(2)の前記第1可動カム面(22)を前記第1固定カム面(31)側へ付勢し、他方の第1ばね(41’)が前記第2レバー(2’)の前記第2可動カム面(22’)を前記第2固定カム面(31’)側へ付勢することを特徴とする。
【0009】
本発明6の電子機器の二軸式ヒンジ機構は、本発明1において、前記第1レバー(2)に形成された第1セグメントギヤ(27)と、前記第2レバー(2’)に形成され、前記第1セグメントギヤ(27)に噛み合う第2セグメントギヤ(27’)とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電子機器の二軸式ヒンジ機構は、平行する二軸で二つの筐体を折り畳む構造でワンタッチ操作で筐体を開くことができるため、操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態の電子機器の二軸式ヒンジ機構を備えたモバイル用電子機器を示し、筐体を180度開いた状態を示す全体斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の電子機器の二軸式ヒンジ機構の拡大斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態の電子機器の二軸式ヒンジ機構を示し、筐体を内側に折り畳んだ状態を示す全体斜視図である。
【
図6】
図6(a)は、
図3の電子機器の二軸式ヒンジ機構から両端の第3レバーと第4レバーを取り外した状態を示す全体斜視図、
図6(b)は
図6(a)を斜め右側から見た状態を示し、第1レバーを取り外した状態を示す全体斜視図である。
【
図9】
図9は、筐体を180度開いた状態を示す
図8相当図である。
【
図12】
図12(a)から
図12(c)は、筐体の開閉動作説明図であり、カム部を展開図で示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態の電子機器の二軸式ヒンジ機構を備えたモバイル用電子機器を示し、筐体を180度開いた状態を示す全体斜視図である。
図2は
図1の電子機器の二軸式ヒンジ機構の拡大斜視図である。
図1、
図2に示すように、携帯電話等のモバイル用電子機器200は、第1筐体201と第2筐体202で構成されている。第1筐体201の左端部と第2筐体202の右端部が本発明の実施の形態の二軸式ヒンジ機構1で二つ折りに折り畳み可能に連結されている。二軸式ヒンジ機構1は、第1筐体201の左端部と第2筐体202の右端部に取り付けられている。第1筐体201の内面201Aと第2筐体202の内面202Aには、有機EL等のフレキシブルディスプレイ204の表示面204Aの裏面204Bが貼り付けて固定されている。従って、第1筐体201と第2筐体202を二つ折りに折り畳んだ状態で、フレキシブルディスプレイ204の表示面204Aが内面201A、202A側になる。
【0013】
図3は本発明の実施の形態の電子機器の二軸式ヒンジ機構を示し、筐体を内側に折り畳んだ状態を示す全体斜視図、
図4は
図3の分解斜視図、
図5は
図3の拡大分解斜視図である。
図6(a)は、
図3の電子機器の二軸式ヒンジ機構から両端の第3レバーと第4レバーを取り外した状態を示す全体斜視図、
図6(b)は
図6(a)を斜め右側から見た状態を示し、第1レバーを取り外した状態を示す全体斜視図である。
図7は
図3の正面図、
図8は
図7のP矢視図、
図9は、筐体を180度開いた状態を示す
図8相当図である。
図10(a)は
図7のQ矢視図、
図10(b)は
図8のA-A断面図である。
図1から
図10に示すように、二軸式ヒンジ機構1は、第1レバー2、第2レバー2’、第1軸21、第2軸21’、固定カム3、第1可動カム面22、第2可動カム面22’、第1ばね41、41’、移動ピン51、スライドカム52、第2ばね42、押圧部材53、第1支持部材54、第3ばね43、第3レバー6、6、第4レバー6’、6’、第3軸61、61,第4軸61’、61’、第2支持部材55、55、第5軸23、第6軸23’で構成されている。
【0014】
円柱状の第1軸21は、第1筐体201の左端部に折り畳み平面に直交する方向に設けられている。円柱状の第2軸21’は、第2筐体202の右端部に折り畳み平面に直交し、第1軸21に平行に設けられている。第1軸21と第2軸21’は、第1支持部材54に挿入されて支持されている。第1レバー2の下端が第1軸21に揺動自在に、かつ、第1軸21の中心軸線に平行な方向に移動可能に軸支されている。また、第2レバー2’の下端が第2軸21’に揺動自在に、かつ、第2軸21’の中心軸線に平行な方向に移動可能に軸支されている。第1筐体201の左端部には、第1軸21に平行に、第1軸21に隣接して円柱状の第5軸23が固定されている。また、第2筐体202の右端部には、第2軸21’に平行に、第2軸21’に隣接して円柱状の第6軸23’が固定されている。第5軸23は、第1筐体201の左端部に固定された平面視でコの字状の取付板24に固定されている。取付板24は、取付軸25に固定されている。同様に、第6軸23’は、第2筐体202の右端部に固定された平面視でコの字状の取付板24’に固定されている。取付板24’は、取付軸25’に固定されている。第1レバー2の上端に形成された長孔26に第5軸23が挿入され、第1レバー2の上端が第5軸23に沿って、第1軸21の中心軸線に平行な方向に移動可能に軸支されている。同様に、第2レバー2’の上端に形成された長孔26’に第6軸23’が挿入され、第2レバー2’の上端が第6軸23’に沿って、第2軸21’の中心軸線に平行な方向に移動可能に軸支されている。
【0015】
第3軸61、61は、第1筐体201の左端部に、第1レバー2を挟んだ両側に、第1軸21に平行に設けられている。また、第4軸61’、61’は、第2筐体202の右端部に、第2レバー2’を挟んだ両側に、第2軸21’に平行に設けられている。第3軸61、61と第4軸61’、61’は、第2支持部材55、55に各々挿入されて支持されている。第3レバー6、6の下端が第3軸61、61に揺動自在に軸支され、第3レバー6、6の上端が第1筐体201の左端部に固定(カシメや溶接等により)されている。また、第4レバー6’、6’の下端が第4軸61’、61’に揺動自在に軸支され、第4レバー6’、6’の上端が第2筐体202の右端部に固定(カシメや溶接等により)されている。第3レバー6、6の上端に形成された長孔62、62に取付軸(断面が長孔62と同一形状に形成されている)25の両端がきつく挿入されて、第3レバー6、6に取付軸25が固定されている。同様に、第4レバー6’、6’の上端に形成された長孔62’、62’に取付軸(断面が長孔62’と同一形状に形成されている)25’の両端がきつく挿入されて、第4レバー6’、6’に取付軸25’が固定されている。
【0016】
第1レバー2、第2レバー2’と第1支持部材54との間には、第1軸21と第2軸21’が挿入された固定カム3が取り付けられている。固定カム3には、第1レバー2、第2レバー2’に対向して第1固定カム面31、第2固定カム面31’が形成されている。
第1レバー2には、第1固定カム面31に対向して第1固定カム面31に当接する第1可動カム面22が形成されている。第1可動カム面22は、第1レバー2の下端に設けられ、第1固定カム面31に対して相対回転可能である。第2レバー2’には、第2固定カム面31’に対向して第2固定カム面31’に当接する第2可動カム面22’が形成されている。第2可動カム面22’は、第2レバー2の下端に設けられ、第2固定カム面31’に対して相対回転可能である。第1ばね41、41’は一対で構成され、第1軸21に第1ばね41が外嵌し、第2軸21’に第1ばね41’が外嵌している。第1ばね41、41’は、矩形板状のスペーサ56、57に挟持されている。第1ばね41、41’に隣接する第2支持部材55の左端(
図3で見て)に折り曲げ部551が形成されて、スペーサ57は第2支持部材55に固定されている。従って、第1ばね41が第1レバー2の第1可動カム面22を第1固定カム面31側に常時付勢している。同様に、第1ばね41’が第2レバー2’の第2可動カム面22’を第2固定カム面31’側に常時付勢している。
同様に、第1支持部材54に隣接する第2支持部材55の右端(
図3で見て)に折り曲げ部551が形成されて、第1支持部材54は第2支持部材55に固定されている。すなわち、第2支持部材55、55は、同一形状で、
図3で見て左右勝手違いに組み付けられている。
【0017】
図11に示すように、固定カム3には、第1軸21、第2軸21’の中心軸線に平行な方向に移動可能に移動ピン51が保持されている。移動ピン51の右端(
図11で見て)が第1可動カム面22及び第2可動カム面22’に係合離脱可能である。固定カム3には、第1軸21、第2軸21’の中心軸線に直交する方向に移動可能にスライドカム52が支持されている。スライドカム52には、移動ピン51の左端(
図11で見て)と当接可能な第1スライドカム面521が形成されている。固定カム3には、スライドカム52を付勢する第2ばね42が保持され、第1スライドカム面521が移動ピン51の左端と当接する方向へ常時付勢されている。第1支持部材54には、押圧部材53が
図11の左右方向に移動可能に支持され、スライドカム52の第2スライドカム面522に当接する当接部531が押圧部材53に形成されている。押圧部材53は、第2ばね42の付勢力に抗してスライドカム52の第2スライドカム面522を押圧(
図11で見て右方向に)して、第2ばね42が付勢する移動方向とは逆の移動方向にライドカム52を移動させる。
第1支持部材54には、押圧部材53を押圧方向とは反対側(
図11で見て左方向に)に付勢する第3ばね43(
図5参照)が保持されている。押圧部材53の左端側には、押圧部材53を押圧するための円柱状の押し棒7(
図5参照)が配置され、押し棒7は第2支持部材55に
図5の左右方向に移動可能に支持され、指で押して操作される。
【0018】
図2に示すように、第1レバー2に形成された第1セグメントギヤ27と、第2レバー2’に形成された第2セグメントギヤ27’が噛み合って、第1レバー2と第2レバー2’の揺動動作を同期させる。
図8、
図10に示すように、第1軸21の中心軸線と第3軸61の中心軸線が、
図8、
図10の上下方向に距離Lだけ離間して配置されている。また、第2軸21’の中心軸線と第4軸61’の中心軸線が、
図8、
図10の上下方向に距離Lだけ離間して配置されている。従って、第3レバー6、第4レバー6’の揺動軌跡と第1レバー2、第2レバー2’の揺動軌跡の差は、第5軸23、第6軸23’が長孔26、26’に沿ってスライドすることにより吸収される。
【0019】
次に、本発明の実施の形態の電子機器の二軸式ヒンジ機構1の開閉動作を
図12、
図13に従って説明する。
図12、
図13は、第1可動カム面22、第2可動カム面22’、第1固定カム面31、第2固定カム面31’、第1スライドカム面521、第2スライドカム面522を展開図で示すことにより、開閉動作を理解し易くしている。
図8、
図12(a)は、第1筐体201、第2筐体202を内側に折り畳んだ状態を示す。
図12(a)に示すように、第2ばね42がスライドカム52を
図12(a)の右端側に付勢し、第1スライドカム面521のフラット面が移動ピン51の下端と当接している。従って、移動ピン51は
図12(a)の下方に移動できず、第1可動カム面22、第2可動カム面22’は、移動ピン51の上端に当接して移動できないため、第1筐体201、第2筐体202は内側に折り畳んだ状態が維持される。
【0020】
図12(b)に示すように、第1筐体201、第2筐体202を開くために、円柱状の押し棒7を指で押して、第3ばね43の付勢力に抗して押圧部材53を押圧する。すると、第2ばね42の付勢力に抗してスライドカム52の第2スライドカム面522が押圧(
図12(b)で見て左方向に)されて、スライドカム52が
図12(b)で見て左方向に移動する。その結果、第1スライドカム面521のフラット面が移動ピン51の下端から外れ、第1スライドカム面521の下向きの傾斜面に沿って移動ピン51の下端が
図12(b)の下方に移動する。従って、第1可動カム面22、第2可動カム面22’は、第1ばね41、41’の付勢力によって、第1固定カム面31、第2固定カム面31’に沿って移動する。その結果、第1レバー2、第2レバー2’は開く方向に揺動し、第1セグメントギヤ27と第2セグメントギヤ27’が噛み合っているため、第1レバー2、第2レバー2’は開く方向に同期して揺動し、第1筐体201、第2筐体202が円滑に開き始める。
【0021】
図12(c)に示すように、押し棒7から指を離すと、押圧部材53が第3ばね43の付勢力によって
図12(c)の下方に移動する。すると、第2ばね42の付勢力によって、スライドカム52が
図12(c)で見て右方向に移動する。その結果、第1スライドカム面521の下向きの傾斜面に沿って移動ピン51の下端が
図12(c)の上方に移動を始める。第1可動カム面22、第2可動カム面22’は、第1ばね41、41’の付勢力によって、第1固定カム面31、第2固定カム面31’に沿った移動を継続し、第1筐体201、第2筐体202の開き動作が継続される。
【0022】
図13(d)に示すように、移動ピン51の上端が第1可動カム面22、第2可動カム面22’のフラット面に当接するが、第1可動カム面22、第2可動カム面22’は開き時の勢いで、第1固定カム面31、第2固定カム面31’に沿った移動を継続し、第1筐体201、第2筐体202の開き動作が継続される。
図13(e)に示すように、移動ピン51の上端が第1可動カム面22、第2可動カム面22’のフラット面を通過し、第1可動カム面22、第2可動カム面22’は、第1固定カム面31、第2固定カム面31’に沿った移動を継続し、第1筐体201、第2筐体202の開き動作が継続される。
図13(f)は、第1可動カム面22、第2可動カム面22’が最終位置の180度の回転位置に達したときの状態を示している。移動ピン51の下端が第1スライドカム面521のフラット面に当接するため、移動ピン51は
図12(f)の下方に移動できない。第1可動カム面22、第2可動カム面22’は、第1ばね41、41’の付勢力によって、第1固定カム面31、第2固定カム面31’の傾斜の終点に維持され、第1筐体201、第2筐体202は外側に180度開いた状態が維持される。
【0023】
閉じるときは、開くときの逆工程になるが、第1筐体201、第2筐体202を手で持って閉じる操作を行う。この手動操作の場合は、移動ピン51の位置が固定状態にあるので、第1可動カム面22、第2可動カム面22’は、第1ばね41、41’の付勢力に抗し、移動ピン51の上端を乗り上げる状態で、第1可動カム面22、第2可動カム面22’は閉じる方向に移動する。本発明の実施の形態の電子機器の二軸式ヒンジ機構1は、平行する二軸で二つの筐体を折り畳む構造でワンタッチ操作で筐体を開くことができるため、操作性が向上する。また、フレキシブルディスプレイの開閉幅の中央部に有る第1レバー、第2レバーの揺動中心が、フレキシブルディスプレイの開閉幅の両端部に有る第3レバー、第4レバーの揺動中心より下方に配置されている。従って、二つの筐体を折り畳んだときに、フレキシブルディスプレイの折り曲げ部の円弧状の先端部と第1レバー、第2レバーとの間の間隔が広くなり、フレキシブルディスプレイが損傷する恐れを軽減出来るため、好ましい。
【0024】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はこの実施例に限定されることはない。例えば、前述した実施例では、第1ばね41、41’が一対で構成されて、各々が第1レバー2と第2レバー2’を付勢しているが、第1軸21と第2軸21’にまたがって取り付けた1個のばねで第1レバー2と第2レバー2’の両方を付勢してもよい。また、前述した実施例では、第1軸21の中心軸線と第3軸61の中心軸線、第2軸21’の中心軸線と第4軸61’の中心軸線が上下方向に離間して配置されているが、同心上に配置してもよい。また、前述した実施例では、第3ばね43が取り付けられているが、第3ばね43は補助的なばねであるため無くても良い。すなわち、第2ばね42がスライドカム52を押すことで、第2スライドカム面522によって押圧部材53は元の位置に復帰することができる。
【符号の説明】
【0025】
200…モバイル用電子機器(携帯電話)
201…第1筐体
201A…内面
202…第2筐体
202A…内面
204…フレキシブルディスプレイ
204A…表示面
204B…裏面
1…二軸式ヒンジ機構
2…第1レバー
21…第1軸
22…第1可動カム面
23…第5軸
24…取付板
25…取付軸
26…長孔
27…第1セグメントギヤ
2’…第2レバー
21’…第2軸
22’…第2可動カム面
23’…第6軸
24’…取付板
25’…取付軸
26’…長孔
27’…第2セグメントギヤ
3…固定カム
31…第1固定カム面
31’…第2固定カム面
41、41’…第1ばね
42…第2ばね
43…第3ばね
51…移動ピン
52…スライドカム
521…第1スライドカム面
522…第2スライドカム面
53…押圧部材
531…当接部
54…第1支持部材
55…第2支持部材
551…折り曲げ部
56、57…スペーサ
6…第3レバー
61…第3軸
62…長孔
6’…第4レバー
61’…第4軸
62’…長孔
7…押し棒