(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】リッド開閉構造
(51)【国際特許分類】
B60K 15/05 20060101AFI20230530BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20230530BHJP
B62D 25/24 20060101ALI20230530BHJP
E05B 83/34 20140101ALI20230530BHJP
【FI】
B60K15/05 B
B60K1/04 Z
B62D25/24 Z
E05B83/34
(21)【出願番号】P 2020163907
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 健一郎
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-262745(JP,A)
【文献】特開2010-143582(JP,A)
【文献】特開2016-145465(JP,A)
【文献】実開昭63-054516(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/05
B60K 1/04
B62D 25/24
E05B 83/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リッドと、
前記リッドを基材に対して開閉動作させるリッド駆動部材と、
前記リッドを閉位置にロックするリッドロック部材と、
軸回り一方向への回転により、前記リッドロック部材を前記リッドが閉位置にロックされるロック位置と前記リッドの閉位置でのロックが解除されるロック解除位置との間で位置移動させると共に、前記リッドロック部材が前記ロック解除位置に位置する状態で前記リッド駆動部材を前記リッドの閉位置と全開位置との間で位置移動させる回転カム体と、
前記回転カム体のカム部に係合し、前記回転カム体の回転に伴って所定方向に進退し、該進退に連動させて前記リッドロック部材を前記ロック位置と前記ロック解除位置との間で位置移動させるカム係合部材と、
前記回転カム体を回転させる電動アクチュエータと、
前記電動アクチュエータとは別に設けられ、前記リッドロック部材に前記ロック解除位置側へ位置移動させる外力を付与することが可能な外力付与部と、
を備え、
前記リッドロック部材が前記ロック位置にある状態で前記外力付与部から前記リッドロック部材に前記外力が付与された場合に、前記リッドロック部材と前記カム係合部材との進退連動を解除する、リッド開閉構造。
【請求項2】
前記外力付与部は、一端が前記リッドロック部材に連結され、操作者による他端の引っ張り操作により前記リッドロック部材を前記ロック位置側から前記ロック解除位置側へ位置移動させるワイヤを有する、請求項1に記載されたリッド開閉構造。
【請求項3】
前記リッドロック部材を前記ロック解除位置側から前記ロック位置側へ付勢することにより前記リッドロック部材と前記カム係合部材との進退連動を実現させる付勢部材を備える、請求項1又は2に記載されたリッド開閉構造。
【請求項4】
前記回転カム体は、前記リッド駆動部材が前記リッドの閉位置に位置する状態で前記リッドロック部材を位置移動させる、請求項1乃至3の何れか一項に記載されたリッド開閉構造。
【請求項5】
前記回転カム体は、第一角度区間での回転により前記リッドロック部材を位置移動させると共に、前記第一角度区間とは重なっていない第二角度区間での回転により前記リッド駆動部材を位置移動させる、請求項4に記載されたリッド開閉構造。
【請求項6】
前記カム部は、前記第一角度区間に対応して前記リッドロック部材を前記ロック位置と前記ロック解除位置との間で位置移動させるロック側駆動区間部と、前記第二角度区間に対応して前記リッド駆動部材を前記リッドの閉位置と全開位置との間で位置移動させるリッド側駆動区間部と、を有する、請求項5に記載されたリッド開閉構造。
【請求項7】
前記リッドは、被係合部を有し、
前記回転カム体は、前記リッド駆動部材と一体に形成されており、
前記リッド駆動部材は、前記回転カム体の回転に伴って前記被係合部に係合する係合部を有する、請求項1乃至6の何れか一項に記載されたリッド開閉構造。
【請求項8】
前記被係合部と前記係合部とは、前記回転カム体の回転に伴って前記リッドを閉位置から全開位置へ開動作させる際に互いに係合する、請求項7に記載されたリッド開閉構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両などに設けられた開口を塞ぐリッドを開閉動作させることが可能なリッド開閉構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、充電口や給油口などが設けられた車体の開口を塞ぐリッドを開閉動作させるリッド開閉構造が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1記載のリッド開閉構造は、リッドを開閉動作させるリッド駆動部材と、リッドを閉位置にロックするリッドロック部材と、リッドロック部材を進退させてリッドのリテーナに係脱させる電動アクチュエータと、を備えている。上記のリッド開閉構造は、また、リッドが閉位置にロックされている状態で電動アクチュエータなどに故障が生じた緊急時にそのリッドロックを解除するための力を付与する外力付与部を備えている。この外力付与部は、電動アクチュエータをハウジングに対して移動させるワイヤ(ひも)を有している。緊急時に操作者によりワイヤが引っ張られると、リッドロック部材がハウジング内に引き込まれ、リッドロックが解除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、リッド開閉構造の部品コストの削減や構造の簡素化などのため、リッド駆動部材によるリッドの開閉動作とリッドロック部材によるリッドのロック/ロック解除動作とを、一つの電動アクチュエータの軸回り一方向への駆動で行う構造が考えられる。この構造では、電動アクチュエータの駆動区間が、リッドロック部材をリッドが閉位置にロックされるロック位置とそのロックが解除されるロック解除位置との間で位置移動させる第一区間と、リッド駆動部材をリッドの閉位置と全開位置との間で位置移動させる第二区間と、を有するように設定される。
【0005】
上記の構造を実現するため、駆動に伴って回転する回転体にカム部を設けると共に、リッドロック部材にそのカム部に係合するカム係合部を設けることが考えられる。このカム構造によれば、駆動区間を上記の第一区間と上記の第二区間とに切り分けることができるので、電動アクチュエータの軸回り一方向への駆動でリッドの開閉動作とロック/ロック解除動作とを実現することができる。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1記載のリッド開閉構造に、上記したリッドロック部材にカム係合部が設けられたカム構造が適用されると、外力付与部のワイヤが操作者により引っ張られてリッドロック部材が後退した際に、カム係合部が一体的に後退して回転体のカム部から離れる。この場合は、ワイヤの引っ張りによるリッドロック部材の後退に合わせてカム係合部を後退させるうえで必要な空間を設けることが必要であり、更には、リッドが開閉されたときにそのリッドロック部材の後退位置に対応したカム係合部の後退位置を確保するための広大な空間を設けることが必要であるので、リッド開閉構造を実現するうえで制約が多くなる。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、リッドの開閉動作とロック/ロック解除動作とを軸回り一方向への駆動で行う構成においてリッドロック状態でそのリッドロックの解除を簡易な構造で実現することが可能なリッド開閉構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、リッドと、前記リッドを基材に対して開閉動作させるリッド駆動部材と、前記リッドを閉位置にロックするリッドロック部材と、軸回り一方向への回転により、前記リッドロック部材を前記リッドが閉位置にロックされるロック位置と前記リッドの閉位置でのロックが解除されるロック解除位置との間で位置移動させると共に、前記リッドロック部材が前記ロック解除位置に位置する状態で前記リッド駆動部材を前記リッドの閉位置と全開位置との間で位置移動させる回転カム体と、前記回転カム体のカム部に係合し、前記回転カム体の回転に伴って所定方向に進退し、該進退に連動させて前記リッドロック部材を前記ロック位置と前記ロック解除位置との間で位置移動させるカム係合部材と、前記回転カム体を回転させる電動アクチュエータと、前記電動アクチュエータとは別に設けられ、前記リッドロック部材に前記ロック解除位置側へ位置移動させる外力を付与することが可能な外力付与部と、を備え、前記リッドロック部材が前記ロック位置にある状態で前記外力付与部から前記リッドロック部材に前記外力が付与された場合に、前記リッドロック部材と前記カム係合部材との進退連動を解除する、リッド開閉構造である。
【0009】
この構成によれば、回転カム体の軸回り一方向への回転により、リッドロック部材がリッドのロック位置とロック解除位置との間で位置移動されると共に、リッドロック部材のロック解除位置でリッド駆動部材がリッドの閉位置と全開位置との間で位置移動される。そして、リッドロック部材のロック位置でリッドロック部材にロック解除位置側へ位置移動させる力が外力付与部により付与されると、リッドロック部材がロック解除位置側へ位置移動されて、リッドロック部材とカム係合部材との進退連動が解除される。この構成では、リッドロック部材の進退に合わせてカム係合部材を進退させるうえで必要な空間を設けることは不要であると共に、更には、リッドが開閉されたときにそのリッドロック部材の後退位置に対応したカム係合部の後退位置を確保するための広大な空間を設けることは不要である。このため、リッドロック状態でそのリッドロックの解除を簡易な構造で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係るリッド開閉構造のリッド閉位置での正面図である。
【
図2】実施形態のリッド開閉構造のリッド全開位置での正面図である。
【
図3】実施形態のリッド開閉構造の分解斜視図である。
【
図4】実施形態のリッド開閉構造におけるリッド駆動部材とリッドロック部材と回転カム体とカム係合部材との位置関係を表した図である。
【
図5】実施形態のリッド開閉構造のリッド閉位置での側面図である。
【
図6】実施形態のリッド開閉構造の基材の要部拡大図である。
【
図7】実施形態のリッド開閉構造が備える回転カム体を一方向から見た斜視図である。
【
図8】実施形態のリッド開閉構造が備える回転カム体を他方向から見た斜視図である。
【
図9】実施形態のリッド開閉構造が備えるリッドロック部材の斜視図である。
【
図10】実施形態のリッド開閉構造が備えるカム係合部材の斜視図である。
【
図11】実施形態のリッド開閉構造が備える回転カム体のカム部の形状を展開した図である。
【
図12】実施形態のリッド開閉構造においてリッドが閉位置と全開位置との間で開閉動作される際の
図1及び
図2に示す直線XII-XIIで切断した箇所を表した遷移図である。
【
図13】実施形態のリッド開閉構造におけるリッドが閉位置と全開位置との間で開閉動作される際のリッドロック部材と回転カム体とカム係合部材との位置関係を表した遷移図である。
【
図14】実施形態のリッド開閉構造におけるリッドが閉位置にロックされている状態で緊急的にロック解除が行われる際のリッドロック部材と回転カム体とカム係合部材との位置関係を表した遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、
図1-
図14を用いて、本発明に係るリッド開閉構造の具体的な実施形態について説明する。
【0012】
一実施形態のリッド開閉構造1は、開口を塞ぐリッド20を開閉動作させると共に、そのリッド20を閉位置にロック可能な構造である。
【0013】
リッド開閉構造1は、
図1、
図2、
図3、
図4、及び
図5に示す如く、有底基材10と、リッド20と、駆動装置30と、を備えている。リッド開閉構造1は、駆動装置30によってリッド20を有底基材10に対して回動させることによりリッド20を開閉動作させると共に、駆動装置30によりリッド20の回動を規制しつつ後述のリッドロック部材を前進させることによりリッド20を閉位置にロックすることが可能である。
【0014】
有底基材10は、例えば車両の車体側壁やボンネットなどに設けられた取付孔に取り付けられる。この取付孔には、例えば車両の充電口や給油口などが設けられる。有底基材10は、樹脂などにより成形された射出成形体であって、容器状或いは箱状に形成されている。有底基材10は、一端側(すなわち、奥側)にて底壁11が形成されかつ他端側(すなわち、手前側)にて開口12が形成された筒状の基底部材である。有底基材10は、四角筒状或いは円筒状に形成されている。
【0015】
有底基材10の底壁11には、取出口13が設けられている。取出口13は、所定の平面形状(例えば、四角形状や円形状など)に形成されている。取出口13は、給油口や充電口に連通している。取出口13には、燃料タンクやバッテリなどに接続する配管やケーブルの一端が表出している。この配管やケーブルの一端は、リッド20の閉位置で有底基材10の開口内側に隠れる一方、リッド20の開位置で燃料供給や充電が可能となるように外部に露出する。
【0016】
リッド20は、有底基材10の開口12を塞ぐ板状の部材である。リッド20は、有底基材10に回動可能に支持されている。リッド20は、水平に延びる軸を中心にして有底基材10に対して上下方向に回動することが可能である。リッド20は、開口12を閉じることが可能であると共にその開口12を開放することが可能である。リッド20は、例えば樹脂により成形された射出成形体である。
【0017】
リッド20は、リッド板部21と、支持板部22と、を有している。リッド板部21は、開口12を塞ぐ板状に形成された部位である。リッド板部21は、開口12の開口形状に合った形状に形成されている。支持板部22は、リッド20を有底基材10に支持する板状に形成された部位である。支持板部22は、リッド板部21の左右両側それぞれの裏面上部からその裏面に直交する方向へ立設されており、リッド板部21に一体的に形成されている。支持板部22は、水平方向外方へ向けて突出する円筒状の軸支持部22aを有している。
【0018】
駆動装置30は、リッド20の開閉動作を行うと共に、リッド20の閉位置でのロック/ロック解除動作(すなわち、リッド20を閉位置にロックすると共にその閉位置ロックを解除させる動作)を行う装置である。駆動装置30によるリッド20の開閉動作とロック/ロック解除動作とは、共用の一つの電動アクチュエータ80の駆動により行われる。駆動装置30は、リッド駆動部材40と、リッドロック部材50と、回転カム体60と、カム係合部材70と、電動アクチュエータ80と、第一付勢部材90と、外力付与部100と、第二付勢部材110と、を有している。
【0019】
リッド駆動部材40は、リッド20を有底基材10に対して開閉動作させる部材である。有底基材10は、
図5及び6に示す如く、カムガイド部14と、軸孔15と、を有している。カムガイド部14は、リッド駆動部材40及び回転カム体60を回動可能にガイドする部位である。リッド駆動部材40は、有底基材10のカムガイド部14に回動可能に支持されている。リッド駆動部材40は、
図8に示す如く、回動中心軸C(
図5参照)に沿って延びる円柱状又は円筒状の軸部41を有している。軸孔15は、リッド駆動部材40が貫通する孔である。リッド駆動部材40は、回動中心軸Cを中心にして回動することでリッド20に開閉動作させる力を付与する。
【0020】
リッド20は、軸孔23と、被係合部24と、を有している。軸孔23は、リッド駆動部材40の軸部41が挿入され、リッド20の回動中心となる孔である。軸孔23は、軸支持部22aに形成されている。被係合部24は、リッド駆動部材40の軸部41に係合する凸部位である。被係合部24は、軸孔23に形成されている。被係合部24は、その軸孔23の内壁から中心に向けて突出しており、軸孔23の周方向全域のうち一部の角度範囲のみに設けられている。被係合部24は、角度範囲α1(例えば110°;
図12参照)に亘って設けられている。尚、被係合部24は、上記周方向全域のうち一部の角度範囲α1全体に亘って設けられていてもよいが、その一部の角度範囲α1の少なくとも両端に設けられていればよい。
【0021】
リッド駆動部材40の軸部41は、
図8に示す如く、係合部42を有している。係合部42は、リッド20の被係合部24に係合する凸部位である。係合部42は、軸部41の外壁から径方向外側に向けて突出するように形成されている。係合部42は、軸部41の周方向全域のうち一部の角度範囲のみに設けられている。係合部42は、角度範囲α2(例えば150°;
図12参照)に亘って設けられている。係合部42は、リッド20の軸孔23に挿入されている。尚、角度範囲α1,α2は、(α1+α2)<360°の関係式が成立するように設定されている。
【0022】
リッドロック部材50は、リッド20を閉位置にロックするロックピンである。リッドロック部材50は、リッド20及びリッド駆動部材40の回動中心軸Cに近接した位置に配置されている。リッドロック部材50は、リッド20が閉位置にロックされるロック位置とその閉位置でのロックが解除されるロック解除位置との間で位置移動して進退することが可能である。リッドロック部材50は、
図9に示す如く、ロック部51と、フランジ部52と、ワイヤ支持部53と、を有している。
【0023】
有底基材10は、
図5及び6に示す如く、ロックピン挿入孔16を有している。ロックピン挿入孔16は、リッドロック部材50のロック部51が貫通する孔である。リッド20は、ロック係合部25を有している。ロック係合部25は、ロック部51に係合して、リッド20の回動を規制する孔又は凹みである。ロック係合部25は、支持板部22の外縁の一部に形成されている。ロック係合部25は、ロック部51の径に対応した大きさに形成されている。
【0024】
ロック部51は、棒状に延びる円柱状の部位である。ロック部51は、リッド駆動部材40の軸部41に平行に延びている。ロック部51は、有底基材10のロックピン挿入孔16に挿入可能であり、リッド20のロック係合部25に挿脱することが可能である。ロック部51は、リッド20が閉位置にある状態でそのロック部51の先端部がロック係合部25に挿入されることによりリッド20の回動を規制すると共に、そのロック部51の先端部がロック係合部25から抜かれることによりリッド20の回動を許容する。
【0025】
フランジ部52は、ロック部51の後端部にロック部51の外径よりも大径に形成された部位である。有底基材10は、
図5及び6に示す如く、ロックピンガイド部17を有している。ロックピンガイド部17は、リッドロック部材50のロック部51及びフランジ部52並びにカム係合部材70を進退可能にガイドする部位である。ロックピンガイド部17は、ロックピン挿入孔16に連通している。リッドロック部材50は、フランジ部52にてロックピンガイド部17に支持された状態で進退することが可能である。
【0026】
ワイヤ支持部53は、操作者により引っ張り操作されるワイヤ101が支持される部位である。ワイヤ支持部53は、フランジ部52から径方向外方に突出する板状の部位である。ワイヤ支持部53は、ワイヤ101の一端に連結されている。ワイヤ支持部53は、ワイヤ101の他端の引っ張り操作によりリッドロック部材50をロック位置側からロック解除位置側へ位置移動させるように構成されている。
【0027】
回転カム体60は、電動アクチュエータ80の駆動に伴って回転する回転部材である。回転カム体60は、回転により、リッドロック部材50をロック位置とロック解除位置との間で位置移動させると共に、リッドロック部材50がロック解除位置に位置する状態でリッド駆動部材40をリッド20の閉位置と全開位置との間で位置移動させる。
【0028】
回転カム体60は、円柱状又は円筒状に形成されている。回転カム体60は、
図7及び
図8に示す如く、リッド駆動部材40と一体に形成されている。回転カム体60とリッド駆動部材40とは、同期して回転する。回転カム体60は、有底基材10のカムガイド部14に回転可能に支持されている。回転カム体60は、カムガイド部14に軸方向移動が規制された状態で収容されている。回転カム体60は、軸部61と、カム部62と、補助ガイド部63と、を有している。
【0029】
軸部61は、電動アクチュエータ80の軸部と噛み合う部位である。軸部61は、電動アクチュエータ80の駆動により回転可能である。カム部62は、カム係合部材70に係合される部位である。カム部62は、回転カム体60の外周面に形成された径方向への段差に回転カム体60の軸方向に向くように形成されている。カム部62は、周方向に延在している。
【0030】
カム部62は、周方向位置に応じて軸方向位置が変化する部位を含むように形成されている。すなわち、カム部62は、
図11に示す如く、ロック側空転区間部S0と、ロック側駆動区間部S1と、リッド側駆動区間部S2と、を有している。ロック側空転区間部S0、ロック側駆動区間部S1、及びリッド側駆動区間部S2は、周方向においてその順に設けられている。
【0031】
ロック側空転区間部S0は、回転カム体60が回転してもリッドロック部材50をロック位置に維持させる部位である。ロック側空転区間部S0は、回転カム体60の軸方向に延在することなくすなわち回転カム体60の軸方向に直交する方向に対して傾斜することなく周方向に延在している。ロック側空転区間部S0は、ロック側駆動区間部S1に対して、リッドロック部材50がロック位置に位置する周方向一方側に連通している。
【0032】
ロック側駆動区間部S1は、回転カム体60の回転によりリッドロック部材50をロック位置とロック解除位置との間で位置移動させる部位である。ロック側駆動区間部S1は、回転カム体60の周方向に延在していると共に軸方向に延びている。すなわち、ロック側駆動区間部S1は、周方向において回転カム体60の軸方向に直交する方向に対して傾斜して延びている。
【0033】
リッド側駆動区間部S2は、回転カム体60が回転した際にリッドロック部材50をロック解除位置に維持させつつリッド20を開閉動作させる部位である。リッド側駆動区間部S2は、回転カム体60の軸方向に延在することなくすなわち回転カム体60の軸方向に直交する方向に対して傾斜することなく周方向に延在している。リッド側駆動区間部S2は、ロック側駆動区間部S1に対して、リッドロック部材50がロック解除位置に位置する周方向他端側に連通している。
【0034】
補助ガイド部63は、カム部62とカム係合部材70との係合位置が変化するときのカム係合部材70の相対移動を補助する部位である。補助ガイド部63は、カム部62(特に、カム部62のロック側駆動区間部S1)との間にカム係合部材70の後述の係合凸部73が通過するのに十分な溝通路が形成されるように形成配置されている。補助ガイド部63は、軸部61に対して軸方向に隣接し、その軸部61の外周面に径方向外方へ突出するように形成されている。
【0035】
カム係合部材70は、回転カム体60のカム部62に係合する部材である。カム係合部材70は、回転カム体60の回転に伴って回転カム体60の軸方向に進退することが可能である。カム係合部材70は、カム係合部材70の進退に連動させてリッドロック部材50をロック位置とロック解除位置との間で位置移動させる。カム係合部材70は、筒状に形成されている。カム係合部材70は、
図10に示す如く、本体筒部71と、ロックピン貫通孔72と、係合凸部73と、を有している。
【0036】
本体筒部71は、有底基材10のロックピンガイド部17に軸回りに回転不能にかつ軸方向に進退可能に収容されている。ロックピン貫通孔72は、リッドロック部材50のロック部51が貫通する孔である。ロックピン貫通孔72は、本体筒部71の軸方向端面に設けられている。ロックピン貫通孔72の径は、ロック部51の外径よりも大きくかつフランジ部52の外径よりも小さい。カム係合部材70は、リッドロック部材50のフランジ部52に対してロック部51が設けられた軸方向一方側に隣接するように配置されている。
【0037】
係合凸部73は、回転カム体60のカム部62に係合するピン状部位である。係合凸部73は、本体筒部71の側壁から径方向外方へ突出するように設けられている。係合凸部73は、回転カム体60に対して回転カム体60の径方向外方から軸中心に向けて延びるように配置されている。係合凸部73とカム部62との係合位置は、カム部62の周方向両端部の間で変化する。係合凸部73ひいてはカム係合部材70は、回転カム体60の回転に伴う係合凸部73とカム部62との係合位置の変化により、回転カム体60の軸方向に進退し、その進退に連動してリッドロック部材50をロック位置とロック解除位置との間で位置移動させる。
【0038】
リッドロック部材50は、係合凸部73がカム部62のロック側空転区間部S0又はリッド側駆動区間部S2に係合している際はロック位置とロック解除位置との間で位置移動しないが、係合凸部73がカム部62のロック側駆動区間部S1に係合している際はロック位置とロック解除位置との間で位置移動する。
【0039】
電動アクチュエータ80は、回転カム体60を回転させることによりリッド20を開閉動作させる駆動力及び閉状態でのリッド20をロック/ロック解除動作させる駆動力を発生する例えば電動モータである。電動アクチュエータ80は、正逆の双方向に回転することが可能である。
【0040】
電動アクチュエータ80は、例えば車両乗員などの操作者によるリッド20の開操作(例えばスイッチ開操作)が行われた場合にリッド20を開動作させる駆動力を発生すると共に、その操作者によるリッド20の閉操作(例えばスイッチ閉操作)が行われた場合にリッド20を閉動作させる駆動力を発生すると共にリッド20の閉位置でそのリッド20をロック動作させる駆動力を発生する。電動アクチュエータ80は、アクチュエータボックス81内に収容されている。アクチュエータボックス81は、有底基材10に取り付け固定される。
【0041】
第一付勢部材90は、リッドロック部材50をロック解除位置側からロック位置側へ付勢する付勢力を発生する例えばスプリングなどである。第一付勢部材90は、一端がアクチュエータボックス81に支持されかつ他端がリッドロック部材50のフランジ部52の軸方向端面に支持されるように配置されている。第一付勢部材90は、そのフランジ部52に対してロック部51が設けられていない軸方向他方側に隣接するように配置されている。
【0042】
第一付勢部材90は、リッドロック部材50をロック解除位置側からロック位置側へ付勢してカム係合部材70に当接させ、リッドロック部材50とカム係合部材70との進退連動を実現させる。具体的には、リッドロック部材50が第一付勢部材90により付勢されると、そのリッドロック部材50がロック解除位置側からロック位置側へ押圧されてカム係合部材70と一体化され、その状態でロック位置まで位置移動(すなわち、前進)することが可能である。また、カム係合部材70が回転カム体60のカム部62との係合により第一付勢部材90の付勢力に抗してロック位置側からロック解除位置側へ押圧されると、そのカム係合部材70がリッドロック部材50と一体化された状態を保持したままリッドロック部材50のロック解除位置まで位置移動(すなわち、後退)することが可能である。
【0043】
外力付与部100は、リッドロック部材50とカム係合部材70との進退連動を解除する部位である。外力付与部100は、ワイヤ101を有している。ワイヤ101は、一端がリッドロック部材50のワイヤ支持部53に連結されていると共に、他端が操作者により操作されるレバーなどの操作部(図示せず)に連結されている。ワイヤ101は、他端の引っ張り操作により第一付勢部材90の付勢力に抗してリッドロック部材50をロック位置側からロック解除位置側へ位置移動させる。
【0044】
第二付勢部材110は、リッド20を閉方向に付勢する力を発生する。第二付勢部材110は、一端が有底基材10に支持されると共に他端がリッド20に支持される例えばスプリングなどである。
【0045】
上記のリッド開閉構造1において、リッド20の被係合部24とリッド駆動部材40の係合部42とは、回転カム体60の回転に伴ってリッド駆動部材40がリッド20の閉位置から全開位置まで位置移動(すなわち、回動)される際(すなわち、リッド20の開動作時)に互いに係合する。具体的には、係合部42が被係合部24との非係合な状態からその被係合部24に係合した後、回転カム体60が、係合部42が被係合部24を押圧する周方向順方向に回転(以下、この回転を正回転と称す。)すると、係合部42が被係合部24に係合した状態でその被係合部24を周方向一方に押圧することで、その回転カム体60に一体化されたリッド駆動部材40が回動中心軸Cを中心にしてリッド20の開方向へ回動され、リッド20が開動作される。
【0046】
上記のリッド20の開動作は、リッド20が全開位置に達するまで継続される。リッド20の全開位置は、例えば、リッド駆動部材40又はリッド20自体が有底基材10に設けられたストッパ(図示せず)に当接する状態、又は、カム係合部材70の係合凸部73が相対的に回転カム体60のカム部62の周方向一端部(具体的には、リッド側駆動区間部S2におけるロック側駆動区間部S1と連通する周方向端部とは反対側の周方向端部)に達して回転カム体60がそれ以上回転できない状態のことである。
【0047】
一方、リッド20の被係合部24とリッド駆動部材40の係合部42とは、回転カム体60の回転に伴ってリッド駆動部材40がリッド20の全開位置から閉位置まで位置移動(すなわち、回動)される際(すなわち、リッド20の閉動作時)は互いに係合しない。具体的には、係合部42がリッド20の開動作時に被係合部24を押圧する周方向順方向とは反対の周方向逆方向に回転カム体60が回転(以下、この回転を逆回転と称す。)すると、リッド駆動部材40が回動中心軸Cを中心にしてリッド20の閉方向へ回動されるが、被係合部24が係合部42によって周方向に押圧されることはなく、この押圧ではリッド20が閉方向へ回動しない。
【0048】
しかし、リッド20は、後に詳述する如く、第二付勢部材110により閉方向へ付勢されているので、この回転カム体60の逆回転時、第二付勢部材110の付勢力により閉動作される。このリッド20の閉動作は、リッド20が有底基材10の開口12を塞ぐ閉位置に達してそれ以上閉方向へ回動できない状態に達するまで継続される。上記の如くリッド20が閉位置に達した後も、回転カム体60の逆回転は継続可能である。この回転カム体60の逆回転は、カム係合部材70の係合凸部73が相対的に回転カム体60のカム部62の周方向他端部(具体的には、ロック側空転区間部S0におけるロック側駆動区間部S1と連通する周方向端部とは反対側の周方向端部)に達して回転カム体60がそれ以上逆回転できない状態に至るまで継続可能である。
【0049】
駆動装置30による回転カム体60の回転によりリッドロック部材50がロック位置とロック解除位置との間で位置移動される回転カム体60の角度区間と、同じく回転カム体60の回転によりリッド駆動部材40がリッド20の閉位置と全開位置との間で位置移動される回転カム体60の角度区間と、は互いに重なり合っていない。すなわち、回転カム体60のカム部62とカム係合部材70の係合凸部73との位置関係と、リッド20の被係合部24とリッド駆動部材40の係合部42との位置関係と、は上記の角度区間同士が互いに重なり合わないように設定されている。
【0050】
例えば、カム係合部材70の係合凸部73が回転カム体60のカム部62のロック側駆動区間部S1に係合しているときは、回転カム体60が正回転すると、そのカム係合部材70がリッドロック部材50と一体でロック位置からロック解除位置へ向けて後退する。このときは、回転カム体60が正回転しても、リッド駆動部材40の係合部42がリッド20の被係合部24に係合せず、リッド20の回動中心軸Cを中心にした回動は生じない。
【0051】
一方、カム係合部材70の係合凸部73が回転カム体60のカム部62のリッド側駆動区間部S2に係合しているときは、回転カム体60が正回転しても、そのカム係合部材70がリッドロック部材50と一体でロック解除位置に維持される。このときは、回転カム体60が正回転すると、やがてリッド駆動部材40の係合部42がリッド20の被係合部24に係合して、リッド20が回動中心軸Cを中心にして開方向へ回動される。
【0052】
次に、
図12及び
図13を参照して、リッド開閉構造1の通常動作について説明する。
リッド20が閉位置にロックされているときは、第一付勢部材90の付勢力によりリッドロック部材50がロック解除位置側からロック位置側へ付勢されてカム係合部材70に当接し、リッドロック部材50及びカム係合部材70が互いに連動して軸方向に前進し、ロック部51がロック係合部25に挿入された状態にある。
【0053】
このとき、カム係合部材70の係合凸部73は、回転カム体60のカム部62の周方向一端部(具体的には、ロック側空転区間部S0の周方向一端部)に係合している。また、リッド20の被係合部24は、リッド駆動部材40の係合部42に係合している。
【0054】
以下、上記の状態のときの回転カム体60の角度位置を基準角度(0°)とする。また例えば、ロック側空転区間部S0の周方向長は、回転カム体60の回転角度θ0(例えば10°)分に相当し、ロック側駆動区間部S1の周方向長は、回転カム体60の回転角度θ1(例えば100°)分に相当し、リッド側駆動区間部S2の周方向長は、回転カム体60の回転角度θ2(例えば120°)分に相当するものとする。
【0055】
上記の状態から電動アクチュエータ80により回転カム体60を正回転させる駆動力が発生すると、回転カム体60が正回転する。回転カム体60が正回転すると、まず、カム係合部材70の係合凸部73がその回転カム体60のカム部62のロック側空転区間部S0に係合する。係合凸部73がロック側空転区間部S0に係合している間は、回転カム体60が正回転してもカム係合部材70がロック位置から後退しないので、リッドロック部材50がロック位置に維持される。
【0056】
次に、回転カム体60が基準角度から角度θ0だけ正回転すると、回転カム体60のカム部62におけるカム係合部材70の係合凸部73が係合する係合位置がロック側空転区間部S0からロック側駆動区間部S1へ移行する。係合凸部73がカム部62のロック側駆動区間部S1に係合しているときは、カム係合部材70が回転カム体60の正回転に伴ってリッドロック部材50と一体で第一付勢部材90の付勢力に抗してロック位置からロック解除位置へ向けて徐々に後退する。そして、回転カム体60が基準角度から角度(θ0+θ1)だけ正回転して係合凸部73がロック側駆動区間部S1とリッド側駆動区間部S2との境界付近に達すると、リッドロック部材50のロック部51がリッド20のロック係合部25から外れて、リッドロック部材50がロック位置からロック解除位置へ移行する。
【0057】
尚、このリッドロック部材50がロック位置からロック解除位置へ移行する過程では、リッド駆動部材40の軸部41の係合部42がリッド20の被係合部24に係合しない非係合状態に維持されるので、リッド20は閉位置に維持される。
【0058】
回転カム体60が基準角度に対して角度(θ0+θ1)をなす角度位置から更に正回転して係合凸部73がカム部62のリッド側駆動区間部S2に係合し始めると、カム係合部材70の後退が停止されてリッドロック部材50の後退が停止される。この後退停止後は、回転カム体60の更なる正回転が生じたとしても、リッドロック部材50は、ロック解除位置に維持される。
【0059】
カム係合部材70の係合凸部73がリッド側駆動区間部S2に係合した状態すなわちリッドロック部材50がロック解除位置に維持された状態で、回転カム体60の更なる正回転が生じると、リッド駆動部材40の軸部41の係合部42がリッド20の被係合部24の周方向一端面に係合する。かかる係合状態で回転カム体60の正回転が継続すると、リッド駆動部材40が回動中心軸Cを中心にしてリッド20の開方向へ回動されて、リッド20が開動作する。このリッド20の開動作は、リッド20が全開位置に達するまで実行可能である。そして、回転カム体60が基準角度から角度(θ0+θ1+θ2)だけ正回転すると、リッド20が全開位置に達する。
【0060】
リッド20が閉位置ではない開状態にあるときは、リッドロック部材50がロック解除位置に維持されていると共に、リッド駆動部材40の係合部42がリッド20の被係合部24の周方向一端面に係合している。この開状態から電動アクチュエータ80によりリッド20を閉動作させる駆動力が発生すると、回転カム体60が逆回転する。
【0061】
回転カム体60が逆回転すると、まず、第一付勢部材90の付勢力によりカム係合部材70の係合凸部73がその回転カム体60のカム部62のリッド側駆動区間部S2に係合しているため、その逆回転が生じてもカム係合部材70が前進せずリッドロック部材50がロック解除位置に維持される。このリッドロック部材50がロック解除位置に維持される状態は、回転カム体60がリッド20の全開位置から角度θ2だけ逆回転するまで継続される。
【0062】
また、回転カム体60が逆回転すると、リッド駆動部材40はその係合部42がリッド20の被係合部24の周方向一端面から周方向に離間するように回動される。リッド20は、第二付勢部材110により閉方向に付勢されている。このため、回転カム体60が逆回転した場合、第二付勢部材110の付勢力によりリッド20がそのリッド駆動部材40の回動に追従して閉方向へ回動される。このリッド20の閉動作は、その被係合部24がリッド駆動部材40の係合部42に当接した状態で行われる。
【0063】
回転カム体60がリッド20の全開位置から角度θ2だけ逆回転すると、リッド20が閉位置に達すると共に、第一付勢部材90の付勢力によりその回転カム体60のカム部62におけるカム係合部材70の係合凸部73が係合する係合位置がリッド側駆動区間部S2からロック側駆動区間部S1へ移行し、以後、そのカム係合部材70がリッドロック部材50と一体でロック解除位置側からロック位置側へ前進し始める。
【0064】
カム係合部材70の係合凸部73がカム部62のロック側駆動区間部S1に係合するときは、カム係合部材70が回転カム体60の逆回転に伴ってリッドロック部材50と一体で徐々に前進する。そして、回転カム体60がリッド20の全開位置から角度(θ2+θ1)だけ逆回転して係合凸部73がロック側駆動区間部S1とロック側空転区間部S0との境界付近に達すると、リッドロック部材50のロック部51がリッド20のロック係合部25に挿入されて、リッドロック部材50がロック解除位置からロック位置へ移行する。
【0065】
回転カム体60がリッド20の全開位置に対して角度(θ2+θ1)をなす角度位置から更に逆回転して係合凸部73がロック側空転区間部S0に係合すると、カム係合部材70ひいてはリッドロック部材50の前進が停止される。この前進停止後は、回転カム体60の更なる逆回転が生じても、リッドロック部材50がロック位置に維持される。そして、係合凸部73がロック側空転区間部S0に係合してから回転カム体60が更に角度θ0だけ逆回転すると、リッド駆動部材40の軸部41の係合部42がリッド20の被係合部24の周方向他端面に係合することにより或いはカム係合部材70の係合凸部73が相対的に回転カム体60のカム部62の周方向他端部に達することにより、回転カム体60の更なる逆回転が規制される。
【0066】
このように、電動アクチュエータ80を用いて回転カム体60を正回転させることによって、リッドロック部材50をロック位置からロック解除位置へ向けて位置移動させることができると共に、リッドロック部材50がロック解除位置に位置する状態でリッド駆動部材40をリッド20の閉位置から全開位置へ向けて位置移動させることができる。これらのリッドロック部材50のロック位置からロック解除位置への位置移動と、リッド駆動部材40のリッド20の閉位置から全開位置への位置移動とは、一つの電動アクチュエータ80を用いた回転カム体60の軸回り一方向への正回転により、その順に連続して或いは時間差を設けて行われる。
【0067】
また、電動アクチュエータ80を用いて回転カム体60を逆回転させることにより、リッド駆動部材40をリッド20の全開位置から閉位置へ向けて位置移動させることができると共に、リッド駆動部材40がリッド20の閉位置に位置する状態でリッドロック部材50をロック解除位置からロック位置へ向けて位置移動させることができる。これらリッド駆動部材40のリッド20の全開位置から閉位置への位置移動と、リッドロック部材50のロック解除位置からロック位置への位置移動とは、一つの電動アクチュエータ80を用いた回転カム体60の軸回り一方向への逆回転により、その順に連続して或いは時間差を設けて行われる。
【0068】
従って、リッド駆動部材40によるリッド20の開動作及び閉動作とリッドロック部材50によるリッド20のロック/ロック解除動作とを、それぞれ適切かつ確実に行いつつ、最小限の一つの電動アクチュエータ80で実現することができる。このため、リッド開閉構造1における部品点数の削減や部品構成の簡素化を図ることができ、コスト低減を図ることができる。
【0069】
また、リッドロック部材50は、リッド20のロック位置とロック解除位置との間で位置移動される部材である。このリッドロック部材50は、開閉動作されるリッド20すなわちリッド駆動部材40の回動中心軸Cに近接した位置に配置されている。このため、リッドロック部材50がリッド20すなわちリッド駆動部材40の回動中心軸Cから離間した位置(例えば、その回動中心軸Cからリッド20を挟んだ反対側の位置)に配置されることはなく、リッド開閉構造1の大型化や複雑化を回避することができる。
【0070】
次に、
図14を参照して、リッド開閉構造1の緊急動作について説明する。
リッド20が閉位置にロックされている状態で電動アクチュエータ80に故障などが生じた場合は、その電動アクチュエータ80を用いたリッド20のロック解除動作を行うことができない。この場合には、緊急的にリッド20のロックを解除することが要求される。そこで、リッド開閉構造1は、外力付与部100を備えている。外力付与部100は、操作者による引っ張り操作によりリッドロック部材50をロック位置側からロック解除位置側へ位置移動させるワイヤ101を有している。
【0071】
リッド20が閉位置にロックされている状態でワイヤ101が操作者により引っ張り操作されると、リッドロック部材50に第一付勢部材90の付勢力に抗してロック位置側からロック解除位置側へ後退させる力が付与される。このリッドロック部材50に付与される力が第一付勢部材90の付勢力よりも大きいと、リッドロック部材50が第一付勢部材90の付勢力に抗してロック解除位置側へ後退される。かかる後退が生じると、リッドロック部材50のロック部51がリッド20のロック係合部25から外れて、リッドロック部材50がロック位置からロック解除位置へ移行する。
【0072】
リッドロック部材50がロック解除位置に達すれば、リッド20の閉位置ロックが解除され、そのリッド20の回動は許容される。従って、電動アクチュエータ80が故障等によりリッド20のロック解除動作を行うことができない緊急時において、ワイヤ101の引っ張り操作によりそのリッド20の閉位置ロックを解除することができる。
【0073】
また、ワイヤ101の引っ張り操作によりリッドロック部材50が後退しても、リッド20が第二付勢部材110により閉方向に付勢されていることにより、リッド20の被係合部24がリッド駆動部材40の係合部42に係合した状態に維持され、回転カム体60が回転停止状態に維持される。かかる状態で操作者の手動操作により第二付勢部材110の付勢力に抗してリッド20が開方向に付勢されると、リッド20が全開位置に向けて回動される。
【0074】
従って、電動アクチュエータ80の故障時などの緊急時において、操作者によりワイヤ101が引っ張り操作されることによりリッド20の閉位置ロックを解除することができると共に、その後、操作者によりリッド20が手動で開方向に付勢されることによりリッド20を全開位置まで回動させることができる。このため、リッド20の閉位置ロック状態での緊急時においても、車両充電や車両給油を確保することができる。
【0075】
上記の如くワイヤ101の引っ張り操作によりリッドロック部材50がロック位置からロック解除位置へ後退される場合は、第一付勢部材90の付勢力がリッドロック部材50で遮断されてカム係合部材70に伝達されない。この場合は、回転カム体60の回転に伴う回転カム体60のカム部62とカム係合部材70の係合凸部73との係合位置の変化によりリッドロック部材50がロック位置からロック解除位置へ後退される場合と異なり、カム係合部材70がリッドロック部材50の後退に連動せず、リッドロック部材50とカム係合部材70との進退連動が解除される。
【0076】
また、操作者の手動操作によりリッド20が全開位置に向けて回動されると、その回動中にリッド20の被係合部24がリッド駆動部材40の係合部42に係合してその係合部42を周方向に押圧する。この場合は、リッド駆動部材40ひいては回転カム体60が回動中心軸Cを中心にしてリッド20の開方向へ回動され、その回動に伴ってカム係合部材70の係合凸部73と回転カム体60のカム部62との係合位置が変化しながらカム係合部材70が後退する。
【0077】
尚、上記した操作者の手動操作が解除されると、第二付勢部材110の付勢力によりリッド20が閉位置に向けて回動され、その回動中にリッド20の被係合部24がリッド駆動部材40の係合部42に係合してその係合部42を周方向に押圧する。この場合は、リッド駆動部材40ひいては回転カム体60が回動中心軸Cを中心にしてリッド20の閉方向へ回動され、その回動に伴ってカム係合部材70の係合凸部73と回転カム体60のカム部62との係合位置が変化しながらカム係合部材70が前進する。
【0078】
このように、リッド開閉構造1においては、ワイヤ101の引っ張り操作によりリッドロック部材50がロック位置側からロック解除位置側へ後退してリッド20の閉位置ロックが解除される際、リッドロック部材50とカム係合部材70との進退連動を解除し、その状態でリッド20が手動操作により回動される際、カム係合部材70をリッド20の被係合部24に係合した状態でリッドロック部材50とは独立して進退させることができる。
【0079】
かかる構成においては、ワイヤ101が引っ張り操作された際、リッドロック部材50とカム係合部材70との進退が連動しないので、リッドロック部材50の後退に合わせてカム係合部材70を後退させるうえで必要な空間を設けることは不要であると共に、更には、リッドが開閉されたときにそのリッドロック部材の後退位置に対応したカム係合部の後退位置を確保するための広大な空間を設けることは不要である。このため、リッド開閉構造1を実現するうえでの制約が多くなるのを回避することができ、リッド20が閉位置にロックされている状態で緊急的なそのリッド20の閉位置ロックの解除を簡易な構造で実現することができる。
【0080】
更に、回転カム体60は、カム部62(特に、ロック側駆動区間部S1)とカム係合部材70の係合凸部73との係合位置が変化するときのカム係合部材70の相対移動を補助する補助ガイド部63を有している。補助ガイド部63は、カム部62との間に係合凸部73が通過するのに十分な溝通路が形成されるように、回転カム体60の外周面に径方向外方へ突出して形成配置されている。
【0081】
この構成においては、特にリッドロック部材50がロック位置とロック解除位置との間で進退する過程で、補助ガイド部63の存在によりカム係合部材70の係合凸部73が回転カム体60のカム部62から離間するのが規制されて係合凸部73とカム部62との係合が確保されるので、係合凸部73とカム部62との係合によるカム係合部材70ひいてはリッドロック部材50の進退を安定して行うことができる。
【0082】
尚、上記の実施形態においては、有底基材10が特許請求の範囲に記載した「基材」に、第一付勢部材90が特許請求の範囲に記載した「付勢部材」に、回転カム体60が基準角度に対してロック側空転区間部S0の周方向長に相当する角度θ0だけ正回転した角度位置と更にロック側駆動区間部S1の周方向長に相当する角度θ1だけ正回転した角度位置との角度区間が特許請求の範囲に記載した「第一角度区間」に、回転カム体60が基準角度に対してロック側空転区間部S0及びロック側駆動区間部S1それぞれの周方向長を加算した長さに相当する角度(θ0+θ1)だけ正回転した角度位置と更にロック側空転区間部S2の周方向長に相当する角度θ2だけ正回転した角度位置との角度区間が特許請求の範囲に記載した「第二角度区間」に、それぞれ相当している。
【0083】
ところで、上記の実施形態においては、回転カム体60の回転によりリッドロック部材50をリッド20のロック位置とロック解除位置との間で位置移動させる回転カム体60の角度区間と、回転カム体60の回転によりリッド駆動部材40をリッド20の閉位置と全開位置との間で位置移動させる回転カム体60の角度区間とは、互いに重なり合っていない。この実施形態の構造によれば、リッド20のロック/ロック解除動作とリッド20の開閉動作とが時間的に分離して行われるので、それらの動作中におけるリッドロック部材50とリッド20との干渉を確実に防止することができる。しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、両角度区間が互いに重なり合う部分を有するものとしてもよい。
【0084】
例えば、回転カム体60のカム部62の形状設定によっては、回転カム体60の正回転によりリッドロック部材50がロック位置からロック解除位置へ向けて後退し始めてそのロック解除位置に達した後も、更なる回転カム体60の正回転によりリッドロック部材50がそのロック解除位置を保ったまま更に後退することがある。このリッドロック部材50がロック解除位置への到達後も更に後退することがある構造では、リッドロック部材50のロック解除位置への到達後であればその後退停止前にリッド20の被係合部24とリッド駆動部材40の係合部42との係合が開始されてリッド20の開方向への回動が開始されたとしても、リッドロック部材50とリッド20との干渉は生じない。
【0085】
また、上記の如くリッドロック部材50がロック解除位置への到達後も更に後退することがある構造では、逆に、リッドロック部材50がロック解除位置からロック位置側へ前進を開始しても、そのリッドロック部材50がロック解除位置に位置する状態が継続する期間がある。この構造では、リッド20の閉位置への到達前にリッドロック部材50のロック解除位置からロック位置への前進が開始されても、リッドロック部材50とリッド20との干渉が生じない期間がある。
【0086】
そこで、リッドロック部材50とリッド20との干渉が生じない範囲すなわち駆動装置30によるリッド20のロック/ロック解除動作とリッド20の開閉動作とをそれぞれ適切に実行可能な範囲で、回転によりリッドロック部材50をリッド20のロック位置とロック解除位置との間で位置移動させる回転カム体60の角度区間と、回転によりリッド駆動部材40をリッド20の閉位置と全開位置との間で位置移動させる回転カム体60の角度区間とが、互いに重なり合う部分を有するものであってもよい。
【0087】
また、上記の実施形態においては、回転カム体60とリッド駆動部材40とが互いに一体に形成され、同期して回転する。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、回転カム体60とリッド駆動部材40とが別体で形成され、回転カム体60の回転とリッド駆動部材40の回転とが同期しない部分があってもよい。すなわち、一部の回転角度範囲で回転カム体60とリッド駆動部材40とが同期して回転しリッド20を開閉させることとしてもよい。
【0088】
尚、本発明は、上述した実施形態や変形形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0089】
1:リッド開閉構造、10:有底基材、20:リッド、24:被係合部、25:ロック係合部、30:駆動装置、40:リッド駆動部材、42:係合部、50:リッドロック部材、51:ロック部、60:回転カム体、62:カム部、70:カム係合部材、73:係合凸部、80:電動アクチュエータ、90:第一付勢部材、100:外力付与部、101:ワイヤ、110:第二付勢部材、C:回動中心軸、S1:ロック側駆動区間部、S2:リッド側駆動区間部。