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特許7287380接着剤組成物、フィルム状接着剤、接着層、接着シート、樹脂付銅箔、銅張積層板、プリント配線板、並びに多層配線板及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】接着剤組成物、フィルム状接着剤、接着層、接着シート、樹脂付銅箔、銅張積層板、プリント配線板、並びに多層配線板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 179/08 20060101AFI20230530BHJP
   C09J 109/00 20060101ALI20230530BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230530BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20230530BHJP
   C09J 7/28 20180101ALI20230530BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20230530BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
C09J179/08 Z
C09J109/00
C09J11/06
C09J7/35
C09J7/28
H05K1/03 610H
H05K3/46 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020207208
(22)【出願日】2020-12-15
(65)【公開番号】P2021095570
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】P 2019226066
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴史
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 淳
(72)【発明者】
【氏名】▲杉▼本 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】中村 太陽
(72)【発明者】
【氏名】田崎 崇司
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-119865(JP,A)
【文献】特開2013-199645(JP,A)
【文献】特開2019-172989(JP,A)
【文献】特開2006-342287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
B32B 1/00 - 43/00
H05K 1/03
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香環構造及び/又は脂環構造を有する酸二無水物(a1)並びにダイマージアミンを含むジアミン(a2)を含むモノマー群の反応物(A)、架橋剤(B)、並びにジエン系ポリマー(C)を含む接着剤組成物であり、
ジエン系ポリマー(C)を構成するモノマーとして、1,2-ビニル構造を有するジエン系モノマーを含む、接着剤組成物。
【請求項2】
さらに、硬化剤(D)を含む請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
さらに、難燃剤(E)を含む請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
さらに、熱ラジカル重合開始剤(F)を含む請求項1~3のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の接着剤組成物の加熱硬化物を含む、フィルム状接着剤。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載の接着剤組成物又は請求項5に記載のフィルム状接着剤を含む、接着層。
【請求項7】
請求項6に記載の接着層及び支持フィルムを含む、接着シート。
【請求項8】
請求項6に記載の接着層及び銅箔を含む、樹脂付銅箔。
【請求項9】
請求項7に記載の接着シート及び/又は請求項8に記載の樹脂付銅箔
並びに
銅箔、絶縁性シート及び支持フィルムからなる群から選択される1つ以上を含む、銅張積層板。
【請求項10】
請求項9に記載の銅張積層板の銅箔面に回路パターンを有する、プリント配線板。
【請求項11】
プリント配線板又はプリント回路板(1)、
請求項6に記載の接着層、及び
プリント配線板又はプリント回路板(2)をこの順に含む、
多層配線板。
【請求項12】
下記工程1及び2を含む多層配線板の製造方法。
工程1:請求項1~4のいずれかに記載の接着剤組成物又は請求項5に記載のフィルム状接着剤を、プリント配線板又はプリント回路板(1)の少なくとも片面に接触させることによって、接着層付基材を製造する工程
工程2:該接着層付基材の上に、プリント配線板又はプリント回路板(2)を積層し、加熱及び加圧下に圧着する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は接着剤組成物、フィルム状接着剤、接着層、接着シート、樹脂付銅箔、銅張積層板、プリント配線板、並びに多層配線板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話及びスマートフォン等のモバイル型通信機器やその基地局装置、サーバー・ルーター等のネットワーク関連電子機器、大型コンピュータ等においては、大容量の情報を低損失かつ高速で伝送・処理する必要があり、それら製品のプリント配線板で扱う電気信号も高周波化が進んでいる。しかし高周波の電気信号は減衰しやすいため、プリント配線板における伝送損失を一層低くする必要がある。そのため、プリント配線板に一般的に用いられる接着剤組成物には、低誘電率で且つ低誘電正接であること(以下、低誘電特性ともいう。)が求められる。
【0003】
また、プリント配線板には、部品を搭載する際に用いるはんだ材料の鉛フリー対応が進むにつれ、260℃程度のリフロー温度におけるはんだ耐熱性が要求される。また、リフロー工程前には、吸湿による発泡やフクレを抑制する為、プリント配線板を100~120℃の温度で前乾燥することが多い。しかし昨今、生産効率性向上のため、前乾燥処理を行わずにはんだリフロー工程を行うケースが増えてきた。そこでプリント配線板に用いる接着剤には、接着性は勿論のこと、はんだ耐熱性を呈することが求められている。
【0004】
接着性及びはんだ耐熱性に優れ、かつ低誘電特性をも有する接着剤組成物としては、例えば特許文献1において、所定のガラス転移温度、引張破断強度及び引張弾性率を備えるフィルム状のポリイミド系接着剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-197007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に示される接着剤は、GHz帯域における低誘電特性は不十分であり、改良の余地のある発明であった。
【0007】
本開示では、接着性及びはんだ耐熱性が良好な低誘電特性を有する接着剤組成物、フィルム状接着剤、接着層、接着シート、樹脂付銅箔、銅張積層板、プリント配線板、並びに多層配線板及びその製造方法を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意検討の結果、所定の接着剤組成物によって、上記課題が解決されることを見出した。
【0009】
本開示により以下の項目が提供される。
(項目1)
芳香環構造及び/又は脂環構造を有する酸二無水物(a1)並びにダイマージアミンを含むジアミン(a2)を含むモノマー群の反応物(A)、架橋剤(B)、並びにジエン系ポリマー(C)を含む接着剤組成物であり、
ジエン系ポリマー(C)を構成するモノマーとして、1,2-ビニル構造を有するジエン系モノマーを含む、接着剤組成物。
(項目2)
さらに、硬化剤(D)を含む項目1に記載の接着剤組成物。
(項目3)
さらに、難燃剤(E)を含む項目1又は2に記載の接着剤組成物。
(項目4)
さらに、熱ラジカル重合開始剤(F)を含む項目1~3のいずれかに記載の接着剤組成物。
(項目5)
項目1~4のいずれかに記載の接着剤組成物の加熱硬化物を含む、フィルム状接着剤。
(項目6)
項目1~4のいずれかに記載の接着剤組成物又は項目5に記載のフィルム状接着剤を含む、接着層。
(項目7)
項目6に記載の接着層及び支持フィルムを含む、接着シート。
(項目8)
項目6に記載の接着層及び銅箔を含む、樹脂付銅箔。
(項目9)
項目7に記載の接着シート及び/又は項目8に記載の樹脂付銅箔
並びに
銅箔、絶縁性シート及び支持フィルムからなる群から選択される1つ以上を含む、銅張積層板。
(項目10)
項目9に記載の銅張積層板の銅箔面に回路パターンを有する、プリント配線板。
(項目11)
プリント配線板又はプリント回路板(1)、
項目6に記載の接着層、及び
プリント配線板又はプリント回路板(2)をこの順に含む、
多層配線板。
(項目12)
下記工程1及び2を含む多層配線板の製造方法。
工程1:項目1~4のいずれかに記載の接着剤組成物又は項目5に記載のフィルム状接着剤を、プリント配線板又はプリント回路板(1)の少なくとも片面に接触させることによって、接着層付基材を製造する工程
工程2:該接着層付基材の上に、プリント配線板又はプリント回路板(2)を積層し、加熱及び加圧下に圧着する工程
【発明の効果】
【0010】
本開示の接着剤組成物を用いることにより、接着性及びはんだ耐熱性が良好な低誘電特性を有する接着剤組成物、フィルム状接着剤、接着層、接着シート、樹脂付銅箔、銅張積層板、プリント配線板、並びに多層配線板及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の全体にわたり、各物性値、含有量等の数値の範囲は、適宜(例えば下記の各項目に記載の上限及び下限の値から選択して)設定され得る。具体的には、数値αについて、数値αの下限がA1、A2、A3等が例示され、数値αの上限がB1、B2、B3等が例示される場合、数値αの範囲は、A1以上、A2以上、A3以上、B1以下、B2以下、B3以下、A1~B1、A1~B2、A1~B3、A2~B1、A2~B2、A2~B3、A3~B1、A3~B2、A3~B3等が例示される。なお、本開示において「~」とは、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0012】
<(A)成分>
本開示の芳香環構造及び/又は脂環構造を有する酸二無水物(a1)(以下、「(a1)成分」ともいう。)並びにダイマージアミンを含むジアミン(a2)(以下、「(a2)成分」ともいう。)を含むモノマー群の反応物(A)(以下、「(A)成分」ともいう。)とはポリイミドのことである。
【0013】
<(a1)成分>
(a1)成分として、各種公知のものを特に制限なく使用できる。(a1)成分として例示される物質並びに(a1)成分として公知のものを単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0014】
芳香環構造を有する酸二無水物として、下記一般式で表されるものが例示される。
【化1】
(式中、
Xは単結合、-SO-、-CO-、-O-、-O-C-C(CH-C-O-、-COO-X-OCO-又はXを表す。
は-(CH-(l=1以上20以下)又は-HC-HC(-O-C(=O)-CH)-CH-を表す。
は、下記式を表す。
【化2】
【0015】
芳香環構造を有する酸二無水物として、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-[プロパン-2,2-ジイルビス(1,4-フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物、2,2-ビス(3,3’,4,4’-テトラカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシフェニル)スルホン二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸無水物、9,9’-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン酸二無水物、9,9’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フルオレン酸二無水物、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物等が例示される。
【0016】
脂環構造を有する酸二無水物として、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-テトラメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、テトラヒドロフラン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物等が例示される。
【0017】
芳香環構造及び脂環構造を有する酸二無水物として、製品名「BzDA」(JXTGエネルギー(株)製)等が例示される。
【0018】
(A)成分を構成するモノマー群100質量%中の(a1)成分の含有量(固形分換算)の上限は、80、70、60、50、40、30、20、10、5、3質量%等が例示され、下限は、70、60、50、40、30、20、10、5、3、1質量%等が例示される。1つの実施形態において、(A)成分を構成するモノマー群100質量%中の(a1)成分の含有量(固形分換算)は、1~80質量%程度が好ましい。
【0019】
<(a2)成分>
(a2)成分はダイマージアミンを含むジアミンのことである。ダイマージアミンとは、不飽和脂肪酸の二量体として得られる環式又は非環式ダイマー酸の全てのカルボキシル基を一級アミノ基に置換したものが例示される。(a2)成分として、各種公知のものを特に制限なく使用できる。(a2)成分として例示される物質及び(a2)成分として公知のものを単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
ダイマージアミンとして、下記構造で表されるものが例示される。なお、各式において、好ましくはm+n=6以上17以下であり、好ましくはp+q=8以上19以下であり、破線部は炭素-炭素単結合又は炭素-炭素二重結合を意味する
【化3】
【0021】
ダイマージアミンは、市販された製品であってもよい。当該製品として、製品名「バーサミン551」「バーサミン552(バーサミン551の水添物)」(コグニクスジャパン(株)製)、製品名「PRIAMINE1075」「PRIAMINE1074」(クローダジャパン(株)製)等が例示される。
【0022】
<その他のジアミン>
上記ダイマージアミン以外に、下記のジアミンを(A)成分のモノマー群に含めてもよい。上記ダイマージアミン以外のジアミンとして、鎖状構造の炭化水素基を有するジアミン、脂環構造を有するジアミン、芳香環構造を有するジアミン等が例示される。
【0023】
鎖状構造の炭化水素基を有するジアミンとして、1,3-ジアミノプロパン、1,2-ジアミノプロパン、1,2-ジアミノ-2-メチルプロパン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン等が例示される。
【0024】
脂環構造を有するジアミンとして、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(アミノメチル)ノルボルナン等が例示される。
【0025】
芳香環構造を有するジアミンとして、3-アミノベンジルアミン、4-アミノベンジルアミン、4-(アミノメチル)ベンジルアミン、2,5-ジメチル-1,4-フェニレンジアミン、4,4‘-ジアミノ-2,2’-ジメチルビベンジル、3,3‘-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3‘-ジメチルジフェニルメタン、1,5-ジアミノナフタレン等が例示される。
【0026】
1つの実施形態において、(a2)成分100質量%中のダイマージアミンの含有量(固形分換算)の上限は、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、5質量%等が例示され、下限は、90、80、70、60、50、40、30、20、10、5、1質量%等が例示される。1つの実施形態において、(a2)成分100質量%中のダイマージアミンの含有量(固形分換算)は、1~100質量%程度等が例示される。
【0027】
1つの実施形態において、(a2)成分100質量%中のその他のジアミンの含有量(固形分換算)の上限は、99、90、80、70、60、50、40、30、20、10、5、1、0.1質量%等が例示され、下限は、90、80、70、60、50、40、30、20、10、5、1、0.1、0質量%等が例示される。1つの実施形態において、(a2)成分100質量%中のその他のジアミンの含有量(固形分換算)は、0~99質量%程度等が例示される。
【0028】
(A)成分を構成するモノマー群100質量%中の(a2)成分の含有量(固形分換算)の上限は、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20質量%等が例示され、下限は、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15質量%等が例示される。1つの実施形態において、(A)成分を構成するモノマー群100質量%中の(a2)成分の含有量(固形分換算)は、15~90質量%程度が好ましい。
【0029】
(A)成分の重量平均分子量の上限は、60000、50000、40000、30000、20000、10000、7500、5500等が例示され、下限は、50000、40000、30000、20000、10000、7500、5000等が例示される。1つの実施形態において、(A)成分の重量平均分子量は誘電特性、溶剤可溶性、柔軟性の観点から5000~60000程度が好ましい。本開示において重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値として求められ得る。
【0030】
本開示の接着剤組成物100質量%における(A)成分の含有量(固形分換算)の上限は、99、95、90、80、70、60、50、40、30質量%等が例示され、下限は、95、90、80、70、60、50、40、30、20質量%等が例示される。1つの実施形態において、本開示の接着剤組成物100質量%における(A)成分の含有量(固形分換算)は、20~99質量%程度が好ましい。
【0031】
(A)成分の軟化点(℃)の下限は、はんだ耐熱性に優れることから、230、210、190、170、150、130、110、100、90、80、70等が例示され、上限は、作業性に優れることから、250、230、210、190、170、150、130、110、100、90、80等が例示される。1つの実施形態において、(A)成分の軟化点(℃)は、70~250程度が好ましい。本開示において、軟化点とは市販の測定器(製品名「ARES-2KSTD-FCO-STD」、Rheometric Scientific社製)を用いて測定した貯蔵弾性率(G’)のプロファイルと損失弾性率(G’’)のプロファイルの交差する点、すなわちtanδが1となる点における温度を指す。
【0032】
上記酸二無水物と総ジアミンとのモル比(酸二無水物/総ジアミン)の上限は、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1.0等が例示され、下限は1.4、1.3、1.2、1.1、1.0、0.9等が例示される。1つの実施形態において、上記酸二無水物と総ジアミンとのモル比(酸二無水物/総ジアミン)は、溶剤可溶性、溶液安定性の観点より、0.9~1.5程度が好ましい。
【0033】
(A)成分は、各種公知の方法により製造できる。(A)成分の製造方法は、芳香環構造及び/又は脂環構造を有する酸二無水物及びダイマージアミンを含み、さらに適宜その他のジアミンやその他の酸無水物を含むモノマー群を、好ましくは50℃以上120℃以下程度、より好ましくは80℃以上100℃以下程度の温度において、好ましくは5時間以下程度、より好ましくは3時間以下程度、重付加反応させて、重付加物を得る工程、得られた重付加物を好ましくは80℃以上250℃以下程度、より好ましくは100℃以上200℃以下程度の温度において、好ましくは0.5時間以上50時間以下程度、より好ましくは1時間以上20時間以下程度、イミド化反応、即ち脱水閉環反応させる工程を含む方法等が例示される。
【0034】
イミド化反応では、各種公知の反応触媒、脱水剤、及び後述する有機溶剤が使用され得る。各種公知の反応触媒、脱水剤、及び後述する有機溶剤は、単独又は2種以上で使用され得る。反応触媒は、トリエチルアミン等の脂肪族第3級アミン、ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン、ピリジン、ピコリン、イソキノリン等の複素環式第3級アミン等が例示される。また、脱水剤は、無水酢酸等の脂肪族酸無水物や無水安息香酸等の芳香族酸無水物等が例示される。
【0035】
ポリイミドのイミド閉環率は特に限定されない。ここで「イミド閉環率」とは、ポリイミドにおける環状イミド結合の含有量を意味し、例えばNMRやIR分析等の各種分光手段により決定できる。接着性及びはんだ耐熱性が良好となる観点から、ポリイミドのイミド閉環率は、70%以上程度が好ましく、85%以上100%以下程度がより好ましい。
【0036】
<架橋剤(B)>
架橋剤(B)(以下、「(B)成分」ともいう。)は、(C)成分以外のもので、接着剤の架橋剤として機能するものであれば、各種公知のものを特に制限なく使用できる。架橋剤は、架橋剤として例示される物質及び架橋剤として公知のものを単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。架橋剤は、エポキシド、ベンゾオキサジン、ビスマレイミド及びシアネートエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0037】
エポキシドとして、各種公知のものを特に制限なく使用できる。エポキシドとして、フェノールノボラック型エポキシド、クレゾールノボラック型エポキシド、ビスフェノールA型エポキシド、ビスフェノールF型エポキシド、ビスフェノールS型エポキシド、水添ビスフェノールA型エポキシド、水添ビスフェノールF型エポキシド、スチルベン型エポキシド、トリアジン骨格含有エポキシド、フルオレン骨格含有エポキシド、線状脂肪族エポキシド、脂環式エポキシド、グリシジルアミン型エポキシド、トリフェノールメタン型エポキシド、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシド、ビフェニル型エポキシド、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシド、ナフタレン骨格含有エポキシド、アリールアルキレン型エポキシド、テトラグリシジルキシリレンジアミン、上記エポキシドのダイマー酸変性物であるダイマー酸変性エポキシド、ダイマー酸ジグリシジルエステル等が例示される。エポキシドは、市販された製品であってもよい。当該製品として、三菱ケミカル(株)製の「jER828」、「jER834」、「jER807」、日鉄ケミカル&マテリアル(株)製の「ST-3000」、(株)ダイセル製の「セロキサイド2021P」、日鉄ケミカル&マテリアル(株)製の「YD-172-X75」、三菱ガス化学(株)製の「TETRAD-X」等が例示される。
【0038】
特に下記構造のテトラグリシジルジアミン
【化4】
(式中、Yはフェニレン基又はシクロヘキシレン基を表す。)
は、上記ポリイミドとの相溶性が良好である。また、これを用いると接着層の低損失弾性率化が容易となり、その耐熱接着性及び低誘電特性も良好となる。
【0039】
ベンゾオキサジンとして、各種公知のものを特に制限なく使用できる。ベンゾオキサジンとして、6,6-(1-メチルエチリデン)ビス(3,4-ジヒドロ-3-フェニル-2H-1,3-ベンゾオキサジン)、6,6-(1-メチルエチリデン)ビス(3,4-ジヒドロ-3-メチル-2H-1,3-ベンゾオキサジン)等が例示される。なお、オキサジン環の窒素にはフェニル基、メチル基、シクロヘキシル基等が結合していてもよい。ベンゾオキサジンは、市販された製品であってもよい。当該製品として、四国化成工業(株)製の「ベンゾオキサジンF-a型」、「ベンゾオキサジンP-d型」、エア・ウォ-タ-社製の「RLV-100」等が例示される。
【0040】
ビスマレイミドとして、各種公知のものを特に制限なく使用できる。ビスマレイミドとして、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、1,6’-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、4,4’-ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4’-ジフェニルスルフォンビスマレイミド等が例示される。ビスマレイミドは、市販された製品であってもよい。当該製品として、JFEケミカル(株)製の「BAF-BMI」等が例示される。ビスマレイミドはポリイミドの架橋剤として機能するだけでなく、(C)成分の架橋剤としても機能することから、ビスマレイミドは好ましい架橋剤である。また、(B)成分にビスマレイミドを含めることで、架橋密度が上昇し、本開示の接着剤組成物の接着性や耐熱性がより良好になる傾向にある。
【0041】
シアネートエステルとして、各種公知のものを特に制限なく使用できる。シアネートエステルとして、2-アリルフェノールシアネートエステル、4-メトキシフェノールシアネートエステル、2,2-ビス(4-シアナトフェノール)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、ビスフェノールAシアネートエステル、ジアリルビスフェノールAシアネートエステル、4-フェニルフェノールシアネートエステル、1,1,1-トリス(4-シアナトフェニル)エタン、4-クミルフェノールシアネートエステル、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)エタン、4,4’-ビスフェノールシアネートエステル、2,2‐ビス(4―シアナトフェニル)プロパン等が例示される。シアネートエステルは、市販された製品であってもよい。当該製品として、ロンザジャパン(株)製の「PRIMASET BTP-6020S」等が例示される。
【0042】
本開示の接着剤組成物100質量%中の架橋剤の含有量(固形分換算)の上限は、10、5、2、1、0.8、0.6、0.1、0.05質量%等が例示され、下限は、5、2、1、0.8、0.6、0.1、0.05、0.01質量%等が例示される。1つの実施形態において、本開示の接着剤組成物100質量%中の架橋剤の含有量(固形分換算)は、0.01~10質量%程度が好ましい。
【0043】
<ジエン系ポリマー(C)>
ジエン系ポリマー(C)(以下、「(C)成分」ともいう。)は、重合性不飽和結合である炭素-炭素二重結合を2つ有するモノマーであるジエン系モノマーを含むモノマーを重合することで得られるポリマーのことである。(C)成分は、(C)成分を構成するモノマーとして1,2-ビニル構造を有するジエン系モノマーを含めばよい。(C)成分の代わりに、(C)成分を構成するモノマーとして1,2-ビニル構造を有さないジエン系モノマーのみを用いた場合、接着剤組成物の硬化性が悪いため好ましくない。
【0044】
(C)成分として、各種公知のものを特に制限なく使用できる。(C)成分として、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエン-イソプレン共重合体、イソブチレン-イソプレン共重合体、ブタジエン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-イソプレン共重合体等が例示される。(C)成分は、市販された製品であってもよい。当該製品として、液状ブタジエン・スチレン・ランダムコポリマー(製品名「RICON100」、「RICON181」、「RICON184」(CRAY VALLEY社製))、液状ポリブタジエン(製品名「RICON150」、「RICON154」、「RICON156」(CRAY VALLEY社製))等が例示される。(C)成分として例示された物質及び(C)成分として公知のものを単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0045】
(C)成分は、各種公知の方法により製造できる。(C)成分の製造方法として、
(1)1,2-ビニル構造を有するジエン系モノマー(α)を重合させる方法、
(2)1,2-ビニル構造を有するジエン系モノマー(α)と、1,2-ビニル構造を有するジエン系モノマーと重合することのできるモノマー(β)を共重合させる方法が例示される。ここで、(C)成分の製造時に、必要に応じて各種の重合開始剤やランダマイザー等を使用してもよい。また、リチウム系の重合開始剤を用いてアニオン重合で(C)成分を製造する際には、各種変性剤でポリマー鎖のリビング末端を変性することも可能である。変性剤として、エチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを使用すれば、両末端又は片末端に水酸基を有するジエン系ポリマーを得ることができる。
【0046】
1,2-ビニル構造を有するジエン系モノマー(α)として、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,4-ペンタジエン、2,4-ジメチルペンタ-1,3-ジエン、1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、1,7-オクタジエン、アクリロニトリル、ジビニルベンゼン、1,3-ジイソプロペニルベンゼン、1,4-ジイソプロペニルベンゼン等が例示される。
【0047】
1,2-ビニル構造を有するジエン系モノマーと重合することのできるモノマー(β)として、重合性不飽和結合を2つ以上有し、1,2-ビニル構造を有さないモノマー(β-1)、重合性不飽和結合を1つ有するモノマー(β-2)等が例示される。
【0048】
重合性不飽和結合を2つ以上有し、1,2-ビニル構造を有さないモノマー(β-1)として、2,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、2,5-ジメチル-2,4-ヘキサジエン等が例示される。
【0049】
重合性不飽和結合を1つ有するモノマー(β-2)として、鎖状構造を有し重合性不飽和結合を1つ有するモノマー(β-2-1)、環状構造を有し重合性不飽和結合を1つ有するモノマー(β-2-2)等が例示される。
【0050】
鎖状構造を有し重合性不飽和結合を1つ有するモノマー(β-2-1)として、エチレン、プロピレン、ブテン、2-メチルプロペン、3-メチル-1-ブテン、1,3-ブタジエンモノエポキシド等が例示される。
【0051】
環状構造を有し重合性不飽和結合を1つ有するモノマー(β-2-2)として、芳香環構造を有し重合性不飽和結合を1つ有するモノマー(β-2-2-1)、その他環状構造を有し重合性不飽和結合を1つ有するモノマー(β-2-2-2)等が例示される。(C)成分は、接着性がより優れる傾向にあると考えられることから、環状構造を有し重合性不飽和結合を1つ有するモノマー(β-2-2)を含ませることが好ましく、芳香環構造を有し重合性不飽和結合を1つ有するモノマー(β-2-2-1)を含ませることがより好ましい。
【0052】
芳香環構造を有し重合性不飽和結合を1つ有するモノマー(β-2-2-1)として、スチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、2-フェニル-1-プロペン等が例示される。
【0053】
その他環状構造を有し重合性不飽和結合を1つ有するモノマー(β-2-2-2)として、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、1-ビニルイミダゾール、2-メチル-1-ビニルイミダゾール、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、2-ビニルピリジン等が例示される。
【0054】
(C)成分の数平均分子量(Mn)の上限は、20000、17500、15000、12500、10000、9000、8000、7000、6000、5000、4000、3000、2000等が例示され、下限は、17500、15000、12500、10000、9000、8000、7000、6000、5000、4000、3000、2000、1000等が例示される。1つの実施形態において、(C)成分の数平均分子量(Mn)は、1000~20000程度が好ましい。(C)成分の数平均分子量(Mn)は上記上限以下であることで接着性がより優れる傾向にある。本開示において数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値として求められ得る。
【0055】
上記1,2-ビニル構造を有するジエン系モノマーと重合することのできるモノマー(β)がスチレンの場合、(C)成分のスチレンの含量(styreneモル%)の上限は、60、50、40、30、20、10モル%等が例示され、下限は、50、40、30、20、10、5モル%等が例示される。1つの実施形態において、スチレンの含量(styreneモル%)は、5~60モル%程度が好ましい。
【0056】
(C)成分の1,2-ビニル構造を有するジエン系モノマーの含量(1,2vinylモル%)の上限は、100、95、90、85、80、75、70、60、50、40、30、20モル%等が例示され、下限は、95、90、85、80、75、70、60、50、40、30、20、10等が例示される。1つの実施形態において、(C)成分の1,2vinylモル%は、10~100モル%程度が好ましい。本開示の接着剤組成物は、(C)成分の1,2vinylモル%が多いほど接着性及び/又は低誘電特性が良好となる。
【0057】
本開示の接着剤組成物100質量%中の(C)成分の含有量(固形分換算)の上限は、30、20、10、5、2、1質量%等が例示され、下限は、20、10、5、2、1、0.5質量%等が例示される。1つの実施形態において、本開示の接着剤組成物100質量%中の(C)成分の含有量(固形分換算)は、0.5~30質量%程度が好ましい。
【0058】
<硬化剤(D)>
1つの実施形態において、(B)成分がエポキシドを含む場合、本開示の接着剤組成物に各種公知の硬化剤(D)(以下、「(D)成分」ともいう。)を併用してもよい。本開示において「硬化剤」とは、エポキシドと反応する硬化剤のことである。
【0059】
(D)成分として、各種公知のものを特に制限なく使用できる。(D)成分として、フェノール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、イミダゾール系硬化剤等が例示される。(D)成分として例示される物質及び(D)成分として公知のものを単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0060】
フェノール系硬化剤として、各種公知のものを特に制限なく使用できる。フェノール系硬化剤として、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、トリアジン変性フェノールノボラック樹脂、フェノール性水酸基含有ホスファゼン等が例示される。フェノール系硬化剤は、市販された製品であってもよい。当該製品として、フェノール性水酸基含有ホスファゼン(大塚化学(株)製の製品名「SPH-100」等)、ノボラック型フェノール(DIC社製「TD-2091」、明和化成社製「H-4」)、ビフェニルノボラック型フェノール(明和化成社製「MEH-7851」)、アラルキル型フェノール化合物(明和化成社製「MEH-7800」)、並びにアミノトリアジン骨格を有するフェノール(DIC社製「LA1356」及び「LA3018-50P」)等が例示される。
【0061】
活性エステル系硬化剤として、各種公知のものを特に制限なく使用できる。活性エステル系硬化剤として、特開2019-183071に記載されているようなジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤を使用することが考えられる。活性エステル系硬化剤は、市販された製品であってもよい。当該製品として、製品名「エピクロン HPC-8000-65T」、「EXB-8150-65T」(DIC(株)製)等が例示される。活性エステル系硬化剤は、各種公知の方法により製造してもよい。活性エステル系硬化剤は、特許第5152445号公報に記載されているように多官能フェノール化合物と芳香族カルボン酸類を反応させることによって得てもよい。
【0062】
アミン系硬化剤として、各種公知のものを特に制限なく使用できる。アミン系硬化剤として、ジシアンジアミド、脂肪族アミン等が例示される。
【0063】
酸無水物系硬化剤として、各種公知のものを特に制限なく使用できる。酸無水物系硬化剤として、無水コハク酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3-メチル-ヘキサヒドロ無水フタル酸、4-メチル-ヘキサヒドロ無水フタル酸、或いは4-メチル-ヘキサヒドロ無水フタル酸とヘキサヒドロ無水フタル酸との混合物、テトラヒドロ無水フタル酸、メチル-テトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、ノルボルナン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチルノルボルナン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、3-ドデセニル無水コハク酸、オクテニルコハク酸無水物等が例示される。
【0064】
イミダゾール系硬化剤として、各種公知のものを特に制限なく使用できる。イミダゾール系硬化剤として、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウム・トリメリテート、エポキシ-イミダゾールアダクト等が例示される。
【0065】
本開示の接着剤組成物100質量%中の(D)成分の含有量(固形分換算)の上限は、10、5、3、1、0.1、0.05、0.01、0.005、0.001、0.0005質量%等が例示され、下限は、5、3、1、0.1、0.05、0.01、0.005、0.001、0.0005、0.0001、0質量%等が例示される。1つの実施形態において、本開示の接着剤組成物100質量%中の(D)成分の含有量(固形分換算)は、0~10質量%程度が好ましい。
【0066】
架橋剤としてのエポキシド及び硬化剤を併用する場合、反応触媒をさらに併用できる。反応触媒として、各種公知のものを特に制限なく使用できる。反応触媒として、三級アミン、イミダゾ-ル類、有機ホスフィン、テトラフェニルボロン等が例示される。反応触媒として例示される物質及び反応触媒として公知のものを単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0067】
三級アミンとして、各種公知のものを特に制限なく使用できる。三級アミンとして、1,8-ジアザ-ビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等が例示される。
【0068】
イミダゾ-ル類として、各種公知のものを特に制限なく使用できる。イミダゾ-ル類として、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール等が例示される。
【0069】
有機ホスフィンとして、各種公知のものを特に制限なく使用できる。有機ホスフィンとして、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等が例示される。
【0070】
テトラフェニルボロンとして、各種公知のものを特に制限なく使用できる。テトラフェニルボロンとして、塩テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、2-エチル-4-メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N-メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等が例示される。
【0071】
本開示の接着剤組成物100質量%中の反応触媒の含有量(固形分換算)の上限は、5、3、1、0.1、0.05、0.01質量%等が例示され、下限は、3、1、0.1、0.05、0.01、0.005、0質量%等が例示される。1つの実施形態において、本開示の接着剤組成物100質量%中の反応触媒の含有量(固形分換算)は、0~5質量%程度が好ましい。
【0072】
<難燃剤(E)>
1つの実施形態において、本開示の接着剤組成物に、難燃剤(E)(以下、「(E)成分」ともいう。)を含んでもよい。(E)成分として例示される物質及び(E)成分として公知のものを単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。(E)成分は、リン系難燃剤、無機フィラー等が例示される。
【0073】
リン系難燃剤(リン含有難燃剤)として、ポリリン酸やリン酸エステル、フェノール性水酸基を含有しないホスファゼン誘導体等が例示される。該ホスファゼン誘導体のうち、環状ホスファゼン誘導体は、難燃性、耐熱性、耐ブリードアウト性等の点で好ましい。環状ホスファゼン誘導体の市販品として、大塚化学(株)製のSPB-100、(株)伏見製薬所製のラビトルFP-300B等が例示される。
【0074】
無機フィラーとして、シリカフィラー、リン系フィラー、フッ素系フィラー、無機イオン交換体フィラー等が例示される。無機フィラーの市販品として、デンカ(株)製のFB-3SDC、(株)喜多村製のKTL-500F、東亞合成(株)製、のIXE、アドマテックス(株)製のアドマファインSC-2500-SPJ等が例示される。(E)成分として無機フィラーを含む場合、その粒径は1μm以下であることでレーザー加工性に優れることから特に好ましい。
【0075】
本開示の接着剤組成物100質量%中の(E)成分の含有量(固形分換算)の上限は、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5質量%等が例示され、下限は、45、40、35、30、25、20、15、10、5、0質量%等が例示される。1つの実施形態において、本開示の接着剤組成物100質量%中の(E)成分の含有量(固形分換算)は、0~50質量%程度が好ましい。
【0076】
<熱ラジカル重合開始剤(F)>
熱ラジカル重合開始剤(F)(以下、「(F)成分」ともいう。)として、各種公知のものを特に制限なく使用できる。(F)成分として、アゾ化合物、パーオキサイド等が例示される。(F)成分として例示された物質及び(F)成分として公知のものを単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0077】
熱ラジカル重合開始剤として使用できるアゾ化合物として、2,2‘-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2‘-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、4,4-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、2,2‘-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル等が例示される。
【0078】
熱ラジカル重合開始剤として使用できるパーオキサイドとして、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル等が例示される。
【0079】
パーオキシケタールとして、1,1-ジ(tert-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ブタン等が例示される。
【0080】
ハイドロパーオキサイドとして、tert-ブチルパーオキサイド、tert-ブチルヒドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等が例示される。
【0081】
ジアルキルパーオキサイドとして、ジクミルパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジ-tert-へキシルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン-3等が例示される。
【0082】
ジアシルパーオキサイドとして、ジイソブチリルパーオキサイド、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジコハク酸パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド等が例示される。ジアシルパーオキサイドは、市販された製品であってもよい。当該製品として、製品名「ナイパーBMT-K40」、「ナイパーBMT-M」(いずれも日本油脂(株)製)等が例示される。
【0083】
パーオキシジカーボネートとして、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4-tert-ブチルシクロへキシル)パーオキシジカーボネート等が例示される。
【0084】
パーオキシエステルとして、tert-ブチルパーオキシピバレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシラウレート、tert-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、tert-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等が例示される。
【0085】
本開示の接着剤組成物100質量%中の(F)成分の含有量(固形分換算)の上限は、5、4、3、2、1、0.5、0.1、0.08、0.06、0.04質量%等が例示され、下限は、4、3、2、1、0.5、0.1、0.08、0.06、0.04、0.01、0.005、0質量%等が例示される。1つの実施形態において、本開示の接着剤組成物100質量%中の(F)成分の含有量(固形分換算)は、0~5質量%程度が好ましい。
【0086】
<有機溶剤(G)>
1つの実施形態において、本開示の接着剤組成物に、有機溶剤(G)(以下、「(G)成分」ともいう。)を配合してもよい。(G)成分として例示される物質及び(G)成分として公知のものを単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。(G)成分として、ケトン溶剤、芳香族溶剤、アルコール溶剤、グリコール溶剤、グリコールエーテル溶剤、エステル溶剤、ハロアルカン溶剤、アミド溶剤、その他石油系溶剤等が例示される。
【0087】
ケトン溶剤として、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が例示される。
【0088】
芳香族溶剤として、トルエン、キシレン、製品名「ティーソル100」、「ティーソル150」(いずれもJXTGエネルギー(株)製)等が例示される。
【0089】
アルコール溶剤として、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、クレゾ-ル等が例示される。
【0090】
グリコール溶剤として、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が例示される。
【0091】
グリコールエーテル溶剤として、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、ビス(2-メトキシエチル)エーテル等が例示される。
【0092】
エステル溶剤として、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が例示される。
【0093】
ハロアルカン溶剤として、クロロホルム等が例示される。
【0094】
アミド溶剤として、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム等が例示される。
【0095】
その他石油系溶剤として、ジメチルスルホキシド、メチルシクロヘキサン等が例示される。
【0096】
本開示の接着剤組成物100質量%中の(G)成分の含有量の上限は、70、60、50、40、30、20、15、10、5質量%等が例示され、下限は、60、50、40、30、20、15、10、5、1、0質量%等が例示される。1つの実施形態において、本開示の接着剤組成物100質量%中の(G)成分の含有量は、0~70質量%程度が好ましい。
【0097】
<添加剤>
本開示の接着剤組成物は、上記ポリイミド、架橋剤、ジエン系ポリマー、硬化剤、難燃剤、熱ラジカル重合開始剤、有機溶剤のいずれでもないものを添加剤として含み得る。
【0098】
添加剤は、開環エステル化反応触媒、脱水剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、表面処理剤、粘度調節剤、フィラー等が例示される。
【0099】
1つの実施形態において、添加剤の含有量(固形分換算)は接着剤組成物100質量部に対し、1質量部未満、0.1質量部未満、0.01質量部未満、0質量部等が例示される。
【0100】
別の実施形態において、添加剤の含有量は上記ポリイミド100質量部(固形分換算)に対し、1質量部未満、0.1質量部未満、0.01質量部未満、0質量部等が例示される。
【0101】
本開示の接着剤組成物は、上記ポリイミド、架橋剤及びジエン系ポリマー並びに必要に応じて硬化剤、難燃剤、熱ラジカル重合開始剤及び添加剤を有機溶剤に溶解させることにより得られ得る。
【0102】
<フィルム状接着剤>
本開示において、上記接着剤組成物の加熱硬化物を含む、フィルム状接着剤を提供する。フィルム状接着剤の製造方法は、上記接着剤組成物を適当な剥離紙に塗工する工程、加熱して有機溶剤を揮発させることによって硬化させる工程、該剥離紙から剥離する工程等を含む方法等が例示される。該フィルム状接着剤の厚みは、3μm以上40μm以下程度が好ましい。剥離紙は、従来公知のもの等が例示される。
【0103】
<接着層>
本開示において、上記接着剤組成物又は上記フィルム状接着剤を含む、接着層を提供する。上記接着層を製造する際には、上記接着剤組成物と上記接着剤組成物以外の各種公知の接着剤とを併用してもよい。同様に上記フィルム状接着剤と上記フィルム状接着剤以外の各種公知のフィルム状接着剤とを併用してもよい。さらに、上記接着層を製造する際には、上記接着剤組成物と必要に応じて各種公知の接着剤又は上記フィルム状接着剤と必要に応じて各種公知のフィルム状接着剤を加熱硬化することで接着層を得ることができる。
【0104】
<接着シート>
本開示において、上記接着層及び支持フィルムを含む、接着シートを提供する。
【0105】
支持フィルムは、プラスチックフィルム等が例示される。
【0106】
プラスチックとして、ポリエステル、ポリイミド、ポリイミド-シリカハイブリッド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、エチレンテレフタレートやフェノール、フタル酸、ヒドロキシナフトエ酸等とパラヒドロキシ安息香酸とから得られる芳香族系ポリエステル樹脂(液晶ポリマー;製品名「ベクスター」、(株)クラレ製)、シクロオレフィンポリマー、シンジオタクチックポリスチレン樹脂(SPS)、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)等)等が例示される。本開示の接着層は接着性が非常に良好であることから、難接着又は難密着の支持フィルムとも良好に接着及び/又は密着することが可能である。上記難接着又は難密着の支持フィルムは、各種公知のものであってもよい。上記難接着及び/又は難密着の支持フィルムとして、液晶ポリマー(LCP)、シクロオレフィンポリマー(COP)、シンジオタクチックポリスチレン樹脂(SPS)、フッ素樹脂(PTFE、PFA、PVDF等)等が例示される。
【0107】
また、上記接着剤組成物を該支持フィルムに塗布する際、各種公知の塗工手段を採用できる。塗工層の乾燥後の厚みは1μm以上100μm以下程度が好ましく、3μm以上50μm以下程度がより好ましい。また、接着シートの接着層は各種保護フィルムで保護してもよい。
【0108】
<樹脂付銅箔>
本開示において、上記接着層及び銅箔を含む、樹脂付銅箔を提供する。具体的には、上記樹脂付銅箔は、上記接着剤組成物又は上記フィルム状接着剤を銅箔に塗工又は貼り合わせたものである。該銅箔として、圧延銅箔、電解銅箔等が例示される。銅箔の厚みは、1μm以上100μm以下程度が好ましく、2μm以上38μm以下程度がより好ましい。また、該銅箔は、各種表面処理(粗化、防錆化等)が施されたものであってよい。防錆化処理として、Ni,Zn,Sn等を含むメッキ液を用いたメッキ処理、クロメート処理等の、いわゆる鏡面化処理が例示される。また、塗工手段として、各種公知の方法が採用できる。本開示の接着剤組成物は接着性が非常に良好であることから、鏡面化処理を受けた銅箔のように難接着及び/又は難密着の材料であっても良好に接着及び/又は密着することができる。
【0109】
該樹脂付銅箔の接着層は未硬化であってもよく、また加熱下に部分硬化ないし完全硬化させたものであってもよい。部分硬化の接着層は、いわゆるBステージと呼ばれる状態にある。また、接着層の厚みは、0.5μm以上30μm以下程度が好ましい。また、銅箔の両面に接着層を塗工又は貼り合わせ、両面樹脂付銅箔にすることもできる。
【0110】
<銅張積層板>
本開示において、上記接着シート及び/又は上記樹脂付銅箔並びに銅箔、絶縁性シート及び支持フィルムからなる群から選択される1つ以上を含む、銅張積層板を提供する。銅張積層板は、CCL(Copper Clad Laminate)とも呼ばれる。銅張積層板は、具体的には、各種公知の銅箔若しくは絶縁性シートの少なくとも片面又は両面に、上記樹脂付銅箔を、加熱下に圧着させたものである。片面に貼り合わせる場合には、他方の面に上記樹脂付銅箔とは異なるものを圧着させてもよい。また、当該銅張積層板における樹脂付銅箔、銅箔及び絶縁性シートの枚数は特に制限されない。
【0111】
1つの実施形態において、絶縁性シートは、プリプレグ又は上記の支持フィルムが好ましい。プリプレグは、ガラス布等の補強材に樹脂を含浸させBステージまで硬化させたシート状材料のことをいう(JIS C 5603)。該樹脂は、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、液晶ポリマー、アラミド樹脂等の絶縁性樹脂が使用される。該絶縁性シートの厚みは、20μm以上500μm以下程度が好ましい。加熱・圧着条件は、好ましくは150℃以上280℃以下程度(より好ましくは170℃以上240℃以下程度)、及び好ましくは0.5MPa以上20MPa以下程度(より好ましくは1MPa以上8MPa以下程度)である。
【0112】
<プリント配線板>
本開示において、上記銅張積層板の銅箔面に回路パターンを有する、プリント配線板を提供する。銅張積層板の銅箔面に回路パターンを形成するパターニング手段として、サブトラクティブ法、セミアディティブ法等が例示される。セミアディティブ法は、銅張積層板の銅箔面に、レジストフィルムでパターニングした後、電解銅メッキを行い、レジストを除去し、アルカリ液でエッチングする方法が例示される。また、該プリント配線板における回路パターン層の厚みは特に限定されない。また、該プリント配線板をコア基材とし、その上に同一のプリント配線板や他の公知のプリント配線板又はプリント回路板を積層することによって、多層基板を得ることもできる。積層の際には上記接着剤組成物と上記接着剤組成物以外の他の公知の接着剤とを併用できる。また、多層基板における積層数は特に限定されない。また、積層の都度、ビアホールを挿設し、内部をメッキ処理してもよい。前記回路パターンのライン/スペース比は、1μm/1μm~100μm/100μm程度が好ましい。また、前記回路パターンの高さは、1μm以上50μm以下程度が好ましい。
【0113】
<プリント回路板>
本開示において、プリント配線板に対してコンデンサ等の各種公知の部品を装着した、プリント回路板を提供する。
【0114】
<多層配線板>
本開示において、プリント配線板又はプリント回路板(1)、上記接着層、及びプリント配線板又はプリント回路板(2)をこの順に含む、多層配線板を提供する。(1)及び(2)のプリント配線板は、上記プリント配線板であってよく、また、各種公知のものであってもよい。同様に(1)及び(2)のプリント回路板は、上記プリント回路板であってよく、また、各種公知のものであってもよい。また、(1)及び(2)のプリント配線板は同一のものであっても異なるものであってもよい。同様に、(1)及び(2)のプリント回路板も同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0115】
<多層配線板の製造方法>
本開示において、下記工程1及び2を含む多層配線板の製造方法を提供する。
工程1:上記接着剤組成物又は上記フィルム状接着剤を、プリント配線板又はプリント回路板(1)の少なくとも片面に接触させることによって、接着層付基材を製造する工程
工程2:該接着層付基材の上に、プリント配線板又はプリント回路板(2)を積層し、加熱及び加圧下に圧着する工程
【0116】
上記(1)及び(2)のプリント配線板は、上記プリント配線板であってよく、また、各種公知のものであってもよい。同様に上記(1)及び(2)のプリント回路板は、上記プリント回路板であってよく、また、各種公知のものであってよい。
【0117】
上記接着剤組成物又は上記フィルム状接着剤をプリント配線板又はプリント回路板(1)の少なくとも片面に接触させる手段は、各種公知の塗工手段、カーテンコーター、ロールコーター、ラミネーター、プレス等が例示される。
【0118】
該接着層付基材の上に、プリント配線板又はプリント回路板(2)を積層した後の加熱温度及び圧着時間は、(ア)本開示の接着剤組成物又はフィルム状接着剤をコア基材の少なくとも一面に接触させた後、70℃以上200℃以下程度に加熱し、1分以上10分以下程度かけて硬化反応させてから、(イ)架橋剤の硬化反応を進行させるために、更に150℃以上250℃以下程度、10分以上3時間以下程度加熱処理することが好ましい。また、圧力は、工程(ア)及び(イ)を通じて0.5MPa以上20MPa以下程度が好ましく、1MPa以上8MPa以下程度がより好ましい。
【実施例
【0119】
以下に、製造例、比較製造例、実施例、比較例、評価例及び比較評価例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明で、特に説明がない限り、部および%は質量基準である。
【0120】
本実施例において重量平均分子量(Mw)は、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
(GPC測定条件)
機種 :製品名「HLC-8320GPC」(東ソー(株)製)
カラム :製品名「TSKgel SuperHZM-M」(東ソー(株)製)
展開溶剤:THF
流量 :0.35mL/分
測定温度:40℃
検出器 :RI
標準 :ポリスチレン
試料調製:0.4%溶液
【0121】
<製造例1:ポリイミド(A-1)の製造>
撹拌機、分水器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に4,4’-[プロパン-2,2-ジイルビス(1,4-フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物(製品名「BisDA-1000」(以下、「BisDA」ともいう。)、SABICイノベーティブプラスチックスジャパン合同会社製)を100.00g、シクロヘキサノンを371.82g仕込み、溶液を60℃まで加熱した。次いで、C36ダイマージアミン(製品名「PRIAMINE1075」、クローダジャパン(株)製。)100.82gを徐々に添加した後、メチルシクロヘキサンを74.36g仕込み、140℃まで加熱し、3時間かけてイミド化反応を実施することにより、ポリイミド(A-1)の溶液(不揮発分30.0%)を得た。なお、該ポリイミド樹脂の酸成分/アミン成分のモル比は1.03であり、軟化点は80℃であり、重量平均分子量は40000であった。
【0122】
<製造例2:ポリイミド(A-2)の製造>
撹拌機、分水器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた反応容器にBisDAを100.00g、シクロヘキサノンを275.00g仕込み、溶液を60℃まで加熱した。次いで、C36ダイマージアミン(製品名「PRIAMINE1075」、クローダジャパン(株)製)67.25gと、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(製品名「1,3-BAC」、三菱ガス化学(株)製)8.34gとを徐々に添加した後、メチルシクロヘキサンを45.83g、エチレングリコールジメチルエーテル(DMG)を82.50g仕込み、140℃まで加熱し、3時間かけてイミド化反応を実施することにより、ポリイミド(A-2)の溶液(不揮発分30.0%)を得た。なお、該ポリイミド樹脂の酸成分/アミン成分のモル比は1.05であり、軟化点は100℃であり、重量平均分子量は30000であった。
【0123】
<製造例3~4:ポリイミド(A-3)~(A-4)の製造>
製造例3~4は、組成を表1の内容に変更したことを除き、製造例1と同様の手法により行い、ポリイミド(A-3)~(A-4)を得た。
【0124】
【表1】
【0125】
上記表中の用語の意味は下記のとおりである。
BisDA:4,4’-[プロパン-2,2-ジイルビス(1,4-フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物(SABICイノベーティブプラスチックスジャパン合同会社製)
BTDA:3,3‘,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
PRIAMINE1075:C36ダイマージアミン(クローダジャパン(株)製)
1,3-BAC:1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学(株)製)
DMG:エチレングリコールジメチルエーテル
【0126】
<実施例1:接着剤組成物(1)の製造>
ポリイミド(A-1)の溶液100.0g、架橋剤(B)として多官能エポキシ樹脂(製品名「TETRAD-X」、三菱ガス化学(株)製)を0.93g、ジエン系ポリマー(C)として液状ブタジエン・スチレン・ランダムコポリマー(製品名「Ricon 100」、CRAY VALLEY社製)を3.40g、硬化剤(D)として2-エチル-4-メチルイミダゾール(製品名「キュアゾール2E4MZ-A」、四国化成工業(株)製)を0.0032g、難燃剤(E)として球状シリカのフィラー(製品名「FB-3SDC」、デンカ(株)製)のメチルエチルケトン分散液(固形分50%)19.64g及びリン系難燃剤(製品名「Exolit OP935」、クラリアントケミカルズ(株)製)のメチルエチルケトン分散液(固形分40%)12.27g、並びに熱ラジカル重合開始剤(F)としてジクミルパーオキサイド(製品名「パークミルD」、日本油脂(株)製)を0.034g混合し、有機溶媒(G)であるシクロヘキサノン27.38gによく撹拌することによって、不揮発分30.0%の接着剤組成物を得た。
【0127】
<実施例2~22及び比較例1~3:接着剤組成物(2)~(22)及び(C1)~(C3)の作製>
実施例2~22及び比較例1~3は、接着剤組成物の組成を表2~4の内容に変更したことを除き、実施例1と同様の手法により行い、不揮発分30%の接着剤組成物(2)~(22)及び(C1)~(C3)を得た。
【0128】
<評価例1-1:銅張積層板(1)の作製>
接着剤組成物(1)を、離型フィルム(製品名「WH52-P25CM(白)」、サンエー化研(株)製)に、乾燥後の厚みが25μmとなるようギャップコーターにて塗布した後、150℃で5分間乾燥させた。フィルム状接着剤を離型フィルムから剥離し、得られたフィルム状接着剤の片面を、市販の電解銅箔(製品名「F2-WS」、古河電気工業(株)製)(膜厚18μm)の鏡面側に重ね、もう一方の面を市販のLCPフィルム(製品名「ベクスター」、(株)クラレ製)に重ねた、LCPフィルム-フィルム状接着剤-電解銅箔の積層体を作製した。次いで、当該積層体をプレス用支持体の上に置き、電解銅箔側より圧力2.5MPa、180℃及び90分間の条件で加熱プレスすることにより10cm×10cmの銅張積層板(1)を作製した。
【0129】
<評価例1-2~1-10及び比較評価例1-1~1-2:銅張積層板(2)~(10)及び(C1)~(C2)の作製>
評価例1-2~1-10及び比較評価例1-1~1-2は、接着剤組成物(1)を接着剤組成物(2)~(10)又は(C1)~(C2)のものに変更したことを除き、評価例1-1と同様の手法により行い、銅張積層板(2)~(10)及び(C1)~(C2)を得た。
【0130】
<評価例2-1:多層配線板(1)の作製>
接着剤組成物(6)を、離型フィルム(製品名「WH52-P25CM(白)」、サンエー化研(株)製)に、乾燥後の厚みが25μmとなるようギャップコーターにて塗布した後、150℃で5分間乾燥させた。フィルム状接着剤を離型フィルムから剥離し、得られたフィルム状接着剤の片面を、市販のフレキシブル銅張積層板(製品名「2NUSR2518LJ1」、昆山雅森電子材料科技有限公司製、PI:1mil、Cu:1/2オンス)の銅箔側に重ね、フィルム状接着剤のもう一方の面を、もう1つのフレキシブル銅張積層板(製品名「2NUSR2518LJ1」)のポリイミド側に重ねた、フレキシブル銅張積層板-フィルム状接着剤-フレキシブル銅張積層板の積層体を作製した。次いで、当該積層体をプレス用支持体の上に置き、圧力2.5MPa、180℃及び90分間の条件で加熱プレスすることにより10cm×10cmの多層配線板(1)を作製した。なお、上記フレキシブル銅張積層板の銅箔面には回路パターンがないため、厳密には本開示の多層配線板の定義には当てはまらない。すなわち多層配線板(1)は多層配線板の仮想的なモデルとして作製したものである。
【0131】
<評価例2-2~2-13及び比較評価例2-1~2-2:多層配線板(2)~(13)及び(C1)~(C2)の作製>
評価例2-2~2-13及び比較評価例2-1~2-2は、接着剤組成物(6)を接着剤組成物(11)~(22)又は(C2)~(C3)のものに変更したことを除き、評価例2-1と同様の手法により行い、多層配線板(2)~(13)及び(C1)~(C2)を得た。
【0132】
<性能評価(1):誘電率及び誘電正接試験>
接着剤組成物(1)~(22)及び(C1)~(C3)を、離型フィルム(製品名「WH52-P25CM(白)」、サンエー化研(株)製)に、乾燥後の厚みが25μmとなるようギャップコーターにて塗布した後、150℃で5分間乾燥させた。フィルム状接着剤を離型フィルムから剥離し、テフロンフィルム上に固定し、180℃で90分硬化させた。得られたサンプルについて摂動方式空洞共振器法に準じ、10GHzにおける誘電率及び誘電正接を、市販の誘電率測定装置(製品名「摂動方式試料穴閉鎖形空洞共振器法比誘電率/誘電正接測定システム」、キーコム(株)製)とネットワークアナライザ(製品名「E8361A」、アジレントテクノロジー(株)製)を組合わせて測定した。測定結果を表2~4に示した。
【0133】
<性能評価(2):接着性試験>
上記評価例1に記載の各種銅張積層板及び上記評価例2に記載の各種多層配線板について、JIS C 6481(プリント配線板用銅張積層板試験方法)に準じ、引き剥がし強さ(N/cm)を測定した。測定結果を表2~4に示した。
【0134】
<性能評価(3):はんだ耐熱試験>
上記評価例1に記載の各種銅張積層板及び上記評価例2に記載の各種多層配線板について、硬化直後、及び温度25℃、湿度25%下で24時間静置したものを288℃のはんだ浴に銅箔側を下にして30秒浮かべ、はんだ浴から取り出した後、下記基準で外観変化を評価した。測定結果を表2~4に示した。
〇:銅張積層板4cm×4cmに変化が一切ない
×:銅張積層板4cm×4cmに全面に発泡が見られる
【0135】
【表2】
【0136】
【表3】
【0137】
【表4】
【0138】
上記表中の用語の意味は下記のとおりである。
TETRAD-X:多官能エポキシ樹脂(三菱ガス化学(株)製)
BMI-3000H:m-フェニレンビスマレイミド(大和化成工業(株)製)
BMI-1000H:4,4‘-ジフェニルメタンビスマレイミド(大和化成工業(株)製)
BMI-2300:ポリフェニルメタンマレイミド(大和化成工業(株)製)
Ricon-100:液状ブタジエン・スチレン・ランダムコポリマー(数平均分子量:4500、1,2vinylモル%:70モル%、スチレン含量:25モル%、CRAY VALLEY社製)
Ricon-181:液状ブタジエン・スチレン・ランダムコポリマー(数平均分子量:3200、1,2vinylモル%:30モル%、スチレン含量:28モル%、CRAY VALLEY社製)
Ricon-184:液状ブタジエン・スチレン・ランダムコポリマー(数平均分子量:8600、1,2vinylモル%:30モル%、スチレン含量:28モル%、CRAY VALLEY社製)
Ricon-150:液状ポリブタジエン(数平均分子量:3900、1,2vinylモル%:70モル%、CRAY VALLEY社製)
Ricon-154:液状ポリブタジエン(数平均分子量:5200、1,2vinylモル%:90モル%、CRAY VALLEY社製)
2E4MZ-A:2-エチル-4-メチルイミダゾール(製品名:キュアゾール2E4MZ-A、四国化成工業(株)製)
HPC-8000:活性エステル樹脂(製品名「EPICLON HPC-8000-65T」、DIC(株)製、固形分65%)
FB-3SDC:平均粒径3μmの球状シリカのフィラー(デンカ(株)製)(50%分散液)
Exolit OP935:リン系難燃剤(クラリアントケミカルズ(株)製)(40%分散液)
SC-2500-SPJ:平均粒径0.5μmの表面変性された球状シリカ((株)アドマテックス製)
パークミルD:ジクミルパーオキサイド(日本油脂(株)製)
パーヘキサ25B:2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン(日本油脂(株)製)
パーメンタH:p-メンタンハイドロパーオキサイド(日本油脂(株)製)