(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】分岐管の製造方法および分岐管付き熱交換器の製造方法
(51)【国際特許分類】
F16L 41/02 20060101AFI20230523BHJP
F28D 7/16 20060101ALI20230523BHJP
F28F 1/32 20060101ALI20230523BHJP
F24H 9/00 20220101ALI20230523BHJP
F16L 13/08 20060101ALI20230523BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
F16L41/02
F28D7/16 D
F28F1/32 F
F24H9/00 A
F16L13/08
B23K1/00 330H
(21)【出願番号】P 2019218781
(22)【出願日】2019-12-03
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】阿部 進
(72)【発明者】
【氏名】星野 健太
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-003016(JP,U)
【文献】特開平11-170089(JP,A)
【文献】特開平07-294010(JP,A)
【文献】特開2000-356409(JP,A)
【文献】特開2018-080866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 41/02
F28D 7/16
F28F 1/32
F24H 9/00
F16L 13/08
B23K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧入部と、該圧入部よりも大径の筒部とを有した連結管と、穴部を有した管体とで構成された分岐管の製造方法に於いて、前記管体の穴部に、前記連結管の圧入部を圧入し、C形ろう材を、その
下端が前記連結管
の前記圧入部に当接する位置で
前記管体の外周に沿わせて前記管体に嵌着し、前記連結管
を前記圧入部が上、前記筒部が下に位置する略下向きの姿勢で炉中ろう付けする分岐管の製造方法。
【請求項2】
平行に並んだ複数のフィンプレートと、該フィンプレートに対して直交する方向から貫通した複数のフィンパイプとを有し、該フィンパイプの端部同士を接続すると共に前記フィンプレートの長さ方向に開口した穴部を有したU字状の管体と、前記穴部に圧入される圧入部と、該圧入部よりも大径の筒部とを有した連結管とからなる分岐管を備えた熱交換器の製造方法に於いて、前記フィンパイプの軸方向に沿った棒ろう材を、前記フィンプレートの前記フィンパイプに近接しかつ前記穴部が開口した方向に設けられたろう材用穴に配置し、C形ろう材をその
下端が前記連結管
の前記圧入部に当接する位置で
前記管体の外周に沿わせて前記管体に嵌着し、前記棒ろう材が前記フィンパイプよりも上で、かつ前記連結管
を前記圧入部が上、前記筒部が下に位置する略下向きの姿勢で炉中ろう付けする分岐管付き熱交換器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、給湯機の熱交換器等に使用される分岐管および分岐管付き熱交換器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のフィンチューブ式の熱交換器では、例えば上下左右に一定の間隔で配設され、被加熱流体としての水が流れる複数本のフィンパイプと、フィンパイプの軸線方向に沿って所定の間隔をおいて配列された複数枚のフィンプレートとで構成され、フィンプレートにはフィンパイプを通すための複数の貫通孔が形成されていた。
そして、貫通孔にはフィンプレート表面から隆起したバーリングと、ろう材を挿通させるためのろう材用孔とが形成され、フィンパイプは、ろう材用孔に挿通されたろう材によって、複数の貫通孔の各々のバーリングの内縁とろう付けされてフィンプレートに固定されていた。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
又、フィンパイプはU字管を介して連通連結され、蛇行した熱交換流路を形成しており、熱交換流路の出口側のU字管の1つは、加熱されたフィンパイプ内の被加熱流体、ここでは給湯用の温水の温度を検知する温度サーミスタからなる温度検知手段を取り付ける連結管が設けられた分岐管が接続されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところでこの従来のものでは、フィンパイプやU字管や分岐管本体は、曲げ加工により所定形状に形成するための加工性を考慮して銅管が使用されるのに対して、分岐管に取り付ける連結管は切削加工にて製作された真ちゅう製のものが使用されていた。
そして、分岐管本体に連結管をろう付けする場合、炉中ろう付けすると真ちゅうは高温により脱亜鉛現象を起こして、材質変化による強度不足、表面粗度不良および外観不良などの不具合が発生するため、分岐管本体に連結管を手ろう付けしていた。
そのため、製造工程が煩雑になり、製作に時間とコストがかかるといった問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために、請求項1の分岐管の製造方法では、圧入部と、該圧入部よりも大径の筒部とを有した連結管と、穴部を有した管体とで構成された分岐管の製造方法に於いて、前記管体の穴部に、前記連結管の圧入部を圧入し、C形ろう材を、その下端が前記連結管の前記圧入部に当接する位置で前記管体の外周に沿わせて前記管体に嵌着し、前記連結管を前記圧入部が上、前記筒部が下に位置する略下向きの姿勢で炉中ろう付けするものである。
【0007】
また、請求項2の分岐管付き熱交換器の製造方法では、行に並んだ複数のフィンプレートと、該フィンプレートに対して直交する方向から貫通した複数のフィンパイプとを有し、該フィンパイプの端部同士を接続すると共に前記フィンプレートの長さ方向に開口した穴部を有したU字状の管体と、前記穴部に圧入される圧入部と、該圧入部よりも大径の筒部とを有した連結管とからなる分岐管を備えた熱交換器の製造方法に於いて、前記フィンパイプの軸方向に沿った棒ろう材を、前記フィンプレートの前記フィンパイプに近接しかつ前記穴部が開口した方向に設けられたろう材用穴に配置し、C形ろう材をその下端が前記連結管の前記圧入部に当接する位置で前記管体の外周に沿わせて前記管体に嵌着し、前記棒ろう材が前記フィンパイプよりも上で、かつ前記連結管を前記圧入部が上、前記筒部が下に位置する略下向きの姿勢で炉中ろう付けするものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明の請求項1によれば、圧入部と、該圧入部よりも大径の筒部とを有した連結管と、穴部を有した管体とで構成された分岐管の製造方法に於いて、前記管体の穴部に、前記連結管の圧入部を圧入し、C形ろう材を、その一端が前記連結管に当接する位置で前記管体に嵌着し、前記連結管が略下向きの姿勢で炉中ろう付けするので、炉内の高温によりC形ろう材が溶けると、管体の外周を伝って、C形ろう材の一端の下方に位置する穴部と圧入部との圧入している部分に流れ込んでろう付けされ、分岐管の製造の工数を大幅に削減できるものである。
【0009】
また、請求項2によれば、平行に並んだ複数のフィンプレートと、該フィンプレートに対して直交する方向から貫通した複数のフィンパイプとを有し、該フィンパイプの端部同士を接続すると共に前記フィンプレートの長さ方向に開口した穴部を有したU字状の管体と、前記穴部に圧入される圧入部と、該圧入部よりも大径の筒部とを有した連結管とからなる分岐管を備えた熱交換器の製造方法に於いて、前記フィンパイプの軸方向に沿った棒ろう材を、前記フィンプレートの前記フィンパイプに近接しかつ前記穴部が開口した方向に設けられたろう材用穴に配置し、C形ろう材をその一端が前記連結管に当接する位置で前記管体に嵌着し、前記棒ろう材が前記フィンパイプよりも上で、かつ前記連結管が略下向きの姿勢で炉中ろう付けするので、フィンパイプが棒ろう材によってフィンプレートに固定されるのと同時に、分岐管の管体の穴部と連結管の圧入部のろう付けも行うことができ、熱交換器の製造の工数を大幅に削減できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】この発明の一実施形態の分岐管を備えた給湯装置の概略構成図。
【
図3】温度検知手段を取り付けた分岐管の分解斜視図。
【
図4】温度検知手段を取り付けた分岐管の要部断面図。
【
図5】連結管を圧入した管体にC形ろう材を嵌着したた分岐管の要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明に係る発明の1実施形態を図面に基づいて説明する。
1は所定の端末( 給湯栓等) で使用される湯を生成する給湯装置、2は灯油等の燃油を気化するアルミダイキャスト製の気化器、3は気化器2に備えられ燃油を気化可能な温度まで加熱する気化器ヒータ、4は気化器2の下部に位置し、気化器2で気化された気化ガスと一次空気とを予混合するアルミダイキャスト製の混合室で、前記気化器2と混合室4とで燃油を気化させる気化部5を形成するものである。
【0012】
6は混合室4上部で気化器2の背面側に備えられ、混合室4で予混合された予混合ガスを燃焼させる燃焼部で、この燃焼部6と気化部5とでバーナを構成するものである。
また、7は気化器2 と一体的に形成され、気化器2の背面で燃焼部6上に突出した複数個の吸熱フィンで、燃焼時には燃焼熱を気化熱として気化器2にフィードバックして、気化器ヒータ3の通電量を極力抑えるものである。
【0013】
8は気化器2に燃油を噴霧するノズル、9はノズル8に送油管10を介して燃油を圧送する電磁ポンプ、11は燃焼ファンで、燃焼ファン11は送風路12を介して気化器2の入口および燃焼部6とカバー枠13との間の空気室14とに連通し、吸込口15より吸引した燃焼空気を、気化器2には予混合用の一次空気として供給し、空気室14には気化器2側方を通り混合室4の下方から燃焼部6で燃焼される二次空気として供給するものである。
【0014】
16は内部に燃焼室17を形成すると共に熱交換器18を備えた燃焼缶体で、熱交換器18は、燃焼室17においてバーナ(燃焼部6) の燃焼により発生した熱(燃焼炎および燃焼ガスからの熱)を複数枚のフィンプレート19を介してフィンパイプ20に吸収させ、フィンパイプ20を流通する水を加熱するフィンチューブ式の熱交換器からなり、フィンパイプ20はU字管21を介して連通連結され、蛇行した熱交換流路を形成するものであり、熱交換器18を通過した燃焼ガスは排気口22より機外に排気される。
【0015】
23は給水源から供給される水を熱交換器18における前記熱交換流路の流入口に流通させる給水管、24は熱交換器18における前記熱交換流路の流出口に接続され、熱交換器18で加熱された湯を所定箇所に設けられた給湯栓( 図示せず) に供給する給湯管、25は給水管23 から分岐した給水バイパス管、26は給湯管24と給水バイパス管25との接続部に設けられ、給湯管24からの湯と給水バイパス管25からの水とを混合し、その混合比を可変できる混合弁である。なお、フィンパイプ20とU字管21と給水管23と給湯管24と給水バイパス管25とで水が流通する給湯回路を構成するものである。
【0016】
前記熱交換器18は、上下左右に一定の間隔で配設され、被加熱流体としての水が流れる複数本のフィンパイプ20(この実施形態では10本のフィンパイプ20)と、フィンパイプ20の軸線方向に沿って所定の間隔をおいて配列された複数枚のフィンプレート19 とで構成されており、フィンプレート19にはフィンパイプ20を通すための複数の貫通孔26(フィンプレート19表面から隆起した貫通孔26のバーリング26aと、ろう材を挿通させるためのろう材用孔26bも含む)が形成され、フィンパイプ20は、ろう材用孔26bに挿通されたろう材によって、複数の貫通孔26の各々のバーリング26aの内縁とろう付けされてフィンプレート19に固定されるものである。
なお、上下左右に配設されたフィンパイプ20には、同一の被加熱流体、ここでは給湯用の水が流通するものである。
【0017】
各フィンプレート19は、複数のフィンパイプ20のうち上下段に矩形状に配置された4本のフィンパイプ20で囲まれる矩形空間の略中央部に略ひし形状のバーリング孔27(この実施形態では1枚のフィンプレート19当たり4つのバーリング孔27)が形成され、バーリング孔27に連続してフィンプレート19の下縁まで切り欠き部28(この実施形態では1枚のフィンプレート19当たり4つの切り欠き部28)が形成されており、切り欠き部28が形成されていることによってフィンパイプ20間のフィンプレート19が局部的に過剰に加熱されるのを抑制できるものである。
なお、切り欠き部28は、フィンプレート19の下縁まで形成されているとしたが、ここでの下縁とは、図面(
図2)の上下方向に合わせて下縁と表現したまでで、本質的には、フィンプレート19の下縁とは、燃焼ガスの流れ方向の上流側に位置するフィンプレート19縁側を意味しているものである。
【0018】
また、フィンプレート19表面から隆起したバーリング孔27のバーリング27aは、
図2に示されているように、フィンプレート19の正面視(フィンパイプ20の軸線方向から見て)において、4辺の直線部27bとそれらの直線部27b間をつなぐ曲線部27cとを有しており、それらが一体となって略ひし形状をなしているものである。
なお、バーリング27aの高さは、バーリング26aの高さよりも僅かに低い高さとされているものである。
【0019】
前記各フィンプレート19の左右両側縁には、直角方向に折れ曲げられ、燃焼缶体16の内壁に対してろう付け接合される側縁折り曲げ片29が設けられ、各フィンプレート19の上縁であって、上段の隣接するフィンパイプ20の間の位置には、直角方向に折れ曲げられ、燃焼ガスを上段のフィンパイプ20の後流側に案内する上縁折り曲げ片30(この実施形態では1枚のフィンプレート19当たり4つの上縁折り曲げ片30)が設けられているものである。
【0020】
次に分岐管31について説明する。
分岐管31はU字状の銅管からなる管体32と、圧入部33と該圧入部33よりも大径の筒部34と該筒部34の上部に形成された鍔部35とを有した銅製の連結管36とからなり、前記管体32のU字状の略中央には、前記連結管33の圧入部33が圧入されるように穴部37が形成され、該穴部37の開口方向は、管体32のU字が形成する平面に対する垂直方向よりU字の外側へ傾斜して設けられているものである。
【0021】
又、前記連結管36の略中心には、加熱されたフィンパイプ20内の被加熱流体、ここでは給湯用の温水の温度を検知する温度サーミスタからなる温度検知手段38を取り付ける取付孔39が形成されているものである。
【0022】
そして、前記取付孔39にはゴム製のOリング40がはめ込まれてシールし、該Oリング40の中空部分には温度検知手段38を取り付けるものである。
そしてその状態で連結管36から温度検知手段38が外れないように、クイックファスナーなどの留め具41を使用して外れるのを防止するものである。
【0023】
次に分岐管31単体でのろう付けについて説明する。
管体32の穴部37に連結管36の圧入部33を圧入した状態で、
図5のように連結管36が下になるように位置させ、C形ろう材42の一端を管体32の穴部37に連結管36の圧入部33が圧入している部分に当接するように管体32に嵌着する。
前記C形ろう材42は、管体32の外周に沿い、管体32の円断面において周方向に180°より長い全長を有している。
【0024】
したがって、C形ろう材42の一端を管体32の穴部37に連結管36の圧入部33が圧入している部分に当接するように管体32に嵌着する時、C形ろう材42は管体32を挟み込むようにしているため、C形ろう材42はそれ自体の形状により適切な位置に保持されるものである。
そして、その状態で炉内に入れると、C形ろう材42が溶けて管体32の外周を伝って、管体32の穴部37に連結管36の圧入部33が圧入している部分に流れ込み、それにより管体32の穴部37と連結管36の圧入部33がろう付けされるものである。
【0025】
このように、連結管36を管体32と同じ銅製とすることで、炉中ろう付けしても真ちゅう製のように脱亜鉛現象を起こして不具合が発生することがない。
更に、連結管36が下になるように位置させ、C形ろう材42の一端を管体32の穴部37に連結管36の圧入部33が圧入している部分に当接するように管体32に嵌着させた状態で炉中ろう付けを行うことにより、炉内の高温によりC形ろう材42が溶けると、管体32の外周を伝って、C形ろう材42の一端の下方に位置する穴部37と圧入部33との圧入している部分に流れ込んでろう付けされ、分岐管31の製造の工数を大幅に削減できるものである。
【0026】
次に熱交換器の製造でフィンパイプ20をフィンプレート19に固定するために炉中ろう付けするときに、同時に分岐管31の管体32と連結管36とをろう付けする場合について説明する。
【0027】
まず、熱交換器18のフィンプレート19の貫通孔26にフィンパイプ20を通し、更に貫通孔26のろう材用孔26bに棒ろう材を挿通した状態で、フィンパイプ20の端部同士をU字管21を介して連通連結する。
このとき、熱交換流路の出口側のフィンパイプ20の端部同士を、連結管36が下になるようにした分岐管31により連通連結する。
【0028】
そして、その状態でC形ろう材42の一端を管体32の穴部37に連結管36の圧入部33が圧入している部分に当接するように管体32に嵌着させてから、熱交換器18を炉中ろう付けすることにより、フィンパイプ20がろう材用孔26bに挿通された棒ろう材によって、複数の貫通孔26の各々のバーリング26aの内縁とろう付けされてフィンプレート19に固定されるのと同時に、分岐管31の管体32の穴部37と連結管36の圧入部33のろう付けも行うことができ、熱交換器18の製造の工数を大幅に削減できるものである。
【符号の説明】
【0029】
31 分岐管
32 管体
33 圧入部
34 筒部
36 連結管
37 穴部
42 C形ろう材