(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】炭素繊維束およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
D01F 9/22 20060101AFI20230530BHJP
【FI】
D01F9/22
(21)【出願番号】P 2019022467
(22)【出願日】2019-02-12
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石川 透
(72)【発明者】
【氏名】小野 公徳
(72)【発明者】
【氏名】田中 文彦
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-066580(JP,A)
【文献】特開2017-160556(JP,A)
【文献】特開2016-125173(JP,A)
【文献】特開2016-125172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F9/08-9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単繊維繊度Fcが1.5~
2.4dtexであり、単繊維の繊維軸に垂直な方向の断面の形状が真円度0.91~1.00であり、単繊維断面の中心側と円周側に観察される断面二重構造のうち、円周側の面積の単繊維断面積に占める割合である外層比率Ac(%)と単繊維繊度Fc(dtex)が次の条件(A)と条件(B)を満たす炭素繊維束。
(A) Ac≧121-17Fc/dtex
(B) Ac≧90
【請求項2】
炭素繊維束の単繊維断面の断面二重構造のうち、円周側の部分の中心方向への厚みである外層厚みが4.0~6.7μmである請求項1に記載の炭素繊維束。
【請求項3】
アクリロニトリル単位90.0~97.0質量%と構造式CH
2=CHCOOC
nH
2n+1(構造式中、n=2~4であり、アルキル鎖は直鎖である。)で表されるアクリレート系モノマー(X)単位3.0~10.0質量%を含むポリアクリロニトリル系重合体を用いて、単繊維繊度が2.3~6.0dtexであり、単繊維の繊維軸に垂直な方向の断面の形状が真円度0.91~1.00である炭素繊維前駆体繊維束を得た後に、該炭素繊維前駆体繊維束を次の条件(a)から条件(c)を満たしながら酸化性雰囲気中で処理する耐炎化工程と、該耐炎化工程で得られた耐炎化繊維束を最高温度500~1200℃の不活性雰囲気中において予備炭素化する予備炭素化工程と、該予備炭素化工程で得られた予備炭素化繊維束を1200~3000℃の不活性雰囲気中において炭素化する炭素化工程を含む炭素繊維束の製造方法。
(a) 耐炎化繊維束の単繊維断面の中心側と円周側に観察される断面二重構造のうち、円周側の面積の単繊維断面積に占める割合である外層比率As(%)がAs≧90を満たす。
(b) 耐炎化初期温度Ti(℃)とアクリレート系モノマー(X)単位の質量組成比Za(%)が、Ti×Za≧1000の関係を満たす。
(c) 耐炎化温度が200~300℃の範囲内である。
【請求項4】
耐炎化繊維束の単繊維断面の断面二重構造のうち、円周側の部分の中心方向への厚みである外層厚みが5.3~8.9μmである請求項3に記載の炭素繊維束の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単繊維あたりの耐荷重が高く耐擦過性および工程通過性に優れ、生産性の高い炭素繊維束とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維を用いた複合材料は航空・宇宙用途をはじめとし、自転車やゴルフクラブなどのスポーツ用途などに利用されており、最近では自動車用部材や圧力容器などの産業用途にも展開が進んでいる。このように炭素繊維を用いた複合材料の需要は高まってきており、炭素繊維の生産性を向上することが求められている。
【0003】
炭素繊維は、共重合成分を含むポリアクリロニトリルなどの前駆体繊維を200-300℃の空気中で酸化する耐炎化工程、500-1200℃の不活性雰囲気中で加熱する予備炭素化工程、1200-3000℃の不活性雰囲気中で加熱する炭素化工程を経ることで製造される。炭素繊維の生産性を高めるためには、単繊維あたりの質量、すなわち単繊維繊度を大きくすることで生産性の向上が可能であるが、そのためには炭素繊維前駆体繊維の単繊維繊度を大きくすることが最も有効である。しかし、単繊維繊度の大きい繊維束を得る上で、耐炎化工程における構造斑(焼け斑) が生じることが障害となっている。
【0004】
特許文献1では、かさ高く、酸素透過性のある不飽和カルボン酸アルキルエステルをポリアクリロニトリルに共重合したポリマーを炭素繊維前駆体繊維束に適用することで、耐炎化工程で繊維内部の酸素濃度分布が均一になり、耐炎化時間の短縮および炭素繊維の高物性化が可能になる技術を提案している。特許文献2では、酸素透過性のあるビニル系モノマーと耐炎化遅延効果のあるホウ素化合物を用いることで耐炎化時に生成する繊維断面の断面二重構造を抑制し、引張特性に優れた炭素繊維とその製法を示している。特許文献3では、ビニル系のモノマーを共重合したポリアクリロニトリルを用いることで前駆体繊維束の酸素透過性と延伸性を高め、炭素繊維の生産性と強度を改善する技術が提案されている。特許文献4および5は、かさ高く、酸素透過性があり、さらに耐炎化促進効果をもつヒドロキシアルキル基をもつビニル化合物をポリアクリロニトリルに共重合したポリマーを炭素繊維前駆体繊維束に適用することで、単繊維繊度の大きい炭素繊維を効率よく製造する方法を提案している。特許文献6では、さらに単繊維繊度が大きくても耐炎化できる技術と、樹脂含浸性に優れる炭素繊維の製法を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-31758号公報
【文献】特開平11-12856号公報
【文献】特開2006-257580号公報
【文献】国際公開第2012/050171号
【文献】国際公開第2013/157612号
【文献】特開2018-145541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、炭素繊維前駆体繊維の共重合成分として酸素透過性に優れる成分を用いているが、炭素繊維の単繊維繊度が十分に大きくはなく、単繊維の耐荷重が不十分であり、操業性の悪化が懸念される問題があった。特許文献2では、また、ホウ素により表面の耐炎化進行を抑制する手法であるため、繊維径が大きくなると繊維断面方向の耐炎化ムラが悪化する懸念から単繊維繊度を大きくできない問題があった。特許文献3では、炭素繊維前駆体繊維束に酸素透過性に優れる共重合成分が少なく、さらに単繊維繊度も小さいため、生産量の低下と操業性の悪化により炭素繊維束の生産効率を向上できない問題があった。特許文献4では、外層比率が低く、さらに繊維表面が粗いため、耐擦過性の低下と単繊維耐荷重の低下による毛羽発生による品位の低下が懸念される。特許文献5では、酸素透過性にやや劣る(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルを含むポリアクリロニトリル系共重合体を用いており、外層比率が低いために品位が劣り、得られる炭素繊維の表面が平滑でないために繊維束の耐擦過性が悪く、操業性の悪化が懸念される。特許文献6では、炭素繊維前駆体繊維束の単繊維繊度は大きいものの、共重合成分の酸素透過性が劣る上、共重合量も不十分であるため、外層比率が低くなっており、操業性向上に十分な単繊維耐荷重が得られない問題があった。
【0007】
本発明では、単繊維あたりの耐荷重が必要とされる炭素繊維強化複合材料に適しており、耐擦過性および工程通過性に優れ、生産性の良い炭素繊維束とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明は次の構成を有する。
【0009】
すなわち、本発明の炭素繊維束は、単繊維繊度Fcが1.5~4.0dtexであり、単繊維の繊維軸に垂直な方向の断面の形状が真円度0.91~1.00であり、単繊維断面の中心側と円周側に観察される断面二重構造のうち、円周側の面積の単繊維断面積に占める割合である外層比率Ac(%)と単繊維繊度Fc(dtex)が次の条件(A)と条件(B)を満たす炭素繊維束である。
(A) Ac≧121-17Fc/dtex
(B) Ac≧90。
【0010】
また、本発明の炭素繊維束の製造方法は、アクリロニトリル単位90.0~97.0質量%と構造式CH2=CHCOOCnH2n+1(構造式中、n=2~4であり、アルキル鎖は直鎖である。)で表されるアクリレート系モノマー(X)単位3.0~10.0質量%を含むポリアクリロニトリル系重合体を用いて、単繊維繊度が2.3~6.0dtexであり、単繊維の繊維軸に垂直な方向の断面の形状が真円度0.91~1.00である炭素繊維前駆体繊維束を得た後に、該炭素繊維前駆体繊維束を次の条件(a)から条件(c)を満たしながら酸化性雰囲気中で処理する耐炎化工程と、該耐炎化工程で得られた耐炎化繊維束を最高温度500~1200℃の不活性雰囲気中において予備炭素化する予備炭素化工程と、該予備炭素化工程で得られた予備炭素化繊維束を1200~3000℃の不活性雰囲気中において炭素化する炭素化工程を含む炭素繊維束の製造方法である。
(a) 耐炎化繊維束の単繊維断面の中心側と円周側に観察される断面二重構造のうち、円周側の面積の単繊維断面積に占める割合である外層比率As(%)がAs≧90を満たす。
(b)耐炎化初期温度Ti(℃)とアクリレート系モノマー(X)単位の質量組成比Za(%)が、Ti×Za≧1000の関係を満たす。
(c)耐炎化温度が200~300℃の範囲内である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、単繊維あたりの耐荷重が高く、耐擦過性および工程通過性に優れた生産性のよい炭素繊維束が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
単繊維あたりの耐荷重を増やすためには炭素繊維束の単繊維断面の外層比率と単繊維繊度のバランスが重要であり、耐擦過性および工程通過性を高めるためには断面形状が円形であることを明確にして発明に到達した。
【0013】
本発明の炭素繊維束は、単繊維繊度が1.5~4.0dtexであり、好ましくは1.8~3.8dtexであり、より好ましくは2.2~3.6dtexである。単繊維繊度とは、単繊維の単位長さあたりの質量であり、1dtexは単繊維10,000mあたりの質量が1gとなるような繊維であることから、単繊維直径に関連する。単繊維繊度が大きいと単繊維あたりでは耐荷重が大きくなるために擦過などの炭素繊維束のハンドリング中に荷重の大きくなる外力に対して単繊維破断(毛羽生成)しにくくなる。炭素繊維束の単繊維繊度が1.5 dtex以上あれば単繊維断面積が大きく、想定されるハンドリング中の荷重に十分な単繊維が得られ、工程中で毛羽が発生しにくく耐炎化工程・予備炭素化工程・炭素化工程の工程通過性が良くなる。単繊維繊度が4.0dtex以下であると断面二重構造の外層比率が小さく抑えることができ、毛羽が発生しにくくなる。単繊維繊度は炭素繊維束の目付とフィラメント数から算出することができる。かかる単繊維繊度を制御するためには、炭素繊維前駆体繊維束の製糸工程における紡糸溶液の吐出量・延伸倍率および耐炎化から炭素化工程での炭素化収率を制御することが重要であり、主には紡糸溶液の吐出量を制御することで達成される。
【0014】
本発明の炭素繊維束は、単繊維の繊維軸に垂直な断面の形状が真円度0.91~1.00であり、好ましくは0.93~1.00であり、より好ましくは0.95~1.00である。真円度は下記式(1)によって求められる値であり、S、Lはそれぞれ単繊維の繊維軸に垂直な断面の断面積と周長である。真円度は真円では1.00であり、楕円やその他の形状では1.00よりも小さくなる。
【0015】
(真円度)= 4πS/L2 (1)
真円度が0.91以上であれば耐擦過性が良くなるため、単繊維破断が起きにくく毛羽が発生しにくくなり、結果的に炭素化工程の工程通過性に優れる。真円度は高いほど好ましい。真円度は、繊維束を樹脂包埋し、繊維軸に垂直な面を湿式研磨することで露出した断面を光学顕微鏡で観察し、画像解析から繊維断面積および周長を算出することで求められる。かかる繊維の真円度を制御するためには、炭素繊維束の形状は炭素繊維前駆体繊維束の凝固条件と延伸条件によって決定されるため、凝固浴の組成および温度、さらに延伸浴の温度と延伸倍率を制御することで達成できる。
【0016】
本発明の炭素繊維束は、単繊維断面の円周側と中心側に生じる構造差(断面二重構造と呼ぶ)のうち、円周側の面積の単繊維の断面積に対して占める割合として定義する炭素繊維の外層比率Ac(%)(以下単に外層比率とする)が炭素繊維の単繊維繊度Fc(dtex)に対して、
(A) Ac≧121-17Fc/dtex
を満たし、好ましくは上式における切片が123、さらに好ましくは切片が125である。上式を満たしていれば、太繊度かつ断面二重構造が抑制されており、単繊維の耐荷重およびプロセス性に優れる。上式は耐炎化工程における断面二重構造を抑制することで制御され、主に耐炎化温度やポリアクリロニトリル系共重合体の酸素透過成分の共重合量などにより制御される。
【0017】
本発明の炭素繊維束は、断面二重構造の外層比率が、
(B) Ac≧90%
を満たし、好ましくは93%以上であり、より好ましくは95~98%である。断面二重構造の外層比率が90%以上であれば、単繊維の耐荷重が増すことで破断しにくくなり工程通過性に優れ、外層比率が高いほど望ましい。ただし、外層比率が98%以下の場合は単繊維強度の低下が起こらず、耐荷重を高くすることができる。断面二重構造の外層比率は炭素繊維束を樹脂包埋し、繊維軸に垂直な面を湿式研磨することで露出した断面を光学顕微鏡で観察し、画像解析から繊維断面積および断面二重構造のうち円周側の構造の面積を算出することで求められる。かかる断面二重構造の外層比率を制御するためには、耐炎化工程の処理時間と処理温度、もしくはポリアクリロニトリル系重合体の共重合成分を変更することで制御できる。
【0018】
本発明の炭素繊維束は、断面二重構造の円周側の構造の厚み(以下外層厚みとする)が4.0~6.7μmであることが好ましく、より好ましくは4.2~6.5μmであり、さらに好ましくは4.5~6.3μm以上である。外層厚みが4.0μm以上であれば、断面二重構造が十分小さく、単繊維の耐荷重が高くなるため、品位が向上する。外層厚みが6.7μm以下であれば、断面二重構造の抑制に対して十分な効果が得られる。断面二重構造の外層厚みは炭素繊維束を樹脂包埋し、繊維軸に垂直な面を湿式研磨することで露出した断面を光学顕微鏡で観察し、画像解析から断面二重構造のうち円周側の構造の厚みを算出することで求められる。かかる断面二重構造の外層厚みを制御するためには、耐炎化工程の処理時間と処理温度、もしくはポリアクリロニトリル系重合体の共重合成分を変更することで制御できる。
【0019】
次に、本発明の炭素繊維束を得ることに好ましい炭素繊維束の製造方法について述べる。
【0020】
本発明の炭素繊維の製造方法によると、炭素繊維前駆体繊維束の製造に供する原料の組成について、アクリロニトリル単位が90.0~97.0質量%とアクリレート系モノマー(X)単位が3.0~10.0質量%であり、好ましくはアクリロニトリル単位が90.0~96.0質量%とアクリレート系モノマー(X)単位が4.0~10.0質量%、より好ましくはアクリロニトリル単位が90.0~95.0質量%とアクリレート系モノマー(X)単位が5.0~10.0質量%であるポリアクリロニトリル系重合体を用いる。アクリレート系モノマー(X)とは、構造式CH2=CHCOOCnH2n+1で表され、n=2~4であり、アルキル基が直鎖であるアクリル酸エステル系モノマーである。アクリレート系モノマー単位が3.0質量%以上であれば、炭素繊維前駆体繊維束の耐炎化工程における外層比率が高くなり、10.0質量%以下であれば得られる炭素繊維単繊維の強度および耐荷重が増加することにより、工程通過性に優れる。ポリアクリロニトリル系共重合体のアクリロニトリル単位とアクリレート系モノマー(X)単位の比率は、重合時のそれぞれの単量体の組成比を調整することで制御できる。アクリレート系モノマー(X)としては、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ノルマルブチルが例示され、延伸性向上による品位向上と酸素透過性の両立の観点から、アクリル酸エチルが特に好ましい。その他の共重合成分としては、耐炎化反応の促進を目的としてメタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、アクリルアミドなどを用いることができる。
【0021】
炭素繊維前駆体繊維束を製造するにあたり、乾湿式紡糸法および湿式紡糸法のいずれかを用いて製糸する。製糸工程は一般に、紡糸口金から凝固浴に紡糸溶液を吐出させて紡糸する凝固工程と、該凝固工程で得られた繊維を水浴中で洗浄する水洗工程と、該水洗工程で得られた繊維を水浴中で延伸する水浴延伸工程と、該水浴延伸工程で得られた繊維に工程油剤を塗布する油剤工程と、該油剤工程で得られた繊維を乾燥熱処理する乾燥熱処理工程からなり、必要に応じて、該乾燥熱処理工程で得られた繊維をスチーム延伸するスチーム延伸工程を含む。なお、各工程の順序を適宜入れ替えることも可能である。紡糸溶液とは、前記したポリアクリロニトリル共重合体を、ジメチルスルホキシド・ジメチルホルムアミド・ジメチルアセトアミドなどの有機溶媒や、硝酸・塩化亜鉛・ロダンソーダなどの水溶液といったポリアクリロニトリル共重合体が可溶な溶媒に溶解したものである。
【0022】
前記凝固浴には、紡糸溶液の溶媒として用いたジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドなどの溶媒と、凝固促進成分を含ませることが好ましい。凝固促進成分としては、前記ポリアクリロニトリル共重合体を溶解せず、かつ紡糸溶液に用いる溶媒と相溶性があるものを使用することができる。具体的には、凝固促進成分として水を使用することが好ましい。単繊維の横断面が真円状で、かつ繊維側面が平滑となる範囲で有機溶剤の濃度を高くし、凝固浴の温度を低く設定することが好ましい。例えば、溶剤にジメチルスルホキシドを用いた場合には、ジメチルスルホキシド水溶液の濃度を5~30質量%、あるいは70~80質量%とし、凝固浴温度を-10~30℃とすることが望ましい。
【0023】
前記水洗工程における水洗浴としては、温度が30~98℃の複数段からなる水洗浴を用いることが好ましい。また、水浴延伸工程における延伸倍率は、高い真円度の断面形状を維持する観点から、1~6倍であることが好ましい。
【0024】
水浴延伸工程の後、単繊維同士の融着を防止する目的から、繊維束にシリコーン等からなる油剤を付与することが好ましい。かかるシリコーン油剤は、変性されたシリコーンを用いることが好ましく、耐熱性の高いアミノ変性シリコーンを含有するものを用いることが好ましい。
【0025】
乾燥熱処理工程は、公知の方法を利用することができる。例えば、乾燥温度は100~200℃が例示される。
【0026】
前記した水洗工程、水浴延伸工程、油剤付与工程、乾燥熱処理工程の後、必要に応じ、スチーム延伸を行うことにより、本発明の炭素繊維束を得るのに好適な炭素繊維前駆体繊維束が得られる。スチーム延伸は、加圧スチーム中において、延伸倍率は2~6倍であることが好ましい。
【0027】
本発明の炭素繊維の製造方法によると、炭素繊維前駆体繊維束の単繊維繊度は2.3~6.0dtexであり、好ましくは2.5~5.5dtex、より好ましくは2.8~4.4dtexである。単繊維繊度が2.3dtex以上あれば耐荷重の高い単繊維が得られ、毛羽が発生しにくく工程通過性が良くなる。単繊維繊度が6.0dtexを超えると、耐炎化および予備炭素化、炭素化における耐擦過性が低下し、工程通過性が悪化する。単繊維繊度は炭素繊維前駆体繊維束の単位長さあたりの質量とフィラメント数から算出する。かかる単繊維繊度を制御するためには、炭素繊維前駆体繊維束の紡糸工程における紡糸溶液の吐出量・延伸倍率および焼成工程での炭素化収率を制御することが重要であり、主には紡糸溶液の吐出量を制御することで達成される。
【0028】
本発明の炭素繊維束の製造方法によると、炭素繊維前駆体繊維束の単繊維の繊維軸に垂直な断面の形状が真円度0.91~1.00であり、好ましくは0.93~1.00であり、より好ましくは0.95~1.00である。真円度は上述の式(1)によって求められる値である。真円度は真円では1.00であり、楕円やその他の形状では1.00よりも小さくなる。真円度が0.91以上であれば耐擦過性が良くなるため、単繊維破断が起きにくく毛羽が発生しにくくなり、結果的に耐炎化工程・予備炭素化工程・炭素化工程の工程通過性に優れる。真円度は高いほど好ましい。真円度は、繊維束を樹脂包埋し、繊維軸に垂直な面を湿式研磨することで露出した断面を光学顕微鏡で観察し、画像解析から繊維断面積および周長を算出することで求められる。かかる繊維の真円度を制御するためには、炭素繊維前駆体繊維束の凝固条件と延伸条件によって決定されるため、凝固浴の組成および温度、さらに延伸浴の温度と延伸倍率を制御することで達成できる。
【0029】
本発明の炭素繊維束の製造方法によると、耐炎化繊維束の外層比率As(%)はAs≧90%であり、好ましくは93%以上、さらに好ましくは95~98%である。外層比率が大きいほど断面二重構造が小さくなるため、該耐炎化繊維束を炭素化した後の炭素繊維束の単繊維の強度が優れ、工程における毛羽の発生を抑えることができる。耐炎化繊維束の外層比率は、耐炎化繊維束を樹脂包埋したのち、表面を研磨することで現れる繊維軸に垂直な断面を光学顕微鏡により観察し、繊維断面の色調が異なる領域のうち、外側の領域の断面積全体に占める面積を算出することで得られる。外層比率を90%以上とするためには、耐炎化工程で耐炎化繊維束をサンプリングして外層比率を確認し、耐炎化温度を調整することや、炭素繊維前駆体繊維の原料として酸素透過性に優れる共重合成分を使用することで達成できる。
【0030】
また、本発明の炭素繊維束の製造方法によると、耐炎化処理の条件について、耐炎化初期温度Ti(℃)とポリアクリロニトリル系共重合体のアクリレート系モノマー(X)単位の質量組成比Za(%)が以下の関係を満たし、好ましくは右辺が1100、さらに好ましくは右辺が1200である。式を満たす場合、炭素繊維前駆体繊維束の酸素透過性に応じて高温かつ短時間で効率よく耐炎化処理できるため、生産性に優れる。酸素透過性に優れる共重合成分を炭素繊維前駆体繊維束の原料として適量使用することで達成できる。
Ti×Za≧1000。
【0031】
また、本発明の炭素繊維束の製造方法によると、耐炎化工程の熱処理温度が200~300℃であり、好ましくは220~280℃であり、より好ましくは230℃~270℃である。耐炎化工程の熱処理温度が200℃以上であれば予備炭素化工程および炭素化工程の通過性が良好であり、300℃以下であれば炭素繊維前駆体繊維束の熱暴走が抑制され、操業性に優れる。
【0032】
本発明の炭素繊維束の製造方法によると、耐炎化繊維束の断面二重構造の円周側の構造の厚み(以下外層厚みとする)が5.3~8.9μmであることが好ましく、より好ましくは5.6~8.6μmであり、さらに好ましくは6.1~8.3μmである。外層厚みが5.3μm以上であれば、断面二重構造が十分小さく、炭素化工程での糸切れが起こりにくくなり、品位が向上する。外層厚みが8.6μmであれば、断面二重構造の抑制に対して十分な効果が得られる。断面二重構造の外層厚みは耐炎化繊維束を樹脂包埋し、繊維軸に垂直な面を湿式研磨することで露出した断面を光学顕微鏡で観察し、画像解析から断面二重構造のうち円周側の構造の厚みを算出することで求められる。かかる断面二重構造の外層厚みを制御するためには、耐炎化工程の処理時間と処理温度、もしくはポリアクリロニトリル系重合体の共重合成分を変更することで制御できる。
【0033】
該耐炎化工程で得られた繊維束を予備炭素化する予備炭素化工程においては、得られた耐炎化繊維束を、不活性雰囲気中、最高温度500~1200℃において、比重が1.5~1.8になるまで熱処理する。
【0034】
予備炭素化された該予備炭素化繊維束を不活性雰囲気中、最高温度1200~3000℃において炭素化する。
【0035】
以上のようにして得られた炭素繊維束は、酸化処理が施されることが好ましく、酸素含有官能基が導入される。本発明の電解表面処理については、気相酸化、液相酸化および液相電解酸化が用いられるが、生産性が高く、均一処理ができるという観点から、液相電解酸化が好ましく用いられる。本発明において、液相電解酸化の方法については特に制約はなく、公知の方法で行えばよい。
【0036】
かかる電解処理の後、得られた炭素繊維束に集束性を付与するため、サイジング処理をすることもできる。サイジング剤には、複合材料に使用されるマトリックス樹脂の種類に応じて、マトリックス樹脂との相溶性の良いサイジング剤を適宜選択することができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。本実施例における各測定方法は以下の通りである。
【0038】
<耐炎化繊維、炭素繊維の外層厚み、外層比率の測定>
長さ2cmに切断した耐炎化繊維もしくは炭素繊維をエポキシ樹脂(主剤:BUEHLER社製EPO-KWICK RESIN、硬化剤:EPO-KWICK HARDENER)に包埋し、繊維軸に垂直な断面を湿式研磨処理した後、顕微鏡(ライカマイクロシステムズ社製工業用正立顕微鏡DM2700M)を用いて観察して写真を撮影した。撮影した写真は画像処理ソフトウェア(ImageJ)を用いて解析した。条件によっては外層と内層が一定の範囲にグラデーションを形成したり、外層と内層の境界に中間的な層が形成されリング状に観察されたりする場合があるが、これらの境界部分と外層とが形成するグラデーションの外側端を二重構造の境界と定めた。単繊維30本について画像解析を行った。外層厚みは周から断面の中心方向に計測した周から外層と内層の境界までの距離として算出した。外層比率は耐炎化繊維や炭素繊維の平均断面積a0と内層部分の平均面積a1を求めた後、下記式にしたがって算出した。
外層比率(%)=(1-a1)÷a0×100
<真円度の算出方法>
長さ2cmに切断した炭素繊維前駆体繊維束をエポキシ樹脂(主剤:BUEHLER社製EPO-KWICK RESIN、硬化剤:EPO-KWICK HARDENER)に包埋し、繊維軸に垂直な断面を湿式研磨処理した後、顕微鏡(ライカマイクロシステムズ社製工業用正立顕微鏡DM2700M)を用いて観察して写真を撮影した。撮影した写真は画像処理ソフトウェア(ImageJ)を用いて解析した。繊維断面の面積と周長を計測し、以下の式から真円度を算出した。
【0039】
(真円度)=(4πS)/L2
S:繊維断面積
L:繊維断面の周長。
【0040】
<品位の評価方法>
フィラメント数3000の炭素繊維束に、炭素繊維単繊維あたりの平均荷重が7gf(69mN)となるように重りをとりつけ、その後、炭素繊維束の毛羽を目視で観察し、品位を評価した。品位は良好なものを○、プロセス上許容できる範囲であるものを△、劣るものを×とした。
【0041】
(実施例1)
アクリロニトリル、イタコン酸、アクリレート系モノマーとしてアクリル酸エチルを93.5:1.0:5.5の質量比で混合した単量体混合物を、ジメチルスルホキシド(DMSO)を溶媒とした溶液重合法により重合し、ポリアクリロニトリル系共重合体溶液を得、紡糸溶液とした。得られた紡糸溶液を孔数3000の口金を用いて一旦空気中に吐出し、空間を通過させた後、DMSOの水溶液からなる凝固浴に導く乾湿式紡糸法により凝固させ、凝固糸とした。得られた凝固糸を水洗した後、温水浴中で2倍に延伸し、シリコーン系油剤を付与し、表面温度が180℃のホットドラムで加熱処理を行った。その後、加圧水蒸気中で5倍に延伸して単繊維繊度3.3dtexの炭素繊維前駆体繊維束を得た。この炭素繊維前駆体繊維束を、熱風循環式オーブンを用いて250℃の空気中で熱処理し、耐炎化繊維束を得た。得られた耐炎化繊維束をエポキシ樹脂に樹脂包埋し、耐炎化繊維束の繊維軸方向に垂直な面を湿式研磨し、断面を光学顕微鏡で観察し、外層比率を算出した。得られた耐炎化繊維束を温度300~800℃の窒素雰囲気中において予備炭素化し、その後、最高温度1300℃の窒素雰囲気中で炭素化することで炭素繊維束を得た。炭素繊維束の毛羽数を数え、品位を評価した。
【0042】
(実施例2)
実施例1で得た炭素繊維前駆体繊維束を230℃の空気中で熱処理した以外は実施例1と同様にし、耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。
【0043】
(実施例3)
実施例1の紡糸溶液の吐出量を変更して単繊維繊度4.4dtexの炭素繊維前駆体繊維束を得、230℃の空気中で熱処理した以外は実施例1と同様にし、耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。
【0044】
(実施例4)
実施例1でポリアクリロニトリル系共重合体の原料をアクリロニトリル、イタコン酸、アクリレート系モノマーとしてアクリル酸エチルの質量比が90.0:1.0:9.0である単量体組成物とした以外は実施例1と同様にし、耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。
【0045】
(実施例5)
実施例4で得た炭素繊維前駆体繊維束を230℃の空気中で熱処理した以外は実施例4と同様にし、耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。
【0046】
(実施例6)
実施例4の紡糸溶液の吐出量を変更して単繊維繊度4.4dtexの炭素繊維前駆体繊維束を得た以外は実施例4と同様にし、耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。
【0047】
(実施例7)
実施例6で得た炭素繊維前駆体繊維束を230℃の空気中で熱処理した以外は実施例6と同様にし、耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。
【0048】
(実施例8)
実施例1でポリアクリロニトリル系共重合体の原料をアクリロニトリル、イタコン酸、アクリレート系モノマーとしてアクリル酸ノルマルブチルの質量比が92.0:1.0:7.0である単量体組成物とした以外は実施例1と同様にし、耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。
【0049】
(比較例1)
実施例1でポリアクリロニトリル系共重合体の原料をアクリロニトリル、イタコン酸、アクリレート系モノマーとしてアクリル酸エチルの質量比が97.1:1.0:1.9である単量体組成物とし、紡糸溶液の吐出量を変更して単繊維繊度2.2dtexの炭素繊維前駆体繊維束を得た以外は実施例1と同様にし、耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。
【0050】
(比較例2)
比較例1で得た炭素繊維前駆体繊維束を230℃の空気中で熱処理した以外は比較例1と同様にし、耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。
【0051】
(比較例3)
比較例1の紡糸溶液の吐出量を変更して単繊維繊度3.3dtexの炭素繊維前駆体繊維束を得た以外は比較例3と同様にし、耐炎化繊維束を得た。耐炎化繊維束を温度300~800℃の窒素雰囲気中において予備炭素化し、その後、最高温度1300℃の窒素雰囲気中で炭素化を行ったところ、繊維束が切れ、炭素繊維束は得られなかった。
【0052】
(比較例4)
比較例3で得た炭素繊維前駆体繊維束を230℃の空気中で熱処理した以外は比較例3と同様にし、耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。
【0053】
(比較例5)
比較例1の紡糸溶液の吐出量を変更して単繊維繊度4.4dtexの炭素繊維前駆体繊維束を得た以外は比較例1と同様にし、耐炎化繊維束を得た。耐炎化繊維束を温度300~800℃の窒素雰囲気中において予備炭素化し、その後、最高温度1300℃の窒素雰囲気中で炭素化を行ったところ、繊維束が切れ、炭素繊維束は得られなかった。
【0054】
(比較例6)
比較例5で得た炭素繊維前駆体繊維束を230℃の空気中で熱処理した以外は比較例5と同様にし、耐炎化繊維束を得た。耐炎化繊維束を温度300~800℃の窒素雰囲気中において予備炭素化し、その後、最高温度1300℃の窒素雰囲気中で炭素化を行ったところ、繊維束が切れ、炭素繊維束は得られなかった。
【0055】
(比較例7)
実施例1の紡糸溶液の吐出量を変更して単繊維繊度2.2dtexの炭素繊維前駆体繊維束を得た以外は実施例1と同様にし、耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。
【0056】
(比較例8)
比較例7で得た炭素繊維前駆体繊維束を230℃の空気中で熱処理した以外は比較例7と同様にし、耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。
【0057】
(比較例9)
実施例1の紡糸溶液の吐出量を変更して単繊維繊度4.4dtexの炭素繊維前駆体繊維束を得た以外は実施例1と同様にし、耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。
【0058】
(比較例10)
実施例1でポリアクリロニトリル系共重合体の原料をアクリロニトリル、イタコン酸、アクリレート系モノマーとしてアクリル酸エチルの質量比が90.0:1.0:9.0である単量体組成物とし、紡糸溶液の吐出量を変更して単繊維繊度2.2dtexの炭素繊維前駆体繊維束を得た以外は実施例1と同様にし、耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。
【0059】
(比較例11)
比較例10で得た炭素繊維前駆体繊維束を230℃の空気中で熱処理した以外は比較例10と同様にし、耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。
【0060】
(比較例12)
実施例1でポリアクリロニトリル系共重合体の原料をアクリロニトリル、イタコン酸、アクリレート系モノマーとしてアクリル酸ノルマルブチルの質量比が96.6:1.0:2.4である単量体組成物とし、紡糸溶液の吐出量を変更して単繊維繊度2.2dtexの炭素繊維前駆体繊維束を得、220℃の空気中で熱処理を行った以外は実施例1と同様にし、耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。
【0061】
(比較例13)
比較例12の紡糸溶液の吐出量を変更して単繊維繊度4.4dtexの炭素繊維前駆体繊維束を得た以外は比較例12と同様にし、耐炎化繊維束を得た。耐炎化繊維束を温度300~800℃の窒素雰囲気中において予備炭素化し、その後、最高温度1300℃の窒素雰囲気中で炭素化を行ったところ、繊維束が切れ、炭素繊維束は得られなかった。
【0062】
(比較例14)
実施例1でポリアクリロニトリル系共重合体の原料をアクリロニトリル、イタコン酸の質量比が99.0:1.0である単量体組成物とし、紡糸溶液の吐出量を変更して単繊維繊度2.2dtexの炭素繊維前駆体繊維束を得、230℃の空気中で熱処理を行った以外は実施例1と同様にし、耐炎化繊維束を得た。耐炎化繊維束を温度300~800℃の窒素雰囲気中において予備炭素化し、その後、最高温度1300℃の窒素雰囲気中で炭素化を行ったところ、繊維束が切れ、炭素繊維束は得られなかった。
【0063】
(比較例15)
実施例1でポリアクリロニトリル系共重合体の原料をアクリロニトリル、イタコン酸、アクリレート系モノマーとしてアクリル酸エチルの質量比が93.5:1.0:5.5である単量体組成物として得られた紡糸溶液を孔数3000の口金を用いてDMSOの水溶液からなる凝固浴中に吐出する湿式紡糸法により凝固させ、凝固糸とした以外は実施例1と同様にし、耐炎化繊維束を得た。得られた耐炎化繊維束を温度300~800℃の窒素雰囲気中において予備炭素化し、その後、最高温度1300℃の窒素雰囲気中で炭素化することで炭素繊維束を得た。炭素繊維束の毛羽数を数え、品位を評価した。
【0064】
(比較例16)
実施例1でポリアクリロニトリル系共重合体の原料をアクリロニトリル、イタコン酸、アクリレート系モノマーとしてアクリル酸エチルの質量比が93.5:1.0:5.5である単量体組成物とした以外は実施例1と同様にし、炭素繊維前駆体繊維束を得た。得られた炭素繊維前駆体繊維束を310℃の空気中で熱処理を行ったところ、繊維束が断糸し、耐炎化繊維束は得られなかった。
【0065】
以上の実施例および比較例の条件、結果について、実施例1~8は表1に、比較例1~8は表2に、比較例9~16は表3にそれぞれまとめた。
【0066】
【0067】
【0068】