(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】相互に固定される表面間を密閉するシール部材
(51)【国際特許分類】
F16J 15/08 20060101AFI20230530BHJP
F16J 15/12 20060101ALI20230530BHJP
G21F 5/12 20060101ALI20230530BHJP
G21F 9/36 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
F16J15/08 Q
F16J15/12 F
G21F5/12 D
G21F9/36 501C
(21)【出願番号】P 2020573400
(86)(22)【出願日】2018-12-29
(86)【国際出願番号】 RU2018000910
(87)【国際公開番号】W WO2020139122
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-12-23
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(73)【特許権者】
【識別番号】520514757
【氏名又は名称】エヌエフエス ロジスティクス,ジョイント - ストック カンパニー(エヌエフシーエル ジェイエスシー)
(73)【特許権者】
【識別番号】520514768
【氏名又は名称】サイエンス アンド イノヴェーションズ - ニュークリア インダストリー サイエンティフィック デベロップメント,プライベート エンタープライズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】レペシュキン アレクセイ ユレヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ソコロフ アンドレイ ヴァレレヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルデーエフ アンドレイ ヴィクトロヴィチ
【審査官】前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-523797(JP,A)
【文献】実開昭60-093067(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC F16J 15/00 - 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に固定される表面間を密閉するシール部材であって、
金属リングと、
前記金属リングの両側に配設されたリング状のグラファイト層と、を備え、
前記金属リングの前記グラファイト層が配設される領域は鋸歯状の輪郭を有し、
前記金属リングと前記グラファイト層とは分離できないように一体化されており、
前記金属リングは両側にくぼみと、当該両側のくぼみを接続する穴との組が設けられて
おり、
前記鋸歯状の輪郭は、断面三角形状の溝部を有し、
前記グラファイト層は、熱膨張性黒鉛からなる
ことを特徴とするシール部材。
【請求項2】
前記表面に当該シール部材をネジ止めするために、前記両側のくぼみと穴との組が少なくとも2つ設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のシール部材。
【請求項3】
シールキャビティの除湿と気密性制御のために、前記両側のくぼみと穴との組が少なくとも1つ設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のシール部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シーリング技術に関するものであり、放射性物質の輸送および/または長期保管のための容器の保護カバーのシーリング、ならびにパイプライン、継手、圧力容器などのフランジ接続のシーリングに使用することができる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されたシーリング装置は、弾性変形可能な材料からなる環状部材であって、そのその表面は、50%以上のアクリロニトリルを含む材料からなる保護フィルムで覆われている。アクリロニトリル(ポリアクリロニトリル)は弾性が低く、耐霜性が低いため、シールとしての用途が限定される。また、誘電特性が低いことにも注意する必要がある。
【0003】
特許文献2に記載されたシーリング装置は、弾性変形可能な材料からなる第1のセクションと、燃料蒸気不透過性材料からなる第2のセクションとを有する。このシーリング装置の第1セクションと第2セクションは、メカニカルコネクターまたは結合剤を用いて固定される。メカニカルコネクターを用いるとシーリング装置の設計が複雑になり、結合剤を使用すると装置のシーリング特性に影響が及ぶ。
【0004】
特許文献3には、150℃までの温度に耐えることができる高分子または弾性繊維強化材料で作られた中央層を有する多層フラットガスケットが記載されている。このガスケットの外表面は、有機の気密ポリマー材料で完全に被覆されている。また、このガスケットは耐熱性が低いという特徴がある。
【0005】
特許文献4には、互いに固定された表面間のシール部材が記載されている。このシール部材は、スパイラル状に巻かれたガスケットであって、プロファイル加工された金属テープと充填剤とストリップを交互に配したものである。プロファイル加工された金属テープは、充填剤の層の間に位置するスパイラル部において、凹部をなす不連続なエッジを有している。この凹部には、必要に応じて、ガスケットの作動状態で充填剤が充填されてもよい。
【0006】
使用済み核廃棄物を運ぶ輸送および梱包キットの場合、直径が2.0メートルに及ぶガスケットが必要になるが、当該シール部材は、直径1.5メートルを超えるガスケットを製造することが難しい、という欠点がある。
【0007】
特許文献5に記載されたフラットガスケットは、少なくとも穴の領域にカラーが形成された金属層を有し、指定されたカラーに近い領域の輪郭が波状あるいはぎざぎざした形状になっている。フラットガスケットは、冷間変形させてから、焼き戻して硬化させたばね鋼または鋼を材料として製造される。上記の輪郭形状は、穴の領域に形成されたカラーの歪みを制限すると同時に、シールとしても機能する。ガスケットのさまざまな領域で必要な弾性、剛性、および望ましい程度の塑性変形を得るために、波頭または歯の間の間隔および/またはそれらの高さおよび/または個々の波の半径を変更することができる。例えば、穴に近い領域は、より遠い領域よりもプロファイルの波頭または歯の間の間隔が小さい場合がある。したがって、この領域では、プロファイルの密集した領域よりも弾性が低くなる。このようなガスケットの製造には、特別な装置を使用する必要があり、非常に手間がかかる。
【0008】
特許文献6に記載されたシーリングガスケットは、フラットフランジ継手に適用され、環状の金属ベースと、その両側に配され軟質材料を用いたガスケットとからなり、特に、軟質材料としてグラファイトまたはポリテトラフルオロエチレンが用いられる。金属ベースには放射環状の歯が設けられており、少なくとも一つの歯は設置中に塑性変形し易く、歯の上部で測定した金属ベースの厚さは1.35mmであり、隣り合う歯どうしの間隔が3mmになっている。金属ベースの歯は、シーリングガスケットをフランジ継手から取り外すと、元の高さまで弾性復元する。このガスケットは、歯が塑性破砕され、フランジ表面が平坦状態から大きく外れてしまう恐れがあることが欠点である(フランジの反り)。また、大きなガスケットを作ることが難しく、歯の頂部が軟質のガスケットを速やかに摩耗させる恐れもある。
【0009】
特許文献7に記載された波形のガスケットは、断面波形の金属リングをグラファイト層で挟んだものである。2つのガスケットを重ねて取り付けると、二重に気密にすることができるが、建設コストが上昇する。
【0010】
特許文献6に記載されたシーリング装置は、環状の金属ベースを、グラファイトやポリテトラフルオロエチレンといった軟質材料のガスケットで挟んだものである。金属ベースには放射環状の歯が設けられており、組み立てられた状態で、線状の金属接触をなす。金属ベースの厚さは、0.5mm未満、好ましくは0.49mm未満、特に好ましくは0.3mm未満である。金属ベースは、軟質材料のガスケットに対応する位置に、少なくとも1つの環状歯を有し、シーリング装置は、断面が波形または鋸歯状のセンタリングリングを有する。センタリングリングのリブまたは歯は、リングの歯よりも高さが低い。このシーリング装置は、3つの別々の部品(2つの平板なグラファイトリングと曲がった金属ベース)からなるので、取り付けの際に確実に位置を合わせるのが難しい。特に、シール面の直径が1.5~2メートルである場合に、2つのガスケットを直列に取り付けようとすると、作業が複雑になる。
【0011】
特許文献8には、着脱可能なフランジ継手をシールするために両面にライニングを備えた平板な櫛形シーリングガスケットが記載されている。当該シーリングガスケットは、圧縮成形された2つの接触面を有している。これらの接触面には、開き角が90°のV字型の溝が同心円状に形成されている。同心円状の溝どうしの間には、0.2mmから0.6mmまでの一定幅の平坦な同心円面になっている。同心円状の溝はくぼんだ底部の丸め半径が0.3mmから0.5mmになっている。櫛形パッドはどちらの接触面も、グラファイト等からなるシーリングフィルムまたはシーリングプレートが載置される。接触面に設けられた同心円状の溝は、接触面の先端部に設けられた溝の頂部に重畳しているシーリングフィルムやシーリングプレートのよりも体積が小さい。
【0012】
設置する際には、軟質のシーリングフィルムやシーリングプレートの一部がフランジどうしの隙間で圧し潰され、波のくぼみに入り込むことによって、入り込んだ体積に対するシール材の密度がシーリングに必要な密度になる。しかしながら、高圧下で、かつフランジが変形している場合には、ガスケットの外周に沿って圧力が均一でなくなるので、金属リングの波形が引き延ばされ、もはや回復することができないぐらいまで圧し潰されて、シール材に半径方向に支持されなくなるので、フランジ継手の圧力が低下してしまう。
【0013】
また、シーリングフィルムまたはシーリングガスケットが金属ベースの表面に固定されないため、ガスケットの設置と組み立てが更に複雑になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】国際公開第2003/054427号
【文献】国際公開第2003/016756号
【文献】米国特許出願公開第6,565,099号明細書
【文献】ロシア国特許出願公開第2184895号明細書
【文献】ロシア国特許出願公開第22737778号明細書
【文献】ロシア国特許出願公開第2377459号明細書
【文献】ロシア国特許出願公開第2641987号明細書
【文献】ロシア国特許出願公開第2482362号明細書
【非特許文献】
【0015】
【文献】Regulations of Safety at Transportation of Radioactive Materials,NP-053-2004,Rostekhnadzor、Moscow、2004.
【文献】Regulations for the Safe Transport of Radioactive Material, 2009 Edition, IAEA Safety Standards Series No. TS-R-1, IAEA, Vienna (2009).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
輸送用および包装用コンテナの保護カバーを密閉する作業は、コンテナの耐用年数の全期間を通じて高レベルの放射線と温度に曝されるという問題があり、また、通常操作であっても緊急事態であってもシールする継手に対して高い気密性が求められる。緊急事態の可能性については、ロシア連邦の規制文書(非特許文献1)および国際原子力機関(IAEA: International Atomic Energy Agency)の勧告(非特許文献2)において規定された特定の目的のコンテナの要件に従って考慮する必要がある。
【0017】
緊急事態に典型的な要因には、構造の高レベルの変形応力状態と、コンテナが火災ゾーンに入るときの高レベルの加熱が含まれる。これに対しては、シールユニットの弾性特性を高めて、高温であってもシールすべき継手の支持部材が変形しても特性を維持することが必要になる。
【0018】
本開示は、輸送用パッケージの内側および外側カバーのシール(ガスケット)を作成する際に、気密性の二重の障壁と、両方のガスケットの輪郭の気密性を制御する機能とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するため、本開示の一形態に係るシール部材は、相互に固定される表面間を密閉するシール部材であって、金属リングと、前記金属リングの両側に配設されたリング状のグラファイト層と、を備え、前記金属リングの前記グラファイト層が配設される領域は鋸歯状の輪郭を有し、前記金属リングと前記グラファイト層とは分離できないように一体化されており、前記金属リングは両側にくぼみと、当該両側のくぼみを接続する穴との組が設けられており、前記鋸歯状の輪郭は、断面三角形状の溝部を有し、前記グラファイト層は、熱膨張性黒鉛からなることを特徴とする。
【0020】
この場合において、前記表面に当該シール部材をネジ止めするために、前記両側のくぼみと穴との組が少なくとも2つ設けられていてもよい。
【0021】
また、シールキャビティの除湿と気密性制御のために、前記両側のくぼみと穴との組が少なくとも1つ設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0023】
技術的な結果は、輸送およびパッケージングセットの内側および外側カバーの高レベルの気密性が保証されている場合、設置手順を簡素化することにある。
【0024】
以下の構成によって、指定された問題が解決され、指定された技術的結果が達成される。すなわち、相互に固定されている表面間のシールは、グラファイト層に挟まれた金属リングを備え、金属リングにおけるグラファイト層の配設領域は鋸歯状の輪郭を有し、リング状のグラファイト層が金属リングの両側に配設される。ここで、シールをネジ止めするためのネジ穴や、シールキャビティの除湿および気密性を制御するための穴がシールに開けられる。これらの穴はリング状のグラファイト層に挟まれたシールのくぼみの中央に設けられる。グラファイト層には熱膨張性黒鉛を用いる。グラファイト層の配設領域はガスケットの輪郭が鋸歯状になっており、グラファイト層が金属リングに高い信頼性で取着されるので、空洞が形成されるのを防止することができる。空洞が形成されると、ガスケットの気密性が損なわれる恐れがある。グラファイトは、グラファイト層が金属から分離できないように金属ベースに塗布される。このガスケットは一体型になっており、組み立てによる歪みや取り付け中の歪みを開扉することができるので、組み立て工程および取り付け工程を簡素化することができる。両側にくぼみが設けられているので、ガスケットの側面は2つの部分に分かれており、これによってシールの輪郭が2つに分割され、気密性を保つための二重の障壁が提供される。したがって、2つの異なるガスケットを使用する必要がないので、設計がより安価でシンプルになる。両面にくぼみが設けられているガスケットを使用するので、両方のガスケットの気密性を確認して、ガスケットの中央部に形成された空洞を効果的に除去することができる。ガスケットをネジでカバーに固定すると、組み立て中にシール面に対してガスケットを正確に配置でき、ガスケットと一緒にカバーを輸送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】シールの上面と、拡大された断面であって、ガスケットをネジ止めするためのネジ穴を示すA-A断面と、ガスケットキャビティの除湿と気密性制御のための穴を示すB-B断面と、を示す図である。
【
図2】シールアタッチメントの拡大図を含む、出荷用パッケージの部分断面図である。
【
図3】シールの気密性を監視するためのチャネルの拡大図を含む、出荷用パッケージの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本実施の形態に係るシールは、ステンレス鋼からなる金属リング1を備え、リング1の両側が熱膨張したグラファイト層2で覆われている。グラファイト層2を配設する領域においては金属リング1の輪郭が鋸歯状になっており、グラファイト層2は金属リング1の両側に配設されている。金属リング1の鋸歯状の輪郭は、歯の高さが0.3mmから0.5mmの範囲内である。歯の間の角度は90°で、グラファイト層2の厚さは歯の高さ以下である。金属リング1とグラファイト層2とを合わせたガスケット全体の厚さは3mmから6mmの範囲内である。グラファイト層2は、金属リング1から分離しないように、公知の技術を用いて、金属リング1に取着される。
【0027】
シールの両側に設けられたくぼみと穴3とはカバー5の溝にネジ4でガスケットを固定できるように設計されており、くぼみ6と穴7とはガスケットの除湿と気密性制御とのためのものである。
【0028】
下方からガスケットの穴3に挿入されたネジ4を締結することによって、ガスケットがカバー5の底面に取着される。ネジ4は、カバー5そのものに締結されるのではなく、カバー5に嵌挿された状態でシーラントを用いて固定された補修スリーブ9に締結される。その後、カバー5が本体8に取り付けられ、不図示のピンおよびナットを用いて装着される。ガスケットは直ちに使用することができる。
【0029】
穴7の気密性を確認するには、真空にするか、またはキャビティ内の圧力を制御する。このため、ガスケットの両側を外気と連通させる穴10がカバー5に設けられている。使用時には、熱膨張性黒鉛からなるシールリング12を有するプラグ11を用いて、カバー5の穴が外側からシールされる。
【0030】
ガスケットの締まり具合を確認する場合には、プラグ11に代えてコネクターが穴10に取着される。コネクターには、例えば、ヘリウム漏れ検知装置といった監視装置を接続することができる。このコネクターに真空ポンプを接続すれば、穴10を経由して、ガスケットの空洞を除湿することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本開示による技術的解決策は、放射性物質の輸送および/または長期保管を目的とした容器の保護カバーを密封するために使用することができる。提案されたシールは、RF規制文書およびIAEA勧告によって指定された指定のコンテナの要件に従って、通常および緊急の動作条件下でコンテナの保護カバーの気密性を保証する。
【符号の説明】
【0032】
1………………金属リング
2………………グラファイト層
3、7、10…穴
4………………ネジ
5………………カバー
6………………くぼみ
8………………本体
9………………補修スリーブ
11……………プラグ
12……………シールリング