(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】行動予測システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/04 20230101AFI20230524BHJP
G08G 5/04 20060101ALI20230524BHJP
G08G 3/02 20060101ALI20230524BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20230524BHJP
B60W 30/08 20120101ALI20230524BHJP
G01S 13/933 20200101ALI20230524BHJP
【FI】
G06Q10/04
G08G5/04 A
G08G3/02 A
G08G1/16 C
B60W30/08
G01S13/933
(21)【出願番号】P 2018237263
(22)【出願日】2018-12-19
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】板橋 直亮
(72)【発明者】
【氏名】河野 充
(72)【発明者】
【氏名】星野 智史
(72)【発明者】
【氏名】勝本 健史
【審査官】野元 久道
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-058780(JP,A)
【文献】特開2006-284254(JP,A)
【文献】特開2010-145115(JP,A)
【文献】特開2018-169094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G08G 5/04
G08G 3/02
G08G 1/16
B60W 30/08
G01S 13/933
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
行動を予測する対象となる移動体の進行方向に関する情報を取得する情報取得手段と、
取得された前記進行方向に関する情報に基づいて前記移動体の進行方向に関する確率分布モデルを作成する確率分布モデル作成手段と、
作成された前記確率分布モデルを用い、前記移動体が行動可能な領域を区分した各エリアごとに前記移動体が当該エリアを通過する確率をそれぞれ算出して前記各エリアにそれぞれ割り当てた確率のマップを作成するマップ作成手段と、
を備え、
前記マップ作成手段は
、前記移動体の旋回率を算出し、算出した旋回率に基づいて前記確率分布モデルを修正しながら適用して、前記各エリアごとに前記移動体が当該エリアを通過する確率をそれぞれ算出することを特徴とする行動予測システム。
【請求項2】
前記確率分布モデル作成手段は、方向統計学に従って、取得された前記進行方向に関する情報に基づいて前記確率分布モデルを作成することを特徴とする請求項1に記載の行動予測システム。
【請求項3】
前記確率分布モデル作成手段は、前記情報取得手段が取得した前記進行方向に関する情報に基づいて最後に算出した前記進行方向のデータを含む直近の所定個数の前記進行方向のデータに基づいて前記確率分布モデルを作成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の行動予測システム。
【請求項4】
前記確率分布モデル作成手段は、フォン・ミーゼス分布を用いて前記確率分布モデルを作成することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の行動予測システム。
【請求項5】
前記確率分布モデル作成手段は、前記移動体の進行方向の傾向が変化した場合、それまでに前記進行方向に関する情報に基づいて算出した前記進行方向のデータをリセットし、新たに算出した前記進行方向のデータに基づいて前記確率分布モデルを作成することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の行動予測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、行動予測システムに係り、特に航空機や船舶、車両等の移動体の行動を予測するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機や船舶、車両等の移動体との衝突を回避したりそれらを追尾したりする際、それらの移動体から今後の進路等に関する情報が得られない場合には、その移動体の行動を予測することが必要になる。
従来の行動予測システムでは、移動体の将来の位置等を精度良く推定するために、移動体の運動を近似するための運動モデル(例えば等速直線運動や等加速度運動、旋回運動等)を切り替えて適用したり誤差を修正したりしながら移動体の位置等を2次元上あるいは3次元上の点や線として予測していた(例えば特許文献1等参照)。
すなわち、従来の行動予測システムでは、移動体の今後の行動を予測する場合、移動体の行動を2次元や3次元の経路として予測する場合が多かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、人間が移動体の行動を予測する際、移動体からその行動に関する情報を得られない(あるいは取得しない)場合には、移動体の行動を観察し、行動の傾向やパターン等に基づいて「この方向に動きそうだ」、「あそこ(場所)に行くかもしれない」と移動体の行動を確率的に予測する場合が少なくない。
しかし、このように、人間が行うように移動体の行動を行動予測システムが自動的に(すなわち人間が介在せずに)確率的に予測する手法は、今のところ確立されているとは言えない。
【0005】
本発明は、上記の点を鑑みてなされたものであり、移動体の行動を確率的に予測するための材料を提供することが可能な行動予測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、行動予測システムにおいて、
行動を予測する対象となる移動体の進行方向に関する情報を取得する情報取得手段と、
取得された前記進行方向に関する情報に基づいて前記移動体の進行方向に関する確率分布モデルを作成する確率分布モデル作成手段と、
作成された前記確率分布モデルを用い、前記移動体が行動可能な領域を区分した各エリアごとに前記移動体が当該エリアを通過する確率をそれぞれ算出して前記各エリアにそれぞれ割り当てた確率のマップを作成するマップ作成手段と、
を備え、
前記マップ作成手段は、前記移動体の旋回率を算出し、算出した旋回率に基づいて前記確率分布モデルを修正しながら適用して、前記各エリアごとに前記移動体が当該エリアを通過する確率をそれぞれ算出することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の行動予測システムにおいて、前記確率分布モデル作成手段は、方向統計学に従って、取得された前記進行方向に関する情報に基づいて前記確率分布モデルを作成することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の行動予測システムにおいて、前記確率分布モデル作成手段は、前記情報取得手段が取得した前記進行方向に関する情報に基づいて最後に算出した前記進行方向のデータを含む直近の所定個数の前記進行方向のデータに基づいて前記確率分布モデルを作成することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の行動予測システムにおいて、前記確率分布モデル作成手段は、フォン・ミーゼス分布を用いて前記確率分布モデルを作成することを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の行動予測システムにおいて、前記確率分布モデル作成手段は、前記移動体の進行方向の傾向が変化した場合、それまでに前記進行方向に関する情報に基づいて算出した前記進行方向のデータをリセットし、新たに算出した前記進行方向のデータに基づいて前記確率分布モデルを作成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、移動体の行動を確率的に予測するための材料、すなわち人間が行うように移動体の行動を確率的に予測するための確率のマップを自動的に作成してユーザに提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る行動予測システムの全体構成を表すブロック図である。
【
図2】作成された確率分布モデルすなわち確率密度関数の例を表すグラフである。
【
図3】(A)一様な分布、(B)ピークが低く幅が広い分布、(C)ピークが高く幅が狭い分布の確率分布モデルの例を表す図である。
【
図4】(A)移動体の行動可能領域を上方から見た図であり、(B)マップの構成例を表す図である。
【
図5】1ステップで(A)1セル分ずつ、(B)2セル分ずつ移動すると設定されている場合にセルx
k-1から次の1ステップで移動可能な各セルX
kを説明する図である。
【
図6】(A)式(3)中のθη等を説明する図であり、(B)セルx
k-1と境界円上のセルの中心同士を結ぶ線等を表す図である。
【
図7】式(4)中のδ(x
k-1,X
k,θη)やδ(x
k-1,θη)を説明する図である。
【
図8】(A)1ステップ目では移動体が現在のセルから隣接する8個のセルに移動する確率を計算し、(B)2ステップ目では移動体が1ステップ目で移動した各セルから外側に隣接する各セルに移動する確率を計算することを説明する図である。
【
図9】(A)セルx2に隣接する各セル、(B)セルx3に隣接する各セルを説明する図である。
【
図10】(A)3ステップ目に移動体が移動するセルを表す図であり、(B)移動体がセルx1からセルx10まで移動する経路を説明する図である。
【
図11】(A)移動体がセルx1からセルx11まで移動する経路、(B)移動体がセルx1からセルx12まで移動する経路を説明する図である。
【
図12】作成されたマップの例を表す図であり、移動体が(A)移動体が直進している場合、(B)左右に進行方向を変えながら移動する場合の例を表す図である。
【
図13】プロットされた移動体の各位置を近似する円の例を表す図である。
【
図14】マップ上に設定された、(A)移動体の現在のセルを中心とする単位円の例、(B)最も高い確率が算出されたセルを中心とする単位円の例を表す図である。
【
図15】確率分布モデルを修正するための進行方向θαの算出方法等を説明する図である。
【
図16】移動体が旋回する状態が反映されたマップの例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る行動予測システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下では、行動予測システムが哨戒機等の航空機(無人航空機を含む。以下、自機という場合がある。)に搭載されており、行動を予測する対象となる移動体が海上を航行する船舶である場合を想定して説明するが、行動予測システムは船舶や車両等に搭載されていてもよく、また、航空機等に搭載されていなくてもよい。また、行動を予測する対象となる移動体も、船舶である場合に限定されず、航空機や車両、人等であってもよく、本発明は、航空機に搭載された行動予測システムで船舶の行動を予測する場合に限定されない。
【0016】
また、以下では、説明を分かりやすくするために、移動体(例えば船舶)の進行方向θnを、北を0、東をπ/2、西を-π/2とした場合の-π<θn≦πの範囲内の角度で表す。すなわち、以下では、移動体の進行方向θnとして水平面内の進行方向のみを対象として処理を行う場合について説明する。
そのため、後述する確率分布モデルMoやマップMaについても2次元的な確率分布モデルMoやマップMaを作成する場合について説明するが、例えば移動体が航空機であるような場合には、移動体の進行方向θnを上下方向も含めた3次元的に把握し、確率分布モデルMoやマップMaも3次元的なものとして作成するように構成することも可能であり、本発明にはその場合も含まれる。
【0017】
[全体構成]
図1は、本実施形態に係る行動予測システムの全体構成を表すブロック図である。
行動予測システム1は、情報取得手段10と、記憶手段20と、確率分布モデル作成手段30と、マップ作成手段40とを備えて構成されている。行動予測システム1は、例えばCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピュータ等で構成することが可能である。
情報取得手段10は、行動を予測する対象となる移動体(例えば船舶)の進行方向θnに関する情報を取得するようになっている。
【0018】
この場合、自機と移動体との間で無線通信を行うことが可能である場合には、情報取得手段10を無線通信モジュール等で構成することができる。
そして、例えば、移動体から進行方向θnのデータを取得することができる場合には、情報取得手段10は、例えば所定の時間間隔で移動体からそのデータを取得する。この場合、移動体から取得した移動体の進行方向θnのデータ自体が、移動体の進行方向θnに関する情報ということになる。
【0019】
また、例えば、移動体から位置(例えば緯度、経度)のデータを取得することができる場合には、情報取得手段10は、所定の時間間隔で移動体から位置のデータを取得する。この場合は、移動体から取得した移動体の位置のデータが、移動体の進行方向θnに関する情報ということになる。
そして、この場合は、後述する確率分布モデル作成手段30が、情報取得手段10が今回取得した移動体の位置の、前回取得した移動体の位置からの変位を算出し、その変位の方向を移動体の進行方向θnとして用いるように構成することができる。なお、以下においても同様であるが、この移動体の進行方向θnの算出処理を情報取得手段10が行うように構成することも可能である。
【0020】
一方、自機と移動体との間で無線通信を行うことができない場合や無線通信を行わない場合には、情報取得手段10を、例えばレーダやカメラ、センサ等で構成することが可能である。この場合は、レーダやセンサ等で測定したデータやカメラ等で撮影した画像が、移動体の進行方向θnに関する情報ということになる。
そして、例えば、確率分布モデル作成手段30は、レーダ等で測定したデータやカメラ等で撮影した画像等を解析するなどして、自機と移動体との距離や方向を算出し、それらと自機の位置や進行方向とから移動体の位置を割り出す。そして、上記と同様にして移動体の位置の変位を算出し、その変位の方向を移動体の進行方向θnとして用いるように構成することができる。
なお、確率分布モデル作成手段30が、レーダ等で測定したデータやカメラ等で撮影した画像等を解析するなどして移動体の進行方向θnを直接割り出すように構成することも可能である。
【0021】
記憶手段20は、情報取得手段10や確率分布モデル作成手段30から移動体の進行方向θnのデータが送信されてくると、それらを保存する。
また、記憶手段20は、後述するように確率分布モデル作成手段30が作成した確率分布モデルMoやマップ作成手段40が作成したマップMaも保存するようになっている。
【0022】
なお、記憶手段20に、情報取得手段10から送信されてきた移動体の進行方向θnに関する情報(すなわち移動体の位置のデータやレーダ等で測定したデータ、カメラ等で撮影した画像等)を保存するように構成することも可能である。
また、記憶手段20には、この他、行動予測システム1に以下で説明する行動予測処理を行わせるためのプログラム等や各種のデータやパラメータ等も保存されている。
【0023】
以下、確率分布モデル作成手段30やマップ作成手段40について説明する。
また、それとともに、本実施形態にかかる行動予測システム1の作用についてもあわせて説明する。
【0024】
[確率分布モデルMoの作成について]
確率分布モデル作成手段30は、上記のようにして情報取得手段10が取得した移動体の進行方向θnに関する情報に基づいて、移動体の進行方向θnに関する確率分布モデルMoを作成するようになっている。
なお、本実施形態では、確率分布モデル作成手段30は、上記のように情報取得手段10が移動体の進行方向θnに関する情報を取得するごとに確率分布モデルMoを作成するようになっている。その際、確率分布モデル作成手段30は、必要に応じて、移動体の進行方向θnに関する情報から移動体の進行方向θnを算出することは前述したとおりである。
【0025】
本実施形態では、確率分布モデル作成手段30は、移動体の進行方向θnのデータに基づいて確率分布モデルMoを作成する際、方向統計学に従って、確率分布モデルMoを作成するようになっている。そして、本実施形態では、確率分布モデル作成手段30は、フォン・ミーゼス分布を用いて確率分布モデルMoを作成するようになっている。
以下、本実施形態にかかる確率分布モデル作成手段30について具体的に説明する。
【0026】
確率分布モデル作成手段30は、上記のように、情報取得手段10から移動体(例えば船舶)の進行方向θnに関する情報を取得すると、それに基づいて移動体の進行方向θnを算出して、記憶手段20に保存する。
なお、以下では、移動体から進行方向θn自体のデータを取得する場合も含めて(この場合、実際には進行方向θnを算出していない。)、「移動体の進行方向θnを算出する」という。
【0027】
そして、本実施形態では、確率分布モデル作成手段30は、記憶手段20から読み出した以前に算出した移動体の進行方向θnのデータと今回算出した移動体の進行方向θnのデータに対して下記の式(1)で表されるフォン・ミーゼス分布を当てはめて、確率分布モデルMoを確率密度関数f(θ)の形で作成するようになっている。
【数1】
ここで、I
0(β)は0次の第一種変形ベッセル関数であり、上記の式(2)で表される。
【0028】
具体的には、上記の式(1)の基準角μとして、今回算出した移動体の進行方向θnが用いられる。そのため、確率分布モデル作成手段30は、式(1)の基準角μに、今回算出した移動体の進行方向θnを代入する。
また、
図2に示すように、以前に算出した移動体の進行方向θnのデータ(グラフの横軸から上方に伸びる各線参照)は、データの分布の広がりを規定するために用いられ、以前に算出した移動体の進行方向θnのデータの広がりに適合するようにパラメータβの値が調整される。
このようにして確率密度関数f(θ)が決定され、確率分布モデルMoが作成される。なお、
図2では、今回算出した移動体の進行方向θn(すなわち基準角μ)が真北(θn=0)よりやや西向き(θとしてはやや負側)であった場合が表されている。
【0029】
このように構成すると、移動体の進行方向θnを算出する前の初期状態では、進行方向θnのデータが1つも算出されていないため、確率分布モデルMoすなわち確率密度関数f(θ)は、例えば
図3(A)に示すように各確率変数θ(すなわち移動体の進行方向θn)について一様な分布になる。
なお、
図3(A)及び後述する
図3(B)、(C)では、移動体(例えば船舶)Aを中心とする単位円上に、確率分布モデルMo(確率密度関数f(θ))の各確率変数θにおける各値f(θ)の大きさが上向きの棒の長さとして表されている。
【0030】
そして、移動体Aの進行方向θnが算出されていくと、確率分布モデルMoすなわち確率密度関数f(θ)は、
図3(A)に示した各確率変数θについて一様な分布であった状態から分布が変化し、
図3(B)に示すように、今回算出した移動体Aの進行方向θn(すなわち移動体Aの現在の進行方向θn)をピークとし、そこからなだらかに減少する分布に変わっていく。
そして、例えば、移動体Aが不審船であり、左右に方向を変えながら逃げるような場合のように、移動体Aの進行方向θの振れ幅が大きい場合には、算出した移動体Aの進行方向θの広がりが大きくなるため、確率分布モデルMoすなわち確率密度関数f(θ)は、
図3(B)に示したようにその幅(例えば半値幅)が広くなる。
【0031】
一方、移動体Aが同一方向に直進している場合など、移動体Aの進行方向θnが所定の方向を向いているような場合には、算出される移動体Aの進行方向θnはいずれも当該所定の方向(所定のθ)にほぼ同じ値あるいはそれに近い値になるため、データの広がりが狭くなる。
そのため、このような場合には、
図3(C)に示すように、確率分布モデルMoすなわち確率分布モデルMoのピークがより高く現れ、幅が狭い分布になる。
【0032】
以上のように、確率分布モデル作成手段30は、移動体Aの進行方向θnに関する情報に基づいて移動体Aの進行方向θnを算出し、算出した移動体Aの進行方向θnに対して統計処理を行って、移動体の進行方向θnに関する確率分布モデルMoを作成するようになっている。
そして、このようにして作成された確率分布モデルMoは、人間が移動体Aの行動(この場合は移動体Aである船舶の航行状況)の傾向やパターン等に基づいて移動体Aの行動の方向性を確率的に予測した結果に相当するものになっている。
【0033】
すなわち、例えば、移動体Aの進行方向θnが一定の方向を向いている場合、人間はそれを観察して「移動体Aは現在○○の方向に航行しており、今後もその方向に航行する確率が高い」と予測する。
そして、同じ状況の下で、確率分布モデルMoは、
図3(C)に示したように当該進行方向θnにピークが高く現れ幅が狭い分布になる。
このように、確率分布モデルMoは、確率が高いと人間が予測する状況を、ピークの高さや幅(例えば半値幅)の狭さで表すものとなっている。
【0034】
また、例えば、移動体Aが左右に旋回しながら逃げる場合のようにその進行方向θnがばらつく場合、人間はそれを観察して「移動体Aは現在は○○の方向に航行しているが、今後もその方向に航行する確率は低い」と予測する。
そして、同じ状況の下で、確率分布モデルMoは、
図3(B)に示したようにピーク(現在の進行方向θn)が低く現れ、幅が広い分布になる。
このように、確率分布モデルMoは、確率が低いと人間が予測する状況を、ピークの低さや幅の広さで表すものとなっている。
【0035】
[確率分布モデルMoの作成に関する変形例]
[変形例1]
なお、例えば北の方向(θn=0)に航行していた移動体Aが進行方向θnを北東の方向(θn=π/4)に変え、その後も北東の方向への航行を続けているような場合に、確率分布モデルMoを作成する基となる移動体Aの進行方向θnのデータの中に過去の古いデータが含まれたままになっていると、確率分布モデルMoが移動体Aの現在の進行状況を反映できなくなる可能性がある。
すなわち、上記の場合において、移動体Aの進行方向θnが北東の方向に変わった直後は、移動体Aの進行方向θnがまた北の方向に戻る可能性があるため、確率分布モデルMoを作成するための移動体Aの進行方向θnのデータの中に、北の方向に航行していた際の進行方向θnのデータ(θn=0)が含まれていてもよい。
【0036】
一方、移動体Aの進行方向θnが北東の方向に変わった後、ある程度時間が経過しても移動体Aの進行方向θnが北東のままであるような場合には、人間はそれを観察して「移動体Aは現在北東の方向に航行しており、今後もその方向に航行する確率が高い」と予測する。そのため、この状況の下で、確率分布モデルMoは、北東の方向(θn=π/4)にピークを有し、ピークが高く幅が狭い分布(
図3(C)参照)になるべきである。
しかし、移動体Aの進行方向θnが北東の方向に変わった後も、確率分布モデルMoを作成するための移動体Aの進行方向θnのデータの中に、北に進行していた際の進行方向θn(=0)のデータが含まれ続けていると、それらの存在のために確率分布モデルMo(確率密度関数f(θ))の幅が狭くならず、確率分布モデルMoは、北東の方向(θn=π/4)にピークを有するが、ピークが低く幅が広い分布(
図3(B)参照)になってしまう可能性がある。しかし、これでは、確率分布モデルMoが、上記のような人間の予測すなわち「移動体Aは今後も北東の方向に航行に航行する確率が高い」とする予測に対応するものにならない。
【0037】
そこで、本実施形態では、確率分布モデル作成手段30は、情報取得手段10が取得した移動体Aの進行方向θnに関する情報に基づいて最後に算出した移動体Aの進行方向θnのデータ(今回算出したデータ)を含む直近の所定個数の進行方向θnのデータに基づいて、上記のようにして確率分布モデルMoを作成するようになっている。
この場合、確率分布モデル作成手段30は、移動体Aの進行方向θnを算出するごとに最も過去に算出した進行方向θnのデータを破棄していき(あるいは少なくとも確率分布モデルMoの作成には使用しないようにして)、常時、最新の進行方向θnのデータを含む所定個数の進行方向θnのデータのみに基づいて確率分布モデルMoを作成することになる。
【0038】
このように構成すれば、上記のように移動体Aが進行方向θnを変えたような場合、進行方向θnを変える前の古いデータは、次第に確率分布モデルMoの作成に用いられなくなっていく。
そのため、作成された確率分布モデルMoが、人間が移動体Aの行動(この場合は移動体Aである船舶の航行状況)の傾向やパターン等に基づいて移動体Aの行動の方向性について行った確率的な予測に、より的確に対応するものになる。
【0039】
[変形例2]
一方、移動体Aが激しく急旋回するなどして移動体Aの進行方向θnが大きく変化した場合に、それまでに算出した移動体Aの進行方向θnのデータを使い続けるよりも、進行方向θnの傾向が変化した後に算出したデータのみを用いて新たに確率分布モデルMoを作成し直した方が、確率分布モデルMoが移動体A(移動体)の行動をより反映したものになる場合がある。
そこで、例えば、確率分布モデル作成手段30は、移動体A(移動体)の進行方向θnの傾向が大きく変化した場合には、それまでに進行方向θnに関する情報に基づいて算出した移動体Aの進行方向θnのデータをリセット(破棄)し、傾向が変化した後に新たに算出した移動体Aの進行方向θnのデータのみに基づいて確率分布モデルMoを作成するように構成することが可能である。
【0040】
この場合、移動体Aの進行方向θnの傾向が大きく変化したことを表す閾値を、例えば標準偏差σの2倍(2σ)とすることが可能である。
すなわち、例えば、今回算出した移動体Aの進行方向θnnewと、前回算出した移動体Aの進行方向θnoldとの差の絶対値|θnnew-θnold|が、前回作成された確率分布モデルMo(確率密度関数f(θ))の標準偏差σの2倍以上である場合に、上記のように移動体Aの進行方向θnのデータをリセットし、その後、新たに算出した移動体Aの進行方向θnのデータのみに基づいて確率分布モデルMoを作成するように構成することができる。
【0041】
[確率分布モデルMoの作成について]
次に、本実施形態に係るマップ作成手段40(
図1参照)におけるマップ作成処理について説明する。
マップ作成手段40は、上記のようにして確率分布モデル作成手段30が作成した確率分布モデルMo(確率密度関数f(θ))を用い、移動体Aが行動可能な領域を区分した各エリアごとに移動体Aが当該エリアを通過する確率をそれぞれ算出して各エリアrにそれぞれ割り当てた確率のマップMa(以下、単にマップMaという。)を作成するようになっている。
【0042】
上記のように、確率分布モデルMo(確率密度関数f(θ))は、移動体Aの行動の傾向やパターン等に基づいて移動体Aの行動の方向性を確率的に予測したものであり、マップMaはそのような確率分布モデルMo(確率密度関数f(θ))を用いて作成される。
そのため、マップMaは、移動体Aが現在の行動の傾向やパターン等に従って今後も行動した場合に移動体Aが各エリアを通過する確率を、各エリアにそれぞれ割り当てたものになる。
なお、後述するように、実際には、マップMaは、移動体Aが行動可能な領域の各エリアに対応する各セルを有しており、算出した各エリアを通過する確率を、各エリアにそれぞれ対応する各セルにそれぞれ割り当てたものになる。
【0043】
[マップの構成等について]
以下、マップ作成手段40におけるマップMaの作成について、具体的に説明する。
例えば移動体Aが船舶である場合、移動体Aが行動可能な領域は海上等の全域に及ぶが、移動体Aが哨戒機等の航空機からのレーダ等が届く範囲にいる場合にしか移動体Aの進行方向θnに関する情報を取得することができない。
つまり、移動体Aが哨戒機等の航空機からのレーダ等が届く範囲外にいる場合には移動体Aの進行方向θnに関する情報を取得することができず、移動体Aの行動を予測することができないため、ここでは、移動体Aが行動可能な領域R(以下、行動可能領域Rという。)を、哨戒機等の航空機からのレーダが届く領域とする。
【0044】
移動体Aの行動可能領域Rを上方(哨戒機等の航空機側)から見ると、
図4(A)に示すような航空機(図示省略)を中心とする円内の領域になる。
そして、同図に示すように、移動体Aの行動可能領域Rを、例えば格子状の各エリアrに区分する。
【0045】
一方、マップ作成手段40は、これと同形のマップMaを有している。すなわち、マップ作成手段40は、
図4(B)に示すように、円形の領域内が各セルxで格子状に区分されたマップMaを有している。
マップMa上の各セルxは、移動体Aの行動可能領域R内の各エリアrにそれぞれ対応している。
【0046】
なお、以下では、行動可能領域R内のエリアrと、それに対応するマップMa上のセルxとを同一視して、「移動体Aがセルxにいる」等の説明のしかたをする場合があるが、これは正確には「移動体AがマップMa上の当該セルxに対応する行動可能領域R内のエリアrにいる」等の内容を表す。
また、以下、移動体Aが現在いるセルxをセルx1と表す(
図4(B)参照)。
【0047】
[動的計画法によるマップの作成について]
本実施形態では、マップ作成手段40は、動的計画法により、各エリアrごとに(すなわちマップMa上のセルxごとに)移動体Aが当該エリアr(当該セルx)を通過する確率をそれぞれ算出するようになっている。
動的計画法には種々の定義のしかたがあるが、問題を複数の部分問題に分割し、部分問題の計算結果を他の部分問題の計算に利用しながら問題全体を解いていく手法である。
【0048】
本実施形態では、マップ作成手段40は、移動体Aが局所的にある方向に移動する確率を導出することを部分問題とし、それを繰り返し計算することによって、移動体Aが行動可能領域R内の各エリアr(マップMa上の各セルx)を通過する確率をそれぞれ算出するようになっている。
「移動体Aが局所的にある方向に移動する確率」は、上記のようにして確率分布モデル作成手段30が作成した確率分布モデルMo(確率密度関数f(θ))をそのままの形で用いるのではなく、人間が予測する場合のように、いわば「あらゆる状況を考慮して」確率が計算される。
【0049】
本実施形態では、マップ作成手段40は、下記の式(3)を用いて移動体Aが局所的にある方向に移動する確率Pr(X
k|x
0:k-1)を計算するようになっている。
【数2】
【0050】
ここで、「k」は繰り返し計算のステップ数を表す。
また、式(3)の左辺のPr(Xk|x0:k-1)は、(0ステップ目から)k-1ステップ目で移動体Aが現在のセルx1からセルxk-1まで移動した状態で、次の1ステップで(すなわちkステップ目に)セルXkに移動する確率を表している。
そして、式(3)式の右辺を大雑把に説明すると、Pr(x0:k-1)が「k-1ステップ目で移動体Aが現在のセルx1からセルxk-1まで移動する確率」に対応しており、ΣPr(Xk|xk-1,θη)が「セルxk-1から次の1ステップでセルXkに移動する確率」に対応している。なお、このPr(x0:k-1)や算出したPr(Xk|x0:k-1)の使い方等については後で説明する。
【0051】
以下、式(3)について詳しく説明する。
まず、式(3)における、セルx
k-1から次の1ステップで移動可能な「セルX
k」は、1ステップで1セル分ずつ移動すると設定されている場合には、
図5(A)に示すようにセルx
k-1に隣接する8個のセルxA~xHになる。そして、この場合、Pr(X
k|x
0:k-1)中の「X
k」はこれら8個のセルxA~xHを一般的に表すものであり、Pr(X
k|x
0:k-1)は、Pr(xA|x
0:k-1)、Pr(xB|x
0:k-1)、…、Pr(xH|x
0:k-1)の8個の確率を1つの式で表したものである。
【0052】
なお、以下では、このように1ステップで1セル分移動すると設定されていることを前提に説明するが、例えば、1ステップで2セル分まで移動することが許容されている場合には、
図5(B)に示すように、次の1ステップで移動可能なセルX
kは、セルx
k-1の周囲の24個のセルxA~xXということになる。
このように、1ステップでmセル分まで移動することが許容されている場合には、次の1ステップで移動可能なセルX
kは、セルx
k-1の周囲の{(2m+1)
2-1}個のセルということになる。
【0053】
次に、式(3)の右辺中の「θη」は、
図6(A)に示すように、マップMaの境界を表す円(移動体Aの行動可能領域Rの境界を表す円(
図4(A)参照)に対応する。以下、境界円という。)が通る各セル(
図6(A)で斜線を付したセル)の中心とセルx
k-1の中心とを結ぶ線Qの、基準線P(この場合は真北に向かう線。
図6(A)ではセルx
k-1の中心から図中上方に向かう線P)に対する角度を表す。
なお、上記の角度がθηであるマップMaの境界円上のセルのことを、以下、略してセルθηという。
【0054】
そして、
図6(A)の場合、境界円上のセルθηは32個あり、
図6(B)に示すようにセルx
k-1とセルθηの中心同士を結ぶ線Qは32本になる。そのため、θη(θ1~θ32)も32個存在することになり、式(3)の右辺の総和(Σ)は、この場合は32個のθηについて行うことになる。
なお、行動可能領域Rを区分する各エリアrやそれらに対応するマップMa上の各セルxをより細かくすれば、セルθηの数はより多くなる。また、このようにθηを離散的な値として総和を計算する代わりに、θηを連続的な値として積分を行うように構成することも可能である。
しかし、θηを連続的な値として積分するよりも、θηを離散的な値として総和を計算する方が、計算量が少なくなり計算の負荷を軽くすることができる。また、θηを離散的な値として総和を計算するように構成しても十分に有効なマップMaを作成することが可能である。
【0055】
次に、式(3)の右辺のΣPr(X
k|x
k-1,θη)について説明する。
本実施形態では、Pr(X
k|x
k-1,θη)は「移動体Aがセルx
k-1からセルθηに向かって(すなわち角度θηの方向に)移動する際にセルx
k-1から次の1ステップでセルX
kに移動する確率」を表すものであり、下記の式(4)に従って計算される。
【数3】
【0056】
図7に簡略化して示すように、式(4)のδ(x
k-1,X
k,θη)は、移動体Aがセルx
k-1からセルX
kを経由してセルθηに行くまでの距離を表し、セルx
k-1とセルX
kの中心同士の距離L1と、セルX
kとセルθηの中心同士の距離L2との合計として計算される。
また、δ(x
k-1,θη)は、セルx
k-1とセルθηの中心同士の距離L3であり、セルx
k-1とセルθηとの間の最短距離を表す。なお、Kは平均をとるための係数であり、f(θ)は、前述したように確率分布モデル作成手段30が作成した確率分布モデルMoすなわち確率密度関数である。
【0057】
この場合、距離δ(xk-1,Xk,θη)が最短距離δ(xk-1,θη)より短くなることはないため、δ(xk-1,Xk,θη)-δ(xk-1,θη)は0又は正の値になる。そして、係数αは正である。
そのため、exp[-α(δ(xk-1,Xk,θη)-δ(xk-1,θη))]は、距離δ(xk-1,Xk,θη)が最短距離δ(xk-1,θη)に近ければ近いほど大きな値になり、距離δ(xk-1,Xk,θη)と最短距離δ(xk-1,θη)との差が大きくなるほど小さな値になる。
【0058】
すなわち、式(4)のexp[-α(δ(xk-1,Xk,θη)-δ(xk-1,θη))]は、セルxk-1からセルθηに向かって移動する移動体Aがセルxk-1から次の1ステップ(すなわちkステップ目)でセルXkに移動する際に、セルXkが最短距離δ(xk-1,θη)の経路に近いほど、移動体AがセルXkに移動する確率が高くなり、セルXkが最短距離δ(xk-1,θη)の経路から離れるほど、移動体AがセルXkに移動する確率が低くなることを表している。
これは、セルθηに向かって移動する移動体Aがあるセルxk-1から次の1ステップでセルXkに移動する場合、セルθηとは別の方向に迂回してから行くよりも、セルθηに向けて真っすぐ進んで行く可能性の方が高いという人間の予測に対応するものである。
【0059】
一方、そもそもセルθηの方向に進行する確率が、上記のように確率分布モデル作成手段30により確率分布モデルMoすなわち確率密度関数f(θ)として与えられている。
そのため、式(4)では、上記のようにして計算されるexp[-α(δ(xk-1,Xk,θη)-δ(xk-1,θη))]にf(θη)を乗算することで、Pr(Xk|xk-1,θη)が計算されるようになっている。
【0060】
式(3)では、このようにしてθηごとにPr(X
k|x
k-1,θη)を計算し、取り得る全てのθη(
図6(A)、(B)の場合は32個のθη)についてPr(X
k|x
k-1,θη)の総和(Σ)を計算し、さらにそれを平均することで、「セルx
k-1から次の1ステップでセルX
kに移動する確率」を計算するようになっている(式(3)の右辺のΣPr(X
k|x
k-1,θη)の項)。
そして、このように、取り得る全てのθηについて考慮することは、前述したように、人間の予測における「あらゆる状況を考慮する」ことに対応している。
【0061】
次に、式(3)の右辺のPr(x
0:k-1)について説明する。
移動体Aは、k-1ステップ目で現在のセルx1(
図4(B)参照)から必ず(すなわち100%の確率で)セルx
k-1に移動するわけではない。そのため、最終目的である、移動体AがマップMaの各セルx(すなわち行動可能領域Rの各エリアr)を通過する確率を各セルxごと(各エリアrごと)にそれぞれ算出するためには、k-1ステップ目で移動体Aが現在のセルx1から当該セルx
k-1に移動する確率も考慮しなければならない。
式(3)の右辺のPr(x
0:k-1)はそのことを表しており、Pr(x
0:k-1)が「(0ステップ目から)k-1ステップ目で移動体Aが現在のセルx1からセルx
k-1まで移動する確率」を表している。
【0062】
以下、式(3)のPr(x0:k-1)の具体的な形や、移動体AがマップMaの各セルx(すなわち行動可能領域Rの各エリアr)を通過する確率を各セルxごと(各エリアrごと)にそれぞれ算出する計算方法等について説明する。
前述したように、本実施形態では、マップ作成手段40は、動的計画法を用い、上記のようにして部分問題として得た、移動体Aが局所的にある方向に移動する確率(すなわち上記の式(3)の左辺のPr(Xk|x0:k-1))を繰り返し計算することによって、移動体Aが行動可能領域R内の各エリアr(マップMa上の各セルx)を通過する確率をそれぞれ算出するようになっている。
【0063】
そして、本実施形態では、1ステップ目の計算では、移動体Aが現在のセルx1からそれに隣接する8個のセルx2~x9(
図8(A)参照)に移動する確率をそれぞれ計算し、2ステップ目の計算では、移動体Aが1ステップ目で移動したセルx2~x9のいずれかから外側に隣接する16個のx10~x25(
図8(B)参照)に移動する確率をそれぞれ計算する。
本実施形態では、このようにして、各ステップごとに移動体Aを外側に隣接する各セルに移動させながら確率を計算していくようにして、マップMa内の全てのセルについて確率を計算するようになっている。
【0064】
以下、具体的に説明する。
マップ作成手段40は、まず、1ステップ目の計算として、移動体Aが現在のセルx1からそれに隣接する8個のセルx2~x9(
図8(A)参照)に移動する確率をそれぞれ計算する。
例えば、1ステップ目で移動体Aが現在のセルx1からセルx2に移動する確率を計算する場合について説明すると、この場合は、上記の式(3)や式(4)のX
kをx2とし、x
k-1をx1とし、1ステップ目でありk=1であるからx
0:k-1をx
0:0として計算を行う。
【0065】
この場合、式(3)の左辺はPr(x2|x0:0)となるが、これは、上記の定義にk=1を単純に当てはめると、0ステップ目(k-1ステップ目)で移動体Aが現在のセルx1からセルx1(xk-1)まで移動した状態で次の1ステップでセルx2に移動する確率を表していることになる。
すなわち、Pr(x2|x0:0)は、0ステップ目で移動体Aが現在のセルx1にいる状態で次の1ステップで(すなわち1ステップ目に)セルx2に移動する確率を表す。
【0066】
この場合、式(3)の右辺のPr(x0:k-1)はPr(x0:0)となり、0ステップ目で移動体Aが現在のセルx1からセルx1(すなわち現在のセルx1)まで移動する確率ということになるが、これは、上記のように0ステップ目で移動体Aが現在のセルx1にいる確率を表している。そして、移動体Aは0ステップ目で(すなわち繰り返し計算を開始する前の状態で)現在のセルx1にいるため、Pr(x0:0)=1(=100%)になる。
なお、これは1ステップ目で移動体Aが現在のセルx1から他のセルx3~x9に移動する確率を計算する場合も同様であり、Pr(x0:0)は1である。
【0067】
また、1ステップ目で移動体Aが現在のセルx1からセルx2に移動する場合、式(3)の右辺のΣの項はΣPr(x2|x1,θη)になる。そして、これは式(4)のXkをx2に固定し、xk-1をx1に固定した状態でθηごとに式(4)を計算し、それを全てのθηについて加算することで算出される。
そして、上記のように、この場合、Pr(x0:0)=1であるから、ΣPr(x2|x1,θη)がPr(x2|x0:0)すなわち移動体Aが1ステップ目で現在のセルx1からセルx2に移動する確率になる。
【0068】
マップ作成手段40は、以上の計算を各セルx2~x9についてそれぞれ行い、移動体Aが1ステップ目で現在のセルx1から各セルx2~x9に移動する確率Pr(x2|x0:0)~Pr(x9|x0:0)をそれぞれ計算する。
そして、算出した確率Pr(x2|x0:0)~Pr(x9|x0:0)を、メモリの各セルx2~x9に対応する各領域にそれぞれ保存する。
【0069】
続いて、マップ作成手段40は、2ステップ目の計算として、移動体Aが1ステップ目で移動したセルx2~x9(
図8(B)参照)からそれに隣接する8個の各セルxに移動する各確率をそれぞれ計算する。
前述したように、本実施形態では、1ステップで1セル分ずつ移動すると設定されている。そのため、2ステップ目の計算では、セルx2等からそれに隣接する8個の各セルxに移動する各場合についてそれぞれ確率を計算する。
【0070】
すなわち、マップ作成手段40は、2ステップ目の計算として、
図9(A)に示すように、移動体Aがセルx2からそれに隣接するセルx10、x11、x3、x4、x1、x8、x9、x25(
図8(B)参照)に移動する各確率をそれぞれ計算する。続いて、
図9(B)に示すように、移動体Aがセルx3からそれに隣接するセルx11、x12、x13、x14、x4、x1、x2、x10に移動する各確率をそれぞれ計算する。
そして、同様の計算を、セルx4~x9についても行うことになる。
【0071】
そして、例えば、
図9(A)に示すように、移動体Aが1ステップ目で移動したセルx2からそれに隣接する8個の各セルx(すなわちセルx10、x11、x3、x4、x1、x8、x9、x25)に移動する各確率をそれぞれ計算する場合、式(3)の右辺のΣPr(X
k|x
k-1,θη)の計算(すなわち式(4)の計算)については、上記の1ステップ目の場合と同様に行うことができる。
その際、この場合、2ステップ目の計算では、x
k-1はx2であり、X
kをx10、x11、x3、x4、x1、x8、x9、x25になる。
【0072】
そして、例えば、移動体Aがセルx2からx10に移動する確率を計算する場合、xk-1をx2とし、Xkをx10として、上記の1ステップ目の場合と同様にしてΣPr(Xk|xk-1,θη)を計算する。
また、式(3)の右辺のPr(x0:k-1)は、2ステップ目(k=2)であるからPr(x0:1)となり「1ステップ目で移動体Aが現在のセルx1からセルxk-1すなわちセルx2まで移動する確率」になるが、移動体Aは1ステップ目でセルx1からセルx2に移動する経路はx1→x2の1通りしかなく、その確率は、1ステップ目で既に計算してメモリに保存されている確率Pr(x2|x0:0)に等しい。
【0073】
そのため、マップ作成手段40は、式(3)に従って、算出したΣPr(Xk|xk-1,θη)とメモリから読み出したPr(x2|x0:0)とを乗算して、2ステップ目で移動体Aがセルx2からx10に移動する確率Pr(x10|x0:1)(ただしxk-1はx2)を計算する。なお、Pr(x10|x0:1)(ただしxk-1はx2)を、以下、Pr(x10|x0:1)(xk-1=x2)と表す。
そして、算出した確率Pr(x10|x0:1)(xk-1=x2)を、メモリのセルx10に対応する各領域に保存する。
【0074】
マップ作成手段40は、移動体Aがセルx2から他の7個のセルx11、x3、x4、x1、x8、x9、x25に移動する各確率についても同様にして計算する。
そして、算出した確率Pr(x11|x0:1)(xk-1=x2)、(x3|x0:1)(xk-1=x2)、…、(x25|x0:1)(xk-1=x2)を、メモリの各セルx11、x3、x4、x1、x8、x9、x25に対応する各領域にそれぞれ保存する。
【0075】
そして、マップ作成手段40は、セルx2だけでなく、移動体Aが1ステップ目で移動した他のセルx3~x9についても同様の計算を行い、算出した確率をメモリの対応する各領域にそれぞれ保存する。
本実施形態では、マップ作成手段40は、このような確率の計算を、各ステップごとに移動体Aを現在のセルx1から外側に移動させながら行っていき、算出した確率のメモリの対応する各領域にそれぞれ保存していくようになっている。
【0076】
なお、その際、例えば3ステップ目の計算で、移動体Aが2ステップ目で移動したセルx10からそれに隣接する8個のセルx26、x27、x11、x3、x2、x9、x25、x49(
図10(A)参照)に移動する各確率をそれぞれ計算する場合、式(3)の右辺のPr(x
0:k-1)はk=3であるからPr(x
0:2)になるが、これは「3ステップ目で移動体Aが現在のセルx1からセルx10まで移動する確率」ということなる。
そして、3ステップ目で移動体Aが現在のセルx1からセルx10まで移動する経路は、
図10(B)に示すように、x1→x2→x10の経路だけでなく、x1→x3→x10の経路とx1→x9→x10の経路もあり得る。
【0077】
そのため、本実施形態では、例えば3ステップ目の計算で、移動体Aが2ステップ目で移動したセルx10からそれに隣接する8個のセルxに移動する各確率をそれぞれ計算する場合に用いるPr(x0:2)を、以下のようにして算出するようになっている。
すなわち、移動体Aがx1→x2→x10の経路でセルx10に移動する確率Pr(x2|x0:0)×Pr(x10|x0:1)(xk-1=x2)と、移動体Aがx1→x3→x10の経路でセルx10に移動する確率Pr(x3|x0:0)×Pr(x10|x0:1)(xk-1=x3)と、移動体Aがx1→x9→x10の経路でセルx10に移動する確率Pr(x9|x0:0)×Pr(x10|x0:1)(xk-1=x9)の3通りの確率を計算し、それらの平均値を算出し、算出した平均値を上記の場合のPr(x0:2)として用いる。
【0078】
ただし、例えば3ステップ目の計算で、移動体Aが2ステップ目で移動したセルx11からそれに隣接する8個のセルxに移動する各確率をそれぞれ計算する場合に用いるPr(x
0:2)については、
図11(A)に示すように、移動体Aがx1→x2→x11の経路でセルx11に移動する確率Pr(x2|x
0:0)×Pr(x11|x
0:1)(x
k-1=x2)と、移動体Aがx1→x3→x11の経路でセルx11に移動する確率Pr(x3|x
0:0)×Pr(x11|x
0:1)(x
k-1=x3)の2通りの確率を計算し、それらの平均値を算出し、算出した平均値を上記の場合のPr(x
0:2)として用いることになる。
【0079】
また、例えば3ステップ目の計算で、移動体Aが2ステップ目で移動したセルx12からそれに隣接する8個のセルxに移動する各確率をそれぞれ計算する場合に用いるPr(x
0:2)については、
図11(B)に示すように、移動体Aがx1→x3→x12の経路でセルx12に移動する確率Pr(x3|x
0:0)×Pr(x12|x
0:1)(x
k-1=x3)を計算し、算出した確率を上記の場合のPr(x
0:2)として用いることになる。
このように、各ステップの計算で用いられるPr(x
0:k-1)は、各ステップごと及び各セルxごとに可能な経路を考慮して計算される。
【0080】
一方、上記のようにして、マップ作成手段40が式(3)に従って各セルxごとに確率Pr(Xk|x0:k-1)を計算し、算出した確率Pr(Xk|x0:k-1)をメモリの各セルxに対応する各領域にそれぞれ保存していくと、メモリの各セルxに対応する各領域には、それぞれ8個の確率Pr(Xk|x0:k-1)が保存されることになる。
そのため、本実施形態では、マップ作成手段40は、上記のようにして、マップMa内の全てのセルxについて確率Pr(Xk|x0:k-1)の計算を行うと、メモリの各セルxに対応する各領域ごとに、当該領域に保存されている8個の確率Pr(Xk|x0:k-1)の平均値をそれぞれ算出するようになっている。
【0081】
そして、このようにして算出した各セルxごとの8個の確率Pr(Xk|x0:k-1)の平均値が、最終目的である、移動体AがマップMaの各セルx(すなわち行動可能領域Rの各エリアr)を通過する各セルごと(各エリアごと)の確率ということになる。
本実施形態では、マップ作成手段40は、以上のようにして、確率分布モデル作成手段30により作成された確率分布モデルMo(確率密度関数f(θ))を用い、移動体Aが行動可能な領域(行動可能領域R)を区分した各エリアrごと(各セルxごとに)に移動体Aが当該エリアr(当該セルx)を通過する確率をそれぞれ算出し、算出した確率を、各エリアr(各セルx)にそれぞれ割り当てて確率のマップMaを作成するようになっている。
【0082】
なお、例えば移動体A(例えば船舶)が直進している場合、上記のようにしてマップMaを作成すると、例えば
図12(A)に示すように、通過する確率が高いセルxが、移動体Aの進行方向θn(この場合は真北(図中上向き)よりやや西向きの方向)を中心に狭い範囲に集中して現れた状態のマップMaが得られる。
そして、この結果は、移動体Aが直進している状況を観察した人間が「移動体Aは現在真北よりやや西向きに航行しており、今後もその方向に航行する確率が高い」と確率的に予測した結果に相当するものになっている。
【0083】
また、例えば移動体A(例えば不審船)が左右に進行方向θnを変えながら移動するような場合に、上記のようにしてマップMaを作成すると、例えば
図12(B)に示すように、通過する確率が高いセルxが、移動体Aの進行方向θn側にばらけて広がった状態のマップMaが得られる。
そして、この結果は、移動体Aが左右に方向を変えながら移動する状況を観察した人間が「移動体Aは現在は北の方向に航行しているが、今後もその方向に航行する確率は低い」と確率的に予測した結果に相当するものになっている。
なお、
図12(A)、(B)及び後述する
図16では、マップMaの各セルについて算出された確率が濃淡(確率が高いほど濃い。)で表されている。
【0084】
[効果]
以上のように、本実施形態に係る行動予測システム1では、確率分布モデル作成手段30が、情報取得手段10が取得した移動体Aの進行方向θnに関する情報に基づいて移動体Aの進行方向θnに関する確率分布モデルMo(確率密度関数f(θ))を作成し、マップ作成手段40が、作成された確率分布モデルMo(確率密度関数f(θ))を用い、移動体Aの行動可能領域Rを区分した各エリアrごとに移動体Aが当該エリアrを通過する確率をそれぞれ算出し、算出した確率を、各エリアrに対応する各セルxにそれぞれ割り当てて確率のマップMaを作成する。
そのため、本実施形態に係る行動予測システム1によれば、移動体Aの行動を確率的に予測するための材料、すなわち人間が行うように移動体Aの行動を確率的に予測するための確率のマップMaを自動的に作成してユーザに提供することが可能となる。
【0085】
そして、このようなマップMaを、例えば以下のようにして活用することができる。
例えば、哨戒機等の航空機で国籍不明船や国籍不明機等を追尾する場合に、マップMaを作成してそれらの移動体Aの行動を予測し、移動体Aが通過する確率が高いエリアrに先回りすることで、移動体Aを捕捉する確率を向上させることができる。
【0086】
また、例えば、航空機が他の航空機(移動体A)との衝突を回避するような場合には、マップMaを作成してそれらの移動体Aの行動を予測することで、移動体Aが通過する確率が高いエリアrを避けるための最小限のマヌーバで衝突を回避することが可能となり、衝突を確実かつ効率的に回避することができる。
さらに、例えば、編隊飛行を行う際に、リーダ機が指示をしなくても、僚機がマップMaを作成してリーダ機(移動体A)の行動を予測することで、リーダ機の意図を把握してリーダ機にスムーズに追従することが可能となる。
【0087】
[変形例]
ところで、移動体A(例えば船舶)が旋回している場合、移動体Aの進行方向θが時間的に変化していく。
そのため、上記の実施形態では、確率分布モデル作成手段30が作成する確率分布モデルMo(確率密度関数f(θ))は幅(例えば半値幅)が広くなり、それに基づいて作成されるマップMaは、
図12(B)に示したように、通過する確率が高いセルxが、移動体Aの進行方向θn側にばらけて広がった状態のマップMaになる場合がある。
【0088】
しかし、以下のように、移動体Aの旋回率を算出し、それに基づいて確率分布モデルMo(確率密度関数f(θ))を修正しながら適用することで、後述する
図16に示すように、移動体Aが旋回する状態が的確に反映されたマップMaを作成することができる。
以下、この変形例について具体的に説明する。
【0089】
この場合、マップ作成手段40は、上記のように情報取得手段10(
図1参照)が移動体Aの進行方向θnに関する情報を取得すると、取得した情報に基づいて、移動体Aの位置(s,t)を割り出す。例えば、sは経度、tは緯度である。
そして、この移動体Aの位置(s,t)の割り出しを、情報取得手段10が移動体Aの進行方向θnに関する情報を取得するごとに行う。
【0090】
そして、マップ作成手段40は、
図13に示すように、割り出した各位置(s,t)を仮想平面上にプロットし(図中の×参照)、それらを例えば円Cで近似し、その円Cに対応するマップMa上の円Cma(図示省略。後述する
図15参照)の曲率を算出する。
マップ作成手段40は、このようにして算出した円Cmaの曲率を、移動体AのマップMa上の旋回率として用いる。なお、旋回率の算出は、情報取得手段10が移動体Aの進行方向θnに関する情報を取得するごとに行われる。
【0091】
一方、マップ作成手段40は、このようにして移動体Aの旋回率を算出すると同時に、
図14(A)に示すように、移動体Aの現在のセルx1を中心とする単位円cをマップMa上に設定する。なお、単位円cの径は適宜設定される。
そして、単位円c内の各セルxについて上記の実施形態と同様にして移動体Aが当該セルxを通過する確率をそれぞれ算出する。単位円c内の各セルxの確率を算出する際、必要に応じて単位円c外のセルxの確率も計算される。
【0092】
そして、マップ作成手段40は、
図14(B)に示すように、単位円c内の各セルxの中で、最も高い確率が算出されたセルxαを抽出し、それを中心とする単位円cを新たにマップMa上に設定する。
そして、新たに設定した単位円c内の各セルxについて上記と同様にして移動体Aが当該セルxを通過する確率をそれぞれ算出する。
【0093】
その際、マップ作成手段40は、
図15に示すように、上記のようにして算出した移動体AのマップMa上の旋回率と、セルx1とセルxαの中心同士の相対的な位置関係に基づいて、移動体Aがセルxαに移動した際の進行方向θαを算出する。
そして、上記のようにして確率分布モデル作成手段30が作成した確率分布モデルMoである確率密度関数f(θ)(例えば
図2参照)の基準角μを、セルx1における進行方向θnから算出したθαにずらして修正する。その場合、f(θ)(例えば
図2参照)は、θnとθαとの差の分だけ左又は右に平行移動するように修正される。
【0094】
そして、マップ作成手段40は、このようにして修正した確率密度関数f(θ)すなわち確率分布モデルMoを適用して、
図14(B)に示した新たに設定した単位円c内の各セルxについて上記と同様にして移動体Aが当該セルxを通過する確率をそれぞれ算出する。
この変形例では、マップ作成手段40は、以上の処理、すなわち旋回率の算出、単位円cの設定、最も高い確率のセルxαを抽出、修正したf(θ)を適用した各確率の算出を繰り返し行ってマップMaを作成するように構成される。
【0095】
上記のようにしてマップMaを作成すると、例えば、移動体Aが右に旋回している場合は、
図16に示すように、移動体Aが旋回する状態が的確に反映されたマップMaを得ることが可能となる。
そのため、このようなマップMaを活用して、前述したように、例えば、国籍不明船や国籍不明機等を追尾したり、移動体Aとの衝突を回避したり、あるいは、編隊飛行を行う際に、それらの動作をより的確に行うことが可能となる。
【0096】
なお、上記の実施形態で
図12(A)に示したマップMaも、実際にはこの変形例のしかたで作成されたものである(同図の場合は上記の旋回率が0の場合に該当する。)。
そして、
図12(A)や
図16に示したマップMaでは各セルxに割り当てた確率が脈打つようになっているが(すなわち移動体Aが直進する方向(
図12(A)の場合)や旋回する方向(
図16の場合)に沿って確率が大きくなったり小さくなったりを繰り返す現象がみられるが)、これは、上記のように変形例において単位円cを用いてマップMaを作成していることに起因する。例えば、単位円cを非常に小さく設定すれば、このような確率の脈打ちは解消される。
【0097】
なお、本発明が上記の実施形態や変形例等に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。
例えば、上記の実施形態等では、確率分布モデル作成手段30は、フォン・ミーゼス分布を用いて確率分布モデルMoを作成する場合について説明したが、他の分布を用いて確率分布モデルMoを作成するように構成することも可能である。
【0098】
また、例えば、上記の実施形態等では、マップMaの境界円内の各セルx(エリアr)について確率を算出して割り当てる場合について説明したが、境界円外のセルx(エリアr)についても確率を算出して割り当てるように構成することも可能である。
また、例えば、上記の実施形態等では、マップMaの境界円内(すなわち哨戒機等の航空機からのレーダが届く領域内)の全てのセルx(エリアr)について確率を算出して割り当てる場合について説明したが、例えばマップMaの境界円内の所定の領域の各セルx(エリアr)のみについて確率を算出して割り当てるように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0099】
1 行動予測システム
10 情報取得手段
30 確率分布モデル作成手段
40 マップ作成手段
A 移動体
Ma マップ(確率のマップ)
Mo 確率分布モデル
R 行動可能領域(移動体が行動可能な領域)
r エリア
x セル(エリア)
θn 進行方向