(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】人毛繊維処理剤
(51)【国際特許分類】
A41G 3/00 20060101AFI20230519BHJP
D06M 15/41 20060101ALI20230519BHJP
D06M 101/12 20060101ALN20230519BHJP
【FI】
A41G3/00 A
D06M15/41
D06M101:12
(21)【出願番号】P 2019022420
(22)【出願日】2019-02-12
【審査請求日】2021-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2018024955
(32)【優先日】2018-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 淳一
【審査官】村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-218397(JP,A)
【文献】特開2006-016310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 15/41
D06M 101/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が自由端である人毛繊維を処理するための、単一又は複数の組成物から構成される人毛繊維処理剤であって、その組成中に以下の成分(A)~(C)を含有する人毛繊維処理剤。
(A):ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒドの水和物
、グリオキサール、グリオキサールの水和物、グルタルアルデヒド、及びグルタルアルデヒドの水和物から選ばれる少なくとも1種のホルムアルデヒド誘導体
(B):メタ位の少なくとも1ヶ所に電子供与基を有し、オルト位とパラ位の少なくとも一か所が水素原子であるフェノール化合物(ただし、メタ位の電子供与基は隣接する炭素原子と共に水酸基が置換してもよいベンゼン環を形成してもよい)
(C):水
【請求項2】
成分(A)の含有量が0.1質量%以上60質量%以下である、請求項1に記載の人毛繊維処理剤。
【請求項3】
成分(B)の含有量が0.1質量%以上60質量%以下である、請求項1又は2に記載の人毛繊維処理剤。
【請求項4】
成分(B)が次の成分(B1)である請求項1~3のいずれか1項に記載の人毛繊維処理剤。
(B1):一般式(1)で表されるレゾルシン誘導体
【化1】
〔式中、
A
1~A
4は、同一でも異なってもよく、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基若しくはその塩、スルホン酸基若しくはその塩、炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基若しくはアルケニル基、又は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基若しくはアルケニルオキシ基を示す。〕
【請求項5】
成分(B)が次の成分(B2)である請求項1~3のいずれか1項に記載の人毛繊維処理剤。
(B2):一般式(2)又は(3)で表されるナフトール誘導体
【化2】
〔式中、
R
1は、水素原子又はメチル基を示し、
A
5は、水素原子、炭素数1~12の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基若しくはアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数7~12のアラルキル基若しくはアリールアルケニル基、炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基若しくはアルケニルオキシ基、ハロゲン原子又は-CO-R
2(R
2は炭素数1~12の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基若しくはアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数7~12のアラルキル基若しくはアリールアルケニル基又は置換基を有してもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基)を示し、
Dは、水素原子、水酸基、メチル基又は炭素数1~12の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基若しくはアルケニルオキシ基を示し、
Eは、水素原子、水酸基、炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基若しくはアルケニル基、又は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基若しくはアルケニルオキシ基を示し、
Gは、水酸基、炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基若しくはアルケニル基、又は炭素数1~6のアルコキシ基を示し、nは0から2の整数を示す。〕
【請求項6】
成分(B)が次の成分(B3)である請求項1~3のいずれか1項に記載の人毛繊維処理剤。
(B3):一般式(4)で表される化合物
【化3】
〔式中、
R
3は、水素原子又はメチル基を示し、
Xは、水素原子、水酸基又はメトキシ基を示し、
R
4は、水酸基又はメトキシ基が3個まで置換してもよく1,3-ジオキソランとの縮合環を形成してもよい芳香族炭化水素基を示し、
R
5は、水酸基、メトキシ基、若しくは水酸基若しくはメトキシ基が3個まで置換してもよく1,3-ジオキソランとの縮合環を形成してもよい芳香族炭化水素基、又は水酸基若しくはメトキシ基が3個まで置換してもよいアリールカルボニルオキシ基若しくはアラルキルカルボニルオキシ基を示す。〕
【請求項7】
下記工程(i)を含む人毛繊維処理方法。
(i)加熱下で、請求項1~6のいずれかに記載の人毛繊維処理剤に両端が自由端である人毛繊維を浸漬するステップ
【請求項8】
人毛繊維処理剤に人毛繊維を浸漬する際の浴比が、(人毛繊維処理剤質量)/(人毛繊維質量)=2以上である請求項7に記載の人毛繊維処理方法。
【請求項9】
工程(i)の後、更に下記工程(ii)を行う、請求項7又は8に記載の人毛繊維処理方法。
(ii)成分(B1)及び(C)を含有する表面仕上げ剤に人毛繊維を浸漬するステップ
(B1):一般式(1)で表されるレゾルシン誘導体
【化4】
〔式中、
A
1~A
4は、同一でも異なってもよく、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基若しくはその塩、スルホン酸基若しくはその塩、炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基若しくはアルケニル基、又は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基若しくはアルケニルオキシ基を示す。〕
(C):水
【請求項10】
請求項7~9のいずれか1項に記載の人毛繊維処理方法によって、かつら用人毛繊維を処理する工程を含む、かつらの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業素材としての人毛繊維の形状を半永久的又は永久的に変形する人毛繊維処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、かつらに植毛する繊維として、人工毛を用いたものと人毛を用いたものが広く知られている。
【0003】
人工毛を用いたかつらの利点としては、耐熱性が高くカールアイロンなどの熱器具により容易にストレート毛に対してカールを形成したりカール毛をストレート化したりすることができ(以下、「形状付与性」という)、また、入浴や洗髪等の高温多湿の条件下においても熱器具で形成したカール又はストレートの形状を保持する(以下、「形状持続性」という)ことが挙げられる。更に、人工毛を用いたかつらは、人毛に比べて剛直で強度(耐久性)が高いという点でも優れている。一方で人工毛を用いたかつらには欠点があり、表面が平滑なため光沢が強く、風合いが不自然であるため、自然に髪を装うというかつら本来の目的が達成されづらい。
【0004】
人毛を用いたかつらの利点としては、風合いや光沢が自毛に近く、装着時に自然な外観が得られることが挙げられる。かつらを装着する人の多くは、装着していることを周囲に知られたくないという事情があるため、自然な外観が得られることは大きな利点である。
【0005】
例えば、特許文献1には、人毛と特定の物性を有するポリエステル系繊維とを混合することで、人毛の優れた特性を損なうことなく、形状持続性に劣る人毛の欠点を改善した毛髪用繊維束が開示されている。また、特許文献2には、再生コラーゲン繊維と人毛とをブレンドすることで、人毛製品の欠点であるフリッツの蓄積が改善されると共に、再生コラーゲン繊維の欠点であるパーマネントウェーブ性能を併せ持った頭飾製品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2005/037000号パンフレット
【文献】特開2007-177370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在、かつら等の頭飾製品に使用されている人毛は、均一な形状や色を付与するために、キューティクルを化学処理により除去することに始まり、脱色、染色など多くの処理工程を経るため、その間に損傷する場合があり(特許文献1)、耐久性に問題があることが知られている(特許文献2)。
【0008】
また、近年では、美意識の高まりから見た目を重視する人が増え、更に、より耐久性のあるかつらが求められるようになっている。
【0009】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の技術は、人毛と人工毛とを混合したものである以上、見た目が不自然であることや感触に劣るという欠点は依然として存在しており、見た目の自然さという点において十分とはいえないものであった。
【0010】
したがって本発明は、人毛の自然な見た目を保持したまま、形状付与性、形状持続性、耐久性に優れるかつら用人毛繊維を製造するための人毛繊維処理剤及び人毛繊維処理方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、かつらに植毛する人毛繊維、もしくは人毛繊維が植毛されたかつらを、特定のアルデヒド化合物と特定のフェノール化合物を含有する組成物で処理すると、人毛繊維に形状持続性を与えることができるばかりでなく、人毛繊維の強度も向上でき、それにより耐久性も向上し、その結果、処理された人毛繊維が形状持続性、自然な光沢、感触の良さ、高い耐久性の全てを満たすことを見出し、発明を完成した。
【0012】
本発明は、両端が自由端である人毛繊維を処理するための、単一又は複数の組成物から構成される人毛繊維処理剤であって、その組成中に以下の成分(A)~(C)を含有する人毛繊維処理剤を提供するものである。
(A):ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒドの水和物、グリオキシル酸、グリオキシル酸の水和物、グリオキシル酸塩、グリオキサール、グリオキサールの水和物、グルタルアルデヒド、及びグルタルアルデヒドの水和物から選ばれる少なくとも1種のホルムアルデヒド誘導体
(B):メタ位の少なくとも1ヶ所に電子供与基を有し、オルト位とパラ位の少なくとも一か所が水素原子であるフェノール化合物(ただし、メタ位の電子供与基は隣接する炭素原子と共に水酸基が置換してもよいベンゼン環を形成してもよい)
(C):水
【0013】
更に本発明は、下記工程(i)を含む人毛繊維処理方法を提供するものである。
(i)加熱下で、上記の人毛繊維処理剤に両端が自由端である人毛繊維を浸漬するステップ
【0014】
更に本発明は、上記の人毛繊維処理方法によって、かつら用人毛繊維を処理する工程を含む、かつらの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、人毛の自然な見た目及び感触の良さを保持したまま、形状持続性、耐久性に優れるかつら用人毛繊維を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明において、両端が自由端である人毛繊維とは、人の頭部から分離された頭髪であって、かつら、ヘアエクステンション、植毛用毛髪等の工業素材や工芸素材として使用される人毛繊維をいう。
【0017】
〔成分(A):特定のアルデヒド化合物〕
成分(A)は、ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒドの水和物、グリオキシル酸、グリオキシル酸の水和物、グリオキシル酸塩、グリオキサール、グリオキサールの水和物、グルタルアルデヒド、及びグルタルアルデヒドの水和物から選ばれる少なくとも1種のホルムアルデヒド誘導体である。
【0018】
成分(A)のうち、ホルムアルデヒドの水和物としてはホルムアルデヒド一水和物(メタンジオール)、グリオキシル酸の水和物としてはグリオキシル酸一水和物、グリオキサールの水和物としてはグリオキサール一水和物、グリオキサール二水和物、グルタルアルデヒドの水和物としては、グルタルアルデヒド一水和物、グルタルアルデヒド二水和物が挙げられる。また、前記化合物の塩としては、例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩が挙げられる。
【0019】
これらの成分(A)のうち、処理後の人毛繊維により高い形状持続性と耐久性を付与する観点から、ホルムアルデヒド、グリオキシル酸から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、ホルムアルデヒドを含むことがより好ましい。
【0020】
本発明の人毛繊維処理剤中における成分(A)の含有量は、処理後の人毛繊維により高い形状持続性と耐久性を付与する観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2.5質量%以上、更により好ましくは5質量%以上であり、また、上述の観点に加え、処方適合性の観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、更により好ましくは35質量%以下、更により好ましくは30質量%以下、更により好ましくは20質量%以下、更により好ましくは15質量%以下である。
すなわち、本発明の人毛繊維処理剤中における成分(A)の含有量は、処理後の人毛繊維により高い形状持続性と強度を付与する観点及び処方適合性の観点から、好ましくは0.1~60質量%、より好ましくは1~50質量%、更に好ましくは2.5~40質量%、更により好ましくは5~35質量%、更により好ましくは5~30質量%、更により好ましくは5~20質量%、更に好ましくは5~15質量%である。
【0021】
〔成分(B):特定のフェノール化合物〕
成分(B)は、メタ位の少なくとも1ヶ所、好ましくは2ヶ所に電子供与基を有し、オルト位とパラ位の少なくとも1ヶ所が水素原子であるフェノール化合物である。なお、該フェノール化合物のメタ位の電子供与基は隣接する炭素原子と共にベンゼン環を形成してもよく、該ベンゼン環は更に水酸基が置換していてもよい。成分(B)の分子量は110以上が好ましく、人毛繊維内への良好な浸透性の観点から1000以下が好ましく、700以下がより好ましく、500以下が更に好ましい。成分(B)のフェノール化合物としては、例えば、次の成分(B1)、(B2)及び(B3)が挙げられる。
【0022】
(B1)一般式(1)で表されるレゾルシン誘導体
(B2)一般式(2)又は(3)で表されるナフトール誘導体
(B3)一般式(4)で表されるフラバン-3-オール(Flavan-3-ol)誘導体
【0023】
成分(B1)は、次の一般式(1)で表される化合物である。
【0024】
【0025】
〔式中、
A1~A4は、同一でも異なってもよく、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基若しくはその塩、スルホン酸基若しくはその塩、炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基若しくはアルケニル基、又は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基若しくはアルケニルオキシ基を示す。〕
【0026】
成分(B1)としては、例えば、レゾルシン、2-メチルレゾルシン、4-クロロレゾルシン、ピロガロール等が挙げられる。
【0027】
成分(B2)は、次の一般式(2)又は(3)で表される化合物である。
【0028】
【0029】
〔式中、
R1は、水素原子又はメチル基を示し、
A5は、水素原子、炭素数1~12の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基若しくはアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数7~12のアラルキル基若しくはアリールアルケニル基、炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基若しくはアルケニルオキシ基、ハロゲン原子又は-CO-R2(R2は炭素数1~12の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基若しくはアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数7~12のアラルキル基若しくはアリールアルケニル基又は置換基を有してもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基)を示し、
Dは、水素原子、水酸基、メチル基又は炭素数1~12の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基若しくはアルケニルオキシ基を示し、
Eは、水素原子、水酸基、炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基若しくはアルケニル基、又は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基若しくはアルケニルオキシ基を示し、
Gは、水酸基、炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基若しくはアルケニル基、又は炭素数1~6のアルコキシ基を示し、nは0から2の整数を示す。〕
【0030】
一般式(2)又は(3)で示されるナフトール誘導体としては、一般式(2)又は(3)中、R1が水素原子又は炭素数1~4のアルキル基若しくはアルケニルであるものが好ましく、水素原子であるものがより好ましい。
また、A5が水素原子、水酸基、炭素数1~4の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又は炭素数1~4のアルコキシ基であるものが好ましく、水素原子又は水酸基であるものがより好ましい。
また、Dが水素原子、水酸基、炭素数1~4の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又は炭素数1~4のアルコキシ基であるものが好ましい。
また、Eが水素原子、水酸基又は炭素数1~4のアルキル基若しくは炭素数1~4のアルコキシ基であるものが好ましい。
【0031】
このような化合物としては、1-ナフトール、2-ナフトール、3-メチルナフタレン-1-オール、ナフタレン-1,5-ジオール、ナフタレン-1,8-ジオール等が挙げられる。
【0032】
化合物(B3)は、次の一般式(4)で表されるフラバン-3-オール誘導体である。
【0033】
【0034】
〔式中、
R3は、水素原子又はメチル基を示し、
Xは、水素原子、水酸基又はメトキシ基を示し、
R4は、水酸基又はメトキシ基が3個まで置換してもよく1,3-ジオキソランとの縮合環を形成してもよい芳香族炭化水素基を示し、
R5は、水酸基、メトキシ基、若しくは水酸基若しくはメトキシ基が3個まで置換してもよく1,3-ジオキソランとの縮合環を形成してもよい芳香族炭化水素基、又は水酸基若しくはメトキシ基が3個まで置換してもよいアリールカルボニルオキシ基若しくはアラルキルカルボニルオキシ基を示す。〕
【0035】
一般式(4)で表される化合物の分子量は、分子量150以上が好ましい。また、人毛繊維内部への良好な浸透性の観点から、分子量1000以下、更には700以下、更には500以下が好ましい。
【0036】
成分(B3)としては、カテキン(Catechin)、エピカテキン(Epicatechin)、エピガロカテキン(Epigallocatechin)、カテキンガレート(Catechin gallate)、エピカテキンガレート(Epicatechin gallate)、エピガロカテキンガレート(Epigallocatechin gallate)等が挙げられ、カテキン、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレートから選ばれる1種以上が好ましい。また、緑茶抽出物等、上記の化合物を含む混合物を利用することもできる。
【0037】
成分(B)の中でも、人毛繊維内で形成する成分(A)と成分(B)との縮合物により本発明の人毛繊維処理剤による処理後の人毛繊維形状の変化をより顕著にし、人毛繊維の形状持続性と耐久性をより一層優れたものとし、人毛の自然な見た目及び感触の良さも一層優れたものとする観点から、1-ナフトール、2-ナフトール、3-メチルナフタレン-1-オール、ナフタレン-1,5-ジオール、ナフタレン-1,8-ジオール、カテキン(Catechin)、エピカテキン(Epicatechin)、エピガロカテキン(Epigallocatechin)、カテキンガレート(Catechin gallate)、エピカテキンガレート(Epicatechin gallate)、エピガロカテキンガレート(Epigallocatechin gallate)から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、カテキン(Catechin)、エピカテキン(Epicatechin)、エピガロカテキン(Epigallocatechin)、カテキンガレート(Catechin gallate)、エピカテキンガレート(Epicatechin gallate)、エピガロカテキンガレート(Epigallocatechin gallate)から選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
【0038】
成分(B)は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができ、(B1)~(B3)の2タイプ以上を併用することもできる。本願発明の構成で人毛繊維により高い形状持続性と耐久性を付与できる観点及び感触性を高める観点からは(B2)及び(B3)から選ばれる1種以上が好ましい。
【0039】
本発明の人毛繊維処理剤中における成分(B)全体としての合計含有量は、処理後の人毛繊維により高い形状持続性と耐久性を付与する観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2.5質量%以上、更により好ましくは5質量%以上であり、また、上記の観点に加え、毛髪表面の感触を向上させる観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下、更により好ましくは30質量%以下である。
すなわち、本発明の人毛繊維処理剤中における成分(B)の含有量は、処理後の人毛繊維により高い形状持続性と耐久性を付与する観点及び毛髪表面の感触を向上させる観点から、好ましくは0.1~60質量%、より好ましくは1~50質量%、更に好ましくは2.5~40質量%、更により好ましくは5~35質量%、更により好ましくは5~30質量%である。
【0040】
本発明の人毛繊維処理剤により人毛繊維に適用される成分(A)に対する成分(B)のモル比(B)/(A)は、人毛繊維内で形成する成分(A)と成分(B)との縮合物により、処理後の人毛繊維の形状持続性と耐久性をより一層優れたものとする観点から、好ましくは0.005以上、より好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.05以上、更により好ましくは0.1以上、更により好ましくは0.5以上であり、また、良好な感触の観点から、好ましくは5未満、より好ましくは4以下、更に好ましくは3以下、更により好ましくは2以下、更により好ましくは1.8以下である。
すなわち、成分(A)に対する成分(B)のモル比(B)/(A)は、処理後の人毛繊維の形状持続性と耐久性をより一層優れたものとする観点及び良好な感触の観点から、好ましくは0.005以上5未満、より好ましくは0.01~4、更に好ましくは0.05~3、更により好ましくは0.1~2、更により好ましくは0.5~1.8である。
【0041】
〔成分(C):水〕
本発明の人毛繊維処理剤は、水を媒体とする。本発明の人毛繊維処理剤中における成分(C)の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、更により好ましくは40質量%以上であり、また好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは95質量%以下、更により好ましくは90質量%以下である。
すなわち、本発明の人毛繊維処理剤中における成分(C)の含有量は、好ましくは10~99質量%、より好ましくは20~97質量%、更に好ましくは30~95質量%、更により好ましくは40~90質量%である。
【0042】
本発明の人毛繊維処理剤は、一剤式でも、二剤式等の多剤式でも、いずれの形態とすることもできる。なかでも、成分(A)と成分(B)の人毛繊維内への浸透性を良好にし、本発明の効果を高くする観点から、成分(A)と成分(B)とをそれぞれ別の剤に含有する多剤式、更には二剤式とすることがより好ましい。多剤式の場合、本発明においては成分(B)を含有する剤を第1剤、成分(A)を含有する剤を第2剤とする。
【0043】
多剤式の場合、第1剤中の成分(B)の含有量は、処理後の人毛繊維により高い形状持続性と耐久性を付与する観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2.5質量%以上、更により好ましくは5質量%以上であり、また好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下、更により好ましくは30質量%以下である。
すなわち、第1剤中における成分(B)の含有量は、処理後の人毛繊維により高い形状持続性と耐久性を付与する観点から、好ましくは0.1~50質量%、より好ましくは1~40質量%、更に好ましくは2.5~35質量%、更により好ましくは5~30質量%である。
【0044】
多剤式の場合、第2剤中の成分(A)の含有量は、処理後の人毛繊維により高い形状持続性と耐久性を付与する観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2.5質量%以上、更により好ましくは5質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下、更により好ましくは30質量%以下である。
すなわち、第2剤中における成分(A)の含有量は、処理後の人毛繊維により高い形状持続性と耐久性を付与する観点から、好ましくは0.1~50質量%、より好ましくは1~40質量%、更に好ましくは2.5~35質量%、更により好ましくは5~30質量%である。
【0045】
多剤式において第1剤と第2剤等とを混合して使用する場合、その混合比は特に定めない。本発明においては、成分(A)と成分(B)の人毛繊維内への浸透性を良好にし、本発明の効果を高くする観点から、第1剤と第2剤等とを混合して得られる合剤後の組成物が本発明の人毛繊維処理剤となることが好ましい。従って、第1剤と第2剤等とを混合して使用する多剤式の場合、特に定めが無い場合には各成分の含有量は合剤後の組成物中における含有量である。
【0046】
人毛繊維を多剤式の第1剤と第2剤に逐次浸漬して処理することもできる。すなわち、最初に第1剤に人毛繊維を浸漬し、次いで第1剤で処理された人毛繊維を第2剤に浸漬し処理する方法である。この場合には第1剤と第2剤を等量混合したものと仮定した混合液中の含有量として計算すればよい。また、多剤式にする場合、成分(C)は各剤の溶媒として含有することができ、成分(C)は第1剤と第2剤の両方に入っていることが好ましい。
【0047】
一剤式の場合、剤のpHは、毛髪への浸透性を向上させる観点から、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.8以下、更に好ましくは4.5以下であり、また、毛髪ダメージ抑制の観点から、好ましくは0以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは1.0以上である。また、二剤式等の多剤式の場合、各剤のpHは、毛髪への浸透性を向上させる観点から、好ましくは6.0以下、より好ましくは5.8以下、更に好ましくは5.5以下であり、また、毛髪ダメージ抑制の観点から、好ましくは0以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは1.0以上である。多剤式の場合は第1剤と第2剤を等量混合したときのpHが前記一剤式について示した範囲となることが好ましい。なお、本発明におけるpHは25℃のときの値である。
すなわち、一剤式の場合、剤のpHは、毛髪への浸透性を向上させる観点及び毛髪ダメージを抑制する観点から、好ましくは0~5.0、より好ましくは0.5~4.8、更に好ましくは1.0~4.5である。また、二剤式等の多剤式の場合、各剤のpHは、毛髪への浸透性を向上させる観点及びまた、毛髪ダメージを抑制する観点から、好ましくは0~6.0、より好ましくは0.5~5.8、更に好ましくは1.0~5.5である。
【0048】
本発明の人毛繊維処理剤は、処理後の人毛繊維の感触を改善し、本願発明の効果を一層向上させる観点から、カチオン性界面活性剤を含有することが好ましい。カチオン性界面活性剤は1個の炭素数8~24のアルキル基及び3個の炭素数1~4のアルキル基を有するモノ長鎖アルキル四級アンモニウム塩が好ましい。
【0049】
好ましくは、少なくとも1種のモノ長鎖アルキル四級アンモニウム界面活性剤は、下記一般式で表される化合物から選択される。
【0050】
【0051】
〔式中、R6は炭素数8~22の飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、R10-CO-NH-(CH2)m-又はR10-CO-O-(CH2)m-(R10は炭素数7~21の飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖のアルキル鎖を示し、mは1~4の整数を示す)を示し、R7、R8及びR9は独立して、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のヒドロキシルアルキル基を示し、X-は塩化物イオン、臭化物イオン、メトサルフェートイオン又はエトサルフェートイオンを示す。〕
【0052】
好適なカチオン性界面活性剤としては、例えば、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘントリモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアラミドプロピルトリモニウムクロリド等の長鎖四級アンモニウム化合物が挙げられ、これらは単独で使用することもでき、これらの混合物として使用することもできる。
【0053】
本発明の人毛繊維処理剤中におけるカチオン性界面活性剤の含有量は、処理後の人毛繊維の感触を改善し、本願発明の効果を一層向上させる観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。人毛繊維処理剤が多剤式である場合、カチオン性界面活性剤は第1剤に含有してもよく、第2剤に含有してもよく、第1剤と第2剤の両方に含有していてもよい。
【0054】
また、本発明の人毛繊維処理剤は、処理後の人毛繊維の感触を改善し、まとまりを良くする観点からシリコーンを含むことが好ましい。シリコーンとしてはジメチルポリシロキサン、アミノ変性シリコーンから選ばれる1種以上が好ましい。
【0055】
ジメチルポリシロキサンとしては、いずれの環状又は非環状のジメチルポリシロキサンポリマーを用いることもでき、その例としてSH200シリーズ、BY22-019、BY22-020、BY11-026、B22-029、BY22-034、BY22-050A、BY22-055、BY22-060、BY22-083、FZ-4188(いずれも東レ・ダウコーニング株式会社)、KF-9088、KM-900シリーズ、MK-15H、MK-88(いずれも信越化学工業株式会社)が挙げられる。
【0056】
アミノ変性シリコーンとしては、アミノ基又はアンモニウム基を有するあらゆるシリコーンを用いることができ、その例として、全部又は一部の末端ヒドロキシル基がメチル基等で末端封止されたアミノ変性シリコーンオイル及び末端封止されていないアモジメチコンが挙げられる。処理後の人毛繊維の感触を改善し、まとまりを良くする観点から好ましいアミノ変性シリコーンとして、例えば次式で示される化合物が挙げられる。
【0057】
【0058】
〔式中、R'は水素原子、水酸基又はRXを示し、RXは置換又は非置換の炭素数1~20の一価炭化水素基を示し、JはRX、R"-(NHCH2CH2)aNH2、ORX又は水酸基を示し、R"は炭素数1~8の二価炭化水素基を示し、aは0~3の数を示し、b及びcはその和が数平均で、10以上20000未満、好ましくは20以上3000未満、より好ましくは30以上1000未満、更に好ましくは40以上800未満となる数を示す。〕
【0059】
好適なアミノ変性シリコーンの市販品の具体例としては、SF8452C、SS3551(いずれも東レ・ダウコーニング株式会社)、KF-8004、KF-867S、KF-8015(いずれも信越化学工業株式会社)等のアミノ変性シリコーンオイル、SM8704C、SM8904、BY22-079、FZ-4671、FZ4672(いずれも東レ・ダウコーニング株式会社)等のアモジメチコンエマルションが挙げられる。
【0060】
本発明の人毛繊維処理剤中におけるシリコーンの含有量は、処理後の人毛繊維の感触を改善し、本願発明の効果を一層向上させる観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。人毛繊維処理剤が多剤式である場合、シリコーンは第1剤に含有してもよく、第2剤に含有してもよく、第1剤と第2剤の両方に含有していてもよい。
【0061】
また、本発明の人毛繊維処理剤は、処理後の人毛繊維の感触を改善する観点からカチオン性ポリマーを含有することが好ましい。
【0062】
カチオン性ポリマーは、カチオン基又はカチオン基にイオン化され得る基を有するポリマーをいい、全体としてカチオン性となる両性ポリマーも含まれる。すなわち、ポリマー鎖の側鎖にアミノ基若しくはアンモニウム基を含むか、又はジアリル4級アンモニウム塩を構成単位として含む水溶液のもの、例えばカチオン化セルロース誘導体、カチオン性澱粉、カチオン化グアーガム誘導体、ジアリル4級アンモニウム塩の重合体又は共重合体、4級化ポリビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。これらのうち、すすぎ時やシャンプー時の感触の柔らかさ、滑らかさ及び指の通り易さ、乾燥時のまとまり易さ及び保湿性という効果及び剤の安定性を向上させる観点から、ジアリル4級アンモニウム塩を構成単位として含むポリマー、4級化ポリビニルピロリドン誘導体、カチオン化セルロース誘導体から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、ジアリル4級アンモニウム塩の重合体又は共重合体、カチオン化セルロース誘導体から選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
【0063】
好適なジアリル4級アンモニウム塩の重合体又は共重合体の具体例としては、塩化ジメチルジアリルアンモニウム重合体(ポリクオタニウム-6、例えばマーコート100;ルーブリゾール・アドバンスト・マテリアルズ社)、塩化ジメチルジアリルアンモニウム/アクリル酸共重合体(ポリクオタニウム-22、例えばマーコート280、同295;ルーブリゾール・アドバンスト・マテリアルズ社)、塩化ジメチルジアリルアンモニウム/アクリルアミド共重合体(ポリクオタニウム-7、例えばマーコート550;ルーブリゾール・アドバンスト・マテリアルズ社)等が挙げられる。
【0064】
好適な4級化ポリビニルピロリドン誘導体の具体例としては、ビニルピロリドンコポリマーとジメチルアミノエチルメタクリレートとを重合して得られるポリマー(ポリクオタニウム11、例えばガフカット734、ガフカット755、ガフカット755N(以上、アシュランド社))が挙げられる。
【0065】
好適なカチオン化セルロースの具体例としては、ヒドロキシセルロースにグリシジルトリメチルアンモニウムクロライドを負荷したポリマー(ポリクオタニウム10、例えばレオガードG、同GP(以上、ライオン社)、ポリマーJR-125、同JR-400、同JR-30M、同LR-400、同LR-30M(以上、アマーコール社))や、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド(ポリクオタニウム-4、例えばセルコートH-100、同L-200(以上、アクゾノーベル社))等が挙げられる。
【0066】
本発明の人毛繊維処理剤中におけるカチオン性ポリマーの含有量は、処理後の人毛繊維の感触を改善する観点から、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。人毛繊維処理剤が多剤式である場合、カチオン性ポリマーは第1剤に含有してもよく、第2剤に含有してもよく、第1剤と第2剤の両方に含有していてもよい。
【0067】
更に、本発明の人毛繊維処理剤には、通常含有する程度の量の酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤としては毛髪化粧料の分野で一般的に用いられているものであればよく、例えばアスコルビン酸等が挙げられる。
【0068】
〔人毛繊維処理方法〕
本発明の人毛繊維処理剤を用いて、下記工程(i)を含む方法で人毛繊維を処理することにより、人毛繊維に形状持続性と高い耐久性を付与することができる。
(i)加熱下で、本発明の人毛繊維処理剤に両端が自由端である人毛繊維を浸漬するステップ
【0069】
工程(i)において、人毛繊維処理剤に浸漬する人毛繊維は、乾燥していても濡れていてもよい。人毛繊維を浸漬する人毛繊維処理剤の量は、人毛繊維の質量に対する浴比で(人毛繊維処理剤の質量/人毛繊維の質量)で、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは5以上、更に好ましくは10以上、更に好ましくは20以上であり、また好ましくは500以下、より好ましくは250以下、更に好ましくは100以下である。
すなわち、前記浴比は、好ましくは2~500、より好ましくは3~250、更に好ましくは5~100、更により好ましくは10~100、更により好ましくは20~100である。
【0070】
また、工程(i)では、あらかじめ両端が自由端である人毛繊維をカーラー等で固定し、次いで、加熱下で、本発明の人毛繊維処理剤に浸漬してもよい。このようにすることで、人毛繊維に対し、形状持続性と高い耐久性に加え、所望の形状を同時に付与することができる。
【0071】
工程(i)における人毛繊維処理剤への人毛繊維の浸漬は、加熱下において行われ、この加熱は人毛繊維処理剤を加温することで行われる。なお、この加熱は、加熱状態の人毛繊維処理剤に人毛繊維を浸漬することで行ってもよいが、低温の人毛繊維処理剤に人毛繊維を浸漬した後加熱することで行ってもよい。人毛繊維処理剤の温度は、成分(A)、成分(B)と人毛繊維内のタンパク質との相互作用を大きくし、また人毛繊維内において成分(A)と成分(B)との縮合反応を促進することで本発明の効果を得るため、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、また、加熱中の処理剤が激しく沸騰して人毛繊維同士が絡まり、以降の工程での操作性が低下するのを防ぐため、好ましくは100℃未満、より好ましくは99℃以下である。
【0072】
工程(i)における浸漬時間は、使用する加熱温度によって適宜選ばれるが、人毛繊維処理剤を人毛繊維内に浸透・拡散させ、十分な重合を起こす観点から、好ましくは15分以上、より好ましくは30分以上、更に好ましくは1時間以上であり、また、人毛繊維ダメージ抑制のため、好ましくは48時間以下、より好ましくは24時間以下、更に好ましくは12時間以下である。
【0073】
なお、人毛繊維処理剤が多剤式の場合、成分(B)を含有する第1剤と成分(A)を含有する第2剤とを混合してから人毛繊維を浸漬してもよいし、人毛繊維を第1剤と第2剤に逐次浸漬してもよい。第1剤と第2剤に逐次浸漬する場合、人毛繊維処理剤の浸透を促進し、効果を高める観点から、人毛繊維を第1剤に浸漬して一定時間そのまま維持した後、第2剤に浸漬してもよい。その場合の第1剤に浸漬する時間は、人毛繊維処理剤を人毛繊維内に浸透・拡散させるため、好ましくは1分以上、より好ましくは3分以上、更に好ましくは5分以上であり、また、好ましくは6時間以下、より好ましくは4時間以下、更に好ましくは2時間以下である。そしてこのとき、加温してもよく、加温する場合は40~90℃で加温するのが好ましい。なお、この加温は第1剤の浸透を促進する観点から行われるものであり、工程(i)における前記「加熱」とは異なるものである。人毛繊維処理剤が多剤式の場合、工程(i)における前記「加熱」は、第1剤と第2剤に逐次浸漬した後に、又は第2剤への浸漬と同時に行われるものを指す。
【0074】
また、工程(i)において、人毛繊維を第1剤と第2剤に逐次浸漬する場合、第1剤に浸漬した後、第2剤に浸漬する前に、第1剤をすすぎ流す工程(以降、中間すすぎ工程と記載する)を含んでもよい。処理時間を短縮させる観点からは中間すすぎ工程は含まない方が好ましい。
【0075】
工程(i)は、処理後の人毛繊維により高い形状持続性と耐久性を付与する観点から、水分の蒸発が抑制される環境下で行われることが好ましい。水分の蒸発を抑制する具体的手段としては、人毛繊維が浸漬されている人毛繊維処理剤の容器を、水蒸気を透過しない素材でできたフィルム状物質、キャップ、フタ等で覆う方法が挙げられる。
【0076】
工程(i)の後、人毛繊維をすすいでもよく、またすすがなくてもよいが、余剰の重合物による人毛繊維感触低下を防ぐ観点から、すすぐ方が好ましい。
【0077】
これらの処理によって、人毛繊維内に成分(A)及び(B)が浸透し、人毛繊維内タンパク質との相互作用を生じるものと思われる。また、人毛繊維内において成分(A)と成分(B)との縮合物が生成する。このため、本発明の方法により処理された人毛繊維の形状は、洗浄しても崩れ難いものとなる。
【0078】
また、前記工程(i)の後に、更に、下記工程(ii)を行ってもよく、工程(ii)を行うことにより、毛髪表面の感触を著しく向上させることができる。
(ii)成分(B1)及び(C)を含有する表面仕上げ剤(I)に人毛繊維を浸漬するステップ
【0079】
この場合の好ましい成分(B1)としては、前述の人毛繊維処理剤における好ましい成分(B1)と同様であり、また表面仕上げ剤(I)中における成分(B1)の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、更により好ましくは10質量%以上、更により好ましくは20質量%以上であり、また好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは88質量%以下、更により好ましくは85質量%以下、更により好ましくは80質量%以下である。
すなわち、表面仕上げ剤(I)中における成分(B1)の含有量は、好ましくは1~95質量%、より好ましくは2.5~90質量%、更に好ましくは5~88質量%、更により好ましくは10~85質量%、更により好ましくは20~80質量%である。
【0080】
なお、本発明の効果を損しない範囲で表面仕上げ剤(I)中に他の成分を含有してもよいが、毛髪表面の感触を向上させる観点から他の成分は3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が更に好ましく、実質0質量%が更により好ましい。
【0081】
表面仕上げ剤(I)のpHは、毛髪への浸透性を向上させる観点から、好ましくは7.0以下、より好ましくは6.8以下、更に好ましくは6.5以下であり、また、毛髪ダメージ抑制の観点から、好ましくは0以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは1.0以上である。
すなわち、表面仕上げ剤(I)のpHは、毛髪への浸透性を向上させる観点及び毛髪ダメージを抑制する観点から、好ましくは0~7.0、より好ましくは0.5~6.8、更に好ましくは1.0~6.5である。
【0082】
工程(ii)において表面仕上げ剤(I)への人毛繊維の浸漬時間は、表面仕上げ剤(I)を人毛繊維内に浸透・拡散させるため、好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間以上、更に好ましくは6時間以上、更により好ましくは24時間以上であり、また、好ましくは1か月以下、より好ましくは2週間以下、更に好ましくは10日以下、更により好ましくは168時間以下である。そしてこのとき、加温してもよく、加温する場合の温度は20~90℃が好ましい。
【0083】
工程(ii)において、表面仕上げ剤(I)に浸漬する人毛繊維は、乾燥していても濡れていてもよい。人毛繊維を浸漬する表面仕上げ剤(I)の量は、人毛繊維の質量に対する浴比で(表面仕上げ剤(I)の質量/工程(i)で処理された人毛繊維の質量)で、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは5以上、更に好ましくは10以上、更に好ましくは20以上であり、また好ましくは500以下、より好ましくは250以下、更に好ましくは100以下である。
すなわち、前記浴比は、好ましくは2~500、より好ましくは3~250、更に好ましくは5~100、更に好ましくは10~100、更により好ましくは20~100である。
【0084】
〔更に追加してもよい処理〕
本発明の人毛繊維処理方法は、前述の工程(i)及び(ii)に加え、さらに、キューティクル除去、脱色、染毛、及び疎水性付与・低摩擦化のための表面仕上げから選ばれる1以上の各処理を追加して行ってもよい。
【0085】
この際、キューティクル除去、脱色、及び染毛の各処理は、前述の工程(i)及び(ii)の前に行っても、後に行ってもよく、また、工程(i)~(iii)の各工程の間に行ってもよい。また、複数の処理を組み合わせて追加することもでき、脱色と染毛の両方を追加する場合には、染毛の前に脱色を行う必要があることを除けば、どの処理を先に行ってもよく、脱色と染毛の間にキューティクル除去など別の処理を行うこともできる。
【0086】
一方、疎水性付与・低摩擦化のための表面仕上げは、前述の工程(i)の後に、又は工程(ii)の感触向上のための表面仕上げも併せて行う場合には工程(ii)の後に、行う必要があり、なかでも、工程(ii)の後に更に追加して行うことによって、より良好な結果を得ることができる。また、疎水性付与・低摩擦化のための表面仕上げは、上記のとおり工程(i)、(ii)又は(iii)の後の段階で行うのであれば、キューティクル除去、脱色、染毛との処理順序は、特に限定されない。
【0087】
(キューティクル除去)
人毛繊維表面にあるキューティクルは鱗が折り重なるように方向性を持った構造をしているため、方向性の異なる人毛繊維同士が一つの繊維束の中に混在すると、互いに引っかかって絡まりやすくなり、作業性を著しく損ねてしまう。それゆえキューティクル除去は、毛髪の方向性を除去し取り扱いを容易にするために行われ、以下に示すキューティクル除去用組成物に人毛繊維を浸漬することによって行われる。
【0088】
キューティクル除去用組成物は、キューティクル剥離作用を有する塩素前駆体及び水を含有する。塩素前駆体としては、次亜塩素酸ソーダ、ジクロロイソシアヌル酸カリウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、トリクロロイソシアヌル酸等が挙げられ、これらから選ばれる1以上の塩素前駆体を使用することができる。
【0089】
キューティクル除去用組成物中における塩素前駆体の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは9質量%以下である。
【0090】
キューティクル除去用組成物の25℃におけるpHは、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは4.5以上であり、また、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは7以下である。
【0091】
(脱色)
脱色は、アルカリ剤、酸化剤及び水を含有する脱色剤組成物に人毛繊維を浸漬することによって行われる。脱色剤組成物は通常2剤型であり、第1剤はアルカリ剤及び水を含有し、第2剤は酸化剤及び水を含有する。この2剤は、通常、別々に保管され、毛髪を浸漬する前に混合される。
【0092】
好適なアルカリ剤としては、例えば、アンモニア及びその塩;アルカノールアミン(モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチルプロパノール、2-アミノブタノール等)及びこれらの塩;アルカンジアミン(1,3-プロパンジアミン等)及びその塩;並びに炭酸塩(炭酸グアニジン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等);並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
脱色剤組成物(2剤型の場合、第1剤と第2剤の混合物)中におけるアルカリ剤の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは7.5質量%以下である。
【0094】
好適な酸化剤としては、例えば、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン及び臭素酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。これらの酸化剤の中でも過酸化水素が好ましい。
【0095】
脱色剤組成物中における酸化剤の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは9質量%以下である。
【0096】
第1剤と第2剤を別々に保管する場合、第2剤の25℃におけるpHは、好ましくは2以上、より好ましくは2.5以上であり、また、好ましくは6以下、より好ましくは4以下である。このpHは好適な緩衝剤で調整することができる。脱色剤組成物の25℃におけるpHは、好ましくは6以上、より好ましくは6.5以上、更に好ましくは6.8以上であり、また、好ましくは11以下、より好ましくは10.5以下、更に好ましくは10以下である。
【0097】
(染毛)
染毛は、染毛剤組成物に人毛繊維を浸漬することによって行われる。染毛剤組成物は、染料を含有し、任意にアルカリ剤又は酸、酸化剤等を含有することができる。染料としては、直接染料、酸化染料及びこれらの組合せが挙げられる。
【0098】
直接染料の種類は特に限定されず、染毛に適した任意の直接染料を使用することができる。直接染料の例としては、アニオン染料、ニトロ染料、分散染料、カチオン染料、並びに下記のHCレッド18、HCブルー18及びHCイエロー16からなる群より選択されるアゾフェノール構造を有する染料、並びにこれらの塩、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0099】
【0100】
カチオン染料としては、例えば、ベーシックブルー6、ベーシックブルー7、ベーシックブルー9、ベーシックブルー26、ベーシックブルー41、ベーシックブルー99、ベーシックブラウン4、ベーシックブラウン16、ベーシックブラウン17、ナチュラルブラウン7、ベーシックグリーン1、ベーシックオレンジ31、ベーシックレッド2、ベーシックレッド12、ベーシックレッド22、ベーシックレッド51、ベーシックレッド76、ベーシックバイオレット1、ベーシックバイオレット2、ベーシックバイオレット3、ベーシックバイオレット10、ベーシックバイオレット14、ベーシックイエロー57及びベーシックイエロー87並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ベーシックレッド51、ベーシックオレンジ31、ベーシックイエロー87及びこれらの混合物が特に好ましい。
【0101】
アニオン染料としては、例えば、アシッドブラック1、アシッドブルー1、アシッドブルー3、フードブルー5、アシッドブルー7、アシッドブルー9、アシッドブルー74、アシッドオレンジ3、アシッドオレンジ4、アシッドオレンジ6、アシッドオレンジ7、アシッドオレンジ10、アシッドレッド1、アシッドレッド14、アシッドレッド18、アシッドレッド27、アシッドレッド33、アシッドレッド50、アシッドレッド52、アシッドレッド73、アシッドレッド87、アシッドレッド88、アシッドレッド92、アシッドレッド155、アシッドレッド180、アシッドバイオレット2、アシッドバイオレット9、アシッドバイオレット43、アシッドバイオレット49、アシッドイエロー1、アシッドイエロー10、アシッドイエロー23、アシッドイエロー3、フードイエローNo.8、D&CブラウンNo.1、D&CグリーンNo.5、D&CグリーンNo.8、D&CオレンジNo.4、D&CオレンジNo.10、D&CオレンジNo.11、D&CレッドNo.21、D&CレッドNo.27、D&CレッドNo.33、D&Cバイオレット2、D&CイエローNo.7、D&CイエローNo.8、D&CイエローNo.10、FD&Cレッド2、FD&Cレッド40、FD&CレッドNo.4、FD&CイエローNo.6、FD&Cブルー1、フードブラック1、フードブラック2、並びにこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
これらの中でも好ましいアニオン染料は、アシッドブラック1、アシッドレッド52、アシッドバイオレット2、アシッドバイオレット43、アシッドレッド33、アシッドオレンジ4、アシッドオレンジ7、アシッドレッド27、アシッドイエロー3及びアシッドイエロー10並びにこれらの塩である。より好ましいアニオン染料は、アシッドレッド52、アシッドバイオレット2、アシッドレッド33、アシッドオレンジ4及びアシッドイエロー10並びにこれらの塩及び混合物である。
【0103】
ニトロ染料としては、例えば、HCブルーNo.2、HCブルーNo.4、HCブルーNo.5、HCブルーNo.6、HCブルーNo.7、HCブルーNo.8、HCブルーNo.9、HCブルーNo.10、HCブルーNo.11、HCブルーNo.12、HCブルーNo.13、HCブラウンNo.1、HCブラウンNo.2、HCグリーンNo.1、HCオレンジNo.1、HCオレンジNo.2、HCオレンジNo.3、HCオレンジNo.5、HCレッドBN、HCレッドNo.1、HCレッドNo.3、HCレッドNo.7、HCレッドNo.8、HCレッドNo.9、HCレッドNo.10、HCレッドNo.11、HCレッドNo.13、HCレッドNo.54、HCレッドNo.14、HCバイオレットBS、HCバイオレットNo.1、HCバイオレットNo.2、HCイエローNo.2、HCイエローNo.4、HCイエローNo.5、HCイエローNo.6、HCイエローNo.7、HCイエローNo.8、HCイエローNo.9、HCイエローNo.10、HCイエローNo.11、HCイエローNo.12、HCイエローNo.13、HCイエローNo.14、HCイエローNo.15、2-アミノ-6-クロロ-4-ニトロフェノール、ピクラミン酸、1,2-ジアミノ-4-ニトロベンゾール、1,4-ジアミノ-2-ニトロベンゾール、3-ニトロ-4-アミノフェノール、1-ヒドロキシ-2-アミノ-3-ニトロベンゾール及び2-ヒドロキシエチルピクラミン酸並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
分散染料としては、例えば、ディスパースブルー1、ディスパースブラック9及びディスパースバイオレット1及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
これらの直接染料は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、イオン性が異なる直接染料を併用することもできる。
【0106】
染毛剤組成物中における直接染料の含有量は、十分な染毛性を得る観点から、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上であり、また、配合性の観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7.5質量%以下、更に好ましくは5.0質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下である。
【0107】
染毛剤組成物が染料として直接染料のみを含む場合は、毛髪を染色するために酸化剤は不要であるが、毛髪の色を明るくしたい場合は、酸化剤を組成物中に含有させることもできる。
【0108】
染毛剤組成物が酸化染料を含む場合、通常は2剤型となり、第1剤は、酸化染料中間体(プレカーサー及びカプラー)及びアルカリ剤を含み、第2剤は過酸化水素等の酸化剤を含む。この2剤は、通常、別々に保管され、毛髪を浸漬する前に混合される。
【0109】
酸化染料中間体としては、特に制限はなく、染毛製品に通常使用されている公知のいずれかのプレカーサー及びカプラーを好適に使用することができる。
【0110】
プレカーサーとしては、例えば、パラフェニレンジアミン、トルエン-2,5-ジアミン、2-クロロ-パラフェニレンジアミン、N-メトキシエチル-パラフェニレンジアミン、N-フェニルパラフェニレンジアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-パラフェニレンジアミン、2-(2-ヒドロキシエチル)-パラフェニレンジアミン、2,6-ジメチル-パラフェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、1,3-ビス(N-(2-ヒドロキシエチル)-N-(4-アミノフェニル)アミノ)-2-プロパノール、PEG-3,3,2’-パラフェニレンジアミン、パラアミノフェノール、パラメチルアミノフェノール、3-メチル-4-アミノフェノール、2-アミノメチル-4-アミノフェノール、2-(2-ヒドロキシエチルアミノメチル)-4-アミノフェノール、オルトアミノフェノール、2-アミノ-5-メチルフェノール、2-アミノ-6-メチルフェノール、2-アミノ-5-アセトアミドフェノール、3,4-ジアミノ安息香酸、5-アミノサリチル酸、2,4,5,6-テトラアミノピリミジン、2,5,6-トリアミノ-4-ヒドロキシピリミジン、4,5-ジアミノ-1-(4’-クロロベンジル)ピラゾール、4,5-ジアミノ-1-ヒドロキシエチルピラゾール並びにこれらの物質の塩及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
カプラーとしては、例えば、メタフェニレンジアミン、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、2-アミノ-4-(2-ヒドロキシエチルアミノ)アニソール、2,4-ジアミノ-5-メチルフェネトール、2,4-ジアミノ-5-(2-ヒドロキシエトキシ)トルエン、2,4-ジメトキシ-1,3-ジアミノベンゼン、2,6-ビス(2-ヒドロキシエチルアミノ)トルエン、2,4-ジアミノ-5-フルオロトルエン、1,3-ビス(2,4-ジアミノフェノキシ)プロパン、メタアミノフェノール、2-メチル-5-アミノフェノール、2-メチル-5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)フェノール、2,4-ジクロロ-3-アミノフェノール、2-クロロ-3-アミノ-6-メチルフェノール、2-メチル-4-クロロ-5-アミノフェノール、N-シクロペンチル-メタアミノフェノール、2-メチル-4-メトキシ-5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)フェノール、2-メチル-4-フルオロ-5-アミノフェノール、パラアミノオルトクレゾール、レゾルシン、2-メチルレゾルシン、4-クロロレゾルシン、1-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、2-イソプロピル-5-メチルフェノール、4-ヒドロキシインドール、5-ヒドロキシインドール、6-ヒドロキシインドール、7-ヒドロキシインドール、6-ヒドロキシベンゾモルホリン、3,4-メチレンジオキシフェノール、2-ブロモ-4,5-メチレンジオキシフェノール、3,4-メチレンジオキシアニリン、1-(2-ヒドロキシエチル)アミノ-3,4-メチレンジオキシベンゼン、2,6-ジヒドロキシ-3,4-ジメチルピリジン、2,6-ジメトキシ-3,5-ジアミノピリジン、2,3-ジアミノ-6-メトキシピリジン、2-メチルアミノ-3-アミノ-6-メトキシピリジン、2-アミノ-3-ヒドロキシピリジン、2,6-ジアミノピリジン並びにこれらの物質の塩及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0112】
染毛剤組成物中におけるプレカーサー及びカプラーの含有量は、それぞれ、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7.5質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0113】
染毛剤組成物が酸化染料を含む場合には、更にアルカリ剤を含む。好適なアルカリ剤としては、例えば、アンモニア及びその塩;アルカノールアミン(モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチルプロパノール、2-アミノブタノール等)及びこれらの塩;アルカンジアミン(1,3-プロパンジアミン等)及びその塩;並びに炭酸塩(炭酸グアニジン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等);並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
染毛剤組成物中におけるアルカリ剤の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは7.5質量%以下である。
【0115】
染毛剤組成物が酸化染料を含む場合における酸化剤を含む組成物(第2剤)は、酸化染料を含む組成物(第1剤)とは別に保管され、毛髪を浸漬する前に混合される。好適な酸化剤としては、例えば、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン及び臭素酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。これらの酸化剤の中でも過酸化水素が好ましい。
【0116】
染毛剤組成物中における酸化剤の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは9質量%以下である。
【0117】
第1剤と第2剤を別々に保管を行う場合、第2剤の25℃におけるpHは、好ましくは2以上、より好ましくは2.5以上であり、また、好ましくは6以下、より好ましくは4以下である。このpHは好適な緩衝剤で調整することができる。第1剤と第2剤を混合してなる染毛剤組成物の25℃におけるpHは、好ましくは6以上、より好ましくは6.5以上、更に好ましくは6.8以上であり、また、好ましくは11以下、より好ましくは10.5以下、更に好ましくは10以下である。
【0118】
染毛剤組成物が酸化染料を含む場合、前に例示した直接染料を更に含むこともできる。
【0119】
染毛剤組成物は、好適には、更に以下に示す界面活性剤、コンディショニング成分等を含むことができ、好適には、溶液、エマルション、クリーム、ペースト及びムースの形態をとることができる。
【0120】
染毛剤組成物の温度は、染毛剤組成物を人毛繊維内部に効率よく浸透・拡散させ、染毛の効果をより高める観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上であり、また、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下である。
【0121】
(疎水性付与・低摩擦化のための表面仕上げ)
疎水性付与・低摩擦化のための表面仕上げは、前述の工程(i)の後の段階で、工程(ii)の感触向上のための表面仕上げを行う場合には工程(ii)の後の段階で、以下に示す表面仕上げ剤(II)に毛髪を浸漬することによって行われる。
【0122】
表面仕上げ剤(II)は、以下の成分(D)を0.01質量%以上5.00質量%以下、及び水を含有する。
(D) 以下の化合物(a)~(d)の反応産物であるエポキシアミノシランコポリマー
(a) 少なくとも二つのオキシラニル基又はオキセタニル基を有するポリシロキサン
(b) 少なくとも二つのオキシラニル基又はオキセタニル基を有するポリエーテル
(c) アミノプロピルトリアルコキシシラン
(d) 以下の第一級及び第二級アミンからなる群より選択される化合物
・第一級アミン:メチルアミン、エチルアミン、プロピレンアミン、エタノールアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ヘキシルアミン、ドデシルアミン、オレイルアミン、アニリン、アミノプロピルトリメチルシラン、アミノプロピルトリエチルシラン、アミノモルホリン、アミノプロピルジエチルアミン、ベンジルアミン、ナフチルアミン、3-アミノ-9-エチルカルバゾール、1-アミノヘプタフロロヘキサン、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-ペンタデカフルオロ-1-オクタンアミン
・第二級アミン:メチルエチルアミン、メチルオクタデシルアミン、ジエタノールアミン、ジベンジルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ピペリジン、ピロリジン、フタルイミド、ポリマーアミン
【0123】
〔成分(D):エポキシアミノシランコポリマー〕
成分(D)のエポキシアミノシランコポリマーは、以下に示す化合物(a)~(d)の反応産物である。
【0124】
<化合物(a)、(b)>
化合物(a)は、少なくとも二つのオキシラニル基又はオキセタニル基を含有するポリシロキサンであり、例えば、次の一般式(5)で表されるものが挙げられる。
【0125】
【0126】
〔式中、Rは末端にオキシラニル基又はオキセタニル基を有する、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~6の炭化水素基を示し、xは1~1000の数を示す。〕
【0127】
化合物(b)は、少なくとも二つのオキシラニル基又はオキセタニル基を含有するポリエーテルであり、例えば、次の一般式(6)で表されるものが挙げられる。
【0128】
【0129】
〔式中、Rは前記と同じ意味を示し、yは1~100、zは0~100であってy+zが1~200となる数を示す。〕
【0130】
一般式(5)及び(6)において、Rが含んでもよいヘテロ原子としては酸素原子が好ましい。Rとしてはオキシラニルメチル基(グリシジル基)、オキシラニルメトキシ基(グリシジルオキシ基)、オキシラニルメトキシプロピル基(グリシジルオキシプロピル基)、オキセタニルメチル基、オキセタニルメトキシ基、オキセタニルメトキシプロピル基、3-エチルオキセタニルメチル基等が挙げられ、なかでも、オキシラニル基を有する、ヘテロ酸素原子を含んでもよい炭素数1~4の炭化水素基が好ましく、オキシラニルメチル基(グリシジル基)、オキシラニルメトキシ基(グリシジルオキシ基)、オキシラニルメトキシプロピル基(グリシジルオキシプロピル基)から選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
【0131】
<化合物(c)>
化合物(c)は、アミノプロピルトリアルコキシシランである。化合物(c)におけるアルコキシ基としては、炭素数1~6のものが挙げられ、炭素数2~4のもの、更には炭素数3のものが好ましく、なかでもイソプロポキシ基が好ましい。化合物(c)としては、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリプロポキシシラン、アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、アミノプロピルトリブトキシシラン、アミノプロピルトリtert-ブトキシシランが挙げられ、なかでもアミノプロピルトリイソプロポキシシランが好ましい。化合物(c)は、いずれかを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0132】
<化合物(d)>
化合物(d)は、以下の第一級及び第二級アミンからなる群より選択される化合物である。
・第一級アミン:メチルアミン、エチルアミン、プロピレンアミン、エタノールアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ヘキシルアミン、ドデシルアミン、オレイルアミン、アニリン、アミノプロピルトリメチルシラン、アミノプロピルトリエチルシラン、アミノモルホリン、アミノエチルジメチルアミン、アミノエチルジエチルアミン、アミノエチルジブチルアミン、アミノプロピルジメチルアミン、アミノプロピルジエチルアミン、アミノプロピルジブチルアミン、ベンジルアミン、ナフチルアミン、3-アミノ-9-エチルカルバゾール、1-アミノヘプタフロロヘキサン、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-ペンタデカフルオロ-1-オクタンアミン
・第二級アミン:メチルエチルアミン、メチルオクタデシルアミン、ジエタノールアミン、ジベンジルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ピペリジン、ピロリジン、フタルイミド、ポリマーアミン
【0133】
これらのうち、第一級アミンが好ましく、アミノプロピルジエチルアミン、アミノプロピルジメチルアミン、アミノプロピルジブチルアミンから選ばれる1種が更に好ましい。化合物(d)は、いずれかを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0134】
化合物(a)~(d)の反応は、例えば、イソプロパノール等の溶媒中で一定時間還流することによって行われる。ここで、化合物(a)及び(b)のオキシラニル基又はオキセタニル基の化合物(c)のアミノ基に対するモル比は、好ましくは1以上、より好ましくは1.1以上、更に好ましくは1.2以上であり、また、好ましくは4以下、より好ましくは3.9以下、更に好ましくは3.8以下である。
【0135】
成分(D)としては、ポリシリコーン-29のINCI名を有するものが挙げられ、その市販品の例としては、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社のSilsoft CLX-E(有効分15質量%、ジプロピレングリコール及び水を含む)が挙げられる。
【0136】
表面仕上げ剤(II)中における成分(D)の含有量は、人毛繊維に十分な疎水性を与える観点から、0.01質量%以上であって、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上、更に好ましくは0.20質量%以上であり、また、べたついた感触を与えない観点から、5.00質量%以下であって、好ましくは4.00質量%以下、より好ましくは3.00質量%以下、更に好ましくは2.00質量%以下である。
【0137】
〔pH調整剤〕
表面仕上げ剤(II)の25℃におけるpHは、酸性領域又は塩基性領域において成分(D)のトリアルコキシシラン部の反応速度を高める観点から、以下の範囲が好ましい。表面仕上げ剤(II)を酸性領域とする場合は、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上、更に好ましくは2以上であって、好ましくは5以下、より好ましくは4.0以下、更に好ましくは3.5以下である。また、表面仕上げ剤(II)を塩基性領域とする場合は、好ましくは7以上、より好ましくは7.5以上、更に好ましくは8.0以上であって、好ましくは11以下、より好ましくは10.5以下、更に好ましくは10以下である。表面仕上げ剤(II)のpHを上記範囲に調整するために、表面仕上げ剤(II)には、適宜pH調整剤を含有することができる。pH調整剤としては、アルカリ剤として、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチルプロパノール、2-アミノブタノール等のアルカノールアミン又はその塩;1,3-プロパンジアミン等のアルカンジアミン又はその塩;炭酸グアニジン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物等を使用することができる。また、酸剤として、塩酸、リン酸等の無機酸、塩酸モノエタノールアミン等の塩酸塩;リン酸二水素一カリウム、リン酸一水素二ナトリウム等のリン酸塩、乳酸、リンゴ酸等の有機酸等を使用することができる。
【0138】
人毛繊維を浸漬する表面仕上げ剤(II)の量は、人毛繊維の質量に対する浴比(表面仕上げ剤(II)の質量/人毛繊維の質量)で、好ましくは2以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは10以上であり、また好ましくは100以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは20以下である。
【0139】
以上の人毛繊維処理方法によって、人毛繊維を処理することにより、人毛の自然な見た目を保持したまま、形状持続性、耐久性に優れるかつら用人毛繊維を製造することができ、また、当該繊維を用いてかつらを製造することができる。
【0140】
また、本発明の人毛繊維処理方法によって人毛繊維を処理することにより、人毛の自然な見た目を保持したまま、形状持続性、耐久性に優れるヘアエクステンション用人毛繊維を製造することができ、また、当該繊維を用いてヘアエクステンションを製造することができる。
【0141】
また、人毛の自然な見た目及び感触の良さを保持したまま、形状持続性、耐久性に優れるかつら用人毛繊維を製造することができる処理剤及び該処理剤を使用した処理方法として、以下の態様が好ましい。
【0142】
[処理剤1]
両端が自由端である人毛繊維を処理するための、単一又は複数の組成物から構成される人毛繊維処理剤であって、その組成中に以下の成分(A)~(C)及びエタノールを含有しpHが1.0~4.5である人毛繊維処理剤。
(A) ホルムアルデヒド又はグリオキサール 5~15質量%
(B) レゾルシン又は1-ナフトール 10~20質量%
(C) 水 残量
エタノール 0~40質量%
【0143】
[処理方法1]
下記工程(i)を含む人毛繊維処理方法。
(i) 両端が自由端である人毛繊維を人毛繊維処理剤に、90~99℃の加熱下で、1~3時間、(人毛繊維処理剤質量)/(人毛繊維質量)=20~100の浴比で浸漬するステップ
前記人毛繊維処理剤は、単一又は複数の組成物から構成され、その組成中に以下の成分(A)~(C)及びエタノールを含有し、そのpHは1.0~4.5である。
(A) ホルムアルデヒド又はグリオキサール 5~15質量%
(B) レゾルシン又は1-ナフトール 10~20質量%
(C) 水 残量
エタノール 0~40質量%
【0144】
[処理方法1']
処理方法1の工程(i)の後、更に下記工程(ii)を行う人毛繊維処理方法。
(ii) 工程(i)で処理された人毛繊維を表面仕上げ剤(I)に、20~90℃の温度下で、24~168時間、(表面仕上げ剤(I)の質量)/(工程(i)で処理された人毛繊維質量)=20~100の浴比で浸漬するステップ
前記表面仕上げ剤(I)は、成分(B1)及び(C)を含有し、そのpHは1.0~6.5である。
(B1) レゾルシン 20~80質量%
(C) 水 残量
【0145】
[処理剤2]
両端が自由端である人毛繊維を処理するための人毛繊維処理剤であって、以下に示す第1剤及び第2剤を含み、第1剤と第2剤とを等量混合した際のpHが2.0~5.0である多剤型人毛繊維処理剤。
成分(B)及び(C)を含有しpHが2.0~5.5である第1剤。
(B) カテキン(Catechin)、エピガロカテキン(Epigallocatechin)及びエピガロカテキンガレート(Epigallocatechin gallate)から選ばれるいずれか一種 5~30質量%
(C) 水 残量
成分(A)及び(C)並びにエタノールを含有しpHが1.0~4.5である第2剤。
(A) ホルムアルデヒド又はグリオキサール 5~15質量%
(C) 水 残量
エタノール 0~40質量%
【0146】
[処理剤2']
処理剤2における第1剤及び第2剤に加え、更に、レゾルシンを20~80質量%及び水を含有しpHが1~6.5である表面処理剤(I)を含む人毛繊維処理剤キット。
【0147】
[処理方法2]
下記工程(i-1)及び(i-2)を含む人毛繊維処理方法。
(i-1) 両端が自由端である人毛繊維を第1剤に、90~99℃の加熱下で、1~3時間、(人毛繊維処理剤質量)/(人毛繊維質量)=20~100の浴比で浸漬するステップ
前記第1剤は、以下の成分(B)及び(C)を含有し、pHが2.0~5.5である。
(B) カテキン(Catechin)、エピガロカテキン(Epigallocatechin)、エピガロカテキンガレート(Epigallocatechin gallate)から選ばれるいずれか一種 5~30質量%
(C) 水 残量
(i-2) 工程(i-1)で処理された人毛繊維を第2剤に、90~99℃の加熱下で、1~3時間、(第2剤質量)/(工程(i-1)で処理された人毛繊維質量)=20~100の浴比で浸漬するステップ
前記第2剤は、以下の成分(A)及び(C)並びにエタノールを含有し、pHが1.0~4.5である。
(A) ホルムアルデヒドもしくはグリオキサール 5~15質量%
(C) 水 残量
エタノール 0~40質量%
【0148】
[処理方法2']
処理方法2において、工程(i)の後、更に下記工程(ii)を行う人毛繊維処理方法。
(ii) 工程(i)で処理された人毛繊維を表面仕上げ剤(I)に、20~90℃の温度下で、24~168時間、(表面仕上げ剤(I)の質量)/(工程(i)で処理された人毛繊維質量)=20~100の浴比で浸漬するステップ
前記表面仕上げ剤(I)は、成分(B1)及び(C)を含有し、pHが1.0~6.5である。
(B1) レゾルシン 20~60質量%
(C) 水 残量
【0149】
以上述べた実施形態に関し、以下に本発明の好ましい態様を更に開示する。
【0150】
<1>
両端が自由端である人毛繊維を処理するための、単一又は複数の組成物から構成される人毛繊維処理剤であって、その組成中に以下の成分(A)~(C)を含有する人毛繊維処理剤。
(A):ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒドの水和物、グリオキシル酸、グリオキシル酸の水和物、グリオキシル酸塩、グリオキサール、グリオキサールの水和物、グルタルアルデヒド、及びグルタルアルデヒドの水和物から選ばれる少なくとも1種のホルムアルデヒド誘導体
(B):メタ位の少なくとも1ヶ所に電子供与基を有し、オルト位とパラ位の少なくとも一か所が水素原子であるフェノール化合物(ただし、メタ位の電子供与基は隣接する炭素原子と共に水酸基が置換してもよいベンゼン環を形成してもよい)
(C):水
【0151】
<2>
成分(A)が、好ましくはホルムアルデヒド及びグリオキシル酸から選ばれる1種以上を含むものである<1>に記載の人毛繊維処理剤。
【0152】
<3>
成分(A)の含有量が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2.5質量%以上、更により好ましくは5質量%以上であり、また、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下、更により好ましくは30質量%以下、更により好ましくは20質量%以下、更により好ましくは15質量%以下である、<1>又は<2>に記載の人毛繊維処理剤。
【0153】
<4>
成分(B)が、好ましくは次の成分(B1)である<1>~<3>のいずれか1項に記載の人毛繊維処理剤。
(B1):一般式(1)で表されるレゾルシン誘導体
【0154】
【0155】
〔式中、
A1~A4は、同一でも異なってもよく、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基若しくはその塩、スルホン酸基若しくはその塩、炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基若しくはアルケニル基、又は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基若しくはアルケニルオキシ基を示す。〕
【0156】
<5>
成分(B1)が、好ましくはレゾルシン、2-メチルレゾルシン、4-クロロレゾルシン及びピロガロールから選ばれるものである<4>に記載の人毛繊維処理剤。
【0157】
<6>
成分(B)が、好ましくは次の成分(B2)である<1>~<3>のいずれか1項に記載の人毛繊維処理剤。
(B2):一般式(2)又は(3)で表されるナフトール誘導体
【0158】
【0159】
〔式中、
R1は、水素原子又はメチル基を示し、
A5は、水素原子、炭素数1~12の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基若しくはアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数7~12のアラルキル基若しくはアリールアルケニル基、炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基若しくはアルケニルオキシ基、ハロゲン原子又は-CO-R2(R2は炭素数1~12の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基若しくはアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数7~12のアラルキル基若しくはアリールアルケニル基又は置換基を有してもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基)を示し、
Dは、水素原子、水酸基、メチル基又は炭素数1~12の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基若しくはアルケニルオキシ基を示し、
Eは、水素原子、水酸基、炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基若しくはアルケニル基、又は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基若しくはアルケニルオキシ基を示し、
Gは、水酸基、炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基若しくはアルケニル基、又は炭素数1~6のアルコキシ基を示し、nは0から2の整数を示す。〕
【0160】
<7>
成分(B2)が、好ましくは1-ナフトール、2-ナフトール、3-メチルナフタレン-1-オール、ナフタレン-1,5-ジオール及びナフタレン-1,8-ジオールから選ばれるものである<6>に記載の人毛繊維処理剤。
【0161】
<8>
成分(B)が、好ましくは次の成分(B3)である<1>~<3>のいずれか1項に記載の人毛繊維処理剤。
(B3):一般式(4)で表される化合物
【0162】
【0163】
〔式中、
R3は、水素原子又はメチル基を示し、
Xは、水素原子、水酸基又はメトキシ基を示し、
R4は、水酸基又はメトキシ基が3個まで置換してもよく1,3-ジオキソランとの縮合環を形成してもよい芳香族炭化水素基を示し、
R5は、水酸基、メトキシ基、若しくは水酸基若しくはメトキシ基が3個まで置換してもよく1,3-ジオキソランとの縮合環を形成してもよい芳香族炭化水素基、又は水酸基若しくはメトキシ基が3個まで置換してもよいアリールカルボニルオキシ基若しくはアラルキルカルボニルオキシ基を示す。〕
【0164】
<9>
成分(B3)が、好ましくはカテキン(Catechin)、エピカテキン(Epicatechin)、エピガロカテキン(Epigallocatechin)、カテキンガレート(Catechin gallate)、エピカテキンガレート(Epicatechin gallate)又はエピガロカテキンガレート(Epigallocatechin gallate)であり、より好ましくはカテキン、エピガロカテキン及びエピガロカテキンガレートから選ばれる1種以上である<8>に記載の人毛繊維処理剤。
【0165】
<10>
成分(B)の含有量が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2.5質量%以上、更により好ましくは5質量%以上であり、また、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下、更により好ましくは30質量%以下である、<1>~<9>のいずれか1項に記載の人毛繊維処理剤。
【0166】
<11>
成分(A)に対する成分(B)のモル比(B)/(A)が、好ましくは0.005以上、より好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.05以上、更により好ましくは0.1以上、更により好ましくは0.5以上であり、また、好ましくは5未満、より好ましくは4以下、更に好ましくは3以下、更により好ましくは2以下、更により好ましくは1.8以下である、<1>~<10>のいずれか1項に記載の人毛繊維処理剤。
【0167】
<12>
成分(C)の含有量が、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、更により好ましくは40質量%以上であり、また好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは95質量%以下、更により好ましくは90質量%以下である、<1>~<11>のいずれか1項に記載の人毛繊維処理剤。
【0168】
<13>
好ましくは、成分(A)~(C)を一つの組成物中に含有する一剤式人毛繊維処理剤である、<1>~<12>のいずれか1項に記載の人毛繊維処理剤。
【0169】
<14>
25℃におけるpHが、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.8以下、更に好ましくは4.5以下であり、また、好ましくは0以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは1.0以上である、<13>に記載の人毛繊維処理剤。
【0170】
<15>
好ましくは、成分(B)及び(C)を含有する第1剤、並びに成分(A)及び(C)を含有する第2剤を含む多剤式人毛繊維処理剤である、<1>~<12>のいずれか1項に記載の人毛繊維処理剤。
【0171】
<16>
第1剤中における成分(B)の含有量が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2.5質量%以上、更により好ましくは5質量%以上であり、また好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下、更により好ましくは30質量%以下である、<15>に記載の人毛繊維処理剤。
【0172】
<17>
第2剤中における成分(A)の含有量が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2.5質量%以上、更により好ましくは5質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下、更により好ましくは30質量%以下である、<15>又は<16>に記載の人毛繊維処理剤。
【0173】
<18>
第1剤及び第2剤のそれぞれの25℃におけるpHが、好ましくは6.0以下、より好ましくは5.8以下、更に好ましくは5.5以下であり、また、好ましくは0以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは1.0以上、更に好ましくは2.0以上である、<15>~<17>のいずれか1項に記載の人毛繊維処理剤。
【0174】
<19>
下記工程(i)を含む人毛繊維処理方法。
(i)加熱下で、<1>~<18>のいずれかに記載の人毛繊維処理剤に両端が自由端である人毛繊維を浸漬するステップ
【0175】
<20>
人毛繊維処理剤に人毛繊維を浸漬する際の浴比(人毛繊維処理剤質量)/(人毛繊維質量)が、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは5以上、更に好ましくは10以上、更に好ましくは20以上であり、また好ましくは500以下、より好ましくは250以下、更に好ましくは100以下である、<19>に記載の人毛繊維処理方法。
【0176】
<21>
人毛繊維を浸漬する人毛繊維処理剤の温度が、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、また、好ましくは100℃未満、より好ましくは99℃以下である、<19>又は<20>に記載の人毛繊維処理方法。
【0177】
<22>
人毛繊維の人毛繊維処理剤への浸漬時間が、好ましくは15分以上、より好ましくは30分以上、更に好ましくは1時間以上であり、また、好ましくは48時間以下、より好ましくは24時間以下、更に好ましくは12時間以下である、<19>~<21>のいずれか1項に記載の人毛繊維処理方法。
【0178】
<23>
好ましくは、工程(i)の後、更に下記工程(ii)を行う、<19>~<22>のいずれか1項に記載の人毛繊維処理方法。
(ii)成分(B1)及び(C)を含有する表面仕上げ剤(I)に人毛繊維を浸漬するステップ
(B1):一般式(1)で表されるレゾルシン誘導体
【0179】
【0180】
〔式中、
A1~A4は、同一でも異なってもよく、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基若しくはその塩、スルホン酸基若しくはその塩、炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基若しくはアルケニル基、又は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基若しくはアルケニルオキシ基を示す。〕
(C):水
【0181】
<24>
表面仕上げ剤(I)中における成分(B1)の含有量が、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、更により好ましくは10質量%以上、更により好ましくは20質量%以上であり、また、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは88質量%以下、更により好ましくは85質量%以下、更により好ましく80質量%以下である、<23>に記載の人毛繊維処理方法。
【0182】
<25>
表面仕上げ剤(I)の25℃におけるpHが、好ましくは7.0以下、より好ましくは6.8以下、更に好ましくは6.5以下であり、また、好ましくは0以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは1.0以上である、<23>又は<24>に記載の人毛繊維処理方法。
【0183】
<26>
表面仕上げ剤(I)に人毛繊維を浸漬する際の浴比(表面仕上げ剤(I)の質量/工程(i)で処理された人毛繊維の質量)が、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは5以上、更に好ましくは10以上、更に好ましくは20以上であり、また好ましくは500以下、より好ましくは250以下、更に好ましくは100以下である、<23>~<25>のいずれか1項に記載の人毛繊維処理方法。
【0184】
<27>
表面仕上げ剤(I)への人毛繊維の浸漬時間が、好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間以上、更に好ましくは6時間以上、更により好ましくは24時間以上であり、また、好ましくは1か月以下、より好ましくは2週間以下、更に好ましくは10日以下、更により好ましくは168時間以下である、<23>~<26>のいずれか1項に記載の人毛繊維処理方法。
【0185】
<28>
<19>~<27>のいずれか1項に記載の人毛繊維処理方法によって、かつら用人毛繊維を処理する工程を含む、かつらの製造方法。
【0186】
<29>
両端が自由端である人毛繊維を処理するための、単一又は複数の組成物から構成される人毛繊維処理剤であって、その組成中に以下の成分(A)~(C)及びエタノールを含有しpHが1.0~4.5である人毛繊維処理剤。
(A) ホルムアルデヒド又はグリオキサール 5~15質量%
(B) レゾルシン又は1-ナフトール 10~20質量%
(C) 水 残量
エタノール 0~40質量%
【0187】
<30>
下記工程(i)を含む人毛繊維処理方法。
(i) 両端が自由端である人毛繊維を人毛繊維処理剤に、90~99℃の加熱下で、1~3時間、(人毛繊維処理剤質量)/(人毛繊維質量)=20~100の浴比で浸漬するステップ
前記人毛繊維処理剤は、単一又は複数の組成物から構成され、その組成中に以下の成分(A)~(C)及びエタノールを含有し、そのpHは1.0~4.5である。
(A) ホルムアルデヒド又はグリオキサール 5~15質量%
(B) レゾルシン又は1-ナフトール 10~20質量%
(C) 水 残量
エタノール 0~40質量%
【0188】
<31>
好ましくは、工程(i)の後、更に下記工程(ii)を行う、<30>に記載の人毛繊維処理方法。
(ii) 工程(i)で処理された人毛繊維を表面仕上げ剤(I)に、20~90℃の温度下で、24~168時間、(表面仕上げ剤(I)の質量)/(工程(i)で処理された人毛繊維質量)=20~100の浴比で浸漬するステップ
前記表面仕上げ剤(I)は、成分(B1)及び(C)を含有し、そのpHは1.0~6.5である。
(B1) レゾルシン 20~80質量%
(C) 水 残量
【0189】
<32>
両端が自由端である人毛繊維を処理するための人毛繊維処理剤であって、以下に示す第1剤及び2剤を含み、第1剤と第2剤とを等量混合した際のpHが2.0~5.0である多剤型人毛繊維処理剤。
成分(B)及び(C)を含有しpHが2.0~5.5である第1剤。
(B) カテキン(Catechin)、エピガロカテキン(Epigallocatechin)及びエピガロカテキンガレート(Epigallocatechin gallate)から選ばれるいずれか一種 5~30質量%
(C) 水 残量
成分(A)及び(C)並びにエタノールを含有しpHが1.0~4.5である第2剤。
(A) ホルムアルデヒド又はグリオキサール 5~15質量%
(C) 水 残量
エタノール 0~40質量%
【0190】
<33>
<32>に記載の第1剤及び第2剤に加え、更に、レゾルシンを20~80質量%及び水を含有しpHが1~6.5である表面処理剤を含む人毛繊維処理剤キット。
【0191】
<34>
下記工程(i-1)及び(i-2)を含む人毛繊維処理方法。
(i-1) 両端が自由端である人毛繊維を第1剤に、90~99℃の加熱下で、1~3時間、(第1剤質量)/(人毛繊維質量)=20~100の浴比で浸漬するステップ
前記第1剤は、以下の成分(B)及び(C)を含有し、pHが2.0~5.5である。
(B) カテキン(Catechin)、エピガロカテキン(Epigallocatechin)、エピガロカテキンガレート(Epigallocatechin gallate)から選ばれるいずれか一種 5~30質量%
(C) 水 残量
(i-2) 第2剤に工程(i-1)で処理された人毛繊維を、90~99℃の加熱下で、1~3時間、(第2剤質量)/(工程(i-1)で処理された人毛繊維質量)=20~100の浴比で浸漬するステップ
前記第2剤は、以下の成分(A)及び(C)並びにエタノールを含有し、pHが1.0~4.5である。
(A) ホルムアルデヒドもしくはグリオキサール 5~15質量%
(C) 水 残量
エタノール 0~40質量%
【0192】
<35>
好ましくは、工程(i)の後、更に下記工程(ii)を行う、<34>に記載の人毛繊維処理方法。
(ii) 工程(i)で処理された人毛繊維を表面仕上げ剤(I)に、20~90℃の温度下で、24~168時間、(表面仕上げ剤(I)の質量)/(工程(i)で処理された人毛繊維質量)=20~100の浴比で浸漬するステップ
前記表面仕上げ剤(I)は、成分(B1)及び(C)を含有し、pHが1.0~6.5である。
(B1) レゾルシン 20~60質量%
(C) 水 残量
【実施例】
【0193】
実施例1~4(一剤式人毛繊維処理剤による処理)
表1に示す処理剤を調製し、以下の処理を行い、それぞれの形状持続性、表面感触のよさ、耐久性を評価した。この結果を表1に併せて示す。なお、各組成物のpHは、調製した組成物を室温(25℃)において、そのままpHメーター(HORIBA社製、F-52)で測定した。
なお、表1中の実施例3及び4は参考例であって、特許請求の範囲に包含されるものではない。
【0194】
<人毛繊維処理剤による処理>
1.コーカシアン毛(未処理毛 / ほぼ直毛だがごくわずかなうねりがある)0.5gの長さ25cmの毛束を、人毛繊維処理剤40gが入った容器に浸漬し、容器の口をラップで覆って密閉して90℃設定のオーブン(ステンレス窓付強制対流乾燥器;アズワン社製、SOFW-450)にて3時間加熱した。
2.毛束の入った容器をオーブンから取り出し、室温に戻した。
3.毛束を容器から取り出し、水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、評価用シャンプーで60秒泡立て、水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、タオルで軽く水気を切った後、毛束を温風ドライヤー(テスコム社製、Nobby ホワイトNB3000)で乾かした。この時点で、毛束は直毛のままであった。
【0195】
<形状持続性>
1.<人毛繊維処理剤による処理>を施した毛束(直毛)を30℃の水道水で30秒間濡らした後、濡れた毛束を直径14mmのプラスチック製ロッドに巻き付け、クリップで固定した。
2.ロッドの全体をラップで覆って密封し、90℃設定のオーブンにて1時間加熱した。
3.毛束をオーブンから取り出し、室温に戻した。
4.毛束をロッドから外し、水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、評価用シャンプーで60秒泡立てた。
5.水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、30℃の水道水中に無限浴比で60秒浸漬した後、毛束の根本を持って静かに水中から引き上げ、軽く振動を与えて水を切った。
6.毛束を実験室中に2時間吊して静置し、乾燥させ、クシを通した後、毛束を吊して真横から写真を撮った。写真をもとに、毛束の最もカールの強い部分の曲率半径(r)と曲率(1/r)を求めた。
【0196】
(評価基準)
未処理毛(直毛)の曲率を1/r0、上記の手順6で測定した曲率を1/rとして、次式に従って求められる曲率増加率(I)(%)を形状持続性と定義した(ロッドに巻いて加熱して付与したカール形状が、洗髪後も強いカールとして持続していればいるほど、Iが大きくなる。Iが大きいほど一度付与した形状の持ちがよい、すなわち形状持続性が高い)。
I=[(1/r)/(1/r0)]×100 [%]
【0197】
<表面感触のよさ>
感触の評価は<形状持続性>の評価直後の毛束を用い、手で触れた際の感触の滑らかさについて、専門パネラー5名が下記基準によって評価し、5名の平均値を四捨五入した数値を評価結果とした。
【0198】
(評価基準)
5:未処理毛に比べてきわめて滑らかな手触りである
4:未処理毛に比べて滑らかな手触りである
3:未処理毛に比べてわずかに滑らかな手触りである
2:未処理毛に比べてごくわずかに滑らかな手触りである
1:未処理毛の手触りと変わらない
【0199】
<耐久性>
耐久性の評価は<形状持続性>の評価直後の毛束を用いて行い、人毛繊維の耐久性の指標としては引張弾性率(ヤング率)を用いた。評価は、以下の手順で行った。
1.毛束の根本から、人毛繊維5本を切り取った。それぞれの人毛繊維の根本と毛先の中間付近から3cmの人毛繊維片を採取し、合計で10個の3cmの毛髪片を得た。人毛繊維片を20℃60%RHの部屋に置き、24時間調湿した。
2.人毛繊維片をDIA-STRON limited社製「MTT690 繊維自動引張り試験機」にセットして自動測定を開始し、人毛繊維が濡れた状態での引張弾性率(ヤング率)を求めた。表に示す引張弾性率(ヤング率)は、N=5の測定結果の平均によって求めた。数値が高いほど、強度に優れ、耐久性にも優れることを示す。
【0200】
<評価用シャンプーの処方>
成分 (質量%)
ラウレス硫酸ナトリウム 15.5
ラウラミドDEA 1.5
安息香酸ナトリウム 0.5
EDTA-2Na 0.3
リン酸 pH7に調整する量
イオン交換水 バランス
合計 100.0
【0201】
【0202】
実施例5~8(二剤式人毛繊維処理剤による処理)
表2に示す処理剤を調製し、以下の処理を行い、実施例1~4と同様の方法及び基準に従って、形状持続性、表面感触のよさ、耐久性を評価した。この結果を表2に併せて示す。なお、各組成物のpHは、調製した組成物を室温(25℃)において、そのままpHメーター(HORIBA社製、F-52)で測定した。
なお、表2中の実施例6は参考例であって、特許請求の範囲に包含されるものではない。
【0203】
<人毛繊維処理剤による処理>
1.コーカシアン直毛(未処理毛)0.5gの長さ25cmの毛束を、人毛繊維処理剤第一剤40gが入った容器に浸漬し、容器の口をラップで覆って密閉して90℃設定のオーブンにて2時間加熱した。
2.毛束の入った容器をオーブンから取り出し、室温に戻した。
3.毛束を容器から取り出し、水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、評価用シャンプーで60秒泡立て、水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、タオルで軽く水気を切った後、毛束を温風ドライヤー(テスコム社製、Nobby ホワイトNB3000)で乾かした。この時点で、毛束は直毛のままであった。
4.引き続き3.の毛束を、人毛繊維処理剤第二剤40gが入った容器に浸漬し、容器の口をラップで覆って密閉して90℃設定のオーブンにて1時間加熱した。
5.毛束の入った容器をオーブンから取り出し、室温に戻した。
6.毛束を容器から取り出し、水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、評価用シャンプーで60秒泡立て、水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、タオルで軽く水気を切った後、毛束を温風ドライヤー(テスコム社製、Nobby ホワイトNB3000)で乾かした。この時点で、毛束は直毛のままであった。
【0204】
【0205】
実施例9~10(一剤式人毛繊維処理剤による処理+表面仕上げ剤(I)による処理)
表3に示す処理剤を調製し、以下の処理を行い、実施例1~4と同様の方法及び基準に従って、形状持続性、表面感触のよさ、耐久性を評価した。この結果を表3に併せて示す。なお、各組成物のpHは、調製した組成物を室温(25℃)において、そのままpHメーター(HORIBA社製、F-52)で測定した。
なお、表3中の実施例9、10、3及び4は参考例であって、特許請求の範囲に包含されるものではない。
【0206】
<人毛繊維処理剤による処理>
1.コーカシアン直毛(未処理毛)0.5gの長さ25cmの毛束を、人毛繊維処理剤40gが入った容器に浸漬し、容器の口をラップで覆って密閉して90℃設定のオーブンにて3時間加熱した。
2.毛束の入った容器をオーブンから取り出し、室温に戻した。
3.毛束を容器から取り出し、水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、評価用シャンプーで60秒泡立て、水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、タオルで軽く水気を切った後、毛束を温風ドライヤー(テスコム社製、Nobby ホワイトNB3000)で乾かした。この時点で、毛束は直毛のままであった。
4.引き続き3.の毛束を、表面仕上げ剤(I)40gが入った容器に浸漬し、容器の口をラップで覆って密閉して40℃設定のオーブンにて72時間加温した。
5.毛束の入った容器をオーブンから取り出し、室温に戻した。
6.毛束を容器から取り出し、水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、評価用シャンプーで60秒泡立て、水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、タオルで軽く水気を切った後、毛束を温風ドライヤー(テスコム社製、Nobby ホワイトNB3000)で乾かした。この時点で、毛束は直毛のままであった。
【0207】
【0208】
実施例11~12(二剤式人毛繊維処理剤による処理+表面仕上げ剤(I)による処理)
表4に示す処理剤を調製し、以下の処理を行い、実施例1~4と同様の方法及び基準に従って、形状持続性、表面感触のよさ、耐久性を評価した。この結果を表4に併せて示す。なお、各組成物のpHは、調製した組成物を室温(25℃)において、そのままpHメーター(HORIBA社製、F-52)で測定した。
なお、表4中の実施例12及び6は参考例であって、特許請求の範囲に包含されるものではない。
【0209】
<人毛繊維処理剤による処理>
1.コーカシアン直毛(未処理毛)0.5gの長さ25cmの毛束を、人毛繊維処理剤第一剤40gが入った容器に浸漬し、容器の口をラップで覆って密閉して90℃設定のオーブンにて2時間加熱した。
2.毛束の入った容器をオーブンから取り出し、室温に戻した。
3.毛束を容器から取り出し、水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、評価用シャンプーで60秒泡立て、水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、タオルで軽く水気を切った後、毛束を温風ドライヤー(テスコム社製、Nobby ホワイトNB3000)で乾かした。この時点で、毛束は直毛のままであった。
4.引き続き3.の毛束を、人毛繊維処理剤第二剤40gが入った容器に浸漬し、容器の口をラップで覆って密閉して90℃設定のオーブンにて1時間加熱した。
5.毛束の入った容器をオーブンから取り出し、室温に戻した。
6.毛束を容器から取り出し、水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、評価用シャンプーで60秒泡立て、水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、タオルで軽く水気を切った後、毛束を温風ドライヤー(テスコム社製、Nobby ホワイトNB3000)で乾かした。この時点で、毛束は直毛のままであった。
7.引き続き6.の毛束を、表面仕上げ剤40gが入った容器に浸漬し、容器の口をラップで覆って密閉して40℃設定のオーブンにて72時間加温した。
8.毛束の入った容器をオーブンから取り出し、室温に戻した。
9.毛束を容器から取り出し、水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、評価用シャンプーで60秒泡立て、水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、タオルで軽く水気を切った後、毛束を温風ドライヤー(テスコム社製、Nobby ホワイトNB3000)で乾かした。この時点で、毛束は直毛のままであった。
【0210】
【0211】
以上の実施例より、本発明の人毛繊維処理剤で人毛繊維を処理することにより、形状持続性及び耐久性に優れる人毛繊維が得られることが示された。また、得られた人毛繊維は、人の頭髪と遜色なく、自然な見た目を維持していることが確認された。
【0212】
実施例13(キューティクル除去用組成物による追加処理)
実施例1~12のいずれかの処理の前又は後に、以下の工程を追加して行うことにより、人毛繊維の表面からキューティクルを除去することができる。
1.人毛繊維0.5gの長さ25cmの毛束を、キューティクル除去用組成物40gが入った容器に浸漬し、2時間静置する。
2.毛束を容器から取り出し、水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、タオルで軽く水気を切った後、毛束を温風ドライヤー(テスコム社製、Nobby ホワイトNB3000)で乾かす。
【0213】
キューティクル除去用組成物1
(質量%)
ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム 5.00
水 残量
pH:5.0
【0214】
キューティクル除去用組成物2
(質量%)
次亜塩素酸ソーダ 5.00
水 残量
pH:5.0
【0215】
実施例14(脱色剤組成物による追加処理)
実施例1~12のいずれかの処理の前又は後に、以下の工程を追加して行うことにより、人毛繊維を脱色することができる。
1.人毛繊維0.5gの長さ25cmの毛束を、脱色剤組成物1が40g入った容器に浸漬し、2時間静置する。
2.毛束を容器から取り出し、水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、タオルで軽く水気を切った後、毛束を温風ドライヤー(テスコム社製、Nobby ホワイトNB3000)で乾かす。
【0216】
脱色剤組成物1
(質量%)
強アンモニア水(28質量%) 2.70
重炭酸アンモニウム 4.70
ステアルトリモニウムクロリド(花王社製、コータミン 86W) 8.00
1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(60質量%)
(ディクエスト2010cs) 0.05
過酸化水素水(35質量%) 10.90
水 残量
pH:9.5
【0217】
実施例15(染毛剤組成物による追加処理)
実施例1~12のいずれかの処理の前又は後に、以下の工程を追加して行うことにより、人毛繊維を染色することができる。
1.人毛繊維0.5gの長さ25cmの毛束を、染毛剤組成物1~4(染毛剤組成物1及び4は第1剤と第2剤を1:1で混合して使用)が40g入った容器に浸漬し、2時間静置する。
2.毛束を容器から取り出し、水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、タオルで軽く水気を切った後、毛束を温風ドライヤー(テスコム社製、Nobby ホワイトNB3000)で乾かす。
【0218】
染毛剤組成物1
(第1剤) (質量%)
セテアリルアルコール 10.8
オレス-5 5.0
オレイン酸 2.5
コカミドMEA 4.6
ラウリル硫酸ナトリウム 1.7
モノステアリン酸プロピレングリコール 0.6
無水亜硫酸ナトリウム 0.5
アンモニア水(28質量%) 6.5
トルエン-2,5-ジアミン硫酸塩 1.3
レゾルシン 0.5
メタアミノフェノール 0.2
2,4-ジアミノフェノキシエタノール塩酸塩 0.02
精製水 残量
【0219】
(第2剤) (質量%)
過酸化水素水(35質量%) 17.1
セテアリルアルコール 1.7
ラウリル硫酸ナトリウム 0.2
リン酸 0.3
サリチル酸 0.01
精製水 残量
【0220】
染毛剤組成物2
(質量%)
アシッドレッド33 0.5
塩酸 pH調整量
精製水 残量
pH4.0
【0221】
染毛剤組成物3
(質量%)
アモジメチコン 1.50
ヒドロキシエチルセルロース 1.40
香料 0.30
アシッドレッド52 0.55
ベーシックレッド51 0.28
HCレッド3 0.01
水 残量
【0222】
染毛剤組成物4
(第1剤) (質量%)
塩化アンモニウム 0.25
モノエタノールアミン 0.80
フレグランス/香料 0.30
p-トルエンジアミン 0.55
レゾルシノール 0.28
m-フェニレンジアミン 0.01
水 残量
pH:6.8
【0223】
(第2剤) (質量%)
過酸化水素 6.00
水 残量
pH:3.4
【0224】
実施例16(表面仕上げ剤(II)による処理)
実施例1~12のいずれかの処理後の人毛繊維に、表5及び6に示す表面仕上げ剤(II)を表中の浴比に従い塗布した後、洗い流さずに、ドライヤーを用いて完全に乾燥させることにより、人毛繊維に疎水性を付与すると共に低摩擦化することができ、しかも処理後の長期にわたってこれらの効果を持続することができる。
表中のpHは、室温(25℃)において、組成物を希釈等することなくそのまま、堀場製作所社製のpHメーター F-52を用いて測定した値である。
【0225】
【0226】