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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】腎疾患の検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/50 20060101AFI20230519BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20230519BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230519BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20230519BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20230519BHJP
   C07K 14/765 20060101ALI20230519BHJP
   C07K 14/435 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
G01N33/50 D
G01N33/68
G01N33/53 S
G01N33/531 A
G01N33/53 D
C07K16/18
C07K14/765
C07K14/435
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021123796
(22)【出願日】2021-07-29
(62)【分割の表示】P 2017556244の分割
【原出願日】2016-05-02
(65)【公開番号】P2021181994
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】62/155,158
(32)【優先日】2015-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】300004500
【氏名又は名称】アイデックス ラボラトリーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】IDEXX Laboratories, Inc.
【住所又は居所原語表記】One IDEXX Drive, Westbrook, Maine 04092, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】イェラミッリ,マハラクシュミ
(72)【発明者】
【氏名】オバール,エドワード
(72)【発明者】
【氏名】クウィン,ジョン ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】イェラミッリ,マーシー,ヴイエスエヌ
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-023120(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0142029(US,A1)
【文献】特表2015-505965(JP,A)
【文献】国際公開第2011/130385(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/035155(WO,A1)
【文献】特表2014-504594(JP,A)
【文献】国際公開第2007/051603(WO,A2)
【文献】National Institutes of Health National Library of Medicine National Center for Biotechnology Information,2007年02月09日,https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/14181556
【文献】National Institutes of Health National Library of Medicine National Center for Biotechnology Information,2005年09月09日,https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/3637390
【文献】National Institutes of Health National Library of Medicine National Center for Biotechnology Information,2005年06月23日,https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/5459822
【文献】平竹 潤,連載講座 最新の不斉合成研究法-2 抗体触媒,化学と生物,1993年,Vol.31, No.9,pp.613-620
【文献】P Seguela,Antibodies against gamma-aminobutyric acid: specificity studies and immunocytochemical results,Proc Natl Acad Sci USA.,1984年06月,81(12),pp.3888-92,doi: 10.1073/pnas.81.12.3888
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 - 33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式:
【化1】
[式中、R -(C-アルキル)-Dであ
[式中、Dは、標識またはタンパク質である]
を有する化合物またはその塩、ならびに/あるいはその溶媒和物または水和物。
【請求項2】
Dが、ラジオアイソトープ標識、化学発光色素、電気化学的標識、金属キレート、ラテックス粒子、蛍光標識、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、ジゴキシゲニン、マルトース、オリゴヒスチジン、2,4-ジニトロベンゼン、フェニルヒ酸、ssDNA、dsDNA、ウシ血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、およびグルコース-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼからなる群から選択される標識である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Dが、ウシ血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、グルコース-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼ、アビジン、ストレプトアビジンおよびオリゴヒスチジンからなる群から選択されるタンパク質である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Dが、ウシ血清アルブミンまたはキーホールリンペットヘモシアニンから選択されるタンパク質である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
式:
【化2】
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
式:
【化3】
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
式:
【化4】
を有する、請求項1に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2015年4月30日に出願した米国仮特許出願第62/155,158号
の利益を主張するものであり、その全体が参照によって本明細書に組み込まれている。
【0002】
本開示は、一般に、腎機能の決定に関する。より詳細には、本開示は、腎疾患の進行を
診断、予測および決定するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
腎機能を迅速かつ正確に測定できることは重要である。例えば、薬の投薬は、腎不全患
者に適したものでなければならない。したがって、腎機能を正確に評価することは、臨床
医学において必要なことである。しかし、腎不全の診断は、確実なマーカー、および/ま
たは利用可能な診断試験の不足によって妨げられる。臨床診療においては、腎機能を評価
するために、通常、血清クレアチニンが使用される。しかし、血清クレアチニンの使用は
、データが比較的大きく変動しうるので、不正確さを欠点として持つ。加えて、クレアチ
ニンが増加するまでに、最大で腎機能の75%が失われうることは公知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明者らは、当分野における、正確さが増した腎機能評価方法の必要性
を認識している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、本開示は、動物が、腎疾患に罹患しているかどうかを決定する方法で
あって、動物からの尿サンプルまたは血液サンプル中のβ-アミノイソ酪酸(BAIB)
を測定すること、および、サンプル中のBAIBの濃度に基づいて腎疾患を決定すること
を含む方法に関する。該方法は、サンプル中のBAIBの濃度を、健康な動物からのサン
プル中のBAIBの濃度に関する参照濃度と比較することをさらに含みうる。
【0006】
別の態様において、本開示は、動物対象における腎疾患を診断する方法であって、対象
から尿または血液サンプルを得ること、サンプル中のBAIBの濃度を測定すること、B
AIBのレベルを、健康な対象におけるBAIBの参照濃度と比較すること、ならびに、
サンプル中のBAIBの値が参照濃度を超える腎障害を診断することを含む方法に関する
【0007】
本開示の種々の態様において、参照濃度は、健康な動物におけるBAIBの濃度の95
パーセンタイル値を反映することができる。また、腎疾患は、器質的損傷(struct
ural damage)の結果でありうる。例えば、器質的損傷は、炎症、線維症、傷
害、腎結石(例えば、シュウ酸塩石)またはがんによる浸潤の結果でありうる。腎疾患は
、糸球体腎炎である。
【0008】
さらなる態様において、本開示は、動物対象が、腎疾患に罹患しているかどうかを決定
するための方法に関する。該方法は、対象から血液または尿サンプルを得ること、サンプ
ル中のBAIBの濃度および対称性ジメチルアルギニン(SDMA)を測定すること、な
らびに、SDMAの濃度[SDMA]に対するBAIBの濃度[BAIB]の比が0.1
5より高い場合、または[BAIB]に対する[SDMA]の比が7未満である場合、腎
疾患を決定することを含む。
【0009】
さらに、本開示は、動物対象における腎障害を診断する方法に関する。該方法は、対象
から血液または尿サンプルを得ること、サンプル中のBAIBおよびSDMAの1つまた
は複数の濃度を測定すること、ならびに、BAIBおよびSDMAのレベルを、健康な対
象におけるBAIBおよびSDMAの参照濃度と比較することを含む。サンプル中のSD
MAの濃度がSDMA参照濃度を超える場合、腎疾患が診断される。また、サンプル中の
BAIBの濃度がBAIB参照濃度を超える場合、腎機能の喪失は、器質的損傷の結果で
あると診断される。
【0010】
さらに、本開示は、腎疾患に関連する死亡率を決定するための方法に関する。該方法は
、患者からの血液サンプル中のBAIBを測定すること、および、患者が閾値よりも高い
血中BAIB濃度を有する場合、患者が腎疾患に関連する死の高い可能性を有すると決定
することを含む。該方法はまた、SDMAを測定すること、および、患者が閾値よりも高
い血中SDMA濃度を有する場合、患者が腎疾患に関連する死の高い可能性を有すると決
定することも含む。
【0011】
さらにまた、本開示は、BAIBおよび検出可能な標識を含むSDMAコンジュゲート
、BAIBと、グルタルアルデヒドおよびポリリジンの1つとを含むコンジュゲート、な
らびに、BAIBおよびキャリアタンパク質を含むコンジュゲートに関する。
【0012】
別の態様において、本開示は、BAIBに特異的な抗BAIB抗体に関する。該抗体は
、サンプル中のBAIBの存在または量を決定する方法に関する本開示の様々な態様にお
いて、使用されうる。例えば、該方法は、抗BAIB抗体をサンプルと接触させること、
および、サンプル中の抗体とBAIBとの結合または結合の量を決定することを含む。該
方法はまた、サンプルおよび抗体を、BAIBおよび検出可能な標識を含むコンジュゲー
トと接触させることも含みうる。いくつかの実施形態において、抗体は、標識を含む。
【0013】
別の態様において、本開示は、抗BAIB抗体を含むキットに関する。該キットは、抗
SDMA抗体をさらに含みうる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
その種々の態様において、本開示は、腎疾患および腎疾患に関連する死亡率の決定、診
断、進行、および予後に関する。本開示は、動物において、腎機能、および腎障害の存在
、可能性または進行を決定するための方法を含む。
【0015】
種々の態様において、本開示は、腎疾患の存在、可能性または進行、および、腎疾患に
関連する死亡率を決定する、β-アミノイソブチレートとしても知られるβ-アミノイソ
酪酸(BAIB)の使用に関する。BAIBは、ネフロンの減少をもたらす腎臓の器質的
損傷のマーカーであり、したがって、腎がん(kidney cancer)、腎癌(renal carcinoma)、
転移性腎癌、腎臓の新生物浸潤、腎臓の炎症、低形質細胞性間質性腎炎(interstitial hy
poplasmocytic nephritis)、糸球体炎症および腎線維症のマーカーである。
【0016】
加えて、動物、特に、ネコおよびイヌからの血液サンプル中の対称性ジメチルアルギニ
ン(SDMA)およびクレアチニンは、予後の精度を改善するために、BAIBと併せて
使用される。したがって、本開示は、動物対象からの血液サンプル中のBAIBの濃度を
測定するための;動物対象からの血液サンプル中のSDMAおよび/またはクレアチニン
の濃度を測定するための;ならびに、BAIBの濃度のみに基づいて、またはSDMAお
よび/もしくはクレアチニンと組み合わせて、腎疾患の存在、可能性または進行を決定す
るための、方法を含む。
【0017】
SDMAは、内因性一酸化窒素合成酵素(NOS)阻害物質である非対称性ジメチルア
ルギニン(ADMA)の構造異性体である。ADMAもSDMAも、L-アルギニン残基
の核内メチル化から生じ、タンパク質分解後、細胞質中に放出される。SDMAは、タン
パク質アルギニンメチルトランスフェラーゼ5(PRMT5)およびPRMT7によって
産生される。メチルアルギニン、例えば、SDMA、ADMA、およびモノメチルアルギ
ニンを有するタンパク質は、RNAプロセッシング、タンパク質シャトリング、およびシ
グナル伝達に関与する(BedfordおよびRichard、Mol.Cell、20
05年、18(3):263~72)。そのようなメチル化タンパク質の分解から生じた
遊離型SDMAは、主に、腎排泄によって排出されるのに対して、ADMAは、大部分は
代謝される。ADMAは、冠動脈疾患(CAD)のリスク因子、例えば、高血圧、高コレ
ステロール血症、高ホモシステイン血症、インスリン抵抗性、年齢、および平均動脈圧と
強く相関する。SDMAは、腎機能のパラメーター、例えば、糸球体濾過量(GFR)、
イヌリンクリアランス、およびクレアチニンクリアランスと相関する。
【0018】
BAIBは、(例えば、SDMAによって示されるような)腎機能が、正常な参照範囲
内である場合でも、腎臓の損傷または病変のマーカーでありうる。
【0019】
本開示のさらなる態様を記載する前に、多くの用語を以下に定義する。
【0020】
BAIBは、β-アミノイソ酪酸(β-アミノイソブチレート)である。BAIBの構
造は、
【0021】
【化1】


である。
【0022】
BSAは、ウシ血清アルブミンである。
【0023】
腎疾患は、器質的損傷を伴ってまたは伴わずに、ネフロン機能(濾過効率)の喪失を含
む。器質的損傷は、病変、炎症、線維症、傷害、浸潤および他の原因によって起こりうる
。がんは器質的損傷の原因でありうるが、がん自身は、一般に、腎疾患として識別されな
い。したがって、いくつかの実施形態において、腎疾患に、腎がんは含まれない。
【0024】
腎結石は、腎臓または泌尿器の解剖学的構造の任意の部分における石を指し、腎石(ne
phrolith)、尿細管または尿管内の腎石、および膀胱の石を含む。腎結石は、しばしば器
質的損傷および腎疾患につながる。
【0025】
CMIAは、化学発光磁気免疫アッセイである。
【0026】
DIPEAは、N,N-ジイソプロピルエチルアミンである。
【0027】
DMFは、ジメチルホルムアミドである。
【0028】
EIAは、酵素免疫アッセイである。
【0029】
ELISAは、酵素結合免疫吸着アッセイである。
【0030】
ESI-MSは、エレクトロスプレーイオン化質量分析である。
【0031】
FPIAは、蛍光偏光免疫アッセイである。
【0032】
GFRは、糸球体濾過量である。
【0033】
HATUは、(1H-7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テ
トラメチルウランヘキサフルオロホスフェートメタナミニウム(methanamininium)である
【0034】
KLHは、キーホールリンペットヘモシアニンである。
【0035】
MEIAは、微粒子酵素免疫アッセイである。
【0036】
PBSは、リン酸緩衝生理食塩水である。
【0037】
RIAは、放射免疫アッセイである。
【0038】
SDMAは、対称性ジメチルアルギニンである。SDMAの構造は、
【0039】
【化2】


である。
【0040】
遊離型SDMAは、ポリペプチド鎖の一部ではないSDMAを指す。SDMAの1つま
たは複数のアミノ酸残基が、ポリペプチドに存在しうる。
【0041】
TFAは、トリフルオロ酢酸である。
【0042】
用語「類似体」は、本明細書で使用する場合、概して、1つまたは複数の個々の原子が
異なる原子(複数可)または異なる官能基(複数可)で置きかえられた化合物を指す。例
えば、類似体は、受容体に対する分析物と競合できる、分析物の改変形態であってもよく
、改変は、分析物が別の部分、例えば、標識または固体担体に結合する手段を与える。分
析物類似体は、分析物と同じように抗体に結合することができる。
【0043】
用語「抗体」は、本明細書で使用する場合、概して、抗原への曝露に反応して、Bリン
パ球細胞により産生される糖タンパク質を指し、その抗原に特異的に結合する。用語「抗
体」を、最も広い意味で使用し、詳細には、それは、所望の生物学的活性を示す限り、モ
ノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、複数特異
性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗体フラグメントを包含する。
【0044】
本明細書で使用する場合、「抗BAIB」、「抗BAIB抗体部分」、もしくは「抗B
AIB抗体フラグメント」および/または「抗BAIB抗体変異体」などは、BAIBと
特異的に結合する、免疫グロブリン分子の少なくとも一部分、例えば、限定されないが、
重鎖もしくは軽鎖定常領域の1つの相補性決定領域(CDR)、フレームワーク領域、ま
たはその任意の一部分を含む任意のタンパク質またはペプチド含有分子を含む。
【0045】
本明細書で使用する場合、「抗SDMA」、「抗SDMA抗体部分」、もしくは「抗S
DMA抗体フラグメント」および/または「抗SDMA抗体変異体」などは、SDMAと
特異的に結合する、免疫グロブリン分子の少なくとも一部分、例えば、限定されないが、
重鎖もしくは軽鎖定常領域の1つの相補性決定領域(CDR)、フレームワーク領域、ま
たはその任意の一部分を含む任意のタンパク質またはペプチド含有分子を含む。
【0046】
用語「抗体フラグメント」は、本明細書で使用する場合、完全長の抗体の一部分、概し
て、その抗原結合または可変領域を指す。詳細には、例えば、抗体フラグメントとしては
、Fab、Fab’、F(ab’)、およびFvフラグメント;ダイアボディ(dia
bodies);線状抗体;一本鎖抗体分子;ならびに抗体フラグメントからの複数特異
性抗体を挙げることができる。
【0047】
用語「抗原」は、本明細書で使用する場合、概して、抗原に特異的な抗体と適切な条件
下で反応することができる物質を指す。
【0048】
用語「分析物」は、本明細書で使用する場合、概して、検出および/または測定される
サンプル中の物質または物質のセットを指す。
【0049】
用語「動物」は、本明細書で使用する場合、概して、任意の動物、例えば、ヒト、また
はヒト以外の動物、例えば、ネコ、イヌ、またはウマを指す。
【0050】
用語「サンプル」は、本明細書で使用する場合、一般に、尿、または、それらに限定さ
れないが、全血、血漿、および血清を含む任意の血液由来の流体サンプルを指す。本開示
の方法で使用する血清を用意するために、1つまたは複数の血清サンプルは、動物対象か
ら得られる。血清サンプルを、例えば、血液サンプルとして動物対象から得ることができ
、次いで、分離して血清を用意することができる。ある種の実施形態において、血清は、
血液から分離することなく測定することができる。当業者が理解する通り、単一で得られ
たサンプルを、多数の濃度を測定するために分ける、または使用することができる。ある
いは、複数のサンプルを動物対象から得ることができ、(少なくとも)1つのサンプルは
、目的の各分析物または多数の分析物について、連続的に、並行に、または同時に測定す
る。ある種のそのような場合において、サンプルは、ほぼ同時(例えば、互いに60分以
内、30分以内、または10分以内)に動物から得られる。
【0051】
用語「交差反応性」は、本明細書で使用する場合、概して、抗体の個々の抗原結合部位
の、2つ以上の抗原決定基と反応する能力、または抗体分子の集団の、2つ以上の抗原と
反応する能力を指す。一般に、交差反応は、(i)交差反応性抗原が、免疫抗原と共通の
エピトープを有すること、または(ii)交差反応性抗原が、免疫抗原上のエピトープと
構造的に類似するエピトープを有することを理由にして起こる(複数特異性)。
【0052】
用語「免疫アッセイ」は、本明細書で使用する場合、概して、測定可能な反応を生じさ
せる抗体抗原複合体を用いる検定を指す。「抗体抗原複合体」を、用語「免疫複合体」と
互換的に使用することができる。一般に、免疫アッセイとしては、非競合型免疫アッセイ
、競合型免疫アッセイ、均一系免疫アッセイ、および不均一系免疫アッセイが挙げられる
。「競合型免疫アッセイ」において、試験サンプル中の標識されていない分析物(または
抗原)は、免疫アッセイにおいて、標識されている抗原と競合する能力によって測定され
る。標識されていない抗原は、標識されている抗原の結合能力を妨げる。なぜなら、抗体
の結合部位がすでにふさがれているからである。「競合型免疫アッセイ」において、試験
サンプルに存在する抗原の量は、標識から生じるシグナルの量と逆の関係にある。結合し
た抗体抗原複合体の分離を必要とする免疫アッセイは、一般に、「不均一系免疫アッセイ
」と呼ばれ、抗体抗原複合体の分離を必要としない免疫アッセイは、一般に、「均一系免
疫アッセイ」と呼ばれる。当業者は、様々な免疫アッセイの形態を容易に理解するであろ
う。
【0053】
「接触」は、本明細書で使用する場合、最も広い態様において、本明細書で別段の定め
がない限り、任意の順で試薬を組み合わせることを指すために使用される。
【0054】
用語「免疫複合体」は、本明細書で使用する場合、概して、補体結合を伴ってまたは伴
わずに抗原と抗体分子との結合により形成される複合体を指す。抗体または抗原のどちら
か一方が標識された場合、抗原と抗体との結合の結果として、標識は、免疫複合体と関連
する。したがって、抗体が標識された場合、結合の結果として、標識は、抗原と関連する
ようになる。同様に、抗原が標識された場合(例えば、標識を有する分析物類似体)、抗
原と抗体との結合の結果として、標識は、抗体と関連するようになる。
【0055】
用語「標識」は、本明細書で使用する場合、(例えば、共有結合もしくは非共有結合で
、単独で、または被包化されて)本開示の抗体、BAIB類似体、SDMA類似体または
抗原と直接または間接的にコンジュゲートさせることができる、検出可能な化合物、組成
物、または固体担体を指す。標識は、それ自体で検出可能(例えば、ラジオアイソトープ
標識、化学発光色素、電気化学的標識、金属キレート、ラテックス粒子、または蛍光標識
)であってもよいし、酵素標識の場合において、検出可能である基質化合物または組成物
の化学的変化を触媒してもよい(例えば、酵素、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、
アルカリホスファターゼなど)。本開示で用いる標識は、それらに限定されないが、アル
カリホスファターゼ;グルコース-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼ(「G6PDH」
);西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP);化学発光物質(chemilumines
cer)、例えば、イソルミノール、蛍光物質(fluorescer)例えば、フルオ
ロセインおよびローダミン化合物;リボザイム;ならびに色素でありうる。標識はまた、
それ自体が検出可能であってもよい特異的結合分子(例えば、ビオチン、アビジン、スト
レプトアビジン、ジゴキシゲニン(digioxigenin)、マルトース、オリゴヒスチジン、2,
4-ジニトロベンゼン、フェニルヒ酸(phenylarsenate)、ssDNA、
dsDNAなど)であってもよい。標識は、別の分子または固体担体に結合してもよく、
標識された分子の検出を可能にする特性で選択される。標識の利用は、電磁放射または直
接可視化の検出などの手段によって検出することができ、場合により、測定することがで
きるシグナルをもたらす。
【0056】
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書で使用する場合、概して、実質的に均一な抗
体の集団(すなわち、集団を構成する個々の抗体が同一である)から得られる抗体を指す
。モノクローナル抗体は、特異性が高く、単一の抗原部位に対するものである。異なるエ
ピトープに対する異なる抗体を典型的には含むポリクローナル抗体調製物に対して、各モ
ノクローナル抗体は、抗原上の単一のエピトープに対するものである。修飾語「モノクロ
ーナル」は、抗体の特徴を指すだけであり、任意の特定の方法による抗体の生成を必要と
すると解釈されるべきではない。詳細には、例えば、モノクローナル抗体は、ハイブリド
ーマ法によって作製されてもよいし、組換えDNA法によって作製されてもよいし、公知
の技術を使用してファージ抗体ライブラリーから単離されてもよい。
【0057】
用語「ポリペプチド」は、本明細書で使用する場合、概して、ペプチド結合でつながっ
たアミノ酸配列を有する分子を指す。この用語は、タンパク質、融合タンパク質、オリゴ
ペプチド、環状ペプチド、およびポリペプチド誘導体を含む。抗体および抗体の誘導体を
、別の段落ですでに述べたが、抗体および抗体の誘導体を、本開示の目的のために、ポリ
ペプチドおよびポリペプチド誘導体のサブクラスとして取り扱う。
【0058】
用語「固体担体」は、本明細書で使用する場合、本開示の抗体またはSDMA類似体が
付着できる非水性マトリクスを指す。固体担体の例としては、ガラス(例えば、多孔質ガ
ラス)、合成および天然ポリマー、多糖類(例えば、アガロース)、ポリアクリルアミド
、ポリスチレン、ポリビニルアルコールおよびシリコーン、磁気粒子、ラテックス粒子、
クロマトストリップ、マイクロタイターポリスチレンプレート、または結合されていない
材料から洗浄もしくは分離される抗原および/または抗体と結合することができる任意の
他の物質で部分的または全体的に形成される担体が挙げられる。ある種の実施形態におい
て、適用に応じて、固体担体は、アッセイプレートのウェルである場合もあるし、精製カ
ラム(例えば、親和クロマトグラフィーカラム)である場合もある。
【0059】
「受容体」は、分子の特定の空間的および極性組織、例えば、エピトープまたは決定部
位を認識できる任意の化合物または組成物を指す。受容体の例としては、抗体、Fabフ
ラグメントなどが挙げられる。
【0060】
「結合特異性」または「特異的結合」は、例えば、ポリペプチドと、ポリペプチドに特
異的なポリクローナルもしくはモノクローナル抗体、または抗体フラグメント(例えば、
Fv、単鎖Fv、Fab’、もしくはF(ab’)2フラグメント)などの第1の分子の
第2の分子への実質的な認識を指す。例えば、「特異性」は、本明細書で使用する場合、
概して、個々の抗体結合部位の、たった1つの抗原決定基と反応する能力、または抗体分
子の集団の、たった1つの抗原と反応する能力を指す。一般に、抗原-抗体反応において
は、高度な特異性が存在する。抗体は、(i)抗原の一次構造、(ii)抗原の異性形態
、ならびに(iii)抗原の二次および三次構造における違いを区別することができる。
高い特異性を示す抗体-抗原反応は、低い交差反応性を示す。
【0061】
「実質的な結合」または「実質的に結合する」は、特定のアッセイ条件下でのアッセイ
混合物における分子間の特異的結合または認識の程度を指す。最も広い態様において、実
質的な結合は、第1の分子が第2の分子を結合するまたは第2の分子を認識する能力の欠
如と、第1の分子が第3の分子と結合するまたは第3の分子を認識する能力との差に関連
し、当該差は、分子の相対濃度、ならびにインキュベーションの時間および温度を含む特
定のセットのアッセイ条件下で、特異的な結合を区別する意味あるアッセイの実施を可能
にするのに十分である。別の態様においては、交差反応という意味において、1つの分子
は、別の分子と結合するまたは別の分子を認識する能力が実質的に欠如し、ここでは、特
定のセットのアッセイ条件下で、第1の分子が第2の分子について、第3の分子に対して
示す反応性の25%未満、10%未満、5%未満、または1%未満の反応性を示す。特異
的な結合は、広く知られている多くの方法、例えば、免疫組織化学アッセイ、酵素結合免
疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)、またはウェスタン・ブロ
ットアッセイを使用して試験することができる。
【0062】
用語「塩」は、本明細書で使用する場合、酸と化合物の塩基性官能基との間に形成され
る塩を意味する。塩の例としては、それらに限定されないが、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸
塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸
塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸
塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレ
イン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカル酸塩、サッカラート、
ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベン
ゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、およびパモ酸塩(すなわち、1,1’-
メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート))が挙げられる。用語「塩」は
また、酸性官能基、例えば、カルボン酸官能基を有する化合物と、無機または有機塩基と
の間に形成される塩も指す。適切な塩基としては、それらに限定されないが、アルカリ金
属、例えば、ナトリウム、カリウムおよびリチウムの水酸化物;アルカリ土類金属、例え
ば、カルシウムおよびマグネシウムの水酸化物;他の金属、例えば、アルミニウムおよび
亜鉛の水酸化物;アンモニア、および有機アミン、例えば、非置換またはヒドロキシ置換
モノ-、ジ-、またはトリアルキルアミン;ジシクロヘキシルアミン;トリブチルアミン
;ピリジン;N-メチル、N-エチルアミン;ジエチルアミン;トリエチルアミン、モノ
-、ビス-、またはトリス-(2-ヒドロキシ-低級アルキルアミン)、例えば、モノ-
、ビス-、またはトリス-(2-ヒドロキシエチル)アミン、2-ヒドロキシ-tert
-ブチルアミン、またはトリス-(ヒドロキシメチル)メチルアミン、N,N-ジ-低級
アルキル-N-(ヒドロキシ低級アルキル)-アミン、例えば、N,N-ジメチル-N-
(2-ヒドロキシエチル)アミン、またはトリ-(2-ヒドロキシエチル)アミン;N-
メチル-D-グルカミン;ならびにアミノ酸、例えば、アルギニン、リシンなどが挙げら
れる。
【0063】
本開示を続ける場合、一態様において、本開示は、動物が、腎障害、例えば、腎疾患に
罹患しているかどうかを決定するための方法に関する。該方法は、動物からの尿または血
液サンプル中のBAIBを測定すること、および、サンプル中のBAIBの濃度に基づい
て、器質的損傷の結果である腎疾患を決定することを含む。例えば、該方法は、サンプル
中のBAIBの濃度を、健康な動物の集団からのサンプル中のBAIBにおける濃度に関
係する参照濃度と比較することを含む。動物の血液サンプル中のBAIB濃度の参照範囲
または正常な範囲は、明白に健康な(非疾患の)対象からのサンプルを使用して設定する
ことができる。一態様において、参照上限は、健康なネコ対象の集団の95パーセンタイ
ル値を表す。参照限界を超える血液または尿のBAIB濃度[BAID]を有する対象は
、腎障害、例えば、腎臓の器質的損傷に罹患しているとしてみなされうる。加えて、こう
した患者はまた、腎疾患に関連する早期死亡の高い可能性を有することも特徴とする。ネ
コ対象の場合、95パーセンタイル値の参照限界は、ネコの集団に対して約2.0μg/
dLのBAIBであってもよい。95パーセンタイル値の範囲は、例えば、約1.5~2
.5μg/dLを含み、特に、約1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2
.1、2.2、2.3、2.4および2.5μg/dLを含むことができる。イヌの場合
、95パーセンタイル値は、約1.0~2.0であり、特に、約1.0、1.1、1.2
、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9および2.0μg/dLで
ある。
【0064】
本開示の別の態様は、BAIBおよびSDMAの組合せを使用して、腎障害を決定する
ことを含む。この態様において、BAIBおよびSDMAの両参照範囲は、公知であり、
または健康な対象の集団から得ることができる。参照値より高いBAIB濃度およびSD
MA濃度の値は、腎障害を示しうる。SDMAに対する健康な対象の95パーセンタイル
値を表す適切な参照上限は、例えば、14μg/dLであってもよい。WO2015/0
35115を参照されたい。腎障害の予後はまた、対象からの血液サンプル中のBAIB
の濃度とSDMAの濃度との比を計算することでも達成されうる。[BAIB]/[SD
MA]比が0.15超である、または[SMDASDMA]/[BAIB]比が7未満で
あることは、腎障害を示し、死亡の兆候となる。正常なSDMA濃度の存在下でのBAI
B濃度の上昇は、正常な腎機能であっても器質的損傷を示す可能性がある。上昇したSD
MA濃度の存在下でのBAIB濃度の減少は、器質的損傷の不在下でのネフロン機能の喪
失を示す可能性がある。
【0065】
他の態様において、本開示は、腎結石を診断する方法に関する。該方法は、対象からの
サンプル中のBAIBの濃度を測定すること、および、対象が、参照限界より高いBAI
B濃度を有するかを決定することを含む。参照限界より高いBAIBレベルの上昇は、器
質的損傷を示すが、これは腎結石によって起こりうる。超音波、CTスキャンまたはX線
による腎臓のさらなる分析は、腎結石の他の症状がなくても確証的でありうる。
【0066】
別の態様において、本開示は、腎疾患を決定する方法に関し、ここで、該方法は、対象
からの2つ以上のサンプルにおけるBAIBの濃度を決定することを含み、ここで、該サ
ンプルは、数分、数時間、数日、週、数か月または数年にわたり、対象から得られる。腎
疾患の診断または進行は、サンプル中のBAIBの濃度に基づいて決定することができる
。サンプル中のBAIBの濃度が一連のサンプルにわたって上昇している場合、腎疾患、
例えば、腎臓の器質的損傷が悪化していることを決定することができる。死亡率または早
期死亡はまた、一連のサンプル中のBAIBの濃度の上昇に基づいて、予測されうる。
【0067】
本開示はまた、本明細書に記載された計算もしくは比の決定を行う、または、腎疾患も
しくは腎機能障害を診断するためのコンピューティング装置にも関する。該コンピューテ
ィング装置は、疾患の状態を決定するために使用することができる方程式から値を実行時
に算出するソフトウェア命令のための記憶装置を含む。
【0068】
ある種の実施形態において、遊離型SDMAの濃度は、参照によりそれら全体がそれぞ
れ本明細書に組み込まれる、米国特許第8,481,690号、WO2015/0351
55、2015年2月20日に出願された米国仮特許出願第62/118,832号に記
載されている、免疫学的な方法、装置およびキットを使用して決定される。該方法は、1
種または複数のSDMA類似体を含む対照、校正物質、または標準物質を含むことができ
る。特に、該方法は、それに限定されないが、マイクロプレートおよびラテラルフロー装
置を使用することを含めて、当業者に周知の免疫アッセイ技術を使用することで達成する
ことができる。SDMAを検出するためにサンプルが得られる動物対象としては、ヒトお
よびヒト以外の動物(例えば、ペット、家畜など)対象が挙げられる。
【0069】
サンプルは、EMIT(登録商標)(酵素増幅免疫アッセイ技術)均一免疫アッセイシ
ステムに基づいて、改変されたアッセイを使用して分析されうる。従来のEMIT(登録
商標)アッセイにおいて、分析物を含有するサンプルは、抗分析物抗体、分析物と酵素と
のコンジュゲート、および、酵素と接触した場合にシグナルを発生する基質と接触する。
抗体とコンジュゲートの結合は、酵素活性を阻害し、または減少させる。分析物がサンプ
ル中に存在する場合、サンプルの分析物は、抗体と結合するために、コンジュゲートさせ
た分析物と競合し、その結果、酵素/基質からのシグナルはより多く発生する。分析物が
存在しない場合、抗体とコンジュゲートとの間でさらに結合が起こり、シグナル発生を制
限または妨げる可能性がある。したがって、分析物がより多く存在する場合、シグナルは
より多く発生する。動力学アッセイは、サンプル中の分析物の存在または量を指標として
、シグナル発生速度を使用することができる。
【0070】
一態様において、シグナルは、当業者には周知のように、酵素/基質システムに特異的
な波長での吸光度として測定される。例えば、G6PDH/NADの酵素/基質システム
について340nmで吸光度を測定することで、G6PDHの存在下での、NADからN
ADHへの変換の相対量の値が得られ、これを使用して酵素による基質の変換を反映した
反応速度を得ることができる。
【0071】
反応速度は、酵素媒介反応の間に、複数の時点でシグナル(例えば、吸光度)を測定す
ることによって決定することができる。シグナル測定の時間および間隔の決定は、試薬の
濃度およびアッセイの温度を考慮する当該技術の範囲内である。例えば、速度は、サンプ
ル(または校正物質)と全試薬とを室温で組み合わせた後、最初の約2~10分間で吸光
度を測定することによって決定され、さらに1~15分間に、5~60秒ごとに測定する
ことができる。反応速度は、吸光度の経時的変化として表されることができる。例えば、
吸光度は、サンプル(または校正物質)と全試薬とを組み合わせた後、約1、2、3、4
、5、6、7、8、9または10分から開始して測定することができる。吸光度は、通常
、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15分間に
、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55または60秒の間
隔で測定する。これらの時間はそれぞれ、反応条件、分析物および試薬に応じて、延長ま
たは短縮することができる。
【0072】
本開示の一実施形態によれば、分析物は、BAIBまたはSDMAであり、酵素コンジ
ュゲートシステムは、G6PDH/NADである。参照によりそれら全体がそれぞれ本明
細書に組み込まれる、2015年2月20日に出願された米国仮特許出願第62/118
,832号および2016年2月19日に出願された米国特許出願第15/048,20
9号を参照されたい。本実施形態において、BAIBまたはSDMAの類似体は、動物、
例えば、ヒト、ネコおよびイヌからの血清または血漿サンプル中のBAIBまたはSDM
Aの存在または量を決定するために、G6PDHにコンジュゲートされ、アッセイにおい
てコンジュゲートとして使用される。本実施形態の一態様において、校正物質は、公知の
量のBAIBまたはSDMAと校正物質マトリクス(例えば、処理血清)とを組み合わせ
ることによって調製される。
【0073】
また、固相アッセイ形式は、よく使用される結合アッセイ技術である。分析物の存在(
例えば、BAIBまたはSDMA)が、コンジュゲートおよび/または固定化された相補
性結合メンバーへの分析物の結合によって示される、いくつものアッセイ装置および手順
が存在する。1つの特定の態様において、固定化された結合メンバー(例えば、抗BAI
Bまたは抗SDMA抗体)は、アッセイの間に、固相、例えば反応ウェル、ディップステ
ィック、試験紙、フロースルーパッド、紙、ファイバーマトリクス、または他の適切な固
相材料に結合する、または結合するようになる。サンプル中のBAIBまたはSDMAと
固定化抗体との結合反応は、標識にコンジュゲートしたBAIBまたはSDMAを含むあ
る量のBAIBまたはSDMA類似体をサンプルに添加することによって決定される。サ
ンプルとBAIBまたはSDMA類似体との混合物を固相に接触させた後、混合物および
固相をインキュベートして、固定化抗体とBAIBまたはSDMA、およびBAIBまた
はSDMA類似体の間で結合させる。インキュベーション後、結合していない反応物は、
固相から除去される。類似体への抗体の結合によって抗体と結び付いた標識の量が測定さ
れる。抗体に結び付いた標識の量は、サンプル中のBAIBまたはSDMAの量に反比例
する。ある種の実施形態において、BAIBおよびSDMAは、上記の本開示によれば、
別々に標識され、同時に測定される。他の実施形態において、BAIBおよびSDMAは
、単独で、連続的に、または、並行に測定される。
【0074】
BAIBまたはSDMAに対する1つまたは複数の抗体の、装置または固体担体への固
定化は、抗体が、サンプル、希釈および/または洗浄手順によって流されないように行わ
れる。1つまたは複数の抗体は、物理的吸着によって(すなわち、化学リンカーの使用な
しで)、または化学的結合によって(すなわち、化学リンカーを使用して)、表面に付着
させることができる。化学的結合は、表面での抗体のより強い付着をもたらすことができ
、表面結合分子の所定の配向および形態を与えることができる。
【0075】
別の実施形態において、特定種において生じたBAIBまたはSDMA抗体は、固体担
体に結合する抗種抗体との相互作用によって、固体担体に結合する。1つの特定の態様に
おいて、抗BAIBまたは抗SDMA抗体は、ウサギにおいて生じさせ、担体は、ウサギ
において生じた抗BAIBまたは抗SDMA抗体を認識する、抗ウサギ抗体に結合してい
る。この態様において、抗体は、その種から得られた抗血清の形態であってもよい。抗B
AIBまたは抗SDMA抗体は、サンプルを固相に添加する前に、抗種抗体を有する固相
に付すこともできるし、抗BAIBまたは抗SDMA抗体は、サンプルを固相に添加する
前に、サンプルと混合させることもできる。どちらの場合でも、抗BAIBまたは抗SD
MA抗体は、固相上の抗種抗体への結合によって、固相に結合するようになる。
【0076】
別の実施形態において、1つまたは複数の標識された抗体は、混合物を固体担体に付す
前に、試験サンプルと混合させることができる。この場合において、BAIBまたはSD
MA類似体は、サンプル、希釈および/または洗浄手順によって流されないように固体担
体に付着させることができる。サンプル中の標識された抗体は、サンプル中のBAIBま
たはSDMAに結合し、したがって、固体担体でのBAIBまたはSDMA類似体と結合
させるために利用することができない。混合物を固体担体に付し、適切にインキュベート
した後、混合物は、固体担体から洗浄される。サンプルのBAIBまたはSDMAに結合
していなかった抗体は、固体担体上のBAIBまたはSDMA類似体に結合することにな
る。サンプル中のBAIBまたはSDMAの存在または量は、BAIBまたはSDMA類
似体に結合した抗体の量に反比例する。抗体上の標識に関連するシグナルは、適切な方法
によって測定することができる。
【0077】
抗体抗原複合体の検出は、当業者に周知の様々な手法、例えば、比濁法、酵素標識化、
放射性標識、発光、または蛍光によって実現することができる。免疫アッセイ法は、当業
者に公知であり、それらに限定されないが、放射免疫アッセイ(RIA)、酵素免疫アッ
セイ(EIA)、蛍光偏光免疫アッセイ(FPIA)、微粒子酵素免疫アッセイ(MEI
A)、酵素増幅免疫アッセイ技術(EMIT)アッセイ、免疫濁度または凝集アッセイ、
ラテラルフロー装置を含むコロイド金ベースの免疫アッセイ、および化学発光磁気免疫ア
ッセイ(CMIA)を含むと理解されている。RIAにおいて、抗体または抗原は、放射
能で標識され、競合または非競合形式で使用される。EIAにおいて、抗体または抗原は
、基質を、測定されるシグナル、例えば、色の変化、を生じる産物に変える酵素で標識さ
れる。FPIAにおいて、抗原は、蛍光標識で標識され、試料からの標識されていない抗
原と競合する。測定される分析物の量は、測定されるシグナルの量に反比例する。MEI
Aにおいて、固相の微粒子は、目的の抗原に対する抗体で被覆され、分析物を捕捉するた
めに使用される。検出のための抗体は、EIA法のように、酵素で標識される。測定され
る分析物の濃度は、測定されるシグナルの量に比例する。CMIAにおいて、化学発光標
識が、抗体または抗原へコンジュゲートされ、その基質と合わさった時に光を発生する。
CMIAは、競合または非競合形式に設定することができ、それぞれ、存在する分析物の
量に反比例または正比例する結果をもたらす。
【0078】
特異的結合アッセイにおける、試薬に浸漬した試験紙の使用も周知である。そのような
手法において、試験サンプルは、試験紙の一部分に付され、試験紙材料を移動、または運
ばれる(wick)。したがって、検出または測定される分析物は、試験サンプル自体であり
うるまたは別個に添加される溶出液を利用して、材料中をまたは材料に沿って通過する。
分析物は、分析物の相補性結合メンバーが固定化されている、試験紙上の捕捉部分または
検出部分へと移動する。分析物が検出部分で結合する程度は、試験紙に組み込むこともで
きるまたは別個に付すことができるコンジュゲートを利用して決定することができる。一
実施形態において、BAIBまたはSDMAに特異的な抗体は、離れた所で固体担体に固
定化される。サンプルの添加後、固体担体でのBAIB-またはSDMA-抗体複合体の
検出は、当分野で公知の任意の手段によるものでありうる。例えば、参照によりその全体
が本明細書に組み込まれる米国特許第5,726,010号は、ラテラルフロー装置の一
例、SNAP(登録商標)免疫アッセイ装置(IDEXX Laboratories)
を記載している。
【0079】
他の検出技術は、磁気粒子またはマイクロビーズ、例えば、超常磁性酸化鉄に浸漬した
ポリマービーズを用いる。これらのビーズは、例えば、分析物の特異的な結合相手に結び
付く。ビーズは、試験されるサンプル中の標的の分析物と結合し、次いで、通常、磁気に
よって溶液から単離または分離される。一度単離が行われたら、直接的に、光学的に、ま
たはカメラによって、特定の画像かまたは標識を観察することを含む、他の試験を行うこ
とができる。
【0080】
さらなる実施形態において、BAIBまたはSDMA類似体、特に、チオール含有、ヒ
ドロキシル含有、アミノ含有、およびカルボキシレート含有BAIBまたはSDMA類似
体は、BAIBまたはSDMAを他の分子(コンジュゲートする標的)、例えば、活性タ
ンパク質と連結させることができ、BAIBまたはSDMAコンジュゲートを形成する。
本明細書に記述するBAIBまたはSDMA類似体は、BAIBまたはSDMAを、コン
ジュゲートする標的、例えば、タンパク質、ポリペプチド、検出可能な標識、固体担体な
どに連結させることができ、BAIBまたはSDMAコンジュゲートをもたらす。本明細
書に記述するBAIBまたはSDMAコンジュゲートを使用して、BAIBまたはSDM
Aに特異的な免疫アッセイで使用する抗体を作ることができる。BAIBまたはSDMA
類似体は、BAIBまたはSDMAに特異的な免疫アッセイで使用する標識とコンジュゲ
ートさせることもできる。
【0081】
一実施形態において、BAIBは、キャリアタンパク質とコンジュゲートされ、「ハプ
テン-キャリア」免疫原を形成し、それを、BAIBを含むエピトープへの免疫反応を刺
激するために使用することができる。免疫原タンパク質の例としては、それらに限定され
ないが、BSA、KLH、およびオボアルブミンが挙げられる。ハプテンを免疫原タンパ
ク質とコンジュゲートするためのプロトコルは、当分野で公知である(例えば、Anti
bodies:A Laboratory Manual、E.HarlowおよびD.
Lane編、Cold Spring Harbor Laboratory(Cold
Spring Harbor、NY、1988)78~87頁を参照されたい)。
【0082】
適切なSDMA類似体は、例えば、参照によりそれら全体が組み込まれる米国特許第8
,481,690号およびWO2015/035155に記載される。
【0083】
BAIB類似体は、例えば、BAIB-チオール(アミノ末端およびカルボキシ末端)
ならびにBAIB-FMOC(フルオレニルメチルオキシカルボニル)を含み、ここに示
す:
【0084】
【化3】

【0085】
これらの類似体を使用して、例えば、以下:グルタルアルデヒド-BAIBコンジュゲ
ート、ポリリジン-BAIBコンジュゲート、BAIB(アミン末端)-BSAコンジュ
ゲート、BAIB(カルボキシ末端)-BSAコンジュゲート、BAIB(アミン末端)
-KLHコンジュゲート、BAIB(カルボキシ末端)-KLHコンジュゲート、BAI
B-G6PDHコンジュゲートおよび粒子にコンジュゲートさせたBAIBを含む、BA
IBのコンジュゲートを調製することができる。これらのコンジュゲートのいくつかの構
造を、ここに示す。
【0086】
【化4-1】

【0087】
【化4-2】

【0088】
代替的実施形態において、BAIBおよび/またはSDMA類似体は、検出可能な標識
に連結される。標識は、それ自体で検出可能(例えば、ラジオアイソトープ標識、化学発
光色素、電気化学的標識、金属キレート、ラテックス粒子、または蛍光標識)であっても
よいし、酵素標識の場合において、検出可能である基質化合物または組成物の化学的変化
を触媒してもよい(例えば、酵素、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホス
ファターゼなど)。標識は、それ自体が検出可能であってもよい特異的結合分子(例えば
、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、ジゴキシゲニン、マルトース、オリゴヒス
チジン、2,4-ジニトロベンゼン、フェニルヒ酸(phenylarsenate)、ssDNA、d
sDNAなど)であってもよい。SDMAおよび/またはBAIBは、当業者に周知の方
法を使用して、検出可能な標識に連結させることができる。
【0089】
SDMAおよびBAIBならびにKLHまたはBSAの類似体のコンジュゲートは、B
AIBおよびSDMAと実質的に結合する抗体(すなわち、抗BAIBおよびSDMA抗
体)を生じる免疫原として使用されうる。本開示の方法、装置、およびキットに有用な抗
SDMA抗体および抗BAIB抗体は、BAIBおよびSDMAに高い親和性で結合する
ことを特徴とする。したがって、本明細書に記述するのは、単離された、遺伝子組換えの
、合成の、および/またはインビボで生成された抗BAIB抗体および抗SDMA抗体、
ならびに、そのような抗体を作製および使用する方法であり、診断用および治療用の組成
物、方法および装置を含む。本明細書に記述する抗体は、例えば、患者のサンプル中のS
DMAおよびBAIBを決定するためのアッセイの試薬として有用である。一実施形態に
おいて、もたらされた抗体は、BAIBおよび遊離型SDMA(すなわち、ポリペプチド
鎖の一部ではないSDMA)を検出することができる。
【0090】
抗体を作製するための方法は、1つまたは複数のBAIBおよびSDMAコンジュゲー
トを免疫原として使用して、免疫反応を刺激することを含むことができる。該方法は、適
切な免疫化プロトコルを使用して、1つまたは複数のBAIBおよびSDMAコンジュゲ
ートを動物に投与すること、および、動物の体液(複数可)から適切な抗体を分離するこ
とを含む。あるいは、コンジュゲートをファージディスプレイ法で使用して、それらの表
面に適切な抗体を示すファージを選択することができ、その後、少なくとも適切な抗体の
様々なドメイン領域をコードする核酸配列の分離が続く。ファージディスプレイ法は、当
業者に周知である(例えば、Antibody Phage Display;Meth
ods in Molecular Biology、Vol,178、O’Brien
、Philippa M.;Aitken,Robert(Eds.)2002を参照さ
れたい)。モノクローナル抗体は、当分野で一般に知られた方法によって、調製すること
ができる。
【0091】
本明細書に記述するBAIBおよびSDMA類似体は、受容体結合アッセイ、例えば、
BAIBおよびSDMAの免疫アッセイで使用する検出可能なコンジュゲートを与えるた
めに、標識に連結させることができる。同様に、抗BAIBおよび抗SDMA抗体も、受
容体結合アッセイ、例えば、免疫アッセイで使用する検出可能な抗SDMA抗体および抗
BAIB抗体を与えるために、標識に連結させることができる。類似体および抗体は、当
業者に周知の方法を使用して、標識に連結させることができる。例えば、Immunoc
hemical Protocols;Methods in Molecular B
iology、Vol.295、R.Burns編(2005))。検出可能なコンジュ
ゲートまたは検出可能な抗SDMA抗体は、試験サンプル中のBAIBおよび/またはS
DMAの存在または量に関係するシグナルを出すために、様々な均一系および/または競
合型アッセイ形式で使用することができる。
【0092】
特定の実施形態において、免疫アッセイ法は、抗BAIBおよび抗SDMA抗体の検出
のための競合型免疫アッセイである。競合型免疫アッセイは、以下の例示的な方法で行う
ことができる。動物の体液からの、サンプルは、固体担体とコンジュゲートしたBAIB
類似体またはSDMA類似体、および検出可能な標識とコンジュゲートした抗BAIBお
よび抗SDMA抗体と接触させる。サンプルに存在する、目的の抗体は、固体担体とコン
ジュゲートした類似体との結合のために、検出可能な標識とコンジュゲートした抗BAI
Bおよび抗SDMA抗体と競合する。固体担体と結び付いた標識の量は、結合していない
抗体および固体担体を分離した後に決定することができる。代替的実施形態において、競
合型免疫アッセイは、以下の例示的な方法で行われる。動物の体液からの、BAIBおよ
びSDMAを含有するサンプルは、検出可能な標識に連結したBAIB類似体またはSD
MA類似体、次いで、固体担体とコンジュゲートした抗BAIBまたは抗SDMA抗体と
接触させる。サンプル中のSDMAまたはBAIBは、標識された抗体に連結したBAI
BまたはSDMAコンジュゲートと結合するために、固体担体上のSDMAまたはBAI
Bと競合する。どちらの場合でも、得られたシグナルは、サンプルに存在するBAIBま
たはSDMAの量と逆関係である。
【0093】
血清中のクレアチニンの濃度は、当業者によって知られているように、様々な方法で測
定することができる。例えば、Catalyst Dx(商標)Chemistry A
nalyzerまたはVetTest(登録商標)Chemistry Analyze
rは、クレアチニンの試験に適合したドライスライド、例えば、IDEXX Labor
atoriesから市販されているものと共に使用することができる。他の分析装置およ
びスライド、例えば、Ortho Clinical Diagnosticsから入手
可能なVITROS(登録商標)950分析装置およびVITROS(登録商標)CRE
Aスライド、ならびにRoche DiagnosticsからのCOBAS(登録商標
)分析装置および関連したキットも使用することができる。酵素湿式アッセイ(Enzy
matic wet assay)も使用することができる。例えば、当業者は、Int
egra 800分析装置で酵素湿式化学法を使用することができる。1つの特定のアッ
セイは、552nmでの検出、および659nmでの吸光度ブランキングを伴う、クレア
チニナーゼ/クレアチナーゼ/サルコシンオキシダーゼ系に基づく。当業者は、比色法、
例えば、ピクリン酸に基づくもの、例えば、Jaffeアッセイも使用することができる
。当業者に公知の他の方法、例えば、参照によりそれぞれが本明細書に組み込まれる米国
特許公開第2005/0266574号および米国特許第4,818、703号に記載さ
れているものも、クレアチニン濃度を測定するために使用することができる。ある種の実
施形態において、クレアチニン濃度の測定は、アイソトープ希釈質量分析を使用して行わ
れる。
【0094】
以下のものは、例示の目的で示すにすぎず、上記の広義の用語で説明している本発明の
範囲を限定することを意図するものではない。本開示で引用したすべての参考文献は、参
照により本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0095】
実施例1:BAIB血清レベルの液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)アッセ

液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)アッセイは、BAIB血清レベルを測
定するために最適化された。
【0096】
イヌの処理血清は、以下の通り調製した:未処置の市販のイヌの血清(500mL)は
、2フィートのSNAKESKIN(商標)透析チューブ(3.5K MWCO、35m
m Dry I.D.)(Thermo Scientific)に充填し、4℃で少な
くとも6時間、20gの炭素粉末を有するPBS緩衝液(20L)に対して透析した。プ
ロセスは、緩衝液と炭素を交換しながら、3回繰り返した。血清中のBAIB濃度は、透
析前後に、LC-MSによって測定された。透析前の血清において、BAIB濃度は、2
~3μg/dLであった。透析後、BAIB濃度は、検出限界を下回った。イヌのチャコ
ール処理血清を、使用するために-80℃で保管した。
【0097】
LC-MS標準曲線を、以下の手順に従って作成した。
【0098】
水中に50μg/dLのD3-BAIB(3つの重水素原子で標識されたBAIB)(
CDN ISOTOPES型番D-7229)を溶解することによって内部標準を調製し
た。
【0099】
アッセイ標準を、水中の1mg/mLのBAIBの溶液を最初に調製することによって
調製した。8μLのこの溶液を、7992μLのイヌの処理血清に移し、逐次的に処理血
清(上記で調製)に希釈して表1の希釈系列を生成した。
【0100】
【表1】

【0101】
サンプルを、以下に従ってLC-MSについて調製した:
1.50μLの試験サンプルまたは参照標準を、バイアルに移した。
2.50μLの内部標準溶液を、バイアルに添加し、溶液を、完全に混合した。
3.300μLの純粋なアセトニトリルを、バイアルに添加し、溶液を、完全に混合した

4.バイアルを、20分間、3000xgで遠心分離し、上澄みを、デカント、濾過し(
0.2μm)、下記の条件下でLC-MSにかけた。
【0102】
LC-MSを、以下の条件下で行った:
移動相A:水、0.1%ギ酸、0.5mMペルフルオロヘプタン酸(Sigma 342
041-5G)
移動相B:アセトニトリル、0.1%ギ酸
カラム:Acquity CSH C18 1.7μm、2.1×30mm(Water
s 186005295)
スキャンタイプ:MRM
スキャンモード:正極性
イオン源:ターボスプレー
【0103】

【0104】

【0105】
時間0分で、0%Bで開始する。1分で5%Bになる勾配に強める。1.2分間で10
0%Bになる勾配に強める(2.20分マーク)。0.3分間、100%Bを保ち(2.
5分マーク)、その後、初期状態に戻す(0%B)。
【0106】
実施例2:健康なおよび疾患を有するネコにおけるBAIBの測定
正常なネコ対象におけるBAIB参照レベルを、両方の性で様々な種の58匹のネコに
おいて決定した。血清サンプルを集め、上記の通りLC-MSにかけ、個別の試験サンプ
ルを標準(上記で測定)と比較してBAIBレベルを決定した。この集団における95パ
ーセンタイル値に基づく参照上限は、2.0μg/dLであった。
【0107】
腎疾患に罹患しているネコの血清中BAIB濃度[BAIB]をまた、LC-MSによ
って10匹のネコにおいても測定した。加えて、SDMA濃度[SDMA]を、LC-M
Sによって測定した。
【0108】
BAIBおよびSDMAのレベルを、表2に示す。
【0109】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0110】
ネコのSDMAの濃度[SDMA]の参照上限は、14μg/dLで、これは健康な対
象におけるSDMAの濃度の95パーセンタイル値を表す。WO2015/035115
を参照されたい。
【0111】
上昇したBAIBレベルは、腎臓の器質的損傷の重症度のマーカーであり、死亡の兆候
である。約7未満の[SDMA]/[BAIB]比は、腎疾患における機能的損傷ならび
に器質的損傷を示す。約0.15より高い[BAIB]/[SDMA]比はまた、腎疾患
における器質的損傷による機能喪失も示す。高い[BAIB]/[SDMA]比は、早期
死亡の高い可能性を反映し、低い[BAIB]/[SDMA]比は、早期死亡の低い可能
性を反映する。ネコの[SDMA]/[BAIB]比の参照限界は、7である。ネコの[
BAIB]/[SDMA]比の参照限界は、0.15である。
【0112】
実施例3:腎結石を有するネコのBAIB
BAIBの血清レベルは、腎結石に罹患しているネコ対象において、様々な時間で決定
される。上昇した血清中BAIB濃度は、表3に示される通り、腎結石を示した。
【0113】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【0114】
実施例4:糸球体腎炎に罹患しているネコ対象のBAIBレベル
4匹のネコ患者および1匹のイヌ患者は、腎疾患の結果として死亡した。患者の死後、
剖検により、糸球体腎炎の診断となった。SDMA、BAIBおよびCREは、患者の死
亡の前に集めた貯蔵したサンプルにおいて、遡及的に(上記した通り)測定された。BA
IBは、表4で示される通り、これらの患者で上昇した。
【0115】
【表4】

【0116】
実施例5:腎障害を有するイヌにおけるBAIBレベル
正常なイヌ対象におけるBAIB参照レベルは、両方の性で様々な種の136匹のイヌ
において決定した。血清サンプルを集め、上記の通りLC-MSで分析した。この集団に
おける95パーセンタイル値に基づく参照上限は、1.24μg/dLであった。
【0117】
血清中SDMA濃度と血清中CRE濃度との間の不調和(すなわち、[SDMA]/[
CRE]の高い比および正常値より高い血清SDMA)の存在は、時期尚早の死亡のリス
クを示すことは公知である。WO2015/035155を参照されたい。したがって、
血清BAIB、CREおよびSDMAを、SDMAおよびCREの様々レベルで、13匹
のイヌにおいて測定した。比[BAIB]/[SDMA]を計算した。これらのデータを
、表5に表す。
【0118】
【表5】


【0119】
それに続いて、イヌのコホートをモニタリングした。[SDMA]:[CRE]不調和
を示すイヌにおいて、BAIBは、正常なカットオフ値より高く上昇した。[SDMA]
:[CRE]不調和を示すイヌにおいて、[BAIB]/[SDMA]比は、不調和を示
さないイヌに対して上昇した。追跡すると、[SDMA]:[CRE]不調和を示すイヌ
は、死亡と報告された。1.5より高い[BAIB]/[SDMA]の比を、腎機能障害
および時期尚早の死亡のリスクを示すとして決定した。上昇した血清中BAIB濃度は、
腎機能障害および時期尚早の死亡のリスクを示す。
【0120】
実施例6:がん患者におけるBAIBおよびSDMAの測定
BAIBおよびSDMAを、診療所にいる、様々ながんを有する7匹のイヌおよび6匹
のネコの患者の血清で測定した。
【0121】
7匹のイヌのがん患者のうち、1匹のみ(C6)が、正常な参照範囲の上限(3.6p
g/mL)より高いBAIBレベルを有した。イヌのがん患者C6は、転移性腎癌を有す
ると見出された、すなわち、C6は、がんが腎臓に広がっていた群の中で、唯一のイヌだ
った。
【0122】
6匹のネコのがん患者のうち、腎臓の病理組織学的な陽性所見(転移性腎癌、リンパ形
質細胞性間質性腎炎、炎症、線維症)を有する3匹の患者は、参照範囲(2.0μg/d
l)より高いBAIBの上昇したレベルを有していた(F3、F4およびF5)。正常な
腎臓の病理組織像を有する3匹の患者は、正常な参照内のBAIBレベルを有していた。
【0123】
【表6】

【0124】
実施例7:BAIB-G6PHDコンジュゲートの調製
BAIBとG6PDHとのコンジュゲートを、NADおよびG6Pの存在下で、BAI
B類似体SDMA-SHをSIA活性化G6PDHとコンジュゲートすることで調製した
【0125】
【化5】

【0126】
SIAによる酵素予備活性化:1つのバイアルのグルコース-6-ホスフェートデヒド
ロゲナーゼ(G6PDH)(12mg)を、3mLのMES緩衝液(50mM、pH8.
0)に溶解し、1時間回転して、酵素を完全に溶解したことを確実にした。酵素溶液を、
必要とされるまで氷上で保持した。追加の4.5mLのMES緩衝液(50mM、pH8
.0)を、酵素溶液に添加し、ボルテックスでよく混合し(5秒間)、10分間氷上で溶
液を保持した。100mgのG6Pを、1mLの脱イオン水に溶解し、10分間氷上に置
いた。200mgのNADHを、1mLの脱イオン水に溶解し、10分間氷上で保持した
。0.68mLのG6P溶液および0.34mLのNADH溶液を、酵素溶液に添加し、
ボルテックスでよく混合し(5秒間)、10分間氷上で溶液を保持した。1つのバイアル
のSIA(50mg)を、0.5mLのDMSO(100mg/mL)に溶解した。0.
14mLのSIA溶液を、酵素溶液に添加し、ボルテックスでよく混合し(5秒間)、ア
ルミホイルで覆い、室温で2時間回転した。溶液を、G2 Slide-A-Lyzer
透析カセットに移し、4℃の暗室で5時間、PBS緩衝液(4L)に対して透析した。緩
衝液を、新しいPBS(4L)に交換し、溶液を4℃の暗室で一晩かけて透析した。透析
緩衝液を、MES(4L、25mM、pH8.0)に交換し、溶液を4℃で3時間透析し
た。12.5mLの酵素溶液を、透析カセットから除去し、0.32mLのMES緩衝液
(1M、pH8.0)および0.32mLのEDTA(0.2M、pH8.0)を添加し
て、溶液の最終濃度を50mMのMESおよび5mMのEDTAとした。必要ならば、酵
素溶液が12.5mL未満である場合、MESおよびEDTAの体積を、適宜に調整して
もよい。溶液を、5分間アルゴンで脱気した。
【0127】
BAIB-SH類似体(カルボキシ末端)を、実施例12に記載の通り調製し、以下の
通り活性化した酵素にカップリングした:BAIB-SH(400eq、0.096mm
ol、15.6mg)を、水(0.156ml)に溶解し、SIA活性G6PDH酵素溶
液に添加した。反応物を4℃で36時間攪拌した。BAIB-G6PDHコンジュゲート
を、4℃で6時間、緩衝液を3回交換しながら、PBS(4L)に対して透析することに
よって形成し、精製した。
【0128】
実施例8:グルタルアルデヒド-BAIBコンジュゲートの調製
グルタルアルデヒド-BAIBコンジュゲートを、20mMのPBSおよび0.15M
のNaCl(5mL、総計10mg)中の2mg/mLのBAIBと、25μL(6.2
5mg)の追加のグルタルアルデヒド(水中で25%)とで調製した。室温で1時間反応
後、NaBH4(4eqのBAIB、0.776mmol、48mg)を添加し、反応混
合物を4℃で18時間攪拌した。
【0129】
【化6】

【0130】
実施例9:ポリリジン-BAIBコンジュゲートの調製
ポリリジン-BAIBコンジュゲートを、以下の反応スキームに従って、水中の0.1
mg/mLの濃度に調製した。
【0131】
【化7】

【0132】
Fmoc-BAIB(5mg)を、水(5mL)に溶解し、EDC(2mg)およびス
ルホ-NHS(3mg)を添加した。溶液を、室温で15分間攪拌し、次いで、ポリリジ
ン溶液(20ml、0.1%)を添加し、次いで、混合物を室温で3時間攪拌した。溶液
を、ピペリジンに添加して最終濃度を20%とし、室温で少なくとも1時間インキュベー
トした。反応溶液を、次いで、4℃で、10K MWCO透析カセット(30ml)でP
BS(4L)に対して透析し、緩衝液を2回交換した。
【0133】
実施例10:粒子-BAIBコンジュゲートの調製
5%固体における0.4mLの粒子を、2.8mLの50mMリン酸緩衝液中の、5m
g/mL濃度の0.8mLのBAIBと混合し、4℃で2日間回転させて混合した。
【0134】
実施例11:BAIB-チオール(アミン末端)およびBSAでコンジュゲートさせたB
AIBの合成
例示的な免疫原であるBAIB(アミン末端)-BSAコンジュゲートを、下記の手順
に従って調製した。
【0135】
まず、BAIB-SH類似体(アミノ末端)を、下記の反応スキームおよび下記の方法
により調製した。
【0136】
【化8】


1.22mg(0.216mmol)のBAIB(Sigma-Aldrichカタログ
番号217794)を、PBS(4mL)に溶解した。
2.50mg(0.216mmol)のSATA(N-スクシンイミジルS-アセチルチ
オ酢酸 - Thermoカタログ番号PD199377)を、DMSO(0.4mL)
に溶解し、BAIB溶液に添加した。
3.反応は、20℃で30分間、反転させた。
4.反応を、次いで、脱アセチル化溶液(PBS中の0.9mL、0.5Mのヒドロキシ
ルアミン、25mMのEDTA、pH7.3)で処理した。
5.反応は、4℃で4時間、反転させ、BAIB-SH(アミノ末端)を得た。
【0137】
BAIB-SHを、以下の通りBSAにカップリングした:
1.1mLの反応溶液を、1つのバイアルのマレイミド活性化BSA(5mg)(Sig
ma-Aldrichカタログ番号054M4801V)に添加し、反応は、2℃で18
時間、反転させた。
3.コンジュゲートを10MWカットオフ、3mL透析カセット内に設置し、4℃で48
時間、PBS(4L)に対して透析した。
4.カップリング効率を、当業者には公知の方法に従って、上記ステップ6から過剰なチ
オール溶液を使用して、エルマン試験によって決定した:10μLのサンプル+20μL
のエルマン試薬+70μLのDTNB緩衝液を、次いで、412nmで読み取った。
【0138】
実施例12:BAIB-チオール(カルボキシ末端)とBSAコンジュゲートされたBA
IBとの合成
例示的な免疫原であるBAIB(カルボキシ末端)-BSAコンジュゲートを、以下の
手順に従って調製した。
【0139】
BAIB樹脂の調製:
BAIB-SH樹脂を、以下の一般的な反応スキームに従って、および下記のように調
製した。
【0140】
【化9】


1.150mg(0.28mmol)のBAIB(Sigma-Aldrichカタログ
番号217794)、400mg(0.31mmol)のFmoc-Cl(Fluka
BCBH6153V)、0.41mL(0.47mmol)のDIPEA(Sigma-
Aldrichカタログ番号77996JJ)、および18mLのDMF(Sigma-
Aldrichカタログ番号23185)を含む混合物を、20℃で3時間、反転させた

2.以下を、上記の混合物に添加した:1.2g(0.093mmol)の4-メトキシ
-トリチル樹脂(Novabiochem S6013887 348)および530m
g(0.28mmol)のHATU(Novabiochem S8446513 30
9)。得られた溶液を、20℃でさらに18時間、反転させた。
3.DMF中の20%ピペリジンを、次いで、添加し、15分間反転させた(3×18m
L)。
3.インキュベーション後、樹脂を、DMF(4×18mL)、次いで、MeOH(4×
18mL)で洗浄し、乾燥して0.95gのBAIB-SH樹脂を得た。
【0141】
BAIB(カルボキシ末端)-BSAコンジュゲートの合成
1.200mgのBAIB-SH樹脂を、4mLのTFA(Sigma-Aldrich
カタログ番号91707)に添加した。
2.BAIB-TFA混合物を、20℃で1時間、反転させた。
3.反応物を、乾燥して、20mgのBAIB-チオール類似体を得た。
4.ステップ3からのチオールを、PBS(4mL)に溶解した。
6.チオール溶液を、4つのバイアルのマレイミド活性化BSA(20mg)(Sigm
a-Aldrichカタログ番号054M4801V)に添加し、反応は、4℃で18時
間、反転させた。過剰な溶液を、エルマン試験のために保存した:10μLのサンプル+
20μLのエルマン試薬+70μLのDTNB緩衝液を、次いで、412nmで読み取っ
た。
7.コンジュゲートを10MWカットオフ、3mL透析カセット内に設置し、4℃で48
時間、PBS(4L)に対して透析した。
8.カップリング効率を、当業者には公知の方法に従って、上記ステップ5から過剰なチ
オール溶液を使用して、エルマン試験によって決定した:10μLのサンプル+20μL
のエルマン試薬+70μLのDTNB緩衝液を、次いで、412nmで読み取った。
【0142】
実施例13:KLHコンジュゲートされたBAIBの合成
例示的な免疫原であるBAIB(カルボキシ末端)-KLHコンジュゲートを、以下の
手順に従って調製した:
1.100mgのBAIB-SH樹脂(上記、実施例11を参照されたい)を、2mLの
TFA(Sigma-Aldrichカタログ番号SHBD1537V)に添加した。
2.BAIB-TFA混合物を、20℃で1時間、反転させ、樹脂を、濾別し、0.5m
Lのアセトニトリルで洗浄した。
3.反応を、乾燥して、15mgのBAIB-SHを、澄んだ油として得た。
4.ステップ3からの油を、PBS(3mL)に溶解して、BAIBチオール溶液を形成
した。
5.2mLのチオール溶液を、10mgのマレイミド活性化KLH(Sigma-Ald
richカタログ番号072M4796)に添加し、反応は、4℃で18時間、反転させ
た。
6.コンジュゲートを10MWカットオフ、3mL透析カセット内に設置し、4℃で48
時間、PBS(4L)に対して透析した。
7.カップリング効率を、当業者には公知の方法に従って、上記ステップ5から過剰なチ
オール溶液を使用して、エルマン試験によって決定した:10μLのサンプル+20μL
のエルマン試薬+70μLのDTNB緩衝液を、次いで、412nmで読み取った。
【0143】
実施例14:抗BAIBポリクローナル抗体を作製する方法
抗BAIBポリクローナル抗体を作製する免疫プロトコルを、当業者には周知の、以下
のプロトコルに従って実施してもよい。ウサギを、例えば、上記の実施例8~12からの
免疫原の1つ、または別のBAIB特異的抗原で免疫する。それぞれの場合、例示的な免
疫を、1mLの完全フロイントアジュバントと混合された、1mLのリン酸緩衝生理食塩
水(PBS)中の0.5mgの免疫原を注射することによって実施する。各動物の剃毛さ
れた背部に、20~30回の皮内注射を行ってもよい。各動物の後ろ足に、等量の不完全
フロイントアジュバントと混合された1mLのPBS中の0.25mgの免疫原で追加免
疫してもよい。追加免疫注射を、最初の注射後に各月に与えてもよい。各追加免疫の7~
10日後に、各ウサギから試験採血の血液5mLを採取することができる。採血産物40
mLを、3回目の追加免疫注射後、抗血清力価が約1:2000より大きかった時、各ウ
サギから採取することができる。抗血清力価は、アッセイについての校正曲線の傾きが最
も大きい、抗血清の希釈度である。
【0144】
実施例15:抗BAIBモノクローナル抗体の調製
モノクローナル抗体を生成する方法は、当該分野の技術内である。実施形態において、
抗体は、グルタルアルデヒド-BAIBコンジュゲート、ポリリジン-BAIBコンジュ
ゲート、BAIB(アミン末端)-BSAコンジュゲート、BAIB(カルボキシ末端)
-BSAコンジュゲート、BAIB(アミン末端)-KLHコンジュゲート、または、B
AIB(カルボキシ末端)-KLHコンジュゲートに対して生じたモノクローナル抗体で
ある。抗体は、当業者に周知の方法を使用することによって、精製し、特徴付けられうる
【0145】
実施例16:抗ウサギBAIB抗血清の調製
抗BAIB抗体特異性を、BAIB(アミン末端)-KLHコンジュゲートとBAIB
(カルボキシ末端)-KLHコンジュゲートとの混合物に対して生じたウサギ抗BAIB
血清を使用する結合アッセイにより示した。BAIBを量り、PBS、pH7.4で溶解
して1.0mg/mlとし、さらに希釈して50μg/mlとした。タンパク質A(rP
A)スラリーを、ウサギ抗BAIB抗血清によってインキュベートして、IgGを捕捉し
た。陰性対照において、タンパク質A(rPA)スラリーを、PBSによってインキュベ
ートした。インキュベーション後、600μLのrPAスラリーを、マイクロスピンカラ
ムに添加し、回転して液体を除去した。300μLの50μg/mLのBAIBを、カラ
ムに添加し、25℃で100分間インキュベートした。カラムを、次いで、回転し、フロ
ースルーを集めた。フロースルーを、次いで、以下の通り、LC-MSによる分析で調製
した。50μLのフロースルーの各サンプルを、96ウェルのプレートにおいて、50μ
LのBAIB内部標準と混合し、次いで、20分間、3,000xgで遠心分離した。3
00μLのアセトニトリルを、次いで、プレート内の各サンプルに添加し、プレートを、
次いで、20分間超音波処理した。プレートを、次いで、20分間、3,000xgで遠
心分離した。300μLの上澄みを、次いで、96ウェルのプレートフィルター(0.4
5um)に充填することによって濾過し、20分間、3,000xgで遠心分離した。濾
過後、プレートを、次いで、4時間、SpeedVacで乾燥した。乾燥後、50μLの
20%アセトニトリル溶液を、各サンプルに添加した。サンプルを、次いで、LC-MS
にかけた。下記の表7に示す通り、抗BAIB:rProtAカラムは、対照のrPro
tAカラムより6.6%多くBAIBと結合した。
【0146】
【表7】

【0147】
先に示した実施例は、例示的なものにすぎず、本発明のすべての可能な実施形態、応用
、または変更形態の網羅的な列挙であることを意味するものではない。したがって、本発
明の範囲および趣旨を逸脱することなく、上記の本発明の方法および系の種々の変更形態
または変形物が、当業者に明らかである。本発明を、特定の実施形態と絡めて説明してき
たが、特許請求している本発明を、そのような特定の実施形態に過度に限定すべきではな
いと理解すべきである。実際、本発明を実施するための上記の形態の種々の変更形態が、
当業者に明らかである。
【0148】
本発明を、本明細書に記述した特定の方法、プロトコル、および試薬などに限定しない
と理解されたい。なぜなら、それらは、当業者が認識するように変わりうるからである。
本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を記述するために使用するものにすぎず、本
発明の範囲を限定していることを意図するものではないとも理解されたい。また、本明細
書で使用する場合、および添付の特許請求の範囲において、単数形「1つの(a、an)
」、および「その(the)」は、文脈上特に明確な指示がない限り、複数の言及を含む
ことにも留意されたい。したがって、例えば、「1つのリンカー(a linker)」
への言及は、1つまたは複数のリンカー、および当業者に公知の等価物への言及である。
【0149】
別段の定義がない限り、本明細書で使用する技術用語および科学用語はすべて、本発明
が関係する技術分野の当業者に共通に理解されている意味と同じ意味を有する。本発明の
実施形態および種々の特徴、ならびにそれらの有利な詳細を、非限定的な実施形態の参照
によってより十分に説明され、および/または添付図面で図示し、その後の説明で詳述す
る。図面に示した特徴は、必ずしも正寸ではなく、本明細書で明記されていなくても、当
業者が認識するように、一実施形態の特徴を他の実施形態によって用いることができるこ
とに留意すべきである。
【0150】
本明細書に記述する任意の数値は、その低い値と高い値とが少なくとも2単位離れてい
れば、その低い値からその高い値まで1単位ずつ増えるすべての値を含む。一例として、
ある成分の濃度、またはプロセスの変数の値、例えば、大きさ、角度、圧力、時間などが
、例えば、1~90、詳細には20~80、より詳細には30~70と記載されていれば
、15~85、22~68、43~51、30~32などの値を本明細書に明白に列挙し
ていることを意図するものである。1未満の値の場合、1単位は、適宜0.0001、0
.001、0.01または0.1であると考える。これらは、特に意図しているものの単
なる一例にすぎず、列挙している最小の値から最高の値までの間の数値のすべての可能な
組合せを、同じように本出願に明記しているものと考えるべきである。
【0151】
特定の方法、装置、材料を記述するが、本明細書に記述するものと類似または同等の任
意の方法および材料を、本発明の実施または試験において使用することができる。先に引
用したすべての参考文献および刊行物の開示は、あたかも、それらそれぞれが、参照によ
って個々に組み込まれるように、参照によってそれら全体が本明細書に明らかに組み込ま
れる。