(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】仮撚り用ポリアミドマルチフィラメントおよびポリアミド仮撚り加工糸
(51)【国際特許分類】
D01F 6/60 20060101AFI20230530BHJP
D02G 1/02 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
D01F6/60 311J
D02G1/02 Z
(21)【出願番号】P 2019141539
(22)【出願日】2019-07-31
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坊野 嗣宜
(72)【発明者】
【氏名】山中 健志
(72)【発明者】
【氏名】中原 健
【審査官】静野 朋季
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-084749(JP,A)
【文献】国際公開第2012/073737(WO,A1)
【文献】特開2011-162907(JP,A)
【文献】国際公開第2013/129135(WO,A1)
【文献】特開2003-227006(JP,A)
【文献】特開平7-197343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 1/00-6/96
D01F 9/00-9/04
D02G 1/00-3/48
D02J 1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単糸繊度が0.3~1.0dtex、アミノ末端基量が7×10
-5~15×10
-5mol/g、伸度が70~100%、15%伸長応力が1.1~2.0cN/dtexである仮撚り用ポリアミドマルチフィラメント。
【請求項2】
酸化チタンを0.1~3.0重量%含有する請求項1記載の仮撚り用ポリアミドマルチフィラメント。
【請求項3】
ポリアミドがナイロン6またはナイロン66である請求項1または2記載の仮撚り用ポリアミドマルチフィラメント。
【請求項4】
単糸繊度が0.2~0.8dtex、アミノ末端基量が7×10
-5~15×10
-5mol/g、伸縮復元率(CR)が25~40%であるポリアミド仮撚り加工糸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単糸繊度1.0dtex以下の仮撚り用ポリアミドマルチフィラメントおよびその仮撚り加工糸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成繊維であるポリアミド繊維やポリエステル繊維は、機械的・化学的性質において優れた特性を有することから衣料用途や産業用途などで幅広く利用されている。特に、ポリアミド繊維は、肌触り、光沢性において優れた特性を有することから一般衣料製品等に広く使用されている。とりわけ、衣料用途の中でも仮撚加工糸は、織物や編物などに広く使用され、生産量も多い。特に、単糸繊度1.0dtex以下の極細仮撚加工糸は、布帛にしたとき、ソフト性が得られ、保温性や吸水性も通常の単糸繊度の仮撚加工糸より向上する。よって、極細仮撚加工糸の市場要求は高まっている。
【0003】
特許文献1、特許文献4には、単糸1.2dtex以下のポリアミド繊維が提案されている。ソフト性に関しては消費者に受け入れられ、さらに極細化の需要が拡大している。しかしながら、特許文献1、特許文献4に記載のポリアミド繊維は、繊維表面積が大きくなることで光の乱反射により白っぽく見えるため、濃色が得られにくく、濃色を実現できる発色性向上が望まれていた。また、繊維が柔らかくなり、仮撚り加工すると捲縮が入りにくく、嵩高性が低下する問題を抱えていた。
【0004】
染色性改善技術として、特許文献2には、0.5~15重量%の共重合成分を共重合したナイロン66繊維が提案されている。また、特許文献3には、酸化チタン3~6.5%、アミノ末端基量が4×10-5~8×10-5mol/gのポリアミド繊維が提案されている。
【0005】
ポリアミド繊維の高伸度化技術として、特許文献2には、伸度50~80%のナイロン66繊維としても提案されている。また、特許文献5には、主成分としてナイロン66樹脂またはナイロン66樹脂とナイロン6樹脂との混合物から構成された、伸度113~179%(実施例)の高伸度ナイロン繊維が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5780237号公報
【文献】特開平8-260241号公報
【文献】特開2004-292982号公報
【文献】特開2009-84749号公報
【文献】特開2004-3056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発色性改善技術としては、特許文献2のように共重合化することで結晶構造をルーズなものにし、染料が入り込み易くなることで発色性は向上するものの、染色堅牢度に劣る。また、仮撚り加工用に用いるポリアミド半延伸糸(POY)では、15%伸長応力が低くなり、仮撚り加工時の加工張力を上げられないため、捲縮性が得られない。
【0008】
捲縮性改善技術としては、仮撚り加工時において、加工張力を維持した状態で実撚り数がアップできれば実現可能である。そのため、特許文献1や特許文献3、特許文献4に記載のポリアミド繊維を高伸度化して実撚りが入りやすいように設計すれば可能であるが、そのためには、ドラフト延伸と機械延伸を極力下げる必要があるが、吸湿結晶化により糸が伸長する現象が発生し、伸度は実質70%程度が限界である。特に、単糸細繊度は糸の太細斑の観点から固化点を高くすることが必須である一方で、固化点を高くするとドラフト延伸の影響を受けやすくなるため高伸度化に限界がある。
【0009】
高伸度を得るには、特許文献2や特許文献5のように、共重合化することで結晶構造をルーズにして、高伸度が得られるものの、15%伸長応力が低くなり、仮撚り加工時の加工張力を上げられないため、捲縮性が得られない。また、強度も低くなるため、単糸細繊度では毛羽になりやすい。
【0010】
本発明は、単糸繊度1detx以下の極細繊維でありながら、発色性と捲縮性に優れた仮撚り用ポリアミドマルチフィラメントを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、次の構成を有する。
(1)単糸繊度が0.3~1.0dtex、アミノ末端基量が7×10-5~15×10-5mol/g、伸度が70~100%、15%伸長応力が1.1~2.0cN/dtexから構成されることを特徴とする仮撚り用ポリアミドマルチフィラメント。
(2)酸化チタンを0.1~3.0重量%含有することを特徴とする(1)に記載の仮撚り用ポリアミドマルチフィラメント。
(3)ポリアミドがナイロン6またはナイロン66を特徴とする(1)または(2)に記載の仮撚り用ポリアミドマルチフィラメント。
(4)単糸繊度が0.2~0.8dtex、アミノ末端基量が7×10-5~15×10-5mol/g、伸縮復元率(CR)が25~40%から構成されることを特徴とするポリアミド仮撚り加工糸。
【発明の効果】
【0012】
本発明の仮撚り用ポリアミドマルチフィラメントは、単糸繊度1detx以下の極細繊維でありながら、発色性と捲縮性に優れた仮撚加工糸を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明でいうポリアミドは、いわゆる炭化水素基が主鎖にアミド結合を介して連結されたポリマであり、主としてポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)が好ましい。前記における主としては、ポリカプロアミドではポリカプロアミドを構成するε-カプロラクタム単位とし、ポリヘキサメチレンアジパミドではポリヘキサメチレンアジパミドを構成するヘキサメチレンジアンモニウムアジペート単位として、それぞれ99.6重量%以上である。複数の繰り返し単位を有する共重合体および複数のポリマをブレンドした混合物は、結晶構造をルーズな形態を形成しやすく染色堅牢度や強度低下、毛羽になりやすくなる。そのため、本発明の効果を逸脱しない範囲で、主成分の他に第2、第3成分を共重合または混合しても良いが、その量は、0.5重量%未満であることが好ましい。
【0014】
本発明の仮撚り用ポリアミドマルチフィラメントの単糸繊度は0.3~1.0dtexである。単糸繊度が細いほどソフト性は増すものの、捲縮性と紡糸時の糸切れが発生し生産安定性の観点から、下限は0.3dtexである。また、単糸繊度が1.0dtexを超えると、繊維の曲げ剛性が大きくなり極細繊維であるソフト性の特徴が損なわれる。
【0015】
本発明の仮撚り用ポリアミドマルチフィラメントのアミノ末端基量は、7×10-5~15×10-5mol/gであり、さらに好ましくは7×10-5~10×10-5mol/gである。アミノ末端基は染料着座となるため、アミノ末端基量が7.0×10-5mol/g以上であると、単糸繊度1detx以下の極細繊維でありながら、優れた発色性が得られる。アミノ末端基量が7×10-5mol/g未満であると、染料が着座するアミノ末端基量が不十分なため、所望の発色性が発現しない。このアミノ末端基量をかかる範囲とするためには、ポリアミドモノマーに、アミノ末端基量調整剤であるジアミンを添加し、公知の重縮合を行うことで所望のアミノ基量のポリアミドを製造することができる。アミノ末端基量が15.0×10-5mol/gを超えると、発色性は向上するものの、結晶構造がルーズな状態となるため、伸度が高く、15%応力が低くなるため、仮撚り加工時において、加工張力を維持した状態で実撚り数を上げにくく、所望の捲縮性が得られにくい。特に、単糸繊度1.0dtex以下の極細繊維は繊維の曲げ剛性が低いため、その傾向は顕著に表れる。
【0016】
単糸繊度1.0dtex以下の極細仮撚加工糸の捲縮性を向上させるためには、仮撚り加工時において、ポリアミドモノマーに、アミノ末端基量調整剤であるジアミンを添加することで、結晶構造をややルーズな状態にしてかかる範囲の伸度を実現し、実撚り数を上げることが可能となる。また、紡糸張力をコントロールする紡糸条件を採用することで、かかる範囲の伸度と15%伸長応力を実現し、加工張力を維持した状態が可能となる。その結果、単糸繊度1detx以下の極細繊維でありながら、優れた捲縮性の仮撚り加工糸が得られる。
【0017】
本発明の仮撚り用ポリアミドマルチフィラメントは伸度が70~100%、15%伸長応力が1.1~2.0cN/dtexとなる伸長-応力曲線が得られることが必要である。かかる範囲の伸度と15%伸長応力を実現した伸長-応力曲線が得られる仮撚り用ポリアミド繊維とすることで、加工張力を維持した状態で実撚り数を上げることが可能となる。その結果、単糸繊度1detx以下の極細繊維でありながら、優れた捲縮性の仮撚り加工糸が得られる。さらに好ましくは、伸度70~90%、15%伸長応力1.1~1.5cN/dtexとなる伸長-応力曲線が得られることが好ましい。
【0018】
本発明の仮撚り用ポリアミドマルチフィラメントの伸度は70~100%であり、さらに好ましくは70~90%である。伸度が70%未満であると、仮撚り加工時の実撚り数を上げられないため捲縮性が得られない。100%を超えると、15%伸長応力が低くなりすぎて、仮撚り加工時の加工張力も上げられないため、捲縮性が得られない。また、繊維構造内の非晶部が多くなり、製糸巻き取り時に残留応力による非晶部の結晶化が進行しやすくなる。その結果、巻き取り後に繊維が伸長することで、巻き取りパッケージでの糸層がずれて破裂する現象が発生し、生産安定性に欠ける。
【0019】
本発明の仮撚り用ポリアミドマルチフィラメントの15%伸長応力は、1.1~2.0cN/dtexであり、さらに好ましくは1.1~1.5cN/dtexである。1.1cN/dtex未満であると、仮撚り加工時の加工張力を上げられないため、捲縮性が得られない。1.5cN/dtexを超えると、毛羽や単糸切れを起こしやすく仮撚り加工時の実撚りが入りにくくなるため、捲縮性が得られない。かかる範囲にすることで、仮撚り加工張力を上げた状態をキープすることができ、効率よく捲縮性が得られる。
【0020】
本発明の仮撚り用ポリアミドマルチフィラメントの酸化チタンは、0.1~3.0重量%含有することが好ましい。酸化チタンは、優れた白色顔料として知られ、艶消し剤として広くポリアミドフィラメントに使用されており、その酸化チタン量に応じてポリアミドマルチフィラメントのラインアップが存在している。酸化チタン量が少ないほど、透明度が増し発色性が向上するため、本発明では、0.1重量%以上の場合に発色性向上効果がより発揮できる。一方、酸化チタン量が多いほど、白っぽく見えて発色性が低下するため、発色性向上効果がより発揮できるが、捲縮性の観点から3.0重量%以下とすることが好ましい。酸化チタンとしては、一般的に白色顔料として使用される不活性のものが好ましく、繊維の物理特性の低下を防ぐために平均粒径1μm以下の酸化チタンが好ましく用いられる。
【0021】
本発明の仮撚り用ポリアミドマルチフィラメントの粘度は、衣料用繊維を製造するに常識的な範囲の粘度を選択すればよいが、98%硫酸相対粘度が2.0以上4.0以下のポリマを使用することが好ましい。2.0以上であると、ポリアミドの分子量が増加し、所望の伸度が得られる。4.0以下であると、紡糸時の溶融ポリマの押し出し圧力は低く抑えられる。さらに紡糸中の押し出し圧力上昇も抑えられるため、安定的な製糸性が得られる。
【0022】
本発明の仮撚り用ポリアミドマルチフィラメントの総繊度やフィラメント数は特に限定しないが、衣料用長繊維素材として使用することを考慮すると15~235dtexが好ましく、フィラメント数は15~235フィラメントが好ましい。
【0023】
本発明の仮撚り用ポリアミドマルチフィラメントの断面形状は特に限定されるものではなく、例えば,丸断面の他、偏平断面、レンズ型断面、三葉断面、マルチローバル断面、3~8ヶの凸部と同数の凹部を有する異形断面、中空断面その他公知の異形断面でもよい。好ましい断面としては丸断面が紡糸安定性と優れたソフト性、ドレープ性付与の点で優れており、三葉断面やマルチローバル断面、およびマルチローバル断面と丸断面のフィラメントが混合した断面構成などは、布帛にした際に単糸間に高い空隙が得られ、毛細管現象に起因する高吸水性や、高嵩密度性の付与において優れているため、好ましく用いられる。
【0024】
本発明で用いるポリアミドポリマーの製造方法は特に限定されない。ポリアミドモノマーに、アミノ末端基量調整剤であるジアミン、および艶消し剤の酸化チタンを添加し、公知の重縮合を行うことで所望のアミノ基量、酸化チタン含有量のポリアミドを製造することができる。ジアミンおよび酸化チタンは原料段階で投入、または重縮合反応の途中で添加することもできる。また、製造したポリアミドポリマーを2種類以上ブレンドすることで所望のアミノ基量、酸化チタン含有量とすることもできる。ブレンド方法は特に限定されず、押出し機等による溶融混合やペレットを混合するドライブレンド等が挙げられる。
【0025】
アミノ末端基調整剤のジアミンとして例えばエチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,13-ジアミノトリデカン、1,14-ジアミノテトラデカン、1,15-ジアミノペンタデカン、1,16-ジアミノヘキサデカン、1,17-ジアミノヘプタデカン、1,18-ジアミノオクタデカン、1,19-ジアミノノナデカン、1,20-ジアミノエイコサン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタンなどの脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミン、ビス-(4-アミノヘキシル)メタンのような脂環式ジアミン、キシリレンジアミンのような芳香族ジアミンなどがある。
【0026】
本発明で用いるポリアミドポリマーは、さらに分子量調節のために公知の末端封止剤を添加することができる。末端封止剤としては、モノカルボン酸が好ましい。その他、無水フタル酸などの酸無水物、モノイソシアネート、モノカルボン酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類などを挙げることができる。末端封止剤として使用できるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するものであれば特に制限はないが、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソブチル酸などの脂肪族モノカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸などの脂環式モノカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、α-ナフタレンカルボン酸、β-ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸などの芳香族モノカルボン酸などを挙げることができる。本発明では、これらのモノカルボン酸を1種以上用いても良い。
【0027】
本発明の仮撚り用ポリアミドマルチフィラメントは、公知の溶融紡糸にて得ることができる。例えば、ポリアミドを溶融し、ギヤポンプにて計量・輸送し、紡糸口金から吐出し、糸条を形成する。口金下流側に設けたチムニー等の糸条冷却装置によって冷却風を吹き当てることにより糸条を室温まで均一に冷却した後、給油装置で給油するとともに集束し、流体交絡ノズル装置で糸条を交絡し、第一ゴデットローラーにて2500~4000m/分で引き取り、次の第二ゴデットローラーにて1.01~1.30倍の延伸を行った後に、3000m/分以上、好ましくは3200~4500m/分で巻き取ることで製造することができる。
【0028】
本発明の仮撚り用ポリアミドフィラメントは、単糸繊度が1.0dtex以下の極細繊維であるため、紡糸工程において、糸条冷却方式に限定はないが、環状型冷却装置を用いることが好ましい。かかる冷却装置を用いることで、糸条の固化点を高く、均一に冷却することができ、長手方向の繊度ムラを抑制し、均一な糸条が得られる。
【0029】
本発明の仮撚り用ポリアミドフィラメントの製造方法において、上述したポリアミドを用いて、なおかつ、ドラフト延伸と機械延伸をコントロールする紡糸条件を採用する。すなわち、糸条が収束した後の紡糸張力、引き取り速度、延伸倍率などの条件を適宜組み合わせることにより、伸度70~100%、15%伸長応力1.1~2.0cN/dtexとなる伸長-応力曲線が得られる仮撚り用ポリアミドマルチフィラメントが得られる。
【0030】
引取工程において、紡糸張力を0.8cN/dtex以下でローラーに引き取ることが好ましい。ここでいう、紡糸張力は、糸条冷却装置後の給油部から流体交絡ノズル装置までの間で測定する値である。0.8cN以下とすることにより、ドラフト延伸を押さえることができる。さらに好ましくは、0.2~0.6cN/dtexである。この紡糸張力は引き取り速度によって調整することができ、引き取り速度が遅くなれば紡糸張力は低くなる。特に、単糸繊度1.0デシテックス以下の本発明のポリアミドマルチフィラメントにおいては、引き取り速度を2500~4000m/分、さらに好ましくは2800~3900m/分にすることで、紡糸張力を0.8cN/dtex以下とすることができる。ドラフト延伸を押さえることによって、伸度を70~100%とすることができる。
【0031】
引き取り速度が速くなると糸条の配向が進み、得られた繊維の伸長時の応力が高くなり、引き取り速度が遅くなると糸条の配向が進まないため得られた繊維の伸長時の応力が相対的に低いままである。本発明の仮撚り用ポリアミドフィラメントの好ましい引き取り速度は2500~4000m/minであるため、糸条の配向が進まず、得られるポリアミドマルチフィラメントの伸長-応力曲線は、高伸度となるものの、応力が相対的に低いままであり、15%伸長応力も低い。そのため、延伸工程において、第一ゴデットローラーと第二ゴデットローラーの周速度の比に従って1.01~1.30の倍率で延伸することが好ましい。機械延伸を入れることによって、糸条の配向が進み、高伸度を維持しつつ、15%伸長応力を1.1~2.0cN/dtexとすることができる。さらに好ましくは、引き取り速度2800~3900m/分、延伸倍率を1.01~1.25の条件を組み合わせることで、伸度70~90%、15%伸長応力を1.1~1.5cN/dtexとなる伸長-応力曲線が得られる仮撚り用ポリアミドマルチフィラメントが得られる。
【0032】
本発明の仮撚り用ポリアミドマルチフィラメントは、一度巻き取られた後、次工程である仮撚り工程へと輸送され、捲縮加工される。
【0033】
本発明の仮撚り用ポリアミドマルチフィラメントの仮撚り加工方法については、公知の仮撚り加工にて得ることができる。例えば、延伸摩擦仮撚加工装置にて仮撚加工が施される。延伸摩擦仮撚加工装置に供給されたポリアミドマルチフィラメントは、所望の糸道ガイドや流体処理装置を介して供給ローラーへと送られる。その後、加熱された仮撚ヒーター、冷却板および延伸摩擦仮撚を行う施撚体を通して延伸ローラーに導かれ、仮撚糸として巻き取られる。本発明において延伸摩擦仮撚としては、延伸摩擦仮撚加工装置の供給ローラー以前に熱ピンやホットプレートによる延伸を加えられた後に摩擦仮撚加工を行ってもよいし、供給ローラーと延伸ローラーの間で延伸されながら摩擦仮撚加工を行ってもよい。
【0034】
本発明でいう延伸摩擦仮撚加工において、仮撚ヒーターの温度、すなわち仮撚加工温度を150~200℃とすることが好ましい。一つの目安として熱板を用いた場合、ポリカプロアミド(ナイロン6)で170~190℃、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)で180~200℃とすることを推奨する。かかる範囲の加工温度であればポリアミドマルチフィラメントが軟化せずに高温のヒーター上を安定して走行することができる。
【0035】
冷却方法としても冷却板を用いても、空冷、水冷などが挙げられ、限定されないが、効率と糸のダメージを考えて、冷却板を用いることが好ましい。
【0036】
本発明は、上記の方法にて得られるポリアミドマルチフィラメントを供給して延伸摩擦仮撚加工する場合において、その加撚張力(T1)と解撚張力(T2)の比(T2/T1) が0.9以下であることが好ましい。比(T2/T1)が0.9以下、すなわち解撚張力(T2)が小さい場合には、毛羽の発生を抑制でき、また未解撚を少なくすることが可能となること、および施撚体後の糸切れも少なくなるため、安定した延伸摩擦仮撚加工が可能となり、得られた仮撚加工糸も品位に優れたものとなる。このことから、T2/T1は0.6~0.9であることが好ましい。
【0037】
本発明での延伸摩擦仮撚加工においては、仮撚数(単位:T/m)に仮撚り後の繊度(単位:dtex)の平方根を積算した数値(以下、仮撚係数と称する)が、24,000~32,000の範囲となるよう加工すると好ましい。
【0038】
本発明での延伸摩擦仮撚加工においては、施撚体の表面速度と延伸ローラーの速度である糸条走行速度の比(施撚体の表面速度/糸条走行速度)が1.0~1.5の範囲であることが好ましい。(施撚体の表面速度/糸条走行速度)を1.0 以上にすることで、加撚張力(T1)と解撚張力(T2)のバランスが良く、毛羽、糸切れの無い延伸摩擦仮撚加工を行うことができる。また、(施撚体の表面速度/糸条走行速度)を1.5以下にすることで、施撚体の表面摩耗が抑制され、数十時間に及ぶ連続運転においても糸長手方向の品質が安定する他、毛羽や糸切れのない延伸摩擦仮撚加工が実現される。(施撚体の表面速度/糸条走行速度)は、より好ましくは1.01~1.40である。
【0039】
本発明での延伸摩擦仮撚加工に際して、その施撚体は特に限定されるものではないが、繊度や撚り数に応じてピンタイプ、フリクションタイプ及びベルトニップタイプなどの摩擦仮撚具などを用いることができる。
【0040】
施撚方法としてもスピンドル方式や3軸ツイスター方式、ベルトニップ方式など限定されるものではない。捲縮を強めたいときにはスピンドル方式を用いることが好ましいし、加工速度を上げて生産コストを下げたいときには摩擦仮撚方式である3軸ツイスター、ベルトニップを用いることが好ましい。
【0041】
さらに、仕上げ剤を仮撚り加工糸の重量に対して1.0~3.0%程度付与して仮撚り加工糸パッケージを形成する。また、仕上げ剤付与前後で加工糸の集束性を向上する目的でインターレースを付与しても良い。
【0042】
本発明のポリアミド仮撚り加工糸の伸縮復元率CRは、25~40%である。さらに好ましくは、25~40%である。25%未満であると、捲縮性が得られず、嵩高性が低くなる。CRは高いほど捲縮性に優れ、嵩高性が増して好ましいが、本発明の単糸繊度1.0dtex以下においてはその上限値は40%である。
【実施例】
【0043】
以下実施例により本発明をさらに詳細に説明する。実施例中の各測定値は次の方法に従った。
【0044】
A.硫酸相対粘度
ナイロンチップまたは繊維試料を秤量し、98重量%濃硫酸に試料濃度(C)が1g/100mlとなるように溶解し、該溶液についてオストワルド粘度計にて25℃での落下秒数(T1)を測定する。さらに試料を溶解していない98重量%濃硫酸について、同様に25℃での落下秒数(T2)を測定した後、試料の相対粘度(ηr)を下式により算出する。
(ηr)=(T1/T2)+{1.891×(1.000-C)}。
【0045】
B.総繊度および単糸繊度
100m/周の検尺器に繊維試料をセットし、450回転させて、ループ状かせを作成し、熱風乾燥機にて乾燥後(105±2℃×60分)、天秤にてかせ質量を量り、公定水分率を乗じた値から総繊度を算出した。また、得られた繊度をフィラメント数で割り返した値を単糸繊度とした。尚、ナイロン6の公定水分率は、4.5%とした。
【0046】
C.酸化チタン含有量
繊維試料5gを磁性ルツボに入れ、電気炉を用いて1000℃で灰化し、灼熱残分を酸化チタンとして重量%で表した。
【0047】
D.アミノ末端基量
乾燥処理を行なったナイロンチップまたは繊維試料1gを精秤し、フェノール・エタノール混合溶媒(83.5:16.5、体積比)25mlに溶解後、0.02N塩酸水溶液を用いて中和滴定した際の滴定からアミノ末端基量を測定した。なお、本明細書中のアミノ末端基量数値は、×10-5mol/gで表す。
【0048】
E.15%伸長応力
繊維試料を、ORIENTEC社製TENSIRON RPC-1210Aを使用し、つかみ間隔50cmで把持し、50cm/minの引っ張り速度で伸長させ、57.5cmまで伸長させたときの張力を3回測定し、その平均値を繊維の繊度で割り返した値とした。
【0049】
F.伸度および強度
繊維試料を、ORIENTEC社製TENSIRON RPC-1210Aを使用し、つかみ間隔50cmで把持し、50cm/minの引っ張り速度で伸張させ、糸が破断した際の引っ張り長を50cmで割り、100を掛けた値とした。また、強度は糸が破断するまでの最大伸長応力を繊度で除した値とした。いずれも3回測定し、その平均値とした。
【0050】
G.伸縮復元率(CR)、
仮撚り加工糸を周長1.0mの検尺機にて10回巻きしてカセ取りした後、このカセに繊度×0.002×巻取回数×2/1.111gの初荷重をかけて、90℃×20分間熱水処理し、脱水後12時間以上放置する。放置後のカセに初荷重と繊度×0.1×巻取回数×2/1.111gの測定荷重をかけて水中に垂下し2分間放置する。放置したカセの長さを測り、Lとする。さらに、測定荷重を除き初荷重だけにした状態で3分間放置し、カセの長さを測り、L1とする。次式により、伸縮復元率CRを求めた。
【0051】
伸縮復元率CR(%)={(L-L1)/L}×100 。
【0052】
本発明では、CR=25%以上を捲縮性に優れるとした。 H.筒編み地作製・染色
筒編機へ仮撚り加工糸を1本で給糸し、筒編機にて度目が50となるように調整して作製した。得られた筒編み地をノニオン界面活性剤(第一工業製薬社製、ノイゲンSS)2g/l水溶液を編み地1gに対し100ml用意し、60℃にて30分洗浄した後、流水にて20分水洗し、脱水機にて脱水、風乾した。その後、以下の染料及び染色助剤を用いて染色した。
酸性染料:Alizarine Bril Sky Blue RLW 5.0質量%
染色助剤:酢酸 1.5%
酸性染料、染色助剤を含む染色浴に常圧98℃設定で45分間染色した後、流水にて20分水洗し、脱水機にて脱水、風乾した。
【0053】
I.発色性
発色性の評価指標としては、上記H項で得られた筒編み地をスガ試験機(株)製カラーメーターSM-Tを用いて、L値を3回測定した平均値より算出した。
【0054】
L値の結果判定については、下記に示す範囲を基準とし、◎と○を合格とした。
【0055】
◎:30未満
○:31以上~35未満
×:35以上
J.捲縮性
捲縮性の評価指標としては、上記H項で得られた筒編み地について、膨らみ感やソフト感を10人のパネラーに5点満点で官能評価し、その平均が3点以上を合格とした。
【0056】
[実施例1]
ヘキサメチレンジアミン620.1gをイオン交換水1400g中に溶解したジアミン水溶液を、撹拌しているところに779.9gのアジピン酸を加えていき、ヘキサメチレンジアミン-アジピン酸塩の53重量%水溶液2800gを調製した。その後、得られたヘキサメチレンジアミン-アジピン酸塩水溶液を、螺旋帯撹拌翼をもった撹拌機と熱媒ジャケットを装備した内容積5Lのバッチ式重合缶に仕込んだ(原料調製工程)。次に重合缶内を密閉化し、充分に窒素置換した後に熱媒を加熱して水溶液を濃縮した(濃縮工程)。このとき缶内温度を200℃、缶内圧力(ゲージ圧)を0.2MPaに制圧しながら、水溶液中の原料の濃度が85重量%(濃縮後水分率15%)となるまで濃縮した。缶内の水溶液の濃度は留出水量から判断した。そして、濃縮が終了後、缶内圧力(ゲージ圧)1.7MPaに到達するまで昇圧した(昇圧工程)。この後缶内圧力(ゲージ圧)を1.7MPaで制圧し、缶内温度が255℃となるまで維持した(制圧工程)。さらに缶内温度255℃到達後、50分間かけて大気圧まで放圧した(放圧工程)。減圧終了時のポリマの温度が285℃となるよう加熱温度を調節し、さらに缶内圧力(ゲージ圧)を-13kPaまで減じ20分間維持して重縮合反応を停止した(減圧工程)。その後、缶内に0.5MPa(絶対圧)の窒素圧をかけ、重縮合により得られたポリアミド樹脂を直径約3mmのストランド状に押し出し、長さ約4mmにカッティングし、ペレットを得た(吐出工程)。このペレット中の未反応成分を98℃の熱水で抽出し、真空乾燥機で乾燥した。得られたポリアミドチップのηrは2.6、アミノ末端基量は8.1×10-5mol/g、酸化チタン含有量は0.3重量%であった。
【0057】
上記の通り得られたナイロン66チップを紡糸温度294℃で溶融した後、丸孔を有する吐出孔を68個有する紡糸口金から吐出させ(吐出量:16.09g/分)、冷却、ガイド給油によりエマルジョン油剤を付与後、交絡圧空圧0.2MPaにて交絡を付与し、第一ゴデットローラーに片掛けして3848m/分で引き取り、巻き取ること無く、第二ゴデットローラーに片掛けして、第一と第二ゴデットローラー間で1.02倍に延伸、巻取速度3800m/分で巻き取り、44.1dtex、68フィラメントのナイロン66マルチフィラメントを得た。
【0058】
次いで、得られたナイロン66マルチフィラメントを3軸摩擦型フリクションディスクタイプの延伸摩擦仮撚装置にて延伸摩擦仮撚加工を行った。得られたナイロン66マルチフィラメントを、周速550m/分の供給ローラーから、200℃に加熱された接触型仮撚ヒーターに供給し、1.6倍に延伸、ディスク回転数7500rpm、ディスク径φ51、D/Y比2.18、仮撚係数30,000にて延伸同時仮撚り加工を行い、35dtex、68フィラメントのナイロン66仮撚加工糸を得た。得られた原糸および加工糸の特性評価を行った。結果を表1に示す。
【0059】
[実施例2]
丸孔を有する吐出孔を144個有する紡糸口金から吐出させ(吐出量:16.09g/分)、3875m/分で引き取った以外は実施例1と同様の製造方法で44.0dtex、144フィラメントのナイロン66マルチフィラメントを得た。次いで、得られたナイロン66マルチフィラメントを1.4倍に延伸した以外は実施例1と同様の加工方法で、35dtex、144フィラメントのナイロン66仮撚糸を得た。得られた原糸および加工糸の特性評価を行った。結果を表1に示す。
【0060】
[実施例3]
丸孔を有する吐出孔を40個有する紡糸口金から吐出させ(吐出量:14.35g/分)、3875m/分で引き取った以外は実施例1と同様の製造方法で39.7dtex、40フィラメントのナイロン66マルチフィラメントを得た。次いで、得られたナイロン66マルチフィラメントを1.8倍に延伸した以外は実施例1と同様の加工方法で、31dtex、40フィラメントのナイロン66仮撚糸を得た。得られた原糸および加工糸の特性評価を行った。結果を表1に示す。
【0061】
[実施例4]
ナイロン66のアミノ末端基量が7.0×10-5mol/g、になるようにヘキサメチレンジアミン量を調整した以外は実施例1と同様の製造方法で44.0dtex、68フィラメントのナイロン66マルチフィラメントを得た。次いで、得られたナイロン66マルチフィラメントを1.4倍に延伸した以外は実施例1と同様の加工方法で35dtex、68フィラメントのナイロン66仮撚糸を得た。得られた原糸および加工糸の特性評価を行った。結果を表1に示す。
【0062】
[実施例5]
ナイロン66のアミノ末端基量が14.5×10-5mol/gになるようにヘキサメチレンジアミン量を調整した以外は実施例1と同様の製造方法で44.0dtex、68フィラメントのナイロン66マルチフィラメントを得た。次いで、得られたナイロン66マルチフィラメントを1.8倍に延伸した以外は実施例1と同様の加工方法で、35dtex、68フィラメントのナイロン66仮撚糸を得た。得られた原糸および加工糸の特性評価を行った。結果を表1に示す。
【0063】
[実施例6]
第一ゴデットローラーに片掛けして3200m/分で引き取り、巻き取ること無く、第二ゴデットローラーに片掛けして、第一と第二ゴデットローラー間で1.25倍に延伸した以外は実施例1と同様の製造方法で44.1dtex、68フィラメントのナイロン66マルチフィラメントを得た。次いで、得られたナイロン66マルチフィラメント、1.4倍に延伸した以外は実施例1と同様の加工方法で、35dtex、68フィラメントのナイロン66仮撚糸を得た。得られた原糸および加工糸の特性評価を行った。結果を表1に示す。
【0064】
[実施例7]
第一ゴデットローラーに片掛けして3150m/分で引き取り、巻き取ること無く、第二ゴデットローラーに片掛けして、第一と第二ゴデットローラー間で1.30倍に延伸した以外は実施例1と同様の製造方法で44.1dtex、68フィラメントのナイロン66マルチフィラメントを得た。次いで、得られたナイロン66マルチフィラメント、1.4倍に延伸した以外は実施例1と同様の加工方法で、35dtex、68フィラメントのナイロン66仮撚糸を得た。得られた原糸および加工糸の特性評価を行った。結果を表1に示す。
【0065】
[実施例8]
第一ゴデットローラーに片掛けして3500m/分で引き取り、巻き取ること無く、第二ゴデットローラーに片掛けして、第一と第二ゴデットローラー間で1.02倍に延伸、巻取速度3500m/分で巻き取った以外は実施例1と同様の製造方法で44.1dtex、68フィラメントのナイロン66マルチフィラメントを得た。次いで、得られたナイロン66マルチフィラメントを、1.8倍に延伸した以外は実施例1と同様の加工方法で、35dtex、68フィラメントのナイロン66仮撚糸を得た。得られた原糸および加工糸の特性評価を行った。結果を表1に示す。
【0066】
[実施例9]
第一ゴデットローラーに片掛けして2800m/分で引き取り、巻き取ること無く、第二ゴデットローラーに片掛けして、第一と第二ゴデットローラー間で1.11倍に延伸、巻取速度2950m/分で巻き取った以外は実施例1と同様の製造方法で44.1dtex、68フィラメントのナイロン66マルチフィラメントを得た。次いで得られたナイロン66マルチフィラメントを、1.8倍に延伸した以外は実施例1と同様の加工方法で、35dtex、68フィラメントのナイロン66仮撚糸を得た。得られた原糸および加工糸の特性評価を行った。結果を表1に示す。
【0067】
[実施例10]
第一ゴデットローラーに片掛けして2500m/分で引き取り、巻き取ること無く、第二ゴデットローラーに片掛けして、第一と第二ゴデットローラー間で1.30倍に延伸、2980m/分で巻き取った以外は実施例1と同様の製造方法で44.1dtex、68フィラメントのナイロン66マルチフィラメントを得た。次いで、得られたポリアミドマルチフィラメントを、1.8倍に延伸した以外は実施例1と同様の加工方法で、35dtex、68フィラメントのナイロン66仮撚糸を得た。得られた原糸および加工糸の特性評価を行った。結果を表1に示す。
【0068】
[実施例11]
酸化チタン含有量を1.9重量%に調整した以外は実施例1と同様の製造方法で44.0dtex、68フィラメントのナイロン66マルチフィラメントを得た。次いで、得られたナイロン66マルチフィラメントを、1.7倍に延伸した以外は実施例1と同様の加工方法で、35dtex、68フィラメントのナイロン66仮撚糸を得た。得られた原糸および加工糸の特性評価を行った。結果を表1に示す。
【0069】
[実施例12]
容量200リットルの重合反応装置にε-カプロラクタムの85%水溶液を175kg、ヘキサメチレンジアミンを460g仕込み溶解させ、均一な溶液にし、重合反応装置内を窒素シールした後、反応装置の内圧が0.98MPaになるまで1時間で昇温させ、この圧力を維持したまま250℃まで昇温を続け、250℃到達後、40分かけて大気圧になるまで放圧を行い、その後大気圧で、250℃で50分保持した後、ポリマを吐出して冷却/カッティングし、ペレット状にし、このペレット中の未反応成分をペレットに対して20倍量の98℃の熱水で抽出、真空乾燥機で乾燥し、得られたポリアミドチップのηrは2.6、アミノ末端基量は8.1×10-5mol/g、酸化チタン含有量は0.3重量%であった。
【0070】
上記の通り得られたナイロン6チップとした以外は実施例1と同様の製造方法で44.0dtex、68フィラメントのナイロン6マルチフィラメントを得た。次いで、170℃のヒーターにて加熱し、1.7倍に延伸した以外は実施例1と同様の加工方法で、35dtex、68フィラメントのナイロン6仮撚糸を得た。得られた原糸および加工糸の特性評価を行った。結果を表1に示す。
【0071】
【0072】
[比較例1]
ナイロン66のアミノ末端基量が5.1×10-5mol/gになるようにヘキサメチレンジアミン量を調整した以外は実施例1と同様の製造方法で44.0dtex、68フィラメントのナイロン66マルチフィラメントを得た。次いで、得られたナイロン66マルチフィラメントを、1.2倍に延伸した以外は実施例1と同様の加工方法で、35dtex、68フィラメントのナイロン66仮撚糸を得た。得られた原糸および加工糸の特性評価を行った。結果を表1に示す。アミノ末端基量が低いナイロン66加工糸は、発色性、捲縮性に劣っていた。
【0073】
[比較例2]
ナイロン66のアミノ末端基量が17.0×10-5mol/gになるようにヘキサメチレンジアミン量を調整した以外は実施例1と同様の製造方法で44.0dtex、68フィラメントのナイロン66マルチフィラメントを得た。次いで、得られたナイロン66マルチフィラメントを、1.9倍に延伸した以外は実施例1と同様の加工方法で、35dtex、68フィラメントのナイロン66仮撚糸を得た。得られた原糸および加工糸の特性評価を行った。結果を表1に示す。アミノ末端基量が高いナイロン66マルチフィラメントは、伸度が高く、15%応力が低く、仮撚糸の捲縮性に劣っていた。
【0074】
[比較例3]
第一ゴデットローラーに片掛けして3848m/分で引き取り、巻き取ること無く、第二ゴデットローラーに片掛けして、第一と第二ゴデットローラー間で1.00倍と延伸しないとした以外は実施例1と同様の製造方法で44.1dtex、68フィラメントのナイロン66マルチフィラメントを得た。次いで、得られたナイロン66マルチフィラメントを、1.7倍に延伸した以外は実施例1と同様の加工方法で、35dtex、68フィラメントのナイロン66仮撚糸を得た。得られた原糸および加工糸の特性評価を行った。結果を表1に示す。機械延伸せず、ドラフト延伸のみで得られたナイロン66マルチフィラメントは、伸度が高く、15%応力が低く、仮撚糸の捲縮性に劣っていた。
【0075】
[比較例4]
第一ゴデットローラーに片掛けして3070m/分で引き取り、巻き取ること無く、第二ゴデットローラーに片掛けして、第一と第二ゴデットローラー間で1.35倍に延伸した以外は実施例1と同様の製造方法で44.1dtex、68フィラメントのナイロン66マルチフィラメントを得た。次いで、得られたナイロン66マルチフィラメントを、1.2倍に延伸した以外は実施例1と同様の加工方法で、35dtex、68フィラメントのナイロン66仮撚糸を得た。得られた原糸および加工糸の特性評価を行った。結果を表1に示す。機械延伸を高く設定して得られたナイロン66マルチフィラメントは、糸条の配向が進み、延伸糸の特性に近づき、伸度が低く、15%応力が高く、仮撚糸の捲縮性に劣っていた。
【0076】
[比較例5]
第一ゴデットローラーに片掛けして4160m/分で引き取り、巻き取ること無く、第二ゴデットローラーに片掛けして、第一と第二ゴデットローラー間で1.02倍に延伸、巻取速度4000m/分で巻き取った以外は実施例1と同様の製造方法で44.1dtex、68フィラメントのナイロン66マルチフィラメントを得た。次いで、得られたナイロン66マルチフィラメントを、1.3倍に延伸した以外は実施例1と同様の加工方法で、35dtex、68フィラメントのナイロン66仮撚糸を得た。得られた原糸および加工糸の特性評価を行った。結果を表1に示す。ドラフト延伸を高く設定して得られたナイロン66マルチフィラメントは、伸度が低く、仮撚糸の捲縮性に劣っていた。
【0077】
[比較例6]
第一ゴデットローラーに片掛けして2400m/分で引き取り、巻き取ること無く、第二ゴデットローラーに片掛けして、第一と第二ゴデットローラー間で1.35倍に延伸、巻取速度2900m/分で巻き取った以外は実施例1と同様の製造方法で44.1dtex、68フィラメントのナイロン66マルチフィラメントを得た。次いで、得られたナイロン66マルチフィラメントを、1.9倍に延伸した以外は実施例1と同様の加工方法で、35dtex、68フィラメントのナイロン66仮撚糸を得た。得られた原糸および加工糸の特性評価を行った。結果を表1に示す。ドラフト延伸を低く設定して得られたナイロン66マルチフィラメントは、伸度が高く、15%応力が低く、仮撚糸の捲縮性に劣っていた。
【0078】
[比較例7]
ヘキサメチレンジアミン-アジピン酸塩の53重量%水溶液にε-カプロラクタムを5重量%添加した以外は実施例1と同様の製造方法でポリアミドチップを得た。得られたナイロン6成分を0.5%共重合したナイロン66チップを、実施例と同様の製造方法で、44.1dtex、68フィラメントのナイロン66共重合マルチフィラメントを得た。次いで、得られたナイロン66共重合マルチフィラメントを、1.5倍に延伸した以外は実施例1と同様の加工方法で、35dtex、68フィラメントのナイロン66共重合仮撚糸を得た。得られた原糸および加工糸の特性評価を行った。結果を表1に示す。ナイロン6成分を0.5%共重合して得られたナイロン66マルチフィラメントは、15%応力が低く、仮撚糸の捲縮性に劣っていた。
【0079】