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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20230530BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019141661
(22)【出願日】2019-07-31
(65)【公開番号】P2021024902
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100209679
【弁理士】
【氏名又は名称】廣 昇
(72)【発明者】
【氏名】曽根 篤
(72)【発明者】
【氏名】井上 弘康
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-078285(JP,A)
【文献】特表2002-544364(JP,A)
【文献】特開2005-298674(JP,A)
【文献】特開2003-213228(JP,A)
【文献】特開2003-342533(JP,A)
【文献】特開2013-088799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体層と、前記支持体層の厚み方向の少なくとも一方側に形成された樹脂層とを備える粘着シートであって、
前記樹脂層の表面に、深さが0.5μm以上10μm未満である溝が複数形成され、
前記溝は、前記樹脂層の面方向に対して平行でない内壁面Sを有し、
前記樹脂層に平行な平面に対して、前記樹脂層の表面を前記樹脂層の厚み方向に射影した際、前記樹脂層の表面全体の射影の面積に占める前記内壁面Sの射影の面積の割合が10%以下であり、
前記樹脂層の貯蔵弾性率が7.0×10Pa以上1.0×10Pa以下である、粘着シート。
【請求項2】
前記溝の深さが5μm未満である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記溝の開口幅が前記溝の深さよりも大きい、請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記溝が条列状に複数形成されている、請求項1~3のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項5】
条列状に複数形成されている前記溝のピッチが1000μm未満である、請求項4に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記樹脂層が、紫外線硬化型樹脂と、硬化剤とを含む紫外線硬化型樹脂組成物の硬化物からなり、
前記紫外線硬化型樹脂組成物中の前記硬化剤の含有割合が0.5質量%以上である、請求項1~5のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項7】
条列状に複数形成されている前記溝のピッチの標準偏差が1μm以上である、請求項5に記載の粘着シート。
【請求項8】
複数形成されている前記溝の開口幅の標準偏差が0.5μm以上である、請求項1~7のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項9】
複数形成されている前記溝の深さの標準偏差が0.5μm以上である、請求項1~8のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項10】
複数形成されている前記溝の幅方向の断面積の標準偏差が、前記溝の幅方向の断面積の平均値の3%以上である、請求項1~9のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項11】
前記内壁面Sの前記樹脂層の面方向に対する傾斜角度が0°超90°未満である、請求項1~10のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項12】
前記溝が前記樹脂層の面方向に対して平行な内壁面Pを有しない、請求項1~11のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項13】
前記溝の幅方向の断面形状が三角形である、請求項1~12のいずれかに記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、窓ガラス等の平滑な被着体に貼り付けて使用する粘着シートとして、支持体層と、支持体層の厚み方向の少なくとも一方側に形成された、粘着性を有する樹脂からなる樹脂層とを備える積層体が利用されている。そして、このような粘着シートは、例えば、遮熱性、断熱性等に優れる窓ガラス用の機能性フィルム;透明スクリーン;壁紙等の室内装飾材料をはじめとする建築用装飾材料;ポスター、ステッカー、ラベル等の広告宣伝用貼付材料;などの種々の用途に好適に使用することができる。なお、上述した粘着シートの支持体層の表面には、用途に応じて、印刷等の装飾が施されている。
【0003】
ここで、上述した粘着シートは、貼り付け時に、粘着シートの樹脂層と被着体との間の界面に気体(通常は、空気)が残留することなく、粘着シートの周縁から抜け出ることで、被着体と良好に密着する。そのため、粘着シートには、貼り付け時に気体が抜けやすいこと、即ち「エア抜け性」に優れていることが求められている。
【0004】
例えば、特許文献1では、基材シート表面に粘着剤層を有する粘着ラベルにおいて、上記粘着剤層に、凹部の底部分が基材シート面に達すると共に、両端部がラベル端縁部で開口してなる凹条溝を、間隔を開けて複数設けることにより、粘着ラベルを被着体に貼付する際に、空気が抜けやすくなることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-91317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術の粘着シートは、例えば、窓ガラス用の機能性フィルムおよび透明スクリーンなどの透明性が求められる用途に使用する場合、エア抜け性と透明性とを良好に両立する点に改善の余地があった。
【0007】
そこで、本発明は、エア抜け性と透明性とを良好に両立し得る粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行なった。そして、本発明者は、支持体層と、支持体層の厚み方向の少なくとも一方側に形成された所定の樹脂層とを備え、樹脂層の表面に溝が所定の条件で複数形成されてなる粘着シートであれば、エア抜け性と透明性とを良好に両立し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の粘着シートは、支持体層と、前記支持体層の厚み方向の少なくとも一方側に形成された樹脂層とを備える粘着シートであって、前記樹脂層の表面に、深さが0.5μm以上10μm未満である溝が複数形成され、前記溝は、前記樹脂層の面方向に対して平行でない内壁面Sを有し、前記樹脂層に平行な平面に対して、前記樹脂層の表面を前記樹脂層の厚み方向に射影した際、前記樹脂層の表面全体の射影の面積に占める前記内壁面Sの射影の面積の割合が10%以下であり、前記樹脂層の貯蔵弾性率が7.0×105Pa以上1.0×109Pa以下であることを特徴とする。このように、支持体層と、支持体層の厚み方向の少なくとも一方側に形成された、上記所定の貯蔵弾性率を有する樹脂層とを備え、樹脂層の表面に上記所定の範囲の深さの溝が複数形成され、溝が樹脂層の面方向に対して平行でない内壁面Sを有し、樹脂層の表面全体の射影の面積に対する内壁面Sの射影の面積の割合が上記所定値以下である粘着シートは、エア抜け性と透明性とを良好に両立することができる。
なお、樹脂層に平行な平面に対して、樹脂層の表面を樹脂層の厚み方向に射影した際、樹脂層の表面全体の射影の面積に占める溝の内壁面Sの射影の面積の割合は、樹脂層に形成された溝の形状、寸法およびピッチ、並びに、樹脂層の表面の面積などに基づいて算出することができる。
また、樹脂層の貯蔵弾性率は、本明細書の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0010】
ここで、本発明の粘着シートは、前記溝の深さが5μm未満であることが好ましい。このように、溝の深さが上記所定値未満であれば、粘着シートの透明性を更に高めることができる
【0011】
また、本発明の粘着シートは、前記溝の開口幅が前記溝の深さよりも大きいことが好ましい。このように、溝の開口幅が溝の深さよりも大きければ、粘着シートのエア抜け性を更に高めることができる。
【0012】
さらに、本発明の粘着シートは、前記溝が条列状に複数形成されていることが好ましい。このように、溝が条列状に複数形成されていれば、粘着シートのエア抜け性を更に高めることができる。
【0013】
また、本発明の粘着シートは、条列状に複数形成されている前記溝のピッチが1000μm未満であることが好ましい。このように、溝のピッチが上記所定値未満であれば、粘着シートのエア抜け性を更に高めると共に、粘着シートにおいて溝に起因する縞模様が視認されること(以下、「ストライプ感」と称することがある)を抑制することができる。
【0014】
さらに、本発明の粘着シートは、前記樹脂層が、紫外線硬化型樹脂と、硬化剤とを含む紫外線硬化型樹脂組成物の硬化物からなり、前記紫外線硬化型樹脂組成物中の前記硬化剤の含有割合が0.5質量%以上であるが好ましい。このように、樹脂層が、紫外線硬化型樹脂と硬化剤とを含む紫外線硬化型樹脂組成物の硬化物からなり、紫外線硬化型樹脂組成物中の硬化剤の含有割合が上記所定値以上であれば、粘着シートのエア抜け性と透明性とを更に良好に両立することができる。
【0015】
また、本発明の粘着シートは、条列状に複数形成されている前記溝のピッチの標準偏差が1μm以上であることが好ましい。このように、条列状に複数形成されている溝のピッチの標準偏差が上記所定値以上であれば、光の回折によって粘着シートに虹模様が観察される「虹彩現象」を抑制することができる。
【0016】
さらに、本発明の粘着シートは、複数形成されている前記溝の開口幅の標準偏差が0.5μm以上であることが好ましい。このように、複数の溝の開口幅の標準偏差が上記所定値以上であれば、粘着シートにおける虹彩現象を抑制することができる。
【0017】
また、本発明の粘着シートは、複数形成されている前記溝の深さの標準偏差が0.5μm以上であることが好ましい。このように、複数の溝の深さの標準偏差が上記所定の値以上であれば、粘着シートにおける虹彩現象を抑制することができる。
【0018】
さらに、本発明の粘着シートは、複数形成されている前記溝の幅方向の断面積の標準偏差が、前記溝の幅の断面積の平均値の3%以上であることが好ましい。このように、複数の溝の短手方向の断面積(断面形状の面積)の標準偏差が、上記所定値以上であれば、粘着シートにおける虹彩現象を抑制することができる。
【0019】
また、本発明の粘着シートは、前記内壁面Sの前記樹脂層の面方向に対する傾斜角度が0°超90°未満であることが好ましい。内壁面Sの樹脂層の面方向に対する傾斜角度が0°超90°未満であれば、粘着シートのエア抜け性を更に高めることができる。
【0020】
さらに、本発明の粘着シートは、前記溝が前記樹脂層の面方向に対して平行な内壁面Pを有しないことが好ましい。このように、溝が樹脂層の面方向に対して平行な内壁面Pを有しなければ、粘着シートにおける虹彩現象を抑制することができる。
【0021】
また、本発明の粘着シートは、前記溝の幅方向の断面形状が三角形であることが好ましい。このように、溝の幅方向の断面形状が三角形であれば、粘着シートにおける虹彩現象を抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、エア抜け性と透明性とを良好に両立し得る粘着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の粘着シートの一例の平面図である。
図2】本発明の粘着シートの一例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0025】
(粘着シート)
本発明の粘着シートは、支持体層と、支持体層の厚み方向の少なくとも一方側に形成された所定の樹脂層とを備え、樹脂層の表面に所定の条件で溝が複数形成されてなることを特徴とする。ここで、本発明の粘着シートは、窓ガラス等の平滑な被着体に貼り付けて使用することができる。そして、本発明の粘着シートは、窓ガラス等の平滑な被着体に貼り付けて使用した際に、エア抜け性と透明性とを良好に両立することができる。また、本発明の粘着シートは、平滑な被着体に貼付された後であっても、剥離および再貼付を容易に行なうことできる。即ち、本発明の粘着シートはリワーク性にも優れている。
したがって、本発明の粘着シートは、窓ガラス用の機能性フィルム;透明スクリーン;壁紙等の室内装飾材料をはじめとする建築用装飾材料;ポスター、ステッカー、ラベル等の広告宣伝用貼付材料;などの用途に好適に使用することができる。
なお、本発明の粘着シートは、本発明の所望の効果が得られる範囲内で、上述した支持体層および樹脂層以外のその他の部材を有していてもよいものとする。例えば、本発明の粘着シートは、本発明の所望の効果が得られる限り、上述した支持体層および樹脂層以外の他の層を、支持体層と樹脂層との間に備えていてもよい。
【0026】
<支持体層>
本発明の粘着シートは、支持体層を備えている。支持体層を構成する材料としては、支持体層が後述する樹脂層を支持可能であれば特に限定されない。支持体を構成する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;環状ポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;アクリル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂が挙げられる。これらの樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
なお、支持体層には、本発明の所望の効果が得られる範囲内で、上述した樹脂以外に、赤外線吸収材料、紫外線吸収材料、蛍光材料、各種無機粒子、可塑剤、酸化防止剤等のその他の成分が含まれていてもよいものとする。
【0027】
支持体層の厚みは、本発明の所望の効果が得られる範囲内で適宜設定可能であり、例えば、30μm以上であることが好ましく、80μm以上であることがより好ましく、100μm以上であることが更に好ましく、1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、250μm以下であることが更に好ましい。支持体層の厚みが上記下限以上であれば、粘着シートの強度を良好に維持することができる。一方、支持体層の厚みが上記上限以下であれば、粘着シートの透明性を更に高めることができる。
【0028】
また、支持体層は透明性に優れていることが好ましい。具体的に、支持体層のヘイズは、10%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましく、3%以下であることが更に好ましい。支持体層のヘイズが上記所定値以下であれば、粘着シートの透明性を更に高めることができる。
なお、支持体層のヘイズは、JIS K7136に準拠し、日本電色株式会社製「NDH4000」を用いて測定することができる。
【0029】
さらに、支持体層の表面粗さRaは、100nm未満であることが好ましい。
なお、表面粗さRaは、AFM(原子間力顕微鏡)により測定することができる。
また、支持体層の面方向に対する支持体層の表面の傾斜角度は、1°未満であることが好ましい。
【0030】
なお、支持体層は、単層構造であってもよいが、二層以上の層が積層してなる複層構造であってもよい。また、支持体層の厚み方向の少なくとも一方側の面には、粘着シートの用途に応じて、本発明の所望の効果が得られる範囲内で、印刷等の装飾が施されていてもよい。
【0031】
<樹脂層>
本発明の粘着シートは、上述した支持体層の厚み方向の少なくとも一方側に形成された所定の樹脂層を備える。なお、本発明の粘着シートにおいては、支持体層の厚み方向の両側に所定の樹脂層が形成されていてもよいし、支持体層の一方側に所定の樹脂層が形成されていてもよいが、通常は、支持体層の一方側に所定の樹脂層が形成されている。そして、粘着シートの樹脂層が形成されている側の面を窓ガラス等の平滑な被着体に密着させることで、粘着シートを被着体に貼り付けることができる。
【0032】
<<溝>>
ここで、樹脂層の表面には、溝が複数形成されている。樹脂層の表面に溝が複数形成されることで、粘着シートを窓ガラス等の平滑な被着体に貼り付ける際に、樹脂層と被着体との間の界面において気体(通常は、空気)が溝を通じて粘着シートの周縁から容易に抜け出し、樹脂層と被着体とが良好に密着するため、粘着シートのエア抜け性を高めることができる。
【0033】
以下、樹脂層の表面に複数形成された溝について図を交えて詳細に説明する。
【0034】
〔溝の平面形状〕
図1は、本発明の粘着シートの一例を模式的に示した平面図である。なお、図1は、粘着シート100を樹脂層10が形成されている側から観察した場合の平面図である。
【0035】
図1に示す粘着シート100のように、樹脂層10の表面11に溝30が条列状に複数形成されていることが好ましい。即ち、樹脂層10の表面11に複数の直線状の溝30が平行に形成されていることが好ましい。樹脂層10の表面11に溝30が条列状に複数形成されていれば、粘着シートのエア抜け性を更に高めることができる。
さらに、樹脂層10の表面11の一部の領域のみに溝30が条列状に複数形成されていてもよいが、図1に示す粘着シート100のように、樹脂層10の表面11の全体に亘って溝30が条列状に複数形成されていることが好ましい。樹脂層10の表面11の全体に亘って溝30が条列状に複数形成されていれば、粘着シートのエア抜け性を更に高めることができる。
【0036】
また、樹脂層10の表面11に溝30が条列状に複数形成されている場合、溝30のピッチ32は、50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、150μm以上であることが更に好ましく、1000μm未満であることが好ましく、800μm未満であることがより好ましく、600μm未満であることが更に好ましい。溝30のピッチが上記下限以上であれば、粘着シートの透明性を更に高めることができる。一方、溝30のピッチ32が上記上限未満であれば、粘着シートのエア抜け性を更に高めると共に、粘着シートのストライプ感を抑制することができる。
なお、条列状に複数形成された溝30のピッチ32とは、隣り合う2つの溝30Aおよび溝30Bにおいて、一方の溝30Aの幅方向の一方側の縁31Aから、他方の溝30Bの幅方向の一方側の縁31Bまでの間隔を指す。
【0037】
さらに、溝30は、同じピッチで条列状に複数形成されていてもよいし、異なるピッチで条列状に複数形成されていてもよいが、異なるピッチで条列状に複数形成されていることが好ましい。即ち、条列状に複数形成された溝30のピッチにばらつきがあることが好ましい。条列状に複数形成された溝30のピッチにばらつきがあれば、粘着シートにおける虹彩現象を抑制することができる。
そして、条列状に複数形成された溝30のピッチにばらつきがある場合、条列状に複数形成された溝30のピッチの標準偏差は、1μm以上であることが好ましく、1.2μm以上であることがより好ましく、1.5μm以上であることが更に好ましく、10μm以下であることが更に好ましい。条列状に複数形成された溝30のピッチの標準偏差が上記下限以上であれば、粘着シートにおける虹彩現象を更に抑制することができる。一方、条列状に複数形成された溝30のピッチの標準偏差が上記上限以下であれば、溝と溝との間隙が大きくなり過ぎないので、エア抜け性を良好に保つことができる。
【0038】
また、樹脂層10の表面11に形成された溝30は、樹脂層10の表面11の周縁まで延在している。溝30が樹脂層10の表面11の周縁まで延在することで、粘着シートの貼り付けの際、気体(通常は、空気)が溝を通じて粘着シートの周縁から容易に抜け出ることができるため、粘着シートのエア抜け性を良好にすることができる。
例えば、溝30の長手方向(延在方向)の少なくとも一方の端は、樹脂層10の表面11の周縁まで延在している。そして、粘着シートのエア抜け性を更に高める観点から、溝30の長手方向の両方の端が樹脂層10の表面11の周縁まで延在していることが好ましい。図1の平面図に示すように、樹脂層10の表面11が略四角形状である場合、溝30の長手方向の一方側の端が、樹脂層10の表面11の一対の対辺のうちの一方の辺の周縁まで延在し、溝30の長手方向の他方側の端部が、上記一対の対辺のうちの他方の辺の周縁まで延在していることが好ましい。
【0039】
なお、上記では、樹脂層10の表面11に溝30が条列状に複数形成されている例について説明したが、本発明の粘着シート100はこれに限定されることはない。例えば、樹脂層10の表面11を平面視した場合における溝30の形状は、特に限定されず、直線状であってもよいし、曲線状であってもよい。また、樹脂層10の表面11に形成された複数の溝30同士は、相互に交わっていてもよいし、交わっていなくてもよい。
【0040】
〔溝の断面形状〕
図2は、図1に示した本発明の粘着シートの一例の断面図である。なお、図2は、粘着シート100を溝30Aの幅方向(短手方向)に切断して得られる断面の一部を拡大して示した図である。
【0041】
図2に示す粘着シート100では、支持体層20の厚み方向の一方側に樹脂層10が形成され、樹脂層10の表面(即ち、支持体層20が配置される側とは反対側の面)には、複数の溝30(図示例では、溝30Aおよび溝30B)が形成されている。
【0042】
そして、図2の断面図では、溝30Aの幅方向の断面形状は台形である。ここで、「溝の幅方向の断面形状」とは、溝30Aの内壁面と、溝30Aの開口面とで囲まれた空間の幅方向の断面の形状を指す。そして、図2において、溝30Aの幅方向の断面形状である台形は、溝30Aの内壁面である下底面34および2つの斜面(内壁面S35)、並びに、溝の開口面(上底面33)によって形成されている。
【0043】
なお、図2に示す断面図では、溝30Aの幅方向の断面形状は台形(四角形)であるが、本発明の粘着シート100はこれに限定されず、溝30Aの幅方向の断面形状は、例えば、三角形であってもよいし、五角形以上の多角形であってもよい。
【0044】
ここで、粘着シートにおける虹彩現象を抑制する観点から、溝30Aは、樹脂層10の面方向に平行な内壁面Pを有していないことが好ましい。
【0045】
例えば、図2の断面図において、溝30Aの内壁面のうち、樹脂層10の面方向に平行な内壁面Pである下底面34が存在しないこと、すなわち、溝30Aの幅方向の断面形状が三角形であることが好ましい。このとき、溝30Aの幅方向の断面形状である三角形は、溝30Aの上底面33(開口面)および2つの斜面(内壁面S35)によって形成される。このように、溝30Aの下底面34が存在せず、溝30Aの幅方向の断面形状が三角形であれば、粘着シートにおける虹彩現象を抑制することができる。
【0046】
なお、1本の溝30Aの幅方向の断面形状は、溝30Aの長手方向の一方側の端から他方側の端に亘って同じであってもよいし、異なっていてもよいが、通常は同じであるものとする。
【0047】
また、樹脂層10の表面11に形成されている複数の溝30の幅方向の断面形状は、同じであってもよいし、異なっていてもよいが、異なっていることが好ましい。即ち、複数の溝30の幅方向の断面形状にばらつきがあることが好ましい。複数の溝30の幅方向の断面形状にばらつきがあれば、粘着シートにおける虹彩現象を抑制することができる。
【0048】
さらに、溝30Aの幅方向の断面積(断面形状の面積)は、3μm2以上であることが好ましく、5μm2以上であることがより好ましく、10μm2以上であることが更に好ましく、200μm2以下であることが好ましく、100μm2以下であることがより好ましく、60μm2以下であることが更に好ましい。溝30Aの幅方向の断面積が上記下限以上であれば、粘着シートのエア抜け性を更に高めることができる。一方、溝30Aの幅方向の断面積が上記上限以下であれば、粘着シートの透明性を更に高めることができる。
【0049】
なお、1本の溝30Aの幅方向の断面積は、溝30Aの長手方向の一方側の端から他方側の端に亘って同じであってもよいし、異なっていてもよいが、通常は同じであるものとする。
【0050】
また、樹脂層10の表面11に形成されている複数の溝30の幅方向の断面積は、同じであってもよいし、異なっていてもよいが、異なっていることが好ましい。即ち、複数の溝30の幅方向の断面積にばらつきがあることが好ましい。複数の溝30の幅方向の断面積にばらつきがあれば、粘着シートにおける虹彩現象を抑制することができる。
【0051】
ここで、複数の溝30の幅方向の断面積にばらつきがある場合、複数の溝30の幅方向の断面積の標準偏差は、複数の溝30の幅方向の断面積の平均値を100%として、5%以上であることが好ましく、7%以上であることがより好ましく、20%以下であることが好ましい。複数の溝30の幅方向の断面積の標準偏差が上記下限以上であれば、粘着シートにおける虹彩現象を更に抑制することができる。一方、溝30の幅方向の断面積の標準偏差が上記上限以下であれば、溝の断面積が小さくなり過ぎないので、エア抜け性を良好に保つことができる。
【0052】
〔溝の深さ〕
樹脂層10の表面11に形成されている溝30Aの深さ36は、0.5μm以上であることが必要であり、0.6μm以上であることが好ましく、0.7μm以上であることがより好ましく、0.8μm以上であることが更に好ましく、10μm未満であることが必要であり、7μm未満であることが好ましく、5μm未満であることがより好ましい。溝30Aの深さ36が上記下限以上であると、粘着シートのエア抜け性を高めることができる。一方、溝30Aの深さ36が上記上限未満であると、粘着シートの透明性を良好に維持することができる。なお、図2の断面図において、溝30Aの深さ36は、溝の幅方向の断面形状である台形の高さを指す。
【0053】
なお、1本の溝30Aの深さ36は、溝30Aの長手方向の一方側の端から他方側の端に亘って同じであってもよいし、異なっていてもよいが、通常、同じであるものとする。
【0054】
そして、樹脂層10の表面11に形成されている複数の溝30の深さは同じであってもよいし、異なっていてもよいが、異なっていることが好ましい。即ち、複数の溝30の深さにばらつきがあることが好ましい。複数の溝30の深さにばらつきがあれば、粘着シートにおける虹彩現象を抑制することができる。
【0055】
ここで、複数の溝30の深さにばらつきがある場合、複数の溝30の深さの標準偏差は、0.5μm以上であることが好ましく、0.7μm以上であることがより好ましく、2μm以下であることが好ましい。複数の溝30の深さの標準偏差が上記下限以上であれば、粘着シートにおける虹彩現象を更に抑制することができる。一方、複数の溝30の深さの標準偏差が上記上限以下であれば、過度に浅い溝および/または過度に深い溝がないため、エア抜け性および透明性を良好に保つことができる。
【0056】
なお、本明細書中において、複数の溝30の深さの標準偏差が0超である場合、即ち、複数の溝30の深さにばらつきがある場合、複数の溝30の深さの平均値の好ましい範囲は、上述した溝30Aの深さの好ましい範囲と同様とすることができる。
【0057】
〔溝の開口幅(上底面の幅)〕
また、溝30Aの開口面(上底面33)の幅(開口幅)は溝30Aの深さ36よりも大きいことが好ましい。溝30Aの開口幅が溝30Aの深さ36よりも大きければ、粘着シートのエア抜け性を更に高めることができる。
そして、溝30Aの開口幅は、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることが更に好ましく、30μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることが更に好ましい。溝30Aの開口幅が上記下限以上であれば、粘着シートのエア抜け性を更に高めることができる。一方、溝30Aの開口幅が上記上限以下であれば、粘着シートの透明性を更に高めることができる。
【0058】
なお、1本の溝30Aの開口幅は、溝30Aの長手方向の一方側の端部から他方側の端部に亘って同じであってもよいし、異なっていてもよいが、通常、同じであるものとする。
そして、樹脂層10の表面11に形成されている複数の溝30の開口幅は同じであってもよいし、異なっていてもよいが、異なっていることが好ましい。即ち、複数の溝30の開口幅にばらつきがあることが好ましい。複数の溝30の開口幅にばらつきがあれば、粘着シートにおける虹彩現象を抑制することができる。
ここで、複数の溝30の開口幅にばらつきがある場合、複数の溝30の開口幅の標準偏差は、0.5μm以上であることが好ましく、0.7μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることが更に好ましく、3μm以下であることが好ましい。複数の溝30の開口幅の標準偏差が上記下限以上であれば、粘着シートにおける虹彩現象を更に抑制することができる。
なお、溝30の開口幅の標準偏差が0超である場合、即ち、複数の溝30の開口幅にばらつきがある場合、複数の溝30の開口幅の平均値の好ましい範囲は、上述した溝30Aの開口幅の好ましい範囲と同様とすることができる。
【0059】
〔樹脂層の面方向に対して平行でない内壁面S〕
そして、樹脂層10の表面11に形成されている溝30Aは、樹脂層10の面方向に対して平行でない内壁面S35を有する。なお、内壁面S35は、樹脂層10の面方向に対して傾斜している斜面(即ち、後述の傾斜角度θが鋭角または鈍角)であってもよいし、樹脂層10の面方向に対して垂直な面(即ち、後述の傾斜角度θが直角)であってもよいものとする。
【0060】
内壁面S35の樹脂層10の面方向に対する傾斜角度θは、特に制限されず、鋭角(0°超90°未満)であってもよいし、鈍角(90°超180°未満)であってもよいし、直角(90°)であってもよいが、鋭角(0°超90°未満)であることが好ましい。内壁面S35の樹脂層10の面方向に対する傾斜角度θが鋭角(0°超90°未満)であれば、型を用いて溝の形状を転写する場合の離型が容易であるため、粘着シートの生産性を向上させることができる。
なお、内壁面S35の樹脂層10の面方向に対する傾斜角度θは、図2の断面図において、内壁面S35と、樹脂層10の面方向に平行な平面(図示例では溝30Aの下底面34)とがなす角のうち、溝30Aの外側、且つ、支持体層20から離れる方向の側に形成される角の角度を指すものとする。
【0061】
ここで、1本の溝30Aが有するある1つの内壁面S35の傾斜角度θは、溝30Aの長手方向の一方側の端から他方側の端に亘って同じであってもよいし、異なっていてもよいが、通常、同じであるものとする。
また、樹脂層10の表面11に複数形成された溝30が有する複数の内壁面S35の傾斜角度θは同じであってもよいし、異なっていてもよい。そして、複数の内壁面S35の傾斜角度θが異なる場合、複数の内壁面S35の傾斜角度θの平均値は、0°超90°未満であってもよいし、90°以上180°未満であってもよいが、0°超90°未満であることが好ましい。複数の内壁面S35の傾斜角度θの平均値を0°超90°未満とすることで、型を用いて形状を転写する場合の離型が容易であるため、粘着シートの生産性を向上させることができる。
【0062】
〔射影の面積〕
樹脂層に平行な平面に対して、樹脂層の表面を樹脂層の厚み方向に射影した際、樹脂層の表面全体の射影の面積に占める溝の内壁面Sの射影の面積の割合は、10%以下であることが必要であり、7%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、2.5%以下であることが更に好ましく、0%超であることが好ましく、0.1%以上であることがより好ましく、0.5%以上であることが更に好ましい。樹脂層の表面全体の射影の面積に占める内壁面Sの射影の面積の割合が10%以下であると、粘着シートの透明性を良好に維持することができる。一方、樹脂層の表面全体の射影の面積に占める内壁面Sの射影の面積の割合が0%超であれば、内壁面Sの傾斜角度θが鋭角である場合に、粘着シートのエア抜け性を更に高めることができる。
なお、樹脂層に平行な平面に対して、樹脂層の表面を樹脂層の厚み方向に射影した際の、樹脂層の表面全体の射影の面積に占める溝の内壁面Sの射影の面積の割合は、樹脂層に形成された溝の形状、寸法およびピッチ、並びに樹脂層の表面の面積などに基づいて算出することができる。
【0063】
例えば、図1および図2に示した粘着シート100のように、樹脂層10の表面11の全体に亘って、溝30が条列状に複数形成され、溝30の幅方向の断面形状が台形である場合、樹脂層10に平行な平面に対して、樹脂層10の表面11を樹脂層10の厚み方向に射影した際、樹脂層10の表面11全体の射影の面積に占める内壁面S35の射影の面積の割合は、下記の式(1):
(樹脂層10の表面11全体の射影の面積に占める内壁面S35の射影の面積の割合)
=[{(溝の上底面33の面積の合計)-(溝の下底面34の面積の合計)}/(樹脂層10の表面11全体の影の面積)]×100・・・(1)
を用いて算出することができる。なお、上記式(1)において、「樹脂層10の表面11全体の射影面積」は、溝30による凹凸を考慮することなく、樹脂層10の表面11の外形寸法(縦および横の長さなど)から算出される面積と一致する。
【0064】
<<溝が形成されていない部分>>
また、図1および2に示した粘着シート100において、樹脂層10の表面11のうち、上述した溝30が形成されていない部分の表面粗さRaは、100nm未満であることが好ましい。
さらに、樹脂層10の表面11のうち、上述した溝30が形成されていない部分の、樹脂層の面方向に対する傾斜角度は、1°未満であることが好ましい。
【0065】
<<貯蔵弾性率>>
樹脂層の貯蔵弾性率は、7.0×105Pa以上であることが必要であり、9.0×105Pa以上であることが好ましく、1.0×106Pa以上であることがより好ましく、1.0×109Pa以下であることが必要であり、1.0×108Pa以下であることが好ましく、1.0×107Pa以下であることがより好ましい。樹脂層の貯蔵弾性率が上記所定範囲内であると、樹脂層に形成された溝を良好に保持して、粘着シートのエア抜け性を良好に維持する共に、粘着シートのリワーク性を高めることができる。
【0066】
<<樹脂層のヘイズ>>
また、樹脂層は透明性に優れていることが好ましい。具体的に、表面に上述した溝が形成されていない状態の樹脂層のヘイズは、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることが更に好ましい。
なお、表面に溝が形成されていない状態の樹脂層のヘイズは、JIS K7136に準拠し、日本電色株式会社製「NDH4000」を用いて測定することができる。
【0067】
<<樹脂層の組成>>
樹脂層を構成する樹脂としては、樹脂層が上述した所定の貯蔵弾性率を有し、且つ、本発明の所望の効果が得られる限り、特に限定されることはなく、既知の樹脂を用いることができる。なお、樹脂層には、本発明の所望の効果が得られる範囲内で、樹脂以外に、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、各種無機粒子、酸化防止剤、可塑剤等のその他の成分が含まれていてもよい。
【0068】
ここで、樹脂層を構成する樹脂としては、紫外線硬化型樹脂;スチレン-イソプレンブロック共重合体等の、芳香族ビニル化合物および共役ジエン化合物を共重合して得られるブロック共重合体並びにその水素化物;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;などを用いることができる。これらの樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
そして、粘着シートの生産性を向上させる観点から、樹脂としては、紫外線硬化型樹脂を用いることが好ましい。換言すると、樹脂層は、紫外線硬化型樹脂を含む組成物(紫外線硬化型樹脂組成物)に紫外線を照射して得られる硬化物(「紫外線硬化型樹脂組成物の硬化物」と略記することがある。)であることが好ましい。紫外線硬化型樹脂を用いた場合、紫外線を照射して樹脂を硬化させることで、樹脂層を形成すると同時に、樹脂層の表面に溝を形成できるので、粘着シートの生産性を向上させることができる。
【0069】
ここで、紫外線硬化型樹脂組成物としては、紫外線硬化型樹脂を含み、且つ、紫外線を照射して硬化物が得られるものであれば、特に限定されないが、紫外線硬化型樹脂と、硬化剤とを含む紫外線硬化型樹脂組成物を用いることが好ましい。
【0070】
紫外線硬化型樹脂としては、例えば、分子内にアクリロイル基およびメタクリロイル基などの反応性を有する官能基(反応性官能基)を含有する紫外線硬化型ポリマー、オリゴマー、モノマー等を1種または2種以上を混合して用いることができる。この紫外線硬化型ポリマー、オリゴマー、モノマー等に紫外線を照射すると、反応性官能基同士および/または反応性官能基と後述する硬化剤とが反応することで、硬化物が得られる。
【0071】
ここで、紫外線硬化型ポリマーとしては、特に限定されないが、紫外線硬化型アクリルポリマーを用いることが好ましい。紫外線硬化型アクリルポリマーとは、アクリルモノマーを重合して得られるアクリルポリマーを主鎖として有する紫外線硬化型ポリマーである。なお、アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸等のエチレン性不飽和カルボン酸モノマー;(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー;などが挙げられる。なお、本明細書中において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。
また、紫外線硬化型オリゴマーおよびモノマーとしても、特に限定されることはなく、ラジカル重合が可能なエチレン性不飽和基を有する、付加重合または架橋可能な公知のモノマー、オリゴマー等を使用することができる。
これらの紫外線硬化型ポリマー、オリゴマー、およびモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサン(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、スチレン、アクリルニトリル、N-ビニルピロリドン、エチレングリコール(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテルヒドロキシプチルビニルエーテル、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどを好適に使用することができる。なお、これらの化合物は1種または2種以上を混合して用いることができる。
なお、紫外線硬化型ポリマー、オリゴマーおよびモノマーは、後述する硬化剤とは異なる成分である。
【0072】
また、硬化剤としては、上記紫外線硬化型樹脂を硬化させ得る物質であれば、特に限定されない。硬化剤としては、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基(以下、「(メタ)アクリロイル基」と称することがある)を1分子当たり合計で3個以上有する多官能アクリレート化合物が好ましく用いられる。紫外線硬化型樹脂組成物が、紫外線硬化型ポリマーに加えて、(メタ)アクリロイル基を1分子当たり合計で3個以上有する多官能アクリレート化合物を更に含んでいれば、紫外線硬化型ポリマーの分子間の架橋構造の形成が促進され、得られる樹脂としての硬化物に適度な貯蔵弾性率を付与することができる。
多官能アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)等の(メタ)アクリロイル基を分子内に合計で3個有するトリアクリレート化合物;(メタ)アクリロイル基を分子内に合計で4個有するテトラアクリレート化合物;などを用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、得られる樹脂としての硬化物に適度な貯蔵弾性率を付与する観点から、トリアクリレート化合物を用いることが好ましく、TMPTAを用いることがより好ましい。
【0073】
紫外線硬化型樹脂組成物中の硬化剤の含有割合は、0.5質量%以上であることが好ましく、0.7質量%以上であることがより好ましく、0.9質量%以上であることが更に好ましく、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。紫外線硬化型樹脂組成物中の硬化剤の含有割合が上記下限以上であれば、得られる樹脂としての硬化物に適度な貯蔵弾性率を付与することができる。一方、紫外線硬化型樹脂組成物中の硬化剤の含有割合が上記上限以下であれば、得られる樹脂としての硬化物の貯蔵弾性率が過度に高まることを抑制し、粘着シートのエア抜け性を良好に維持することができる。
【0074】
なお、紫外線硬化型樹脂および紫外線硬化型樹脂組成物は、上述した紫外線硬化型樹脂および硬化剤以外に光重合開始剤、フィラー等のその他の成分を含んでいてもよい。
【0075】
<<樹脂層の形成方法>>
上述した樹脂層の形成方法としては、特に限定されず、樹脂層に用いる樹脂の性状等に応じて適切な方法を選択することができる。
例えば、上述した紫外線硬化型樹脂組成物の硬化物からなる樹脂層は、下記の方法により形成することができる。
まず、支持体の表面に紫外線硬化型樹脂組成物を塗布し、紫外線硬化型樹脂組成物の塗膜を形成する。次いで、支持体の上記塗膜が形成された側の面を金型の表面に接触させて配置する。さらに、上記塗膜に対して紫外線を照射して、紫外線硬化型樹脂組成物を硬化させることで、紫外線硬化型樹脂組成物の硬化物からなる樹脂層を形成することができる。
ここで、紫外線硬化型樹脂組成物を塗布する支持体としては、特に限定されることはなく、例えば、上述した支持体層を用いることができる。
また、上記の方法で用いる金型の表面には、形成される樹脂層の表面に上述した所望の溝が形成されるように突起部が形成されているものとする。
さらに、紫外線硬化型樹脂組成物の塗膜に対して紫外線を照射する際の紫外線の波長、照射時間等の条件は、本発明の所望の効果が得られる範囲内で適宜設定することができる。
【0076】
なお、形成される樹脂層の厚みは、本発明の所望の効果が得られる限り、特に限定されないが、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることが更に好ましく、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましく、200μm以下であることが更に好ましい。樹脂層の厚みが上記下限以上であれば、被着体の表面に凹凸がある場合であっても、樹脂層が当該凹凸に追随して密着できるため、粘着シートを被着体に良好に貼り付けることができる。一方、樹脂層の厚みが上記上限以下であれば、粘着シートの透明性を良好に維持することができる。
【0077】
<粘着シートの製造方法>
本発明の粘着シートの製造方法は、特に限定されることはない。例えば、上述した樹脂層の形成方法の一例において、支持体として、支持体層を用いることにより、紫外線硬化型樹脂組成物の硬化物からなる樹脂層を備える本発明の粘着シートを製造することができる。
【0078】
<粘着シートの透明性>
本発明の粘着シートは、透明性に優れている。具体的に、本発明の粘着シートのヘイズは、10%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましく、4%以下であることが更に好ましく、3%以下であることが一層好ましい。粘着シートのヘイズの値が上記所定の値以下であれば、粘着シートは透明性に更に優れている。
なお、粘着シートのヘイズは、本明細書の実施例に記載の方法により測定することができる。
【実施例
【0079】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、ここで用いる「部」や「%」は、特に断らない限り、質量基準である。
なお、実施例および比較例における各種の測定、算出および評価は、下記の方法に従って行なった。
【0080】
<樹脂層の貯蔵弾性率>
紫外線硬化型樹脂組成物を用いた実施例1~7、実施例9および比較例1~3については、シリコーンプレートを型抜きした型を用い、各実施例および比較例で調製した紫外線硬化型樹脂組成物に紫外線を照射して硬化させて、50mm×5mm×1mmの貯蔵弾性率評価用サンプルを得た。紫外線(365nm)の照射量は4800mJ/cm2とした。
また、スチレン-イソプレンブロック共重合体を用いた実施例8については、PET製フィルム(東山フィルム社製「HY-S10」)上に、スチレン-イソプレンブロック共重合体の溶液を、乾燥後の塗膜の厚みが約0.3mmになるように塗布し、ホットプレート上で乾燥させた。その後、上記PET製フィルムから樹脂の塗膜を剥離し、50mm×5mm×0.3mmにカッティングして、これを貯蔵弾性率評価用サンプルとした。
そして、動的粘弾性測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、型番:DMS6100)を用い、チャック間距離20mm、温度範囲:-60~80℃、昇温速度3℃/min、周波数1Hzの条件で測定し、25℃における貯蔵弾性率の値を得た。
【0081】
<樹脂層の表面全体の射影の面積に占める内壁面Sの射影の面積の割合>
各実施例および比較例で製造した粘着シートについて、樹脂層に平行な平面に対して、樹脂層の表面を樹脂層の厚み方向に射影した際、樹脂層の表面全体の射影の面積に占める溝の内壁面S(樹脂層の面方向に対して平行でない内壁面)の射影の面積の割合は、下記式(2):
(樹脂層の表面全体の射影の面積に占める内壁面Sの射影の面積の割合)
=[{(溝の上底面の面積の合計)-(溝の下底面の面積の合計)}/(樹脂層の表面全体の影の面積)]×100・・・(2)
により算出した。なお、上記式(2)における「樹脂層の表面全体の射影の面積」は、樹脂層の表面に形成された溝による凹凸を考慮することなく、樹脂層の表面の外形寸法(縦および横の長さ)から算出される面積と一致する。
【0082】
<エア抜け性>
各実施例および比較例で製造した粘着シートを厚さ0.7mmのガラス板(コーニング社製「コーニング1737」)に貼り付けて、粘着シートの樹脂層と被着体(ガラス)との界面における気泡の残留状態を以下の基準に従って評価した。なお、粘着シートの樹脂層と被着体(ガラス板)との界面に気泡が残留していなければ、粘着シートがエア抜け性に優れていることを示す。
A:樹脂層と被着体(ガラス板)との界面に気泡が残留していない
B:樹脂層と被着体(ガラス板)との界面に気泡が残留している
【0083】
<溝の保持状態>
各実施例および比較例で製造した粘着シートを厚さ0.7mmのガラス板(コーニング社製「コーニング1737」)に貼り付けて、樹脂層の表面に形成された溝のうち保持されているものの割合(溝の保持率)を目視観察により計測し、以下の基準に従って評価した。
A:溝の保持率が50%以上である。
B:溝の保持率が50%未満である。
【0084】
<ヘイズ>
各実施例および比較例で製造した粘着シートを厚さ0.7mmのガラス板(コーニング社製「コーニング1737」)に貼り付けて、JIS K7136に準拠し、ヘイズメータ(日本電色工業社製「NDH4000」)を用いて、当該粘着シートのヘイズを測定した。なお、粘着シートのヘイズの値が小さいほど、粘着シートは透明性に優れていることを示す。
【0085】
<虹彩現象の抑制>
各実施例および比較例で製造した粘着シートを厚さ0.7mmのガラス板(コーニング社製「コーニング1737」)に貼り付けて、白色蛍光管(東芝社製「FHF32EX-N-H」)を、当該白色蛍光管の長手方向と、樹脂層に形成された溝の長手方向とが揃うように配置した。そして、当該白色蛍光管の光を粘着シートに照射して、粘着シートにおける虹彩現象の発生状態について評価した。なお、蛍光管の回折像が見えなければ、粘着シートは虹彩現象を良好に抑制できていることを示す。
A:蛍光管の回折像が見えず、蛍光灯がそのまま見える。
B:蛍光管の回折像が薄く複数本見える。
C:蛍光管の回折像が明瞭に複数本見える。
【0086】
(実施例1)
紫外線硬化型樹脂100部に対して、トリアクリレート化合物であるトリメチロールプロパントリアクリレート3部を混合し、紫外線硬化型樹脂組成物を得た。
支持体層としてのポリエチレンテレフタレート(PET)製フィルム(東洋紡社製「A4300」、縦300mm×横220mm×厚さ125μm)の表面に150mm幅で、アプリケータを用いて、上記紫外線硬化型樹脂組成物を塗布し、膜厚が100μmである塗膜を形成した。なお、上記PET製フィルムのヘイズを、JIS K7136に準拠し、ヘイズメータ(日本電色工業社製「NDH4000」)を用いて、測定したところ、0.45%であった。
次いで、PET製フィルムの上記塗膜が形成された側の面を、金型の表面に接触させて配置した。ここで、金型の表面全体に亘って、120μmのピッチ(ピッチの標準偏差δ:0μm)で突起部が条列状に複数形成されていて、当該突起部の幅方向(短手方向)の断面形状は、上底18.85μm/高さ1μm/下底20μmの等脚台形であった。次いで、塗膜に対して支持体層(PET製フィルム)側から紫外線照射を行ない、紫外線硬化型樹脂組成物の塗膜を硬化させて、硬化物からなる樹脂層(厚み:100μm)を形成した。なお、紫外線(365nm)の照射量は4800mJ/cm2とした。さらに、金型から離型して、100mm角で打ち抜き、PET製フィルム(支持体層)の厚み方向の一方側に樹脂層が形成されてなる100mm角の粘着シートを得た。
なお、得られた粘着シートの樹脂層の表面全体に亘って溝が条列状に複数形成されていて、溝のピッチは、金型の突起部のピッチと一致し、溝の幅方向の断面形状は金型の幅方向の断面形状を上下反転させたものと一致していた。したがって、溝は樹脂層の表面に120μmピッチ(ピッチの標準偏差δ:0μm)で条列状に複数形成され、溝の幅方向の断面形状は、上底20μm/高さ1μm/下底18.85μmの等脚台形であった。即ち、溝の上底面の幅(開口幅)は20μm、溝の深さは1μm、溝の下底面の幅は18.85μmであった。
得られた粘着シートを用いて、樹脂層の貯蔵弾性率、樹脂層の表面全体の射影の面積に占める内壁面Sの射影の面積の割合、粘着シートのエア抜け性、溝の保持状態、ヘイズ、および、虹彩現象の抑制について、測定、算出および評価を行なった。結果を表1に示す。
【0087】
(実施例2)
実施例1において、トリアクリレート化合物であるTMPTAの使用量を3部から1部に変更すると共に、得られる樹脂層の表面に形成される溝の幅方向の断面形状が上底20μm/高さ1μm/下底18.85μmの等脚台形から上底20μm/高さ2μm/下底17.7μmの等脚台形に変わるように、使用する金型の表面の突起部の形状を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを製造した。そして、実施例1と同様にして、各種測定、算出および評価を行なった。結果を表1に示す。
【0088】
(実施例3)
実施例1において、得られる樹脂層の表面に条列状に複数形成される溝のピッチが120μmから240μmに変わるように、使用する金型の表面の突起部のピッチを変更したこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを製造した。そして、実施例1と同様にして、各種測定、算出および評価を行なった。結果を表1に示す。
【0089】
(実施例4)
実施例2において、得られる樹脂層の表面に条列状に複数形成される溝のピッチが、一定でばらつきのない120μm(標準偏差:0μm)のピッチから、平均値が120μで標準偏差が1.7μmのばらつきのあるピッチに変わるように、使用する金型の表面の突起部のピッチを変更したこと以外は、実施例2と同様にして、粘着シートを製造した。そして、実施例1と同様にして、各種測定、算出および評価を行なった。結果を表1に示す。
【0090】
(実施例5)
実施例1において、得られる樹脂層の表面に条列状に複数形成される溝のピッチが120μmから220μmに変わり、溝の幅方向の断面形状が上底20μm/高さ1μm/下底18.85μmの等脚台形から上底20μm/高さ3.5μm/下底7.8μmの等脚台形に変わるように、使用する金型の表面の突起部のピッチおよび形状を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを製造した。そして、実施例1と同様にして、各種測定、算出および評価を行なった。結果を表1に示す。
【0091】
(実施例6)
実施例1において、得られる樹脂層の表面に条列状に複数形成される溝のピッチが120μmから220μmに変わり、溝の幅方向の断面形状が上底20μm/高さ1μm/下底18.85μmの等脚台形から上底11μm/高さ3.3μm/下底0μmの三角形に変わるように、使用する金型の表面の突起部のピッチおよび形状を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを製造した。そして、実施例1と同様にして、各種測定、算出および評価を行なった。結果を表1に示す。
【0092】
(実施例7)
実施例6において、得られる樹脂層の表面に条列状に複数形成される溝のピッチが220μmから520μmに変わるように、使用する金型の表面の突起部のピッチを変更したこと以外は、実施例6と同様にして、粘着シートを製造した。そして、実施例1と同様にして、各種測定、算出および評価を行なった。結果を表1に示す。
【0093】
(実施例8)
シクロヘキサン65部に対してスチレン-イソプレンブロック共重合体35部を加え、スチレン-イソプレンブロック共重合体溶液を得た。
支持体層としてのポリエチレンテレフタレート(PET)製フィルム(東洋紡社製「A4300」、縦300mm×横220mm×厚さ125μm)の表面に150mm幅で、アプリケータを用いて、スチレン-イソプレンブロック共重合体溶液を塗布し、100℃のホットプレートで乾燥させて、膜厚が50μmである塗膜を形成した。
次いで、PET製フィルムの上記塗膜が形成された側の面を、同じくホットプレートで100℃に温めた金型の表面に接触させて、PET基材側からゴムローラーで押し付けて金型の表面形状を塗膜に転写させた。ここで、金型の表面全体に亘って、300μmのピッチ(ピッチの標準偏差δ:0μm)で突起部が条列状に複数形成されていて、当該突起部の幅方向(短手方向)の断面形状は、上底0μm/高さ4μm/下底8μmの三角形であった。さらに、金型から離型して、100mm角で打ち抜き、PET製フィルム(支持体層)の厚み方向の一方側に厚さ50μmの樹脂層が形成されてなる100mm角の粘着シートを得た。なお、得られた粘着シートの樹脂層の表面全体に亘って溝が条列状に複数形成されていて、溝のピッチは、金型の突起部のピッチと一致し、溝の幅方向の断面形状は金型の幅方向の断面形状を上下反転させたものと一致していた。そして、実施例1と同様にして、各種測定、算出および評価を行なった。結果を表1に示す。
【0094】
(実施例9)
実施例2において、得られる樹脂層の表面に条列状に複数形成される溝の幅方向の断面形状が、上底20μm/高さ2μm/下底17.7μmの等脚台形から、上底20μm/高さ3.5μm/下底16μmの等脚台形を中心とし、内壁面Sの傾斜角度を固定したまま、断面形状の高さ(溝の深さ)が、平均値3.5μmで標準偏差δが0.5μmのばらつきのある高さに変わるように、使用する金型の表面の突起部の形状を変更したこと以外は、実施例2と同様にして、粘着シートを製造した。そして、実施例1と同様にして、各種測定、算出および評価を行なった。結果を表1に示す。
【0095】
(比較例1)
実施例1において、得られる樹脂層の表面が平滑で、溝が形成されないように、表面に突起部が無く、平滑な金型を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを製造した。そして、実施例1と同様にして、各種測定、算出および評価を行なった。結果を表1に示す。
【0096】
(比較例2)
実施例1において、得られる樹脂層の表面に形成される溝の幅方向の断面形状が上底20μm/高さ1μm/下底18.85μmの等脚台形から上底20μm/高さ12μm/下底6.15μmの等脚台形に変わるように、使用する金型の表面の突起部の形状を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを製造した。そして、実施例1と同様にして、各種測定、算出および評価を行なった。結果を表1に示す。
【0097】
(比較例3)
実施例1において、トリアクリレート化合物であるTMPTAの使用量を3部から0部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを製造した。そして、実施例1と同様にして、各種測定、算出および評価を行なった。結果を表1に示す。
なお、比較例3で得られた粘着シートの樹脂層では、溝の保持率が50%未満であったことから、粘着シート全体を観察したときに、溝の有無によって透明性のばらつきが大きかったため、ヘイズの評価を適切に実施することができなかった。
【0098】
(比較例4)
実施例1において、得られる樹脂層の表面に条列状に複数形成される溝の断面形状が上底20μm/高さ2μm/下底18.85μmの等脚台形から上底20μm/高さ3.5μm/下底7.8μmの等脚台形に変わるように、使用する金型の表面の突起部の形状を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを製造した。そして、実施例1と同様にして、各種測定、算出および評価を行なった。結果を表1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
表1より、支持体層と、支持体層の厚み方向の一方側に形成された、所定の貯蔵弾性率を有する樹脂層とを備え、樹脂層の表面に所定の範囲の深さの溝が形成され、溝が樹脂層の面方向に対して平行でない内壁面Sを有し、樹脂層の表面全体の射影の面積に対する溝の内壁面Sの射影の面積の割合が所定値以下である、実施例1~9の粘着シートは、エア抜け性と透明性とを良好に両立できることが分かる。
一方、樹脂層の表面に溝が形成されていない比較例1の粘着シートは、透明性は良好であるものの、エア抜け性に劣ることが分かる。
また、溝の深さが所定の範囲を上回り、樹脂層の表面全体の射影の面積に対する溝の内壁面Sの射影の面積の割合が所定値を超えている、比較例2の粘着シートは、エア抜け性は良好であるものの、透明性に劣ることが分かる。
なお、貯蔵弾性率が所定範囲を下回る樹脂層を用いた比較例3の粘着シートでは、樹脂層に形成された溝が良好に保持されず、透明性を適切に評価することができなかった。
さらに、溝の深さは所定の範囲内であるが、樹脂層の表面全体の射影の面積に対する溝の内壁面Sの射影の面積の割合が所定値を超えている、比較例4の粘着シートは、エア抜け性は良好であるものの、透明性に劣ることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明によれば、エア抜け性と透明性とを良好に両立し得る粘着シートを提供することができる。
【符号の説明】
【0102】
10 樹脂層
11 表面
20 支持体層
30,30A,30B 溝
31A,31B 幅方向の一方側の縁
32 ピッチ
33 上底面
34 下底面
35 内壁面S
36 深さ
100 粘着シート
図1
図2