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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】超音波シャワー洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/12 20060101AFI20230522BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
B08B3/12 Z
H01L21/304 643D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022027510
(22)【出願日】2022-02-25
(62)【分割の表示】P 2021512454の分割
【原出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022078147
(43)【公開日】2022-05-24
【審査請求日】2022-03-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000124959
【氏名又は名称】株式会社カイジョー
(74)【代理人】
【識別番号】100007983
【弁理士】
【氏名又は名称】笹川 拓
(72)【発明者】
【氏名】平野 孝祐
(72)【発明者】
【氏名】今関 康博
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-076847(JP,A)
【文献】特開平11-054471(JP,A)
【文献】特開2001-310165(JP,A)
【文献】特許第6507358(JP,B1)
【文献】特開2000-061362(JP,A)
【文献】特開2003-174978(JP,A)
【文献】特開平4-357942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/12
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波振動が印加された洗浄液を介して被洗浄物を洗浄する流水式スポットシャワー型の超音波シャワー洗浄装置であって、
前記洗浄液が供給される給液口、
当該給液口から連続する前記洗浄液が流れる流路、
当該流路の一部を構成して前記洗浄液に超音波振動を印加する振動体、
前記流路から前記洗浄液が吐出される吐出口を備え、
前記振動体は前記流路の内部から連続して前記吐出口の外部に突出し、かつ、当該吐出口から外部に突出した先端に縦振動する振動面を有し、
前記洗浄液は前記吐出口から前記振動体の外周に沿って接触して流れ、前記振動面で超音波振動が印加されて、当該振動面と垂直を成す方向に流れる(ただし、前記振動体と前記被洗浄物との間が液密状態となる場合を除く。)
ことを特徴とする超音波シャワー洗浄装置。
【請求項2】
超音波振動が印加された洗浄液を介して被洗浄物を洗浄する流水式ラインシャワー型の超音波シャワー洗浄装置であって、
前記洗浄液が供給される給液口、
当該給液口から連続する前記洗浄液が流れる流路、
当該流路の一部を構成して前記洗浄液に超音波振動を印加する振動体、
前記流路から前記洗浄液が吐出される吐出口を備え、
前記振動体は前記流路の内部から連続して前記吐出口の外部に突出し、かつ、当該吐出口から外部に突出した先端に縦振動する振動面を有し、
前記洗浄液は前記吐出口から前記振動体の外周に沿って接触して流れ、前記振動面で超音波振動が印加されて、当該振動面と垂直を成す方向に流れる(ただし、前記振動体と前記被洗浄物との間が液密状態となる場合を除く。)
ことを特徴とする超音波シャワー洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄液は当該振動体の突出方向に沿って流出する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の超音波シャワー洗浄装置。
【請求項4】
前記吐出口は、スポット状に構成され、
前記振動体は、前記吐出口の内周面から所定の距離を離間して当該吐出口から外部に突出するように配され、
前記内周面と前記振動体との間が前記流路となる
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波シャワー洗浄装置。
【請求項5】
前記吐出口は、矩形状に構成され、
前記振動体は、前記吐出口の長手方向を構成する各々の内面から所定の距離を離間して当該吐出口から外部に突出するように配され、
前記各々の内面と前記振動体との間が前記流路となる
ことを特徴とする請求項2に記載の超音波シャワー洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄液に超音波振動を印加して洗浄する流水式スポットシャワー型又は流水式ラインシャワー型の超音波シャワー洗浄装置に関し、特に、超音波振動を効率よく流路の洗浄液に印加して、洗浄液を拡散させることなく被洗浄物にスポット状、ライン状に照射可能な超音波シャワー洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波洗浄装置は、洗浄槽の下面に超音波振動子を取り付け、洗浄液を洗浄槽に供給して、洗浄槽に被洗浄物を浸漬して、超音波振動を洗浄槽の下面から印加して洗浄を行うのが一般的である。
【0003】
また、液晶パネルや半導体ウェーハ等の洗浄には、洗浄液に超音波振動を印加し、超音波振動を印加した洗浄液をシャワー状に噴出させ、これらの被洗浄物を超音波洗浄するシャワー型超音波洗浄装置が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ノズル先端から被洗浄物までの距離調整を厳密に必要としない、設置調整が容易なスポットシャワー型超音波洗浄装置が開示されている。スポットシャワー型超音波洗浄装置は、ノズルから超音波が印加された洗浄液を被洗浄物に噴出することで、パーティクルなどの汚れを除去するものである。
【0005】
特許文献1によれば、スポットシャワー型超音波洗浄装置は、筐体の先端部に取り付けられたノズルと、ノズルの後端部に対向して配置された円板状の超音波振動子と、筐体の側面に形成された洗浄液の給液口とを有し、ノズルの吐出孔を直径が一定の直線状丸孔に形成している。
【0006】
給液口から供給された洗浄液に超音波振動子から放射された超音波を印加してノズルの先端から洗浄液を噴射してノズルの前方に配置された被洗浄物を洗浄する。これにより、ノズルから放射される超音波が焦点を形成しないため、被洗浄物からノズル先端までの距離を厳密に調整する必要性がない。
【0007】
また、特許文献2には、液体を容器の吐出口から流出させて被洗浄部位と接触させることで超音波の伝播路を形成し、生体などの被洗浄部位を超音波振動で洗浄するようにしたノズルシャワー式の超音波洗浄装置が開示されている。
【0008】
特許文献2によれば、ノズルシャワー式の超音波洗浄装置は、一端部側に超音波振動子が取付けられ、他端部側の端面が超音波放射面となる超音波伝達体を、超音波放射面の近傍で、弾性体から成るOリングなどの保持部材によってハウジングの内周面に気密に保持固定する。したがって、保持部材によって放射面の側面での超音波振動を抑制しないようにしつつ、超音波伝達体の保持を可能としたものである。また、超音波伝達体の側面や超音波振動子の部分が液体と接触することを防止でき、高効率化を図っている。
【0009】
また、特許文献2には従来技術として同文献の図12に振動伝達体がケーシングの外部に露出している超音波洗浄装置が開示されている。この従来技術は、同文献の段落「0007」にも記載されているように、容器中の水に浸した被洗浄物の被洗浄部位に超音波洗浄装置の振動面を直接接触させて、数十kHz程度の超音波の振動エネルギによって、汚れを除去している。即ち、この従来技術では、スポットシャワー型超音波洗浄装置と異なり、超音波振動を行っている振動面を被洗浄部位に直接接触させて洗浄を行っている。
【0010】
また、特許文献3には、洗浄液が流れる流路の一部をなす先細り形状の空洞部を有し、空洞部内の洗浄液を吐出する吐出口を空洞部の先端に有するノズル本体と、超音波振動子の前端面に密着固定され、耐薬品性の非金属無機材料から構成され、かつ、空洞部の内部空間の半分以上の容積を占有する振動体とを備え、振動体の外表面と空洞部の内壁面との隙間を介して、洗浄液が流れるように構成した流水式超音波洗浄機ノズルが開示されている。
【0011】
特許文献3によれば、流水式超音波洗浄機では、振動体の外表面と空洞部の内壁面との隙間を介して流れる洗浄液が吐出口から流水として吐出され、吐出の際に、超音波振動子及び振動体によって洗浄液に超音波が重畳される。この場合、振動体によって、空洞部の内部空間の大部分があらかじめ埋められている。また、超音波振動子に密着固定された振動体は振動時に負荷となるため、空洞部内が洗浄液で満たされていない状態でも、短時間であれば空焚きを許容することができる。
【0012】
また、振動体を内蔵した他の従来の流水式超音波洗浄装置が知られている。図7は、振動体を内蔵した従来の流水式超音波洗浄装置の構成を示す断面図である。
【0013】
図7に示すように、流水式超音波洗浄装置80は、筐体81と、筐体81の内部に収納されている振動体84と、振動体84の一方の面に設けられた超音波振動子88と、洗浄液75を供給する給液口82と、流路94の一部を構成するノズル部90とを有している。ノズル部90は、振動体84とともに流路94を構成する。即ち、ノズル部90は、その内側にノズル内壁91を備え、振動体84は、洗浄液75の接触面である外周面87を備え、これらノズル内壁91と外周面87により流路を構成し、給液口82からの洗浄液75は流路94を介して、ノズル内壁91の先端の吐出口92から吐出される。
【0014】
図7の流水式超音波洗浄装置80は、断面図で示しているが、この場合、スポット状に洗浄液を吐出するスポットシャワー型の流水式超音波洗浄装置として構成する場合の他、ライン状に洗浄液を吐出するラインシャワー型流水式超音波洗浄装置として構成することも可能である。
【0015】
図7に示すように、振動体84の先端部85に位置し、洗浄液に超音波振動を印加して吐出する振動面86は、吐出口92を形成するノズル内壁91よりも筐体81の内部側に設けられている。また、特許文献3に開示された流水式超音波洗浄機は、振動体の外表面と空洞部の内壁面との隙間を介して流れる洗浄液に超音波が重畳されて、洗浄液が吐出口から流水として吐出される。洗浄液が吐出される吐出口は、ノズル本体の先端に設けられている。
【0016】
このように、図7及び特許文献3に示すように、従来の流水式超音波洗浄装置は、振動体とノズル本体の空洞部とで流路を形成したり、ノズル部90のノズル内壁91と振動体84の外周面87とで流路を形成して、流路からの洗浄液が振動体の先端部に流れて、振動体の先端部の振動面からの洗浄液が吐出口から吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】特許第3256198号
【文献】特許第3938129号
【文献】特許第6507358号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
図7に示す従来の流水式超音波洗浄装置80は、ノズル部90のノズル内壁91と振動体84の外周面87の隙間が流路94を形成しているため、振動体84によって洗浄液75に印加した超音波振動が、洗浄液75を介してノズル内壁91に伝搬してしまう。
【0019】
これにより、振動体84の振動面86よって洗浄液75に印加した超音波振動がノズル内壁91に伝搬して減衰してしまい、洗浄液75が減衰した状態で吐出口92から被洗浄物77に放出されてしまう。このため、超音波振動が重畳される洗浄液の音圧が低下し、被洗浄物への洗浄作用を弱めてしまう。
【0020】
また、洗浄液75がノズル内壁91を伝って流れることにより、振動体84の先端部85の表面や近傍に気泡が溜まることがある。振動体84の表面に気泡が溜まることにより振動体84が空焚き状態となり、超音波振動子88が故障する可能性がある。
【0021】
また、ノズル部90の先端部分の吐出口92の広さによって、以下に示す不具合が発生していた。例えば、吐出口92が広い場合には、吐出する洗浄液75の径や幅が広がることにより振動体84から洗浄液75に伝搬した超音波振動が拡散して、超音波振動の音圧が減衰する。
【0022】
さらに、吐出口92が広いため、吐出する洗浄液に拡散、むら等が発生し、これらの乱れを整流するために多くの洗浄液を供給する必要があり、洗浄液の給水量が多くなり、このため多量の洗浄液を消費する。
【0023】
一方、吐出口92が狭い場合には、超音波振動が印加された洗浄液が通過しにくくなるため、結果として超音波振動が弱くなり、被洗浄物への洗浄効果が低下する。
【0024】
そこで、本発明の超音波シャワー洗浄装置は、発明者らが上記課題を解決すべく、試行錯誤の結果、想起するに至ったものであり、振動体を流路の内部から連続して吐出口の外部に突出するように設けて、吐出口付近のノズル内壁に超音波振動が伝搬することを抑制して、超音波振動の減衰を少なくし、照射する洗浄液の音圧を高くすることができ、かつ、振動体の表面に気泡が溜まりにくいことを可能にしたものである。
【0025】
従って、本発明の流水式スポットシャワー型又は流水式ラインシャワー型の超音波シャワー洗浄装置は、振動体は流路の内部から連続して吐出口の外部に突出するように設けて、超音波振動を効率よく流路の洗浄液に印加して、洗浄液を拡散させることなく被洗浄物にスポット状、ライン状に照射可能な超音波シャワー洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記目標達成のため、本発明に係る超音波シャワー洗浄装置は、超音波振動が印加された洗浄液を介して被洗浄物を洗浄する流水式スポットシャワー型の超音波シャワー洗浄装置であって、前記洗浄液が供給される給液口、当該給液口から連続する前記洗浄液が流れる流路、当該流路の一部を構成して前記洗浄液に超音波振動を印加する振動体、前記流路から前記洗浄液が吐出される吐出口を備え、前記振動体は前記流路の内部から連続して前記吐出口の外部に突出し、かつ、当該吐出口から外部に突出した先端に縦振動する振動面を有し、前記洗浄液は前記吐出口から前記振動体の外周に沿って接触して流れ、前記振動面で超音波振動が印加されて、当該振動面と垂直を成す方向に流れる(ただし、前記振動体と前記被洗浄物との間が液密状態となる場合を除く。)ことを特徴とする。
【0027】
また、本発明に係る超音波シャワー洗浄装置は、超音波振動が印加された洗浄液を介して被洗浄物を洗浄する流水式ラインシャワー型の超音波シャワー洗浄装置であって、前記洗浄液が供給される給液口、当該給液口から連続する前記洗浄液が流れる流路、当該流路の一部を構成して前記洗浄液に超音波振動を印加する振動体、前記流路から前記洗浄液が吐出される吐出口を備え、前記振動体は前記流路の内部から連続して前記吐出口の外部に突出し、かつ、当該吐出口から外部に突出した先端に縦振動する振動面を有し、前記洗浄液は前記吐出口から前記振動体の外周に沿って接触して流れ、前記振動面で超音波振動が印加されて、当該振動面と垂直を成す方向に流れる(ただし、前記振動体と前記被洗浄物との間が液密状態となる場合を除く。)ことを特徴とする。
【0028】
また、本発明の前記吐出口は、スポット状に構成され、前記振動体は、前記吐出口の内周面から所定の距離を離間して当該吐出口から外部に突出するように配され、前記内周面と前記振動体との間が前記流路となることを特徴とする。
【0029】
また、本発明の前記吐出口は、矩形状に構成され、前記振動体は、前記吐出口の長手方向を構成する各々の内面から所定の距離を離間して当該吐出口から外部に突出するように配され、前記各々の内面と前記振動体との間が前記流路となることを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明の流水式スポットシャワー型又は流水式ラインシャワー型の超音波シャワー洗浄装置によれば、振動体を流路の内部から連続して吐出口の外部に突出するように設けることにより、吐出口付近のノズル内壁に超音波振動が伝搬することを抑制できるため、超音波振動の減衰を少なくし、照射する洗浄液の音圧を高くすることができ、かつ、振動体の表面に気泡が溜まりにくいことを可能にしたものである。これにより、超音波振動を効率よく流路の洗浄液に印加して、洗浄液を拡散させることなく被洗浄物にスポット状、ライン状に照射可能である。
【0033】
即ち、本発明に係る流水式スポットシャワー型又は流水式ラインシャワー型の超音波シャワー洗浄装置は、振動体が流路の内部から連続して吐出口の外部に突出するように設け、振動体先端側のノズル部のノズル内壁である内周面を減らし、吐出口までの内周面と振動体の外周面で形成される隙間の流路の長さを短くしたものである。これにより、ノズル内壁の内周面の吐出口までの流路が短くなり、さらに、振動体は吐出口の外部に突出し、吐出口から振動体の外周に沿って洗浄液が接触して流れることにより、振動体によって洗浄液に重畳した超音波振動が吐出口の内周面に伝搬することが少なくなり、伝搬する超音波振動の減衰を減らすことができる。これにより、吐出される洗浄液の音圧を強くすることができるため、洗浄効果を上げることができる。
【0034】
また、従来の超音波シャワー洗浄装置は、振動体の外周面とノズル本体の内壁面との隙間の流路を洗浄液が流れて吐出口から洗浄液が吐出されるため、狭い流路を流れる洗浄液の流速が早くなり、振動体の表面に気泡が溜まることがあった。これに対して、本発明の超音波シャワー洗浄装置は、振動体先端側のノズル内壁の内周面を減らすことにより、ノズル内壁と振動体の先端部に発生する気泡を減らすことができるため、振動体から洗浄液に伝搬した超音波振動が集中して音圧が高くなり、さらに、振動の伝搬を阻害する気泡が溜まりにくいため、空焚きの発生がなく、超音波振動子の故障を予防することができる。
【0035】
また、本発明に係る流水式スポットシャワー型の超音波シャワー洗浄装置では、振動体は、吐出口の内周面から所定の距離を離間して吐出口から外部に突出するように配されており、これにより、振動体から洗浄液に伝搬した超音波振動が集中して吐出されるため、洗浄液の径が細くなり、さらに、音圧が高くなるため、洗浄効果を上げることができ、よりスポット的な洗浄効果が得られる。
【0036】
また、本発明に係る流水式ラインシャワー型の超音波シャワー洗浄装置では、振動体が吐出口の長手方向を構成する各々の内面から所定の距離を離間して吐出口から外部に突出するように配されているため、振動体から洗浄液に伝搬した超音波振動が集中して吐出されるため、洗浄液のラインの幅が細くなり、さらに、音圧が高くなるため、洗浄効果を上げることができる。
【0037】
また、本発明の流水式ラインシャワー型の超音波シャワー洗浄装置は、振動体が吐出口の長手方向を構成する各々の内面から所定の距離を離間して吐出口から外部に突出するように配されているため、気泡の発生が少なく、洗浄液を洗浄面に均一に照射できるため、各種サイズのガラス基板等の洗浄に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明による流水式スポットシャワー型超音波シャワー洗浄装置の構成を示す断面図である。
図2図1における洗浄液の流路及び先端部からの洗浄液の照射を示す図である。
図3】流水式スポットシャワー型超音波シャワー洗浄装置を制御する洗浄システムの構成を示す図である。
図4】振動体が吐出口の内部に収納されている状態と、振動体が吐出口の外部に突出した状態との吐出された洗浄液の径の大きさを模式的に表した図であり、(a)は振動体が吐出口の内部に収納されている状態の洗浄液の径の大きさであり、(b)は、振動体が吐出口の外部に突出した状態の洗浄液の径の大きさである。
図5】流水式スポットシャワー型超音波シャワー洗浄装置における洗浄液の吐出される洗浄液の音圧の大きさを測定した結果をグラフで示した図である。
図6】本発明による流水式ラインシャワー型超音波シャワー洗浄装置の構成を示す断面図である。
図7】振動体を内蔵した従来の流水式超音波洗浄装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明による超音波シャワー洗浄装置を実施するための形態について、図面を参照して説明する。尚、本発明は、超音波振動を効率よく流路の洗浄液に印加して洗浄する超音波シャワー洗浄装置を提供するものであり、特に、洗浄液を拡散させることなく被洗浄物にスポット状、ライン状に強力な超音波振動のエネルギーを有する洗浄液を照射可能にしたものである。
【0040】
[流水式スポットシャワー型超音波シャワー洗浄装置の構成]
最初に、洗浄液等の液体に超音波振動を印加して被洗浄物に吐出する流水式スポットシャワー型超音波シャワー洗浄装置の構成について図1を参照して説明する。図1は、本発明による流水式スポットシャワー型超音波シャワー洗浄装置の構成を示す断面図である。
【0041】
図1に示すように、超音波シャワー洗浄装置1としての流水式スポットシャワー型超音波シャワー洗浄装置2は、筐体5と、筐体5の内部に設けられ、洗浄液75(図2に示す。)に超音波振動を印加する振動体20と、振動体20に振動を付与する超音波振動子38と、洗浄液75を吐出する吐出口47と、流路48の一部を構成する整流部40と、洗浄液75を供給する給液口16と、を有している。
【0042】
流水式スポットシャワー型超音波シャワー洗浄装置2の筐体5は、略円筒状に形成され、その内部に振動体20が収納、固定されている。筐体5の内部における図1の紙面の縦方向の中心付近の壁面には、振動体20を固定する振動体保持部10が、筐体5の内側に向けて段を成しリング状に突起した状態で設けられている。
【0043】
筐体5の上部には、上蓋6が設けられている。また、筐体5の下部に位置する底部14付近に、洗浄液75を供給する給液口16が設けられている。また、筐体5の底部14の端面には、整流部40が取り付けられている。
【0044】
振動体20は、洗浄液75に超音波振動を印加し、超音波振動を印加した洗浄液75を振動体20における先端部34の振動部35から照射するものである。図1に示すように、振動体20は、その上部に円柱形状を成す振動補助部21と、振動補助部21の下部に突起して設けられ、振動体20を筐体5に固定するための鍔部24と、鍔部24の下部に設けられ、逆円錐台の形状を成す振動伝達部28を有している。振動体20は、金属系の材質から成り、例えばSUS、ステンレス、チタン等が用いられている。
【0045】
振動補助部21の上端22には、超音波振動子38が密着して取り付けられており、超音波振動子38によって振動体20に超音波振動が印加される。振動体20の上端に位置する超音波振動子38は、超音波発振器96(図3に示す。)により高周波電力が供給されて励起し、振動体20に超音波振動を発生させる。
【0046】
超音波振動子38は、BLT(ボルト締めランジュバン振動子)又は板状でセラミックスの材質からなる圧電セラミックスが用いられている。超音波振動子38は、振動体20の上面にボルト締めまたは接着剤によって固定されている。超音波シャワー洗浄装置に使用可能な超音波振動子38の周波数は、20KHzから3MHzであり、通常使用する周波数は、40KHzから200KHzの範囲である。
【0047】
振動体20の振動補助部21は、上端に固着された超音波振動子38からの超音波振動を鍔部24まで伝搬し、鍔部24で振動振幅の大きさが最小となるように設計されており、超音波振動の伝達を補助するものである。
【0048】
振動体20の鍔部24は、振動補助部21の下部において外側に向けて突起して設けられ、フランジ部を成す。振動体20の鍔部24は、振動体20の振動振幅の大きさが最小の節の位置付近に設けられ、振動体20の鍔部24を筐体5の振動体保持部10の上面11に固定する。そのため、振動体保持部10の先端面12は、その上面11が振動体20の鍔部24と連結される位置まで突出すれば足り、振動伝達部28には接触しない。
【0049】
振動体20の鍔部24と筐体5の振動体保持部10とは、それぞれとの接触面を接着剤によって固定したり、鍔部24に貫通孔を設け、振動体保持部10にねじ穴を設けてボルトによって固定する。鍔部24を振動体保持部10に固定しても、振動体20の超音波振動が拘束されることが少ないため、振動体20の超音波振動は安定したものとなる。
【0050】
また、振動体20の鍔部24と筐体5の振動体保持部10との固定により洗浄液75の流入が阻止され、振動体20の振動補助部21や超音波振動子38が洗浄液75と接触することがなく、故障を防止することができる。
【0051】
鍔部24の下部に設けられ、逆円錐台の形状を有する振動伝達部28は、振動体20が洗浄液75に接する箇所であり、逆円錐台の外周面32と、先端部34を有している。外周面32は、先端部34に向かって徐々に先窄まっており、洗浄液75が吐出口47、先端部34に向かって流れる流路48を形成する。振動体20の先端に位置する先端部34は、底面視で円形をなし、縦振動する振動面35を有し、外周面32から流れる洗浄液75に超音波振動を印加する。
【0052】
振動伝達部28における先端部34の振動面35は、流路48の内部から連続して吐出口47から外部に突出した位置に配され、かつ、超音波振動子38からの振動振幅が大きくなる腹に相当する位置に設けられている。また、振動体20の振動伝達部28は、先端部34に向かって徐々に形状が細くなっているため、超音波振動子38からの振動が増幅されて先端部34の振動面35に伝搬する。これにより、洗浄液75に強力な超音波振動を印加することができる。
【0053】
筐体5の下部に位置する底部14には、整流部40が設けられている。整流部40は、筐体5の下部に取り付けられ、給液口16から供給される洗浄液75を一時貯留し、振動体20の外周面32の上部に洗浄液75を供給する。
【0054】
整流部40は、底部41が円環板状の形状を成し、流水式スポットシャワー型超音波シャワー洗浄装置2の上部の方向に向いた(上蓋6の方向に向いた)一方の面41aには、突起部42が形成されている。突起部42は、円環板状の他方の面41bの円孔の端から一方の面41a側に向かって傾斜面43が形成され、傾斜面43によって形成される空間が、逆円錐台を成すように設けられている。突起部42の傾斜面43は、振動体20の外周面32の一部と隙間ができるように、突起部42の断面は略台形形状に形成されている。
【0055】
給液口16から供給される洗浄液75は、整流部40における底部41の一方の面41a、底部41の一方の面41aと垂直の面を成す外周面45、突起部42の上面46及び傾斜面43を流れる。これにより、突起部42の外周面45及び上面46と、筐体5の下部の内周面15及び振動体保持部10の下面13により流路48が形成され、さらに、突起部42の傾斜面43と振動体20における振動伝達部28の外周面32とにより流路48が形成される。
【0056】
また、図1に示すように、洗浄液75を吐出する吐出口47は、整流部40における突起部42の傾斜面43と底部41の他方の面41bとの交差する傾斜面43の下端側に位置する。即ち、吐出口47は、傾斜面43の下部の内周面44に設けられている。
【0057】
このように、整流部40は、給液口16から供給される洗浄液75を整流部40に設けられた突起部42の上面46からオーバーフローさせて洗浄液75を振動体20に供給するものであり、洗浄液75が供給される給液口16から連続して洗浄液75が流れる流路48の一部を構成している。
【0058】
また、筐体5の底部14に取り付けられた整流部40は、給液口16からの洗浄液75を一時貯留して、整流部40における突起部42の上面46から洗浄液75をオーバーフローさせて整流し、均一な流れを形成して振動体20に導出するための一時的な貯留溝としても作用する。
【0059】
また、図1に示すように、振動体20は、吐出口47の内周面44から所定の距離を離間して吐出口47から外部に突出するように配されている。
【0060】
このように、図1に振動体20は、給液口16から続く流路48の内部から連続して吐出口47の外部に突出して、洗浄液75が振動体20の突出方向に沿って流出するように設けられている。
【0061】
[流水式スポットシャワー型超音波シャワー洗浄装置の洗浄液の流路]
次に、流水式スポットシャワー型超音波シャワー洗浄装置の洗浄液の流路及び先端部からの洗浄液の被洗浄物への照射について図2を参照して説明する。図2は、図1における洗浄液の流路及び先端部からの洗浄液の照射を示す図である。
【0062】
図1及び図2に示すように、給液口16から供給された洗浄液75は、整流部40の底部41から筐体5の内周面15と整流部40における突起部42の外周面45との間の空間、並びに振動体保持部10の下面13と突起部42の上面46の成す空間を流れ、振動体20の振動伝達部28の上部に供給される。このように、整流部40の突起部42と、振動体保持部10の下面13及び筐体5の下端側の内周面15との成す空間が洗浄液75の流路48の一部を形成している。
【0063】
また、振動体20の振動伝達部28の上部に供給される洗浄液75は、振動伝達部28の外周面32と整流部40の内周面44が構成する吐出口47までの空間と、吐出口47から突出している振動伝達部28の先端部34までの外周面32を流れる。
【0064】
このように、振動体20の振動伝達部28の外周面32と整流部40の内周面44が構成する吐出口47までの空間と、吐出口47から振動伝達部28の先端部34までの外周面32が流路48の一部を形成する。
【0065】
流路48を流れて先端部34に流れ込んだ洗浄液75は、振動体20における振動伝達部28の振動面35で超音波振動が印加されて、振動面35と垂直を成す方向に照射される。振動面35から吐出される洗浄液75は、ビーム状の流線となって被洗浄物77に照射される。そのため、吐出口47と被洗浄物77とは、洗浄液75がビーム状の流線として被洗浄物77に照射可能な距離離間していることを要するのは当然である。
【0066】
流水式スポットシャワー型超音波シャワー洗浄装置2は、筐体5の図1及び図2における紙面の縦方向の中心軸が垂直になるように設置した場合に、振動体20の鍔部24の下部25が振動体20における洗浄液75の流路48の最高点の位置となるように、振動体20が筐体5に取り付けられている。
【0067】
図1及び図2に示すように、振動体20は、整流部40の内周面44の吐出口47の外部に突出して設けられており、洗浄液75は鍔部24の下面の流路48から連続して吐出口47の外部の振動体20の突出方向に沿って振動体20の外周に接触して流出して先端部34の振動面35で超音波振動が印加される。
【0068】
これにより、図2に示すように、吐出口47の外部に突出した振動伝達部28の破線で囲む領域Aを流れる洗浄液75は、振動体20の振動伝達部28の外周面32のみに接触し、筐体5、整流部40には接触していないため、超音波振動が洗浄液75を介して筐体5、整流部40に伝搬しないため、超音波振動のロスがなく、洗浄液75に印加される超音波振動の減衰を減らすことができる。
【0069】
また、振動伝達部28の先端部34である振動面35近傍の外周面32が筐体5、整流部40と近接していないため、振動面35近傍の外周面32の周りは、空間のみであり、泡の発生、泡の停滞がないため、空焚き等を防止することができる。また、泡の発生、泡の停滞がないため、振動面35からの超音波振動を洗浄液75に効率よく印加することができる。これにより、振動体20から照射される洗浄液75は強力な超音波振動が印加されたものとなる。
【0070】
[洗浄システムの構成]
次に、超音波シャワー洗浄装置を制御するための洗浄システムの構成について説明する。図3は、流水式スポットシャワー型超音波シャワー洗浄装置を制御する洗浄システムの構成を示す図である。
【0071】
図3に示すように、流水式スポットシャワー型超音波シャワー洗浄装置2の超音波振動子38は、超音波発振器96によって高周波電力が印加されて超音波振動を発生する。流水式スポットシャワー型超音波シャワー洗浄装置2の給液口16には、洗浄液供給バルブ99を介して洗浄液タンク98や工場の用力配管98等から洗浄液75が供給される。
【0072】
また、流水式スポットシャワー型超音波シャワー洗浄装置2は、プログラムを実行可能なコンピュータから構成されて各種処理を行う制御部97によって制御され、制御部97は、超音波発振器96の発振のON・OFF制御、洗浄液供給バルブ99の通水と断水の制御を行う。
【0073】
これにより、洗浄装置の自動化も可能である。尚、図3に示す超音波シャワー洗浄装置を制御する洗浄システムの構成は、一例であり、これに限定するものではない。
【0074】
[流水式スポットシャワー型超音波シャワー洗浄装置の洗浄液の音圧及び径の大きさ]
図4及び図5を用いて、本発明の流水式スポットシャワー型超音波シャワー洗浄装置の洗浄液の音圧及び吐出された洗浄液の径の大きさについて説明する。図4は、振動体が吐出口の内部に収納されている状態と、振動体が吐出口の外部に突出した状態との吐出された洗浄液の径の大きさを模式的に表した図であり、(a)は振動体が吐出口の内部に収納されている状態の洗浄液の径の大きさであり、(b)は、振動体が吐出口の外部に突出した状態の洗浄液の径の大きさである。また、図5は流水式スポットシャワー型超音波シャワー洗浄装置における洗浄液の吐出される洗浄液の音圧の大きさを測定した結果をグラフで示した図である。
【0075】
この場合、図4においては、振動体84が吐出口92の内部に収納されている状態と、振動体20が吐出口47の外部に突出した状態との両者について、吐出された洗浄液75の径の大きさを模式的に表した。(a)は、図7に示す振動体84が吐出口92の内部に収納されている状態であり、(b)は、図1及び図2に示す振動体20が吐出口47の外部に突出した状態である。また、図5においては、流水式スポットシャワー型超音波シャワー洗浄装置における、振動体が吐出口の内部に収納されている状態と、振動体が吐出口の外部に突出した状態との両者について、超音波発振器の出力に対する吐出される洗浄液の音圧の大きさを測定した結果を示した。
【0076】
流水式スポットシャワー型超音波シャワー洗浄装置における超音波振動子の駆動周波数は約45KHzであり、音圧の測定は、振動体の先端部の振動面から8mm離れた直下に音圧計の測定プローブを設置して行った。
【0077】
即ち、図4(a)のように、図7に示す振動体84が吐出口92の内部に収納されている状態においては、振動体84の先端部85の振動面86(図7)から8mm直下の位置に音圧計の測定プローブを設置して音圧測定を行った。図4(a)におけるh1がこの8mmに該当する。また、図4(b)のように、図1及び図2に示す振動体20の先端部34の振動面35(図1及び図2)から8mm直下の位置に音圧計の測定プローブを設置して音圧測定を行った。図4(b)におけるh2がこの8mmに該当する。
【0078】
尚、8mmは、超音波振動子の駆動周波数の1/4波長の整数倍の長さに相当する距離である。また、超音波発振器の出力が20W(ワット)、30W、50Wにおける流水式スポットシャワー型超音波シャワー洗浄装置の吐出される洗浄液75の音圧の測定を行った。測定時においては、図4の被洗浄物77は配していない。
【0079】
図5に示すように、流水式スポットシャワー型超音波シャワー洗浄装置の吐出される洗浄液75の音圧の大きさは、超音波発振器の出力が20W(ワット)のときには、振動体84の先端部85が吐出口92の内部に収納されている状態では、47mVであり、振動体20の先端部34が吐出口47の外部に突出した状態では、122mVであった。また、超音波発振器の出力が30W(ワット)のときには、振動体84の先端部85が吐出口92の内部に収納されている状態では、音圧の大きさは42mVであり、振動体20の先端部34が吐出口47の外部に突出した状態では、132mVであった。また、超音波発振器の出力が50W(ワット)のときには、振動体84の先端部85が吐出口92の内部に収納されている状態では、音圧の大きさは31mVであり、振動体20の先端部34が吐出口47の外部に突出した状態では、95mVであった。
【0080】
これにより、振動体の先端部から吐出される洗浄液75の超音波振動による音圧は、図1及び図2に示す振動体20が吐出口47の外部に突出した流水式スポットシャワー型超音波シャワー洗浄装置が、振動体84が吐出口92の内部に収納されている従来の流水式型超音波シャワー洗浄装置(図7に示す。)に対して相対的に約3倍近くの大きさであることが確認された。
【0081】
また、図4に示すように、振動体84が吐出口92の内部に収納されている状態(図4(a))での吐出される洗浄液75の径d1の大きさは、約22mmであり、振動体20が吐出口47の外部に突出した状態(図4(b))での吐出される洗浄液75の径d2の大きさは、約14mmであった。
【0082】
これにより、振動体20が吐出口47の外部に突出した状態での吐出される洗浄液75の径の大きさは、振動体84が吐出口92の内部に収納されている状態での吐出される洗浄液75の径の大きさの約64%であった。
【0083】
このように、振動体20が吐出口47の外部に突出した状態の流水式スポットシャワー型超音波シャワー洗浄装置2は、吐出される洗浄液75の音圧の上昇と相まって、洗浄液75の径が細く、ビーム状の鋭い洗浄液75を得ることができる。このため、被洗浄物77の表面にビーム状の鋭い洗浄液75を照射することが可能であるため、半導体ウェーハの表面、部品等の洗浄に最適である。
【0084】
[流水式ラインシャワー型超音波シャワー洗浄装置の構成]
次に、流水式ラインシャワー型超音波シャワー洗浄装置について、図6を参照して説明する。図6は、本発明による流水式ラインシャワー型超音波シャワー洗浄装置の構成を示す断面図である。尚、流水式ラインシャワー型超音波シャワー洗浄装置の原理自体は、既に説明した本発明の流水式スポットシャワー型超音波シャワー洗浄装置2の原理と同様であり、細部の構成の説明は省略する。
【0085】
図6に示すように、超音波シャワー洗浄装置1としての流水式ラインシャワー型超音波シャワー洗浄装置3は、筐体50と、筐体50の内部に設けられ、洗浄液75に超音波振動を印加する振動体55と、振動体55に振動を付与する超音波振動子64と、洗浄液75を吐出する吐出口72と、流路74の一部を構成する整流部65と、洗浄液75を供給する給液口53と、を有している。この場合、図6に示すように、流水式ラインシャワー型超音波シャワー洗浄装置3の各構成要素は、給液口53以外、図6の紙面の後方側に連続するライン状に構成されている。以下、給液口53以外のこれら構成要素は図6の紙面の後方側に連続する前提で説明を行う。
【0086】
流水式ラインシャワー型超音波シャワー洗浄装置3の筐体50は、直方体状に形成され、その内部に振動体55が収納、固定されている。筐体50の長手方向の両側面の内側の図6の紙面の縦方向の中心付近の壁面には、振動体55を固定する振動体保持部52が角棒状に内側に突起した状態で設けられている。
【0087】
筐体50の上部には、上蓋51が設けられている。また、筐体50の長手方向の両側面の下部の先端付近に、洗浄液75を供給する給液口53が複数設けられている。また、筐体50の下部に位置する底部の両端面には、整流部65が取り付けられている。
【0088】
振動体55は、洗浄液75に超音波振動を印加し、超音波振動を印加した洗浄液75を振動体55の先端部62から吐出するものである。図6に示すように、振動体55は、図6の断面視、横長矩形状で構成され直方体の形状を成す振動補助部56と、図6の断面視、振動補助部56の下部に筐体50の長手方向の両側面側に突起して設けられ、振動体55を筐体50に固定する鍔部58と、鍔部58の下部に設けられ、図6の断面視、逆等脚台形状の形状を構成する振動伝達部60を有している。振動体55は、金属系の材質から成り、例えばSUS、ステンレス、チタン等が用いられている。
【0089】
振動補助部56の上端には、超音波振動子64が密着して取り付けられて、超音波振動子64によって振動体55に超音波振動が印加される。振動体55の上端に位置する超音波振動子64は、超音波発振器により高周波電力が供給されて、振動体55に超音波振動が励起される。
【0090】
超音波振動子64は、板状でセラミックスの材質からなる圧電セラミックスが用いられている。尚、超音波振動子64は、板状の圧電セラミックスに限定するものではなく、例えば、BLT(ボルト締めランジュバン振動子)であってもよい。
【0091】
筐体50の下端には、整流部65が設けられている。整流部65は、筐体50の対向する長手方向側面の下部にそれぞれ取り付けられ、給液口53から供給される洗浄液75を一時貯留し、振動体55の外周面61の上部に洗浄液75を供給する。
【0092】
整流部65は、底部66が図6の断面視、横長の板状に構成され、その一方の面66aには、突起部67が形成され、突起部67は、底部66の他方の面66bの長手方向の筐体50の内部側の端部から一方の面66aに向かい、そのまま延伸する傾斜面68を構成している。突起部67の傾斜面68は、振動体55の外周面61の一部と隙間ができるように、突起部67の断面が傾斜している。
【0093】
整流部65は、底部66の一方の面66aと、これと垂直の面を構成する外周面70、突起部67の上面71及び傾斜面68が洗浄液75の流路74の一部を構成する。突起部67の外周面70及び上面71と、筐体50の内周面54及び振動体保持部52の下面により流路74が形成され、さらに、突起部67の傾斜面68と振動体55における振動伝達部60の外周面61とにより流路74が形成される。
【0094】
また、図6に示すように、洗浄液75を吐出する吐出口72は、整流部65における突起部67の傾斜面68と底部66の他方の面66bとの交差する傾斜面68の端側に位置する。即ち、吐出口72は、傾斜面68の下部の内周面69に設けられている。
【0095】
このように、吐出口72は、図6の紙面の後方側に連続するように、底面視、矩形状に構成され、振動体55は、吐出口72の長手方向を構成し、対向する両内面から所定の距離を離間して吐出口72から、図6の紙面の後方側に連続して外部に突出するように配されている。そのため、吐出口72の長手方向を構成し、対向する両内面と振動体55との間が流路74となる。
【0096】
図6に示すように、振動体55は、整流部65の内周面69から、吐出口72の外部に突出して設けられており、洗浄液75は鍔部58の下面の流路74から連続して吐出口72の外部の振動体55の突出方向に沿って振動体55の外周に接触して流出して先端部62の振動面63で超音波振動が印加される。振動面63から吐出される洗浄液75は、ビーム状の流線となって被洗浄物に照射される。そのため、吐出口72と被洗浄物とは、洗浄液75がビーム状の流線として被洗浄物に照射可能な距離離間していることを要するのは当然である。
【0097】
これにより、吐出口72の外部に突出した振動伝達部60の破線で囲む領域Bを流れる洗浄液75は、振動体55の振動伝達部60の外周面61のみに接触し、筐体50、整流部65には接触していないため、超音波振動が洗浄液75を介して筐体50、整流部65に伝搬しないため、超音波振動のロスがなく、洗浄液75に印加される超音波振動の減衰を減らすことができる。
【0098】
また、振動伝達部60の先端部62である振動面63近傍の外周面61が筐体50、整流部65と近接していないため、振動面63近傍の外周面61の周りは、空間のみであり、泡の発生、泡の停滞がないため、空焚き等を防止することができる。また、泡の発生、泡の停滞がないため、振動面63からの超音波振動を洗浄液75に効率よく印加することができる。これにより、振動体55から照射される洗浄液75は強力な超音波振動が印加されたものとなる。
【0099】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができ、また、それらの置き換えや変更は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、図3の機能ブロック図に示した機能ブロックは、本発明の機能的構成を示すものであって、具体的な実装形態を制限しない。
【符号の説明】
【0100】
1 超音波シャワー洗浄装置
2 流水式スポットシャワー型超音波シャワー洗浄装置
3 流水式ラインシャワー型超音波シャワー洗浄装置
5、50、81 筐体
6、51 上蓋
10、52 振動体保持部
11 上面
12 先端面
13 下面
14 底部
15、54 (筐体下部の)内周面
16、53、82 給液口
20、55、84 振動体
21、56 振動補助部
22 振動補助部の上端
24、58 鍔部(フランジ部)
25 鍔部の下部(下面)
28、60 振動伝達部
32、61、87 振動伝達部の外周面(洗浄液接触面)
34、62、85 先端部(振動面)
35 63 振動面
38、64、88 超音波振動子
40、65 整流部
41、66 底部
41a、66a 底部の一方の面
41b、66b 底部の他方の面
42、67 突起部
43、68 傾斜面
44、69 内周面
45、70 外周面
46、71 上面
47、72、92 吐出口
48、74、94 流路
75 洗浄液
77 被洗浄物
80 流水式超音波洗浄装置
90 ノズル部
91 ノズル内壁
96 超音波発振器
97 制御部
98 洗浄液タンク
99 洗浄液供給バルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7