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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 7/18 20060101AFI20230523BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20230523BHJP
   B60W 10/18 20120101ALI20230523BHJP
   B60W 20/14 20160101ALI20230523BHJP
【FI】
B60L7/18 ZHV
B60W10/08 900
B60W10/18 900
B60W20/14
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018222182
(22)【出願日】2018-11-28
(65)【公開番号】P2020089123
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-09-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧野 和輝
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-007442(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0043896(US,A1)
【文献】特開平11-115545(JP,A)
【文献】特開2007-269095(JP,A)
【文献】特開2003-250202(JP,A)
【文献】特開2016-034818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 7/18
B60W 10/08
B60W 10/18
B60W 20/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ回生力による制動力を得る車両の車両制御装置であって、
アクセル開度の情報を取得するアクセル開度取得部と、
第1の走行モードでの走行の際には、アクセルオフ操作時間が所定時間以下であるときに回生制動力を上昇させるタイミングであると判定し、第2の走行モードでの走行の際には、アクセルオフ操作時間が所定時間以下であるという条件のみでは、回生制動力を上昇させるタイミングとは判定しない判定処理部と、
前記判定処理部により回生制動力を上昇させるタイミングと判定されることに応じてモータ回生力を上昇させる制御を行う回生制御部と、
加速度の情報を取得する加速度取得部と、を備え、
前記第2の走行モードは、前記第1の走行モードよりもアクセル開度に対する加速応答性を高めた走行モードであり、
前記判定処理部は、
前記第1の走行モードでの走行の際には、アクセル開度が第1閾値以上から第2閾値以下に至るまでのアクセルオフ操作時間が第1の所定時間以下であるときに回生制動力を上昇させるタイミングであると判定し、
前記第2の走行モードでの走行の際には、加速度が所定値以上である状態で、アクセル開度が第3閾値以上から第4閾値以下に至った場合のアクセルオフ操作時間が第2の所定時間以下であるときに回生制動力を上昇させるタイミングであると判定する
車両制御装置。
【請求項2】
記第3閾値は、前記第1閾値以上のアクセル開度に相当する値である
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
記第4閾値は、前記第2閾値以下のアクセル開度に相当する値である
請求項1から請求項の何れかに記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回生による制動力の制御を行う車両制御装置についての技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車や電気自動車などの車両では、主要な制動力としてモータ回生力による回生ブレーキが用いられている。例えば運転者によりブレーキペダルが踏まれた場合、モータ回生による制動力を生じさせることと、ブレーキパッドによる制動力を発生させることが併用される。
【0003】
なお下記特許文献1にはアクセルペダルの戻し(アクセル開度を下げること。アクセルオフともいう)の速度が大きい場合、つまり運転者が素早くアクセルオフ操作した場合には、ブレーキペダルが踏まれる前に、大きな回生制動力を発生させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-37407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アクセルオン(アクセルペダルを踏み込んでいる状態)で或る程度の車速で走行しているときにアクセルを離すと、エンジンブレーキまたは回生ブレーキによる減速力が発生する。このとき、続けてブレーキペダルを踏むと回生ブレーキ(またはブレーキパッド)による更なる減速力が発生する。
このアクセルオン→アクセルオフ→ブレーキオンとする流れは通常走行ではよく見られる操作だが、状況(例えば前方に歩行者や障害物がある状況等)によっては一刻も早く強い減速力を発生させなければならない場合もある。これを考慮すると、アクセルオフにより、ブレーキペダルが踏まれる前に回生ブレーキ力を発生させることは1つの好適な制動制御の手法となる。
一方で、スポーティな走行のためのアクセルワークとして運転者が頻繁且つ機敏なアクセルペダルのオン/オフを行う場合もある。そのような場合、アクセルペダルを離すのみで強い制動がかかってしまうことは、運転者が望まない制動となり違和感を与え、ドライバビリティの低下を感じさせることにもなる。
【0006】
そこで本発明では、走行のための運転者のアクセル操作に適した状態で回生ブレーキ制御が行われるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両制御装置は、モータ回生力による制動力を得る車両の車両制御装置であって、アクセル開度の情報を取得するアクセル開度取得部と、第1の走行モードでの走行の際には、アクセルオフ操作時間が所定時間以下であるときに回生制動力を上昇させるタイミングであると判定し、第2の走行モードでの走行の際には、アクセルオフ操作時間が所定時間以下であるという条件のみでは、回生制動力を上昇させるタイミングとは判定しない判定処理部と、前記判定処理部により回生制動力を上昇させるタイミングと判定されることに応じてモータ回生力を上昇させる制御を行う回生制御部と、を備える。
即ち第1の走行モードによる走行時と、第2の走行モードによる走行時とで、制動力を得るためのモータ回生力を上昇させるタイミングの判定手法が異なるようにする。
なお「アクセルオフ」とは運転者がアクセルペダルを戻すこと、即ちアクセル開度を下げることをいう。従って「アクセルオフ操作時間」とは、運転者が踏んでいたアクセルペダルを戻してアクセル開度を下げる操作に要する時間のことである。
【0008】
上記した車両制御装置においては、加速度の情報を取得する加速度取得部を備え、前記判定処理部は、前記第1の走行モードでの走行の際には、アクセル開度が第1閾値以上から第2閾値以下に至るまでのアクセルオフ操作時間が第1の所定時間以下であるときに回生制動力を上昇させるタイミングであると判定し、前記第2の走行モードでの走行の際には、加速度が所定値以上である状態で、アクセル開度が第3閾値以上から第4閾値以下に至った場合のアクセルオフ操作時間が第2の所定時間以下であるときに回生制動力を上昇させるタイミングであると判定することが考えられる。
即ち第2の走行モードによる走行時は、アクセルオフに要した時間の条件だけでなく加速度の条件も加えてモータ回生力を上昇させるタイミングを判定する。
【0009】
上記した車両制御装置においては、前記第2の走行モードは、前記第1の走行モードよりもアクセル開度に対する加速応答性を高めた走行モードであることが考えられる。
アクセルペダル操作に対する加速度の応答性を高めるモードとは、スポーツ走行としてのドライバビリティを高めるモードである。
【0010】
上記した車両制御装置においては、前記第3の閾値は、前記第1の閾値以上のアクセル開度に相当する値であることが考えられる。
例えば第1の走行モードでアクセル開度を比較する第1の閾値を80%としたとき、第2の走行モードでアクセル開度を比較する第3の閾値は同じ80%であったり、或いはより高い90%などのように設定する。
【0011】
上記した車両制御装置においては、前記第4の閾値は、前記第2の閾値以下のアクセル開度に相当する値であることが考えられる。
例えば第1の走行モードでアクセル開度を比較する第2の閾値を20%としたとき、第2の走行モードでアクセル開度を比較する第4の閾値は同じ20%であったり、或いはより低い10%などのように設定する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1,第2の走行モードに応じて適切なブレーキ制御が行われる。例えば第1の走行モードでは、素早いアクセルオフに応じて回生制動力を上昇させることで停止を優先するが、機敏なアクセル操作を行うことを想定した第2の走行モードでは、素早いアクセルオフのみに応じては回生制動力を上昇させないことで、ドライバビリティを損なわないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態の車両制御装置を有する車両制御システムのブロック図である。
図2】実施の形態の車両制御装置であるハイブリッド制御ユニットの機能構成の説明図である。
図3】実施の形態の回生一時アップ処理のフローチャートである。
図4】実施の形態の回生一時アップ処理のフローチャートである。
図5】実施の形態のノーマルモードでの回生一時アップの説明図である。
図6】実施の形態のアクセルオフに応じた回生指示の説明図である。
図7】実施の形態のスポーツモードでの回生一時アップの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<車両制御システムの構成>
図1はハイブリッド車両としての車両に搭載される車両制御システム1の要部を示している。実施の形態では、例えばハイブリッド制御ユニット2が本発明の車両制御装置として機能する例を挙げる。
なお車両をハイブリッド車両で説明するのは一例であり、本発明の車両制御装置は電気自動車など他の車両でも搭載されることが想定される。
また実施の形態ではハイブリッド制御ユニット2が本発明の車両制御装置として機能するのも一例で、図示或いは不図示の他の制御ユニットが本発明の車両制御装置として機能するものとしてもよい。
【0015】
車両制御システム1は、ハイブリッド制御ユニット2、操舵制御ユニット4、エンジン制御ユニット5、ブレーキ制御ユニット6、トランスミッション制御ユニット7が、バス8により相互に通信可能に接続されている。
例えばこれらハイブリッド制御ユニット2、操舵制御ユニット4、エンジン制御ユニット5、ブレーキ制御ユニット6、トランスミッション制御ユニット7は、それぞれCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリ等を有するマイクロコンピュータを備えて構成され、互いがバス10を介してCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)等による通信プロトコルでデータ通信が可能とされている。
【0016】
操舵制御ユニット4は、不図示の操舵アクチュエータ(例えばパワーステアリングモータ等、操舵角を変更可能に設けられたアクチュエータ)の駆動制御を行い、操舵角の制御を行う。
【0017】
エンジン制御ユニット5は、車両に設けられた所定のセンサからの検出信号や操作子による操作入力情報等に基づき、エンジン関連アクチュエータ17として設けられた各種アクチュエータを制御する。エンジン関連アクチュエータとしては、例えばスロットル弁を駆動するスロットルアクチュエータや燃料噴射を行うインジェクタ等のエンジン駆動に係る各種のアクチュエータが設けられる。
エンジン制御ユニット5は、車両100に設けられたイグニッションスイッチ等の所定操作子の操作や、自動運転制御部3からの指示等に応じてエンジンの始動/停止制御を行う。
【0018】
このエンジン制御ユニット5には、車両の走行速度を車速として検出する車速センサ10、エンジンの回転数を検出するエンジン回転数センサ11、アクセルペダルの踏み込み量をアクセル開度として検出するアクセル開度センサ12、スロットルバルブの開度をスロットル開度として検出するスロットル開度センサ13、車両の加速度を検出する加速度センサ14等、エンジン制御に関連する各種のセンサが接続されており、エンジン制御ユニット5はエンジンの運転制御にあたってこれらセンサによる検出値を用いる。
また、エンジン制御ユニット5は、上記各種センサによる検出値を必要に応じてハイブリッド制御ユニット2等の所要の制御ユニットにバス8を介して送信する。
【0019】
またエンジン制御ユニット5にはモード操作部22の操作情報が入力される。モード操作部22は運転者が走行モードを指定する操作子として示しているが、その操作情報は直接もしくは不図示の操作検知ユニット等を介して間接的に、エンジン制御ユニット5に供給される。
走行モードとしては、通常モードとスポーツモードが選択可能であるとする。
通常モードは、例えば燃費優先の走行を行う場合に適した走行モードであり、スポーツモードは例えば走行性(スポーツ走行としてのドライバビリティ)を重視した走行モードである。エンジン制御ユニット5は、例えば通常モードとスポーツモードでは、アクセルペダル操作に対する加速度の応答性が異なるように制御することになる。つまりスポーツモードのときの方が通常モードのときよりも、同じアクセル開度に対する加速度が大きくなるようにする。
なお、走行モードの情報は、例えばエンジン制御ユニット5或いは不図示の操作検知ユニット等から、バス8を介してハイブリッド制御ユニット2にも送信される。
【0020】
ブレーキ制御ユニット6は、車両に設けられた所定のセンサからの検出信号や操作子による操作入力情報等に基づき、ブレーキ関連アクチュエータ16として設けられた各種のアクチュエータを制御する。ブレーキ関連アクチュエータとしては、例えば、ブレーキブースターからマスターシリンダへの出力液圧やブレーキ液配管内の液圧をコントロールするための液圧制御アクチュエータ等、ブレーキ関連の各種のアクチュエータが設けられる。
ブレーキ制御ユニット6は、所定のセンサ(例えば車軸の回転速度センサや車速センサ)の検出情報から車輪のスリップ率を計算し、スリップ率に応じて上記の液圧制御アクチュエータにより液圧を加減圧させることで、所謂ABS(Antilock Brake System)制御を実現する。またブレーキ制御ユニット6は、自動運転制御部3からの指示に基づき、上記の液圧制御アクチュエータを制御してブレーキのON/OFF等を制御する。
またブレーキ制御ユニット16はブレーキペダルに対する踏力を検出する踏力センサ15の検出情報(踏力値)を入力する。ブレーキ制御ユニット16は、ブレーキペダル操作を検知した場合、回生ブレーキ制御が行われるように、バス8を介して回生要求をハイブリッド制御ユニット2に送信する。
【0021】
トランスミッション制御ユニット7は、車両に設けられた所定のセンサからの検出信号や操作子による操作入力情報等に基づき、トランスミッション関連アクチュエータ(不図示)として設けられた各種のアクチュエータを制御する。トランスミッション関連アクチュエータとしては、例えば車両が有する自動変速機の変速制御を行うための変速用アクチュエータや、前後進切替機構の動作を制御するための前後進切替用アクチュエータ等が設けられる。
【0022】
ハイブリッド制御ユニット2は、運転者の操作入力やエンジン制御ユニット5から受信されるアクセル開度等の車両情報を表す値に基づき、エンジン制御ユニット5、モータ制御部20、充電制御部21に対する指示を行って車両の動作をコントロールする。
モータ制御部20は、ハイブリッド制御ユニット2からの指示に基づき、車両に設けられた走行用のモータ・ジェネレータについての駆動制御を行う。
充電制御部21は、ハイブリッド制御ユニット2からの指示に基づき、車両に上記モータ・ジェネレータの電源として設けられた走行用バッテリの充電制御を行う。本例において、充電制御部21は、モータ・ジェネレータが回生回転により発電した電力に基づき走行用バッテリを充電させる制御を行う。
【0023】
ハイブリッド制御ユニット2は、エンジン制御ユニット5から受信したアクセル開度値に基づき、運転者によるアクセル操作量に応じた要求トルクT(車輪に出力すべきトルク)を計算し、要求トルクTに対応する要求駆動力により車両を走行させるためのエンジン、回転電機の動作制御をエンジン制御ユニット3、回転電機制御部20に実行させる。また、走行用バッテリのSOC(State Of Charge:充電率)に基づき、充電制御部21に走行用バッテリを充電させる制御を実行させる。
ハイブリッド制御ユニット2は車両状態によりEV(Electric Vehicle)走行とハイブリッド走行を切り替えるが、EV走行時においてハイブリッド制御ユニット2は、アクセル開度値に基づき計算した要求トルクTに基づきモータ・ジェネレータに要求されるトルク(「要求トルクTb」と表記)を計算し、該要求トルクTbをモータ制御部20に指示してモータ・ジェネレータの動作を制御する。
また、ハイブリッド走行時においてハイブリッド制御ユニット2は、要求トルクTに基づきエンジンに要求されるトルク(「要求トルクTe」と表記)とモータ・ジェネレータの要求トルクTbとを計算し、要求トルクTeをエンジン制御ユニット3に、要求トルクTbをモータ制御部20にそれぞれ指示してエンジン、モータ・ジェネレータの動作を制御する。
【0024】
またハイブリッド制御ユニット2は、モータ制御部20に回生制動に関する指示を行い、モータ・ジェネレータにおける回生力を用いた制動を実行させる。
ハイブリッド制御ユニット2にはブレーキ制御ユニット16からブレーキペダル操作に応じた回生要求が供給され、またエンジン制御ユニット5からアクセル開度や加速度の値が供給される。ハイブリッド制御ユニット2は、ブレーキ制御ユニット16からの回生要求を受信した場合は、ブレーキ制御としてモータ制御部20に回生指示を行い、回生ブレーキが機能するようにする。
またハイブリッド制御ユニット2は、アクセルオフを検知した場合も、モータ制御部20に指示して通常の回生ブレーキを機能させる。
またハイブリッド制御ユニット2は、特にアクセルのオフの操作時間に応じて、回生ブレーキによる制動力を一時的にアップさせる場合がある。この制御については後述するが、説明上、このような制御を「回生一時アップ」と表記する。
【0025】
<機能構成>
以上の車両制御システム1において、ハイブリッド制御ユニット2がモータ・ジェネレータの回生ブレーキに関する制御を行うことになるが、特に上記の「回生一時アップ」の制御のために、ハイブリッド制御ユニット2は図2のような機能構成を備えることになる。
図2に示すように、マイクロコンピュータとしてのハイブリッド制御ユニット2には例えばソフトウェアにより実現される機能として、アクセル開度取得部2a、加速度取得部2b、判定処理部2c、回生制御部2d、フリーランタイマ2e、設定記憶部2fが設けられる。
【0026】
アクセル開度取得部2aはエンジン制御ユニット5から送信されてくるアクセル開度の情報(アクセル開度値)を逐次取得する機能である。
加速度取得部2bは、同じくエンジン制御ユニット5から送信されてくる加速度の情報(加速度センサ14による現在の加速度の値)を逐次取得する機能である。なお、ハイブリッド制御ユニット2内に加速度センサを設ける場合、加速度取得部2bは、その加速度センサの検出値を取得すればよい。
【0027】
判定処理部2cは、取得したアクセル開度の値から認識できるアクセルオフの際に、回生一時アップとして回生制動力を上昇させるタイミングであるか否かを判定する機能である。例えば走行モードが通常モードとされている場合は、判定処理部2cは、アクセルオフ操作時間が所定時間以下であるときに回生制動力を上昇させるタイミングである判定するが、走行モードがスポーツモードであるときは、アクセルオフ操作時間が所定時間以下であるという条件のみでは、回生制動力を上昇させるタイミングとは判定しない判定処理を行う。
より具体的には、判定処理部2cは、通常モードでの走行の際には、アクセル開度が第1閾値(X1[%])以上から第2閾値(X2[%])以下に至るまでのアクセルオフ操作時間が第1の所定時間(th1)以下であるときに回生制動力を上昇させるタイミングであると判定する。
またスポーツモードでの走行の際には、加速度が所定値(Y[m/s2])以上である状態で、アクセル開度が第3閾値(X3[%])以上から第4閾値(X4[%])以下に至った場合のアクセルオフ操作時間が第2の所定時間(th2)以下であるときに回生制動力を上昇させるタイミングであると判定する。
【0028】
回生制御部2dは、判定処理部2cにより回生制動力を上昇させるタイミングと判定されることに応じてモータ回生力を上昇させるようにモータ制御部20に対する制御を行う機能である。即ち回生一時アップを指示する機能である。
【0029】
フリーランタイマ2eはハイブリッド制御ユニット2内でソフトウェア又はハードウエアにより設けられるタイマである。特には、アクセルオフ操作時間を判定するために用いられる。
フリーランタイマ2eは判定処理部2cの判定状況によりカウント値がリセットされ、リセットにより新たにカウントがスタートされる。
【0030】
設定記憶部2fは、回生一時アップ制御のための各種の設定値の読み出しや記憶(更新)を行う機能である。例えば上記の第1閾値X1、第2閾値X2、第3閾値X3、第4閾値X4(以下、それぞれ「閾値X1」「閾値X2」「閾値X3」「閾値X4」と表記する)、第1の所定時間th1、第2の所定時間th2(以下、それぞれ「所定時間th1」「所定時間th2」と表記する)、加速度の所定値Y(以下、単に「所定値Y」と表記する)を、例えば不揮発性記憶部或いはROMから読み出したり記憶したりする処理を行う。
また設定記憶部2fは、回生一時アップの際の回生ブレーキ力を示す設定値を不揮発性記憶部或いはROMから読み出したり記憶したりする処理を行う。
【0031】
<回生一時アップ処理>
以上の機能を備えたハイブリッド制御ユニット2が行う回生一時アップ制御としての処理例を図3図4に示す。
なお図3のステップS101からは「C1」で示すように図4のステップS110に続く場合がある。ハイブリッド制御ユニット2は、少なくとも走行中は、この図3図4の処理を継続的に繰り返して実行する。
特に図3図4は処理の終了のタイミングを示していないが、この処理は車両の停止の度に一旦終了され、走行開始によりステップS101から再開されてもよい。或いはシステムオン状態では常に継続して実行され、システムオフの際に終了されることも考えられる。或いはシフトレンジがパーキングポジションになったときに一旦終了されるようなことも考えられる。いずれにしても走行中に処理が実行されている状態であればよい。
【0032】
図3のステップS101では、ハイブリッド制御ユニット2は現在の走行モードにより処理を分岐する。通常モードの場合はステップS102に進み、スポーツモードの場合は図4のステップS110に進む。
【0033】
まず通常モードの場合を説明する。
ステップS102でハイブリッド制御ユニット2は、現在のアクセル開度が閾値X1以上であるか否かを判定する。閾値X1は、例えば80%などとし、つまり運転者が比較的大きい加速を求めるアクセル操作を行っている場合を判定できる値とする。
【0034】
現在のアクセル開度が閾値X1以上であった場合は、ハイブリッド制御ユニット2はステップS103に進み、フリーランタイマ2eをリセットし、ステップS102に戻る。
フリーランタイマ2eはこのタイミングから経過時間の計数を行うことになる。
但し運転者がアクセルペダルを閾値X1以上のアクセル開度に踏み込んでいる状態では、常時ステップS103に進むことになるため、フリーランタイマ2eはリセットされ続けることとなる。
【0035】
現在のアクセル開度が閾値X1以上ではない場合は、ハイブリッド制御ユニット2はステップS104に進み、現在のアクセル開度が閾値X2以下であるか否かを判定する。閾値X2は、例えば20%などとし、運転者が通常にアクセルオフ操作を行ったことを判定できる値とする。
アクセルペダルが緩められても、閾値X2以下のアクセルオフとは判定されない場合は、ハイブリッド制御ユニット2の処理はステップS102に戻る。例えばアクセル開度が20%から80%の間であることが継続されている場合、フリーランタイマ2eのカウント値は上昇していくことになる。
【0036】
ステップS104でアクセル開度が閾値X2以下となっていることを検知したら、ハイブリッド制御ユニット2はステップS105に進み、この時点でのフリーランタイマ2eのカウント値を例えばRAMのワーク領域に一時保存する。
このカウント値は、アクセル開度が閾値X1以上にある状態から閾値X2以下になった時点までの経過時間を表すことになる。
【0037】
ステップS106でハイブリッド制御ユニット2は、一時保存したカウント値が所定時間th1以下の時間であるか否かを判定する。
そしてハイブリッド制御ユニット2は、一時保存したカウント値が所定時間th1以下の時間でなければステップS102に戻るが、所定時間th1以下の時間であったら、ステップS107で設定値による回生ブレーキ力を一時的に与える回生一時アップ制御を実行する。即ち、設定値として記憶されている回生ブレーキ力が、アクセルオフの瞬間に生じるようにモータ制御部20に指示する。
そしてハイブリッド制御ユニット2はステップS102に戻り、処理を続行する。
【0038】
ここまでのノーマルモード時の処理により実現される動作を図5で説明する。
図5は横軸を時間軸とし、アクセル開度の変化、フリーランタイマ2eのカウント値、及び回生一時アップの制御タイミングの例を示している。
【0039】
運転者は時点t0からアクセルペダルを踏み込み、時点t1でアクセル開度が閾値X1に達したとする。
この間、フリーランタイマ2eはカウント値TC1まで計数が進んでいくが、時点t1でステップS103に進むためリセットされる。
時点t1-t2間は、アクセル開度が閾値X1以上である状態が継続しており、フリーランタイマ2eはリセットされ続ける。
【0040】
運転者がアクセルペダルを若干緩めたとする。
この場合、時点t2でアクセル開度が閾値X1未満となることで、フリーランタイマ2eの計数はカウント値TC2まで上昇していくが、時点t3で再びアクセル開度が閾値X1以上となることでリセットされる。この時点t2-t3間は、運転者はブレーキをかける意思が無い状態であると推定でき、アクセルを緩めたとしても回生一時アップ制御は行わない。
【0041】
時点t3-t4間は、運転者が再びアクセルペダルを踏み込むことで、アクセル開度が閾値X1以上である状態が継続しており、フリーランタイマ2eはリセットされ続ける。
【0042】
その後、運転者がアクセルペダルを緩める操作を行ったとする。
時点t4でアクセル開度が閾値X1未満となり、その後時点t5でアクセル開度が閾値X2以下になったとする。
この場合、ステップS105の処理でカウント値TC3が一時保存され、ステップS106で所定時間th1と比較される。
しかしこの場合、カウント値TC3は所定時間th1より大きいので、回生一時アップ制御が行われない。これは、運転者が比較的ゆっくりアクセルペダルのオフ操作を行った場合であり、急停車の意思はないと推定できるため、無用な回生一時アップ制御を行わないということになる。
【0043】
なお、このようなアクセルオフ操作に応じた通常の回生ブレーキ(或いはエンジンブレーキ)は別途の処理でかけられている。回生一時アップ制御とは、通常の回生ブレーキ力よりも高い制動力を発揮させるようにする制御である。
【0044】
その後、運転者がアクセルペダルを踏み込んだとする。
フリーランタイマ2eの計数は進んでいるため例えば時点t6でカウント値TC4となるが、このときアクセル開度が閾値X1以上となることでリセットされる。時点t7までアクセル開度が閾値X1以上であると、フリーランタイマ2eはリセットされ続ける。
【0045】
運転者が急にアクセルオフ操作を行ったとする。
この場合、時点t7でアクセル開度が閾値X1未満となり、さらに時点t8でアクセル開度が閾値X2以下となったとする。
この場合、フリーランタイマ2eは時点t7までリセットが繰り返されているので、時点t7から時点t8までの経過時間を示すカウント値TC5が、ステップS105の処理で一時保存される。そしてステップS106で所定時間th1と比較される。
この場合、カウント値TC3は所定時間th1以下であるので、図示のようにアクセルオフ操作が検知された時点t8に回生一時アップ制御が行われる(S107)。
これは、運転者が素早くアクセルペダルのオフ操作を行った場合であるため、急停車の意思と推定し、ブレーキペダルを踏む前の時点で回生一時アップ制御を行って制動力を高めるということになる。
【0046】
アクセルオフ操作に続いてブレーキペダルを踏んだ場合の動作の違いを図6A図6Bに示す。図6A図6Bでは、横軸が時間軸で、アクセル開度、ブレーキ踏力、ブレーキ制御ユニット16からのハイブリッド制御ユニット2への回生要求、ハイブリッド制御ユニット2がモータ制御部20へ指示するモータ・ジェネレータの回生力を示している。
【0047】
図6Aは回生一時アップ制御が行われない場合である。例えば図5の時点t4から時点t6のような場合の例である。
図6Aでは時点t20からt21の間に、比較的ゆっくりアクセルオフ操作が行われ、またブレーキペダルが時点t22から踏み込まれたとする。ブレーキペダル操作に応じてブレーキ制御ユニット16からの回生要求が時点t22からハイブリッド制御ユニット2に送信される。
これに応じてハイブリッド制御ユニット2がモータ制御部20は時点t22から回生力を指示し、モータ・ジェネレータにおける回生制動力が発揮される。
つまり図のようにブレーキペダル操作に応じた回生ブレーキがかけられることになる。
なお時点t23以降はブレーキペダルが強く踏み込まれていることに応じて、最大の回生ブレーキ力が指示されている。
【0048】
図6Bは回生一時アップ制御が行われる場合である。例えば図5の時点t7から時点t8のような場合の例である。
図6Bでは時点t30に素早くアクセルオフ操作が行われ、その後時点t31からブレーキペダルが踏み込まれたとする。ブレーキペダル操作に応じてブレーキ制御ユニット16からの回生要求が時点t22からハイブリッド制御ユニット2に送信される。
但し、回生一時アップ制御として、時点t30のアクセルオフのタイミングでハイブリッド制御ユニット2がモータ制御部20に回生力を指示し、モータ・ジェネレータにおける回生制動力が発揮されるようにしている。
つまり図のようにブレーキペダル操作される前の時点で回生ブレーキがかけられることになる。
時点t22以降は、実際にブレーキペダルによる回生要求が受信されることに応じて、最大の回生ブレーキ力が指示されている。
【0049】
続いて、スポーツモードの走行時の処理を説明する。
スポーツモードの場合はハイブリッド制御ユニット2の処理は図4のステップS110に進む。
ステップS110でハイブリッド制御ユニット2は、現在のアクセル開度が閾値X3以上であり、かつ現在の加速度が所定値Y以上であるか否かを判定する。
閾値X3は、閾値X1以上であることが好適である。例えば閾値X3=閾値X1=80としてもよいし、閾値X3=90%としてもよい。
いずれにしても閾値X3も、運転者が比較的大きい加速を求めるアクセル操作を行っている場合を判定できる値に設定する。
【0050】
現在のアクセル開度が閾値X3以上でかつ現在の加速度が所定値Y以上であった場合は、ハイブリッド制御ユニット2はステップS111に進み、フリーランタイマ2eをリセットし、ステップS110に戻る。
【0051】
現在のアクセル開度が閾値X3以上ではない場合、或いは現在の加速度が所定値Y以上ではない場合は、ハイブリッド制御ユニット2はステップS114に進み、現在のアクセル開度が閾値X4以下であるか否かを判定する。
閾値X4は、閾値X2以下であることが好適である。例えば閾値X4=閾値X2=20%としてもよいし、閾値X4=10%としてもよい。
いずれにしても閾値X4は、運転者がアクセルオフ操作を行ったことを判定できる値とする。
【0052】
アクセルペダルが緩められても、閾値X4以下のアクセルオフとは判定されない場合は、ハイブリッド制御ユニット2の処理はステップS110に戻る。例えばアクセル開度が閾値X4(10%)から閾値X3(90%)の間であることが継続されている場合、フリーランタイマ2eのカウント値は上昇していくことになる。
【0053】
ステップS112でアクセル開度が閾値X4以下となっていることを検知したら、ハイブリッド制御ユニット2はステップS113に進み、この時点でのフリーランタイマ2eのカウント値を例えばRAMのワーク領域に一時保存する。
このカウント値は、アクセル開度が閾値X3以上で、かつ加速度が所定値Y以上である状態から、アクセル開度が閾値X4以下になった時点までの経過時間を表すことになる。
【0054】
ステップS114でハイブリッド制御ユニット2は、一時保存したカウント値が所定時間th2以下の時間であるか否かを判定する。
所定時間th2は、所定時間th1と同じでもよいし、より素早いアクセルオフ時間を判定するためにth2<th1としてもよい。
【0055】
そしてハイブリッド制御ユニット2は、一時保存したカウント値が所定時間th2以下の時間でなければステップS110に戻るが、所定時間th2以下の時間であったら、ステップS115で設定値による回生ブレーキ力を一時的に与える回生一時アップ制御を実行する。即ち、設定値として記憶されている回生ブレーキ力が、アクセルオフの瞬間に生じるようにモータ制御部20に指示する。
そしてハイブリッド制御ユニット2はステップS110に戻り、処理を続行する。
なお、回生一時アップ制御のための回生ブレーキ力の設定値も、ステップS107で指示するノーマルモード時の値と、ステップS115で指示するスポーツモード時の値で同一でもよいし、スポーツモード時の方が、より強い制動力となるようにしてもよい。
【0056】
ここまでのスポーツモードの処理により実現される動作を図7で説明する。
図7は横軸を時間軸とし、アクセル開度の変化、加速度の変化、フリーランタイマ2eのカウント値、及び回生一時アップの制御タイミングの例を示している。
【0057】
運転者は時点t10からアクセルペダルを踏み込み、時点t11でアクセル開度が閾値X3に達したとする。なお図では閾値X3>閾値X1としている。
アクセル開度の上昇に応じて加速度も上昇している。
フリーランタイマ2eはカウント値TC10まで計数が進んでいくが、時点t11でアクセル開度が閾値X3以上で、かつ加速度が所定値Y以上となるという条件が成立するため、ステップS111に進んでフリーランタイマ2eがリセットされる。この条件の成立は時点t12まで継続するためフリーランタイマ2eはリセットされ続ける。
時点t12以降は、アクセル開度が閾値X3以上であるが加速度が低下するため、フリーランタイマ2eのリセットは行われず、カウント値は上昇する。
【0058】
時点t13で運転者がアクセルペダルを素早く緩めたとする。例えばスポーツモードにおける機敏なアクセルワークを想定している。
この時点t13から時点t14では、アクセル開度が閾値X3未満となるが閾値X4以上であるので、ステップS112からS110に戻る処理となり、フリーランタイマ2eの計数はカウント値TC11まで上昇していく。時点t14で再びアクセル開度が閾値X3以上となり、また加速度も所定値Y以上となるためフリーランタイマ2eはリセットされる。この状態が時点t15まで続く。
【0059】
時点t16で再び機敏なアクセルワークにより運転者が素早くアクセルオフをしたとする。時点t17から時点t18はアクセル開度が閾値X4以下となる。
このため処理はステップS113に進みカウント値TC12が一時保存される。但しこの場合、時点t15の後はフリーランタイマ2eがリセットされていないためカウント値TC12は素早いアクセルオフ操作にも関わらず、カウント値TC12は所定時間th2より大きいものとなっている。従って処理はステップS114からS115には進まず、回生一時アップ制御は行われない。
【0060】
時点t18から時点t19の間は、運転者がアクセル開度を上げ下げしているが、閾値X4以上で閾値X3未満の範囲であり、また加速度も所定値Y以下であるため、ステップS110,S112の条件はいずれも満たされず、フリーランタイマ2eはリセットされず時点t19のカウント値TC13まで上昇していく。
なお、閾値X3が閾値X1より高いアクセル開度で、閾値X4が閾値X2より低い開度とされていることで、機敏なアクセルワークをおこなっても、この時点t18から時点t19のような期間が得られやすくなり、スポーツモードに適している。
【0061】
その後、例えば時点t19でアクセル開度が閾値X3以上となり、加速度も所定値Y以上となったとすると、このときフリーランタイマ2eはリセットされる。
その直後に運転者がアクセルオフ操作をおこない、時点t20でアクセル開度が閾値X3未満となり、さらに時点t21に閾値X4以下となったとする。
この場合、フリーランタイマ2eは時点t20までリセットが繰り返されているので、時点t20から時点t21までの経過時間を示すカウント値TC14が、ステップS113の処理で一時保存される。そしてステップS114で所定時間th2と比較される。
そしてカウント値TC14は所定時間th2以下であるので、図示のようにアクセルオフ操作が検知された時点t21に回生一時アップ制御が行われる(S115)。
【0062】
これは、運転者が加速の途中に急にアクセルペダルのオフ操作を行った場合であるため、急停車の意思と推定し、ブレーキペダルを踏む前の時点で回生一時アップ制御を行って制動力を高めるということになる。
その直後、運転者がブレーキペダルを踏むことが予測されるが、この場合、図6Bに示したように、回生一時アップ制御により、ブレーキペダルを踏む前の時点で大きい制動がかけられることになる。
【0063】
以上のようにスポーツモードの場合は、加速度が高い状態での急なアクセルオフ操作の場合に回生一時アップ制御を行うようにしている。
なお図7には示していないが、運転者がアクセルペダルをゆっくり緩めた場合は、ステップS114でカウント値が所定時間th2より大きくなるため、回生一時アップ制御は行われない。これはノーマルモードの場合と同様である。
【0064】
ところでノーマルモード、スポーツモードのいずれの場合についても、図6Bは回生一時アップ制御が行われる場合の例1として示したが、同じく回生一時アップ制御が行われる場合の例2として図6Cのような制御も考えられる。
つまり、ブレーキペダルが踏まれる前と後で、回生ブレーキ力を段階的に上昇されることも考えられる。回生一時アップ制御での回生ブレーキ力を、ブレーキペダルが最大に踏み込まれた場合より若干小さい制動力とすることでも、早いタイミングから制動がかけられることで制動能力は向上される。一方で、運転者が感じるブレーキ操作前の減速感は緩和される。
【0065】
<まとめ及び変形例>
以上の実施の形態では次のような効果が得られる。
実施の形態の車両制御装置として説明したハイブリッド制御ユニット2は、アクセル開度の情報を取得するアクセル開度取得部2aと、判定処理部2cと、判定処理部2cにより回生制動力を上昇させるタイミングと判定されることに応じてモータ回生力を上昇させる制御を行う回生制御部2dを備える。そして判定処理部2cは、第1の走行モード(ノーマルモード)での走行の際には、アクセルオフ操作時間が所定時間以下であるときに回生制動力を上昇させるタイミングであると判定し、第2の走行モード(スポーツモード)での走行の際には、アクセルオフ操作時間が所定時間以下であるという条件のみでは、回生制動力を上昇させるタイミングとは判定しないようにしている。即ち制動力を得るためのモータ回生力を上昇させるタイミングの判定手法が走行モードにより異なるようにしている。
ノーマルモードのときは、アクセルオフ操作時間が短ければ、制動力を上げる制御を行うことになる。これによりブレーキペダルを踏む直前の早いタイミングで制動力を上昇させることになるため、安全性が向上される。即ち運転者の停止意思発生から制動力の発生までの時間を短くすることで車両の停止までの時間や距離を短縮でき、緊急停止により適切に対応できる。
一方で、スポーツモードのときは、機敏なアクセルワークが多用されることが想定されるため、アクセルペダルが一気にオフされる毎に制動力を高めると、運転者に違和感を与えることになる。このためノーマルモードとは同じ条件では回生制動力を上昇させないようにする。これによりドライバビリティの低下を感じさせないようにすることができる。
また、スピーディな走行を要求する運転者によっては意図的に機敏なアクセル操作を行うが、単純なアクセル操作のみではなく走行モードも回生による制動力の制御の判定に含めることで、危険回避のためのアクセル操作と機敏なアクセル操作との区別を行うことが可能になる。
【0066】
より具体的には、実施の形態のハイブリッド制御ユニット2は、アクセル開度取得部2aに加え、加速度の情報を取得する加速度取得部2bを備える。そして判定処理部2cは、ノーマルモードでの走行の際には、アクセル開度が閾値X1以上から閾値X2以下に至るまでのアクセルオフ操作時間が所定時間th1以下であるときに回生制動力を上昇させるタイミングであると判定する。またスポーツモードでの走行の際には、加速度が所定値Y以上である状態で、アクセル開度が閾値X3以上から閾値X4以下に至った場合のアクセルオフ操作時間が所定時間th2以下であるときに回生制動力を上昇させるタイミングであると判定する。
即ちスポーツモードによる走行時は、アクセルオフ時間の条件だけでなく加速度の条件も加えてモータ回生力を上昇させるタイミングを判定する。
【0067】
これは、まずノーマルモードに関しては、運転者がアクセルをゆっくり離しているか、一気に離しているかの違いを検出するものとなるが、一気に離す場合は、ブレーキをかけたい場合と推定し、制動力を上げる制御を行うことになる。
通常、アクセルを踏んでいる状態(少なからず加速している状態)においてブレーキをかけたい思った場合、運転者は素早くアクセルペダルを離してブレーキペダルを踏むという動作を行う。この場合の「素早くアクセルペダルを離す」という動作を検出して、モータ回生による制動力を高める。これにより、アクセルペダルを離した瞬間(ブレーキを踏む前)から大きな制動力が得られることになり、緊急停止の場合などにも有効な制動制御となる。
またモータ回生による制動力の応答性はブレーキパッドによる制動力の応答性よりも高いため、モータ回生力を上昇させる制御を行うことは、アクセルを素早く離した場合の急制動として適している。
これらにより運転者がブレーキペダルを操作する前から強い制動をかけることができ、ノーマルモードでの車両運転における安全性を向上させることができる。
【0068】
一方で、スポーツモードのときは、ハイブリッド制御ユニット2は、運転者がアクセルペダルをゆっくり離しているか一気に離しているかの違いを検出するだけでなく、加速度の判定も行う。そして比較的大きい加速中にアクセルペダルを一気に離す場合は、ブレーキをかけたい場合と推定し、制動力を上げる制御を行うことになる。
運転者がドライバビリティを重視する場合に選択するスポーツモードでは、機敏なアクセル操作が行われることが想定され、アクセルの急な踏み込みや急なアクセルオフは、運転者が停止の意思を持っていなくても行われることがある。そのためノーマルモードと同様に、「素早くアクセルを離す」という動作のみで制動を強くすると、運転者の意図にそぐわない減速が行われ、運転者に違和感を与えたりドライバビリティの低下を感じさせてしまう。一般に車速が低いときにはアクセルペダルの踏み込みにより高い加速度が得られるが、車速が早いときは、アクセルペダルを全開或いは全開近くまで踏み込んでも、加速度はさほど大きくはならない。このため運転者は、車速が高い状態において加速度が欲しくてアクセルペダルを踏み込み、また直ぐに離すという操作が行われ易い。このような場合のアクセルオフは、運転者は制動を意図していないことが多い。
そこで、そのような場合を除いて、運転者が制動を求めるタイミングを判定する。即ち急加速している状態からいきなりアクセルオフとする操作があったら、運転者が急制動を求めている場合と推定し、モータ回生による制動力を高める。
特にアクセルオンによる急加速をいきなり止める場合は、その直後にブレーキを踏む操作、つまり制動を求める場合が多いため、このような場合、急制動を行うことは運転者の意思に適った制御となりやすい。そしてノーマルモードの場合と同様に回生一時アップにより、応答性のよい制動をかけることができる。また、もし運転者が制動を求めていない場合であったとしても、比較的大きな加速状態からの制動は違和感となりにくく、回生一時アップを行っても運転者にドライバビリティの低下を感じさせないことになる。
従ってスポーツモードにおいては、運転者にドライバビリティの低下を感じさせずに、応答のよい制動を行うことができ、これも安全性を向上させることになる。
【0069】
なお、ノーマルモード、スポーツモードのいずれの場合でも、図3図4のような処理により、回生ブレーキによる制動が運転者の意図しないときに発生する機会を低減できるが、回生一時アップ制御が行われなくとも、アクセルオフによる通常の回生ブレーキ力(又はエンジンブレーキ力)は生じていることを前提としている。従って、回生一時アップ制御が行われない場合に制動能力が低下するものではない。つまり本実施の形態の処理により安全性が従前の車両制御システムより低下するということはない。
【0070】
実施の形態では、走行モードをノーマルモードとスポーツモードとした例を挙げたが、スポーツモードはノーマルモードよりもアクセル開度に対する加速応答性を高めた走行モードであるとしている。
上述の図4の処理では、このスポーツモードのように素早いアクセルワークを行うことが想定される走行モードにおいて、適切かつ応答性のよい、回生力によう制動を実現できることになる。
【0071】
実施の形態では、閾値X3は、閾値X1以上のアクセル開度に相当する値である例を挙げた。例えばノーマルモードでアクセル開度を比較する閾値X1を80%としたとき、スポーツモードでアクセル開度を比較する閾値X3は同じ80%であったり、或いはより高い90%などのように設定するとした。
回生一時アップの判定のためにアクセル開度が高い状態を判定する閾値X1,X3はノーマルモードとスポーツモードで共通としてもよいが、スポーツモードの閾値X3の方を高くすることで、機敏なアクセルワークが行われることを考慮した場合に、適切な回生一時アップのタイミングが判定されやすく好適となる。例えば図7の時点t18から時点t19の間のような場合に回生一時アップ制御のタイミングと判定されにくくすることで運転者に違和感を与えない。
一方で、通常モードの場合は、閾値X1が低いことで、より回生一時アップが行われ易くすることができる。
なおこれらの閾値X1,X3は書換可能としてもよい。例えばユーザの運転嗜好に合わせて調整することも考えられる。
【0072】
また実施の形態では、閾値X4は、閾値X2以下のアクセル開度に相当する値であるとする例を挙げた。例えばノーマルモードでアクセル開度を比較する閾値X2を20%としたとき、スポーツモードでアクセル開度を比較する閾値X4は同じ20%であったり、或いはより低い10%などのように設定するとした。
回生一時アップの判定のためにアクセル開度が低くなった状態を判定する閾値X2,X4はノーマルモードとスポーツモードで共通としてもよいが、スポーツモードの閾値X4の方を低くすることで、機敏なアクセルワークが行われることを考慮した場合に、適切となる。例えば同様に図7の時点t18から時点t19の間のような場合に回生一時アップ制御のタイミングと判定されにくくなる。これにより機敏なアクセルワークにおいて、制動を意図しないでアクセルを急激に緩める場合と、制動を意図する場合を的確に判定し、適切なタイミングで回生一時アップ制御を実行しやすくなる。
一方で、通常モードの場合は、第2の閾値X2が高いことで、より回生一時アップが行われ易くすることができる。
なおこれらの閾値X2,X4も書換可能としてもよい。例えばユーザの運転嗜好に合わせて調整することが考えられる。
【0073】
以上の実施の形態の構成例や処理例は一例であり、適宜変形例が考えられる。
スポーツモードの際の加速度については、アクセルオフ操作の直前の加速度が所定値Y以上であるか否かを確認するものとしたが、例えば加速度の変化を分析して、より的確にブレーキ意思の有無を推定して回生一時アップ制御に反映させることなども考えられる。
またスポーツモードの場合、アクセルオフ操作時間が所定時間以下であるという条件と、加速度以外の条件が成立することで回生一時アップ制御のタイミングと判定することも考えられる。
【符号の説明】
【0074】
1 車両制御システム、2 ハイブリッド制御ユニット、2a アクセル開度取得部、2b 加速度取得部、2c 判定処理部、2d 回生制御部、2e フリーランタイマ、2f 設定記憶部、4 操舵制御ユニット、5 エンジン制御ユニット、6 ブレーキ制御ユニット、7 トランスミッション制御ユニット、8 バス、10 車速センサ、11 エンジン回転数センサ、12 アクセル開度センサ、13 スロットル開度センサ、14 加速度センサ、15 踏力センサ、16 ブレーキ関連アクチュエータ、17 エンジン関連アクチュエータ、20 モータ制御部、21 充電制御部、22 操作部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7