(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-24
(45)【発行日】2023-06-01
(54)【発明の名称】車両の乗員監視装置、および車両の乗員保護システム
(51)【国際特許分類】
B60R 21/015 20060101AFI20230525BHJP
G06V 20/59 20220101ALI20230525BHJP
【FI】
B60R21/015 310
G06V20/59
(21)【出願番号】P 2019185043
(22)【出願日】2019-10-08
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100182051
【氏名又は名称】松川 直宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179280
【氏名又は名称】河村 育郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180747
【氏名又は名称】小森 剛彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 亮太
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-030870(JP,A)
【文献】特開2004-148881(JP,A)
【文献】特開2008-017227(JP,A)
【文献】特開2007-198929(JP,A)
【文献】特開2004-338517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/015
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に乗車している乗員
を撮像して前記乗員の位置を監視可能な車両の乗員監視装置であって、
前記乗員へ光を照射する発光デバイスおよび撮像デバイスをそれぞれが有する複数の撮像モジュールと、
前記複数の撮像モジュールによる撮像を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記車両の衝突が予測または検出されていない場合には、複数の前記撮像モジュールの撮像タイミングを互いにずらして、複数の前記撮像モジュールにおける複数の前記発光デバイスの発光タイミングが互いに重ならないようにし、
前記車両の衝突が予測または検出されると、複数
の前記撮像モジュールにおける複数の前記発光デバイスから同時に前記乗員へ光を照射して撮像して乗員の位置を監視する、
車両の乗員監視装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記車両の衝突が予測または検出
されると、複数の前記撮像モジュールを、
前記車両の衝突が予測または検出されていない場合と比べて高速に動作させる、
請求項1記載の、車両の乗員監視装置。
【請求項3】
複数の前記撮像モジュールにおける複数の前記発光デバイスは、赤外線を前記乗員へ照射するものであり、
前記制御部は、
少なくとも前記車両の衝突が予測または検出され
ていない場合での複数の前記撮像モジュール
における複数の前記発光デバイスそれぞれを、前記乗員の網膜または血管を撮像可能な第一光量に抑えて発光させる、
請求項1または2記載の、車両の乗員監視装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記車両の衝突が予測または検出される
と、複数の前記撮像モジュール
における複数の前記発光デバイス
それぞれを、
前記第一光量以下の第二光量で発光させる、
請求
項3記載の、車両の乗員監視装置。
【請求項5】
前記制御部は、
複数の前記撮像モジュールにおける複数の前記撮像デバイスによる複数の撮像画像に基づいて乗員の状態を監視するものであり、
前記車両の衝突が予測または検出されていない場合には、前記乗員の頭部の位置を監視するとともに、複数の前記撮像デバイスによる複数の撮像画像の中の少なくとも1つの前記撮像画像に撮像されている前記乗員の網膜または血管に基づいて、前記乗員の状態を監視し、
前記車両の衝突が予測または検出されている場合には、前記乗員の網膜または血管に基づく状態の監視を停止して、1つの前記撮像デバイスにより撮像される前記撮像画像に基づいて前記乗員の頭部の位置を監視する、
請求項1から4のいずれか一項記載の、車両の乗員監視装置。
【請求項6】
複数の前記撮像モジュールは、前記車両のドライバへ共に照射して撮像可能な、前記車両の前中央部分に設けられるセンタ撮像モジュールと、前記ドライバの前側となるように前記車両の側部分に設けられるドライバ撮像モジュールと、を含む、
請求項1から5のいずれか一項記載の、車両の乗員監視装置。
【請求項7】
車両に乗車している乗員を撮像して前記乗員の位置を監視可能な車両の乗員監視装置と、
前記乗員監視装置による前記乗員の位置に応じて、前記乗員に対する保護制御を実行する乗員保護装置と、
を有する、車両の乗員保護システムであって、
前記乗員監視装置は、
前記乗員へ光を照射する発光デバイスおよび撮像デバイスをそれぞれが有する複数の撮像モジュールと、
前記複数の撮像モジュールによる撮像を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記車両の衝突が予測または検出されていない場合には、複数の前記撮像モジュールの撮像タイミングを互いにずらして、複数の前記撮像モジュールにおける複数の前記発光デバイスの発光タイミングが互いに重ならないようにし、
前記車両の衝突が予測または検出されると、複数の前記撮像モジュールにおける複数の前記発光デバイスから同時に前記乗員へ光を照射して撮像して乗員の位置を監視する、
車両の乗員保護システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に車両の乗員監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などでは、車両に乗車している乗員を撮像し、撮像画像にもどいて乗員の状態を判断するものがある(特許文献1、2)。
うまく合わないときには、視線を頻繁に動かしたことなどにより、乗員は気分が悪くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-043009号公報
【文献】特開2016-038793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両では、単に乗員監視装置の単体により乗員の状態を監視するだけではなく、車両の乗員監視装置による乗員の位置などの監視結果を用いて、車両の他の装置、たとえば乗員保護装置が、その乗員に対して適切に制御を実行できるようにすることが望まれる。
そして、乗員監視装置により乗員の位置などを正確に監視しようとする場合、発光デバイスなどを用いて、乗員に対して比較的強い光を照射することが望ましい。車両では、走行環境に応じて車内の明るさが大きく変化したり、乗員に対して車外の光が照射されたりすることがある。これらの状況においても、乗員の輪郭などをはっきりと撮像できるように、発光デバイスなどは、乗員に対して比較的強い光を照射することが望ましい。
しかしながら、このような強い光を乗員に対して照射するためには、発光デバイスは、高出力のために比較的に大型なものとなり、比較的に大きい電流を必要とする。発光デバイスの電流の二乗により消費電力が増大する。発光デバイスを冷却するためのヒートシンクも大型化する。また、発光デバイスの光量は、高い光束で発光させるほど早期に減ることになる。
【0005】
このように、車両の乗員監視装置は、改善することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る車両の乗員監視装置は、車両に乗車している乗員を撮像して前記乗員の位置を監視可能な車両の乗員監視装置であって、前記乗員へ光を照射する発光デバイスおよび撮像デバイスをそれぞれが有する複数の撮像モジュールと、前記複数の撮像モジュールによる撮像を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記車両の衝突が予測または検出されていない場合には、複数の前記撮像モジュールの撮像タイミングを互いにずらして、複数の前記撮像モジュールにおける複数の前記発光デバイスの発光タイミングが互いに重ならないようにし、前記車両の衝突が予測または検出されると、複数の前記撮像モジュールにおける複数の前記発光デバイスから同時に前記乗員へ光を照射して撮像して乗員の位置を監視する。
【0008】
好適には、前記制御部は、前記車両の衝突が予測または検出されると、複数の前記撮像モジュールの前記撮像デバイスを、前記車両の衝突が予測または検出されていない場合と比べて高速に撮像させる、とよい。
【0009】
好適には、複数の前記撮像モジュールにおける複数の前記発光デバイスは、赤外線を前記乗員へ照射するものであり、前記制御部は、少なくとも前記車両の衝突が予測または検出されていない場合での複数の前記撮像モジュールにおける複数の前記発光デバイスそれぞれを、前記乗員の網膜または血管を撮像可能な第一光量に抑えて発光させる、とよい。
【0010】
好適には、前記制御部は、前記車両の衝突が予測または検出されると、複数の前記撮像モジュールにおける複数の前記発光デバイスそれぞれを、前記第一光量以下の第二光量で発光させる、とよい。
【0011】
好適には、前記制御部は、複数の前記撮像モジュールにおける複数の前記撮像デバイスによる複数の撮像画像に基づいて乗員の状態を監視するものであり、前記車両の衝突が予測または検出されていない場合には、前記乗員の頭部の位置を監視するとともに、複数の前記撮像デバイスによる複数の撮像画像の中の少なくとも1つの前記撮像画像に撮像されている前記乗員の網膜または血管に基づいて、前記乗員の状態を監視し、前記車両の衝突が予測または検出されている場合には、前記乗員の網膜または血管に基づく状態の監視を停止して、1つの前記撮像デバイスにより撮像される前記撮像画像に基づいて前記乗員の頭部の位置を監視する、とよい。
【0012】
好適には、複数の前記撮像モジュールは、前記車両のドライバへ共に照射して撮像可能な、前記車両の前中央部分に設けられるセンタ撮像モジュールと、前記ドライバの前側となるように前記車両の側部分に設けられるドライバ撮像モジュールと、を含む、とよい。
【0013】
本発明の一実施形態に係る車両の乗員保護システムは、車両に乗車している乗員を撮像して前記乗員の位置を監視可能な車両の乗員監視装置と、前記乗員監視装置による前記乗員の位置に応じて、前記乗員に対する保護制御を実行する乗員保護装置と、を有する、車両の乗員保護システムであって、前記乗員監視装置は、前記乗員へ光を照射する発光デバイスおよび撮像デバイスをそれぞれが有する複数の撮像モジュールと、前記複数の撮像モジュールによる撮像を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記車両の衝突が予測または検出されていない場合には、複数の前記撮像モジュールの撮像タイミングを互いにずらして、複数の前記撮像モジュールにおける複数の前記発光デバイスの発光タイミングが互いに重ならないようにし、前記車両の衝突が予測または検出されると、複数の前記撮像モジュールにおける複数の前記発光デバイスから同時に前記乗員へ光を照射して撮像して乗員の位置を監視する。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、撮像デバイスおよび発光デバイスをそれぞれ有する複数の撮像モジュールのそれぞれについて、撮像デバイスが撮像する際に発光デバイスから光を照射させる。そして、車両の衝突が予測または検出されると、撮像デバイスおよび発光デバイスを有する複数の撮像モジュールを同時に撮像するように動作させて、複数の撮像モジュールの発光デバイスから同時に乗員へ光を照射する。これにより、乗員は、車両の衝突が予測または検出される場合には、複数の発光デバイスの光により明るく照らされる。その状態で乗員を撮像することより、撮像画像には、乗員の輪郭などがはっきりと撮像されるようになる。その結果、本発明では、撮像画像に基づいて乗員の位置など正確に特定することが可能になる。本発明の車両の乗員監視装置により特定される正確な乗員の位置などに基づいて、車両の他の装置、たとえば乗員保護装置は、正確な乗員の位置に応じて、その乗員に対しての保護制御を適切に実行することが可能になる。
しかも、本発明では、複数の撮像モジュールの発光デバイスから同時に乗員へ光を照射するため、たとえば個々の発光デバイスにおいて発光光量を上げるようにしなくとも、乗員に照射される総光量を増やすことができる。したがって、車両の衝突が予測または検出された状態から検出されない状態へ戻った後に、個々の発光デバイスにおいて光量増加による劣化が生じないようにすることが可能である。または、個々の発光デバイスにおいて、光量増加による劣化がほぼ生じていないようにすることが可能である。その結果、発光デバイスは、車両の衝突が予測または検出された後においても、継続して使用し続けることが可能となる。発光デバイスは、車両の衝突の予測または検出の有無にかかわらず、長期にわたって継続して使用することが可能になる。
しかも、本発明では、車両の衝突が予測または検出されていない通常の場合には、複数の撮像モジュールは、それらの複数の発光デバイスの発光タイミングが互いにずれるように、互いの撮像タイミングをずらして動作する。これにより、通常時には、複数の撮像モジュールは、それぞれのタイミングにおいて、それぞれの発光デバイスのみの光により乗員を照射した状態で乗員を撮像することができる。また、乗員に対して強い光を照射し続け難くなる。乗員についての網膜、血管などの状態を良好に撮像することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る自動車の模式的な説明図である。
【
図2】
図2は、
図1の自動車の制御系の模式的な説明図である。
【
図3】
図3は、
図1の赤外線LEDの一例の発光特性図である。
【
図4】
図4は、
図2の乗員監視ECUの動作モードの切替処理のフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図4の通常モードでの処理のフローチャートである。
【
図6】
図6は、
図4の縮退モードでの処理のフローチャートである。
【
図7】
図7は、
図2の乗員保護ECUの処理のフローチャートである。
【
図8】
図8は、ドライバ撮像モジュールおよびセンタ撮像モジュールの動作状態を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る自動車1の模式的な説明図である。
図1(A)は、自動車1の上面図である。
図1(B)は、自動車1の車室3の前部の模式的な説明図である。
図1の自動車1は、車両の一例である。自動車1は、車体2の中央に乗員が乗車する車室3が設けられる。車室3には、自動車1に乗った乗員が着座するシート4が設けられる。車室3の前部には、フロントガラス5が設けられる。フロントガラス5の下には、ダッシュボード6が設けられる。ダッシュボード6は、シート4に着座した乗員の上体の前に位置する。ダッシュボード6には、ドライバ用のシート4の前側となる部位に、ドライバが自動車1の走行を操作するためのハンドル31が後向きに突出して設けられる。ダッシュボード6の下には、ドライバが自動車1の走行を操作するためのブレーキペダル32、アクセルペダル33、が並べて設けられる。
【0018】
図2は、
図1の自動車1の制御系10の模式的な説明図である。
図2では、自動車1の制御系10を構成する複数の制御モジュールが、それぞれに組み込まれる制御ECU(Electronic Control Unit)により代表して示されている。
自動車1では、ドライバなどの乗員による運転によらない自動運転中や、乗員による手動運転中に、乗員監視装置60により、乗車した乗員を識別して監視するとよい。
また、自動車1では、乗員保護装置70により、衝突時の衝撃から乗員を保護するとよい。
これらの技術が有機的に連携することにより、乗員の乗車状態に応じた適切な乗員保護が実現可能になると考えられる。自動車1の利便性および安全性が高まると期待される。
このような自動車1の制御系10は、自動車1の乗員監視装置60を有する自動車1の乗員保護システムとして機能し得る。
【0019】
図2には、自動車1の制御系10を構成する複数の制御装置が、それぞれに組み込まれる制御ECU(Electronic Control Unit)により代表して示されている。
図2の自動車1の制御系10には、具体的には、駆動ECU11、操舵ECU12、制動ECU13、
自動車1の自動運転または手動運転時の運転支援により走行を制御する装置としてのドライブECU(自動運転/運転支援ECU
)14、運転操作ECU15、検出ECU16、乗員監視装置60の乗員監視ECU17、乗員保護装置70の乗員保護ECU18、外通信ECU19、UIECU20、が示されている。これら複数の制御ECUは、直接的にはケーブル26に接続され、自動車1で採用されるたとえばCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)といった車ネットワーク25により、中継装置としてのセントラルゲートウェイ(CGW)27に接続される。各制御ECUは、送信元である自身のIDと送信先の装置のIDとを付加した暗号化データにより、相互に通信することができる。各制御ECUは、送信先を指定しない暗号化データにより、ブロードキャストのように複数の他の制御ECUへ同時に送信してよい。また、各制御ECUは、自身のIDが送信先である暗号化データを受信し、自身の制御に使用する。なお、制御ECUは、自身以外の特定のIDが送信先である暗号化データについても受信し、自身の制御に使用してよい。セントラルゲートウェイ27は、複数のケーブル26のそれぞれから受信した暗号化データが他のケーブル26に接続される制御ECUへのものである場合、受信した暗号化データを他のケーブル26へ出力する。これにより、
図2に示す複数の制御ECUは、相互に暗号化データを送受できる。
【0020】
駆動ECU11は、車ネットワーク25を通じて暗号化データを受信し、自動車1に設けられる不図示のエンジンまたはモータといった駆動源、トランスミッションを制御する。これにより、自動車1は、加速して走行することができる。
操舵ECU12は、車ネットワーク25を通じて暗号化データを受信し、自動車1に設けられる不図示のステアリング装置を制御する。これにより、自動車1は、進行方向を変えることができる。
制動ECU13は、車ネットワーク25を通じて暗号化データを受信し、自動車1に設けられる不図示のブレーキ装置を制御する。これにより、走行する自動車1は、減速し、停車できる。また、制動ECU13は、車ネットワーク25を通じて駆動ECU11と通信して、駆動源の回転を抑制したり、トランスミッションのギア比を変更したりして、走行する自動車1を減速させてもよい。
【0021】
運転操作ECU15は、自動車1の走行を操作するためのハンドル31、ブレーキペダル32、アクセルペダル33、シフトレバ34といった操作部材に接続される。運転操作ECU15は、操作された操作部材についての操作情報などを含む暗号データを、車ネットワーク25を通じてドライブECU14などへ出力する。
【0022】
検出ECU16は、たとえば速度センサ41、加速度センサ42、ステレオカメラ43、に接続される。速度センサ41は、自動車1の速度を検出する。加速度センサ42は、自動車1の加速度を検出する。ステレオカメラ43は、自動車1の外側の周囲を撮像する。ステレオカメラ43は、たとえば自動車1の前方、側方、または後方を撮像してよい。検出ECU16は、接続されているセンサの物理量などを、自動車1の走行について自動車1において検出される物理量として取得し、車ネットワーク25を通じてドライブECU14、乗員保護ECU18などへ出力する。
たとえば、検出ECU16は、ステレオカメラ43による外の画像を解析して、自動車1の周囲にいる他の移動体の有無を検出し、検出した他の移動体の種類、自車からの相対的な距離および方向についての情報を、車ネットワーク25を通じてドライブECU14、乗員保護ECU18などへ出力してよい。
検出ECU16は、ステレオカメラ43による外の画像を解析して、自動車1の周囲にいる他の移動体との衝突を予測し、その情報を、車ネットワーク25を通じてドライブECU14、乗員保護ECU18へ出力する。
検出ECU16は、加速度センサ42において所定値以上の大きい衝突の加速度が検出されると、衝突検出を乗員保護ECU18へ出力してよい。
【0023】
外通信ECU19は、自動車1の外と通信する。外通信ECU19は、たとえば交通情報システム100の通信中継局101と通信してサーバ装置102との間で、通信データを送受する。外通信ECU19は、この他にもたとえば、自動車1の近くを走行している他の自動車110や歩行者の不図示の携帯端末との間で、たとえばV2X通信により通信データを送受する。外通信ECU19は、これらの通信により、自動車1の目的地までのナビゲーションデータ、交通情報、自動車1の周囲の状況の情報、などを受信すると、車ネットワーク25を通じてドライブECU14などへ出力してよい。
外通信ECU19は、他の自動車110において予測された衝突の情報を取得し、その情報を、車ネットワーク25を通じてドライブECU14、乗員保護ECU18へ出力する。
【0024】
UIECU20には、たとえば表示デバイス51、操作デバイス52、に接続される。操作デバイス52は、表示デバイス51の表示画面に重ねられるタッチパネル、複数のキーを有してよい。UIECU20は、表示に関する暗号化データを受信すると、表示デバイス51に画像を表示させる。UIECU20は、表示デバイス51の表示に応じた操作デバイス52の操作に基づいて、たとえばナビゲーションデータなどを生成し、車ネットワーク25を通じてドライブECU14などへ出力してよい。
【0025】
ドライブECU14は、自動車1の走行を、自動運転と運転支援との間で切り替えて制御する。ドライブECU14は、車ネットワーク25を通じて取得する各種の情報に基づいて、自動車1の走行を制御する。たとえば自動運転の場合、ドライブECU14は、ナビゲーションデータにしたがって周囲の安全を確認しながら目的地まで走行するように、駆動ECU11、操舵ECU12、制動ECU13へ制御情報を出力する。運転支援の場合、ドライブECU14は、操作情報に基づいて、その操作量を周囲の安全などに応じて調整した制御情報を、駆動ECU11、操舵ECU12、制動ECU13へ出力する。
【0026】
乗員監視ECU17は、センタ撮像モジュール61、ドライバ撮像モジュール62、乗員監視メモリ63、に接続される。
【0027】
センタ撮像モジュール61は、
図1(B)に示すように、撮像デバイス65、発光デバイスとしての赤外線LED66、を有する。センタ撮像モジュール61は、乗員の前にあるダッシュボード6の中央部分に設けられる。発光デバイスは、
図1(B)に示す撮像デバイス65の広い画角の全体に対して、赤外線による光を広角に照射する。これにより、撮像デバイス65は、その画角に含まれるドライバなどへ赤外線による光を照射して赤外線による撮像画像を撮像できる。赤外線による撮像画像には、ドライバなどの乗員の網膜、血管、などの画像成分が含めることが可能である。赤外線LED66の投光周波数は、自然光、外灯に含まれる周波数でよい。この場合、赤外線LED66は、投光強度、投光パターンなどを調整することにより、自然光と区別できるようにしてよい。赤外線LED66を投光した状態の赤外線の撮像画像から、投光していない状態の赤外線の撮像画像を減算することにより、赤外線LED66の投光による画像成分のみを含む撮像画像を得ることができる。
【0028】
ドライバ撮像モジュール62は、
図1(B)に示すように、撮像デバイス65、発光デバイスとしての赤外線LED66、を有する。ドライバ撮像モジュール62は、乗員の前にあるダッシュボード6についての、ドライバが着座するシート4の前側となる右側部分に設けられる。ドライバ撮像モジュール62は、センタ撮像モジュール61とともにドライバを撮像できる。発光デバイスは、
図1(B)に示す撮像デバイス65の狭い画角の全体に対して、赤外線による光を狭角に照射する。これにより、撮像デバイス65は、その画角に含まれるドライバなどへ赤外線による光を照射して赤外線による撮像画像を撮像できる。赤外線による撮像画像には、ドライバなどの乗員の網膜、血管、などの画像成分が含めることが可能である。赤外線LED66の投光周波数は、センタ撮像モジュール61と同じ周波数とするとよい。
【0029】
乗員監視メモリ63は、乗員監視のためのプログラム、設定データ、などを記録する。設定データには、乗員のごとの個人データが含まれてよい。
【0030】
乗員監視ECU17は、乗員監視メモリ63からプログラムを読み込んで実行する。これにより、乗員監視ECU17は、乗員監視装置60の制御部として機能する。乗員監視装置60の制御部としての乗員監視ECU17は、センタ撮像モジュール61の動作と、ドライバ撮像モジュール62の動作とを制御する。乗員監視ECU17は、たとえばセンタ撮像モジュール61とドライバ撮像モジュール62とを、所定の周期で撮像を繰り返すように動作させる。乗員監視ECU17は、センタ撮像モジュール61から撮像画像を取得し、ドライバ撮像モジュール62から撮像画像を取得する。乗員監視ECU17は、取得した撮像画像を解析して、自動車1に乗車しているドライバを含む乗員を認識して監視する。
たとえば、乗員監視ECU17は、撮像画像を解析して、自動車1に乗車しているドライバなどの乗員それぞれを特定する。
乗員監視ECU17は、乗員の状態として、乗員の上体の位置や頭部の位置を監視する。また、位置の変化により動きを監視する。乗員監視ECU17は、乗員の上体や頭部の位置や動きの情報を、乗員保護ECU18などへ出力してよい。
乗員監視ECU17は、乗員の状態としてさらに、たとえば居眠り(眠気)状態、興奮状態、わき見、デッドマンなどの緊急状態、を監視する。乗員監視ECU17は、たとえば撮像される頭部の傾きの大きさ、目の開き程度により居眠り、を判断してよい。乗員監視ECU17は、たとえば網膜や血管での脈波の速さ、ヘモグロビンの量により興奮状態、緊急状態、または眠気状態を判断してよい。乗員監視ECU17は、たとえば両目が撮像されていないこと、鼻または口に対して両目が対称な位置に撮像されていないことなどに基づいて、わき見を判断してよい。乗員監視ECU17は、これらのそれぞれについて作成されたプログラムを並列的に実行してよい。
そして、乗員監視ECU17は、これらの監視結果を、車ネットワーク25を通じてドライブECU14、乗員保護ECU18などへ出力してよい。このような情報を受け取ると、ドライブECU14は、自動走行の目的地を病院などへ変更して走行を継続したり、道路わきや駐車場に緊急停止したりする制御を実行してよい。
【0031】
乗員保護ECU18は、エアバッグ装置71、シートベルト装置72、に接続される。
【0032】
エアバッグ装置71には、たとえば、シート4に着座している乗員前にエアバッグを展開するフロントエアバッグ装置、乗員の外側にエアバッグを展開するサイドエアバッグ装置、隣り合う乗員の間にエアバッグを展開するファーサイドエアバッグ装置、車体2のガラス面の内側にエアバッグを展開するカーテンエアバッグ装置、がある。
【0033】
シートベルト装置72は、シート4に着座している乗員に掛け渡されるシートベルト、を有する。
【0034】
乗員保護ECU18は、自動車1の衝突が予測または検出されると、エアバッグ装置71およびシートベルト装置72を作動させて、乗員の保護制御を実行する。
たとえば、乗員保護ECU18は、乗員監視ECU17から乗員の頭部の現在の位置などを取得すると、それに応じてエアバッグの展開開始位置、展開方向、展開速度、展開強さ、シートベルトの拘束開始タイミング、拘束強さ(リミット)、拘束期間などの設定を変更して、乗員の頭部の現在の位置などに適するように調整してよい。
乗員保護ECU18は、衝突検出を取得すると、その時点での設定により、エアバッグ装置71およびシートベルト装置72を作動させてよい。
【0035】
ところで、このような自動車1の制御系10において、乗員監視装置60は、乗員を撮像するために、赤外線LED66といった発光デバイスを使用する。
図3は、
図1の赤外線LED66の一例の発光特性図である。
図3の横軸は、赤外線LED66の寿命に対応する累積点灯時間である。縦軸は、赤外線LED66を発光させる光束の維持率である。
【0036】
図3に示すように、赤外線LED66は、発光の光量が多いほど、その光量で使用可能となる累積点灯時間が短くなる。図中に示す単体最大光量での使用限界は、それより低い第一光量で発光させる場合での使用限界より短くなる。第一光量は、網膜、血管を撮像するために適した光量範囲に含まれる。赤外線LED66の発光光量は、なるべく下げたほうがよい。
累積点灯時間は、赤外線LED66についての累積的な点灯時間であるため、赤外線LED66は、不要な場合には消灯したほうがよい。
その一方で、自動車1では、走行環境に応じて車内の明るさが大きく変化したり、乗員に対して車外の光が照射されたりすることがある。これらの状況においても、乗員の輪郭などをはっきりと撮像できるように、赤外線LED66は、乗員に対して比較的強い光を照射することが望ましい。乗員の位置などを撮像される輪郭などにより正確に監視しようとする場合、赤外線LED66から乗員へ比較的強い光を照射することが望ましい。
赤外線LED66の単体最大光量を大きくするためには、赤外線LED66が大型化する。大きな赤外線LED66は、高出力を得るために、小さな赤外線LED66と比べて大電流を必要とする。赤外線LED66の消費電力、発熱量は電流の二乗に比例するように増加する。発光デバイスを冷却するためのヒートシンクも大型化する。
このため、
図3に示すように、乗員の輪郭などを撮像環境によらずに撮像するために必要とされる光量を得ようとすると、高出力の赤外線LED66を使用する必要があるため、上述したような課題が顕在化する。また、中出力の赤外線LED66を単体最大光量に近いところで使用するすると、短い累積点灯時間において早期に光量不足が発生することになる。この場合、赤外線LED66を比較的頻繁に交換しなければならなくなる。
また、赤外線LED66から乗員へ比較的強い光を照射している場合、乗員についての網膜、血管などが良好に撮像され難くなる。網膜、血管などの撮像に適した光量範囲は、環境によらずに乗員の輪郭を撮像することに適した光量範囲より低く、それらの範囲同士が重ならない可能性が高い。
本実施形態では、制御を工夫することにより、これらの課題を総合的に解決し、さらに車両の乗員監視装置60としての機能を改善している。以下、詳しく説明する。
【0037】
図4は、
図2の乗員監視ECU17の動作モードの切替処理のフローチャートである。
乗員監視ECU17は、自動車1が起動されると、乗員監視装置60の制御部として、
図4の処理を繰り返し実行する。乗員監視ECU17は、自動車1の走行中において、
図4の処理を繰り返し実行してよい。
【0038】
ステップST1において、乗員監視ECU17は、まず、乗員監視装置60を通常モードで起動する。通常モードにおいて、乗員監視ECU17は、乗員監視装置60におけるすべての機能を実行する状態にする。乗員監視ECU17は、たとえばセンタ撮像モジュール61の撮像画像に基づいて乗員の上体の位置や頭部の位置を監視するとともに、ドライバ撮像モジュール62の撮像画像に基づいて乗員の居眠り、興奮、わき見などの乗車状態を監視する。乗員監視ECU17は、撮像画像に撮像されている乗員の網膜または血管に基づいて、乗員の状態を監視してよい。
【0039】
ステップST2において、乗員監視ECU17は、自動車1の衝突が予測されたか否かを判断する。検出ECU16は、ステレオカメラ43による外の画像を解析して、自動車1の周囲にいる他の移動体との衝突を予測する。乗員監視ECU17は、この衝突予測を取得している場合、自動車1の衝突が予測されたと判断し、処理をステップST3へ進める。衝突が予測されていない場合、乗員監視ECU17は、処理をステップST1へ戻す。衝突が予測されるまで、乗員監視ECU17は、通常モードで動作し続ける。
【0040】
ステップST3において、乗員監視ECU17は、乗員監視装置60の動作状態を、起動時の通常モードから縮退モードへ切り替える。縮退モードにおいて、乗員監視ECU17は、乗員監視装置60における一部の機能のみを実行する状態にする。乗員監視ECU17は、たとえば衝突予測後に必要とされる機能に絞って、実行する。ここでは、乗員監視ECU17は、たとえばセンタ撮像モジュール61の撮像画像に基づいて乗員の上体の位置や頭部の位置を監視して記録する機能のみを実行する状態とする。また、後述するように、縮退モードでは、乗員監視ECU17は、センタ撮像モジュール61およびドライバ撮像モジュール62を、通常モードの場合より高速で短い周期ごとに撮像させる。この場合、ドライバ撮像モジュール62の撮像画像は、使用しないことになる。乗員監視ECU17は、乗員の網膜または血管に基づく状態の監視を停止して、1つの撮像デバイス65により高速に撮像されている撮像画像のみに基づいて乗員の頭部の位置のみを短い周期で監視することになる。
【0041】
ステップST4において、乗員監視ECU17は、自動車1の衝突が検出された否かを判断する。検出ECU16は、加速度センサ42において所定値以上の大きい衝突の加速度が検出されると、衝突を検出する。乗員監視ECU17は、この衝突検出を取得している場合、自動車1の衝突が検出されたと判断し、
図4の処理を終了する。この際、乗員監視ECU17は、衝突検出と判断するための乗員の監視データを、乗員監視メモリ63に記録してよい。また、乗員監視ECU17は、衝突検出後の所定期間で乗員を監視して、その検出後のデータを、乗員監視メモリ63に記録してよい。乗員監視ECU17は、衝突検出を取得していない場合、処理をステップST5へ進める。
【0042】
ステップST5において、乗員監視ECU17は、自動車1の衝突がなくなったか否かを判断する。乗員監視ECU17は、たとえば検出ECU16から新たな衝突予測を取得しなくなった場合、自動車1の衝突がなくなったと判断し、処理をステップST1へ戻す。乗員監視ECU17は、たとえば検出ECU16から新たな衝突予測を取得し続けている場合、自動車1の衝突がなくなっていないと判断し、処理をステップST4へ戻す。
【0043】
図5は、
図4の通常モードでの処理のフローチャートである。
乗員監視ECU17は、乗員監視装置60を通常モードで起動して動作させる場合、乗員監視装置60の制御部として、
図5の処理を繰り返し実行する。
乗員監視ECU17は、
図5の処理により、複数の撮像モジュールの撮像デバイス65による複数の撮像画像に基づいて、乗員の状態を監視する。
【0044】
ステップST11において、乗員監視ECU17は、乗員監視装置60を通常モードで動作させるための初期設定を実行する。ここでは、乗員監視ECU17は、乗員監視装置60のすべての機能を起動して実行する状態にする。乗員監視ECU17は、センタ撮像モジュール61とドライバ撮像モジュール62とが、撮像および監視を繰り返すための所定の周期内で互いに重ならないようにずらしたタイミングにおいて個別に撮像するように、これらを設定する。乗員監視ECU17は、センタ撮像モジュール61の赤外線LED66とドライバ撮像モジュール62の赤外線LED66とを、それぞれの撮像タイミングにおいてのみ発光するように設定するとともに、それらの発光光量を第一光量に設定する。
【0045】
ステップST12において、乗員監視ECU17は、センタ撮像モジュール61において撮像を実行させる第一タイミングであるか否かを判断する。第一タイミングに到達していない場合、乗員監視ECU17は、本処理を繰り返す。第一タイミングに到達すると、乗員監視ECU17は、処理をステップST13へ進める。
【0046】
ステップST13において、乗員監視ECU17は、センタ撮像モジュール61に、赤外線LED66を発光させて撮像デバイス65による撮像処理を実行させる。赤外線LED66は、第一光量で発光を開始し、撮像デバイス65による撮像処理が終了すると消灯する。赤外線LED66は、乗員の網膜または血管を撮像可能な第一光量に抑えて発光する。
【0047】
ステップST14において、乗員監視ECU17は、ステップST13においてセンタ撮像モジュール61により撮像された撮像画像を取得して監視処理を実行する。乗員監視ECU17は、撮像画像における乗員の頭部の撮像位置から、車内における乗員の頭部の現在位置を判断する。乗員監視ECU17は、判断した乗員の頭部の現在位置を、乗員保護ECU18へ送信する。
【0048】
ステップST15において、乗員監視ECU17は、ドライバ撮像モジュール62において撮像を実行させる第二タイミングであるか否かを判断する。第二タイミングに到達していない場合、乗員監視ECU17は、本処理を繰り返す。第二タイミングに到達すると、乗員監視ECU17は、処理をステップST16へ進める。
【0049】
ステップST16において、乗員監視ECU17は、ドライバ撮像モジュール62に、赤外線LED66を発光させて撮像デバイス65による撮像処理を実行させる。赤外線LED66は、第一光量で発光を開始し、撮像デバイス65による撮像処理が終了すると消灯する。赤外線LED66は、乗員の網膜または血管を撮像可能な第一光量に抑えて発光する。
【0050】
ステップST17において、乗員監視ECU17は、ステップST16においてドライバ撮像モジュール62により撮像された撮像画像を取得して監視処理を実行する。乗員監視ECU17は、ステップST13においてセンタ撮像モジュール61により撮像された撮像画像についても同様に監視処理を実行してよい。乗員監視ECU17は、撮像画像における乗員の網膜や血管などに基づいて、乗員の乗車状態を判断する。乗員監視ECU17は、乗員が自動車1を運転することができる乗車状態でない場合、判断した乗車状態を、ドライブECU14、外通信ECU19、UIECU20などへ送信する。ドライブECU14は、乗員の乗車状態に応じて、自動車1の走行を切り換えてよい。外通信ECU19は、サーバ装置102や他の自動車110へ、乗員の乗車状態を送信してよい。UIECU20は、乗員の乗車状態に基づく警報を表示デバイス51などから出力してよい。
【0051】
ステップST18において、乗員監視ECU17は、監視終了か否かを判断する。たとえば自動車1が目的地に到達して乗員が降車した場合、乗員監視ECU17は、監視終了と判断して、
図5の処理を終了する。監視終了と判断しない場合、乗員監視ECU17は、処理をステップST12へ戻す。乗員監視ECU17は、通常モードでの所定の撮像周期ごとに、ステップST12からステップST18の処理を繰り返して、センタ撮像モジュール61とドライバ撮像モジュール62とを順番に撮像させる。そして、センタ撮像モジュール61の赤外線LED66は、その撮像デバイス65が撮像する期間でのみ点灯して光を照射する。ドライバ撮像モジュール62の赤外線LED66は、その撮像デバイス65が撮像する期間でのみ点灯して光を照射する。
このように、乗員監視ECU17は、自動車1の衝突が予測または検出されていない場合には、複数の撮像モジュールを、それらの複数の赤外線LED66の発光タイミングが互いにずれるように、互いの撮像タイミングをずらして動作させる。
【0052】
図6は、
図4の縮退モードでの処理のフローチャートである。
乗員監視ECU17は、乗員監視装置60を縮退モードで動作させる場合、乗員監視装置60の制御部として、
図6の処理を繰り返し実行する。
乗員監視ECU17は、
図6の処理により、センタ撮像モジュール61の撮像デバイス65による撮像画像に基づいて、乗員の頭部の現在位置を監視する。
【0053】
ステップST21において、乗員監視ECU17は、乗員監視装置60を縮退モードで動作させるための初期設定を実行する。ここでは、乗員監視ECU17は、乗員監視装置60の一部の機能のみを実行する状態にする。ここでは、乗員監視ECU17は、乗員の頭部の現在位置を監視する機能のみを実行する状態にする。乗員監視ECU17は、センタ撮像モジュール61とドライバ撮像モジュール62とが、通常モードより短い所定の照射撮像周期内の同じタイミングにおいて同時に撮像するように、これらを設定する。乗員監視ECU17は、センタ撮像モジュール61の赤外線LED66とドライバ撮像モジュール62の赤外線LED66とを、それぞれの撮像タイミングにおいてのみ発光するように設定するとともに、それらの発光光量を第一光量以下の第二光量に設定する。第二光量が第一光量の半分以上であることにより、センタ撮像モジュール61の赤外線LED66とドライバ撮像モジュール62の赤外線LED66との総光量は、第一光量以上となり得る。また、各赤外線LED66の光量が通常時のものより増えないことから、衝突予測検出時において光量を切り換えて動作させたとしても、各赤外線LED66が劣化してその寿命が短くなることはない。
【0054】
ステップST22において、乗員監視ECU17は、ドライバ撮像モジュール62およびセンタ撮像モジュール61を同時に撮像させる高速撮像タイミングであるか否かを判断する。高速撮像タイミングに到達していない場合、乗員監視ECU17は、本処理を繰り返す。高速撮像タイミングに到達すると、乗員監視ECU17は、処理をステップST23へ進める。
【0055】
ステップST23において、乗員監視ECU17は、ドライバ撮像モジュール62およびセンタ撮像モジュール61に、赤外線LED66を発光させて撮像デバイス65による撮像処理を実行させる。ドライバ撮像モジュール62の赤外線LED66とセンタ撮像モジュール61の赤外線LED66とは、それぞれ第一光量で発光を開始し、それぞれの撮像デバイス65による撮像処理が終了すると消灯する。乗員に照射される総光量は、第一光量以上となり、環境によらずに乗員の輪郭を撮像するために適した光量となり得る。
【0056】
ステップST24において、乗員監視ECU17は、ステップST23においてセンタ撮像モジュール61により撮像された撮像画像を取得して監視処理を実行する。乗員監視ECU17は、撮像画像における乗員の頭部の撮像位置から、車内における乗員の頭部の現在位置を判断する。乗員監視ECU17は、判断した乗員の頭部の現在位置を、乗員保護ECU18へ送信する。
【0057】
ステップST25において、乗員監視ECU17は、監視終了か否かを判断する。たとえば自動車1が目的地に到達して乗員が降車した場合、乗員監視ECU17は、監視終了と判断して、
図6の処理を終了する。監視終了と判断しない場合、乗員監視ECU17は、処理をステップST22へ戻す。乗員監視ECU17は、縮退モードでの高速の撮像周期ごとに、ステップST22からステップST25までの処理を繰り返して、センタ撮像モジュール61とドライバ撮像モジュール62とを同時に撮像させる。そして、センタ撮像モジュール61の赤外線LED66と、ドライバ撮像モジュール62の赤外線LED66とは、同時点灯することにより、乗員に対して第一光量以上の総光量を照射する。センタ撮像モジュール61の撮像デバイス65は、そのように強い光が照射されている乗員を撮像できる。
このように、乗員監視ECU17は、自動車1の衝突が予測または検出されている場合には、複数の撮像モジュールを、それらの複数の赤外線LED66の発光タイミングが同時に点灯するようにする。
【0058】
図7は、
図2の乗員保護ECU18の処理のフローチャートである。
乗員保護ECU18は、自動車1が起動されると、乗員保護装置70の制御部として、
図7の処理を繰り返し実行する。乗員監視ECU17は、自動車1の走行中において、
図7の処理を繰り返し実行してよい。
【0059】
ステップST31において、乗員保護ECU18は、自動車1の衝突が予測されたか否かを判断する。検出ECU16は、ステレオカメラ43による外の画像を解析して、自動車1の周囲にいる他の移動体との衝突を予測する。乗員保護ECU18は、この衝突予測を取得している場合、自動車1の衝突が予測されたと判断し、処理をステップST32へ進める。衝突が予測されていない場合、乗員監視ECU17は、本処理を繰り返す。
【0060】
ステップST32において、乗員保護ECU18は、乗員の最新の頭部位置を取得する。乗員監視ECU17は、周期的な乗員の撮像に基づいて、乗員の最新の頭部位置を得る。乗員保護ECU18は、乗員監視ECU17から、乗員の最新の頭部位置を取得する。
【0061】
ステップST33において、乗員保護ECU18は、取得した乗員の最新の頭部位置に応じて、乗員保護装置70の動作を設定する。乗員保護ECU18は、乗員監視ECU17から乗員の頭部の最新の位置に応じて、衝突により乗員が倒れる方向から乗員の上体および頭部を支えるように、エアバッグの展開開始位置、展開方向、展開速度、展開強さ、の設定を調整する。また、乗員保護ECU18は、シートベルトの拘束開始タイミング、拘束強さ(リミット)、拘束期間などの設定を調整する。
なお、乗員保護ECU18は、ステップST32およびステップST33の処理の後に、ステップST31の処理を実行してもよい。この場合、乗員監視ECU17は、衝突が予測されていない場合に処理をステップST32へ戻すとよい。
【0062】
ステップST34において、乗員保護ECU18は、自動車1の衝突が検出されたか否かを判断する。検出ECU16は、加速度センサ42の検出値に基づいて、自動車1の衝突を検出する。乗員保護ECU18は、この衝突検出を取得している場合、自動車1が衝突したと判断し、処理をステップST35へ進める。衝突が検出されていない場合、乗員監視ECU17は、処理をステップST36へ進める。
【0063】
ステップST35において、乗員保護ECU18は、乗員保護制御を実行する。乗員保護ECU18は、エアバッグ装置71およびシートベルト装置72を、それらの設定に基づいて作動させる。シートベルトは、乗員に対してシート4への拘束力を作用させ、エアバックが乗員の周囲で展開する。乗員の衝撃は、シートベルトおよびエアバッグにより吸収される。
【0064】
ステップST36において、乗員保護ECU18は、自動車1の衝突がなくなったか否かを判断する。乗員保護ECU18は、たとえば検出ECU16から新たな衝突予測を取得しなくなった場合、自動車1の衝突がなくなったと判断し、処理をステップST31へ戻す。乗員監視ECU17は、たとえば検出ECU16から新たな衝突予測を取得し続けている場合、自動車1の衝突がなくなっていないと判断し、処理をステップST32へ戻す。
【0065】
図8は、センタ撮像モジュール61およびドライバ撮像モジュール62の動作状態を説明するタイミングチャートである。
図8(A)から
図8(C)は、通常モードでのタイミングチャートである。
図8(A)は、通常モードの投光撮像周期である。
図8(B)は、センタ撮像モジュール61の照射撮像動作である。
図8(C)は、ドライバ撮像モジュール62の照射撮像動作である。時間は左から右へ流れる。
図8(D)から
図8(F)は、縮退モードでのタイミングチャートである。
図8(D)は、縮退モードの投光撮像周期である。
図8(E)は、センタ撮像モジュール61の照射撮像動作である。
図8(F)は、ドライバ撮像モジュール62の照射撮像動作である。時間は左から右へ流れる。
【0066】
通常モードでは、
図8(A)に示すように比較的に長い周期ごとに、センタ撮像モジュール61およびドライバ撮像モジュール62は、照射および撮像を繰り返す。センタ撮像モジュール61は、
図8(B)に示すように、各周期の初めの第一タイミングから、乗員への照射を開始して乗員を撮像する。ドライバ撮像モジュール62は、
図8(C)に示すように、各周期の途中の第二タイミングから、乗員への照射を開始して乗員を撮像する。ここで、センタ撮像モジュール61とドライバ撮像モジュール62とは、HDR撮像のために1つ撮像において2つの画像を撮像している。2つの画像を合成することにより、ダイナミックレンジが広がったHDR画像が得られる。このように、センタ撮像モジュール61の照射期間と、ドライバ撮像モジュール62の照射期間とは、重ならない。この場合、センタ撮像モジュール61の撮像デバイス65と、ドライバ撮像モジュール62の撮像デバイス65とは、それぞれの赤外線LED66により照射された第一光量のみの光により、乗員を撮像できる。乗員の網膜や血管を判断するのに適した画像を撮像できる。
【0067】
縮退モードでは、
図8(D)に示すように比較的に短い周期ごとに、センタ撮像モジュール61およびドライバ撮像モジュール62は、照射および撮像を高速に繰り返す。センタ撮像モジュール61は、
図8(E)に示すように、各周期の初めの高速撮像タイミングから、乗員への照射を開始して乗員を撮像する。ドライバ撮像モジュール62は、
図8(F)に示すように、各周期の初めの高速撮像タイミングから、乗員への照射を開始して乗員を撮像する。センタ撮像モジュール61の照射期間と、ドライバ撮像モジュール62の照射期間とは、重なる。この場合、センタ撮像モジュール61の撮像デバイス65と、ドライバ撮像モジュール62の撮像デバイス65とは、それら複数の赤外線LED66により照射されている乗員を撮像することになる。第一光量以上の光量が照射されている乗員を撮像することになる。乗員の輪郭を判断するのに適した画像を撮像できる。
しかも、縮退モードでは、センタ撮像モジュール61およびドライバ撮像モジュール62は、通常モードより短い周期で、高速に撮像を繰り返す。これにより、乗員の頭部の最新の位置をほぼリアルタイムに撮像して更新することができる。
【0068】
以上のように、本実施形態では、撮像デバイス65および発光デバイスとしての赤外線LED66をそれぞれ有するセンタ撮像モジュール61およびドライバ撮像モジュール62のそれぞれについて、撮像デバイス65が撮像する際に赤外線LED66から光を照射させる。そして、自動車1の衝突が予測または検出されると、撮像デバイス65および赤外線LED66を有する複数の撮像モジュールを同時に撮像するように動作させて、複数の撮像モジュールの赤外線LED66から同時に乗員へ光を照射する。これにより、乗員は、自動車1の衝突が予測または検出される場合には、複数の赤外線LED66の光により明るく照らされる。その状態で乗員を撮像することより、撮像画像には、乗員の輪郭などがはっきりと撮像されるようになる。その結果、本実施形態では、撮像画像に基づいて乗員の位置など正確に特定することが可能になる。本実施形態の自動車1の乗員監視装置60により特定される正確な乗員の位置などに基づいて、自動車1の他の装置、たとえば乗員保護装置70は、正確な乗員の位置に応じて、その乗員に対しての保護制御を適切に実行することが可能になる。
【0069】
しかも、本実施形態では、個々の赤外線LED66において発光光量を上げるようにしなくとも、乗員に照射される総光量を増やすことができる。したがって、自動車1の衝突が予測または検出された状態から検出されない状態へ戻った後に、個々の赤外線LED66において光量増加による劣化が生じないようにできる。または、光量増加による劣化がほぼ生じていないようにできる。その結果、赤外線LED66は、自動車1の衝突が予測または検出された後においても、継続して使用し続けることができる。赤外線LED66は、自動車1の衝突の予測または検出の有無にかかわらず、長期にわたって継続して使用することができる。
【0070】
また、本実施形態では、自動車1の衝突が予測または検出されていない通常の場合には、複数の撮像モジュールは、それらの複数の赤外線LED66の発光タイミングが互いにずれるように、互いの撮像タイミングをずらして動作する。これにより、通常時には、複数の撮像モジュールは、それぞれのタイミングにおいて、それぞれの赤外線LED66のみの光により乗員を照射した状態で乗員を撮像することができる。また、乗員に対して強い光を照射し続け難くなる。乗員についての網膜、血管などの状態を良好に撮像することが可能になる。
【0071】
本実施形態では、自動車1の衝突が予測または検出されると、複数の撮像モジュールの撮像デバイス65を、自動車1の衝突が予測または検出されていない場合と比べて高速に撮像させる。このように高速な撮像をして各画像の撮像期間が短くなったとしても、乗員へ照射される総光量が増えているので、各撮像画像において乗員が暗く撮像され難くなり、乗員の輪郭をはっきりと撮像できる。そして、乗員の輪郭をはっきりと撮像した複数の撮像画像が短い撮像期間ごとに得られることにより、自動車1の衝突が予測または検出された後の乗員の位置を、リアルタイムに且つ正確に得ることが可能となる。
このように自動車1の衝突が予測または検出された後の乗員の位置を、リアルタイムに且つ正確に得ることができるので、自動車1の他の装置、たとえば乗員保護装置70は、そのリアルタイムの正確な乗員の位置に応じて、その乗員に対しての保護制御を適切に実行することが可能になる。
【0072】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0073】
たとえば上述した実施形態では、複数の撮像モジュールを構成するセンタ撮像モジュール61は、乗員の前にあるダッシュボード6の中央部分に設けられ、ドライバ撮像モジュール62は、乗員の前にあるダッシュボード6についての、ドライバが着座するシート4の前側となる右側部分に設けられる。
複数の撮像モジュールは、これら以外の場所の組み合わせにより車室3に設けられてよい。たとえば、ドライバ撮像モジュール62は、センタ撮像モジュール61とともに、乗員の前にあるダッシュボード6の中央部分に設けられてよい。また、複数の撮像モジュールは、衝突予測時ではない通常時において常に
図8(A)から
図8(C)のように動作していなくてもよい。たとえば、通常時においても複数の撮像モジュールが同時に撮像動作をすることがあってもよい。また、複数の撮像モジュールの撮像画像は、必ずしも個別に処理に利用されるのではなく、たとえばステレオカメラ用の複数の撮像画像として、たとえば乗員の位置などを判断するための処理に利用されてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…自動車(車両)、6…ダッシュボード、10…制御系(乗員保護システム)、17…乗員監視ECU、18…乗員保護ECU、60…乗員監視装置、61…センタ撮像モジュール、62…ドライバ撮像モジュール、63…乗員監視メモリ、65…撮像デバイス、66…赤外線LED、70…乗員保護装置、71…エアバッグ装置、72…シートベルト装置