(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】コアシェル型複合負極材料、その調製方法及び応用
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20230530BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230530BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20230530BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20230530BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
H01M4/36 E
H01M4/587
H01M4/48
(21)【出願番号】P 2021534424
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(86)【国際出願番号】 CN2020090681
(87)【国際公開番号】W WO2020228829
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-02-22
(31)【優先権主張番号】201910411238.6
(32)【優先日】2019-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520417045
【氏名又は名称】貝特瑞新材料集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BTR NEW MATERIAL GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7A, 7B, and 8, High-Tech Industrial Park, Xitian Community, Gongming Office, Guangming New District Shenzhen, Guangdong 518106 China
(73)【特許権者】
【識別番号】521078089
【氏名又は名称】ディンユアン ニュー エナジー テクノロジー カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【氏名又は名称】白鹿 智久
(74)【代理人】
【識別番号】100201938
【氏名又は名称】杉山 静可
(72)【発明者】
【氏名】ヘ,ペン
(72)【発明者】
【氏名】グオ,エミン
(72)【発明者】
【氏名】レン,ジャングオ
(72)【発明者】
【氏名】ヘ,シュエキン
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-048070(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104752698(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104103807(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108054368(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107093721(CN,A)
【文献】特開2017-050142(JP,A)
【文献】国際公開第2015/114692(WO,A1)
【文献】特開2018-110076(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0086870(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/38
H01M 4/36
H01M 4/587
H01M 4/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1活物質と第2活物質からなるコア、および前記コアの外部を被覆し第3活物質とする炭素被覆層シェルを含み、
前記第1活物質は、シート状のシリコン系材料であり、前記第2活物質は、シート状のグラファイト材料であ
り、
前記シート状のシリコン系材料は、粒子のアスペクト比が1.5超100以下であり、
前記シート状のグラファイト材料は、粒子のアスペクト比が2超120以下であり、
前記粒子のアスペクト比が粒子最大長さと最小長さの比であり、シート状の材料の最大長さがシート状の材料の二次元平面の最大長さであり、シート状の材料の最小長さがシート状の材料の厚さである
コアシェル型複合負極材料。
【請求項2】
前記シート状のシリコン系材料は、粒子のアスペクト比が2~40である
請求項1に記載のコアシェル型複合負極材料。
【請求項3】
前記シート状のグラファイト材料は、アスペクト比が3~50である
請求項1または2に記載のコアシェル型複合負極材料。
【請求項4】
前記炭素被覆層は、有機炭素源を焼結し転化してなるものであり、
任意選択で、前記炭素被覆層の厚さが0.05~3μmである
請求項1~3のいずれか一項に記載のコアシェル型複合負極材料。
【請求項5】
前記第1活物質の組成は、Si、SiOxまたはSi-M合金の少なくとも2つの組み合わせを含み、ここで、0.5<x<1.5であり、MがB、Fe、Cu、Sn、Ge、Ti、Mg、NiもしくはCeのいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせであり、
任意選択で、前記第1活物質において、異なる物質のメディアン径の差の絶対値が50nm~1500nmであり、
任意選択で、前記第1活物質は、質量比が0.01~100であるSiとSiOxからなり、Siのメディアン径が10~300nmであり、SiOxのメディアン径が150~5000nmであり、Siのメディアン径<SiOxのメディアン径であり、
任意選択で、前記第1活物質は、質量比が0.01~100であるSiとSi-M合金とからなり、Siのメディアン径が10~300nmであり、Si-M合金のメディアン径が150~5000nmであり、Siのメディアン径<Si-M合金のメディアン径であり、
任意選択で、前記第1活物質は、質量比が0.01~100であるSiOxとSi-M合金とからなり、SiOxのメディアン径が150~400nmであり、Si-M合金のメディアン径が200~5000nmであり、SiOxのメディアン径<Si-M合金のメディアン径であり、
任意選択で、前記第1活物質は、質量比が0.01~100であるSiOxとSi-M合金とからなり、Si-M合金のメディアン径が150~400nmであり、SiOxのメディアン径が200~5000nmであり、Si-M合金のメディアン径<SiOxのメディアン径であり、
任意選択で、前記第1活物質は、Si、SiOx及びSi-M合金からなり、SiとSiOxとの質量比が0.02~100であり、SiとSi-M合金との質量比が0.02~100であり、Siのメディアン径が10~300nmであり、SiOxのメディアン径が150~5000nmであり、Si-M合金のメディアン径が150~5000nmであり、Siのメディアン径<SiOxのメディアン径<Si-M合金のメディアン径であり、
任意選択で、前記第1活物質は、Si、SiOx及びSi-M合金からなり、SiとSiOxとの質量比が0.02~100であり、SiとSi-M合金との質量比が0.02~100であり、Siのメディアン径が10~300nmであり、SiOxのメディアン径が150~5000nmであり、Si-M合金のメディアン径が150~5000nmであり、Siのメディアン径<Si-M合金のメディアン径<SiOxのメディアン径である
請求項1~4のいずれか一項に記載のコアシェル型複合負極材料。
【請求項6】
前記第2活物質の組成が、天然グラファイトもしくは人造グラファイトのいずれか1つまたは2つの組み合わせを含み、
任意選択で、前記第2活物質のメディアン径が1~15μmであり、
任意選択で、前記第2活物質が前記第1活物質のメディアン径よりも大きく、それらの差が2μm~12μmである
請求項1~5のいずれか一項に記載のコアシェル型複合負極材料。
【請求項7】
前記コアシェル型複合負極材料の合計質量を100wt%として、前記第1活物質の質量含有率が1~70wt%であり、前記第2活物質の質量含有率が5~60wt%であり、前記第3活物質材料の質量含有率が5~50wt%である請求項1~6のいずれか一項に記載のコアシェル型複合負極材料。
【請求項8】
第1活物質、第2活物質を混合して造粒し、第1前駆体を得るステップ1と、
前記第1前駆体を炭素被覆により改質し、その後、焼結して、コアシェル型複合負極材料を得るステップ2とを含み、
ここで、前記第1活物質は、シート状のシリコン系材料であり、前記第2活物質は、シート状のグラファイト材料である
請求項1~7のいずれか一項に記載のコアシェル型複合負極材料の調製方法。
【請求項9】
前記シート状のシリコン系材料の比表面積が50~500m
2
/gであり
、
任意選択で、前記第1活物質の組成は、Si、SiOxまたはSi-M合金の少なくとも2つの組み合わせであり、ここで、0.5<x<1.5であり、MがB、Fe、Cu、Sn、Ge、Ti、Mg、NiもしくはCeのいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせであり、
任意選択で、前記第1活物質において、異なる物質のメディアン径の差の絶対値が50nm~1500nmであり、
任意選択で、前記第1活物質は、質量比が0.01~100であるSiとSiOxからなり、Siのメディアン径が10~300nmであり、SiOxのメディアン径が150~5000nmであり、Siのメディアン径<SiOxのメディアン径であり、
任意選択で、前記第1活物質は、質量比が0.01~100であるSiとSi-M合金とからなり、Siのメディアン径が10~300nmであり、Si-M合金のメディアン径が150~5000nmであり、Siのメディアン径<Si-M合金のメディアン径であり、
任意選択で、前記第1活物質は、質量比が0.01~100であるSiOxとSi-M合金とからなり、SiOxのメディアン径が150~400nmであり、Si-M合金のメディアン径が200~5000nmであり、SiOxのメディアン径<Si-M合金のメディアン径であり、
任意選択で、前記第1活物質は、質量比が0.01~100であるSiOxとSi-M合金とからなり、Si-M合金のメディアン径が150~400nmであり、SiOxのメディアン径が200~5000nmであり、Si-M合金のメディアン径<SiOxのメディアン径であり、
任意選択で、前記第1活物質は、Si、SiOx及びSi-M合金からなり、SiとSiOxとの質量比が0.02~100であり、SiとSi-M合金との質量比が0.02~100であり、Siのメディアン径が10~300nmであり、SiOxのメディアン径が150~5000nmであり、Si-M合金のメディアン径が150~5000nmであり、Siのメディアン径<SiOxのメディアン径<Si-M合金のメディアン径であり、
任意選択で、前記第1活物質は、Si、SiOx及びSi-M合金からなり、SiとSiOxとの質量比が0.02~100であり、SiとSi-M合金との質量比が0.02~100であり、Siのメディアン径が10~300nmであり、SiOxのメディアン径が150~5000nmであり、Si-M合金のメディアン径が150~5000nmであり、Siのメディアン径<Si-M合金のメディアン径<SiOxのメディアン径であり、
任意選択で、前記第2活物質の組成が天然グラファイトもしくは人造グラファイトのいずれか1つまたは2つの組み合わせを含み、
任意選択で、前記第2活物質のメディアン径が1~15μmである
請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
ステップ1に記載の混合造粒方法が、噴霧乾燥、混合加熱または混練のいずれか1つであり、
任意選択で、ステップ2に記載の前記炭素被覆による改質方法が、液相コーティング法、固相コーティング法または気相コーティング法のいずれか1つであり、
任意選択で、前記液相コーティング法のプロセスステップは、前記第1前駆体と炭素源を有機溶剤系に分散し、乾燥させて、第2前駆体を得ることを含み、
任意選択で、前記固相コーティング法のプロセスステップは、前記第1前駆体と炭素源をミキサーに入れ、混合して、第2前駆体を得ることを含み、
任意選択で、前記液相コーティング法と固相コーティング法において、炭素源が、ポリエステル系、糖類、有機酸もしくはピッチのいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせであり、
任意選択で、前記ポリエステル系が、フェノール樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートもしくはポリアリレートのいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含み、
任意選択で、前記気相コーティング法のプロセスステップは、反応炉で、有機炭素源ガスを被覆源として、不活性ガスを導入する条件で、500℃~1200℃に昇温させ、前記第1前駆体に対して炭素被覆を行い、第2前駆体を得ることを含み、
任意選択で、前記気相コーティング法において、前記有機炭素源ガスが、炭化水素類もしくは1~3つのベンゼン環を有する芳香族炭化水素誘導体のいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせであり、
任意選択で、ステップ3の前記焼結は、前記第2前駆体を反応器に入れ、不活性ガスを導入する保護条件で、500℃~1200℃に昇温させ、コアシェル型複合負極材料を得ることを含み、
任意選択で、前記反応器が、真空炉、箱型炉、回転炉、ローラーハース窯、プッシャー窯またはチューブ炉のいずれか1つを含む
請求項8
または9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか一項に記載のコアシェル型複合負極材料を含む負極。
【請求項12】
請求項1~7のいずれか一項に記載のコアシェル型複合負極材料を含むリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、リチウムイオン電池負極材料応用分野に属し、複合負極材料、その調製方法および応用に関し、例えば高容量、長サイクル寿命のリチウムイオン電池用コアシェル型の複合負極材料、その調製方法及び当該複合材料を含むリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、サイクル寿命が長く、比エネルギーが高く、安全性能が優れていることから広く使用されており、各方面の注目を集めている。グラファイト材料は、従来のリチウムイオン電池負極材料として、安定した電気化学的性能を持っているが、その比容量は高くなく、理論容量がわずか372mAh/gであるため、高エネルギー密度のリチウムイオン電池に対してますます増える市場要求に対応できない。シリコン系負極材料は、理論比容量が高いものの、リチウムの放出/吸蔵過程において、その体積膨張が大きく、シリコン系材料粒子が破砕され、粉末化され、材料の活性が失うので、最終的にはサイクル性能が大幅に低下する。さらに、シリコン系材料は、電気伝導率が低下するので、材料レート性能等に影響を与える。
【0003】
従来、炭素被覆シリコン/グラファイト複合材料の調製方法があり、前記炭素被覆シリコン/グラファイト複合材料の調製方法は、以下のように実施される。5-7部のスクロースを60-70部の無水エタノールに溶解し、磁気攪拌機で攪拌し溶解し、20-30部の工業用シリコン粉末を加え、攪拌し分散する。その後、超音波で2-3h分散し、混合物を高エネルギーボールミルタンクに入れ、450r/minで25-27hボールミルし、得られた混合物を真空乾燥オーブンにて45-55℃で23-25h恒温乾燥する。その後、チューブ炉に入れ、アルゴンガス雰囲気保護下で、2℃/minの昇温レートで580-590℃まで昇温させて3.5-4.5h焼成し、自然冷却した後、炭素被覆シリコン材料を得る。上記調製された炭素被覆シリコン材料5-15部を天然グラファイト30-40部とともに75-85部のエタノールに加え、超音波で2-3h分散する。得られた混合物を450r/minで25-27hボールミルし、得られた混合物を45-55℃で攪拌し乾燥させ、さらに65-75℃で14-16h真空乾燥させ、冷却して炭素被覆シリコン/グラファイト複合材料が得られる。各原料は、重量部で計量される。当該方法により調製された炭素被覆シリコン/グラファイト複合材料は、優れた可逆比容量、良好なレート性能およびサイクル安定性を有するが、その性能の向上に限界があり、実際の応用要求を満たすことが困難である。
【0004】
シリコン系材料は、ナノ化、グラファイト複合、炭素被覆等により、シリコン系材料のサイクル、膨脹およびレート性能をある程度改善できるが、シリコン系材料に依然として明らかな欠点があり、その応用が限られている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
下記は、本出願の詳細内容の概要である。本概要は、特許請求の範囲の保護範囲を限定するものではない。
【0006】
本出願は、複合負極材料、その調製方法及び応用を提供することを目的とし、特に、高容量、長サイクル寿命のリチウムイオン電池用コアシェル型の複合負極材料、その調製方法、及び当該複合材料を含むリチウムイオン電池に関する。
【0007】
上記の目的を達成するために、本出願は、以下の技術案を採用する。
【0008】
第1局面において、本出願は、コアシェル型複合負極材料を提供する。前記コアシェル型複合負極材料は、第1活物質と第2活物質からなるコア、および第3活物質とする炭素被覆層シェルを含み、前記第1活物質は、シート状のシリコン系材料であり、前記第2活物質は、シート状のグラファイト材料である。
【0009】
本出願のコアシェル型複合負極材料において、シート状のシリコン系材料とシート状のグラファイト材料とによりコアを形成し、シート状のシリコン系材料粒子は、比表面積が大きくトポグラフィーが不規則であるため、シリコン系材料粒子間の結合力と結合緊密さを効果的に向上させ、それとシート状のグラファイト材料との複合効果を向上させることができる。シート状のシリコン系材料とシート状のグラファイト材料との間の結合性能が良好であり、シート状のシリコン系材料は、複数のグラファイトのシート層の間に分散でき、シート状のグラファイト材料は、粒子内部で良好な導電ネットワークを形成することができるので、材料内部での電気伝導率を向上させ、ナノシリコン系材料の膨脹を緩和することができる。両者からなるコアの外部を一層の緻密な導電性炭素層で被覆し、材料の導電性を向上させたので、さらに粒子内外部の隙間を低減し、材料膨脹を効果的に抑制し、材料と電解液との間の副反応を低減することができる。
【0010】
本出願のコアシェル型複合負極材料の任意選択の技術案は、前記シート状のシリコン系材料のアスペクト比が1.5~100であり且つ1.5が含まれなく、例えば1.6、1.8、2、2.5、2.8、3、3.5、4、5、5.5、6、8、10、15、20、23、26、30、35、40、45、50、60、65、70、80、85、90または100等であり、前記粒子のアスペクト比が粒子最大長さと最小長さの比である。この任意選択の技術案は、シート状のシリコン系材料のアスペクト比を限定することにより、それとシート状のグラファイト材料との結合性を向上させ、両者からなるネットワーク構造を改善し、電気化学的性能をさらに向上させることができる。
【0011】
任意選択で、前記シート状のシリコン系材料は、粒子のアスペクト比が2~40である。
【0012】
任意選択で、前記シート状のグラファイト材料は、粒子のアスペクト比が2超120以下であり、例えば2.2、2.5、3、3.5、4、4.2、4.6、5、5.5、6、6.5、7、8、10、15、20、25、28、32、36、40、45、50、60、70、80、85、90、100、105、110または120等であり、前記粒子のアスペクト比が粒子最大長さと最小長さの比である。この任意選択の技術案は、シート状のグラファイト材料の種類とアスペクト比を限定することにより、それとシート状のシリコン系材料との結合性を向上させ、両者からなるネットワーク構造を改善し、電気化学の性能をさらに向上させることができる。
【0013】
任意選択で、前記シート状のグラファイト材料は、アスペクト比が3~50である。
【0014】
本出願において、シート状の材料(例えばシート状のシリコン系材料とシート状のグラファイト材料)のアスペクト比が粒子最大長さと最小長さの比であり、シート状の材料の最大長さは、シート状の材料の二次元平面の最大長さであり、シート状の材料の最小長さは、シート状の材料の厚さである。
【0015】
本出願に係るシート状の材料とアスペクト比は、以下の関係を満たす。シリコン系材料について、アスペクト比が1.5未満であると、非シート状のシリコン系材料になり、グラファイト材料について、アスペクト比が2未満であると、非シート状のグラファイトになる。
【0016】
任意選択で、前記炭素被覆層は、有機炭素源を焼結し転化してなるものである。例えばポリエステル系、糖類、有機酸またはピッチ等の有機炭素源を用いて、500℃~1200℃の不活性雰囲気での焼結により、有機炭素源を炭素被覆層に転化する。
【0017】
任意選択で、前記炭素被覆層の厚さが0.05~3μmであり、例えば0.05μm、0.1μm、0.2μm、0.5μm、1μm、1.2μm、1.5μm、1.8μm、2μm、2.4μm、2.7μmまたは3μm等である。
【0018】
本出願に係る方法の任意選択の技術案は、前記第1活物質の組成は、Si、SiOxまたはSi-M合金の少なくとも2つの組み合わせであり、例えばSiとSiOxの組み合わせ、SiとSi-M合金の組み合わせ、SiOxとSi-M合金の組み合わせ、SiとSiOxとSi-M合金との組み合わせであってもよい。ここで、0.5<x<1.5であり、例えば0.5、0.7、0.8、1、1.2、1.3または1.5であり、MがB、Fe、Cu、Sn、Ge、Ti、Mg、NiもしくはCeのいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせである。
【0019】
任意選択で、前記第1活物質において、異なる物質のメディアン径の差の絶対値が50nm~1500nmであり、例えば50nm、100nm、125nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、1000nm、1100nm、1200nm、1300nm、1400nmまたは1500nm等である。この任意選択の技術案は、大小粒子の組み合わせを用いるので、ナノシリコン系材料の分散性を向上させ、粒子間の凝集を低減することができる。
【0020】
任意選択で、前記第1活物質は、質量比が0.01~100であるSiとSiOxからなり、Siのメディアン径が10~300nmであり、SiOxのメディアン径が150~5000nmであり、Siのメディアン径<SiOxのメディアン径である。前記質量比が、例えば0.01、0.05、0.1、0.2、1、2、5、10、15、20、35、50、60、65、70、80、85、95または100等であり、前記Siのメディアン径が、例えば10nm、30nm、50nm、100nm、150nm、170nm、185nm、200nm、220nm、240nm、280nmまたは300nm等であり、前記SiOxのメディアン径が、例えば150nm、200nm、300nm、400nm、450nm、500nm、600nm、800nm、1000nm、1250nm、1500nm、2000nm、2500nm、3000nm、3500nm、3800nm、4000nm、4500nmまたは5000nm等である。この任意選択の技術案は、メディアン径が10~300nmであるSiを用い、当該粒子径の材料の膨脹が最も低く(Si粒子のメディアン径が300nmよりも大きい場合に、膨脹が急激に増加する)、サイクル安定性が最適であり、さらに自身の膨脹が小さいメディアン径が150~5000nmであるSiOxを用いるので、大小粒子の組み合わせでナノシリコン系材料の分散性を向上させ、粒子間の凝集を低減し、相互補完効果が最適であり、得られた性能が最適である。
【0021】
任意選択で、前記第1活物質は、質量比が0.01~100であるSi及びSi-M合金からなり、Siのメディアン径が10~300nmであり、Si-M合金のメディアン径が150~5000nmであり、Siメディアン径<Si-M合金メディアン径である。前記質量比が、例えば0.01、0.05、0.1、0.2、1、2、5、10、15、20、35、50、60、65、70、80、85、95または100等である。前記Siのメディアン径が、例えば10nm、30nm、50nm、100nm、150nm、170nm、185nm、200nm、220nm、240nm、280nmまたは300nm等である。前記SiOxのメディアン径が、例えば150nm、200nm、300nm、400nm、450nm、500nm、600nm、800nm、1000nm、1250nm、1500nm、2000nm、2500nm、3000nm、3500nm、3800nm、4000nm、4500nmまたは5000nm等である。この任意選択の技術案は、メディアン径が10~300nmであるSiを用い、当該粒子径で材料の膨脹が最も低く、サイクル安定性が最適であり、さらに自身の膨脹が小さいメディアン径が150~5000nmであるSi-M合金を用いるので、大小粒子の組み合わせにより、ナノシリコン系材料の分散性を向上させ、粒子間の凝集を低減し、相互補完効果が最適であり、得られた性能が最適である。
【0022】
任意選択で、前記第1活物質は、質量比が0.01~100であるSiOxとSi-M合金とからなり、SiOxのメディアン径が150~400nm(例えば150nm、170nm、185nm、200nm、220nm、240nm、280nm、300nm、350nmまたは400nm等)であり、Si-M合金のメディアン径が200~5000nm(例えば200nm、250nm、400nm、600nm、800nm、1000nm、1250nm、1500nm、2000nm、2500nm、3000nm、3500nm、3800nm、4000nm、4500nmまたは5000nm等)であり、SiOxのメディアン径<Si-M合金のメディアン径である。この任意選択の技術案は、メディアン径が150~400nmであるSiOxを用い、さらに自身の膨脹が小さいメディアン径が400~5000nmであるSi-M合金を用いるので、大小粒子の組み合わせにより、ナノシリコン系材料の分散性を向上させ、粒子間の凝集を低減し、相互補完効果が最適であり、得られた性能が最適である。
【0023】
任意選択で、前記第1活物質は、質量比0.01~100でSiOxとSi-M合金とからなり、Si-M合金のメディアン径が150~400nm(例えば150nm、170nm、185nm、200nm、220nm、240nm、280nm、300nm、350nmまたは400nm等)であり、SiOxのメディアン径が200~5000nm(例えば200nm、250nm、400nm、600nm、800nm、1000nm、1250nm、1500nm、2000nm、2500nm、3000nm、3500nm、3800nm、4000nm、4500nmまたは5000nm等)であり、Si-M合金のメディアン径<SiOxのメディアン径である。メディアン径が150~400nmであるSi-M合金を用い、さらに自身の膨脹がメディアン径が400~5000nmである小さいSiOxを用いるので、大小粒子の組み合わせにより、ナノシリコン系材料の分散性を向上させ、粒子間の凝集を低減し、相互補完効果、得られた性能が比較的に優れる。
【0024】
任意選択で、前記第2活物質の組成は、天然グラファイトもしくは人造グラファイトのいずれか1つまたは2つの組み合わせを含む。
【0025】
任意選択で、前記第2活物質は、メディアン径が1~15μmであり、例えば1μm、2μm、3μm、4.5μm、5μm、6μm、8μm、10μm、12μm、13μmまたは15μm等である。
【0026】
任意選択で、前記第2活物質は、前記第1活物質のメディアン径よりも大きく、それらの差が2μm~12μmであり、この範囲内で、シート状のシリコン系材料のグラファイトシート層の間での分散性および結合性をさらに向上させ、電気化学的性能の向上に寄与できる。
【0027】
任意選択で、前記コアシェル型複合負極材料の合計質量を100wt%として、前記第1活物質の質量含有率が1~70wt%であり、例えば1wt%、3wt%、5wt%、8wt%、10wt%、15wt%、20wt%、25wt%、30wt%、35wt%、37wt%、40wt%、45wt%、50wt%、55wt%、60wt%、65wt%または70wt%等であり、第2活物質の質量含有率が5~60wt%であり、例えば5wt%、10wt%、12wt%、18wt%、20wt%、25wt%、30wt%、35wt%、37wt%、40wt%、45wt%、50wt%、55wt%または60wt%等であり、第3活物質材料の質量含有率が5~50wt%であり、例えば5wt%、10wt%、15wt%、20wt%、25wt%、30wt%、35wt%、37wt%、40wt%、45wt%または50wt%等である。
【0028】
第2局面において、本出願は、第1局面に記載のコアシェル型複合負極材料の調製方法を提供する。
図4に示すように、前記方法は、
第1活物質、第2活物質を混合して造粒し、第1前駆体を得るステップ(1)と、
第1前駆体を炭素被覆により改質し、その後、焼結して、コアシェル型複合負極材料を得るステップ(2)とを含み、
ここで、前記第1活物質は、シート状のシリコン系材料であり、前記第2活物質は、シート状のグラファイト材料である。
本出願の方法の任意選択の技術案として、前記シート状のシリコン系材料は、粒子のアスペクト比が15~100であり且つ1.5が含まれなく、前記粒子のアスペクト比が粒子最大長さと最小長さの比である。
【0029】
任意選択で、前記シート状のシリコン系材料は、比表面積が50~500m2/gであり、例えば50m2/g、65m2/g、80m2/g、100m2/g、125m2/g、150m2/g、200m2/g、240m2/g、270m2/g、300m2/g、350m2/g、400m2/g、450m2/gまたは500m2/g等である。
【0030】
任意選択で、前記シート状のグラファイト材料は、アスペクト比が2超120以下である。
【0031】
任意選択で、前記第1活物質の組成は、Si、SiOxまたはSi-M合金の少なくとも2つの組み合わせを含み、ここで、0.5<x<1.5であり、MがB、Fe、Cu、Sn、Ge、Ti、Mg、NiもしくはCeのいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせである。
【0032】
任意選択で、前記第1活物質において、異なる物質のメディアン径の差の絶対値が50nm~1500nmである。
【0033】
任意選択で、前記第1活物質は、質量比が0.01~100であるSiとSiOxからなり、Siのメディアン径が10~300nmであり、SiOxのメディアン径が150~5000nmであり、Siのメディアン径<SiOxのメディアン径である。
【0034】
任意選択で、前記第1活物質は、質量比が0.01~100であるSiとSi-M合金とからなり、Siのメディアン径が10~300nmであり、Si-M合金のメディアン径が150~5000nmであり、Siのメディアン径<Si-M合金のメディアン径である。
【0035】
任意選択で、前記第1活物質は、質量比が0.01~100であるSiOxとSi-M合金とからなり、SiOxのメディアン径が150~400nmであり、Si-M合金のメディアン径が200~5000nmであり、SiOxのメディアン径<Si-M合金のメディアン径である。
【0036】
任意選択で、前記第1活物質は、質量比が0.01~100であるSiOxとSi-M合金とからなり、Si-M合金のメディアン径が150~400nmであり、SiOxのメディアン径が200~5000nmであり、Si-M合金のメディアン径<SiOxのメディアン径である。
【0037】
任意選択で、前記第1活物質がSi、SiOx及びSi-M合金からなり、SiとSiOxとの質量比が0.02~100であり、SiとSi-M合金との質量比が0.02~100であり、Siのメディアン径が10~300nmであり、SiOxのメディアン径が150~5000nmであり、Si-M合金のメディアン径が150~5000nmであり、Siのメディアン径<SiOxのメディアン径<Si-M合金のメディアン径である。
【0038】
任意選択で、前記第1活物質がSi、SiOx及びSi-M合金からなり、SiとSiOxとの質量比が0.02~100であり、SiとSi-M合金との質量比が0.02~100であり、Siのメディアン径が10~300nmであり、SiOxのメディアン径が150~5000nmであり、Si-M合金のメディアン径が150~5000nmであり、Siのメディアン径<Si-M合金のメディアン径<SiOxのメディアン径である。
【0039】
任意選択で、前記第2活物質の組成は、天然グラファイトもしくは人造グラファイトのいずれか1つまたは2つの組み合わせを含む。
【0040】
任意選択で、前記第2活物質は、メディアン径が1~15μmである。
【0041】
本出願に係る方法の任意選択の技術案として、ステップ(1)に記載の前記混合造粒方法が、噴霧乾燥、混合加熱または混練のいずれか1つである。
【0042】
任意選択で、ステップ(2)に記載の前記炭素被覆による改質方法が、液相コーティング法、固相コーティング法または気相コーティング法のいずれか1つである。
【0043】
任意選択で、前記液相コーティング法のプロセスステップは、第1前駆体と炭素源を有機溶剤系に分散し、乾燥させて、第2前駆体を得ることを含む。
【0044】
任意選択で、前記固相コーティング法のプロセスステップは、第1前駆体と炭素源をミキサーに入れ、混合して、第2前駆体を得ることを含む。
【0045】
任意選択で、前記液相コーティング法と固相コーティング法において、炭素源が、ポリエステル系、糖類、有機酸もしくはピッチのいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせである。
【0046】
任意選択で、前記ポリエステル系は、フェノール樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートもしくはポリアリレートのいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含み、前記組み合わせは、典型に、フェノール樹脂とポリエチレンテレフタレートとの組み合わせ、ポリエチレンテレフタレートとポリアリレートとの組み合わせ、フェノール樹脂とポリブチレンテレフタレートとポリアリレートとの組み合わせ等を含むが、これらに限らない。
【0047】
任意選択で、前記気相コーティング法のプロセスステップは、反応炉で、有機炭素源ガスを被覆源として、不活性ガスを導入する条件で、500℃~1200℃に昇温させ、第1前駆体に対して炭素被覆を行い、第2前駆体を得ることを含む。
【0048】
前記気相コーティング法において、昇温後の温度が、例えば500℃、600℃、650℃、700℃、750℃、800℃、900℃、1000℃、1100℃または1200℃等である。
【0049】
任意選択で、前記気相コーティング法において、前記有機炭素源ガスが炭化水素類または1~3つのベンゼン環を有する芳香族炭化水素誘導体のいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせである。
【0050】
本出願のステップ(3)の前記焼結は、高温焼結である。
【0051】
任意選択で、ステップ(3)の前記焼結は、第2前駆体を反応器に入れ、不活性ガスを導入する保護条件で、500℃~1200℃に昇温させ、コアシェル型複合負極材料を得ることを含む。
【0052】
ステップ(3)の前記焼結において、昇温後の温度が、例えば500℃、600℃、650℃、700℃、750℃、800℃、900℃、1000℃、1100℃または1200℃等である。
【0053】
任意選択で、前記反応器が、真空炉、箱型炉、回転炉、ローラーハース窯、プッシャー窯またはチューブ炉のいずれか1つを含む。
【0054】
第3局面において、本出願は、第1局面に記載のコアシェル型負極材料を含む負極を提供する。
【0055】
第4様態において、本出願は、第1局面に記載のコアシェル型複合負極材料を含むリチウムイオン電池を提供する。
【0056】
なお、本出願の前記粒子のアスペクト比は、単一粒子の特性であり、メディアン径とは異なる概念である。メディアン径は、粒子全体の大小分布に対する統計分析であり、アスペクト比の異なる粒子は、いずれも粒度メーターでメディアン径を測定することができる。本出願は、マルバーン粒度メーターにてメディアン径を測定することができる。
【発明の効果】
【0057】
従来の技術と比較して、本出願は、以下の有益な効果を有する。
【0058】
(1)本出願のコアシェル型複合負極材料において、シート状のシリコン系材料粒子は、比表面積が大きくトポグラフィーが不規則であるため、シリコン系材料粒子間の結合力と結合緊密さを効果的に向上させ、それとシート状のグラファイト材料との複合効果を向上させることができる。シート状のシリコン系材料とシート状のグラファイト材料との間の結合性能が良好であり、シート状のシリコン系材料は、複数のグラファイトのシート層の間に分散でき、シート状のグラファイト材料は、粒子内部で良好な導電ネットワークを形成することができるので、材料内部での電気伝導率を向上させ、ナノシリコン系材料の膨脹を緩和することができる。両者からなるコアの外部を一層の緻密な導電性炭素層で被覆し、材料の導電性を向上させ、さらに粒子内外部の隙間を低減し、材料膨脹を効果的に抑制し、材料と電解液との間の副反応を低減することができる。
【0059】
(2)本出願は、シート状のシリコン系材料とシート状のグラファイト材料のアスペクト比等のパラメータを最適化することにより、両者の結合力、結合緊密さ、形成されたネットワーク構造の導電性を改善し、膨脹性を抑制するため、前記コアシェル型複合負極材料は、優れた可逆的容量、初回クーロン効率及びサイクル安定性を有する。
【0060】
(3)本出願は、シート状のシリコン系材料の種類を最適化することにより、粒子径の調節と種類選択によって、材料の間の相互補完作用をさらに発揮し、材料の電気化学的性能を向上させることができる。
【0061】
(4)本出願に係るコアシェル型複合負極材料は、リチウムイオン電池負極に用いられ、高比容量(容量>400mAh/g)、初回クーロン効率及び長いサイクル寿命を有する。本出願に係るプロセスが簡単であり、大規模生産が容易になる。
【0062】
図面を参照して詳細の説明を閲読すれば、他の面も明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】本出願に係る複合負極材料の構造模式図であり、その中、1-第1活物質、2-第2活物質、3-第3活物質である。
【
図2】実施例1の負極材料のX線回折装置による測定結果である。
【
図3】実施例1の負極材料を用いて電池を製作して測定して得られたサイクル曲線である。
【
図4】本出願に係るコアシェル型複合負極材料の調製方法の模式流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、図面を参照しながら具体的な実施形態で本出願の技術案をさらに説明する。
【0065】
以下の方法により、各実施例と比較例の負極材料に対して測定を行う。
(i)X線回折装置X'PertPro、PANalyticalにより材料の構造を測定する。
(ii)以下の方法により初回充放電性能を測定する。
【0066】
各実施例及び比較例の負極材料、アセチレンブラック、CMC、SBRを質量比90:5:2.5:2.5で純水に分散して混合し、さらに、得られた混合スラリーを銅箔集電体に塗布し、真空乾燥させて、負極板を得る。その後、通常のプロセスにより、1mol/LのLiPF6/EC+DMC+EMC(v/v=1:1:1)電解液、SK(12μm)セパレータ、ハウジングをCR2016コイン型電池に組み立て、0.1C電流密度で電気化学的性能測定を測定する。
【0067】
(iii)以下の方法によりサイクル性能を測定する。
負極材料、アセチレンブラック、CMC、SBRを質量比95:2:1.5:1.5で純水に分散して混合し、さらに、銅箔集電体に塗布し、真空乾燥させて、負極板を得る。その後、通常の生産プロセスにより、従来の成熟したプロセスで調製された三元系正極板(NCM811)、1mol/LのLiPF6/EC+DMC+EMC(v/v=1:1:1)電解液、SK(12μm)セパレータ、ハウジングを18650円筒形電池に組み立てる。円筒形電池の充放電測定は、武漢金諾電子有限会社製LAND電池測定システムにて、常温条件下、1C倍率、定電流で充放電し、充放電電圧を2.75-4.2Vに抑えて行われ、その測定結果が表1に示される。
【0068】
実施例1
本実施例は、コアシェル型複合負極材料およびその調製方法を提供し、前記方法は、
(1)メディアン径が80nmでアスペクト比が8であるシート状シリコン、メディアン径が400nmでアスペクト比が3であるシート状SiO0.98、及びメディアン径が5μmでアスペクト比が10であるシート状の天然グラファイトを質量比30:30:40で混練して前駆体Aを得るステップと、
(2)前駆体Aと葡萄糖とを質量比70:30でエタノールに分散し、乾燥させて前駆体Bを得るステップと、
(3)前駆体Bを箱型炉に入れ、窒素を導入して、800℃に昇温させ、炭素被覆層の厚さが0.5μmであるコアシェル型複合負極材料を得るステップとを含む。
【0069】
本実施例で得られたコアシェル型複合負極材料は、第1活物質と第2活物質からなるコア、および炭素被覆層シェルを備え、前記第1活物質がシリコン系材料であり、具体的に、シート状のシリコン及びシート状のSiO0.98であり、前記第2活物質は、シート状の天然グラファイトであり、第3活物質は、葡萄糖から転化して得られた緻密な炭素被覆層シェルである。
【0070】
図2は、実施例1の負極材料のX線回折装置による測定結果であり、図に示すように、シリコン、亜酸化珪素及びグラファイトの特徴的なピークが現れる。
【0071】
図3は、実施例1の負極材料を用いて製作された電池を測定して得られたサイクル曲線であり、図に示すように、材料サイクル性能が優れ、600サイクル後の容量維持率が90.2%であった。
【0072】
実施例2
本実施例は、コアシェル型複合負極材料およびその調製方法を提供し、前記方法は、
(1)メディアン径が200nmでアスペクト比が25であるシート状のシリコン、メディアン径が900nmでアスペクト比が7.0であるシート状Si-Fe合金、及びメディアン径が8μmでアスペクト比が3であるシート状の人造グラファイトを質量比45:5:50で混合して加熱し、前駆体Aを得るステップと、
(2)前駆体A及びピッチを質量比80:20でミキサーに入れ、混合して前駆体Bを得るステップと、
(3)前駆体Bをチューブ炉中に入れ、アルゴンガスを導入して、900℃に昇温させ、炭素被覆層の厚さが0.3μmであるコアシェル型複合負極材料を得るステップとを含む。
【0073】
実施例3
本実施例は、コアシェル型複合負極材料およびその調製方法を提供し、前記方法は、
(1)メディアン径が200nmでアスペクト比が4であるシート状SiO1.05、メディアン径が600nmでアスペクト比が10であるシート状Si-Cu合金、及びメディアン径が10μmでアスペクト比が21であるシート状の天然グラファイトを質量比30:35:35で噴霧乾燥させて、前駆体Aを得るステップと、
(2)前駆体Aを回転炉に入れ、アセチレンガスを導入して、800℃で2h堆積して前駆体Bを得るステップと、
(3)前駆体Bをローラーハース窯に入れ、窒素を導入して、700℃に昇温させ、炭素被覆層の厚さが0.1μmであるコアシェル型複合負極材料を得るステップとを含む。
【0074】
実施例4
本実施例は、コアシェル型複合負極材料およびその調製方法を提供し、前記方法は、
(1)メディアン径が250nmでアスペクト比が12であるシート状Si-Ni合金、メディアン径が300nmでアスペクト比が6であるシート状SiO1.0、及びメディアン径が3μmでアスペクト比が15であるシート状の人造グラファイトを質量比35:15:60で混練して、前駆体Aを得るステップと、
(2)前駆体A及びフェノール樹脂を質量比85:15でミキサーに入れ、混合して前駆体Bを得るステップと、
(3)前駆体Bを真空炉に入れ、窒素ガスを導入して、980℃に昇温させ、炭素被覆層の厚さが0.3μmであるコアシェル型複合負極材料を得るステップとを含む。
【0075】
実施例5
本実施例は、コアシェル型複合負極材料およびその調製方法を提供し、前記方法は、
(1)メディアン径が200nmでアスペクト比が8であるシート状のシリコン、メディアン径が3μmでアスペクト比が5であるシート状SiO1.25、及びメディアン径が10μmでアスペクト比が5であるシート状の人造グラファイトを質量比15:25:60で噴霧乾燥させて、前駆体Aを得るステップと、
(2)前駆体A及びスクロースを質量比80:20でエタノールに分散し、乾燥させて前駆体Bを得るステップと、
(3)前駆体Bをチューブ炉中に入れ、窒素ガスを導入して、1000℃に昇温させ、炭素被覆層の厚さが0.4μmであるコアシェル型複合負極材料を得るステップとを含む。
【0076】
実施例6
本実施例は、コアシェル型複合負極材料およびその調製方法を提供し、前記方法は、
(1)メディアン径が50nmでアスペクト比が35であるシート状のシリコン、メディアン径が400nmでアスペクト比が6であるシート状SiO0.9、メディアン径が700nmでアスペクト比が18であるシート状Si-Ti合金、及びメディアン径が8μmでアスペクト比が40であるシート状の天然グラファイトを質量比25:10:15:50で噴霧乾燥させて、前駆体Aを得るステップと、
(2)前駆体A及びピッチを質量比65:35でミキサーに入れ、混合して前駆体Bを得るステップと、
(3)前駆体Bをローラーハース窯に入れ、窒素ガスを導入して、650℃に昇温させ、炭素被覆層の厚さが0.8μmであるコアシェル型複合負極材料をステップとを含む。
【0077】
実施例7
本実施例は、コアシェル型複合負極材料およびその調製方法を提供し、前記方法は、
(1)メディアン径が150nmでアスペクト比が15であるシート状のシリコン、メディアン径が300nmでアスペクト比が12であるシート状Si-Fe合金、メディアン径が800nmでアスペクト比が20であるシート状SiO0.85、及びメディアン径が5μmでアスペクト比が10であるシート状の人造グラファイトを質量比15:35:15:45で噴霧乾燥させて、前駆体Aを得るステップと、
(2)前駆体A及びスクロースを質量比85:15でエタノール中に分散し、乾燥させて前駆体Bを得るステップと、
(3)前駆体Bをチューブ炉に入れ、窒素ガスを導入して、850℃に昇温させ、炭素被覆層の厚さが0.3μmであるコアシェル型複合負極材料を得るステップとを含む。
【0078】
実施例8
本実施例は、コアシェル型複合負極材料およびその調製方法を提供し、実施例1との相違点は、以下のとおりである。
メディアン径が5μmでアスペクト比が10であるシート状の天然グラファイトをメディアン径が1.5μmでアスペクト比が10であるシート状の天然グラファイトに置き替える以外に、実施例1と同じである。
【0079】
実施例9
本実施例は、コアシェル型複合負極材料およびその調製方法を提供し、実施例1との相違点は、以下のとおりである。
メディアン径が5μmでアスペクト比が10であるシート状の天然グラファイトをメディアン径が14μmでアスペクト比が10であるシート状の天然グラファイトに置き替える以外に、実施例1と同じである。
【0080】
実施例10
実施例1とほぼ同じ方法により高容量複合負極材料を調製し、実施例1との相違点は、以下のとおりである。
ナノシリコンとSiO0.98とのメディアン径がいずれも400nmであり、実施例1と同じ方法で電池を作製した。
【0081】
実施例11
実施例1とほぼ同じ方法により高容量複合負極材料を調製し、実施例1との相違点は、以下のとおりである。
シリコン系材料は、メディアン径が80nmでアスペクト比が8であるシート状のシリコンであり、実施例1と同じ方法で電池を作製した。
【0082】
比較例1
実施例1とほぼ同じ方法により高容量複合負極材料を調製し、実施例1との相違点は、以下のとおりである。
シリコン系材料は、非シート状ナノシリコン及び非シート状SiO0.98であり、ナノシリコンとSiO0.98とのアスペクト比がいずれも1.1であり、実施例1と同じ方法で電池を作製した。
【0083】
比較例2
実施例1とほぼ同じ方法により高容量複合負極材料を調製し、実施例1との相違点は、以下のとおりである。
天然グラファイトとして、アスペクト比が1.2である非シート状のグラファイトを用い、実施例1と同じ方法で電池を作製した。
【0084】
【0085】
本出願の各実施例の負極材料は、高比容量、高効率及び長いサイクル寿命を有する。
【0086】
実施例1と実施例8から分かるように、実施例8のグラファイトとシリコン系材料とのメディアン径の差が2μmより小さく、シリコン系材料とグラファイト材料の分散効果が劣り、シリコン系粒子の凝集が増加したので、グラファイト緩和効果が弱くなり、サイクル性能が劣化した。
【0087】
実施例1と実施例9から分かるように、実施例9のグラファイトとシリコン系材料のメディアン径の差が12μmより大きく、粒子造粒効果が劣り、シリコン系材料とグラファイト材料の分散効果が劣り、シリコン系粒子の凝集が増加したので、粒子内部のグラファイトの導電ネットワークが弱くなり、サイクル性能が劣化した。
【0088】
実施例1と実施例10から分かるように、実施例10において、300nmよりも大きいシリコンを用いるため、材料膨脹が大きく、また、SiとSiO0.98のメディアン径が同じであり、凝集がひどくなるので、粒子内部の分散効果が劣り、部分膨脹が増加し、その結果、サイクル性能が急激に低下した。
【0089】
実施例1と実施例11から分かるように、実施例11において、シリコンのみを用いるため、容量効率が上昇したものの、材料膨脹が大きく、凝集がひどくなるので、粒子内部の分散効果が劣り、その結果、サイクル性能が急激に低下した。
【0090】
比較例1中において、アスペクト比が1.5より小さい非シート状のシリコン系材料を第1活物質として用いるため、粒子内部の結合が緊密ではなく、グラファイトとの複合効果が劣る。したがって、比表面積が高くなり、初回クーロン効率が低下し、サイクル中に電解液が粒子内部に浸入し、内部材料と副反応が生じ、電解液と活物質を絶えずに消耗するので、その結果、サイクル性能が低下した。
【0091】
比較例2において、アスペクト比が2より小さい非シート状のグラファイトを担体として使用するため、シリコン系材料の分散性が顕著に劣り、シリコン系材料の凝集がひどくなる。したがって、内部導電性が劣り、グラファイト材料の緩和効果が大幅に低下するので、その結果、材料膨脹が増加し、サイクル性能が低下した。
【0092】
出願人は、上記実施例を使用して本出願の方法の詳細を説明したが、本出願が上記の方法の詳細に限定されなく、即ち、本出願の実施が上記の方法の詳細に依存しなければならないことを意味しないことを主張する。