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  • 特許-収縮リング 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】収縮リング
(51)【国際特許分類】
   F16L 33/207 20060101AFI20230523BHJP
【FI】
F16L33/207
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021524009
(86)(22)【出願日】2019-11-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2019080440
(87)【国際公開番号】W WO2020094740
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2021-05-03
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2018/080452
(32)【優先日】2018-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514052379
【氏名又は名称】オエティカ シュヴァイツ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100104570
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 光弘
(72)【発明者】
【氏名】ミースマー・ステファン
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-530084(JP,A)
【文献】特表2002-502013(JP,A)
【文献】国際公開第2015/001853(WO,A1)
【文献】米国特許第05868435(US,A)
【文献】実開昭60-167886(JP,U)
【文献】独国特許出願公開第102007008274(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102007035930(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 33/207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストリップの両端部が突き合わせ溶接により接合されており、径方向内側に作用するプレスジョーを有する工具によって圧縮されることにより収縮する収縮リングであって、
円筒状の中央セクション(13)と、前記中央セクション(13)の両端部にそれぞれ設けられた円周エッジ(10)と、を有し、
前記円周エッジ(10)は、
端面(11)が径方向外方に向いた突出部(16)と、
前記中央セクション(13)の両端部から径方向外方に丸みを帯びて湾曲して前記突出部(16)と連結するリングエッジ領域(14)と、を有し、
前記中央セクション(13)は、
前記収縮リングのリング軸(12)に対して平行であり、
前記突出部(16)は、
前記中央セクション(13)に対して70°から90°の角度で傾いている
ことを特徴とする収縮リング。
【請求項2】
請求項1記載の収縮リングであって、
前記リングエッジ領域(14)の径方向外方への湾曲により、前記収縮リングの全周にわたって前記円周エッジ(10)の直径が前記中央セクション(13)に対して拡張されていることを特徴とする収縮リング。
【請求項3】
請求項1または2に記載の収縮リングであって、
前記端面(11)は、前記リング軸心(12)に対して0°から20°の角度で傾いていることを特徴とする収縮リング。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに1項に記載の収縮リングであって、
前記収縮リングの幅全体に亘り均一のバンド厚を有することを特徴とする収縮リング。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに1項に記載の収縮リングであって、
リング状に曲げられ、接合端が突き合わせ溶接されたスチールストリップで形成されていることを特徴とする収縮リング。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに1項に記載の収縮リングであって、
径方向マルチクリンピングによって、ホースを、パイプソケットとの重なり領域において前記パイプソケットに押し当てるために、当該収縮リングは、前記ホース上に押し込まれるように設計されていることを特徴とする収縮リング。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
いわゆるマルチクリンプリングまたは収縮リング(Schrumpfring)は、さまざまなバージョンで生産される。既知のプロセスにおいては、軸方向または螺旋に沿って溶接されたホースが、要求された幅のリングに切り分けられる。あるいは、リングの円周に対応する長さが、要求されたリング幅に応じて分割されたバンドからまっすぐまたは斜めに切断され、その後、リングを形成するように丸められて、2つの端部が突き合わせ溶接される。
【0002】
収縮(Schrumpfen)のために、リングは、径方向内側に作動するいくつかのプレスジョーを有する工具で圧縮される。マルチクリンピングとしても知られるこの収縮工程の間、バンドが十分に厚くないとリングが座屈するおそれがある。
【0003】
より一般的な収縮リングが独国特許出願公開第102007008274号明細書において説明されている。ここに説明されているリングは、パイプとのオーバーラップ領域で径方向マルチクリンピングによってホース上に押し当てられる。断面において、径方向内方に2回湾曲した構造を有しており、径方向内方のセクションが、ホースを保護するために丸みを帯びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】独国特許出願公開第102007008274号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的な目的として、本発明は、既知の収縮リングで発生する欠点を少なくとも部分的に克服することを目的とする。より具体的な目的は、より小さなバンド厚を所定の強度で使用可能にする収縮リングを特定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、リングを、軸周りの両円周エッジで70°から90°の角度で外側に曲げることにより達成される。この成形は、好ましくは、フランジング、または他の曲げまたは折り加工により実現するが、ビードまたはIビームの原理にしたがってリングの固有の剛性を高めるため、バンド厚がより薄くても収縮工程の間のリングの座屈を避けることができる。
【0007】
成形によりバンドエッジの直径が増加して、バンドエッジが丸みを帯びて外側に湾曲する。これにより、リングで囲まれたホース材料への損傷が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の実施形態は、図面を参照しながらより詳細に説明される。本明細書において下図が示される。
図1図1は、本発明に係る、フランジ状の円周エッジを有する収縮リング(Schrumpfring)の軸方向側面図である。
図2図2は、図1のA-A線に沿った軸方向断面図である。
図3図3は、本発明に係る収縮リングの斜視図である。
図4図4は、図2のX部を、拡大された軸方向断面として示す。
図5図5は、コンピュータによる、3つの収縮リングの荷重挙動のシミュレーション結果を含む力-変位線図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図示したリングは、一定のバンド強度またはバンド厚さを有し、張り出しのない中央セクション13に対して突出部(Schenkel)16が約70°から約90°の角度を形成するようにその2つの円周エッジ10で径方向外方に広がっている。特に約75°から約85°の角度が好ましい。
【0010】
示した実施形態において、その角度は約80°であり、周縁部10の実質的にストレートな端面11はリング軸心12に対して約10°の角度で延びている。リング中央セクション13は、径方向のさらに内方に位置しており、アールが付けられた領域16を有する両側で終わっている。
【0011】
リングの内面全体には、それが囲むホース(不図示)に関してエッジがない。外向きフランジ(Auswartsbordelung)の径方向高さは、好ましくは、クリンピング操作中の強い圧縮下であっても、内側リングセクション13の軸方向端部15がホースから離れるような高さである。中央セクション13は、留め金等により中断することなく周方向に連続して広がっている。
【0012】
マルチクリンプリングは、傷がつきやすいホース材料に用いられ、例えば自動車産業では給気または冷却/加熱用のシステムで適用されている。一般的なホース公差のために、様々な圧縮率が生じる。つまり、ホース太さが大きい場合には、より高い値、ホース太さが小さい場合には、より低い値が生じる。パイプソケットの直径公差によりこの効果が高まる。
【0013】
通常、リングの組み付けは経路に応じて行われる、すなわち、リング直径の減少は、定義された寸法に設定される。したがって、ホース太さおよびパイプソケットの前述の公差により、さまざまな圧縮率になる。つまり、圧縮率は正確には設定できず、ホース太さとソケット直径の公差によって変化する。
【0014】
本発明は、パフォーマンスを維持しつつ、ホース損傷のリスクを低減する。張り出しのない中央領域においてリングによって生じる圧縮率は変化しないが、フランジ状(gebordelten)のエッジ領域では、圧縮されたホースがスムーズに外に伸びる。したがってホース材料が保護される。
【0015】
しかしながら、とりわけ円周エッジ10の張り出し(Bordelung)によりリングの固有の剛性が高くなる。これにより、本発明は、径方向におけるリングの強度または寸法剛性を低下させることなく、より薄いバンド材料をリングに使用可能にする。同じ剛性でバンド厚を最大20%まで減少させることが可能であり、材料の相応の削減につながることが試験により明らかにされている。
【0016】
つまり、リングが収縮(Schrumpfen)の間に座屈するのを防止するために、これまで、実際の要求性能(ホース圧縮)と比較して大きすぎるバンド厚を用いる必要があった。また、バンド厚がより薄くても要求圧縮率を達成できるが、張り出しがないと、圧縮の間にリングが座屈するおそれがある。
【0017】
軸周りの周縁部10の外側への曲げによる収縮リング(Schrumpfring)の固有の剛性の向上を、有限要素法に基づくコンピュータシミュレーションにより定量化した。その結果を図5に示し、以下において説明する。
【0018】
それぞれがスチールストリップで作成され、その接合端が突き合わせ溶接(いわゆる、「クロス溶接」RX)された3つのマルチクリンプリング(MCR)を試験した。第一のリング(MCR RX)は、その円周エッジ等でまったく外側に曲げられておらず、つまり、ストリップ厚さが一様で、軸方向において均一な直径約40mmの単純なリングである。第二および第三のリングは、それぞれ、外側に湾曲した周縁(「カールエッジ」 CE)を有し、それ以外の点では第一のリングと同様である。ここで、第二のリング(MCR RX CE≒45°)の軸心回りの円周エッジ10上の突出部16は、フランジのないリング中間セクション13に対して約45°の配置角度で延びている。第三のリング(MCR RX CE<90°)の場合、この配置角度は約85°である。
【0019】
いわゆるhalf-shellモデルで3つのリングの挙動をシミュレートした。ここで、クリンピングで収縮させたリングとほぼ同じ直径を有し、半月形の2つのシェルからなるディスクのまわりに、リングがつぎつぎと配置されている。シミュレーションでは、2つのhalf-shellを互いに反対の方向に移動させ、3つのリングがそれぞれどのように動くかを、有限要素解析を用いてシミュレートする。
【0020】
図5には、それぞれのリングによって生じる復元力の大きさが、2つのhalf-shellの変位にどれだけ依存することが示されている。ニュートン単位の復元力または反力は、リングの強度を決定するものであり、2つのhalf-shell間の距離に起因するミリメートル単位のリング直径拡大に依存して示されている。最大10mmの直径拡大範囲において、強く曲げられた第三のリング「MCR RX CE<90°」は、約45°だけ曲げられた第二のリング「MCR RX CE≒45°」よりも常に高い反力を生じ、また一方、これは、張り出しのない第一のリング「MCR RX」よりも常に高い反力を生じることがわかる。最大約1mmまでの直径拡大エリアのみが技術的に関連することに注意すべきである。さらに大きな直径拡大の場合、収縮リングは、収縮リングによるパイプソケットとホースとのシール接続に必要な、クリンピング工程により得られる直径収縮を喪失する。
【0021】
それぞれの反力の値を、技術的現実に典型的に関連する1mm直径拡大の値と比較すると、第一のリング 「MCR RX」の場合、約6,600Nの力、第二のリング「MCR RX CE≒45°」の場合、約7,900Nの力、第三のリング「MCR RX CE<90°」の場合、約9,600Nの力が得られる。したがって、径方向の拡大に対する反力、ひいては本発明の実施形態に係る第三のリングの強度が、張り出しのないリングに比較して45%まで向上し、約45°だけ曲げられたリングに比較しても20%まで向上する。
【0022】
要約すれば、本発明は、2つの円周エッジ10が張り出した(gebordelt)収縮リングに関するものであり、この収縮リングは、その固有強度がより大きいため、座屈のリスクなしに、より薄いバンド厚の適用を可能にする。円周エッジ10は、径方向外側に向いた突出部16で終わり、突出部16は、軸方向においてより内側に位置していて張り出しのないリング中央セクション13と約70°から90°の角度をなす。張り出しによりリングエッジの直径が拡張し、リングエッジ領域14が丸みを帯びて外側に曲がり、エッジ面11が、リング軸心12に関して好ましくは約0°から約20°の角度で伸びている。

図1
図2
図3
図4
図5