(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】管状体の接合部の検査方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01N 29/12 20060101AFI20230522BHJP
B23K 31/00 20060101ALI20230522BHJP
G01H 9/00 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
G01N29/12
B23K31/00 K
G01H9/00 C
(21)【出願番号】P 2021522689
(86)(22)【出願日】2020-04-13
(86)【国際出願番号】 JP2020016301
(87)【国際公開番号】W WO2020241092
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2019101741
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畠堀 貴秀
(72)【発明者】
【氏名】田窪 健二
(72)【発明者】
【氏名】吉田 康紀
(72)【発明者】
【氏名】今村 美速
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-115330(JP,A)
【文献】特開2007-240344(JP,A)
【文献】特開平01-126528(JP,A)
【文献】特開平01-123121(JP,A)
【文献】特開2006-017741(JP,A)
【文献】米国特許第03645129(US,A)
【文献】山本 勉ほか,ストロボ位相シフト干渉法を用いた超音波モータの振動計測,愛知工業大学研究報告,第36号B,2001年03月31日,p.9-14,<URL:http://repository.aitech.ac.jp/dspace/bitstream/11133/1130/1/%e7%b4%80%e8%a6%8136%e5%8f%b7B%28P9-14%29.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
G01H 1/00-17/00
G01B 17/00-17/08
B23K 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状体と被接合部材との接合体に振動源を接触させることにより該接合体に弾性波振動を付与し、光学的に一括的に測定される、前記管状体と前記被接合部材との接合部を含む視野領域の振動分布を、前記管状体の周方向の位置が異なる複数の視野領域について取得することにより、前記接合部全体における接合の良否を判定する方法であって、
複数の前記視野領域においてそれぞれ、
前記接合体中で前記弾性波振動を付与する位置及び周波数のいずれか一方又は両方が異なる複数種の前記弾性波振動をそれぞれ該接合体に付与して前記振動分布の測定を行い、測定された複数種の前記振動分布のいずれもが接合部において該振動の節を有する場合に、該視野領域内の接合部における接合が良好であると判定する、
管状体の接合部の検査方法。
【請求項2】
前記振動分布の測定を、
前記視野領域にストロボ照明を行い、
前記弾性波振動と前記ストロボ照明のタイミングを制御することにより、該振動の互いに異なる少なくとも3つの位相において前記視野領域内の各点の面外方向の変位を測定することにより行う、
請求項1に記載の管状体の接合部の検査方法。
【請求項3】
管状体と被接合部材との接合体に接触させることにより該接合体に弾性波振動を付与する振動源と、
前記管状体と前記被接合部材との接合部を含む視野領域にストロボ照明を行う照明部と、
前記弾性波振動と前記ストロボ照明のタイミングを制御することにより、該振動の互いに異なる少なくとも3つの位相において前記視野領域内の各点の面外方向の変位を測定する変位測定部と、
前記接合体中で前記弾性波振動を付与する位置及び周波数のいずれか一方又は両方が異なる複数種の前記弾性波振動がそれぞれ前記振動源から該接合体に付与されたときに、前記変位測定部により光学的に一括的に測定される、前記視野領域の振動分布を、前記管状体の周方向の位置が異なる複数の視野領域について取得する振動分布取得部と、
複数の前記視野領域においてそれぞれ、前記振動分布取得部により取得された振動分布のいずれもが接合部において該振動の節を有する場合に、該視野領域内の接合部における接合が良好であると判定する接合判定部と
を備える、管状体の接合部の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状体の接合部の検査方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の部品等において、金属製の管状体を他の部材(被接合部材)と接合した接合体が用いられている。特許文献1には、被接合部材に設けられた孔に管状体を挿通させ、管状体を拡径して該被接合部材に圧接することにより、管状体を被接合部材に接合させることが記載されている。この文献では、管状体を拡径させるために、コイルを、被接合部材の孔の位置に合わせるように管状体内に挿通し、コイルに瞬間的にパルス大電流を流す、という方法が用いられている。これによりコイルから磁界が発生し、この磁界によって管状体に渦電流が発生し、コイルと管状体の間に作用するローレンツ力により拡径する。この方法は、アルミニウム等の導電性が高い材料から成る管状体に対して好適に用いることができる。また、生産性には前出技術よりは劣るが接合状態が類似する機械的な手法として、管状体内部に伸縮機構を挿入して拡径を行うもの、管状体内部にゴム等の弾性体を内在させてその弾性変形により拡径するもの、管状体内部に非圧縮性流体を導入することにより高圧を付加するもの等もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうして接合した後に、管状体と被接合部材が十分に接合されているか否かを検査する方法の1つとして、X線CT検査法が挙げられる。しかし、このような接合体の検査に適用可能な十分広い視野範囲をもつX線CT検査では、1μmよりも狭い隙間を検出することができない。自動車用部品等では、このような隙間も問題となる。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、管状体と被接合部材との間の微小な隙間による接合の不良を確実に検出することができる方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために成された本発明に係る管状体の接合部の検査方法は、
管状体と被接合部材との接合体に振動源を接触させることにより該接合体に弾性波振動(以下、単に振動という)を付与し、光学的に一括的に測定される前記管状体と前記被接合部材との接合部を含む視野領域の振動分布を、前記管状体の周方向の位置が異なる複数の視野領域について取得することにより、前記接合部全体における接合の良否を判定する。
【0007】
本発明に係る管状体の接合部の検査装置は、
管状体と被接合部材との接合体に接触させることにより該接合体に振動を付与する振動源と、
光学的に一括的に測定される、前記管状体と前記被接合部材との接合部を含む視野領域の振動分布を、前記管状体の周方向の位置が異なる複数の視野領域について取得する振動分布取得部と
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、管状体と被接合部材との間の微小な隙間による接合の不良を確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る管状体の接合部の検査装置の一実施形態を示す概略構成図。
【
図2】本実施形態の検査装置及び検査方法において検査対象となる接合体の作製方法を示す断面図。
【
図3】本実施形態の検査装置の動作及び本実施形態の検査方法を示すフローチャートのうち、全体の動作の開始から複数の視野領域について振動の測定を行うまでのステップを示すもの。
【
図4】本実施形態の検査装置の動作及び本実施形態の検査方法を示すフローチャートのうち、振動の測定の終了から全体の動作の終了までのステップを示すもの。
【
図5】管状体と被接合部材との接合体及び視野領域をスペックル・シェアリング干渉計側から見た平面図。
【
図6】本実施形態の検査装置の動作中、視野領域内の各点における振動の状態を求める方法を説明する図。
【
図7】検査装置の動作及び検査方法の変形例を示すフローチャートのうち、全体の動作の開始から複数の視野領域について振動の測定を行うまでのステップを示すもの。
【
図8】検査装置の動作及び検査方法の変形例を示すフローチャートのうち、振動の測定の終了から全体の動作の終了までのステップを示すもの。
【
図9】本実施形態の検査装置及び変形例の検査方法を実施した結果を示す図であって、接合体を上側から観測して振動分布を求めた図。
【
図10】本実施形態の検査装置及び変形例の検査方法を実施した結果を示す図であって、接合体を左側から観測して振動分布を求めた図。
【
図11】本実施形態の検査装置及び変形例の検査方法を実施した結果を示す図であって、接合体を下側から観測して振動分布を求めた図。
【
図12】本実施形態の検査装置及び変形例の検査方法を実施した結果を示す図であって、接合体を右側から観測して振動分布を求めた図。
【
図13】本実施形態の検査装置及び変形例の検査方法を実施した結果を、管状体の長手方向に垂直な断面で模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1~
図13を用いて、本発明に係る管状体の接合部の検査方法及び装置の実施形態を説明する。
【0011】
(1) 本実施形態の管状体の接合部の検査装置の構成
図1に本実施形態の管状体の接合部の検査装置(以下、「検査装置」と略記する)10を示す。検査装置10は、振動源11と、振動分布取得部12と、接合判定部13とを有する。
【0012】
この検査装置10は、管状体91と被接合部材92との接合体90における、管状体91と被接合部材92との接合部93の接合の良否を検査するものである。ここで、
図1及び
図2を用いて、接合体90の詳細を説明する。接合体90は、
図2に示す方法により作製されたものである。被接合部材92と接合する前の管状体911は、外径及び内径が一様である金属製の管である。被接合部材92は、管状体911よりも径が大きい孔921を有する部材である。接合体90を製造する際には、まず、管状体911を孔921に挿通する。次に、管状体911内の、孔の内側に対応する位置にコイル96を、該コイル96の軸が管状体911の軸と平行になるように配置する。そのうえで、コイル96に瞬間的にパルス大電流を流す。これによりコイル96から磁界が発生し、この磁界によって管状体911に渦電流が発生する。この渦電流によってコイル96と管状体911の間に作用するローレンツ力により、管状体911が拡径する。こうして、拡径した管状体911が被接合部材92に圧接し、両者が接合される(
図1)。なお、管状体911を拡径する方法はここで述べたものには限定されず、前述した伸縮機構を用いたもの、弾性体を用いたもの、非圧縮性流体を用いたもの等も適用することができる。
【0013】
次に、
図1に戻り、検査装置10が有する各構成要素の詳細を説明する。
【0014】
振動源11は、信号発生器111及び振動子112を有する。信号発生器111は、ケーブルで振動子112に電気的に接続されており、交流電気信号を発生させて該振動子112に送信するものである。振動子112は、接合体90に接触させて用いられ、信号発生器111から交流電気信号を受信して機械的振動に変換し、該機械的振動を接合体90に付与するものである。振動子112を接触させる位置は、接合体90のうちの管状体91と被接合部材92のいずれでもよいが、後述の視野領域95の外側とする。振動子112の形状は特に問わないが、曲面である管状体91の表面に接触し易くするために、接触面積が小さくなるように、先端が尖っているものが好ましい。
【0015】
振動分布取得部12は、レーザ光源121、照明光レンズ122、スペックル・シェアリング干渉計123、回動機構124及び振動分布決定部125を有する。
【0016】
レーザ光源121は、(信号発生器111と振動子112を接続するケーブルとは別の)ケーブルで信号発生器111に電気的に接続されており、該交流電気信号が所定の位相となるタイミングで、パルス状のレーザ光を発光する。照明光レンズ122は、レーザ光源121と接合体90の間に配置されており、凹レンズから成る。照明光レンズ122は、レーザ光源121からのパルスレーザ光を、接合体90のうち接合部93の一部を含む範囲に照射するように、該パルスレーザ光の径を拡げる役割を有する。パルスレーザ光が照射される範囲の全体又は該範囲のうち接合部93の一部を含む部分を視野領域95とする。
【0017】
スペックル・シェアリング干渉計123は、ビームスプリッタ1231、第1反射鏡1232、第2反射鏡1233、位相シフタ1234、集光レンズ1235及びイメージセンサ1236を有する。ビームスプリッタ1231は、視野領域95内の各点において接合体90の表面で反射したパルスレーザ光が入射する位置に配置されたハーフミラーである。第1反射鏡1232はビームスプリッタ1231で反射されるパルスレーザ光の光路上に配置されており、第2反射鏡1233はビームスプリッタ1231を透過するパルスレーザ光の光路上に配置されている。位相シフタ1234は、ビームスプリッタ1231と第1反射鏡1232の間に配置されており、該位相シフタ1234を通過するパルスレーザ光の位相を変化(シフト)させるものである。イメージセンサ1236は、ビームスプリッタ1231で反射された後に第1反射鏡1232で反射されてビームスプリッタ1231を透過するパルスレーザ光、及びビームスプリッタ1231を透過した後に第2反射鏡1233で反射されてビームスプリッタ1231で反射されるパルスレーザ光の光路上に配置されている。集光レンズ1235は、ビームスプリッタ1231とイメージセンサ1236の間に配置されている。
【0018】
第1反射鏡1232は、その反射面がビームスプリッタ1231の反射面に対して45°の角度になるように配置されている。それに対して第2反射鏡1233は、その反射面がビームスプリッタ1231の反射面に対して45°からわずかに傾斜した角度になるように配置されている。イメージセンサ1236は、検出素子を多数有しており、視野領域95内における接合体90の表面上の多数の点から第1反射鏡1232及び位相シフタ1234を通して該イメージセンサ1236に入射する光を、それぞれ異なる検出素子で検出する。各検出素子は、検出された光の強度に対応する電気信号を出力する。
【0019】
回動機構124は、接合体90の管状体91をその軸の周りに回動させる装置であり、管状体91の一端を把持する把持部及び把持部を回動させるモータ(図示省略)を有する。回動機構124は、把持部に把持される接合体90の接合部93が視野領域95内に配置されるように、移動させることが可能である。なお、回動機構124を用いることなく、操作者が手動で管状体91を回動させるようにしてもよい。
【0020】
振動分布決定部125は、イメージセンサ1236の各検出素子から出力された電気信号に基づいて、後述のように視野領域95(内における接合体90)の振動分布を決定するものである。
【0021】
接合判定部13は、振動分布決定部125で決定された、すなわち振動分布取得部12で取得された視野領域95の振動分布に基づいて、後述のように接合部93の接合の良否を判定するものである。
【0022】
振動分布決定部125及び接合判定部13は、CPU等のハードウエア並びに視野領域95の振動分布の決定及び接合部93の接合の良否の判定を実行するソフトウエアにより具現化されている。
【0023】
その他、本実施形態の検査装置10は、接合判定部13で判定された結果等を表示するディスプレイである表示部14、操作者が情報を検査装置10に入力する入力部(図示省略)、並びに信号発生器111、スペックル・シェアリング干渉計123及び回動機構124を制御する制御部(図示省略)を有する。
【0024】
(2) 本実施形態の検査装置の動作、及び本実施形態の管状体の接合部の検査方法
図3~
図6を用いて、本実施形態の検査装置10の動作を説明する。本実施形態の管状体の接合部の検査方法は、この検査装置10の動作により実行される。検査装置10の一連の動作を
図3及び
図4のフローチャートに示す。以下、このフローチャートに沿って説明する。
【0025】
まず、接合体90の一端を回動機構124の把持部に把持させ、接合部93が視野領域95内に配置されるように回動機構124を移動させることにより、接合体90を検査装置10にセットする(ステップ201)。
【0026】
視野領域95は、スペックル・シェアリング干渉計123側から平面状に見える領域である(
図5)。それに対して接合部93は管状体91の周囲にある管状の部分である。そのため、1つの視野領域95には接合部93の一部しか含まれない。そこで、本実施形態の検査装置及び検査方法では、1つの視野領域95で振動の測定を行った後、回動機構124によって接合体90を(360/a
max)°回動させて別の視野領域95で測定を行うという操作をa
max回(a
maxは2以上の整数)繰り返すことにより、接合部93の全体に対して測定を行う。また、振動の測定を行うa
max個の視野領域95に1~a
maxまでの番号(視野領域番号aとする)を付す。本実施形態ではa
maxを4とし、接合体90を回動させる角度を1回あたり90°とする。
【0027】
視野領域番号aの初期値として「1」を設定し(ステップ202)、以下のステップ203~208の操作により、視野領域番号1の視野領域95における測定を行う。
【0028】
1つの視野領域では、振動子112の振動の位相が異なるmmax回(mmaxは3以上の整数)の測定を行う。振動子112の振動の位相は、信号発生器111から振動子112に送信される交流電気信号の位相であり、接合体90に励振される振動の、振動子112が接触する点における位相に相当する。以下では、各回の測定を、数値k(1~mmaxの間のいずれかの自然数)を用いて「k回目の測定」と表す。以下では、mmax=3の場合を例として説明する。
【0029】
まず、kの初期値を1に設定し(ステップ203)、信号発生器111から振動子112に交流電気信号を送信することにより、振動子112から接合体90への振動の付与を開始する(ステップ204)。
【0030】
次に、振動子112の振動の位相が、所定の初期値φ0(例えばφ0=0)を用いて[φ0+2π(k-1)/mmax]で表されるタイミング毎に、信号発生器111はレーザ光源121にパルス信号を送信する。この段階ではk=1であるため、パルス信号が送信されるときの振動子112の振動の位相はφ0である。レーザ光源121はパルス信号を受ける毎に、パルスレーザ光である照明光を繰り返し出射する。この照明光は、照明光レンズ122により拡径され、視野領域95を含む接合体90の表面に照射される(ステップ205)。
【0031】
照明光は接合体90の表面で反射され、スペックル・シェアリング干渉計123のビームスプリッタ1231に入射する。その照明光の一部はビームスプリッタ1231で反射され、位相シフタ1234を通過した後に第1反射鏡1232で反射され、再度位相シフタ1234を通過した後に一部がビームスプリッタ1231を通過し、集光レンズ1235を経てイメージセンサ1236に入射する。また、ビームスプリッタ1231に入射した照明光の残りは、ビームスプリッタ1231を透過して第2反射鏡1233で反射され、一部がビームスプリッタ1231で反射された後、集光レンズ1235を経てイメージセンサ1236に入射する。イメージセンサ1236は、接合体90の表面の多数の点で反射される照射光をそれぞれ異なる検出素子で検出する。各検出素子には、接合体90の表面の或る1つの点で反射された照射光の他に、該点からわずかにずれた位置の点で反射された照射光も入射する。
【0032】
位相シフタ1234は、パルスレーザ光である照明光が繰り返し出力されている間に、該位相シフタ1234を通過する照射光の位相を変化(シフト)させてゆく。これにより、接合体90の表面の或る点で反射されてイメージセンサ1236の或る検出素子に入射した照射光と、該点からわずかにずれた位置の点で反射されて同じ検出素子に入射した照射光との位相差が変化してゆく。この変化の間に、イメージセンサ1236の各検出素子は、これら2つの照射光が干渉した干渉光の強度を検出してゆく(ステップ206)。
【0033】
図6の上段の図に、振動子112の振動の位相がφ
0であるときに得られる、位相シフタ1234による位相のシフト量と、イメージセンサ1236の検出素子で検出される干渉光の強度の一例をグラフで示す。なお、
図6において、検出強度が位相シフト量に対して正弦波状に変化する関係が連続的な曲線で示されているが、実際に測定されるのは離散的なデータであり、測定されたデータから最小二乗法等により上記の連続的な正弦波形を再現する。そのためには、少なくとも3つの異なる位相シフト量での強度を検出する必要がある。
【0034】
続いて、kの値がmmaxに達しているか否かを確認する(ステップ207)。この段階では未だk=1であってmmax(この例では3)に達していないため、ステップ207での判定はNOとなる。NOのときにはステップ208に進み、kの値を1だけ増加させて「2」とする(ステップ208での判定がYESの場合については後述)。
【0035】
次に、ステップ205に戻り、振動子112の振動の位相が[φ0+2π(k-1)/mmax]においてk=2、すなわち[φ0+2π/3]≡φ1であるタイミング毎に、信号発生器111はレーザ光源121にパルス信号を送信する。レーザ光源121は該パルス信号を受信したタイミングで接合体90の表面にパルスレーザ光である照明光を繰り返し照射する。そして、位相シフタ1234により、視野領域内の各点で反射された照射光の位相を少なくとも3つの値に変化(シフト)させつつ、イメージセンサ1236の各検出素子は干渉光の強度を検出してゆく(ステップ206)。
【0036】
図6の中段の図に、振動子112の振動の位相がφ
1であるときに得られる、位相シフタ1234による位相のシフト量と、イメージセンサ1236の検出素子で検出される干渉光の強度をグラフで示す。
図6の中段の図と上段の図を対比すると、干渉光の強度のピーク位置が両者でδφ
1-δφ
0だけずれている。このずれは、接合体90の表面の或る点で反射された照射光と、該点からわずかにずれた位置の点で反射された照射光における光路の位相差が、検出時の振動子112の振動の位相の相違により変化したことを示している。この光路の位相差の変化は、これら2つの点の面外方向の相対的な変位が変化していることを示している。
【0037】
このようにk=2におけるステップ206の操作を実行した後、ステップ207では未だkの値がm
max(=3)に達していないためNOと判定し、ステップ208においてkの値を1だけ増加させて「3」とする。その後、ステップ205に戻り、交流電気信号の位相が[φ
0+2π(k-1)/m
max]においてk=3、すなわち[φ
0+4π/3]≡φ2であるタイミング毎に、レーザ光源121が接合体90の表面にパルスレーザ光である照明光を繰り返し照射し、イメージセンサ1236の各検出素子は干渉光の強度を検出してゆく(ステップ206)。こうして、
図6の下段の図に示すように、交流電気信号の位相がφ
2であるときの位相シフタ1234による位相のシフト量と干渉光の強度の関係が得られる。
【0038】
その後、ステップ207では、kの値が3であってmmaxに達しているためYESと判定し、ステップ209に移る。ステップ209では、信号発生器111から振動子112への交流電気信号の送信を停止し、それにより振動子112が振動を停止する。
【0039】
ここまでの操作により、視野領域番号aが1である1つの視野領域95におけるデータの取得が終了する。ステップ210では、aの値がamaxに達しているか否かを確認する。ここまでに述べた例ではaの値は未だamaxに達していない(ステップ210においてNOである)ため、ステップ211に移る(ステップ210での判定がYESの場合については後述)。
【0040】
ステップ211では、回動機構124により接合体90の管状体91をその軸の周りに(360/amax)°回動させることにより、接合体90の向きを変更する。これにより、視野領域95も変更される。続いて、視野領域番号aの値に1を加算し(ステップ212)、これにより新たな視野領域95の視野領域番号aを2とする。
【0041】
その後ステップ203に戻り、新たな視野領域95に対して、ステップ203~209の操作を行うことにより、当該視野領域95の各点における位相のシフト量と干渉光の強度の関係を取得する。その後、ステップ210においてNOである場合には、ステップ211及びステップ212の操作を行った後、さらにステップ203~209の操作を行う。そして、視野領域番号amaxの視野領域95でのステップ203~209の操作が終了すると、ステップ210においてYESとなり、ステップ213に移る。このステップ213に移る直前までの操作によって振動の測定が終了し、その後は、得られたデータの解析を行うことになる。
【0042】
データの解析は、a
max個の視野領域95に対して1つずつ行う。まず、視野領域番号aの初期値として「1」を設定し(ステップ213)、以下の操作によって、視野領域番号a=1の視野領域95の各点における振動状態(振幅及び/又は位相)の分布(振動分布)を求める。まず、イメージセンサの各検出素子につき、各振動の位相φ
0、φ
1、及びφ
2においてそれぞれ、位相シフタ1234による位相のシフト量を変化させた間に検出素子の出力が最大となる最大出力位相シフト量δφ
0、δφ
1、δφ
2を求める(
図6の上段、中段及び下段のグラフ参照)。さらに、振動の位相が異なる最大出力位相シフト量の差(δφ
1-δφ
0)、(δφ
2-δφ
1)、及び(δφ
0-δφ
2)を求める。これら3つの最大出力位相シフト量の差は、視野領域95の各点における、該点と、該点からわずかにずれた位置の点との面外方向の相対的な変位を、振動子112の振動の位相が異なる(すなわち時間が異なる)2つのデータで3組示している(ステップ214)。これら3組の相対的な変位に基づいて、視野領域95の各点における振動の振幅、振動の位相、及び振動の中心値(DC成分)、という3つのパラメータの値が得られる(ステップ215)。
【0043】
こうして得られた各点の振動の振幅や位相の値は、以下のように接合部93における接合の良否を示す情報を有している。管状体91と被接合部材92が良好に接合されていれば、通常、管状体91が被接合部材92によって拘束されるため、該接合部93の近傍において振動の振幅が小さくなる。それに対して、管状体91と被接合部材92の間に微小な隙間が存在し、両者が良好に接合されていなければ、接合部93及びその周囲において管状体91は被接合部材92に拘束されず、振動の振幅が大きくなる。従って、得られた振動分布に基づいて、接合部93、特に被接合部材92の端部における接合の良否を判定することができる(ステップ216)。
【0044】
このように視野領域番号a=1の視野領域95における接合部93の接合の良否を判定した後、aの値がamaxに達しているか否かを確認する(ステップ217)。amaxに達していなければ(ステップ217でNOであれば)、aの値を1だけ増加させ(ステップ218)、次の視野領域番号の視野領域95における接合部93の接合の良否をステップ214~216により判定する。そして、ステップ217においてaの値がamaxに達していれば、全ての視野領域95において接合の良否を判定したこととなるため、一連の動作を終了する。
【0045】
なお、上記の例ではmmax=3としたが、mmaxを[2n+1](nは2以上の自然数)で表される数より大きく選ぶことにより、接合体90に励起された振動のn次の成分(第n高調波成分)までを検出することができるようになる。基本波と併せて、これら高調波成分の振動分布に基づいて、接合部93における接合の良否を判定してもよい。
【0046】
(3) 本実施形態の検査装置の動作の変形例、及び検査方法の変形例
次に、検査装置の構成は上記本実施形態の検査装置10のままで、その動作及び検査方法を変形した例を、
図7及び
図8のフローチャートを用いて説明する。なお、このフローチャートにおいて
図3及び
図4に示したフローチャート中のステップと同じ内容のステップは、同じ符号を付したうえで、説明を簡略化している。
【0047】
この変形例では、以下に述べるように、1つの視野領域において、接合体90に振動子112を接触させる位置(すなわち振動を付与する位置)及び振動子112の振動周波数のいずれか一方又は両方が異なるbmax(bmaxは2以上の整数)種類の振動状態を測定する。ここでbmaxの値は2以上の整数である。bmaxの値は大きいほど接合の良否をより確実に判定することができるが、その分測定に要する時間が増加する。通常は3~5程度である。以下、振動を付与する位置及び周波数を「振動付与条件」と呼び、各振動付与条件に振動付与条件番号bを1から順にbmaxまで付す。
【0048】
まず、上記実施形態と同様に、接合体90を検査装置10にセットし(ステップ201)、視野領域番号aの初期値「1」を設定する(ステップ202)。次に、振動付与条件番号bの初期値として「1」を設定する(ステップ2021)。そのうえで、a=1の視野領域95に対してb=1の振動付与条件で、上記実施形態と同様の方法によりステップ203~209の測定を行う。
【0049】
次に、bの値がbmaxに達しているか否かを判定する(ステップ2091)。ここではb=1であってbmaxに達していない(ステップ2091でNOである)ため、ステップ2092に移り、振動付与条件、すなわち振動子112の位置及び/又は振動子112の振動周波数を変更する。また、bの値に1を加算する(ステップ2092)。そのうえで、ステップ203に戻り、a=1の視野領域95に対してb=2の振動付与条件で、ステップ203~209の測定を行う。
【0050】
a=1の視野領域95に対するステップ203~209の測定を繰り返し、bの値がbmaxに達した(ステップ2091でYESである)とき、a=1の視野領域95に対する測定を終了してステップ210に移り、aの値がamaxに達しているか否かを判定する。aの値がamaxに達していない(ステップ210でNOである)場合には、前記と同様に回動機構124によって接合体90の向きを変更し(ステップ211)、視野領域番号aの値に1を加算し(ステップ212)たうえで、ステップ2021に戻る。その後、新たな視野領域番号aの視野領域95に対して、ステップ203~2093の操作を行う。一方、aの値がamaxに達している(ステップ210でYESである)場合には、ステップ213に移る。
【0051】
ステップ213では視野領域番号aの初期値「1」を設定し、続いてステップ2131において振動付与条件bの初期値「1」を設定する。そのうえで、視野領域番号a=1の視野領域95の各点における振動状態(振幅及び/又は位相)の分布(振動分布)を、ステップ214及び215において上記実施形態と同様の方法により求める。
【0052】
次に、bの値がbmaxに達しているか否かを判定する(ステップ2151)。ここではb=1であってbmaxに達していない(ステップ2151でNOである)ため、bの値に1を加算した(ステップ2152)うえで、ステップ214、215及び2151の操作を繰り返す。そして、ステップ2151においてbの値がbmaxに達した(判定がYESである)とき、ステップ2161に移り、a=1の視野領域95における接合の良否を以下のように判定する。
【0053】
接合部93が良好に接合されている場合には、通常、管状体91は被接合部材92によって拘束されるため、該接合部93において振動の振幅が小さくなる。そのため、得られた振動分布に基づいて、接合部93の近傍において振動の振幅が小さくなっているか否かを見ることにより、接合の良否を判定することができる。但し、接合体90に定在波が生じている場合、1つの振動状態のみに基づいて判断を行うと、接合が不良であるにも関わらず偶然に接合部93の位置に定在波の節が形成されて振動の振幅が小さくなった場合に、接合が良好であるとの誤った判定をしてしまうおそれがある。そのため、本変形例では、1つの視野領域95に対して複数の振動付与条件に対して該条件毎に振動状態の測定を行い、全ての振動付与条件において接合部93に振動の節が形成された場合に、接合が良好であると判定する。
【0054】
ステップ2161で1つの視野領域95に対する判定が終了した後、ステップ217に移り、aの値がamaxに達しているか否かを確認する。amaxに達していなければ(ステップ217でNOであれば)、aの値を1だけ増加させ(ステップ218)、次の視野領域番号の視野領域95における接合部93の接合の良否をステップ214~2161により判定する。そして、ステップ217においてaの値がamaxに達していれば、一連の動作を終了する。
【0055】
(4) 変形例の検査方法で接合部の検査を行った実験の例
図9~
図13に、変形例の検査方法を用いて接合体90の接合部93の検査を行った実験の例を示す。この例では、視野領域95の数a
maxは4とし、
図13に示した管状体91の長手方向に垂直な断面図における、上方向、左方向、下方向及び右方向という、90°毎の4つの方向から振動状態の測定を行った。視野領域95毎の振動付与条件は、周波数が異なる5条件(b
max=5)とした。
【0056】
図9~
図12では、視野領域95毎に、異なる5つの振動付与条件でそれぞれ定在波の振幅の分布(振動分布)を求め、それら5つの振幅を加算平均したものを示す。これらの図では、この値が大きいほど明るく表示される。従って、5つの振動付与条件で全て定在波の節(振幅0)になったときには最も暗く、黒色で表されている。一方、ある位置において、5つの振動付与条件のうちのある条件で定在波の節になったとしても、他の条件では節でない場合には、
図9~
図12では黒色にはならない。これにより、接合が不良であるにも関わらず偶然に定在波の節になった位置の接合状態を誤って接合が良好であると判断してしまうことを防ぐことができる。
【0057】
図9~
図12より、接合部93のうち、符号97を付して示した、上方向(
図9)の大半、左方向(
図10)の一部、及び下方向(
図11)の全体において明るく表示されており、これらの位置において接合が不良であることがわかる。それ以外の接合部93の部分では黒色で表示されており、定在波の節になっていることから、接合が良好であることがわかる。
【0058】
図9~
図12で得られた接合の良否を
図13に図示する。同図中で符号97を付した部分は接合が不良であり、符号98を付した部分は接合が良好である。
【0059】
(5) その他の変形例
以上、本実施形態の検査装置及び検査方法、並びに一変形例の検査方法について説明したが、本発明はこれらの例には限定されない。以下に2つの変形例を述べるが、本発明は更なる変形も可能である。
【0060】
例えば、上記一変形例では、1つの視野領域において、複数の振動付与条件に対して該条件毎に振動状態の測定を行った。その代わりに、1つの視野領域において、複数の周波数を重畳した振動を一度に付与し、振動状態の測定を1回のみ行ったうえで、周波数解析を行うことによって周波数毎の振動分布を求めてもよい。これにより、データの解析は上記一変形例よりも複雑になるものの、振動状態の測定に要する時間を短縮することができる。
【0061】
また、上記実施形態の検査装置では、スペックル・シェアリング干渉計123を用いて振動分布を測定したが、その代わりに、スペックル干渉計を用いてもよい。スペックル干渉計では、レーザ光源121からのレーザ光を照明光と参照光に分割し、照明光を視野領域95に照射したうえで、参照光(これは視野領域95に照射しない)と干渉させることにより得られる干渉光の強度を、視野領域95内の位置毎に得る。あるいは、格子投影法、サンプリングモアレ法、デジタル画像相関法、レーザドップラー法等の公知の振動計測法を用いてもよい。
【0062】
(6) 本発明の種々の態様
以下、本発明の種々の態様について説明する。
【0063】
本発明の第1の態様に係る管状体の接合部の検査方法は、
管状体と被接合部材との接合体に弾性波振動を付与し、光学的に一括的に測定される前記管状体と前記被接合部材との接合部を含む視野領域の振動分布を、前記管状体の周方向の位置が異なる複数の視野領域について取得することにより、前記接合部全体における接合の良否を判定する。
【0064】
第1の態様に係る管状体の接合部の検査方法によれば、接合部を含む視野領域の振動分布を光学的に一括的に測定することにより、該視野領域内の接合部における接合の良否を後述のように判定することができる。そして、振動分布を管状体の周方向の位置が異なる複数の視野領域について取得することにより、接合部全体における接合の良否を判定することができる。
【0065】
ここで、管状体と被接合部材が良好に接合されていれば、管状体が被接合部材によって拘束されるため、該接合部において振動の振幅が小さくなる。それに対して、管状体と被接合部材の間に微小な隙間が存在し、両者が良好に接合されていなければ、接合部及びその周囲において管状体は被接合部材に拘束されず、振動の振幅が大きくなる。従って、得られた振動分布に基づいて、接合部において振動の振幅が小さくなっているか否かを見ることにより、接合の良否を判定することができる。この方法によれば、管状体と被接合部材との間の隙間が微小であっても接合不良を検出することができる。また、管状体の周方向の位置が異なる複数の視野領域を取得することにより、接合部の全体で接合の良否を検査することができる。以上のように、第1の態様に係る管状体の接合部の検査方法により、管状体と被接合部材との間の微小な隙間による接合の不良を確実に検出することができる。
【0066】
視野領域の振動分布を測定する方法には、スペックル法、スペックル・シェアリング法、格子投影法、サンプリングモアレ法、デジタル画像相関法、レーザドップラー法等を用いることができる。ここでスペックル法は、光源から視野領域内の各点に照射されて反射した照射光と、光源と視野領域の間で照射光から分岐した参照光とを干渉させ、その干渉パターンから視野領域内の振動分布を求めるものである。スペックル・シェアリング法は、光源から視野領域内の各点に照射されて反射した照射光と、各点においてそれぞれその近傍の点で照射光が反射した参照光とを干渉させ、その干渉パターンから視野領域内の振動分布を求めるものである。また、スペックル・シェアリング法の変形として、光源から視野領域内の各点に照射されて反射した照射光と、各点においてそれぞれその近傍の領域内の多数の点で照射光が反射した参照光とを干渉させ、その干渉パターンから視野領域内の振動分布を求めるものであってもよい。
【0067】
本発明の第2の態様に係る管状体の接合部の検査方法は、第1の態様に係る管状体の接合部の検査方法において、
複数の前記視野領域においてそれぞれ、
前記接合体中で振動を付与する位置及び周波数のいずれか一方又は両方が異なる複数種の前記弾性波振動をそれぞれ該接合体に付与して前記振動分布の測定を行い、測定された複数種の前記振動分布のいずれもが接合部において該振動の節を有する場合に、該視野領域内の接合部における接合が良好であると判定する。
【0068】
第2の態様に係る管状体の接合部の検査方法によれば、接合部が良好に接合されている場合には、通常、接合体に振動を付与する位置や周波数に依ることなく接合部の位置で振動が定在波の節になること、複数種の振動分布のいずれもが接合部において振動の節を有する場合に、接合が良好であると判定することができる。振動の連続性の有無よりも振動の節の有無の方が容易に識別できるため、第2の態様では、より容易に接合の良否を判定することができる。但し、1種類の振動による振動分布では、接合の良否に関わらず接合部に定在波の節が偶然存在することが有り得るため、第2の態様では、複数種の振動からそれぞれ振動分布を得る。
【0069】
なお、第2の態様において周波数が異なる複数種の振動を接合体に付与する場合には、それら周波数毎に別のタイミングで振動を接合体に付与したうえで振動分布を測定することができる。あるいは、それら複数の周波数を重畳した振動を一度に付与したうえで、周波数解析を行うことによって周波数毎の振動分布を求めてもよい。前者は後者よりもデータの解析が容易であるという点で好ましく、後者は前者よりも測定に要する時間を短くすることができるという点で好ましい。
【0070】
本発明の第3の態様に係る管状体の接合部の検査方法は、第1又は第2の態様の管状体の接合部の検査方法において、
前記振動分布の測定を、
前記視野領域にストロボ照明を行い、
前記弾性波振動と前記ストロボ照明のタイミングを制御することにより、該振動の互いに異なる少なくとも3つの位相において前記視野領域内の各点の面外方向の変位を測定することにより行う。
【0071】
第3の態様に係る管状体の接合部の検査方法によれば、振動の互いに異なる少なくとも3つの位相において視野領域内の各点の面外方向の変位を測定することにより、視野領域内の振動分布を容易に得ることができる。
【0072】
本発明の第4の態様に係る管状体の接合部の検査装置は、
管状体と被接合部材との接合体に弾性波振動を付与する振動源と、
光学的に一括的に測定される、前記管状体と前記被接合部材との接合部を含む視野領域の振動分布を、前記管状体の周方向の位置が異なる複数の視野領域について取得する振動分布取得部と
を備える。
【0073】
第4の態様に係る管状体の接合部の検査装置によれば、第1の態様に係る管状体の接合部の検査方法と同様に、管状体と被接合部材との間の微小な隙間による接合の不良を確実に検出することができる。なお、振動分布取得部で得られる振動分布に基づいて接合の良否を判定する操作は、操作者(人)が行ってもよいし、次に述べる、第5の態様に係る管状体の接合部の検査装置の構成により行ってもよい。
【0074】
本発明の第5の態様に係る管状体の接合部の検査装置は、第4の態様に係る管状体の接合部の検査装置において、
さらに、複数の前記視野領域においてそれぞれ、前記振動分布取得部により取得された振動分布に基づいて、該視野領域内にある接合部における接合の良否を判定する接合判定部を備える。
【0075】
第5の態様に係る管状体の接合部の検査装置によれば、接合の良否を操作者(人)ではなく接合判定部が行うため、操作者が当該装置をより容易に取り扱うことができる。接合判定部における判定は、第1~第3の態様に係る管状体の接合部の検査方法と同様の方法により行うことができる。
【0076】
本発明の第6の態様に係る管状体の接合部の検査装置は、第4又は第5の態様に係る管状体の接合部の検査装置において、前記視野領域にストロボ照明を行う照明部と、前記弾性波振動と前記ストロボ照明のタイミングを制御することにより、該振動の互いに異なる少なくとも3つの位相において前記視野領域内の各点の面外方向の変位を測定する変位測定部とを備える。
【0077】
第6の態様に係る管状体の接合部の検査装置によれば、振動の互いに異なる少なくとも3つの位相において視野領域内の各点の面外方向の変位を測定することにより、視野領域内の振動分布を容易に得ることができる。
【符号の説明】
【0078】
10…(管状体の接合部の)検査装置
11…振動源
111…信号発生器
112…振動子
12…振動分布取得部
121…レーザ光源
122…照明光レンズ
123…スペックル・シェアリング干渉計
1231…ビームスプリッタ
1232…第1反射鏡
1233…第2反射鏡
1234…位相シフタ
1235…集光レンズ
1236…イメージセンサ
124…回動機構
125…振動分布決定部
13…接合判定部
14…表示部
90…接合体
91…管状体
911…被接合部材と接合する前の管状体
92…被接合部材
921…被接合部材の孔
93…接合部
95…視野領域
96…コイル
97…接合が不良である部分
98…接合が良好である部分