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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】清拭用組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/68 20060101AFI20230524BHJP
   C11D 1/83 20060101ALI20230524BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
C11D1/68
C11D1/83
C11D3/37
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019160905
(22)【出願日】2019-09-04
(65)【公開番号】P2021038324
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】金丸 恭子
(72)【発明者】
【氏名】中島 弘樹
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】特表平09-503804(JP,A)
【文献】特開2008-044993(JP,A)
【文献】特表2007-513215(JP,A)
【文献】特開2002-146395(JP,A)
【文献】特開2017-36346(JP,A)
【文献】特開2001ー139989(JP,A)
【文献】特開2010-144026(JP,A)
【文献】特開2003ー164406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00- 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)炭素数8以上16以下の炭化水素基を有するグリコシド型界面活性剤[以下、(A)成分という]、(B)重量平均分子量が3,000以上25,000以下のカルボン酸系重合体[以下、(B)成分という]、及び水を含有し、25℃におけるpHが8以上12以下であり、(A)成分の含有量と(B)成分の含有量との質量比(A)/(B)が1/15以上1/3以下であり、全ノニオン界面活性剤中の(A)成分の含有量が50質量%以上である、清拭用組成物。
【請求項2】
更に、(C)アニオン界面活性剤を含有する、請求項1に記載の清拭用組成物。
【請求項3】
全界面活性剤中の(A)成分の含有量が50質量%以上100質量%以下である、請求項1又は2に記載の清拭用組成物。
【請求項4】
(A)炭素数8以上16以下の炭化水素基を有するグリコシド型界面活性剤[以下、(A)成分という]を4ppm以上1000ppm以下、(B)重量平均分子量が3,000以上25,000以下のカルボン酸系重合体[以下、(B)成分という]を50ppm以上5000ppm以下、及び水を含有し、pHが8以上11以下であり、(A)成分の含有量と(B)成分の含有量との質量比(A)/(B)が1/15以上1/3以下であり、全ノニオン界面活性剤中の(A)成分の含有量が50質量%以上である処理液を、洗浄対象物に接触させて清拭した後、濯がずに乾燥させる清拭方法。
【請求項5】
前記処理液が、更に(C)アニオン界面活性剤を含有する、請求項4に記載の清拭方法。
【請求項6】
前記処理液において、全界面活性剤中の(A)成分の含有量が50質量%以上100質量%以下である、請求項4又は5に記載の清拭方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清拭用組成物、及び清拭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
床や家具、キッチン廻りの壁やガラスや冷蔵庫等の住居内の硬質表面は手垢や足裏の汗などの皮脂汚れ、調理中に飛び散る油汚れ、埃や土埃などの粒子汚れなど様々な汚れが存在する。そのような汚れに対しては従来、硬質表面用の洗浄剤が用いられている。このような洗浄剤は様々な汚れに対して高い洗浄力を求められる一方で、洗浄後に対象表面に洗浄成分が残存しないように、二度拭きするなどのすすぎ工程が必要となる。
【0003】
特許文献1には、(a)アニオン界面活性剤0.1~30重量%、(b)炭素数6~22のアルキル基を有するカチオン界面活性剤0.05~15重量%及び(c)水溶性ポリマー0.01~10重量%を含有し、洗浄力が優れ、仕上がり感、再汚染防止性、基材損傷抑制性が優れている硬質体用液体洗浄剤組成物が開示されている。
特許文献2には、(A)アンモニア、モノエタノールアミン等の揮発性或いは液状アミン化合物、(B)ドデシルトリグリコシド等のアルキルグリコシド及び(C)プロピレングリコールモノメチルエーテル等の水溶性溶剤の1種又は2種以上を、A成分0.1~30重量%、B成分0.01~30重量%、C成分0.1~80重量%含有し、すすぎ性が良好で、すすいだ後も拭き残りがなく、且つ硬質表面の汚れを簡単に除去することができる硬質表面用洗浄剤組成物が開示されている。
特許文献3には、(A)特定の非イオン界面活性剤0.1~30質量%、(B)特定の高分子重合体0.01~15質量%、(C)特定の有機カルボン酸類0.1~20質量%、(D)水溶性溶剤0.1~30質量、(E)水を含有し、原液のpHが6~8であり、被洗浄物の材質を損傷することなく、洗浄性、起泡性、すすぎ性、組成物の貯蔵安定性の全てに優れた中性の硬表面用洗浄剤組成物が開示されている。
特許文献4には、a.少なくとも2つのスケール制御成分;b.ヒドロトロープ;c.アルカリ性供給源;d.水;を含む高濃縮アルカリ清浄組成物であって、低い使用希釈でスケール制御性を有し、維持する組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-286699号公報
【文献】特開平5-51600号公報
【文献】特開2004-59806号公報
【文献】特表2011-522086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に記載の組成物は有効に汚れを除去できるが、汚れ負荷が大きい場合対象物などではまだ洗浄性が十分とは言えず、さらには拭き筋が残るなどの課題があり、より高い洗浄力と濯がなくても拭き筋が残らない簡便性が求められる。
特許文献3に記載の発明はバス用の洗浄剤であり、高い界面活性剤濃度を有する洗浄剤でこすり洗いして水で濯ぐ方法に供される技術であり、ふき取りした後濯がずに乾燥させる技術を開示するものではない。また特許文献4に記載の発明も医療機器などの洗浄においてスケールを制御する洗浄剤であり、ふき取りした後濯がずに乾燥させる技術を開示するものではない。
【0006】
本発明は、洗浄性、及び仕上がり性に優れ、拭き取りした後に濯がずに乾燥させる方法に供される清拭用組成物、及び清拭方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(A)炭素数8以上16以下の炭化水素基を有するグリコシド型界面活性剤[以下、(A)成分という]、(B)カルボン酸系重合体[以下、(B)成分という]、及び水を含有し、25℃におけるpHが8以上12以下であり、(A)成分の含有量と(B)成分の含有量との質量比(A)/(B)が1/15以上1/3以下であり、全ノニオン界面活性剤中の(A)成分の含有量が50質量%以上である、清拭用組成物に関する。
【0008】
また本発明は、(A)炭素数8以上16以下の炭化水素基を有するグリコシド型界面活性剤[以下、(A)成分という]を4ppm以上1000ppm以下、(B)カルボン酸系重合体[以下、(B)成分という]を50ppm以上5000ppm以下、及び水を含有し、pHが8以上11以下であり、(A)成分の含有量と(B)成分の含有量との質量比(A)/(B)が1/15以上1/3以下であり、全ノニオン界面活性剤中の(A)成分の含有量が50質量%以上である処理液を、洗浄対象物に接触させて清拭した後、濯がずに乾燥させる清拭方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、洗浄性、及び仕上がり性に優れ、拭き取りした後に濯がずに乾燥させる方法に供される清拭用組成物、及び清拭方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔清拭用組成物〕
<(A)成分>
(A)成分は、炭素数8以上16以下の炭化水素基を有するグリコシド型界面活性剤である。(A)成分は、洗浄力と仕上がり性の観点、とりわけ仕上がり性の観点から、炭素数が、8以上、好ましくは10以上、そして、16以下、好ましくは14以下の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基を有し、糖の平均縮合度が好ましくは1以上、そして、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1.5以下のアルキルグリコシドである。
【0011】
(A)成分としては、下記一般式(A1)で表される化合物が好適である。
1a(OR2a (A1)
〔式中、R1aは炭素数8以上16以下の炭化水素基を示し、R2aは炭素数2以上4以下のアルキレン基を示し、Gは炭素数5又は6の糖に由来する残基を示し、xはその平均値が0以上5以下となる数を示し、yはその平均値が1以上3以下となる数を示す。〕
【0012】
上記一般式(A1)において、R1aは、洗浄力と仕上がり性の観点、とりわけ仕上がり性の観点から、炭素数8以上、好ましくは10以上、そして、16以下、好ましくは14以下の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基である。また、R2aで示されるアルキレン基としては、炭素数2のものが好ましい。また、Gで示される炭素数5又は6の糖に由来する残基は、使用される単糖類もしくは2糖類以上の糖によってその構造が決定される。Gとしては、単糖類ではグルコース、ガラクトース、キシロース、マンノース、リキソース、アラビノース、フルクトース又はこれらの混合物等に由来する残基が挙げられ、2糖類以上ではマルトース、キシロビオース、イソマルトース、セロビオース、ゲンチビオース、ラクトース、スクロース、ニゲロース、ツラノース、ラフィノース、ゲンチアノース、メンジトース又はこれらの混合物等に由来する残基が挙げられる。これらのうち好ましい原料は、洗浄力の点、及びこれらの入手性及び低コストの点から、単糖類ではグルコース及びフルクトースであり、2糖類以上ではマルトース及びスクロースである。
【0013】
また、上記一般式(A1)中のxは、OR2aの平均付加モル数であり、好ましくは0以上、そして、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは1以下であり、また0であってもよい。
【0014】
また上記一般式(A1)中のyの平均値が1より大きい場合、つまり(A)成分が2糖類以上の糖鎖を親水性基とする場合、糖鎖の結合様式が1-2、1-3、1-4、1-6結合又はα-、β-ピラノシド結合もしくはフラノシド結合及びこれらの混合された結合様式である任意の混合物を含むことが可能である。
【0015】
上記一般式(A1)中のyは、その平均値が、1以上、そして、3以下、好ましくは2以下である。このyの値(糖の平均縮合度)は1H-NMRにより測定する。具体的な測定方法としては、特開平8-53696号公報第6頁第10欄26行目~7頁第11欄15行目を参照する。
【0016】
<(B)成分>
(B)成分は、カルボン酸系重合体である。カルボン酸系重合体は、炭素数3以上6以下、好ましくは炭素数3以上5以下の反応性不飽和基を有するカルボン酸又はその塩〔以下、(B1)成分という〕由来の構成単位を含む重合体である。なお(B1)成分の前記炭素数は、カルボン酸の全炭素数である。
【0017】
(B1)成分は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、これらの塩及びこれらの酸無水物からなる群から選ばれる1種又は2種以上である。
【0018】
(B1)成分は、洗浄力の観点から、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、これらの塩及び無水マレイン酸から選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくはアクリル酸、メタクリル酸及びその塩から選ばれる1種又は2種以上である。前記塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アルカノールアミン塩、及びアンモニウム塩から選ばれる1種以上である。なお、前記塩は、モノマーとして塩型の化合物を用いて形成されたものでも、重合後に中和することにより形成されたものでもよい。
【0019】
(B)成分の全単量体中、(B1)成分の割合は、洗浄力の観点から、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、更に好ましくは98モル%以上、そして、好ましくは100モル%以下であり、また100モル%であってもよい。
【0020】
(B)成分は、(B1)成分由来の構成単位を含む重合体であるが、(B1)成分由来の構成単位以外の構成単位を含むことができる。すなわち(B)成分は、(B1)成分と共重合可能な単量体、具体的には、(B1)成分由来の構成単位と、後述する(B2)成分由来の構成単位とを含む共重合体であってもよい。(B2)成分は、炭素数2以上12以下のオレフィン、アルキル基の炭素数が1以上12以下であるアルキル(メタ)アクリレート、及びスチレンから選ばれる1種又は2種以上の単量体が挙げられる。
【0021】
(B)成分の重量平均分子量は、洗浄力の観点から、好ましくは3,000以上、より好ましくは4,000以上、更に好ましくは4,500以上、そして、仕上がり性の観点から、好ましくは150,000以下、より好ましくは100,000以下、更に好ましくは70,000以下、より更に好ましくは50,000以下、より更に好ましくは25,000以下、より更に好ましくは10,000以下である。
【0022】
なお、(B)成分の重量平均分子量は、アセトニトリルと水の混合溶媒(リン酸緩衝液)を展開溶媒とし、ポリエチレングリコールを標準物質として、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで求めることもできる。
カラム:東ソー(株)製G4000PWXL+G2500PWXL(2本連結)
検出器:示差屈折率計
溶離液:0.2Mリン酸緩衝液(KHPO、NaHPO、pH=7)/アセトニトリル=9/1(容量比)
標品:ポリエチレングリコール
条件:カラム温度:40℃、流速:0.5mL/min、濃度:0.05mg/mL
【0023】
(B)成分は、洗浄力と仕上がり性の観点から、好ましくはポリアクリル酸又はその塩、ポリメタクリル酸又はその塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体又はその塩、メタクリル酸-マレイン酸共重合体又はその塩、及びジイソブチレン-マレイン酸共重合体又はその塩から選ばれる1種以上の重合体であり、より好ましくはポリアクリル酸又はその塩である。また(B)成分としては、前記重合体の2種以上を混合して用いてもよい。塩としてはカリウム塩もしくはナトリウム塩が好適である。
【0024】
<組成等>
一般に住居内硬質表面の汚れは手垢や足裏の汗などの皮脂汚れ、調理中に飛び散る油汚れと、埃や土埃などの粒子汚れなどの複合汚れが存在する。このようなハードな汚れは強力な洗浄力を有する界面活性剤を用いることで除去することができると考えられるが、そのような界面活性剤は起泡性を有したり、対象物への吸着性が高いため、拭き取るだけでは泡が残ったり、洗浄後にヌルつくため、二度拭きなどのすすぎ洗いが必要になる。
本発明では、洗浄力は高いが起泡性のあるグリコシド型界面活性剤に対して特定質量比のカルボン酸系重合体を併用することで、ハードな汚れに対して高い洗浄力を有するが、泡残りやヌルつきが少なく、その結果二度拭きなどのすすぎ工程を必要としない洗浄剤組成物を得ることが可能となる。
【0025】
本発明の清拭用組成物は、(A)成分を、洗浄力の観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.7質量%以上、更に好ましくは0.8質量%以上、そして、仕上がり性の観点から好ましくは1.8質量%以下、より好ましくは1.7質量%以下、更に好ましくは1.6質量%以下含有する。
【0026】
本発明の清拭用組成物は、(B)成分を、仕上がり性の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは4質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは6質量%以下含有する。
【0027】
本発明の清拭用組成物において、(A)成分の含有量と(B)成分の含有量との質量比(A)/(B)は、洗浄力と仕上がり性の観点から、1/15以上、好ましくは1/10以上、更に好ましくは1/7以上、そして、1/3以下、好ましくは1/4以下、より好ましくは1/5以下である。
【0028】
本発明の清拭用組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、(A)成分以外のノニオン界面活性剤を含有してもよい。ノニオン界面活性剤としては、アルキルモノグリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンモノアルキル又はアルケニルエーテル、ソルビタン系非イオン性界面活性剤、脂肪族アルカノールアミド、脂肪酸モノグリセライド、及び蔗糖脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0029】
本発明の清拭用組成物において、全ノニオン界面活性剤中の(A)成分の含有量は、仕上がり性の観点から、50質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは90質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下であり、また100質量%であってもよい。
【0030】
本発明の清拭用組成物は、保存安定性と仕上がり性の観点から、(C)成分として、アニオン界面活性剤を含有することが好ましく、特に香料などの疎水性成分を含有した場合の貯蔵安定性を改善する目的から、アニオン界面活性剤を含有することが好ましい。
【0031】
(C)成分のアニオン界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル、アルケニル硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸、アルケニルベンゼンスルホン酸、アルカンスルホン酸、α-オレフィンスルホン酸、アルキル又はジアルキルスルホコハク酸、アルケニル又はジアルケニルスルホコハク酸、ポリオキシアルキレンアルキル又はポリオキシアルキレンジアルキルスルホコハク酸、ポリオキシアルキレンアルキル又はポリオキシアルキレンジアルキルスルホコハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、脂肪酸、及びこれらの塩から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0032】
(C)成分は、香料などの疎水性成分を含有した場合の保存安定性と仕上がり性の観点から、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、及びこれらの塩から選ばれる1種以上が好ましい。
【0033】
本発明の清拭用組成物が(C)成分を含有する場合、(C)成分の含有量は、保存安定性と仕上がり性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、そして、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
【0034】
本発明の清拭用組成物が(C)成分を含有する場合、(A)成分の含有量と(C)成分の含有量との質量比(A)/(C)は、香料などの疎水性成分を含有した場合の保存安定性と仕上がり性の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上、更に好ましくは2以上、そして、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは3.5以下である。
【0035】
本発明の清拭用組成物において、全界面活性剤中の(A)成分の含有量は、保存安定性と仕上がり性の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは64質量%以上、そして、好ましくは洗浄力の観点から、100質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。
【0036】
本発明の清拭用組成物において、全界面活性剤の含有量は、洗浄力及び仕上がり性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0037】
本発明の清拭用組成物は、防腐性向上のために、防腐剤を含有することができる。防腐剤は、具体的には、2-フェノキシエタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、4級アンモニウム塩、ベンゾイソチアゾリン、塩化ベンザルコニウムから選ばれる1種以上が好ましい。本発明の清拭用組成物における防腐剤の含有量は、防腐性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上であり、そして、保存安定性の観点から、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。
【0038】
本発明の清拭用組成物は、上記成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、香料、着色剤、除菌成分、無機化合物、水溶性ポリマーなどの成分(但し、(A)~(C)成分、及び防腐剤を除く)を含有することができる。
【0039】
本発明の清拭用組成物は水を含有する。本発明の清拭用組成物は、水を、80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、そして、99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは97質量%以下含有する。
【0040】
本発明の清拭用組成物は、25℃におけるpHが、洗浄力の観点から、8以上、好ましくは8.5以上、そして、12以下、好ましくは11.5以下、より好ましくは11以下である。
このようなpHとするためには、適宜pH調整剤を用いることができる。pH調整剤としては、
(1)塩酸や硫酸などの無機酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、マロン酸、マレイン酸などの有機酸(但し(B)成分は除く)などの酸剤、及び
(2)水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、アンモニアやその誘導体、モノエタノールアミンやジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン塩など、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ剤
から選ばれる化合物が挙げられる。pH調整剤のうち、酸剤は、塩酸、硫酸及びクエン酸から選ばれる酸剤が好ましい。また、pH調整剤のうち、アルカリ剤は、モノエタノールアミン、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選ばれるアルカリ剤が好ましい。これらは、単独もしくは組み合わせて用いることができる。本発明では洗浄力の観点からモノエタノールアミンを用いることが好ましい。本発明の清拭用組成物がモノエタノールアミンを含有する場合、その含有量は、洗浄力の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、そして、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。尚、pHは上記の範囲であるように調整する。
【0041】
本発明の清拭用組成物は、拭き取り洗浄用として好適である。すなわち、本発明の清拭用組成物は、居間、部屋、台所、浴室、トイレといった居住まわり等の洗浄対象物、好ましくは硬質表面(各種物品、床、壁、天井等)等の洗浄に好適に用いられる。この場合、本発明の組成物は、泡立ち、ヌルつき、跡残りが生じず、拭き筋が少なく仕上がり性に優れているため、別途水拭き(二度拭き)する必要がない。これらの効果から、硬質表面は、床が好ましい。
硬質表面は、セラミックス、プラスチック、ガラス、木、石、及び金属から選ばれる1種以上の材料から構成される硬質表面が挙げられる。
【0042】
〔清拭方法〕
本発明は、(A)炭素数8以上16以下の炭化水素基を有するグリコシド型界面活性剤[以下、(A)成分という]を4ppm以上1000ppm以下、(B)カルボン酸系重合体[以下、(B)成分という]を50ppm以上5000ppm以下、及び水を含有し、pHが8以上11以下であり、(A)成分の含有量と(B)成分の含有量との質量比(A)/(B)が1/15以上1/3以下であり、全ノニオン界面活性剤中の(A)成分の含有量が50質量%以上である処理液(以下、本発明の処理液ともいう)を、洗浄対象物に接触させて清拭した後、濯がずに乾燥させる清拭方法を提供する。
本発明の清拭方法は、本発明の清拭用組成物で記載した事項を適宜適用することができる。
【0043】
本発明の処理液は、本発明の清拭用組成物を、水で好ましくは10倍以上、更に好ましくは20倍以上、そして、好ましくは1000倍以下、更に好ましくは800倍以下に希釈して調製することが好ましい。
本発明の処理液が含有する(A)成分、(B)成分は、本発明の清拭用組成物で記載した(A)成分、(B)成分と同じであり、好ましい態様も同様である。
本発明の処理液は、(C)成分として、アニオン界面活性剤を含有することが好ましい。(C)成分は、本発明の清拭用組成物で記載した(C)成分と同じであり、好ましい態様も同様である。
本発明の処理液は、防腐剤を含有することが好ましい。防腐剤は、本発明の清拭用組成物で記載した成分と同じであり、好ましい態様も同様である。
【0044】
本発明の処理液は、(A)成分を、洗浄力の観点から、4ppm以上、好ましくは10ppm以上、より好ましくは20ppm以上、そして、1000ppm以下、好ましくは800ppm以下、より好ましくは500ppm以下含有する。
【0045】
本発明の処理液は、(B)成分を、洗浄力と仕上がり性の観点から、50ppm以上、好ましくは70ppm以上、より好ましくは100ppm以上、そして、5000ppm以下、好ましくは3000ppm以下、より好ましくは2000ppm以下含有する。
【0046】
本発明の処理液において、(A)成分の含有量と(B)成分の含有量との質量比(A)/(B)は、洗浄力と仕上がり性の観点から、1/15以上、好ましくは1/10以上、更に好ましくは1/7以上、そして、1/3以下、好ましくは1/4以下、より好ましくは1/5以下である。
【0047】
本発明の処理液は、本発明の効果を阻害しない範囲で、(A)成分以外のノニオン界面活性剤を含有してもよい。(A)成分以外のノニオン界面活性剤としては、本発明の清拭用組成物で記載したものと同じである。
本発明の処理液において、全ノニオン界面活性剤中の(A)成分の含有量は、仕上がり性の観点から、50質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは90質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下であり、また100質量%であってもよい。
【0048】
本発明の処理液が(C)成分を含有する場合、(C)成分の含有量は、保存安定性と仕上がり性の観点から、好ましくは1ppm以上、より好ましくは2ppm以上、更に好ましくは3ppm以上、そして、好ましくは500ppm以下、より好ましくは300ppm以下、更に好ましくは200ppm以下である。
【0049】
本発明の処理液が(C)成分を含有する場合、(A)成分の含有量と(C)成分の含有量との質量比(A)/(C)は、保存安定性と仕上がり性の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上、更に好ましくは2以上、そして、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは3.5以下である。
【0050】
本発明の処理液において、全界面活性剤中の(A)成分の含有量は、保存安定性と仕上がり性の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは64質量%以上、そして、好ましくは洗浄力の観点から、100質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。
【0051】
本発明の処理液において、全界面活性剤の含有量は、洗浄力及び仕上がり性の観点から、好ましくは25ppm以上、より好ましくは125ppm以上、そして、好ましくは2500ppm以下、より好ましくは1250ppm以下である。
【0052】
本発明の処理液における防腐剤の含有量は、好ましくは1ppm以上、より好ましくは2ppm以上、更に好ましくは3ppm以上、そして、好ましくは500ppm以下、より好ましくは300ppm以下、更に好ましくは200ppm以下である。
【0053】
本発明の処理液のpHは、洗浄力の観点から、8以上、好ましくは8.5以上、そして、11以下、好ましくは10.5以下である。本発明の処理液の上記pHの範囲は、25℃におけるpHであってよい。
【0054】
本発明の清拭方法は、本発明の処理液を洗浄対象物、好ましくは硬質表面に接触させ清拭を行う。また、前記処理液を洗浄対象物に接触させ清拭した後は、濯ぎを行わずに前記洗浄対象物を乾燥させることができる。
ここで本発明でいう濯ぎとは、本発明の処理液を用いて洗浄対象物に接触させて清拭した後に、対象表面に残存した水以外の成分を除去する工程であり、水で洗い流す工程や本発明の処理液を含有しない(水を含んでいてもよい)布巾、雑巾、不織布、モップ、紙等で2度拭きする工程を含むものである。
【0055】
本発明の清拭方法において、本発明の処理液を洗浄対象物、好ましくは硬質表面に塗布、噴霧等で接触させた後、布巾、雑巾、不織布、モップ、紙等を用いて、本発明の処理液を接触させた洗浄対象物、好ましくは硬質表面を清拭することが好ましい。
【0056】
また本発明の清拭方法において、本発明の処理液を基体に含侵させた清掃用物品を用いて、洗浄対象物、好ましくは硬質表面に該処理液を接触させ、清拭することもできる。
本発明の処理液を含浸させた清掃用物品に用いられる基体としては、可撓性を有し、本発明の処理液が含浸可能なものであり、使用時に十分な強度を有し、くず等の発生の無いものが用いられる。
そのような基体としては、繊維状材料から構成される繊維構造体、例えば、各種紙、不織布、織布若しくは編布が挙げられる。これらの繊維構造体を構成する繊維状材料としては、例えば、セルロース系繊維、変性セルロース系繊維、合成繊維及びこれらの二種以上の混合物等が挙げられる。
また、樹脂中に気泡を分散させて得られる多孔質構造体(例えば、スポンジ状構造体)も上記基体として使用できる。
【0057】
また、本発明の処理液を含浸させた清掃用物品を用いて洗浄対象物、好ましくは硬質表面を清拭する方法は、清掃作業の作業性の観点から、洗浄対象物、好ましくは硬質表面の軽い洗浄に好ましい。本発明の処理液を含浸させた清掃用物品は、基体に予め本発明の処理液を含浸させてなるもの、あるいは乾燥した基体に本発明の処理液をスプレー等により使用直前に含浸させてなるもの、の何れでもよい。また、スプレーされた清掃用物品を用いて被清掃面を清掃してもよい。本発明の処理液を含浸させた清掃用物品は、モップ状の掃除具に装着されて用いられてもよいし、直接手で持って拭き掃除に用いられてもよい。
【0058】
予め本発明の処理液が基体に含浸されている場合、本発明の処理液の含浸率は清掃性の観点から、基体質量〔即ち、未含浸状態(乾燥状態)の基体の質量基準〕あたり、100質量%以上であることが好ましく、150質量%以上であることがより好ましく、そして、1000質量%以下であることが好ましく、500質量%以下であることがより好ましく、400質量%以下であることが更に好ましい。含浸率が100質量%以上であれば、シミ汚れや土ボコリに対する十分な清掃性能が得られる。1000質量%以下であれば、被清掃面への洗浄剤組成物の放出量が適正となり被清掃面に汚れや土ボコリが残留せず、また、木質系材料など種々の材料からなる清掃面に影響なく使用できる。清掃性の一層の向上の点から、基体がシートである場合、本発明の処理液の含浸前の坪量は、一定面積の洗浄に必要な洗浄剤の保持性とシートの操作性やコストとの観点から、40g/m以上であることが好ましく、50g/m以上であることがより好ましく、そして、200g/m以下であることが好ましく、150g/m以下であることがより好ましい。
【0059】
本発明の処理液を含浸させた清掃用物品使用時に、別途本発明の清拭用組成物又は処理液を、被清掃物又は前記清掃用物品に、噴霧しながら使用してもよい。当該使用方法によって、より広い面積を清掃することができる。
【実施例
【0060】
下記配合成分を用いて、表1、2に示す清拭用組成物を調製し、以下の項目について評価を行った。結果を表1、2に示す。
表1、2の清拭用組成物は、常法により調製した。即ち、適量のイオン交換水に(A)成分、(B)成分、(C)成分、及びその他成分を添加し、室温(25℃)で溶解させた後、水酸化カリウム又は/及びクエン酸一水和物を添加してpH(25℃、ガラス電極法)を表1、2に示す値に調整した。なお、表1、2中の配合成分の質量%は、全て有効分に基づく数値である。
【0061】
<(A)成分>
・アルキルグルコシド:一般式(A1)中、R1aが炭素数8~16のアルキル基、Gがグルコースに由来する残基、xが0、yが1~2の化合物、プランタケア2000UP、BASF SE製
<(B)成分>
・ポリアクリル酸カリウム:重量平均分子量4500、花王(株)製
<(C)成分>
・ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム:オキシエチレン基の平均付加モル数が4であり、炭素数12のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、花王(株)製
・アルケニルコハク酸ジカリウム:炭素数16のアルケニル基を有するアルケニルコハク酸ジカリウム、花王(株)製
<その他成分>
・アルコールエトキシレート:オキシエチレン基の平均付加モル数が12であり、炭素数12のアルキル基を有するアルコールエトキシレート、花王(株)製
・2-フェノキシエタノール:四日市合成(株)製
・モノエタノールアミン:三井化学(株)製
・香料(リモネン):和光一級試薬(R)-(+)-Limonene
【0062】
<複合汚れ洗浄性評価>
菜種油と粒子(JIS試験用粉末1)を重量比5対1の割合で混合したものを複合汚れとした。この複合汚れを、ステンレス基板(2.5cm×7cm)上に刷毛で均一に塗布したものを複合汚れ基板とした。
表1、2に記載の調製した各清拭用組成物を3.5°DHの硬水で40倍に希釈して処理液を調製した。各処理液を複合汚れ基板上に滴下し、キムワイプで拭き取った際の基板表面の洗浄性を、熟練したパネラー1名が下記の判定基準に基づいて2回評価を行い、結果を平均したものを評価結果として表1、2に示す。
4:十分に除去できた
3:僅かに残留が見られるがほぼ大部分が除去できた
2:除去できる部分は多いが不十分
1:除去不十分
【0063】
<仕上がり性評価>
表1、2に記載の調製した各清拭用組成物を3.5°dHの硬水で40倍に希釈して処理液を調製した。汚れのない木製基板(10cm×10cm)上に滴下し、キムワイプで拭き取る際の仕上がり性を、熟練したパネラー1名が下記の判定基準に基づいて2回評価を行い、結果を平均したものを評価結果として表1、2に示す。
4:泡残りはなく仕上がる
3:やや泡が発生するがすぐ消失する
2:泡残りが発生
1:泡残りが多数発生
【0064】
<保存安定性評価>
表2に記載の調製した各清拭用組成物を、広口PP容器(アズワン(株)製グッドボーイ100mL)に注ぎ、密封したものを、低温(-5℃)の恒温室に10日間貯蔵後、目視で外観を観察し、下記の評価基準で判定した。結果を表2に示す。
4:完全に透明
3:透明であるが若干濁りが発生
2:濁りが発生
1:沈殿が発生
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】