(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】低損失スナバ回路および電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20230529BHJP
【FI】
H02M3/28 R
(21)【出願番号】P 2020168377
(22)【出願日】2020-10-05
【審査請求日】2022-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】塩見 竹史
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-186363(JP,A)
【文献】国際公開第2017/220133(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準電圧ノードとスイッチノードとを備える整流回路に接続されたスナバ回路であって、
上記スナバ回路はスナバコンデンサとP型MOSトランジスタとを備えており、
上記スナバコンデンサは、正極が上記スイッチノードに接続されており、
上記P型MOSトランジスタは、ドレインが上記スナバコンデンサの負極に接続されており、ソースが基準電圧ノードに接続され
、
上記スイッチノードの電圧は略基準電圧と高電圧とを繰り返し、
上記P型MOSトランジスタのONは、上記スイッチノードの電圧が上記高電圧となることで上記P型MOSトランジスタの寄生ダイオードが導通した後に行われ、
上記P型MOSトランジスタのOFFは、上記スイッチノードの電圧が上記高電圧を下回る前に行われ、
上記P型MOSトランジスタがONしている期間は上記スイッチノードが高電圧の期間内である、スナバ回路。
【請求項2】
上記P型MOSトランジスタのゲートにはゲート駆動回路が接続されており、
上記ゲート駆動回路は、ゲート駆動信号発生器とゲート駆動コンデンサとゲート駆動ダイオードとを備えており、
上記ゲート駆動信号発生器は、基準電圧端子が上記基準電圧ノードに接続されており、出力端子が上記ゲート駆動コンデンサの正極に接続されており、
上記ゲート駆動コンデンサは、負極が上記ゲート駆動ダイオードのアノードと上記P型MOSトランジスタのゲートとに接続されており、
上記ゲート駆動ダイオードは、カソードが上記基準電圧ノードに接続されている、請求項1記載のスナバ回路。
【請求項3】
上記P型MOSトランジスタのONは上記ゲート駆動信号発生器の基準電圧出力で実行され、
上記P型MOSトランジスタのOFFは上記ゲート駆動信号発生器の正電圧出力で実行さ
れる、請求項2記載のスナバ回路。
【請求項4】
上記基準電圧ノードから上記スイッチノードに向けて整流素子が順方向接続されていて、
上記スナバコンデンサの静電容量は上記整流素子の出力容量の2倍以上である、請求項3記載のスナバ回路。
【請求項5】
上記P型MOSトランジスタの出力容量は、上記整流素子の出力容量の1/2以下である、請求項4記載のスナバ回路。
【請求項6】
上記スイッチノードは第1スイッチノードであって、
上記スナバ回路は第1スナバ回路であって、
上記整流回路はセンタータップを備えたトランスの巻線に接続されており、
上記整流回路は上記第1スイッチノードと第2スイッチノードとを備え、
上記第1スイッチノードには上記第1スナバ回路が接続され、
上記第2スイッチノードには上記第1スナバ回路と同じ構成の第2スナバ回路が接続された、請求項1記載の整流回路。
【請求項7】
請求項1に記載のスナバ回路を備えた、電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、スナバ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
スナバ回路は、スイッチ素子に印加されるサージ電圧を抑制するために付加される。一方で、スナバ回路において発生する損失も問題になっている。特許文献1には、スナバ回路の損失削減を目的とした回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
但し、このようなスナバ回路を用いても、なおも損失削減の余地がある。本開示の一態様は、従来よりも損失削減が可能なスナバ回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係るスナバ回路は、基準電圧ノードとスイッチノードとを備える整流回路に接続されたスナバ回路であって、上記スナバ回路はスナバコンデンサとP型MOSトランジスタとを備えており、上記スナバコンデンサは、正極が上記スイッチノードに接続されており、上記P型MOSトランジスタは、ドレインが上記スナバコンデンサの負極に接続されており、ソースが基準電圧ノードに接続されている。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、スナバ回路の損失を削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態1のスナバ回路とゲート駆動回路と整流回路とを示す図である。
【
図2】スナバ回路とゲート駆動回路との電流経路を示す図である。
【
図3】スナバ回路とゲート駆動回路との動作波形を示す図である。
【
図4】実施形態2のスナバ回路の応用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施形態1〕
実施形態1のスナバ回路1は、整流回路10において発生するサージ電圧を抑制することに加えて、スナバ回路1の損失も抑制する。整流回路10と、スナバ回路1と、スナバ回路1を制御するゲート駆動回路5との各回路構成は、
図1で示している。スナバ回路1とゲート駆動回路5との動作に関わる電流経路は、
図2で示している。スナバ回路1とゲート駆動回路5の動作波形は、2つのグラフを使って
図3で示している。2つのグラフの時間軸は、同一の時間軸に合わせてある。本開示において、記載の簡潔化のために、例えば「負荷LO1」を、単に「LO1」とも表記する。また、以下に述べる各数値は、単なる一例であることに留意されたい。
【0009】
(整流回路10の概要)
整流回路10は、絶縁DCDCコンバータ100(後述)のトランス(変圧器)TR1の2次側に接続されている。整流回路10は、センタータップ整流回路と呼ばれ、トランスTR1の交流起電力を直流電圧に変換する。
【0010】
(整流回路10の構成)
トランスTR1は、1次巻線PW1と2次巻線SW1とを備えている。PW1は1次側回路に接続され、SW1は整流回路10に接続される。SW1は、2ターンの巻線であり、その中点(センタータップ)には、平滑コイルCO1の一端が接続されている。CO1の他端には、平滑コンデンサCA1の正極が接続されている。CA1の負極は基準電圧ノードに接続されている。負荷LO1は、CA1に並列接続されている。
【0011】
整流回路10は、基準電圧ノードと第1スイッチノードと第2スイッチノードとを備える。SW1の一端は、整流素子RC1を介して基準電圧ノードに接続されている。SW1の一端とRC1との接続点は、第1スイッチノードである。SW1の他端は、整流素子RC2を介して基準電圧ノードに接続されている。SW1の他端とRC2との接続点は、第2スイッチノードである。
【0012】
基準電圧ノードの電圧は、0Vである。CA1の正極は、12.5Vの出力電圧ノードである。第1スイッチノードの電圧は、RC1の導通時に約0V、非導通時に約35Vへと切り替えられる。導通時の0Vには、RC1の電流量に応じた電圧降下(約-1V)が加算されるが、これも含めて略基準電圧と定義する。非導通時の35Vは、スイッチノードの高電圧である。ここには、サージ電圧やノイズなどの瞬時電圧は含まれない。これらは、第2スイッチノードでも同様に定義される。
【0013】
CO1は、インダクタンスが1.8μH、直流抵抗が0.3mΩである。平均電流は、80Aである。CA1は、静電容量が8.8mFである。RC1およびRC2は、ドレイン耐圧が80VのN型のMOSトランジスタ(Metal Oxide Semiconductor Transistor、金属酸化膜半導体トランジスタ)である。RC1およびRC2の各オン抵抗が0.4mΩになるようにMOSトランジスタが並列接続されている。出力容量の合計は、24nF(ドレイン電圧35V時)である。
【0014】
整流素子として、MOSトランジスタを適用したが、ダイオードの適用も可能である。整流素子は、一方向のみに電流を流す素子全般を示す。例えば、MOSトランジスタは、ゲートOFF時において、「ソースからドレインへ電流が導通し、ドレインからソースへの電流を遮断する」ことから、整流素子と定義している。
【0015】
(整流回路の交流動作とサージ電圧)
SW1に接続された第1および第2スイッチノードの電圧は、周波数66kHzの交流起電力によって切り替えられる。第1スイッチノードの電圧は正の半サイクル時に35Vになり、第2スイッチノードの電圧は負の半サイクル時に35Vになる。サージ電圧は、この35Vへ切り替わる時に発生し、スナバ回路無しでは瞬時的に約60Vになる。
【0016】
(スナバ回路の構成)
整流回路10に接続されたスナバ回路1は、スナバコンデンサSC1と、P型MOSトランジスタSQ1とを備える。SC1は、耐圧が100V、DC35V時の容量が3.8μFのセラミックコンデンサである。SQ1は、耐圧80V、オン抵抗85mΩ、入力容量1nF、出力容量(ドレイン電圧-35V時)200pF、しきい値電圧-2.5VのP型MOSトランジスタである。
【0017】
第1スイッチノードに接続されるスナバ回路1では、SC1の正極は第1スイッチノードに接続され、SQ1のドレインがSC1の負極に接続され、SQ1のソースが基準電圧ノードに接続されている。
【0018】
第2スイッチノードに接続されるスナバ回路1Aは、スナバコンデンサSC2とP型MOSトランジスタSQ2を使ってスナバ回路1と同様に構成されている。
【0019】
MOSトランジスタの寄生ダイオードを介してスナバコンデンサを充電する回路接続を行うケースについて考える。スナバ回路にN型MOSトランジスタを使った場合、ソース端子が基準電圧ノードに接続できない為、基準電圧ノードからのゲート駆動が困難になる。例えば、先行技術文献の特開2017-169256号公報のN型MOSトランジスタ223は、基準電圧ノードからのゲート駆動が容易でない。
【0020】
スナバ回路にP型MOSトランジスタを使った場合には、ソース端子が基準電圧ノードに接続できることから、基準電圧ノードからのゲート駆動が容易になる。この為、本実施形態では、スナバ回路1および1AにP型MOSトランジスタを採用している。
【0021】
(ゲート駆動回路の構成)
スナバ回路1のSQ1のゲートにはゲート駆動回路5が接続されている。ゲート駆動回路5の構成には、ゲート駆動信号発生器GS1とゲート駆動コンデンサGC1とゲート駆動ダイオードGD1とが含まれている。
【0022】
GS1は、基準電圧端子が基準電圧ノードに接続され、出力端子がGC1の正極に接続されている。GC1は、負極がGD1のアノードとSQ1のゲートとに接続されている。GD1は、カソードが基準電圧ノードに接続されている。図示はしていないが、SQ1のゲート駆動速度の調整の為に、GC1の負極とSQ1のゲートとの経路上に20Ωの抵抗を介在させている。この様に、必要箇所に部品の追加も可能である。
【0023】
GS1は、電源電圧12Vが供給されており、出力端子から基準電圧0V又は電源電圧12Vのどちらかが任意のタイミングで出力できる。GC1は、耐圧が50V、静電容量がDC12V時に68nFのセラミックコンデンサである。GD1は、耐圧が80V、定格電流が0.1A、導通開始時点(約0.1mA時)のVFが0.4V、導通時の抵抗が85mΩである。
【0024】
スナバ回路1AのSQ2のゲートにはゲート駆動回路5Aが接続されている。ゲート駆動回路5Aには、ゲート駆動信号発生器GS2とゲート駆動コンデンサGC2とゲート駆動ダイオードGD2が含まれている。ゲート駆動回路5Aの構成は、ゲート駆動回路5と同じである。
【0025】
(ゲート駆動回路5の動作と電流経路)
ゲート駆動回路5は、12Vと0Vの信号電圧を、0Vと-12Vの電圧へレベルシフトし、SQ1をONさせることを可能にする回路である。GS1の出力端子から12Vを出力した時には、GC1とGD1とGS1とを介する経路AR3を使ってGC1を約12Vまで充電する。この時、SQ1のゲートには、約0V(正確にはGD1のVF0.4V)の電圧が印加されるため、SQ1はOFFする。
【0026】
GS1の出力端子から0Vを出力した時には、GS1とGD1とGC1とを介する経路AR4を使ってGD1の寄生容量を充電し、GD1に逆方向電圧を印加する。逆方向電圧の大きさはGC1の電圧によって決められ、SQ1のゲートに-12Vが印加されて、SQ1がONする。経路AR3とAR4には、SQ1の入力容量を充放電する電流経路(GD1に並列)を省略している。
【0027】
(ゲート駆動回路の動作波形)
図3の下側グラフを使って、スナバ回路1を駆動する、GS1の出力とSQ1のゲート波形を説明する。
図3の時間軸1E-6secは、GS1信号電圧12Vを使ってSQ1のゲート電圧約0V(OFF)に制御している。2E-6sec付近において、GS1の出力を0Vに替えることで、SQ1のゲート電圧が-12Vに変化し、SQ1をONさせている。このように、GS1の出力電圧を、ゲート駆動回路5によって、負の方向へレベルシフト(-12V)させることで、SQ1のONとOFFの制御を行っている。従って、SQ1のONはGS1の基準電圧出力で実行され、SQ1のOFFはGS1の正電圧出力で実行される。
【0028】
(スナバ回路の動作と電流経路)
第1スイッチノードが略基準電圧からスイッチノードの高電圧へ切り替わる時に、サージ電圧が発生する。スナバ回路1は、このサージ電圧を吸収し、その電力を第1スイッチノードへ回生する。発生したサージ電圧は、SC1とSQ1とRC1とを介する経路AR1を使って、SC1を充電する。この時、SQ1は、ONまたはOFFを問わない。OFFの場合には、寄生ダイオードを介して、SC1を充電する為である。
【0029】
吸収されたサージ電力は、SQ1のONによって、第1スイッチノードへ回生させる。その経路は、RC1とSQ1とSC1を介するAR2の経路である。第1スイッチノードへ回生された電力は、TR1を介して負荷側へ供給される。SQ1のON期間は、第1スイッチノードの高電圧期間以内に実施する。それ以外の期間(第1スイッチノードの電圧が低い期間)に、SQ1をONさせた場合には、SC1が過放電しスナバ回路で損失が発生する。
【0030】
(スナバ回路の動作波形)
図3の上側グラフを使って、第1スイッチノードのサージ電圧抑制効果を説明する。第1スイッチノード電圧について「スナバ回路無し」と「スナバ回路1有り」のデータを示している。第1スイッチノードのサージ電圧は、「スナバ回路無し」の場合には60Vを超えるが、「スナバ回路1有り」の場合には37V程度に抑制できることが分かる。
【0031】
本実施形態では、第1スイッチノードの高電圧期間より内側でSQ1をONしている。具体的には、第1スイッチノードの高電圧に達してから、50nsec後にSQ1をONさせている。この50nsec期間は、SQ1の寄生ダイオードを介してSC1を充電する。この為、サージ電圧発生のタイミングに対して、SQ1のONが遅れても問題にならない利点が有る。
【0032】
また、SQ1のOFFは、第1スイッチノードの電圧が、第1スイッチノードの高電圧を下回る50nsec前に行っている。これら2つの50nsecは、タイミングズレに対して余裕を持たせた期間である。SQ1のONは、スイッチノードが高電圧の期間内に実施することで、SC1の過放電を防止出来て、SQ1の損失を低減できる。
【0033】
(スナバ回路1の改良点1~2)
実施形態1には、複数の好ましい改良点が適用されている。以下、これらの好ましい改良点について説明する。
【0034】
(改良点1:スナバコンデンサの静電容量は整流素子の出力容量の2倍以上)
基準電圧ノードから第1スイッチノードに向けてRC1が順方向接続されている。SC1の静電容量は、RC1の出力容量よりも2倍以上大きい方が、スナバ回路1によるサージ電圧抑制を効果的に実施できる。更には10倍以上が好ましく、100倍以上がより好ましい。1000倍以上になると、サージ電圧抑制効果が飽和し、且つ、コンデンサの大きさが課題になる。本実施形態では、SC1の静電容量は3.8μFであり、RC1の静電容量が24nFである。本実施形態では、より好ましいサージ電力抑制効果が得られる。
【0035】
(改良点2:P型MOSトランジスタの出力容量は、整流素子の出力容量の1/2以下である)
整流回路10に接続されたSQ1の出力容量は、RC1の出力容量に対する並列容量として機能する。RC1の出力容量は、第1スイッチノードの電圧が0Vに移行する時に、放電電流を流す。この放電電流は無効電流として整流回路10を流れる為、RC1の出力容量は小さくしなければならない。したがって、スナバ回路5を接続することによる放電電流の増加を抑制しなければならない。この為、SQ1の出力容量は、RC1の出力容量の1/2以下が好ましい。更には、1/10以下が好ましく、1/100以下がより好ましい。1/1000以下まで低減させた場合、効果が飽和し、且つ、SQ1のオン抵抗が課題になる。
【0036】
〔実施形態2〕
スナバ回路1は、基準電圧ノードと第1スイッチノードとを備える整流回路であれば、適用可能である。本実施形態では、
図4に示す半波整流回路11に対するスナバ回路1の応用例を示す。半波整流回路11はトランスTR2に接続されている。トランスTR2は1次巻線PW2および2次巻線SW2を備える。半波整流回路11は、整流素子としてRC3とRC4を備える。半波整流回路11は、更に、平滑コイルCO2と平滑コンデンサCA2を備える。スナバ回路1は、スナバコンデンサSC3と、P型MOSトランジスタSQ3とを備える。半波整流回路11には、ゲート駆動信号発生器GS3とゲート駆動コンデンサGC3とゲート駆動ダイオードGD3で構成されるゲート駆動回路5も備わっている。
【0037】
第1スイッチノードは、SW2とRC3との接続点である。基準電圧ノードの電圧は0V、出力電圧ノードの電圧は、12.5V、第1スイッチノードの最大電圧は50Vである。この様な回路にも、スナバ回路1は適用できる。
【0038】
この他の応用例としては、カレントダブラー整流回路またはフルブリッジ整流回路があげられる。これらの回路は、実施形態1と同様に、基準電圧ノード、第1および第2スイッチノードを備える整流回路であることから、スナバ回路1の適用が可能である。
【0039】
〔実施形態3〕
図5は、スナバ回路1を備えた電源装置200を示す図である。電源装置200は、絶縁DCDCコンバータ100を備える。絶縁DCDCコンバータ100は、一次側回路であるスイッチング回路20、2次側回路である整流回路10、スナバ回路1、及び、制御回路30を備える。ゲート駆動回路5は、制御回路30に組み込まれている。スイッチング回路20と整流回路10は、トランスを介して接続されている。スナバ回路1は、整流回路10に直接接続されている。制御回路30は、絶縁DCDCコンバータ100に設けられる各素子のON/OFFが制御できるように接続されている。
【0040】
電源装置200は、スナバ回路1を備えることで、損失を削減することが出来る。
【0041】
〔まとめ〕
本開示の態様1に係るスナバ回路は、基準電圧ノードとスイッチノードとを備える整流回路に接続されたスナバ回路であって、上記スナバ回路はスナバコンデンサとP型MOSトランジスタとを備えており、上記スナバコンデンサは、正極が上記スイッチノードに接続されており、上記P型MOSトランジスタは、ドレインが上記スナバコンデンサの負極に接続されており、ソースが基準電圧ノードに接続されている。
【0042】
上記の構成によれば、スイッチノードで発生するサージ電力は、P型MOSトランジスタを介して、スナバコンデンサを充電する。スナバコンデンサを充電したサージ電力は、P型MOSトランジスタをONさせることで、スイッチノードへ回生できる。このため、スナバ回路の損失が低減できる。
【0043】
本開示の態様2に係るスナバ回路では、上記P型MOSトランジスタのゲートにはゲート駆動回路が接続されており、上記ゲート駆動回路は、ゲート駆動信号発生器とゲート駆動コンデンサとゲート駆動ダイオードとを備えており、上記ゲート駆動信号発生器は、基準電圧端子が上記基準電圧ノードに接続されており、出力端子が上記ゲート駆動コンデンサの正極に接続されており、上記ゲート駆動コンデンサは、負極が上記ゲート駆動ダイオードのアノードと上記P型MOSトランジスタのゲートとに接続されており、上記ゲート駆動ダイオードは、カソードが上記基準電圧ノードに接続されている。
【0044】
上記の構成によれば、正電圧と基準電圧とを出力するゲート駆動信号発生器をつかって、P型MOSトランジスタをON/OFF制御することが出来る。正電圧の出力では、ゲート駆動ダイオードの導通により、ゲート駆動コンデンサに電圧が蓄積されると共に、約0VがP型MOSトランジスタのゲートに印加され、P型MOSトランジスタがOFFする。基準電圧の出力では、ゲート駆動コンデンサに蓄積された電圧がゲート駆動ダイオードに逆方向電圧を印加し、生成された負電圧がP型MOSトランジスタのゲートに印加され、P型MOSトランジスタがONする。
【0045】
本開示の態様3に係るスナバ回路では、上記P型MOSトランジスタのONは上記ゲート駆動信号発生器の基準電圧出力で実行され、上記P型MOSトランジスタのOFFは上記ゲート駆動信号発生器の正電圧出力で実行され、上記スイッチノードの電圧は略基準電圧と高電圧とを繰り返し、上記P型MOSトランジスタのONは上記スイッチノードが高電圧の期間内に実行される。
【0046】
上記の構成によれば、スナバコンデンサの過剰な放電の抑制により、スナバ回路の損失が低減できる。
【0047】
本開示の態様4に係るスナバ回路では、上記基準電圧ノードから上記スイッチノードに向けて整流素子が順方向接続されていて、上記スナバコンデンサの静電容量は上記整流素子の出力容量の2倍以上である。
【0048】
上記の構成によれば、スナバコンデンサがサージ電圧を効果的に抑制できる。
【0049】
本開示の態様5に係るスナバ回路では、上記P型MOSトランジスタの出力容量は、上記整流素子の出力容量の1/2以下である。
【0050】
上記の構成によれば、スナバ回路1の放電電流の削減が可能になる。スイッチノードの電圧が低下する時に、整流素子とP型MOSトランジスタとの両出力容量が、還流電流を発生させる。P型MOSトランジスタの出力容量を整流素子の出力容量よりも低く抑えることで、スナバ回路追加による放電電流の増加を抑制できる。
【0051】
本開示の態様6に係る電源装置は、本開示の一態様に係るスナバ回路を備えている。
【0052】
上記の構成によれば、損失が低減されたスナバ回路を用いることにより、損失が低減された電源装置を実現できる。
【0053】
〔付記事項〕
本開示の一態様は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本開示の一態様の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成できる。
【符号の説明】
【0054】
1,1A スナバ回路
5,5A ゲート駆動回路
10 整流回路
100 絶縁DCDCコンバータ
200 電源装置
RC1 整流素子
SC1 スナバコンデンサ
SQ1 P型MOSトランジスタ
GS1 ゲート駆動信号発生器
GC1 ゲート駆動コンデンサ
GD1 ゲート駆動ダイオード