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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】歩幅算出システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20230523BHJP
   A61H 3/04 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
A61B5/11 230
A61H3/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019089842
(22)【出願日】2019-05-10
(65)【公開番号】P2020185064
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】柴田 由之
(72)【発明者】
【氏名】金谷 学
(72)【発明者】
【氏名】松岡 祐樹
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-013289(JP,A)
【文献】特開2006-026092(JP,A)
【文献】特開2015-062654(JP,A)
【文献】国際公開第2018/066422(WO,A1)
【文献】特開2016-073630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 - 5/22
A61H 3/00 - 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の歩行を補助するための歩行器と、
算出装置と、を備え、
前記歩行器は、前記使用者による前記歩行器を用いた歩行に関する歩行関連データを取得する歩行関連データ取得部を有し、
前記歩行関連データは、前記使用者が前記歩行器を用いて歩行した速度を示す歩行速度データを含み、
前記算出装置は、
前記歩行速度データの波形の隣り合う2つの極値の間の時間の2倍の時間を前記使用者の歩行周期とする歩行周期データを取得する歩行周期データ取得部と、
前記歩行周期データにより示される前記歩行周期の1/2周期に、前記歩行速度データにより示される前記速度を乗じることにより、前記使用者の歩幅を算出する算出部と、を有する
歩幅算出システム。
【請求項2】
使用者の歩行を補助するための歩行器と、
算出装置と、を備え、
前記歩行器は、
前記使用者により把持される持ち手と、
前記使用者の歩行に伴う腕振り動作に合わせて前記持ち手を前後方向に移動させるための移動機構と、
前記使用者による前記歩行器を用いた歩行に関する歩行関連データを取得する歩行関連データ取得部と、を有し、
前記歩行関連データは、前記使用者が前記歩行器を用いて歩行した距離に関する歩行距離データと、前記使用者が前記持ち手を把持して腕を振りながら歩行する際の腕振り動作に関する腕振り動作データと、を含み、
前記算出装置は、
前記腕振り動作データに基づいて、前記使用者の歩行周期に関する歩行周期データを取得する歩行周期データ取得部と、
前記歩行周期データにより示される前記歩行周期の1/2周期における、前記歩行距離データにより示される前記距離を、前記使用者の歩幅として算出する算出部と、を有し、
前記腕振り動作データは、前記持ち手が基準位置から前方又は後方に移動して前記基準位置に再び戻るまでの時間を示すデータであり、
前記歩行周期データ取得部は、前記腕振り動作データにより示される前記時間を前記歩行周期とする前記歩行周期データを取得する
幅算出システム。
【請求項3】
前記算出部は、前記歩幅を算出する際に、前記歩行関連データのうち、前記歩行器の旋回中、歩行開始直後及び登坂中の少なくとも1つにおける特定の歩行関連データを除外する
請求項1又は2に記載の歩幅算出システム。
【請求項4】
前記歩幅算出システムは、さらに、前記算出装置として機能し、ネットワークを介して
前記歩行器と通信可能なサーバを備える
請求項1~のいずれか1項に記載の歩幅算出システム。
【請求項5】
前記サーバは、
算出された前記歩幅を示す歩幅データを記憶する記憶部と、
現在の前記歩幅データと過去の前記歩幅データとを比較することにより、前記使用者の歩行能力の改善の度合いを判定する判定部と、を有する
請求項に記載の歩幅算出システム。
【請求項6】
前記サーバは、
算出された前記歩幅を示す歩幅データを記憶する記憶部と、
現在の前記歩幅データに基づいて、前記使用者の歩行能力のレベルを判定する判定部と、を有する
請求項に記載の歩幅算出システム。
【請求項7】
前記サーバは、さらに、前記ネットワークを介して外部端末と通信するための配信部であって、前記外部端末からの前記歩幅データの配信要求に応じて、前記歩幅データを当該外部端末に配信する配信部を有する
請求項5又は6に記載の歩幅算出システム。
【請求項8】
前記記憶部は、さらに、前記歩幅データと、前記歩幅データの配信先を示す配信先情報と、前記使用者を識別するための識別情報との対応関係を示す対応情報を記憶し、
前記配信部は、前記外部端末からの前記歩幅データの配信要求に応じて、前記対応情報から前記配信先である当該外部端末に対応する前記使用者の前記歩幅データを選択し、選択した前記歩幅データを当該外部端末に配信する
請求項に記載の歩幅算出システム。
【請求項9】
前記配信部は、前記歩幅データの配信要求をした前記外部端末から送信された認証データに基づいて認証を行い、前記認証の結果に基づいて、当該外部端末への前記歩幅データの配信を許可するか否かを決定する
請求項に記載の歩幅算出システム。
【請求項10】
前記歩幅算出システムは、さらに、ネットワークを介して前記サーバと通信可能な端末装置を備え、
前記サーバの前記配信部は、前記ネットワークを介して、前記歩幅データを前記端末装置に配信し、
前記端末装置は、
前記サーバから配信された前記歩幅データを受信する受信部と、
前記使用者の歩行能力以外の他の身体能力の指標を示す身体能力指標データの入力を受け付ける受付部と、
前記歩幅データ及び前記身体能力指標データに基づいて、前記使用者の身体能力を評価するための評価データを生成する生成部と、を有する
請求項のいずれか1項に記載の歩幅算出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の歩行訓練を支援するための歩幅算出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者等(以下、「使用者」という)の歩行を補助するための歩行器が知られている。特許文献1に開示された歩行器は、歩行器本体と、歩行器本体の下端部に配置された複数の車輪と、複数の車輪を駆動するための電動モータと、歩行器本体から上方に延びるハンドルバーとを備えている。
【0003】
使用者は、ハンドルバーを両手で把持した状態で、歩行器本体を前方に押しながら歩行する。この時、電動モータは、使用者が歩行器本体を前方に押す力の大きさに応じて、使用者の歩行をアシストするように複数の車輪を駆動させる。
【0004】
使用者は、上述した歩行器を用いて歩行することにより、例えば歩行アシスト又はリハビリテーション等の歩行訓練を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-12546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の歩行器を用いた歩行訓練では、使用者の歩行能力の改善の度合いを精度良く判定することができないという課題が生じる。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決しようとするものであり、その目的は、使用者の歩行能力の改善の度合いを精度良く判定することができる歩幅算出システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る歩幅算出システムは、使用者の歩行を補助するための歩行器と、算出装置と、を備え、前記歩行器は、前記使用者による前記歩行器を用いた歩行に関する歩行関連データを取得する歩行関連データ取得部を有し、前記算出装置は、前記歩行関連データに基づいて、前記使用者の歩行周期に関する歩行周期データを取得する歩行周期データ取得部と、前記歩行関連データ及び前記歩行周期データに基づいて、前記使用者の歩幅を算出する算出部と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様に係る歩幅算出システムによれば、使用者の歩行能力の改善の度合いを精度良く判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る配信システムの概要を示す概念図である。
図2】実施の形態1に係る歩行器の外観を示す斜視図である。
図3】実施の形態1に係る歩行器の持ち手及び移動機構を抜き出して示す斜視図である。
図4】実施の形態1に係る歩行器の使用方法を説明するための図である。
図5】実施の形態1に係る歩行器の機能構成を示すブロック図である。
図6】実施の形態1に係るサーバの機能構成を示すブロック図である。
図7】実施の形態1に係る歩行能力指標データの一例を示す図である。
図8】1歩行周期を説明するための図である。
図9】実施の形態1に係る施設端末装置の機能構成を示すブロック図である。
図10】実施の形態1に係る施設端末装置により作成される帳票の一例を示す図である。
図11】実施の形態1に係る施設端末装置に表示される利用者一覧画面の一例を示す図である。
図12】実施の形態1に係る使用者端末装置の機能構成を示すブロック図である。
図13】実施の形態1に係る使用者端末装置に表示される通知画面の一例を示す図である。
図14】実施の形態1に係る配信システムの動作を示すシーケンス図である。
図15】実施の形態1に係る家族端末装置に表示される通知画面の一例を示す図である。
図16】実施の形態2に係るサーバの機能構成を示すブロック図である。
図17】実施の形態2に係る歩行速度データの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明に係る歩幅算出システムの実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0012】
また、図面は、本発明を示すために適宜強調や省略、比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状や位置関係、比率とは異なる場合がある。
【0013】
(実施の形態1)
まず、図1を参照しながら、実施の形態1に係る配信システム2(歩幅算出システムの一例)の概要について説明する。図1は、実施の形態1に係る配信システム2の概要を示す概念図である。
【0014】
図1に示すように、配信システム2は、歩行器4と、サーバ6(算出装置の一例)と、施設端末装置8(外部端末の一例)と、使用者端末装置10(外部端末の一例)とを備えている。サーバ6、施設端末装置8及び使用者端末装置10は、例えばインターネット等のネットワーク12を介して互いに通信可能に接続されている。
【0015】
配信システム2は、使用者14の歩行トレーニング又はリハビリテーション等の歩行訓練を支援するためのシステムであり、管理会社16により運営される。使用者14は、例えば高齢者等の被介護者であり、介護施設18による指導の下で歩行器4を用いた歩行訓練を行う。
【0016】
歩行器4は、使用者14の歩行を補助するための装置である。使用者14は、歩行器4の一対の持ち手26R,26L(図2参照)をそれぞれ右手及び左手で把持した状態で、両腕を前後方向(図2のY軸方向)に交互に振りながら歩行する。使用者14は、歩行器4を用いることにより、腕振り動作を伴った歩行訓練を行うことができる。
【0017】
なお、歩行器4は、管理会社16から使用者14に対してレンタル契約により有償で貸し出される。あるいは、使用者14が介護施設18で歩行訓練を行う場合は、歩行器4は、管理会社16から介護施設18に対してリース契約(又はレンタル契約)により有償で貸し出されてもよい。
【0018】
サーバ6は、使用者14の歩行能力指標データ(後述する)及び歩行器4を管理するための管理サーバであり、管理会社16に設置されている。なお、サーバ6は、クラウドサーバであってもよい。
【0019】
施設端末装置8は、使用者14の歩行訓練を管理するための端末装置であり、介護施設18に設置されている。施設端末装置8は、例えばパーソナルコンピュータ等で構成される。施設端末装置8には、配信システム2を利用するための専用のアプリケーションソフトウェアがインストールされている。
【0020】
使用者端末装置10は、使用者14により使用される端末装置であり、例えばスマートフォン又はタブレット等で構成される。使用者端末装置10は、例えばブルートゥース(登録商標)等により歩行器4との間で無線通信可能である。使用者端末装置10には、配信システム2を利用するための専用のアプリケーションソフトウェアがインストールされている。
【0021】
以下、配信システム2における歩行器4、サーバ6、施設端末装置8及び使用者端末装置10の各構成について詳細に説明する。
【0022】
まず、図2図4を参照しながら、歩行器4の構造について説明する。図2は、実施の形態1に係る歩行器4の外観を示す斜視図である。図3は、実施の形態1に係る歩行器4の持ち手26L及び移動機構48Lを抜き出して示す斜視図である。図4は、実施の形態1に係る歩行器4の使用方法を説明するための図である。
【0023】
図2に示すように、歩行器4は、フレーム20と、一対の前輪22R,22Lと、一対の後輪24R,24Lと、一対の持ち手26R,26Lと、操作パネル28と、コントロールボックス30と、バッテリ32とを有している。
【0024】
フレーム20は、本体部34と、一対の脚部36R,36Lと、一対の腕部38R,38Lとを有している。本体部34は、略矩形状の枠状に形成され、歩行器4の前面に配置されている。一対の脚部36R,36Lはそれぞれ、本体部34の下辺の両端部から後方(Y軸のマイナス方向)に延びている。一対の脚部36R,36Lにはそれぞれ、例えばロータリエンコーダ等の回転センサ40R,40Lが配置されている。回転センサ40Rは、後輪24Rの単位時間当たりの回転数及び回転速度等を検出し、回転センサ40Lは、後輪24Lの単位時間当たりの回転数及び回転速度等を検出する。一対の腕部38R,38Lはそれぞれ、本体部34の上辺の両端部から後方に延びている。
【0025】
なお、一対の腕部38R,38Lの各々は、中空状に形成されている。また、腕部38Rの上面には、腕部38Rの長手方向に沿って延びるスリット42Rが形成されている。同様に、腕部38Lの上面には、腕部38Lの長手方向に沿って延びるスリット42Lが形成されている。
【0026】
一対の前輪22R,22Lはそれぞれ、一対の脚部36R,36Lの各前端部に支持された非駆動輪である。一対の前輪22R,22Lの各々は、例えば自在キャスタである。
【0027】
一対の後輪24R,24Lはそれぞれ、一対の脚部36R,36Lの各後端部に支持された駆動輪である。一方の後輪24Rは、無端状の駆動ベルト44Rを介して、脚部36Rに支持された電動モータ46Rに連結されている。電動モータ46Rの駆動力が駆動ベルト44Rを介して後輪24Rに伝達されることにより、後輪24Rが駆動される。同様に、他方の後輪24Lは、無端状の駆動ベルト44Lを介して、脚部36Lに支持された電動モータ46Lに連結されている。電動モータ46Lの駆動力が駆動ベルト44Lを介して後輪24Lに伝達されることにより、後輪24Lが駆動される。アシストモード(後述する)において一対の後輪24R,24Lが駆動されることにより、歩行器4が前方(Y軸のプラス方向)に移動し、使用者14の歩行をアシストすることができる。
【0028】
一対の持ち手26R,26Lはそれぞれ、使用者14の右手及び左手で把持されるグリップである。一対の持ち手26R,26Lはそれぞれ、一対の腕部38R,38Lの各上面から突出するように配置されている。一対の持ち手26R,26Lはそれぞれ、一対の腕部38R,38Lに配置された移動機構48R,48L(後述する)により、使用者14の歩行に伴う腕振り動作に合わせて一対の腕部38R,38Lの長手方向に沿って往復移動する。
【0029】
図3に示すように、持ち手26Lの側面には、心拍数センサ50が配置されている。心拍数センサ50は、例えば赤外線を用いて、持ち手26Lを把持している使用者14の左手の血流を測定することにより、使用者14が歩行器4を用いて歩行した際の心拍数を検出する。なお、持ち手26Lの側面に、使用者14の体温を測定するための体温センサ(図示せず)を配置してもよい。
【0030】
また、図2に示すように、一対の持ち手26R,26Lの各前側にはそれぞれ、一対のブレーキレバー52R,52Lが配置されている。使用者14が一対のブレーキレバー52R,52Lをそれぞれ一対の持ち手26R,26L側に引くことにより、一対の後輪24R,24Lの回転がロックされる。
【0031】
ここで、図3を参照しながら、移動機構48Lの構成について説明する。移動機構48R,48Lはそれぞれ、使用者14の歩行に伴う腕振り動作に合わせて、一対の持ち手26R,26Lをフレーム20に対して前後方向(Y軸方向)に往復移動させるための機構である。移動機構48R,48Lは同一の構成を有しているため、以下、移動機構48Lの構成についてのみ説明する。
【0032】
図3に示すように、移動機構48Lは、腕部38Lの内部に配置されている。移動機構48Lは、駆動プーリ54と、従動プーリ56と、電動モータ58と、ワイヤ60と、スライダ62とを有している。
【0033】
駆動プーリ54及び従動プーリ56はそれぞれ、腕部38Lの長手方向における両端部に回転可能に支持されている。駆動プーリ54には、例えばロータリエンコーダ等の回転センサ64が配置されている。回転センサ64は、駆動プーリ54の単位時間当たりの回転数及び回転速度等を検出する。
【0034】
電動モータ58は、駆動プーリ54の回転軸と同軸に配置され、駆動プーリ54を正方向又は逆方向に回転させる。ワイヤ60は、駆動プーリ54及び従動プーリ56に回転可能に巻き掛けられている。
【0035】
スライダ62は、持ち手26Lの下端部を支持するためのものであり、腕部38Lの長手方向に沿って移動可能に配置されている。スライダ62の先端部は、腕部38Lの上面に形成されたスリット42Lから外部に突出している。スライダ62は、ワイヤ60に固定されたワイヤ固定部66と、ワイヤ60が移動可能に挿通されるワイヤ孔68とを有している。
【0036】
なお、一対の持ち手26R,26Lは、スライダ62に対して傾動可能である。また、スライダ62は、例えばフレキシブルフラットケーブル等の信号ケーブル70を介してコントロールボックス30と電気的に接続されている。これにより、例えば心拍数センサ50からの検出信号等は、信号ケーブル70を介してコントロールボックス30に送信される。
【0037】
電動モータ58が駆動プーリ54を回転させることにより、ワイヤ60が駆動プーリ54と従動プーリ56との間で回転する。ワイヤ60の回転に伴い、スライダ62が持ち手26Lとともに腕部38Lの長手方向に沿って移動する。これにより、後述するように、アシストモードにおいて持ち手26Lの移動をアシストすることができ、トレーニングモードにおいて持ち手26Lの移動に負荷を付与することができる。
【0038】
図2に戻り、操作パネル28は、使用者14の操作を受け付けるインターフェースである。操作パネル28は、電源スイッチ72と、モード切替スイッチ74と、表示パネル76とを有している。
【0039】
電源スイッチ72は、歩行器4の電源をオン又はオフするためのスイッチである。使用者14が電源スイッチ72を手動で操作して歩行器4の電源をオンした際に、バッテリ32からの電力が、各電動モータ46R,46L,58、操作パネル28及びコントロールボックス30等に供給される。
【0040】
モード切替スイッチ74は、歩行器4の動作モードを切り替えるためのスイッチである。使用者14は、モード切替スイッチ74を手動で操作することにより、歩行器4の動作モードを、アシストモード、トレーニングモード及びノーマルモードのいずれかに切り替えることができる。
【0041】
アシストモードは、使用者14の歩行動作に対してアシストを行うための動作モードである。具体的には、アシストモードでは、使用者14が歩行に伴って腕振り動作を行う際に、一対の後輪24R,24Lを駆動させることにより歩行器4の移動がアシストされるとともに、電動モータ58により一対の持ち手26R,26Lの移動がアシストされる。
【0042】
トレーニングモードは、使用者14の歩行動作に対して負荷を付与するための動作モードである。具体的には、トレーニングモードでは、使用者14が歩行に伴って腕振り動作を行う際に、電動モータ58により一対の持ち手26R,26Lの移動に負荷が付与される。
【0043】
ノーマルモードは、使用者14の歩行動作に対してアシストも負荷の付与も行わない動作モードである。
【0044】
表示パネル76は、例えばバッテリ32の充電量及び歩行器4の動作モード等を表示するための液晶表示パネルである。
【0045】
コントロールボックス30は、歩行器4を制御するための制御ユニットを収納するためのボックスである。なお、制御ユニットは、例えば制御部78、記憶部80及び通信部82(後述する図5参照)等を含むユニットである。コントロールボックス30は、フレーム20の本体部34に支持されている。
【0046】
バッテリ32は、充電可能な二次電池である。バッテリ32は、歩行器4の電源がオンされた際に、各電動モータ46R,46L,58、操作パネル28及びコントロールボックス30等に電力を供給する。バッテリ32は、フレーム20の本体部34に支持されている。
【0047】
ここで、図4を参照しながら、歩行器4の使用方法について説明する。図4に示すように、使用者14は、一対の脚部36R,36Lの間及び一対の腕部38R,38Lの間に立ち、電源スイッチ72を手動で操作することにより歩行器4の電源をオンする。次に、使用者14は、モード切替スイッチ74を手動で操作することにより、歩行訓練の目的等に応じて、歩行器4の動作モードを、アシストモード、トレーニングモード及びノーマルモードのいずれかに切り替える。
【0048】
その後、使用者14は、右手及び左手でそれぞれ一対の持ち手26R,26Lを把持した状態で、両腕を前後方向に交互に振りながら歩行する。この時、歩行器4は、使用者14の歩行に伴って前方に移動する。なお、説明の都合上、図4では、持ち手26Rの図示を省略してある。
【0049】
また、一対の持ち手26R,26Lは、使用者14の歩行に伴う腕振り動作に合わせて、フレーム20に対して前後方向に交互に往復移動する。すなわち、持ち手26Rがフレーム20に対して前方に移動した際には、持ち手26Lがフレーム20に対して後方に移動し、持ち手26Rがフレーム20に対して後方に移動した際には、持ち手26Lがフレーム20に対して前方に移動する。
【0050】
次に、図5を参照しながら、歩行器4の機能構成について説明する。図5は、実施の形態1に係る歩行器4の機能構成を示すブロック図である。
【0051】
図5に示すように、歩行器4は、機能構成として、心拍数センサ50と、回転センサ40R,40L,64と、操作パネル28と、制御部78(歩行関連データ取得部の一例)と、記憶部80と、電動モータ46R,46L,58と、通信部82とを有している。
【0052】
心拍数センサ50、回転センサ40R,40L,64、操作パネル28及び電動モータ46R,46L,58については既述したので、ここでは説明を省略する。
【0053】
制御部78は、回転センサ40R,40Lからの検出信号に基づいて、単位時間当たりに使用者14が歩行器4を用いて歩行した距離に関する歩行距離データを歩行関連データとして取得する。また、制御部78は、回転センサ40R,40Lからの検出信号に基づいて、単位時間当たりに使用者14が歩行器4を用いて歩行した速度に関する歩行速度データを歩行関連データとして取得する。
【0054】
また、制御部78は、心拍数センサ50からの検出信号に基づいて、単位時間当たりに使用者14が歩行器4を用いて歩行した際の心拍数に関する心拍数データを歩行関連データとして取得する。さらに、制御部78は、回転センサ64からの検出信号に基づいて、単位時間当たりに使用者14が歩行器4を用いて歩行した際の腕振り時間に関する腕振り幅データ(腕振り動作データの一例)を歩行関連データとして取得する。なお、図4に示すように、腕振り時間は、使用者14の腕振り動作に伴い、持ち手26L(26R)がその移動経路の一端の基準位置から移動経路の他端まで移動した後に、移動経路の他端から基準位置に再び戻るまでの時間である。
【0055】
制御部78は、取得した各歩行関連データ(歩行距離データ、歩行速度データ、心拍数データ及び腕振り時間データ)を、各歩行関連データの取得日時を示す取得日データとともに、使用者ID(Identification)データと紐付けて記憶部80に記憶させる。使用者IDデータは、使用者14を識別するためのデータであり、使用者14毎に予め割り当てられている。なお、制御部78は、各歩行関連データ、取得日データ及び使用者IDデータを、歩行器4の動作モードの種類と紐付けて記憶部80に記憶させてもよい。
【0056】
また、制御部78は、操作パネル28の表示パネル76の表示内容を制御する。さらに、制御部78は、操作パネル28のモード切替スイッチ74の操作に基づいて、各電動モータ46R,46L,58の駆動を制御することにより、歩行器4の動作モードをアシストモード、トレーニングモード及びノーマルモードのいずれかに切り替える。
【0057】
記憶部80は、上述した各歩行関連データ及び取得日データを、使用者IDデータと紐付けて記憶する。
【0058】
通信部82は、使用者端末装置10との間で各種データを送受信する。具体的には、通信部82は、記憶部80に記憶された各歩行関連データ、取得日データ及び使用者IDデータを使用者端末装置10に送信する。
【0059】
次に、図6図8を参照しながら、サーバ6の機能構成について説明する。図6は、実施の形態1に係るサーバ6の機能構成を示すブロック図である。図7は、実施の形態1に係る歩行能力指標データ96の一例を示す図である。図8は、1歩行周期を説明するための図である。
【0060】
図6に示すように、サーバ6は、機能構成として、通信部84(配信部の一例)と、取得部86と、データ加工部88(歩行周期データ取得部及び算出部の一例)と、記憶部90と、判定部92と、通知部94(配信部の一例)とを有している。
【0061】
通信部84は、ネットワーク12を介して、使用者端末装置10との間で各種データを送受信する。具体的には、通信部84は、ネットワーク12を介して、使用者端末装置10から送信されてきた各歩行関連データ、取得日データ及び使用者IDデータを受信する。また、通信部84は、ネットワーク12を介して、通知部94からの歩行能力指標データ及び判定結果を施設端末装置8及び使用者端末装置10の各々に配信(送信)する。
【0062】
取得部86は、通信部84により受信された各歩行関連データ、取得日データ及び使用者IDデータを取得する。取得部86は、取得した各歩行関連データ、取得日データ及び使用者IDデータをデータ加工部88に出力する。
【0063】
データ加工部88は、取得部86からの各歩行関連データ、取得日データ及び使用者IDデータを加工することにより、使用者14の歩行能力の指標を示す歩行能力指標データを生成する。なお、データを加工するとは、例えば歩行速度データ等を平均化する、あるいは、腕振り時間データに基づいて歩行周期データを算出する等の各種の演算処理を意味する。
【0064】
歩行能力指標データは、例えば図7に示すようなデータテーブルである。図7に示す歩行能力指標データ96には、使用者14に割り当てられた使用者IDデータ毎に、累積歩行距離データ、平均歩行速度データ、5m平均歩行時間データ、平均歩幅データ、平均心拍数データ及び取得日データが格納されている。
【0065】
累積歩行距離データは、1日(24時間)当たりに使用者14が歩行器4を用いて歩行した累積距離に関するデータである。平均歩行速度データは、1日(24時間)当たりに使用者14が歩行器4を用いて歩行した平均速度に関するデータである。5m平均歩行時間データは、使用者14が歩行器4を用いて5mだけ歩行するのに要した時間を示すデータである。なお、5m平均歩行時間データに代えて、使用者14が歩行器4を用いて5mだけ歩行するのに要した最大時間を示す5m最大歩行時間データを採用してもよい。平均歩幅データは、1日(24時間)当たりに使用者14が歩行器4を用いて歩行した平均歩幅に関するデータである。ここで、歩幅とは、図8に示すように、歩行動作において例えば左右の足の一方の踵が地面に接触してから、左右の足の他方の踵が地面に接触するまでの歩行距離である。平均心拍数データは、1日(24時間)当たりに使用者14が歩行器4を用いて歩行した際の平均心拍数に関するデータである。
【0066】
図7に示す例では、歩行能力指標データ96の1行目には、a)使用者14に割り当てられた使用者IDデータとして「0001」、b)累積歩行距離データとして「1.0km」、c)平均歩行速度データとして「1.1km/h」、d)5m平均歩行時間データとして「30秒」、e)平均歩幅データとして「42cm」、f)平均心拍数データとして「82bpm」、g)取得日データとして「2018/12/01」がそれぞれ格納されている。
【0067】
また、歩行能力指標データ96の2行目には、a)使用者14に割り当てられた使用者IDデータとして「0001」、b)累積歩行距離データとして「0.9km」、c)平均歩行速度データとして「1.2km/h」、d)5m平均歩行時間データとして「25秒」、e)平均歩幅データとして「45cm」、f)平均心拍数データとして「90bpm」、g)取得日データとして「2018/12/02」がそれぞれ格納されている。
【0068】
ここで、データ加工部88による歩幅の算出方法について説明する。データ加工部88は、歩行関連データに含まれる腕振り時間データに基づいて、使用者14の1歩行周期に関する歩行周期データを取得する。具体的には、データ加工部88は、腕振り時間データにより示される腕振り時間を1歩行周期とする歩行周期データを取得する。なお、図8に示すように、1歩行周期とは、歩行動作において例えば左右の足の一方の踵が地面に接触してから、当該一方の踵が再び地面に接触するまでの時間である。すなわち、1歩行周期は、使用者14の腕振り動作に伴い、歩行器4の持ち手26L(26R)がその移動経路の一端の基準位置から移動経路の他端まで移動した後に、移動経路の他端から基準位置に再び戻るまでの時間であると推定される。データ加工部88は、歩行周期データにより示される1歩行周期の1/2歩行周期における歩行距離を歩幅として算出する。なお、上記歩行距離は、歩行関連データに含まれる歩行距離データから算出される。
【0069】
なお、データ加工部88は、歩行能力指標データを生成する際に、歩行関連データのうち、歩行器4の旋回中、歩行開始直後及び登坂中の少なくとも1つにおける特定の歩行関連データを除外してもよい。これにより、歩行能力指標データの精度を高めることができる。ここで、データ加工部88は、回転センサ40R,40Lによりそれぞれ検出される一対の後輪24R,24Lの各回転数の差分が第1の閾値を超えた場合に、歩行器4が旋回中であると判定する。また、データ加工部88は、回転センサ40R,40Lによりそれぞれ検出される一対の後輪24R,24Lの各回転速度が第2の閾値よりも低い場合に、歩行器4が歩行開始直後であると判定する。また、データ加工部88は、フレーム20に配置された3軸加速度・角速度センサにより検出される地面の傾斜角度が第3の閾値を超えた場合に、歩行器4が登坂中であると判定する。
【0070】
記憶部90は、データ加工部88により生成された歩行能力指標データを記憶する。また、記憶部90は、歩行能力指標データのデータ種別と、当該歩行能力指標データのデータ種別毎に予め定められた配信先を示す配信先情報と、使用者14を識別するための使用者IDデータ(識別情報の一例)との対応関係を示す対応情報を記憶する。配信先情報により示される配信先は、例えば施設端末装置8及び使用者端末装置10等である。例えば、対応情報において、配信先である施設端末装置8と、歩行能力指標データに含まれる平均歩行速度データ、5m平均歩行時間データ及び平均歩幅データとが対応付けられている。また例えば、対応情報において、配信先である使用者端末装置10と、歩行能力指標データに含まれる累積歩行距離データとが対応付けられている。
【0071】
判定部92は、例えば歩行能力指標データに含まれる現在の平均歩幅データと過去の平均歩幅データとを比較することにより、使用者14の歩行能力の改善の度合いを判定する。現在の平均歩幅データにより示される平均歩幅が過去の平均歩幅データにより示される平均歩幅よりも大きい場合には、使用者14の歩行能力が改善されたと推定される。判定部92は、現在の平均歩幅が過去の平均歩幅よりもどの程度大きくなったかに応じて、使用者14の歩行能力の改善の度合いを例えば「改善度1」~「改善度5」の5段階で判定する。判定部92は、判定結果を通知部94に出力する。なお、上述した判定方法に代えて、判定部92は、現在の平均歩幅データに基づいて、使用者14の歩行能力のレベルを例えば「レベル1」~「レベル5」の5段階で判定してもよい。
【0072】
通知部94は、配信先である施設端末装置8及び使用者端末装置10からの歩行能力指標データの配信要求に応じて、記憶部90に記憶された対応情報から当該配信先に対応する使用者14の歩行能力指標データのデータ種別を選択し、選択した歩行能力指標データのデータ種別を通信部84に出力する。また、通知部94は、判定部92による判定結果を通信部84に出力する。
【0073】
なお、通知部94は、歩行能力指標データの配信要求をした施設端末装置8及び使用者端末装置10から送信された認証データに基づいて認証を行い、当該認証の結果に基づいて、施設端末装置8及び使用者端末装置10への歩行能力指標データの配信を許可するか否かを決定してもよい。
【0074】
次に、図9図11を参照しながら、施設端末装置8の機能構成について説明する。図9は、実施の形態1に係る施設端末装置8の機能構成を示すブロック図である。図10は、実施の形態1に係る施設端末装置8により作成される帳票112の一例を示す図である。図11は、実施の形態1に係る施設端末装置8に表示される利用者一覧画面110の一例を示す図である。
【0075】
図9に示すように、施設端末装置8は、機能構成として、通信部98(受信部の一例)と、受付部100と、記憶部102と、生成部104と、表示制御部106と、表示部108とを有している。
【0076】
通信部98は、ネットワーク12を介して、サーバ6との間で各種データを送受信する。具体的には、通信部98は、ネットワーク12を介して、サーバ6から送信されてきた歩行能力指標データ及び判定結果を受信する。
【0077】
受付部100は、使用者14の歩行能力以外の他の身体能力(例えば握力及び開眼片足立ち時間等)の指標を示す身体能力指標データの入力を受け付ける。なお、使用者14の上記他の身体能力は、例えば握力計及びストップウォッチ等の測定器具を用いて測定される。
【0078】
記憶部102は、通信部98により受信された歩行能力指標データ、及び、受付部100により受け付けられた身体能力指標データを記憶する。
【0079】
生成部104は、記憶部102に記憶された歩行能力指標データ及び身体能力指標データに基づいて、使用者14の身体能力(歩行能力を含む)を評価するための評価データを生成する。評価データは、例えば図10に示す帳票112を作成するためのデータであり、歩行能力指標データとして5m平均歩行時間データ等を含み、身体能力指標データとして握力データ及び開眼片足立ち時間データ等を含む。帳票112は、例えば地域包括支援センター等に提出するための書類であり、電子データ又は紙媒体で構成される。図10に示すように、帳票112には、例えば5m平均歩行時間「30秒」、握力「10kgf」、及び、開眼片足立ち時間「5秒」等が記載されている。
【0080】
表示制御部106は、表示部108の表示内容を制御する。具体的には、表示制御部106は、記憶部102に記憶された歩行能力指標データに基づいて、例えば図11に示す利用者一覧画面110を表示部108に表示させる。利用者一覧画面110は、歩行器4を用いた歩行訓練を行っている複数の使用者14の歩行能力の一覧を示す画面である。利用者一覧画面110には、使用者14毎に、現在(当月分)の歩行能力と過去(先月分)の歩行能力との比較が表示される。なお、利用者一覧画面110には、使用者14毎に、歩行訓練の履歴が表示されてもよい。
【0081】
図11に示す例では、利用者一覧画面110の1行目には、a)利用者の氏名として「Aさん」、b)Aさんの2018年12月の平均歩行距離として「1.5km」、c)Aさんの2018年11月の平均歩行距離として「1.2km」、d)Aさんの2018年12月の平均歩行速度として「1.1km/h」、e)Aさんの2018年11月の平均歩行速度として「1.3km/h」、f)Aさんの2018年12月の平均歩幅として「42cm」、g)Aさんの2018年11月の平均歩幅として「40cm」がそれぞれ表示されている。
【0082】
また、利用者一覧画面110の2行目には、a)利用者の氏名として「Bさん」、b)Bさんの2018年12月の平均歩行距離として「1.7km」、c)Bさんの2018年11月の平均歩行距離として「1.1km」、d)Bさんの2018年12月の平均歩行速度として「1.5km/h」、e)Bさんの2018年11月の平均歩行速度として「1.2km/h」、f)Bさんの2018年12月の平均歩幅として「45cm」、g)Bさんの2018年11月の平均歩幅として「41cm」がそれぞれ表示されている。
【0083】
なお、利用者一覧画面110には、サーバ6の判定部92による判定結果が表示されるようにしてもよい。具体的には、通信部98により受信された判定結果に基づいて、例えば使用者14の歩行能力の改善の度合いを、改善レベル「1」~「5」の5段階で利用者一覧画面110に表示させてもよい。
【0084】
表示部108は、例えば利用者一覧画面110等を表示するための液晶表示パネルである。
【0085】
次に、図12及び図13を参照しながら、使用者端末装置10の機能構成について説明する。図12は、実施の形態1に係る使用者端末装置10の機能構成を示すブロック図である。図13は、実施の形態1に係る使用者端末装置10に表示される通知画面120の一例を示す図である。
【0086】
図12に示すように、使用者端末装置10は、機能構成として、通信部114と、表示制御部116と、表示部118とを有している。
【0087】
通信部114は、ネットワーク12を介して、サーバ6との間で各種データを送受信する。具体的には、通信部114は、ネットワーク12を介して、サーバ6から送信されてきた歩行能力指標データ及び判定結果を受信する。また、通信部114は、歩行器4との間で各種データを送受信する。具体的には、通信部114は、歩行器4から送信されてきた各歩行関連データ、取得日データ及び使用者IDデータを受信し、これらの各データを、ネットワーク12を介してサーバ6に転送する。
【0088】
表示制御部116は、表示部118の表示内容を制御する。具体的には、表示制御部116は、受信された歩行能力指標データに基づくグラフィカルデータを示す通知画面120を、表示部118に表示させる。図13に示すように、通知画面120は、例えば使用者14が1月間(所定期間の一例)に歩行器4を用いて歩行する距離の目標値に対する達成度をグラフィカルに示す画面である。歩行距離の目標値は、使用者14毎に例えば理学療法士等により予め設定される。なお、上述した距離の目標値に代えて、通知画面120は、使用者14が1月間に歩行器4を用いて歩行する歩数の目標値に対する達成度をグラフィカルに示す画面であってもよい。
【0089】
図13に示す例では、通知画面120には、目標値に対する達成度が山登りに見立てて表示されており、現在地点(星印で示す)から山頂付近のゴール(旗印で示す)までの歩行距離が「あと0.9km」であることが表示されている。すなわち、あと0.9km歩行すれば、歩行距離の目標値に到達することを意味している。なお、使用者14の歩行距離が目標値に到達した際には、例えば使用者端末装置10のスピーカから音声又は音楽等が出力されるようにしてもよい。
【0090】
本実施の形態では、目標値に対する達成度を山登りに見立てて表示したが、これに限定されず、例えば双六又はグラフ等に見立てて表示してもよい。また、通知画面120には、現在(当月分)の歩行能力と過去(先月分)の歩行能力との比較を表示してもよい。また、通信部114により受信された判定結果に基づいて、例えば使用者14の歩行能力の改善の度合いを、改善レベル「1」~「5」の5段階で通知画面120に表示させてもよい。
【0091】
表示部118は、例えば通知画面120等を表示するための液晶表示パネルである。
【0092】
以下、図14を参照しながら、実施の形態1に係る配信システム2の動作について説明する。図14は、実施の形態1に係る配信システム2の動作を示すシーケンス図である。
【0093】
図14に示すように、まず、サーバ6において、使用者14の使用者IDデータ及び歩行器4の機器IDデータ等の登録処理が行われる(S101)。
【0094】
使用者14は、歩行器4を用いて、腕振り動作を伴った歩行訓練を行う。歩行訓練中、歩行器4の回転センサ40R,40Lはそれぞれ後輪24R,24Lの単位時間当たりの回転数及び回転速度等を検出し、心拍数センサ50は使用者14の心拍数を検出し、回転センサ64は駆動プーリ54の単位時間当たりの回転数及び回転速度等を検出する。
【0095】
歩行器4の制御部78は、回転センサ40R,40Lからの検出信号に基づいて歩行距離データ及び歩行速度データを歩行関連データとして取得し、心拍数センサ50からの検出信号に基づいて心拍数データを歩行関連データとして取得し、回転センサ64からの検出信号に基づいて腕振り幅データを歩行関連データとして取得する(S102)。
【0096】
歩行器4の制御部78は、取得した各歩行関連データ(歩行距離データ、歩行速度データ、心拍数データ及び腕振り時間データ)及び取得日データを、使用者IDデータと紐付けて記憶部80に記憶させる(S103)。歩行器4の通信部82は、記憶部80に記憶された各歩行関連データ、取得日データ及び使用者IDデータを、所定のタイミングで使用者端末装置10に送信する(S104)。
【0097】
使用者端末装置10の通信部114は、歩行器4から送信されてきた各歩行関連データ、取得日データ及び使用者IDデータを受信し、受信したこれらの各データを、ネットワーク12を介してサーバ6に転送する(S105)。
【0098】
サーバ6の通信部84は、歩行器4から送信されてきた各歩行関連データ、取得日データ及び使用者IDデータを受信する(S106)。サーバ6のデータ加工部88は、受信された各歩行関連データ、取得日データ及び使用者IDデータを加工することにより、歩行能力指標データを生成し(S107)、生成した歩行能力指標データを記憶部90に記憶させる(S108)。
【0099】
使用者端末装置10の通信部114は、サーバ6に対して歩行能力指標データの配信を要求するための配信要求データを、ネットワーク12を介してサーバ6に送信する(S109)。サーバ6の通知部94は、使用者端末装置10からの配信要求に応じて、記憶部90に記憶された対応情報から配信先である使用者端末装置10に対応する使用者14の歩行能力指標データのデータ種別を選択し、選択した歩行能力指標データのデータ種別を通信部84に出力する。これにより、サーバ6の通信部84は、通知部94によりデータ種別が選択された歩行能力指標データを、ネットワーク12を介して使用者端末装置10に配信する(S110)。
【0100】
使用者端末装置10の通信部114は、サーバ6から送信されてきた歩行能力指標データを受信する(S111)。これにより、使用者端末装置10の表示部118には、受信された歩行能力指標データに基づくグラフィカルデータを示す通知画面120が表示される(S112)。
【0101】
施設端末装置8の通信部98は、サーバ6に対して歩行能力指標データの配信を要求するための配信要求データを、ネットワーク12を介してサーバ6に送信する(S113)。サーバ6の通知部94は、施設端末装置8からの配信要求に応じて、記憶部90に記憶された対応情報から配信先である施設端末装置8に対応する使用者14の歩行能力指標データのデータ種別を選択し、選択した歩行能力指標データのデータ種別を通信部84に出力する。これにより、サーバ6の通信部84は、通知部94によりデータ種別が選択された歩行能力指標データを、ネットワーク12を介して施設端末装置8に配信する(S114)。
【0102】
施設端末装置8の通信部98は、サーバ6から送信されてきた歩行能力指標データを受信する(S115)。これにより、施設端末装置8の表示部108には、受信された歩行能力指標データに基づいて、利用者一覧画面110が表示される(S116)。
【0103】
施設端末装置8の受付部100は、身体能力指標データの入力を受け付ける(S117)。施設端末装置8の生成部104は、記憶部102に記憶された歩行能力指標データ及び身体能力指標データに基づいて、評価データを生成する(S118)。この生成された評価データに基づいて、例えば図10に示すような帳票112が施設端末装置8から電子データ又は紙媒体として出力される(S119)。
【0104】
上述したように、本実施の形態の配信システム2では、サーバ6のデータ加工部88は、歩行関連データに含まれる腕振り時間データに基づいて、使用者14の歩行周期に関する歩行周期データを取得する。データ加工部88は、取得した歩行周期データにより示される1歩行周期の1/2歩行周期における歩行距離を歩幅として算出する。現在の歩幅が過去の歩幅よりも大きくなると、歩行能力が改善したと推定されるので、算出した歩幅に基づいて、使用者14の歩行能力の改善の度合いを精度良く判定することができる。また、歩行器4を用いた歩行訓練により取得された歩行関連データを利用して、歩幅を効率良く算出することができる。
【0105】
なお、本実施の形態では、サーバ6は、歩行能力指標データを施設端末装置8及び使用者端末装置10に配信するようにしたが、これに限定されず、例えば使用者14の家族により使用される家族端末装置122(外部端末の一例)(図15参照)に配信してもよい。家族端末装置122は、例えばスマートフォン又はタブレット等で構成され、ネットワーク12を介してサーバ6と通信可能である。家族端末装置122には、配信システム2を利用するための専用のアプリケーションソフトウェアがインストールされている。この場合、図15に示すように、家族端末装置122の表示部124には、歩行能力指標データを示す通知画面126が表示される。通知画面126には、使用者14の歩行能力の指標として、例えばa)平均歩行距離、b)平均歩行速度、c)平均歩幅、並びに、d)歩行速度及び心拍数の時間的変化等が表示される。これにより、使用者14の家族は、通知画面126を見ることにより、使用者14の歩行能力を把握することができる。
【0106】
また、家族端末装置122は、ネットワーク12を介して歩行器4と通信可能であってもよい。この場合、家族端末装置122は、使用者14に対するメッセージ(例えば「目標達成おめでとう」等のメッセージ)を示すメッセージデータを、ネットワーク12を介して歩行器4に送信する。歩行器4の通信部82は、家族端末装置122から送信されたメッセージデータを受信し、歩行器4の表示パネル76は、受信されたメッセージデータを表示する。使用者14は、表示パネル76に表示されたメッセージを見ることにより、歩行訓練に対するモチベーションをより一層高めることができる。
【0107】
(実施の形態2)
次に、図16及び図17を参照しながら、実施の形態2に係るサーバ6Aについて説明する。図16は、実施の形態2に係るサーバ6Aの機能構成を示すブロック図である。図17は、実施の形態2に係る歩行速度データの一例を示す図である。なお、本実施の形態において、上記実施の形態1と同一の構成には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0108】
図16に示すように、本実施の形態のサーバ6Aでは、データ加工部88Aによる歩幅の算出方法が上記実施の形態1と異なっている。なお、本実施の形態では、使用者14(図1参照)は、歩行器4(図1参照)を用いて、腕振り動作を伴わない歩行訓練を行うものとする。あるいは、使用者14は、一対の持ち手26R,26Lが設けられていないタイプの歩行器(図示せず)を用いて、歩行訓練を行ってもよい。
【0109】
データ加工部88Aは、取得部86により取得された歩行関連データに含まれる歩行速度データの波形の変化に基づいて、歩行周期データを取得する。ここで、歩行速度データは、例えば図17に示すように、使用者14が歩行器4を用いて歩行した速度の時間的変化を示す波形である。図17に示す歩行速度データにおいて、波形の隣り合う2つの極小値(極値の一例)の間の時間a(sec)は、1歩行周期の1/2周期であると推定される。そのため、データ加工部88Aは、歩行速度データの波形の隣り合う2つの極小値の間の時間a(sec)の2倍の時間を1歩行周期とする歩行周期データを取得する。なお、データ加工部88Aは、歩行速度データの波形の隣り合う2つの極大値(極値の一例)の間の時間の2倍の時間を1歩行周期とする歩行周期データを取得してもよい。
【0110】
データ加工部88Aは、時間a(sec)(=1歩行周期の1/2周期)に、歩行速度データにより示される速度b(m/min)を乗じることにより歩幅を算出する。なお、速度b(m/min)は、例えば回転センサ40R,40Lによりそれぞれ検出された後輪24R,24Lの回転速度から取得されてもよい。
【0111】
したがって、本実施の形態では、例えば使用者14が腕振り動作を伴わない歩行訓練を行う場合等であっても、歩幅を算出することができる。
【0112】
(変形例等)
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本発明の実施の形態としてもよい。また、上記各実施の形態に対して本発明の主旨、すなわち、特許請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思い付く各種変形を施して得られる変形例も本発明に含まれる。
【0113】
上記各実施の形態では、歩行器4からの歩行関連データ等を、使用者端末装置10を介してサーバ6(6A)に転送するようにしたが、これに限定されない。例えば、サーバ6(6A)の取得部86は、例えばSD(Secure Digital)カード等の記録媒体を介して、歩行器4からの歩行関連データ等を取得してもよい。
【0114】
上記各実施の形態では、サーバ6(6A)のデータ加工部88(88A)により歩幅を算出したが、これに限定されず、歩行器4又は使用者端末装置10等で歩幅を算出してもよい。
【0115】
上記各実施の形態では、歩行器4は、使用者端末装置10と無線通信するようにしたが、これに限定されず、歩行器4がネットワーク12を介してサーバ6(6A)と通信可能であるとしてもよい。この場合、歩行器4の通信部82は、ネットワーク12を介して、歩行関連データをサーバ6(6A)に送信し、サーバ6(6A)の通信部84は、ネットワーク12を介して、歩行能力指標データを歩行器4に配信する。歩行器4の通信部82は、サーバ6(6A)から配信された歩行能力指標データを受信し、歩行器4の表示パネル76は、受信された歩行能力指標データに基づくグラフィカルデータを示す通知画面120(図13参照)を表示する。なお、歩行器4の通信部82は、ネットワーク12の通信状況(例えば通信エラーの発生の有無等)に基づいて、歩行関連データの通信方式(例えば通信速度等)を適宜変更してもよい。
【0116】
上記各実施の形態では、歩行器4の制御部78は、歩行関連データを取得するようにしたが、歩行関連データに加えて、歩行器4の動作状態に関する動作状態データ、及び、歩行器4の使用環境に関する使用環境データの少なくとも一方を取得するようにしてもよい。動作状態データは、例えば歩行器4の温度、バッテリ32の充電状況、及び、歩行器4の動作異常等に関するデータである。使用環境データは、歩行器4の周囲の気温、湿度、天候及び地面の傾斜角度等に関するデータである。例えば、歩行器4からの動作状態データがサーバ6に送信されることにより、管理会社16において歩行器4のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0117】
上記実施の形態2では、歩行速度データの波形の隣り合う2つの極小値の間の時間a(sec)に歩行速度データにより示される速度b(m/min)を乗じることにより歩幅を算出したが、これに限定されない。例えば、歩行速度データの波形の隣り合う2つの極小値(又は2つの極大値)の間を積分することにより、歩幅を算出してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、例えば使用者の歩行訓練を支援するための歩幅算出システム等に適用可能である。
【符号の説明】
【0119】
2:配信システム、4:歩行器、6,6A:サーバ、8:施設端末装置、10:使用者端末装置、12:ネットワーク、14:使用者、16:管理装置、18:介護施設、20:フレーム、22R,22L:前輪、24R,24L:後輪、26R,26L:持ち手、28:操作パネル、30:コントロールボックス、32:バッテリ、34:本体部、36R,36L:脚部、38R,38L:腕部、40R,40L,64:回転センサ、42R,42L:スリット、44R,44L:駆動ベルト、46R,46L,58:電動モータ、48R,48L:移動機構、50:心拍数センサ、52R,52L:ブレーキレバー、54:駆動プーリ、56:従動プーリ、60:ワイヤ、62:スライダ、66:ワイヤ固定部、68:ワイヤ孔、70:信号ケーブル、72:電源スイッチ、74:モード切替スイッチ、76:表示パネル、78:制御部、80,90,102:記憶部、82,84,98,114:通信部、86:取得部、88,88A:データ加工部、92:判定部、94:通知部、96:歩行能力指標データ、100:受付部、104:生成部、106,116:表示制御部、108,118,124:表示部、110:利用者一覧画面、112:帳票、120,126:通知画面、122:家族端末装置
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