(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】包装容器
(51)【国際特許分類】
B65D 75/60 20060101AFI20230526BHJP
【FI】
B65D75/60
(21)【出願番号】P 2019062055
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上野 友央
(72)【発明者】
【氏名】橋本 健司
(72)【発明者】
【氏名】椎名 徳之
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-095276(JP,A)
【文献】国際公開第2007/020854(WO,A1)
【文献】実開平04-001179(JP,U)
【文献】特開2006-044681(JP,A)
【文献】特開2017-119522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 75/60
B65D 75/36
B65D 77/20
B65D 81/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に開口部を有し、前記開口部から外方向に延びたフランジを有する容器本体と、前記フランジの全域に亘って接着することで前記容器本体を密封する蓋材と、からなる包装容器であって、
前記蓋材は1枚の可撓性シートを合掌状に折り曲げ、隣接したシート同士をヒートシール接着したシール部を有しており、
前記シール部の一部には切り込みまたは切欠き部が設けられ、
前記容器本体は
稜部によって仕切られており、前記
稜部の直線方向と前記蓋材の折り曲げ部の直線方向とが平行である包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調味料や飲料などの飲食品、化粧品、薬品、洗剤などで液状、ペースト状、粉状を呈したもの、及びこれらに小体積の固形物を混在したものを内容物として包装した包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、様々な包装容器が提案され、市場に流通している。一例として、指でつまんで押圧操作することにより、開封時に内容物で手が汚れない包装容器が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の液状物収容容器は、開口部にフランジ部を備えた容器本体と蓋材で構成され、蓋材はフランジ部においてシール結合されている。また、シール部の一部には、内容物を抽出可能な抽出起点部が設けられている。この抽出起点部は、易接着のイージーオープン性を有する弱シール部となっており、指で押圧して容器内の圧力が上昇すると、その他のシール部よりも先に剥離する。これにより、注出口が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の液状物収容容器は、容器内の圧力を高めれば簡便に注出口が形成されるため使いやすい。一方で、注出起点部には応力が集中しやすい。そのため、何かしらかの理由により容器内の圧力が高まると、注出起点部に応力が集中し、簡単に注出起点部のシールが剥がれてしまうといった問題がある。例えば、液状物収容容器を重ねて搬送するような場合、底側に位置する収容容器には他の収容容器および中身の重さが付加されるため、容器内の圧力が高くなる恐れがある。また、収容容器のどれか一つから内容物が飛び出してしまうと、周囲の容器も汚れるため商品価値がなくなってしまうといった問題もある。
【0006】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の課題は、使用時においては内容物の注出が容易である一方、容器を積み重ねて搬送や保管をする際には、応力集中によって簡単にシール部が剥離しないようにした包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する本発明は、上面に開口部を有し、前記開口部から外方向に延びたフランジを有する容器本体と、前記フランジの全域に亘って接着することで前記容器本体を密封する蓋材と、からなる包装容器であって、前記蓋材は1枚の可撓性シートを合掌状に折り曲げ、隣接したシート同士をヒートシール接着したシール部を有しており、前記シール部の一部に切り込みまたは切欠き部を設けた包装容器である。
【0008】
このような構成によれば、使用時に容器内の圧力が高まると、まずシール部が後退しはじめる。シール部の後退が切り込みまたは切欠き部に到達すると、容器本体内部と外部とが連通する。このとき、切り込みまたは切欠き部が注出口となる。
【0009】
前記包装体においては、前記容器本体は綾部によって仕切られており、前記綾部の直線方向と前記蓋材の折り曲げ部の直線方向とが平行であることが好ましい。
【0010】
かかる構成によれば、容器本体を仕切る綾部と蓋材の折り曲げ部とが平行であるため、容器本体を折り曲げ、容器内部の圧力を高めて内容物を絞り出しやすい。また、折り曲げた際に容器本体同士が触れ合い、互いに押し合いながら絞られるため、内容物をより注出しやすくすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、使用時においては容器折り曲げるだけで内容物を注出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態にかかる包装容器を説明するための説明図である。
【
図2】容器本体と蓋材とが分離した状態を示す説明図である。
【
図3】容器本体の形状を説明するための底面図と側面図である。
【
図4】包装容器内から内容物を抽出するための使用状態説明図である。
【
図5】内容物を抽出する際の容器内の応力集中を説明するための説明図である。
【0013】
以下、本発明を図面に基づき説明する。なお、図中、同一符号は同一名称物を示す。
【0014】
図1に示すように、本願発明に係る包装容器1は、可撓性を備えた容器本体10と、同じく可撓性材料からなり、容器本体10に溶着することで容器本体内を密封する蓋材20と、で構成されている。本願発明に係る包装容器1は、内容物として調味料や飲料などの飲食品、化粧品、薬品、洗剤などで液状、ペースト状、粉状を呈したもの、及びこれらに小体積の固形物を混在したものを密封収容するためのものである。
【0015】
容器本体10は、
図2,3に示すように、一対の凹部(以下、単に「収容部11」という場合がある。)を備えている。一対の収容部11は、容器本体1の幅全体にわたって延びるように設けられた稜部12によって仕切られるように形成されている。また、収容部11は、容器本体の中心線Mを基準に鏡対象の形状となっている。
【0016】
各収容部11は、側壁及び底面によって構成されている。このうち、収容部11同士が向かい合う側壁の一部は、
図2,3に示すように、他の側壁よりも低くなっている。そのため、各収容部11は、低くなった側壁15を通じて相対する収容部11と連通するようになっている。また、収容部11の形状は特に制限されないが、後述する蓋材20の注出口に対応する位置に向かって通路が狭まるような形状が好ましい。例えば、
図2に示すように、容器本体の内側に向かって凸部18を設けることで、通路が狭まるようにしてもよい。
【0017】
本発明にかかる容器本体10は、ポリエチレン等の可撓性を有する軟質合成樹脂シートから一体成型により形成される。軟質合成樹脂シートは単層であってもよいし積層されていてもよい。また、軟質合成樹脂シートは酸素や水蒸気等のガスバリア性を備えていることが好ましい。
【0018】
本発明においては、軟質合成樹脂シートを絞り加工することで容器本体10に成形することができる。また、絞り加工以外の成型方法としては、圧空成形(真空圧空成形、押出圧空成形、熱板圧空成形等)、真空成形、プレス成形法等の周知の成形方法を用いることができる。
【0019】
本発明に係る蓋材20は、容器本体10のフランジ部30と接着することで収容部11を密封する。本発明に係る蓋材20は、一枚のシートの一部を合掌状に折り曲げ、隣接したシート同士を熱溶着することでフラップ40が形成されている。また、フラップ40は、容器本体の開口面と略平行となるように左右いずれかに倒れている。
【0020】
フラップ40についてより詳細に説明すると、
図1に示すように、フラップ40には異なる接着強度のシール部が設けられている。フラップ40の先端からフラップ40の中間位置までは、シート同士が強接着された強シール部41となっている。一方、フラップ40の中間位置からフラップ40の付け根までは、シート同士が強シール部41よりも弱接着された弱シール部42となっている。ここで、強シール部41の強度としては、20~40N/15mmであることが好ましい。弱シール部42の強度としては、5~20N/15mmであることが好ましい。なお、異なる接着強度のシール部は必須構成ではなく、弱シール部のみでフラップ40を形成してもよい。
【0021】
本発明に係るフラップ40には切欠き部45が形成されている。フラップ40に形成された切欠き部45は、フラップ40の先端からフラップ40の真ん中を越えて、すなわち強シール部41から弱シール部42まで到達している。また、切欠き部45は、前述した欠損した側壁15の上に位置するように設けられている。すなわち、凸部18と凸部18との間に位置するように設けられている。
【0022】
本発明においては、切欠き部45は使用時に注出口となるため、ある程度の大きさをもって切り欠かれていることが好ましい。切欠き部45の形状としては、弱シール部42に向かって切欠き幅が漸次狭くなっている形状、例えばVノッチやUノッチ等が挙げられる。ただし、使用時に切欠き部に応力が集中するような形状であれば切り込みであってもよい。
【0023】
次に、本発明に係る包装容器1の製造方法について説明する。ここでは、一対の収容部11を備えた包装容器1を例に説明する。
【0024】
最初に、容器本体10の成形方法について説明する。ここでは、深絞り成形を例に説明する。まず、容器本体10の材料となる軟質合成樹脂シートを加熱する。次に、容器本体10の形状に模られた型に加熱した樹脂シートを配置する。この時、型の成形面には、成形面と反対側の面まで貫通した幾つかの穴が設けられている。そして、反対側の面において、吸引機構に接続されている。加熱した樹脂シートを型に配置すると、吸引機構が作動し樹脂シートが吸引されて型に密着し、容器本体10の形状に形成される。型付けされた容器本体は冷却され、形状が固定される。その後、フランジを含めた所定形状に型抜きされることで、容器保体10が得られる。なお、必要に応じてプラグを用いて成形してもよい。
【0025】
次に、蓋材20の製造方法を説明する。
【0026】
製造装置は、シートロール、ガイドローラー、フォーマー、第一シーラー、第二シーラー及びVノッチカッターから構成される。蓋材20は、シートロールから排出されたシート材料が、ガイドローラーによってフォーマーに送られ、第一シーラー、第二シーラー及びVノッチカッターを経て製造される。
【0027】
シートロールは、シート材料がロール状に巻かれたものである。ここで、シート材料は、ヒートシール可能な素材であれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、またはポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルムを用いることができる。シート材料は、シートロールから引き出されながら連続的に搬送される。
【0028】
シート材料は、ガイドローラーによってフォーマーまで搬送される。搬送されたシート材料は、搬送方向に沿う方向に折り目が来るように、フォーマーによって搬送されながら二つ折り(合掌状に)される。このとき、二つ折りされた折り曲げ部(フラップの先端に相当)が上方に位置し、下方は開いた状態となっている。
【0029】
次に、二つ折りされたシート材料を第一シーラーで熱接着する。第一シーラーは、予定しているフラップ幅よりも幅広な加熱面を持ったシーラーで構成されている。第一シーラーは折り曲げ部を含むシート材料をシート両側から挟み込むことで、シート材料を熱接着し、弱シール部を形成する。第一シーラーの温度としては、80~110℃が好ましい。
【0030】
次に、シート材料は第二シーラーにより、もう一度熱接着される。第二シーラーは第一シーラーよりも加熱面積が狭くなっており、折り曲げ部からフラップの中間位置まで横幅方向に亘って加熱する。これにより、強シール部が形成される。第二シーラーの幅は、予定しているフラップの強シール部の幅よりもわずかに幅広であることが好ましい。これにより、フラップの先端部を含めて確実に所定幅で強シール部を作成することができる。第二シーラーは、第一シーラーよりも温度が高く設定されていればよい。なお、強シール部を設けない場合には、第二シーラーを通さず、次工程に進めばよい。
【0031】
第二シーラーで熱溶着されたシート材料は、Vノッチカッターによって一定間隔で折り曲げ部側からVノッチが形成される。Vノッチが形成されたシート材料は巻き取られ、次工程に送られる。
【0032】
続いて、包装容器の製造方法について説明する。上述した容器本体は、開口面を上に向けてコンベアに乗せられ搬送される。搬送されてきた容器本体に対して、上方からノズルで内容物を容器本体に充填する。内容物が充填された容器本体は、引き続きコンベア上を搬送される。
【0033】
次に、内容物が充填された容器本体に対して、上方からフラップが形成された蓋材が供給される。この時、フラップが連続して繋がっている方向と、容器本体の収容部を仕切る稜線の方向とが一致するように、蓋材を供給する。次に上方からヒートシーラーが下降し、蓋材と容器本体のフランジ部とを熱接着する。なお、ヒートシーラーの温度としては、150~180℃が好ましい。このとき、フラップは倒れた状態で熱接着される。フラップを倒した状態で熱接着することで、フラップの折り曲げ部以外の周縁及び蓋材の周縁全てが熱溶着される。最後に、フランジの形状に合わせて蓋材を切ることで、最終製品の包装容器が完成する。
【0034】
なお、包装容器の製造方法は、上述の方法に限られない。例えば、あらかじめ打ち抜いた蓋材を用いて製造してもよい。また、ヒートシールと打ち抜きとを同時に行ってもよい。
【0035】
最後に、
図4,5を参照しながら本発明に係る包装容器1からの内容物の取り出し方法について説明する。収容部11に収容された内容物を取り出すには、中心線Mに沿って収容部11の底面同士が接触するように二つ折りに折り曲げる。二つ折りにすると、倒れていたフラップ40が蓋材20から浮き上がるとともに、収容部11同士が互いに圧接し、容器本体1内の内圧が高まる。蓋材20周縁はフランジ部30と強シールされており、容器本体1の凸部18によって流路が狭小化されている。これにより、高まった内圧は内容物とともにVノッチ45の先端近傍の弱シール部42に集中する。そして、Vノッチ45の先端に応力が集中し、弱シール部42が剥離することで、外部に貫通する。こうして、Vノッチ45が注出口となり、内容物が取り出される。
【0036】
一方、包装容器の搬送時や保管時においては、フラップが倒れているため、容器本体に圧力がかかっても弱シール部に内圧が集中しない。そのため、意図しない中身の飛び出しを防ぐことができる。
【0037】
以上説明したように、本発明に係る包装容器1は、使用時においては内容物の注出が容易である一方、容器を積み重ねて搬送や保管をする際には、応力集中によって簡単にシール部が剥離しないようにすることができる。また、手を汚さずに内容物を最後まで絞り出すことができる。
【符号の説明】
【0038】
1 包装容器
10 容器本体
11 収容部
12 稜部
15 側壁
18 凸部
20 蓋材
30 フランジ
40 フラップ
41 強シール部
42 弱シール部
45 切欠き部(Vノッチ)
M 中心線