(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置及び磁気共鳴イメージング装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20230523BHJP
【FI】
A61B5/055 370
A61B5/055 380
A61B5/055 390
(21)【出願番号】P 2019032865
(22)【出願日】2019-02-26
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻木 健太
(72)【発明者】
【氏名】高橋 信司
(72)【発明者】
【氏名】須永 研太朗
(72)【発明者】
【氏名】森分 周子
(72)【発明者】
【氏名】永尾 尚子
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/198680(WO,A1)
【文献】特開2010-082025(JP,A)
【文献】特開2014-083435(JP,A)
【文献】特開2004-194729(JP,A)
【文献】特開2012-030052(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0067958(US,A1)
【文献】特開平06-277210(JP,A)
【文献】特開2010-259614(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0256566(US,A1)
【文献】特開2009-060939(JP,A)
【文献】特開2007-143719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/20 -33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置全体の動作制御及び演算を行う演算部と該演算部による制御に従って撮像を行う撮像部とを備え、
前記演算部が、
撮像処理、解析処理、及び、表示処理及び転送処理の少なくとも一方の処理を含む検査フローデータを複数記憶すると共に、各検査フローデータを
検査部位と検査対象または撮像時間とにより表現したキーワードを当該検査フローデータと関連づけて記憶した記憶部と、
ユーザによる所望の検査を実行するための入力指示を受け付けるユーザインターフェイス部と、
前記入力指示に合致する前記検査フローデータを選択し、該検査フローデータに含まれる処理を実行させる検査フロー制御部と、
前記解析処理を制御する解析制御部と、を備え、
前記解析制御部は、前記撮像処理により生成した画像データに対して、解析処理データに適した画像データであるかを確認し解析処理を実行させること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
装置全体の動作制御及び演算を行う演算部と該演算部による制御に従って撮像を行う撮像部とを備え、
前記演算部が、
撮像処理、解析処理、及び、表示処理及び転送処理の少なくとも一方の処理を含む検査フローデータを複数記憶すると共に、各検査フローデータを特定するキーワードを当該検査フローデータと関連づけて記憶した記憶部と、
ユーザによる所望の検査を実行するための入力指示を
自由な表現で受け付けるユーザインターフェイス部と、
前記入力指示に合致する前記検査フローデータを選択し、該検査フローデータに含まれる処理を実行させる検査フロー制御部と、
前記解析処理を制御する解析制御部と、を備え、
前記解析制御部は、前記撮像処理により生成した画像データに対して、解析処理データに適した画像データであるかを確認し解析処理を実行させること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記ユーザインターフェイス部は、前記入力指示に合致する前記キーワードの複数の候補を表示し、ユーザによる当該候補の選択に基づき、前記検査フローデータを選択することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
請求項1
または2に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記ユーザインターフェイス部は、複数の前記キーワードを表示し、ユーザによるキーワードの選択を前記入力指示として受付けることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
請求項1
または2に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記ユーザインターフェイス部は、前記検査フローデータに含まれる処理を表示することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
請求項1
または2に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記ユーザインターフェイス部は、前記検査フローデータに含まれる処理の表示とともに、処理の進行度を表示することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
請求項1
または2に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
ユーザが検査を一時中断し、途中から再スタートした時、既に生成された画像を用いて、残りの検査を自動的に実行することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
装置全体の動作制御及び演算を行う演算部と、該演算部による制御に従って撮像を行う撮像部と、撮像処理、解析処理、及び、表示処理及び転送処理の少なくとも一方の処理を含む検査フローデータを複数記憶すると共に、各検査フローデータを
検査部位と検査対象または撮像時間とにより表現したキーワードを当該検査フローデータと関連づけて記憶した記憶部と、を備えた磁気共鳴イメージング装置の制御プログラムであって、
ユーザによる所望の検査を実行するための入力指示を受け付けるステップと、
前記入力指示に合致する前記検査フローデータを選択し、該検査フローデータに含まれる処理を実行させるステップと、
前記解析処理において、前記撮像処理により生成した画像データに対して、解析処理データに適した画像データであるかを確認し解析処理を実行させるステップと、をコンピュータに実行させる磁気共鳴イメージング装置の制御プログラム。
【請求項9】
装置全体の動作制御及び演算を行う演算部と、該演算部による制御に従って撮像を行う撮像部と、撮像処理、解析処理、及び、表示処理及び転送処理の少なくとも一方の処理を含む検査フローデータを複数記憶すると共に、各検査フローデータを特定するキーワードを当該検査フローデータと関連づけて記憶した記憶部と、を備えた磁気共鳴イメージング装置の制御プログラムであって、
ユーザによる所望の検査を実行するための入力指示を
自由な表現で受け付けるステップと、
前記入力指示に合致する前記検査フローデータを選択し、該検査フローデータに含まれる処理を実行させるステップと、
前記解析処理において、前記撮像処理により生成した画像データに対して、解析処理データに適した画像データであるかを確認し解析処理を実行させるステップと、をコンピュータに実行させる磁気共鳴イメージング装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング装置及びその制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(以下、「MRI」という)装置は、被検体、特に人体の組織を構成する原子核スピンが発生する核磁気共鳴(以下、「NMR」またはエコーという)信号を計測し、その頭部、腹部、四肢等の形態や機能を2次元的に或いは3次元的に画像化する装置である。
【0003】
MRI装置を用いた検査では、通常、検査対象部位毎に、解剖学的に決まった断面を撮影するが、被検体の体型や寝台上での姿勢が検査毎に異なる。このため、同様の撮像シーケンスを実行する場合や解析処理を行う場合であっても、検査の都度、被検体の撮像位置を設定して調整したり、3D解析のための背景信号を除去したり、ユーザの手動による煩雑な操作を要している。さらに、これらの手動の操作は、撮像種類毎、解析処理毎に必要となる場合もあり、ユーザへの負担が大きい。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1には、検査断面が複数ある検査部位の場合であっても、撮像すべき断面の選択、撮像スライス数の増減の判断等の調整も含めて撮像位置を自動的に設定する撮像位置設定支援技術が開示されている。また、特許文献2には、適切な撮像位置を専用の位置決め画像から自動的に計算する技術が開示されている。
一方、特許文献3には、MRI装置によって撮像された画像に基づいて3D解析を行う際に、背景信号除去の操作をサポートする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5960136号公報
【文献】特許第5819300号公報
【文献】特許第5738193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1乃至特許文献3は、位置決めや背景信号の除去等の限られた処理について個々に自動化を実現したに過ぎない。従って、位置決めから撮像条件の入力、所望の撮像、撮像した画像に対する3D解析等一連の検査に含まれる処理の全てが自動化されているわけではなく、手動の操作は避けられない。通常、MRI装置を用いた検査において、ユーザは、診断のための画像生成・確認だけでなく、被検者の体調・状態の監視等を行わねばならない。従って、これに加えて、検査に含まれる処理毎に手動操作を行っていると検査効率が低下するという不具合がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、位置決め、撮像及び解析処理等を含む一連の検査フローを自動的に行うことにより、ユーザに手動操作による負担を軽減させ検査効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の一態様は、装置全体の動作制御及び演算を行う演算部と該演算部による制御に従って撮像を行う撮像部とを備え、前記演算部が、撮像処理、解析処理、表示処理及び転送処理のうち少なくとも1以上の処理を含む検査フローデータを複数記憶すると共に、各検査フローデータを特定するキーワードを当該検査フローデータと関連づけて記憶した記憶部と、ユーザによる所望の検査を実行するための入力指示を受け付けるユーザインターフェイス部と、前記入力指示に合致する前記検査フローデータを選択し、該検査フローデータに含まれる処理を実行させる検査フロー制御部と、を備えた磁気共鳴イメージング装置を提供する。
【0009】
また、本発明の他の一態様は、装置全体の動作制御及び演算を行う演算部と、該演算部による制御に従って撮像を行う撮像部と、撮像処理、解析処理、表示処理及び転送処理のうち少なくとも1以上の処理を含む検査フローデータを複数記憶すると共に、各検査フローデータを特定するキーワードを当該検査フローデータと関連づけて記憶した記憶部と、を備えた磁気共鳴イメージング装置の制御プログラムであって、ユーザによる所望の検査を実行するための入力指示を受け付けるステップと、前記入力指示に合致する前記検査フローデータを選択し、該検査フローデータに含まれる処理を実行させるステップと、をコンピュータに実行させる磁気共鳴イメージング装置の制御プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、位置決め、撮像及び解析処理等を含む一連の検査フローを自動的に行うことにより、ユーザに手動操作による負担を軽減させ検査効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るMRI装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1のMRI装置のGUIの表示画面の一例を示す参考図である。
【
図3】
図1のMRI装置の記憶部に記憶された検査フローデータリストの例を示す参考図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るMRI装置において検査フローデータに基づく検査フローを実行する場合の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】GUIに表示される画面例を示す参考図である。
【
図6】GUIに表示される画面例を示す参考図である。
【
図7】GUIに表示される画面例を示す参考図である。
【
図8】GUIに表示される画面例を示す参考図である。
【
図9】GUIに表示される画面例を示す参考図である。
【
図10】GUIに表示される画面例を示す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係るMRI装置について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、MRI装置は、GUI(ユーザインターフェイス部)10、演算部20、及び撮像部30を備えている。
【0013】
GUI10は、ユーザによる撮像条件や検査を実行するための設定等を含む種々の入力指示を受け付け、演算部20に出力すると共に、ユーザに対し撮像結果や指示に必要な入力画面等を表示するものであり、図示しない表示装置や入力デバイスなどを備えている。GUI10は、例えば、
図2に示すような入力画面を図示しない表示部に表示させることで、ユーザによる入力指示を実現させる。
【0014】
演算部20は、複数の処理からなる検査を検査の開始から終了まで自動的に実行させるために、必要なデータを記憶した記憶部21、検査フロー制御部22、撮像制御部23、解析制御部24、撮像位置計算部25、解析部(背景信号除去部)26、画像再構成部27、メモリ28、及び画像転送部29を備えている。
【0015】
撮像位置計算部25は、例えば、特許文献2に開示されている自動位置決めアルゴリズムを搭載しており、位置決め画像における解剖学的特徴点を抽出し、抽出した特徴点から適切な撮像位置を自動的に計算する。また背景信号除去部は、例えば、特許文献3に開示されている自動背景信号除去アルゴリズムを搭載しており、背景以外の輪郭を抽出し、背景が除去された画像を生成する。
【0016】
なお、演算部20の記憶部21及びメモリ28を除く各部は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、あるいは両者の組み合わせによって構成することができる。また、演算部20の記憶部21及びメモリ28を除く各部が実行する動作の一部又は全部を、ASIC(application specific integrated circuit)やFPGA(field-programmable gate array)により実現することもできる。
【0017】
記憶部21は、撮像処理、解析処理、表示処理及び転送処理のうち少なくとも1以上の処理を含む検査フローデータを複数記録すると共に、該検査フローデータを特定する複数のキーワードを検査フローデータに関連づけて記憶している。記憶部21の検査フローデータ及びキーワードについて、具体例を
図3に示す。
【0018】
図3の例では、複数の検査フローデータが検査オーダーキーワードと共に検査フローデータリストとして記憶されている。検査オーダーキーワードは、ユーザが所望する検査を、検査部位と検査対象や撮像時間等に関わる簡単なキーワードとを予めセットにして定めたものであり、
図3に示す例では、「頭部検査1、高解像」、「頭部検査1、短時間」、「頭部検査1、子供」などがプリセットされている。
【0019】
また検査フローデータの具体例である頭部検査1に含まれる処理として、Scanogram、ScanA、ScanB、ScanC、MIP解析A、及びデータ転送が記憶されている。Scanogramは、位置決め画像を取得するための低解像度撮像であり、ScanA、ScanB、ScanCは、それぞれ、種々の撮像手法による撮像であり、例えば、T1強調撮像、T2強調撮像、拡散強調撮像、脂肪抑制撮像など撮像である。またMIP解析は、3D撮像で取得した画像の投影処理手法である。記憶部1はこのような検査フローデータを予め複数記憶している。
【0020】
記憶部21は、さらに、頭部検査1に含まれる各処理の具体的な内容を、撮像処理データ、解析処理データ及び表示・転送処理データとして記憶している。例えば、撮像処理データは、所定の撮像方法における推奨撮像パラメータ(TE、TR、加算回数、倍速率等)や撮像断面に関する情報などを含む。また解析処理データは、解析アルゴリズムの実行に必要な閾値や初期値のデータや生成する解析データの種類や解析画像の種類に関する情報などを含む。
【0021】
また、表示・転送処理データは、表示のコマ割りや拡大率や転送先に関する情報、表示・転送する画像種情報などを含む。具体的には、「データ転送A:Scanogram以外をサーバ1とサーバ2に送る処理」、「データ転送B:ScanA及びScanBで得た画像をサーバ1に送る処理」などの処理内容のデータである。
【0022】
これら記憶部21に格納する検査フローデータ及び撮像処理データ等は、GUI10を介して、ユーザが変更したり、追加したりすることが可能である。また、過去の検査で用いた処理の具体的な内容が、過去の検査を特定する情報とともに記憶されている。
【0023】
検査フロー制御部22は、GUI10が受け付けたユーザによる入力指示に従って、記憶部21に記憶された検査フローデータリストから入力指示に合致した検査フローデータを選択する。そして、検査フロー制御部21は、選択した検査フローデータに含まれる各処理を実行させるために撮像制御部23、解析制御部24、及び画像転送部29にこれらを動作させるための制御信号を送信する。
【0024】
撮像制御部22は、検査フロー制御部21から送信された制御信号に従って後述する撮像部30における撮像処理を制御する。撮像処理が位置決め用スキャンである場合には、撮像位置計算部24に、位置決め用スキャンによる撮像によって得られた画像に基づいて撮像位置を自動的に計算するための制御信号が送信される。
【0025】
解析制御部24は、撮像部30によって撮像され後述する画像再構成部27が生成した再構成画像の解析処理を解析部26が行うように、検査フロー制御部21から送信された制御信号に従って解析処理の制御を行う。解析部26が行う解析には、画像を用いた数値計算や統計処理などの種々の解析が含まれ、解析結果として得られる解析結果データや解析結果画像なども生成される。
【0026】
本実施形態においては、解析部26が行う解析処理として3D画像データを用いたMIP処理とそのための背景信号除去処理を含み、解析部26は、背景信号除去部261及びMIP処理部262を含んでいる。従って、解析制御部24は、背景信号除去処理を行う場合には背景信号除去部261に、MIP処理を行う場合にはMIP処理部262に制御信号を出力する。
【0027】
撮像部30は、少なくともパルスシーケンス部31及びガントリ32を備えている。ガントリ32には、図示しない静磁場磁石が備えられるとともに、静磁場磁石が形成する静磁場空間に傾斜磁場を発生する傾斜磁場発生コイル、静磁場空間内に置かれた被検体に対し高周波磁場(RFパルス)を印加する高周波磁場コイル、及び被検体から発生する核磁気共鳴信号(エコー信号)を受信する受信用高周波磁場コイルが備えられている。
【0028】
さらに、図示していないが、撮像部30には、これら磁場発生コイルを駆動する送信系、傾斜磁場発生系及び受信系など、一般的なMRI装置と同様の要素が備えられている。
【0029】
パルスシーケンス部31は、高周波磁場、傾斜磁場、信号受信のタイミングや強度を記述したパルスシーケンスに従って、ガントリ32内の被検体の断層画像のデータ収集に必要な種々の命令を、RFパルスを送信する送信系、傾斜磁場を生じさせる傾斜磁場発生系、およびエコー信号を受信する受信系に送信する。
【0030】
画像再構成部27は、撮像部30により得られたエコー信号から画像を再構成して再構成像を生成する。
メモリ28は、上記各部の演算や処理における作業領域として作用し、生成された画像や、演算処理の途中経過を一時的に記憶するものである。
画像転送部29は、検査フロー制御部21から送信された制御信号に従って、最終的に生成された画像を、図示しない表示装置や外部画像サーバ40に転送する。
【0031】
このように構成されたMRI装置において、ユーザの入力指示により、その入力指示で特定される検査フローを自動的に実行するための手順を以下、説明する。
【0032】
まず、記憶部21に格納される検査フローデータリストの作成について説明する。検査フローデータリストは、
図3に示したように、検査フローとユーザの入力指示とを結びつけるための複数の検査オーダーキーワードと、各検査オーダーキーワードに紐付けられた検査フローデータとを含む。検査オーダーキーワードは、
図2に示すようなGUI画面から、ユーザが検査部位と自由な表現(検査に必要な処理を表した言葉や文章など)で表した検査オーダーとを入力することによって特定される。
【0033】
検査フローデータは、ユーザが検査オーダーキーワードに対応する処理の流れを決めたものであり、例えば、デフォルトで所定の処理の流れを設定しておき、それをユーザが適宜変更したり追加したりする。
図2に示す例では、頭部検査1の検査フローデータとして、「Scanogram」「ScanA」「ScanB」・・・が表示されている。これは、頭部検査1に含まれる検査の内容を示しており、ユーザは、この表示を参照しながら不要なスキャン(撮像)を削除したり、スキャンを入れ替えたり、別のスキャンを追加するなど、自由に編集することができる。
【0034】
さらに処理については、処理ごとに処理の具体的な内容や条件を設定することができる。撮像処理であれば、「Scanogram」のスキャン時間、「Scan」の具体的な内容、例えば、パルスシーケンス、撮像断面、などの撮像条件(撮像パラメータ)やスキャン時間などをユーザはGUI10を介してプリセットする。これらは撮像処理データとして、記憶部21に記憶される。また解析処理についても、処理のルールを設定することができる。例えば3D画像の処理を行う場合、3D処理に必要なシーケンス名やFOV領域などを決めておくことができる。
【0035】
さらに所定の条件で検査が行われた後、そのときの検査フローやそれに含まれる各処理の内容も当該検査を特定する情報(例えば、ユーザが入力したオーダーやキーワードなど)とともに撮像処理データあるいは解析処理データとして、記憶部21に記憶される。
【0036】
MRI装置による自動検査は、このようにユーザによる検査フローデータリストの設定(プリセット)が行われた後、実行される。検査フローデータに基づく検査フローの実行は、例えば、
図4に示すフローチャートに従って行われる。
【0037】
図4に示すように、ステップS101では、ユーザがGUI10において被検者情報及び検査内容を入力する。ここで、ユーザが入力する被検者情報としては、
図2のGUI画面例に示す通り、被検者ID、被検者名、年齢、及び体重等が挙げられ、検査内容としては、検査部位、検査オーダー、及び検査フローが挙げられ、これら内容を入力するための入力ブロック201~203が表示される。
【0038】
検査オーダーの入力ブロック202は、ユーザが自由な表現で検査を特定可能な言葉や文章等を入力することができる。また、
図2には示していないが、過去の検査と同じ検査を行う場合には、過去の検査を検査日等から特定できるようにしてもよい。
【0039】
このように入力ブロック101により検査部位が選択され、入力ブロック202から検査オーダーが入力されると、次のステップS102において、検査フロー制御部22は、これらの入力指示をもとに、記憶部21に記憶された検査オーダーキーワード(
図3)を選び、それを検査フローの入力ブロック203に提示する。
【0040】
図2に示す例では、ブロック203に、検査部位及び検査オーダーの入力指示に基づき選択された複数の検査オーダーキーワードが表示され、そこから所望の検査フローを選択させるようにしている。こうして入力される検査部位、検査オーダー及び検査フローによって、検査フローデータが特定され、ブロック204に表示される。また過去の検査を特定する入力指示があった場合には、そのときの検査条件と同じ条件の検査フローデータが呼び出される。
【0041】
すなわち、例えば、
図2の画面において、ユーザが検査部位を指定すると、検査部位に応じて予め記憶された検査フローデータがブロック204に表示され、所望の検査フローデータを選択することができるようになっている。そして、ユーザが、
ブロック203に表示された頭部検査1、頭部検査2、頭部検査3・・・等の検査フローデータに対応するものを入力した場合には、検査フロー制御部22は、入力された通りの検査フローデータを選択する。
【0042】
図3の例では、オーダープリセットとして頭部検査1を選択しているので、検査フローデータとして頭部検査1が選択され、GUI10の検査フローデータ欄に、頭部検査1に含まれる処理の内容が表示される。このGUI10において、ユーザは実行される検査の内容を確認することができる。なお、表示された検査フローデータを、ユーザが変更可能な構成とすることもできる。
【0043】
ステップS103において、ユーザが検査開始指示を行うと、検査フロー制御部22が、検査フローデータ含まれる処理を実行するために、撮像制御部23、解析制御部24、及び画像転送部29にこれらを動作させるための制御信号を送信する。制御信号を受信した撮像制御部23、解析制御部24、又は画像転送部29は制御信号に従って処理を実行する。
【0044】
このとき、撮像制御部23は、検査フローデータリストの順に処理を実行する。すなわち、まず、撮像制御部23がScanogramを実行して位置決め用画像を取得し、得られた位置決め用画像データを、撮像位置計算部25に渡すよう制御し、さらに撮像位置計算部25が検査フローデータリストに応じた撮像位置を計算するよう制御する。
【0045】
次に、撮像制御部23は、位置決め用画像データと撮像位置計算部24によって計算された撮像位置、撮像位置の計算が正常に終了したこと、撮像条件が許容範囲内であることを示す画面(例えば、
図5、
図6)をGUI10に表示させる。
図5及び
図6に示す例では、ユーザによる「スキャンの停止」の指示を受付けるボックス502や指示待ちのためのタイマー503も表示しており、ユーザが表示された結果を見てスキャンを停止することも可能になっている。
【0046】
「スキャンの停止」の指示が、セットされた時間(タイマー)内になされなければ、撮像制御部23は計算された撮像位置、設定された撮像条件で、撮像部30が最初の撮像(ScanA)を開始するように制御する。
【0047】
また、
図5及び
図6に示す例では、ユーザが表示された結果を参照して撮像位置や撮像条件を手動で修正することも可能となっている。手動で修正した場合、
図6のように処理続行までのタイマー601を表示し、セットされた時間(タイマー)内に「スキャンの停止」や更なる手動修正がなされなければ、最後に手動修正された撮像位置、撮像条件で、撮像部30が最初の撮像(ScanA)を開始するように制御する。
【0048】
尚、手動修正した場合には修正のための十分な時間を設けるため、タイマーのカウントダウンを停止し、検査を再開する場合は続行を指示するようにしても良い。
【0049】
また、手動での修正有無に依らずタイマーと共に「続行」を指示するボックスを予め表示し、タイマーのカウントダウンが完了を待たずに最初の撮像(ScanA)を開始できるようにしても良い。画像再構成部27はScanAの実行により撮像部30が取得した信号を用いてから画像を再構成しメモリ28に送る。
【0050】
撮像制御部23は、その後、検査フローデータリストの2番目以降の撮像処理(例えばScanB)に対しても、同様に、撮像位置の決定、撮像条件の設定を自動的に行い、検査フローデータの順に従って撮像部30に自動的に撮像処理を実行させる。
【0051】
また、解析制御部24は、撮像処理の実行によって、画像データが生成される毎に、解析処理データに適した画像データであるかを確認し、解析処理(MIP解析A)に適した画像データが生成されたときに、背景信号除去部26に、背景信号除去処理を実行させる。解析制御部24は、背景信号除去処理が正常に終了した場合に、背景信号除去後の画像をGUIに表示させる(
図7、
図8)。
【0052】
この場合にも、
図7に示すように、背景信号除去処理結果701をユーザが確認し、解析の停止を指示するためのブロック702、待ち時間を示すタイマー703とともに表示してもよい。タイマーに示された時間内に停止の指示がない場合には、この背景信号除去処理結果に基づき、解析処理(MIP)を自動的に実行する。
【0053】
また、
図7及び
図8に示す例では、MRI装置によって撮像位置の算出や、背景信号除去が自動的になされた後に、ユーザが表示された背景信号処理結果を見て背景除去部や解析パラメータを手動で修正又は調整を行うことが可能となっている。手動で修正又は調整した場合、
図8のように処理続行までのタイマー801を表示し、セットされた時間(タイマー)内に「解析停止」や更なる手動修正がなされなければ、最後に手動修正された条件で解析処理(MIP)を自動的に実行する。
【0054】
尚、手動修正した場合には修正のための十分な時間を設けるため、タイマーのカウントダウンを停止し、検査を再開する場合は続行を指示するようにしても良い。また、タイマーと共に「続行」を指示するボックスを予め表示し、タイマーのカウントダウン完了を待たずに解析処理を開始できるようにしても良い。
【0055】
そして、画像転送部29は、撮像処理と解析処理の実行によって、画像データが生成される毎に、転送対象の画像データであるかを確認する。転送対象の画像データである場合に、画像転送部29は、画像データを転送先に自動的に転送する。
【0056】
なお、各処理の実行中は、例えば、GUIには
図9、
図10のような画面を表示させることができる。
図9、
図10の例では、検査フローに含まれる処理が左側に羅列されている。
図9の検査フローに含まれる処理のうち、Scanogram、ScanA、ScanBの自動スタート処理が終わり、ScanCの撮像処理データが示されている。
【0057】
Scanogram、ScanA、ScanBは自動スタート済、ScanCは自動スタート処理中を示す四角の塗りつぶされた印が表示され、MIP、データ転送には、未スタートを示す四角の枠が表示されている。なお、Scanogram、ScanA、ScanBの文字の下に表示された太線は、撮像処理の進捗を表している。
【0058】
また、検査中に被検者の状況の変化等により、検査を一時中断させる必要が生じる場合がある。
図9に示す例では、ユーザによる「スキャンの停止」の指示を受付けるボックス901も表示しており、状況の変化等により検査を停止することも可能になっている。状況が改善し、検査を再開する場合には、ユーザが
図9の左側に羅列されている処理の中から開始位置を指定して、途中から再スタートの指示を行うことで、既に生成された画像を用いて、残りの検査を自動的に実行することも可能となっている。
【0059】
このように本実施形態によれば、予め複数の処理を含む検査フローデータを記憶させておき、ユーザの入力指示に従って所望の処理を含む検査フローデータを選択して実行させるため、複数の処理を含む一連の検査を自動的に実行することができる。従って、検査中のユーザにとって手動操作による負担を軽減させることができ、検査効率を向上させることができる。
【0060】
また本実施形態によれば、ユーザがカスタマイズした検査フローデータを記憶させておくことにより、ユーザがその都度処理に関わる条件を設定することなく、所望の条件を再現した検査フローを実行することができる。また、過去の検査を指定することで、そのときと同じ検査条件で、同じ特徴点を用いた位置決めや血管抽出を行って自動的な撮像と解析処理を行うことができる。
【符号の説明】
【0061】
10・・・GUI(入力部)、20・・・演算部、21・・・記憶部、22・・・検査フロー制御部、23・・・撮像制御部、24・・・解析制御部、25・・・撮像位置計算部、26・・・解析部、27・・・画像再構成部、28・・・メモリ、29・・・画像転送部、30・・・撮像部、31・・・パルスシーケンス部、32・・・ガントリ、261・・・背景信号除去部、262・・・MIP処理部、40・・・外部画像サーバ