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特許7287754長手方向に動くストランド状の製品の品質を評価するための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】長手方向に動くストランド状の製品の品質を評価するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/892 20060101AFI20230530BHJP
   G01J 3/46 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
G01N21/892 C
G01J3/46 Z
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017217321
(22)【出願日】2017-11-10
(65)【公開番号】P2018077228
(43)【公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-08-27
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-06
(31)【優先権主張番号】10 2016 121 662.3
(32)【優先日】2016-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521553287
【氏名又は名称】ザウラー インテリジェント テクノロジー エイ・ジー
【氏名又は名称原語表記】Saurer Intelligent Technology AG
【住所又は居所原語表記】Textilstrasse 9, 9320 Arbon, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ヴェアハイト
(72)【発明者】
【氏名】グードルン ドス
【合議体】
【審判長】樋口 宗彦
【審判官】伊藤 幸仙
【審判官】▲高▼見 重雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/012936(WO,A2)
【文献】特開2007-2363(JP,A)
【文献】特開2010-139323(JP,A)
【文献】特開2002-163650(JP,A)
【文献】特開2010-243353(JP,A)
【文献】特開2010-216886(JP,A)
【文献】特開平9-49764(JP,A)
【文献】特開平4-220538(JP,A)
【文献】欧州特許第3321668(EP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - 21/958
G01J 3/00 - 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に動くストランド状の製品(1)の品質を評価するための方法であって、
多色の光を製品(1)に当てるステップと、
製品から反射された赤の色成分(aR)、緑の色成分(bG)及び青の色成分(B)を示す測定シグナルを捕捉するステップと、
測定シグナルの測定点(M)が、色を示す第一座標(a)及び第二座標(b)、並びに、明度を示す第三座標(L)によって、表される評価用色空間に、赤の色成分(aR)、緑の色成分(bG)及び青の色成分(B)を転換するステップと、
を含む、方法において、
製品(1)の品質の評価が、評価用色空間内の測定点(M)の第一座標(a)、第二座標(b)及び第三座標(L)において実施され、
評価用色空間内の基準点(R)も、第一座標(a)、第二座標(b)及び第三座標(L)によって定義され、測定点(M)と基準点(R)とが、評価用色空間内において比較され、
基準点(R)は、長手方向に動く製品(1)の測定点(M)の平均値として求められ、
前記評価では、前記色空間内のユークリッド間隔deltaE:
【数1】
が考慮され
式中、da 、db 及び、dL は、それぞれ、基準点(R)および測定点(M)における第一座標(a )、第二座標(b )及び第三座標(L )の差を表し、
評価用色空間内の基準点(R)からの測定点(M)の間隔(deltaE)と、第一座標(a )及び第二座標(b )の間に張られた評価用色空間の色レベル面内における基準点(R)からの測定点(M)の間隔(delta a )と、の差(Δ)及び/又は積(X)が、製品(1)を評価するために、計算される
ことを特徴とする、長手方向に動くストランド状の製品の品質を評価するための方法。
【請求項2】
評価用色空間内における基準点(R)からの測定点(M)の間隔(deltaE)が求められる
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
測定点(M)の明度を示す第三座標(L )が、基準点(R)の第三座標(L )と比較される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
評価用色空間の第一座標(a)及び第二座標(b)に張られた色レベル面内における基準点(R)からの測定点(M)の間隔(delta a)が割り出される
ことを特徴とする請求項1から3のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
評価用色空間としてCIELAB、使用される
ことを特徴とする請求項1からのうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
長手方向に動くストランド状の製品の品質を評価するための、かつ、請求項1からのうちいずれか一項に記載の方法を実施するための装置であって、
多色の光を製品(1)に当てることができるように構成され、配置された光源(2,3)と、
製品(1)によって反射された光の赤の色成分(aR)、緑の色成分(bG)及び青の色成分(B)を捕捉し、製品(1)によって反射された光の赤の色成分(aR)、緑の色成分(bG)及び青の色成分(B)を表す測定シグナルを作成できるように構成され、配置されたセンサ(4)と、
測定シグナルの測定点(M)が、色を表す第一座標(a)及び第二座標(b)、並びに、明度を表す第三座標(L)によって表される評価用色空間に、赤の色成分(aR)、緑の色成分(bG)及び青の色成分(B)を、転換できるように構成された評価ユニット(5)であって、評価用色空間内の基準点(R)も、第一座標(a)、第二座標(b)及び第三座標(L)によって定義され、測定点(M)と基準点(R)とが、評価用色空間内において比較される、評価ユニット(5)と、
を備える装置において、
該評価ユニット(5)が、製品(1)の品質の評価を、評価用色空間内の測定点(M)の第一座標(a)、第二座標(b)、及び、第三座標(L)に基づいて実施できるように構成されており、
基準点(R)は、長手方向に動く製品(1)の測定点(M)の平均値として求められ、
前記評価では、前記色空間内のユークリッド間隔deltaE:
【数2】
が考慮され
式中、da 、db 及び、dL は、それぞれ、基準点(R)および測定点(M)における第一座標(a )、第二座標(b )及び第三座標(L )の差を表し、
評価用色空間内の基準点(R)からの測定点(M)の間隔(deltaE)と、第一座標(a )及び第二座標(b )の間に張られた評価用色空間の色レベル面内における基準点(R)からの測定点(M)の間隔(delta a )と、の差(Δ)及び/又は積(X)が、製品(1)を評価するために、計算される
ことを特徴とする、長手方向に動くストランド状の製品を評価するための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向に動くストランド状の製品、特に糸の品質を評価するための方法及び装置に関し、ここでは、該製品から反射される光の赤、緑、及び、青の色成分が評価される。
【背景技術】
【0002】
長手方向に動く糸の品質を評価するために、該糸は、直径異常、並びに、異物、特に、異繊維に関して監視される。この品質の評価は、第一に、糸の加工中に、エラーを除去する必要があるか否かの決定をするため、第二に、統計的評価を行うために、実施される。この様な、糸のエラーを除去する行為を、「Ausreinigen(浄化する)」とも呼ぶ。該統計的評価は、完成した製品の品質に関する評点を可能にするだけでなく、製造工程中の不規則性を見つけ、解消することも可能にする。同様な評価は、例えば、他の長手方向に動くストランド状の繊維製品、例えば、スライバーにおいても実施可能である。
【0003】
欧州特許第1143236号明細書(EP1143236B1)は、長手方向に動く糸の光学的監視を開示している。その際、糸には、光が当てられ、糸を透過する光と、糸から反射される光の双方が捕捉される。透過した光からは、直径異常が検知され、反射された光によっては、異物が、検出される。評価されるのは、光の量のみ、即ち、明度である。有色の異繊維は、間接的に、明度差から識別される。この様なセンサ類の感覚は、人間の目のそれとは、有意に異なる。人間の目であれば容易に感知できる異繊維を確実に除去するためには、除去しきい値をシャープに設定せざるを得ないため、場合によっては、必要ないエラーも浄化される。
【0004】
欧州特許出願第1018645号明細書(EP1018645A1)は、糸から反射される光を、赤、緑、及び青い光に反応するカラーセンサによって捕捉することを提案している。ここでは、三色の強さの差を割り出し、しきい値を超えた場合に、異物が、示される。このシステムは、全三色を同じように評価するため、尚も、人間の目の感覚からはずれたものである。
【0005】
国際公開第2007/012936号(WO2007/012936A2)は、もう一歩進歩している。ストランド状の繊維状マテリアル内の異物を捕捉し、分類するために、該マテリアルには、多色光が、当てられる。糸から反射された光は、赤、青、緑のスペクトルに敏感なセンサ類によって捕捉される。ここでは、赤、緑、青の強度シグナルが、割り出される。赤、緑、青の強度シグナルからは、CIE表色系とも呼ばれるCIEYxy色空間のx-とy-パラメータが割り出される。これらx-とy-パラメータを割り出すため、RGB値、即ち、赤、緑、青の強度シグナルから三刺激値X、Y、Zが算出される。
【0006】
CIE表色系では、人間の目の感覚が、予めある程度考慮されている。更に、色と明度の分離も実施される。パラメータxとyは、色のみを示している。即ち、パラメータxとyは、CIEYxy色空間内の一つの色レベル面を定めるものである。国際公開第2007/012936号(WO2007/012936A2)によれば、明度の影響は、除去され、x-とy-パラメータのみが評価される。これにより、直径による影響やその他の異物に起因する変動を補正することができる。
【0007】
このシステムの欠点は、暗い、特に黒や茶色の異物は、多くの場合、白い糸において、全く、或いは、少なくとも信頼性をもって認識することができないことである。更に、記述されているシステムでは、太い、或いは、細い箇所を検出することはできない。この用途には、従来の技術では、付加的な装置が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】欧州特許第1143236号明細書
【文献】欧州特許出願第1018645号明細書
【文献】国際公開第2007/012936号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
よって、本発明の課題は、容易かつ信頼性高く、長手方向に動くストランド状の製品、特に糸の品質を評価できる方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
該課題の解決策として、以下のステップを有する方法が提案される。該製品に、多色の、好ましくは、白色の光を当てる。製品から反射された赤、緑及び青の色成分を示す測定シグナルを捕捉する。測定シグナルの測定点が色を示す第一及び第二座標、並びに、明度を示す第三座標によって表される評価用色空間に該赤、緑及び青の色成分が変換される。本発明では、該製品の品質の評価は、測定点の評価用色空間内の第一、第二、及び、第三座標によって実施される。
【0011】
本発明は、二つの不可欠な要素を有している。一つ目は、これ自体は従来の技術から既知の色を明度から分離する色空間を用いることである。しかし、従来の技術とは異なり、製品の評価においては、色を示す第一及び第二座標だけでなく、明度を示す第三座標も考慮される。
【0012】
三つの座標の適切な組合せや比較により、直径異常と異物を区別することが可能になる。有色の異繊維は、測定点の第一及び/又は第二座標の変化をもたらす。本質的に第三座標は、有色の異物によっては影響を受けない。一方、太くなった箇所では、測定点の第三座標が、通常の糸と比べると大きくなる。逆に、第一と第二座標は、太くなった箇所によって影響を受けない。
【0013】
また、黒色の異繊維も、本発明に係る方法によって検出できる。黒色の異繊維は、色座標、即ち、第一と第二座標に変化をもたらさない。しかし、明度座標、即ち、第三座標は、黒色の異繊維は、光をあまり反射しないため、通常の糸と比べると減少する。
【0014】
長手方向に動くストランド状の製品の品質の評価に際して評価用色空間の三つ全ての座標を考慮することにより、製品内のエラーを区別すること、それどころか、従来できなかった認識すらも可能になるなど、多様な可能性を有している。これには、既知の測定構成を変える必要はなく、本発明に係る評価方法に拡張するだけで可能である。
評価用色空間内の測定点を評価するため、好ましくは、評価用色空間内の基準点も、第一、第二、及び、第三座標を用いて定義し、測定点は、評価用色空間内の該基準点と比較される。該基準点は、長手方向に動く繊維製品の測定点の平均値として求められる。
【0015】
測定点を評価するため、測定点の座標自体も、基準点の座標と比較されることができる。測定点と基準点の座標乃至座標の差は、互いに組み合わせることができる。場合によっては、これにより、製品の評価を簡略化できる。
【0016】
好ましくは、評価用色空間内における基準点からの測定点の間隔が求められる。使用されている評価用色空間に応じて、間隔は、様々に定義できる。一般的な間隔は、ユークリッド間隔である。評価用色空間内の該間隔によれば、製品内の略全てのエラーを示すことができる。これらには、特に有色の異繊維、黒色の異繊維並びに直径異常が属している。各々のエラーを区別することができるようにするためには、更なる評価が必要である。
【0017】
そのために、測定点の明度を示す第三座標を基準点の第三座標と、評価用色空間内の間隔によって検出されたエラーを互いに区別するために、比較することができる。有色の異繊維は、明度座標には、実質的に変化をもたらさない。太い部分は、明度座標の増加の原因となる。
【0018】
更に、評価用色空間の第一と第二座標に張られた色レベル面内における基準点からの測定点の間隔を割り出すことができる。より正確に言うと、評価用色空間の第一と第二座標に張られた色レベル面内における基準点の投影点からの測定点の投影点までの間隔が割り出される。色レベル面内の間隔は、製品内の様々なエラーを区別するために、色空間内の間隔と組み合わせて、乃至、明度座標と組み合わせて考慮される。長手方向に動くストランド状の製品を評価するために、好ましくは、評価用色空間内の基準点からの測定点の間隔と、第一と第二座標の間に張られた評価用色空間の色レベル面内における基準点からの測定点の間隔との差及び/又は積が計算されることができる。上記の例によれば、有色の異繊維の場合、間隔の差は小さい、乃至、予め設定されている値以下である。それに応じて積は、有色の異繊維の場合、大きい、即ち、予め設定されている値を上回る。直径異常の場合、間隔の差は、大きい、即ち、予め設定されている値を上回り、逆に間隔の積は、小さい、即ち、予め設定されている値を下回る。
【0019】
評価用色空間としては、CIELABやCIELCH空間が好ましく使用できる。これらの色空間は、CIEYxy空間よりも人間の目の感覚を反映している。CIELABやCIELCH空間における測定点の基準点からの間隔は、ユークリッド間隔によって割り出すこともできるが、DE CMC式やCIEDE 2000式によっても割り出すことができる。後者は、色の差を人間の目の感覚により良好に適応させることを試みたものである。
【0020】
更なる課題は、本発明に係る方法を実施できるように構成された長手方向に動くストランド状の製品、特に糸の品質を評価するための装置によって解決される。該装置は、多色の、好ましくは、白色の光を製品に当てることができるように構成され、配置された光源、並びに、製品によって反射された光の赤、緑及び青の色成分を捕捉し、製品によって反射された光の赤、緑及び青の色成分を表す測定シグナルを作成できるように構成され、配置されたセンサを備えている。本発明に係る装置は更に、測定シグナルの測定点が色を表す第一及び第二座標、並びに、明度を表す第三座標によって表される評価用色空間に、赤、緑及び青の色成分を転換し、製品の品質の評価を、評価用色空間内の該測定シグナルの第一、第二、及び、第三座標に基づいて実施できるように構成された評価ユニットも、備えている。
【0021】
以下、本発明を、図面に示されている実施例に基づいて詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】長手方向に動く糸の品質を評価するための本発明に係る装置である。
図2】CIELAB色空間を示したものである。
図3】CIELAB色空間の色レベル面を示したものである。
図4】色レベル面における測定点と基準点の描写である。
図5】有色の異繊維を含む糸における糸の長手方向に沿った様々な値の描写である。
図6】太い箇所を有する糸における糸の長手方向に沿った様々な値の描写である。
図7】黒色の異繊維を含む糸における糸の長手方向に沿った様々な値の描写である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、長手方向に動く糸の品質を評価するための本発明に係る装置の構造を概略的に示している。糸1には、光源から多色の光が当てられている。示されている実施例では、光源は、二つの白色ダイオード2と3から構成されている。センサ4は、糸1から反射された光を捕捉するように配置されている。該センサ4は、赤、緑及び青の光に反応する。そして、赤、緑及び青の光の強さに応じてシグナルaR、bGとcBを出力する。該シグナルaR、bGとcBは、糸の品質を評価するために、評価ユニット5に送られる。但し、本実施例では、センサ4は、トゥルー・カラー・センサとして構成されており、詳細には図示されていない自らの評価手段を備えている。センサ4は、シグナルaR、bGとcBを予め与えられているキャリブレーション・マトリックスを用いて、三刺激値X、Y、Zに換算する。三刺激値X、Y、Zは、評価ユニット5において更に処理される。
【0024】
示されている実施例では、三刺激値X、Y、Zは、評価ユニット5において、CIELAB空間に転換される。図2の描写は、CIELAB空間の構成を説明するものである。CIELAB空間は、三次元の色空間である。色は、球の内部に示される。色空間内の一点は、三つの座標L、a、bによって定められる。空間内の軸aとbには、色レベル面が張られる。a軸は、緑-赤・軸に相当し、-aが、緑、+aが赤である。b軸は、黄-青・軸に相当し、-bが青、+bが黄色である。第三の軸は、明度軸Lである。Lが、ゼロの場合、黒色であり、Lが、100の場合は、白色である。即ち、CIELAB空間においては、色と色の明度は、互いに独立して描写される。織布の場合とは異なり、ストランド状の製品の場合、色の明度だけではなく、直径が反射する光の量に影響を与えるため、製品の直径によっても明度座標が決まる。三つの座標L、a、bの適切な組合せと比較により、製品のエラーを信頼性高く認識し、且つ、様々なエラーを互いに区別できる。デカルト座標系a、bにおける描写の他、色レベル面における色ポイントPの位置は、極座標系CとHによっても表すことができる。図3は、そのような描写を示している。ここでは、Cが、多色性あるいは彩度を、Hが、色調あるいは色調角を表している。明度軸Lは、変わらない。極座標系を用いる場合、CIELCH空間とも呼ぶ。
【0025】
センサ4は、三つの色シグナルaR、bG、cBからなる測定シグナルを生成する。測定シグナルをふさわしく走査することにより、測定点が得られる。測定点Mは、選択された色空間、本実施例では、CIELAB空間において、基準点Rと比較される。その際必要な計算と比較を、評価ユニット5が、実施する。
【0026】
図4では、基準点Rと測定点Mは、aレベル面に示されている。該基準点は、糸ないしストランド状の製品をキャリブレーションすることにより割り出される。即ち、基準点Rは、測定点Mの長期的な平均値として計算される。その後の評価のために、例えば、測定点と基準点の差異、乃至、座標の差を割り出すことができる。ここでは、daが、a軸の差、dbが、b軸の差である。これは、糸ないしストランド状の製品の品質を評価し、査定することおいて明度軸の座標Lも考慮することが、本発明の重点である。よって、好ましくは、基準点と測定点の明度座標Lの差dLも割り出される。差dLを観察することは、基準点と測定点の明度座標を互いに比較する容易な方法と言える。差dLは、測定点の明度座標L と基準点の明度座標L から算出される。
【数1】
【0027】
測定点の座標L、a、bを評価し、ストランド状の製品の品質を評価するために、座標L、a、b、或いは、上述した差dL、daとdbから、評価をより容易にする更なる値を計算することもできる。三つ全ての座標が、少なくとも間接的に、総評価に考慮されることが本発明の重要な点である。
【0028】
評価では、以下の値の全て或いはその一部が、考慮される。
、a、b色空間内のユークリッド間隔deltaE:
【数2】
色レベル面におけるユークリッド間隔delta a
【数3】
deltaEとdelta aとの積X
【数4】
deltaEとdelta aの差Δ
【数5】
【0029】
図5及び図6では、上述した値が、糸の長手方向に沿って記入される。図5は、有色の異繊維がある場合の推移、図6は、太くなった箇所がある場合の推移である。図5及び図6を例に、CIELAB内の測定点の座標L、a、bから、或いは、それらから導かれた値から、如何に双方のエラー箇所を互いに区別できるのかを説明する。それぞれ、上の領域には、明度偏差(明度異常)dL、その下に間隔deltaEとdelta a、更に、双方の間隔の積Xと差Δが、プロットされている。
【0030】
図5に示されている例では、異繊維は直径にも影響を与えるため、該異繊維が、明度異常の原因にもなっている。更に、有色の異繊維の場合、明確な色偏差(色異常)delta aを示すことは、容易に理解できるであろう。よって、色空間内の基準点までの間隔deltaEは、色偏差と明度偏差の双方を包含している。しかし、明度偏差は、色偏差と比較すれば僅かなものであるため、deltaEは、delta aよりもわずかに大きいだけである。これは、deltaEとdelta aの積Xと差Δを比較するとその度合いは、明確である。ここでは、deltaEとdelta a双方が大きいため、積Xが、双方の間隔deltaEとdelta aの値を増幅している。一方、deltaEとdelta aの差Δは、双方の間隔が小さいため僅かである。
【0031】
太くなっているだけの場所では、その関係は、全く異なる。ここでも、太くなっている個所は、より多くの光を反射するため、明度偏差dLは、高くなっている。一方、色レベル面内の間隔delta aは、太い箇所も該糸と同じ素材からできているため、言うに値する程の変化はない。但し、明度における偏差(異常)dLに起因して、色空間内の間隔deltaEに変化が見られる。この差も、積Xと差Δを用いて明確にできる。係数delta aは、無視できるため、積Xも同様である。差Δは、deltaEと略一致している。
【0032】
本発明の実用的な実施形態では、上記のうち幾つか乃至全ての値に対して、特定の組合せにおいてそれを超えた或いは下回った場合に、特定の糸エラーの種類を示す、一つの乃至複数のしきい値を定義することも可能である。
【0033】
図7は、糸エラーの他の例を示している。これは、黒色の異繊維を含んだ糸である。黒色の異繊維は、色空間において、太くなった箇所の様に振舞う。しかし、これらには、決定的な違いがある:黒色の異繊維は、捕捉される明度を下げる。即ち、差dLは、負である。この明度変化は、間隔deltaEにも見ることができる。差dLの負の符号は、二乗すると無くなるため、deltaEは、太くなった箇所と同様に正である。間隔delta aは、黒色の或いは非常に暗い色の異繊維では、太くなった箇所の場合と同様、無視できる。
【0034】
細くなった箇所は、少なくとも定性的には、黒色の異繊維と同様の推移を示す。ここでも、差dLは、負である。それにもかかわらず、細くなった箇所と黒色の異繊維の区別をするためには、更なる評価条件を導入することができる。そのような評価条件としては、例えば、エラーの長さが挙げられる。細くなった箇所は、どちらかと言えば長いエラーであるが、一方の黒色の異繊維は、短いエラーである。即ち、エラーの長さを適したしきい値と比較することが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7