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特許7286609水硬性組成物用粉末分散剤組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】水硬性組成物用粉末分散剤組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 24/26 20060101AFI20230529BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20230529BHJP
   C08F 220/06 20060101ALI20230529BHJP
   C08F 220/28 20060101ALI20230529BHJP
   C08F 216/16 20060101ALI20230529BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
C04B24/26 E
C04B24/26 B
C04B24/26 F
C04B28/02
C08F220/06
C08F220/28
C08F216/16
C08F290/06
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020213413
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022007923
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2019234431
(32)【優先日】2019-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020200705
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】島田 恒平
(72)【発明者】
【氏名】佐川 桂一郎
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/059723(WO,A1)
【文献】特開2001-213671(JP,A)
【文献】特開2000-169206(JP,A)
【文献】特開2001-002788(JP,A)
【文献】特開2004-211059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B2/00-32/02, C04B40/00-40/06, C04B103/00-111/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構成単位(1)及び下記式(2)で表される構成単位(2)を有する共重合体並びに水を含有する混合物を用意し、前記共重合体の構成単位(2)の平均付加モル数であるnに応じて該混合物のpHを設定し、該混合物を乾燥させて前記共重合体を含有する粉末を製造することを含む、水硬性組成物用粉末分散剤組成物の製造方法であって、
前記共重合体の全構成単位中、メタリルスルホン酸又はその塩の割合が1モル%以下であり、
前記共重合体の全構成単位中、ポリアマイドポリアミンの割合が1%モル以下であり、
前記混合物中の前記共重合体が前記構成単位(2)の平均付加モル数であるnが5以上40未満の共重合体である場合、当該混合物のpHを11以上14以下として乾燥に供し、薄膜乾燥法又は噴霧乾燥法により乾燥させ、
前記混合物中の前記共重合体が前記構成単位(2)の平均付加モル数であるnが40以上80未満の共重合体である場合、前記混合物のpHを9以上14以下として乾燥に供し、薄膜乾燥法又は噴霧乾燥法により乾燥させ、
前記混合物中の前記共重合体が前記構成単位(2)の平均付加モル数であるnが80以上150以下の共重合体である場合、前記混合物のpHを7以上14以下として乾燥に供し、薄膜乾燥法又は噴霧乾燥法により乾燥させる、
水硬性組成物用粉末分散剤組成物の製造方法。
【化1】

(式中、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子又はメチル基を示し、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基を示し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを示し、pは0以上2以下の数を示し、qは0又は1の数を示し、nは平均付加モル数を示し、5以上150以下の数を示す。)
【請求項2】
下記式(1)で表される構成単位(1)及び下記式(2)で表される構成単位(2)を有する共重合体並びに水を含有する混合物を用意し、前記共重合体の構成単位(2)の平均付加モル数であるnに応じて該混合物のpHを設定し、該混合物を乾燥させて前記共重合体を含有する粉末を製造することを含む、水硬性組成物用粉末分散剤組成物の製造方法であって、
前記共重合体の全構成単位中、メタリルスルホン酸又はその塩の割合が1モル%以下であり、
前記共重合体の全構成単位中、ポリアマイドポリアミンの割合が1%モル以下であり、
前記混合物中の前記共重合体が前記構成単位(2)の平均付加モル数であるnが5以上40未満の共重合体である場合、前記混合物のpHを11以上14以下として乾燥に供し
前記混合物中の前記共重合体が前記構成単位(2)の平均付加モル数であるnが40以上80未満の共重合体である場合、前記混合物のpHを9以上14以下として乾燥に供し
前記混合物中の前記共重合体が前記構成単位(2)の平均付加モル数であるnが80以上100未満の共重合体である場合、前記混合物のpHを8以上14以下として乾燥に供し
前記混合物中の前記共重合体が前記構成単位(2)の平均付加モル数であるnが100以上150以下の共重合体である場合、前記混合物のpHを7以上14以下として乾燥に供す
水硬性組成物用粉末分散剤組成物の製造方法。
【化2】

(式中、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子又はメチル基を示し、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基を示し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを示し、pは0以上2以下の数を示し、qは0又は1の数を示し、nは平均付加モル数を示し、5以上150以下の数を示す。)
【請求項3】
前記混合物の乾燥を、加熱乾燥により行う、請求項2に記載の水硬性組成物用粉末分散剤組成物の製造方法。
【請求項4】
前記混合物の乾燥を、薄膜乾燥法又は噴霧乾燥法により行う、請求項2又は3に記載の水硬性組成物用粉末分散剤組成物の製造方法。
【請求項5】
前記混合物中の前記共重合体が前記構成単位(2)の平均付加モル数であるnが80以上100未満の共重合体である場合、前記混合物のpHを9超14以下として乾燥に供す、請求項2~4の何れか1項に記載の水硬性組成物用粉末分散剤組成物の製造方法。
【請求項6】
前記共重合体の全構成単位中、構成単位(1)及び構成単位(2)の合計の割合が、80モル%以上である、請求項1~5の何れか1項記載の水硬性組成物用粉末分散剤組成物の製造方法。
【請求項7】
前記共重合体における構成単位(1)と構成単位(2)のモル比が、構成単位(1)/構成単位(2)で、1以上10以下である、請求項1~6の何れか1項記載の水硬性組成物用粉末分散剤組成物の製造方法。
【請求項8】
前記共重合体の混合物のpHを、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物により調整する、請求項1~7の何れか1項記載の水硬性組成物用粉末分散剤組成物の製造方法。
【請求項9】
前記共重合体の重量平均分子量が20,000以上70,000以下である、請求項1~8の何れか1項記載の水硬性組成物用粉末分散剤組成物の製造方法。
【請求項10】
前記式(2)中のqが1である、請求項1~9の何れか1項記載の水硬性組成物用粉末分散剤組成物の製造方法。
【請求項11】
メジアン径(D50)が1μm以上90μm以下であり、粒径1μm以上250μm以下の粒子の割合が90質量%以上100質量%以下の水硬性組成物用粉末分散剤組成物を製造する、請求項1~10の何れか1項記載の水硬性組成物用粉末分散剤組成物の製造方法。
【請求項12】
請求項1~11の何れか1項に記載の製造方法により水硬性組成物用粉末分散剤組成物を製造すること、製造された水硬性組成物用粉末分散剤組成物と水硬性粉体とを混合すること、を行う、粉末状水硬性組成物の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性組成物用粉末分散剤組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本国内では高度経済成長期に建造された主要インフラの老朽化が顕在化しており、インフラ大更新・改修時代の到来を迎えようとしている。中でも需要の伸長が予想されている分野は補修・補強分野であり、当該分野では水硬性組成物と粉末状の分散剤(以降、粉末分散剤とする)がプレミックスされた補修材の使用が主流である。
【0003】
補修材にプレミックスされる粉末分散剤としては、ナフタレンスルホン酸系分散剤とポリカルボン酸系分散剤、メラミンスルホン酸系分散剤等があるが、ポリカルボン酸系分散剤は高分散性で配合添加量が削減できる点、メチルセルロースに代表される高分子系増粘剤との相性が良好であるといった点が評価されている。
【0004】
粉末分散剤の粉末化方法には、ドラムドライ法、ディスクドライ法、ベルトドライ法に代表される薄膜乾燥法、噴霧乾燥法、ニーダー法、無機粉体担持法等がある。粉末化工程で特に重要となるのが、分散剤の融点及びガラス化温度であり、同一重合比率の吸着基及びエチレンオキシ基(以下、EOとも表記する)グラフト鎖から成るポリカルボン酸系分散剤で比較すると、立体反発基であるEOグラフト鎖の平均EO付加モル数が大きいポリカルボン酸系粉末分散剤ほど凝固点が高いため、薄膜成形性や冷却時の粉砕性に優れ、比較的粉末化が容易である。
【0005】
特許文献1には、所定の構成単位を有するアクリレート系若しくはメタアクリレート系高分子化合物を主成分とし、水又は溶媒を含む混合物に、還元剤を添加し、次いで乾燥する粉末状セメント分散剤の製造方法が開示されている。特許文献2には、ポリアルキレングリコール鎖を有する高分子化合物及び還元性化合物を含有する不定形耐火物用粉末分散剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-169206号公報
【文献】特開2001-213671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一般的なポリカルボン酸系分散剤の粉末化工程においては、EOグラフト鎖の平均EO付加モル数が小さくなるにつれて、水分を蒸発させ粉末を得る乾燥法によって、商業的に許容可能な収率(例えば、乾燥前の分散剤固形分質量に対して、乾燥時質量として90%以上)で粉末分散剤を得ることが困難となる場合があった。
【0008】
本発明は、粉末状態のポリカルボン酸系分散剤を高い収率で製造できる、水硬性組成物用粉末分散剤組成物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記式(1)で表される構成単位(1)及び下記式(2)で表される構成単位(2)を有する共重合体並びに水を含有する混合物を乾燥させて前記共重合体を含有する粉末を製造することを含む、水硬性組成物用粉末分散剤組成物の製造方法であって、
前記共重合体が前記構成単位(2)のnが40未満の共重合体である場合、前記混合物のpHを11以上14以下として薄膜乾燥法又は噴霧乾燥法により乾燥させ、
前記共重合体が前記構成単位(2)のnが40以上80未満の共重合体である場合、前記混合物のpHを9以上14以下として薄膜乾燥法又は噴霧乾燥法により乾燥させ、
前記共重合体が前記構成単位(2)のnが80以上の共重合体である場合、前記混合物のpHを7以上14以下として薄膜乾燥法又は噴霧乾燥法により乾燥させる、
水硬性組成物用粉末分散剤組成物の製造方法に関する。
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子又はメチル基を示し、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基を示し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを示し、pは0以上2以下の数を示し、qは0又は1の数を示し、nは平均付加モル数を示し、5以上150以下の数を示す。)
【0012】
また、本発明は、前記式(1)で表される構成単位(1)及び前記式(2)で表される構成単位(2)を有する共重合体並びに水を含有する混合物を乾燥させて前記共重合体を含有する粉末を製造することを含む、水硬性組成物用粉末分散剤組成物の製造方法であって、
前記共重合体が前記構成単位(2)のnが40未満の共重合体である場合、前記混合物のpHを11以上14以下として乾燥させ、
前記共重合体が前記構成単位(2)のnが40以上80未満の共重合体である場合、前記混合物のpHを9以上14以下として乾燥させ、
前記共重合体が前記構成単位(2)のnが80以上100未満の共重合体である場合、前記混合物のpHを8以上14以下として乾燥させ、
前記共重合体が前記構成単位(2)のnが100以上の共重合体である場合、前記混合物のpHを7以上14以下として乾燥させる、
水硬性組成物用粉末分散剤組成物の製造方法に関する。
【0013】
以下、本発明の水硬性組成物用粉末分散剤組成物の製造方法という場合、これら2つの製造方法を含む。以下に述べる事項は、それぞれの製造方法に適宜適用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、粉末状態のポリカルボン酸系分散剤を高い収率で製造できる、水硬性組成物用粉末分散剤組成物の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明によれば、粉末状態のポリカルボン酸系分散剤の乾燥法における製造時の課題を解消する、水硬性組成物用粉末分散剤組成物の製造方法が提供される。すなわち、ポリカルボン酸系分散剤を含む混合物、例えば水溶液のpHを、共重合体のEO付加モル数に応じて、所定の値に調整することで、粉末分散剤の収率を高めることができる、水硬性組成物用粉末分散剤組成物の製造方法が提供される。
【0016】
本発明の水硬性組成物用粉末分散剤組成物の製造方法で前記共重合体の粉末化が可能となり、収率が向上するメカニズムは必ずしも定かではないが、以下のように推察される。ポリカルボン酸系分散剤は重合単位としてカルボキシ基を有するモノマーを含有していることから、pHの向上に伴って、カルボキシ基の乖離度が高まると考えられる。このことは、当該重合単位がより強く負に帯電することを意味し、静電反発力によってポリマー鎖の広がりが大きくなることが期待される。結果として、ポリマー分子体積、ひいては乾燥面積が増大することで乾燥性が向上したと考えられる。本発明では、EOグラフト鎖の平均EO付加モル数に応じて適切なpHを設定したことで、前記の乾燥性がより向上しているものと推察される。
【0017】
<共重合体1>
共重合体1は、前記式(1)で表される構成単位(1)及び前記式(2)で表される構成単位(2)を有する共重合体である。
【0018】
前記式(1)で表される構成単位(1)について、反応性の観点と粉末化容易性の観点から、Rは、水素原子又はメチル基であり、メチル基を含むことが好ましい。Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アンモニウムであり、好ましくは、粉末化容易性の観点から、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。構成単位(1)は、2種以上であってもよい。構成単位(1)となる単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの塩から選ばれる単量体が挙げられる。
【0019】
前記式(2)で表される構成単位(2)について、反応性の観点と粉末化容易性の観点から、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、それぞれ、炭素数1のアルキル基、すなわちメチル基が好ましい。また、Rは、粉末化容易性の観点から、水素原子又はメチル基であり、水素原子が好ましい。構成単位(2)は、2種以上であってもよい。pは0以上2以下の数を示し、粉末化容易性の観点から、好ましくは0以上1以下であり、より好ましくは0である。粉末化容易性の観点から、qは0又は1の数を示し、好ましくは1である。nは、平均付加モル数であり、粉末化容易性の観点から、5以上150以下の数を示す。nは、好ましくは20以上、より好ましくは40以上、更に好ましくは60以上である。そして、nは、好ましくは140以下、より好ましくは130以下、更に好ましくは120以下である。構成単位(2)となる単量体としては、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリオキシエチレンメタリルエーテル、ポリオキシエチレンイソプレニルエーテル及びポリオキシエチレンビニルエーテルから選ばれる単量体が挙げられる。
【0020】
前記共重合体1における構成単位(1)と構成単位(2)のモル比は、粉末化容易性の観点から、構成単位(1)/構成単位(2)で、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上、より更に好ましくは5以上、より更に好ましくは8以上、そして、好ましくは10以下、より好ましくは9以下、更に好ましくは7以下、より更に好ましくは5以下、より更に好ましくは4以下、より更に好ましくは3以下である。
【0021】
前記共重合体1の重量平均分子量は、粉末化容易性の観点から、好ましくは20,000以上、より好ましくは25,000以上、更に好ましくは30,000以上、より更に好ましくは40,000以上、そして、好ましくは70,000以下、より好ましくは60,000以下、更に好ましくは50,000以下、より更に好ましくは45,000以下である。この重量平均分子量は、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定されたものである。
*GPC条件
装置:GPC(HLC-8320GPC)東ソー株式会社製
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー株式会社製)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CHCN=9/1
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:RI
サンプルサイズ:0.2mg/mL
標準物質:ポリエチレングリコール換算(単分散のポリエチレングリコール:分子量87,500、250,000、145,000、46,000、24,000)
【0022】
前記共重合体1は、構成単位(1)及び構成単位(2)以外の構成単位〔以下、構成単位(3)という〕を有していてもよい。構成単位(3)となる任意の単量体としては、エチレングリコールメタクリラートホスファート、アクリル酸メチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチルが挙げられる。
【0023】
前記共重合体1の全構成単位中、構成単位(1)及び構成単位(2)の合計の割合は、粉末化容易性の観点から、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上、そして、好ましくは100モル%以下であり、100モル%であってもよい。
【0024】
前記共重合体1の全構成単位中、構成単位(1)及び構成単位(2)の合計の割合は、粉末化容易性の観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下であり、100質量%であってもよい。
【0025】
前記共重合体1の全構成単位中、メタリルスルホン酸又はその塩の割合は、粉末化容易性の観点から、好ましくは1モル%以下、より好ましくは、0.5モル%以下、更に好ましくは0.1モル%以下、より更に好ましくは0.05モル%以下、より更に好ましくは0.01モル%以下、より更に好ましくは実質的に含まない、すなわちより更に好ましくは実質的に0モル%、より更に好ましくは0モル%である。
また、前記共重合体1の全構成単位中、ポリアマイドポリアミンの割合は、粉末化容易性の観点から、好ましくは、1%モル以下、より好ましくは、0.5モル%以下、更に好ましくは0.1モル%以下、より更に好ましくは0.05モル%以下、より更に好ましくは0.01モル%以下、より更に好ましくは実質的に含まない、すなわちより更に好ましくは実質的に0モル%、より更に好ましくは0モル%である。
【0026】
本発明では、共重合体1及び水を含有する混合物(以下、乾燥用混合物ともいう)を所定条件で乾燥させて共重合体1を含有する粉末を製造する。乾燥用混合物は、水溶液が好ましい。
本発明では、
共重合体1が前記構成単位(2)のnが40未満の共重合体である場合、乾燥用混合物のpHを11以上14以下として薄膜乾燥法又は噴霧乾燥法により乾燥させ、
共重合体1が前記構成単位(2)のnが40以上80未満の共重合体である場合、乾燥用混合物のpHを9以上14以下として薄膜乾燥法又は噴霧乾燥法により乾燥させ、
共重合体1が前記構成単位(2)のnが80以上の共重合体である場合、乾燥用混合物のpHを7以上14以下として薄膜乾燥法又は噴霧乾燥法により乾燥させる。
【0027】
他の側面によれば、本発明では、共重合体1が前記構成単位(2)のnが40未満の共重合体である場合、乾燥用混合物のpHを11以上14以下として乾燥させ、
共重合体1が前記構成単位(2)のnが40以上80未満の共重合体である場合、乾燥用混合物のpHを9以上14以下として乾燥させ、
共重合体1が前記構成単位(2)のnが80以上100未満の共重合体である場合、乾燥用混合物のpHを8以上14以下として乾燥させ、
共重合体1が前記構成単位(2)のnが100以上の共重合体である場合、乾燥用混合物のpHを7以上14以下として乾燥させる。
【0028】
本発明では、共重合体1のアルキレンオキシドの平均付加モル数nに応じて、pHが前記所定範囲にある乾燥用混合物を乾燥に供する。このpHは、乾燥用混合物の乾燥を開始する時点のpHであってよい。すなわち、本発明では、pHが前記所定範囲にある乾燥用混合物を用いて乾燥を開始することができる。
【0029】
本発明の水硬性組成物用粉末分散剤組成物の製造方法では、共重合体1が、前記構成単位(2)のnが40未満の共重合体である場合、乾燥用混合物のpHは、粉末化容易性の観点から、好ましくは12以上13以下である。
【0030】
本発明の水硬性組成物用粉末分散剤組成物の製造方法では、共重合体1が、前記構成単位(2)のnが40以上80未満の共重合体である場合、乾燥用混合物のpHは、粉末化容易性の観点から、好ましくは10以上13以下である。
【0031】
本発明の水硬性組成物用粉末分散剤組成物の製造方法では、共重合体1が、前記構成単位(2)のnが80以上の共重合体である場合、乾燥用混合物のpHは、粉末化容易性の観点から、好ましくは8以上13以下である。
本発明の水硬性組成物用粉末分散剤組成物の製造方法では、共重合体1が、前記構成単位(2)のnが80以上100未満の共重合体である場合、乾燥用混合物のpHは、粉末化容易性の観点から、好ましくは9超14以下、より好ましくは9超13以下である。
本発明の水硬性組成物用粉末分散剤組成物の製造方法では、共重合体1が、前記構成単位(2)のnが100以上の共重合体である場合、乾燥用混合物のpHは、粉末化容易性の観点から、8以上14以下、好ましくは9超14以下、より好ましくは9超13以下である。
【0032】
本発明では、一液安定性及び安全性の観点と粉末化容易性の観点から、乾燥用混合物、例えば共重合体1の水溶液のpHを、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物により調整することが好ましい。該水酸化物は、好ましくは水酸化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、及び水酸化ナトリウムから選ばれる1種以上であり、より好ましくは水酸化カリウム、及び水酸化ナトリウムから選ばれる1種以上である。
【0033】
また、乾燥に供する乾燥用混合物の粘度は、共重合体1の粉末の生産性、送液性の観点と粉末化容易性の観点から、好ましくは250mPa・s以上、より好ましくは300mPa・s以上、更に好ましくは350mPa・s以上、そして、好ましくは5,000mPa・s以下、より好ましくは3,000mPa・s以下、更に好ましくは1,000mPa・s以下である。
【0034】
乾燥用混合物中の前記共重合体1の含有量は、共重合体1の粉末化の観点から、固形分換算で、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
乾燥用混合物が共重合体1の水溶液である場合、当該水溶液中の前記共重合体1の含有量は、共重合体1の粉末化の観点から、固形分換算で、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
【0035】
乾燥用混合物は、更に、アンチケーキング剤、例えば、無機粉体及び/又は有機粉体を含有することができる。この場合、懸濁状態になっていてもよいが、本発明では便宜上そのような態様も水溶液と称してよい。
【0036】
乾燥用混合物の乾燥は、加熱乾燥、真空乾燥によって行うことができ、乾燥物の生産性の観点から、加熱乾燥によって行うことが好ましい。
【0037】
乾燥用混合物の乾燥は、薄膜乾燥法、噴霧乾燥法などの方法により行うことができる。本発明では、生産性の観点から、乾燥用混合物、更に共重合体1の水溶液の乾燥を、薄膜乾燥法又は噴霧乾燥法により行うことが好ましい。
【0038】
薄膜乾燥法としては、ドラムドライ法、ディスクドライ法が挙げられる。
ドラムドライ法は、具体的には、例えば以下のプロセスから成る。乾燥ドラムに共重合体1の水溶液などの乾燥用混合物を回転させながら均一塗布し、水分を蒸発させ薄膜シート成形体を得る。続いて、成形されたシートをスクレーパーで剥がし取り、そのシートを室温以下に冷却されたドラムに巻き取り、一定時間ドラム上で冷却することにより得られたシート成形体をより粉砕が容易なガラス質へと変化させる。得られたガラス質のシートをスクレーパーで冷却ドラムから剥がし、フェザーミル等の粉砕機へと導入・粉砕し、粉末品を得る。
また、ディスクドライ法は、具体的には、以下のプロセスから成る。ディスクに共重合体1の水溶液などの乾燥用混合物を回転させながら均一塗布し、水分を蒸発させ薄膜シート成形体を得る。続いて、成形されたシートをスクレーパーで剥がし取り、剥がし取った乾燥物を冷却することで、より粉砕が容易なガラス質へと変化させる。得られたガラス質の乾燥物をフェザーミル等の粉砕機へと導入・粉砕し、粉末品を得る。
【0039】
また、乾燥用混合物の乾燥は、噴霧乾燥法により行うことができる。具体的には、噴霧乾燥法は以下のプロセスから成る。共重合体1の水溶液などの乾燥用混合物を回転円盤ノズルや二流体ノズル、超音波ノズルといった噴霧器から乾燥室内に噴霧し、蒸発によって水分と分散剤有効分とを分離する。噴霧された共重合体1の水溶液などの乾燥用混合物は乾燥室下部にかけて水分の蒸発により共重合体1が粉末状の固体となり、送風によって回収部まで送られた後サイクロン等の粉体分離器で回収される。
【0040】
乾燥用混合物を乾燥する温度は、乾燥用混合物の乾燥性および共重合体1の粉末の熱安定性の観点と粉末化容易性の観点から、常圧下においては、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、そして、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。一方、減圧下においては、乾燥温度は限定されず、例えば、下限の温度は前記よりも低くてもよい。この温度は、乾燥用混合物に適用する熱媒体の温度であってよい。
【0041】
乾燥用混合物、好ましくは共重合体1の水溶液の乾燥により、共重合体1を含有する粉末が得られる。得られた乾燥粉末中、共重合体1の有効固形分としての含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下である。
【0042】
共重合体1を含有する粉末について、「粉末」とは、粒状、フレーク状、ペレット状、顆粒状などを含む固体粒子の意味であってよい。粉末の形状は、定形、不定形、いずれでもよい。
【0043】
本発明では、粉末化容易性の観点から、構成単位(1)となる単量体がメタクリル酸であり、構成単位(2)となる単量体がメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートであり、nが5以上40未満であり、構成単位(1)/構成単位(2)のモル比が2以上4以下であり、共重合体1の重量平均分子量が40000以上60000以下であり、共重合体1の全構成単位中、構成単位(1)及び構成単位(2)の合計の割合が100モル%であり、乾燥用混合物を噴霧乾燥法により乾燥することが好ましい。
【0044】
本発明では、粉末化容易性の観点から、構成単位(1)となる単量体がメタクリル酸及びアクリル酸から選ばれる単量体であり、構成単位(2)となる単量体がメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートであり、nが40以上80未満であり、構成単位(1)/構成単位(2)のモル比が1以上3以下であり、共重合体1の重量平均分子量が30000以上50000以下であり、共重合体1の全構成単位中、構成単位(1)及び構成単位(2)の合計の割合が100モル%であり、乾燥用混合物を噴霧乾燥法により乾燥することが好ましい。
【0045】
本発明では、粉末化容易性の観点から、構成単位(1)となる単量体がアクリル酸であり、構成単位(2)となる単量体がポリオキシエチレンメタリルエーテルであり、nが40以上80未満であり、構成単位(1)/構成単位(2)のモル比が3以上5以下であり、共重合体1の重量平均分子量が25000以上45000以下であり、共重合体1の全構成単位中、構成単位(1)及び構成単位(2)の合計の割合が100モル%であり、乾燥用混合物を噴霧乾燥法により乾燥することが好ましい。
【0046】
本発明では、粉末化容易性の観点から、構成単位(1)となる単量体がメタクリル酸及びアクリル酸から選ばれる単量体であり、構成単位(2)となる単量体がメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートであり、nが100以上150以下であり、構成単位(1)/構成単位(2)のモル比が8以上10以下であり、共重合体1の重量平均分子量が25000以上45000以下であり、共重合体1の全構成単位中、構成単位(1)及び構成単位(2)の合計の割合が100モル%であり、乾燥用混合物を噴霧乾燥法により乾燥することが好ましい。
【0047】
本発明により製造された共重合体1を含有する粉末は、粉末化容易性の観点から、平均粒径が、好ましくは1μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは20μm以上、そして、好ましくは90μm以下、より好ましくは80μm以下、更に好ましくは70μm以下である。
【0048】
本発明により製造された共重合体1を含有する粉末は、メジアン径(D50)が1μm以上、更に25μm以上、更に50μm以上、そして、90μm以下、更に80μm以下、更に70μm以下であってよい。メジアン径(D50)は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-300(株式会社堀場製作所製)を用い、エタノール(エタノール(95)、富士フイルム和光純薬株式会社製)を分散媒として超音波非照射下で測定されたものである。
また、本発明により製造された共重合体1を含有する粉末は、粒径1μm以上250μm以下の粒子の割合が90質量%以上、更に95質量%以上、そして、100質量%以下であってよい。この割合は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-300(株式会社堀場製作所製)を用い、エタノール(エタノール(95)、富士フイルム和光純薬株式会社製)を分散媒として超音波非照射下で測定した粒径の結果に基づいて算出されたものである。
また、本発明により製造された共重合体1を含有する粉末は、メジアン径(D50)が1μm以上、更に25μm以上、更に50μm以上、そして、90μm以下、更に80μm以下、更に70μm以下であり、粒径1μm以上250μm以下の粒子の割合が90質量%以上、更に95質量%以上、そして、100質量%以下であってよい。これらのメジアン径及び割合も前記同様の方法で測定、算出されたものである。
【0049】
本発明により製造された水硬性組成物用粉末分散剤組成物は、粉末化容易性の観点から、共重合体1を、有効分換算で、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下、より好ましくは95質量%以下含有する。本発明により製造された水硬性組成物用粉末分散剤組成物は、共重合体1からなるものであってもよい。
【0050】
本発明により製造された水硬性組成物用粉末分散剤組成物は、共重合体1以外の成分を含有することができる。例えば、粉末化助剤を含有することができる。粉末化助剤としては、無機粉体が挙げられる。無機粉体としては、ケイ素酸化物、ケイ素酸化物の塩、炭酸塩などが挙げられる。また、ポリエチレングリコールなどの有機粉体を用いることもできる。粉末化助剤を含有する場合、その含有量は、共重合体1に対して、粉末化容易性の観点から、有効分換算で、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。本発明により製造された水硬性組成物用粉末分散剤組成物は、共重合体1及び粉末化助剤からなるものであってもよい。
【0051】
本発明により製造された水硬性組成物用粉末分散剤組成物が含有できる他の成分として、例えば、粉末消泡剤、粉末収縮低減剤、粉末増粘剤などが挙げられる。粉末消泡剤及び粉末収縮低減剤の例としては、ポリオキシアルキレングリコールアルキルエーテルが挙げられる。粉末増粘剤の例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体が挙げられる。粉末消泡剤、粉末収縮低減剤及び粉末増粘剤から選ばれる成分を含有する場合、その含有量は、共重合体1に対して、有効分換算で、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。本発明により製造された水硬性組成物用粉末分散剤組成物は、共重合体1と、粉末消泡剤、粉末収縮低減剤及び粉末増粘剤から選ばれる成分とからなるものであってもよい。
【0052】
本発明では、前記の任意の成分は、乾燥用混合物に配合して粉末化して分散剤組成物中に配合してもよいし、共重合体1の粉末に添加して分散剤組成物に配合してもよい。
【0053】
本発明により製造された水硬性組成物用粉末分散剤組成物は粉末である。ここで、粉末は、粒状、フレーク状、ペレット状、顆粒状などを含む固体粒子の意味である。粉末の形状は、定形、不定形、いずれでもよい。
【0054】
本発明により製造された水硬性組成物用粉末分散剤組成物は、平均粒径が、好ましくは1μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは20μm以上、そして、好ましくは90μm以下、より好ましくは80μm以下、更に好ましくは70μm以下である。
【0055】
本発明により製造された水硬性組成物用粉末分散剤組成物は、メジアン径(D50)が1μm以上、更に25μm以上、更に50μm以上、そして、90μm以下、更に80μm以下、更に70μm以下であってよい。
また、本発明により製造された水硬性組成物用粉末分散剤組成物は、粒径1μm以上250μm以下の粒子の割合が90質量%以上、更に95質量%以上、そして、100質量%以下であってよい。
また、本発明により製造された水硬性組成物用粉末分散剤組成物は、メジアン径(D50)が1μm以上、更に25μm以上、更に50μm以上、そして、90μm以下、更に80μm以下、更に70μm以下であり、粒径1μm以上250μm以下の粒子の割合が90質量%以上、更に95質量%以上、そして、100質量%以下であってよい。
【0056】
本発明により、本発明の方法で製造された水硬性組成物用粉末分散剤組成物であって、メジアン径(D50)が1μm以上90μm以下であり、粒径1μm以上250μm以下の粒子の割合が90質量%以上100質量%以下である、水硬性組成物用粉末分散剤組成物が提供される。本発明の水硬性組成物用粉末分散剤組成物には、本発明の製造方法で述べた事項を適宜適用することができる。メジアン径や粒径1μm以上250μm以下の粒子の割合の好ましい範囲も、同じである。
【0057】
本発明により、水硬性粉体と、本発明の水硬性組成物用粉末状分散剤組成物とを配合してなる粉末状水硬性組成物が提供される。本発明の粉末状水硬性組成物には、本発明の製造方法及び水硬性組成物用粉末分散剤組成物で述べた事項を適宜適用することができる。
【0058】
本発明の粉末状水硬性組成物は、いわゆる水硬性組成物用プレミックスであってよい。本発明の粉末状水硬性組成物は、コンクリート、モルタルなどの水硬性組成物を製造するための混合物であって、予め本発明の水硬性組成物用粉末分散剤組成物と水硬性粉体とを混合して得られる。通常、本発明の粉末状水硬性組成物は、水と混合して用いられる。本発明の粉末状水硬性組成物は、例えば、モルタルプレミックスであってよい。
【0059】
水硬性粉体とは水和反応により硬化する物性を有する粉体のことであり、セメント、石膏等が挙げられる。水硬性粉体は、好ましくは普通ポルトランドセメント、ビーライトセメント、中庸熱セメント、早強セメント、超早強セメント、耐硫酸塩セメント等のセメントであり、またこれらに高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフュームなどのポソラン作用及び/又は潜在水硬性を有する粉体や、石粉(炭酸カルシウム粉末)等が添加された高炉スラグセメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等でもよい。ここで、水硬性粉体が、セメントなどの水和反応により硬化する物性を有する粉体の他、ポゾラン作用を有する粉体、潜在水硬性を有する粉体、及び石粉(炭酸カルシウム粉末)から選ばれる粉体を含む場合、本発明では、それらの量も水硬性粉体の量に算入する。また、水和反応により硬化する物性を有する粉体が、高強度混和材を含有する場合、高強度混和材の量も水硬性粉体の量に算入する。これは、水硬性粉体の質量が関係する質量%や質量比などにおいても同様である。
【0060】
本発明の粉末状水硬性組成物は、水硬性粉体100質量部に対して、本発明の水硬性組成物用粉末分散剤組成物の配合量が、0.01質量部以上、更に0.1質量部以上、更に0.2質量部以上、そして、5質量部以下、更に3質量部以下、更に1質量部以下であってよい。
【0061】
本発明により、本発明の製造方法により水硬性組成物用粉末分散剤組成物を製造すること、製造された水硬性組成物用粉末分散剤組成物と水硬性粉体とを混合すること、を行う、粉末状水硬性組成物の製造方法が提供される。
本発明の粉末状水硬性組成物の製造方法には、本発明の水硬性組成物用粉末分散剤組成物の製造方法、水硬性組成物用粉末分散剤組成物、及び粉末状水硬性組成物で述べた事項を適宜適用することができる。
【実施例
【0062】
<実施例1及び比較例1>
(1)分散剤用水溶液の調製
下記共重合体及び水を含有する水溶液を用意した。この水溶液は共重合体の固形分濃度が40質量%であり、pH(25℃)が3であった。そこに48%水酸化ナトリウム水溶液(関東化学株式会社製)を添加してpHを表1のように調整し、種々の分散剤用水溶液を調製した。前記水溶液及び分散剤用水溶液のpHは、25℃下において、電極式pHメーター(株式会社堀場製作所製)により測定し実施した。以下、pH測定は、他の実施例、比較例でも同様の方法に則って行った。用いた共重合体の種類なども表1中に併記した。
【0063】
<共重合体>
・共重合体A:メタクリル酸/メトキシポリエチレングリコール(25)モノメタクリレート=75モル/25モル(カッコ内は平均付加モル数である式(2)中のn、以下同様)、重量平均分子量=50,000、pH3(有効固形分40質量%、電極式pHメーターにより、25℃で測定、以下同様)
・共重合体B:アクリル酸/メタクリル酸/メトキシポリエチレングリコール(45)モノメタクリレート=35モル/35モル/30モル、重量平均分子量=40,000、pH3
・共重合体C:アクリル酸/ポリエチレングリコール(55)メタリルエーテル=80モル/20モル、重量平均分子量=35,000、pH3
・共重合体D:メタクリル酸/メトキシポリエチレングリコール(120)モノメタクリレート=90モル/10モル、重量平均分子量=39,000、pH3
【0064】
<実施例1及び比較例1>
(1)噴霧乾燥法による水硬性組成物用粉末分散剤組成物の製造
上記の通り調製した分散剤用水溶液を、実機型の粉末化設備で噴霧乾燥し、乾燥性の評価を行った。用いた粉末化設備は、ディスクアトマイザ、送風設備及び乾燥機を備えており、乾燥機入口温度は150℃、出口温度は80℃、外気温は20℃、ディスクアトマイザ回転数は18,000rpmであった。その後、粗大粒や異物を取り除くための1mmメッシュの篩にかけ、通過したものを水硬性組成物用粉末分散剤組成物として試験に用いた。
【0065】
(2)ドラムドライ法による水硬性組成物用粉末分散剤組成物の製造
上記の通り調製した分散剤用水溶液を、実機型のドラム乾燥設備でシート化した。用いた粉末化設備は、乾燥ドラム及びスクレーパーを備えており、乾燥ドラム面積は6.2m、乾燥ドラム回転数は3.1rpm、乾燥ドラム温度は130℃、外気温は30℃であった。続いて、得られたシートを実機型のドラム冷却設備で冷却し、フェザーミルにより粉砕した。上記のドラム乾燥設備からスクレーパーによって剥離されたサンプルのシートが、引き続き冷却設備に搬送されるように、冷却設備を粉末化設備の近傍に設置した。用いた冷却設備は、冷却ドラムを備えており、冷却ドラム面積は5.8m、冷却ドラム回転数は1.5rpm、冷却ドラム温度は22℃、外気温は30℃であった。粉砕後の乾燥物は、700μmメッシュ篩により粗大粒や異物を取り除いた後、水硬性組成物用粉末分散剤組成物として試験に用いた。
【0066】
(3)ディスクドライ法による水硬性組成物用粉末分散剤組成物の製造
上記の通り調製した分散剤用水溶液を、パイロット型のディスク乾燥設備でシート化した。用いた粉末化設備は、乾燥ディスク及びスクレーパーを備えており、乾燥ディスク面積は0.4m、乾燥ドラム回転数は1.5rpm、乾燥ドラム温度は140℃、外気温は30℃であった。続いて、得られた乾燥物を実機型の冷却設備で冷却し、フェザーミルにより粉砕した。用いた冷却・粉砕設備は、10℃の冷風を送風する機能を有し、乾燥物の表面温度が20℃程度となるまで冷却を行いながら粉砕を実施した。粉砕後の乾燥物は、700μmメッシュ篩により粗大粒や異物を取り除いた後、水硬性組成物用粉末分散剤組成物として試験に用いた。
【0067】
なお、いずれの方法でも篩のメッシュの違いは最終粒径には影響しない。水硬性組成物用粉末分散剤組成物について、前記方法で粒度分布測定を実施し、メジアン径(D50;μm)及び粒径1μm以上250μm以下の粒子の割合(質量%)を測定、算出した。結果を表1に示した。
【0068】
(4)水硬性組成物用粉末分散剤組成物の収率の計算
上記(1)、(2)又は(3)の操作により得られた水硬性組成物用粉末分散剤組成物の収率は、下記計算式に基づき計算した。結果は「収率」として表1に示した。
水硬性組成物用粉末分散剤組成物の収率(%)=〔X×100〕/〔Y×Z〕
X:水硬性組成物用粉末分散剤組成物の質量(g)
Y:製造に供した分散剤用水溶液の質量(g)
Z:製造に供した分散剤用水溶液の固形分(質量%)
上記分散剤用水溶液の固形分は、アルミニウム製カップに分散剤用水溶液を2g採取、105℃下で2時間乾固し、その質量変化をもとに下記式に基づいて算出した。
分散剤用水溶液の固形分(%)=〔乾固後の分散剤用水溶液質量(g)×100〕/乾固前の分散剤用水溶液質量(g)
【0069】
【表1】
【0070】
表1中、実施例1-1~1-12は比較例1-1~1-7に比べ優れた水硬性組成物用粉末分散剤組成物の収率を示した。これは、高pH化により分散剤用水溶液の乾燥性が向上し効果的に乾燥が進んだことで、噴霧乾燥効率や粉砕効率が向上したためであると考えられる。
なお、ドラムドライ法は同じ水分量であれば、噴霧乾燥法と同程度の乾燥性を有し、ドラムドライ法は付帯の冷却設備も有することから、ドラムドライ法で粉末化ができないということは、噴霧乾燥法では当然粉末化が不可能であると考えられる。