(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-31
(45)【発行日】2023-06-08
(54)【発明の名称】通信ケーブル用コネクタ及びコネクタ付通信ケーブル
(51)【国際特許分類】
H01R 13/6471 20110101AFI20230601BHJP
H01R 13/6463 20110101ALI20230601BHJP
H01R 13/6592 20110101ALI20230601BHJP
H01R 13/6597 20110101ALI20230601BHJP
H01R 13/6473 20110101ALN20230601BHJP
【FI】
H01R13/6471
H01R13/6463
H01R13/6592
H01R13/6597
H01R13/6473
(21)【出願番号】P 2020203649
(22)【出願日】2020-12-08
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】591150258
【氏名又は名称】株式会社ユタカ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100122552
【氏名又は名称】松下 浩二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100092808
【氏名又は名称】羽鳥 亘
(74)【代理人】
【識別番号】100140981
【氏名又は名称】柿原 希望
(72)【発明者】
【氏名】檜山 佑太
(72)【発明者】
【氏名】塩澤 陽
(72)【発明者】
【氏名】青木 英里佳
(72)【発明者】
【氏名】松本 慶一
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-528636(JP,A)
【文献】特開2017-188249(JP,A)
【文献】実開平3-37403(JP,U)
【文献】特開2017-33738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/00 - 12/91
H01R 13/56 - 13/72
H01R 24/00 - 24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心に配置された導電性金属製のテンションメンバの周囲に複数組のツイストペア線を構成する信号線を備えるとともに前記信号線の束の外周側がシールド層で覆われており鉄道車両間の信号伝送に使用される通信ケーブルの一端側に装着されるコネクタにおいて、前記テンションメンバの端部側は前記コネクタの内部に脱抜不能な状態にて配置された導電性の固定金具で係止・固定され、前記通信ケーブル一端側に装着した前記コネクタ又は前記通信ケーブル他端側に装着したコネクタをアース接続している車両側コネクタに接続して前記シールド層をアース接続させることで、前記固定金具を介して前記テンションメンバがアース接続される、ことを特徴とする通信ケーブル用コネクタ。
【請求項2】
前記固定金具には、該固定金具を前記通信ケーブルの端部側が挿入される導電性のケーブル装着部側に電気的に接続させるための導電性の接続手段が付設されており、前記ケーブル装着部に前記通信ケーブルの端部側を装着することで、前記通信ケーブル端部の外周側に折り返されて露出した前記シールド層が、前記ケーブル装着部及び前記接続手段を介して前記固定金具と電気的に接続される、ことを特徴とする請求項1に記載した通信ケーブル用コネクタ。
【請求項3】
装着する前記通信ケーブルの中心軸延長線位置に柱状の前記固定金具がその長手方向を前記中心軸延長線の向きに一致させて挿設されているとともにその外周側を取り囲むように前記通信ケーブルの前記信号線端部側が接続・固定される複数本の柱状の信号線用コンタクトが前記固定金具に並行に挿設されてなる非導電性の絶縁台が、その内部に配置されており、前記固定金具の先端側には、該固定金具の中心軸線を中心とした遠心方向に複数本のアームが延設されてその先端側を筒状のコンタクト収装体を構成している導電性の外部接触片の内周面に接するアース接続金具が、前記接続手段として付設されていることを特徴とする請求項2に記載した通信ケーブル用コネクタ。
【請求項4】
前記絶縁台は、前記ツイストペア線を構成する対の前記信号線を接続・固定する対の信号線用コンタクトが互いに所定間隔を有して並んで配置されているとともに、隣り合う異なる対の前記信号線用コンタクト同士の間には、前記固定金具の中心軸線に沿って延びるスリットが各々形成されており、前記スリットに、前記アース接続金具の各アーム中間部分が前記信号線用コンタクトの先端側から基端側をカバーするように板状に延長されて前記隣り合う異なる対の信号線用コンタクト間に隔壁を形成する導電性の遮蔽板が各々挿設されている、ことを特徴とする、請求項3に記載した通信ケーブル用コネクタ。
【請求項5】
前記固定金具は、装着する前記通信ケーブルの前記テンションメンバの端部側を筒状の基端側に挿入して圧着固定するものとされ、且つ、その素材が前記テンションメンバを構成する導電性金属の硬度と同等以上の硬度を有したものである、ことを特徴とする請求項1,2,3又は4に記載した通信ケーブル用コネクタ。
【請求項6】
中心に配置された導電性金属製のテンションメンバの周囲に複数組のツイストペア線を構成する信号線を備えるとともにその信号線の束の外周側がシールド層で覆われており鉄道車両間の信号伝送に使用される通信ケーブルの一端側に、請求項1,2,3,4又は5に記載した通信ケーブル用コネクタを装着してなるコネクタ付通信ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信ケーブル用コネクタ及びコネクタ付通信ケーブルに関し、殊に、鉄道車両間で高速通信を行う通信ケーブルを接続するためのコネクタ、及びそれを両端側に備えたコネクタ付通信ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の鉄道車両においては、車両制御用の信号や各種情報信号を大量且つ高速に伝送することが求められていることから、100Mビット/秒のイーサネット(登録商標)を使用するものが一般的になっており、それを実現するための通信ケーブル、コネクタ等の信号伝送手段も多数開発されている。
【0003】
このようなデータ通信の大容量化・高速化には、広範囲の周波数領域での伝送特性を確保する必要があり、特に高周波数域による特性を充分に確保できるようにすることが求められている。この高周波数域の特性を確保するため、通信に用いる信号を差動信号としてこれを2本の信号線を撚り合わせたツイストペア線で伝送する手法が周知であるが、その信号線同士の位置関係を安定的に保つために、信号線の線径を細くするための技術や撚り合わせのピッチを短くする技術も採用されている。
【0004】
この場合、鉄道車両間において100Mビット/秒レベルの高速通信を行うには、少なくとも2対のツイストペア線を備えた通信ケーブルが必要となる。しかし、最近ではより高速度の伝送が要求されるようになっており、1000Mビット/秒レベルの通信も想定されていることから、4対のツイストペア線を備えた通信ケーブルも開発されるようになった。
【0005】
ところが、鉄道の車両間に配置される通信ケーブルは約1.5mと短いのに対し、車両の曲線走行に起因して走行方向に対する角度ずれが繰り返されることから、車両側に接続するケーブル端末部分の耐久性が問題となりやすい。そこで、上述のように4対のツイストペア線を1本の通信ケーブルに内装する場合に、通信ケーブルの耐久性を確保する目的で各信号線にピアノ線を組み込むことも考えられるところ、ピアノ線の電気抵抗が大きいために必要な伝送特性を確保できなくなるという問題がある。
【0006】
斯かる問題に対し、特開2017-188249号公報に記載されている鉄道車両用の通信ケーブルにおいては、中心に配置した高張力線によるテンションメンバの周囲に複数対のツイストペア線による信号線を配置した構造として、そのテンションメンバの両端側がコネクタを介して車両側に接続されることで、通信ケーブルにかかる負荷の殆どをそのテンションメンバが受け持ちながら、各信号線に損傷が生じにくい状態を確保可能としている。
【0007】
この場合、通信ケーブルの中心に配置したテンションメンバの端部側を、手間を要することなくコネクタ内に堅固な状態で固定できるようにすることが求められるが、硬度の高い金属線を用いたテンションメンバの場合は、通信ケーブルの両端側にコネクタを装着する際にその端部側を圧着して固定することが容易ではないのに対し、テンションメンバをコネクタ内部に固定する具体的な方法について、前述の先行技術文献においては開示されていない。
【0008】
また、上述のような高速通信用の通信ケーブルに使用するコネクタにおいては、信号線間の漏話や特性インピーダンスの変化が通信性能確保の点で問題となりやすく、殊に、ケーブルにコネクタを装着する際には、コネクタ内のコンタクトが信号線の線径よりも太くなることから、ツイストペア線の各対間の位置関係がケーブルにおける状態よりも広がってしまうため、特性インピーダンスの乱れに繋がりやすい。
【0009】
さらに、コネクタ内のコンタクトに信号線を接続する際に、通信ケーブルのシールド編組を接続部分で取り除くことでその部分で信号線とシールド編組を通じたアース接地との距離が離れてしまうため、信号線の特性インピーダンスが一層変化しやすい状態となる。加えて、通信ケーブルに内装するテンションメンバの強度を確保する目的で導電性金属のワイヤを使用した場合は、その導電性金属が電気的にどこにも接続されていない状態であるとその電位が不安定になってしまうため、周囲の信号線に対しインピーダンスの乱れを生じさせる要因となりやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、鉄道車両間に配置する高速通信用の通信ケーブルについて、その通信性能と耐久性を高レベルで確保できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明は、中心に配置された導電性金属製のテンションメンバの周囲に複数組のツイストペア線を構成する信号線を備えるとともに信号線の束の外周側がシールド層で覆われており鉄道車両間の信号伝送に使用される通信ケーブルの一端側に装着されるコネクタにおいて、そのテンションメンバの端部側はコネクタの内部に脱抜不能な状態にて配置された導電性の固定金具で係止・固定され、通信ケーブル一端側に装着した前記コネクタ又は通信ケーブル他端側に装着したコネクタをアース接続している車両側コネクタに接続してシールド層をアース接続させることで、その固定金具を介してテンションメンバがアース接続される、ことを特徴とする通信ケーブル用コネクタとした。
【0013】
このように、鉄道車両間に配置される通信ケーブルの通信性能と耐久性を確保するため導電性金属からなるテンションメンバをケーブル中心に配置した場合に、その導電性のテンションメンバが電気的にどこにも接続されていないと、周囲の信号線の伝送インピーダンスに悪影響を生じる畏れがあることから、テンションメンバをコネクタ内に固定する固定金具を導電性のものとし、そのコネクタ又は他端側のコネクタをアース接続した車両側コネクタに接続してシールド層をアース接続することでその固定金具を介してテンションメンバがアース接続されるようにしたものであり、これにより導電性のテンションメンバに起因する信号線への悪影響を大幅に軽減することができる。
【0014】
また、この通信ケーブル用コネクタにおいて、その固定金具にはそれを通信ケーブル端部側が挿入される導電性のケーブル装着部側に電気的に接続させるための導電性の接続手段が付設されており、そのケーブル装着部に通信ケーブルの端部側を装着することで、通信ケーブル端部の外周側に折り返されて露出したシールド層が、ケーブル装着部及び接続手段を介して固定金具と電気的に接続される、ことを特徴としたものとすれば、シールド層がテンションメンバに接続されるとともにその両方がアース接続されるため、安定したアース接続の状態を確保しやすいものとなる。
【0015】
この通信ケーブル用コネクタにおいて、装着する通信ケーブルの中心軸延長線位置に柱状の固定金具がその長手方向を前記中心軸延長線の向きに一致させて挿設されているとともにその外周側を取り囲むように通信ケーブルの信号線端部側が接続・固定される複数本の柱状の信号線用コンタクトがその固定金具に並行に挿設されてなる非導電性の絶縁台が、その内部に配置されており、その固定金具の先端側には、その固定金具の中心軸線を中心とした遠心方向に複数本のアームが延設されてその先端側を筒状のコンタクト収装体を構成している導電性の外部接触片の内周面に接するアース接続金具が、前記接続手段として付設されている、ことを特徴としたものとすれば、そのアース接続金具の存在によりコネクタの中心位置に配置した固定金具のアース接続が確保されるものとなる。
【0016】
この場合、その絶縁台は、ツイストペア線を構成する対の信号線を接続・固定する対の信号線用コンタクトが互いに所定間隔を有して並んで配置されているとともに、隣り合う異なる対の信号線用コンタクト同士の間には、固定金具の中心軸線に沿って延びるスリットが各々形成されており、そのスリットに、アース接続金具の各アーム中間部分が信号線用コンタクトの先端側から基端側をカバーするように板状に延長されて隣り合う異なる対の信号線用コンタクト間に隔壁を形成する導電性の遮蔽板が各々挿設されている、ことを特徴としたものとすれば、異なる対の隣り合う信号線用コンタクト間にアース接続されたシールド壁が形成されるため、漏話等の通信性能上の問題が生じるのを大幅に軽減することができる。
【0017】
さらにまた、上述した通信ケーブル用コネクタにおいて、その固定金具は、装着する通信ケーブルの導電性金属製のテンションメンバの端部側を筒状の基端側に挿入して圧着固定するものとされ、且つ、その素材がテンションメンバを構成する導電性金属の硬度と同等以上の硬度を有したものである、ことを特徴としたものとすれば、簡易な手順でテンションメンバの端部側を確実且つ堅固に固定可能なものとなる。
【0018】
加えて、中心に配置された導電性金属製のテンションメンバの周囲に複数組のツイストペア線を構成する信号線を備えるとともに信号線の束の外周側がシールド層で覆われており鉄道車両間の信号伝送に使用される通信ケーブルの一端側に、上述した通信ケーブル用コネクタを装着してなるコネクタ付通信ケーブルとすれば、それを鉄道車両間に配設するだけで、上述した通信ケーブル用コネクタの機能が総て発揮されるものとなる。
【発明の効果】
【0019】
テンションメンバをコネクタ内に固定する固定金具を導電性のものとし、そのコネクタ又は他端側のコネクタをアース接続した車両側コネクタに接続することでその固定金具を介してテンションメンバがアース接続される構造を備えた本発明によると、鉄道車両間に配置される通信ケーブルの通信性能と耐久性を高レベルで確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態である通信ケーブル用コネクタであって、(A)は正面図、(B)はその一部を切り欠いた側面図である。
【
図2】
図1の通信ケーブル用コネクタの分解斜視図である。
【
図3】
図1(B)の通信ケーブル用コネクタに通信ケーブルを装着する状態を示す側面部分図である。
【
図4】
図1の通信ケーブル用コネクタに通信ケーブルを装着したコネクタ付通信ケーブルを車両側の通信ケーブル用コネクタに接続する状態を示す側面部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。尚、本発明において、通信ケーブルとは、情報やデータを伝送することだけではなく、広く電気的信号を伝送する目的で使用されるものであり、信号伝送ケーブルに含まれるものである。
【0022】
図1(A)は、本実施の形態である通信ケーブル用のコネクタ10の正面図、
図1(B)は側面図を示しており、
図2はその分解斜視図を示している。このコネクタ10は、縦列した鉄道車両の間に配置されて車両間で高速通信を行うための通信ケーブル30(
図3参照)の一端側に装着して使用され、通信ケーブル30の通信性能と耐久性を高レベルで確保可能とするために開発されたものである。
【0023】
一方、車両間に配置される通信ケーブル30としては、
図3に示すように、中心に配置されたテンションメンバ31の周囲に4組のツイストペア線を構成する8本の信号線32a,32b,32c,32d,32e,32f,32g,32h(信号線32g,32hは図に表れず)を備えているとともに、その信号線の束の外周側をシールド編組35等によるシールド層で覆ってなるものが、1000Mビット/秒レベルの高速通信を可能にする観点から好適である。
【0024】
その通信ケーブル30のテンションメンバ31としては、所定レベルの引張強度を有する鋼線を束ねたワイヤ等の導電性金属製の線材を用いるのが通常であるが、車両側に接続するケーブル端末部分の耐久性とコネクタ内部への固定作業の容易さを両立させる観点から、銅線とピアノ線を撚り合わせた電線に被膜を設けた所謂ジャンパ線と呼ばれるものを用いることが好ましい。
【0025】
そして、本発明による通信ケーブル用のコネクタ10においては、通信ケーブル30の中心に配置したテンションメンバ31の端部側が、コネクタ内部に脱抜不能な状態で配置された導電性素材による固定金具15で係止・固定される構成を採用しており、ケーブル端部側で生じる応力をテンションメンバ31で負担させて信号線32a~32h端部側における引張力や屈曲力への耐性を高めることを可能としているが、これに加え、内部に配置した導電性の固定金具15を介してテンションメンバ31がアース接続される構造を備えており、この点が本発明における重要な特徴部分となっている。
【0026】
即ち、鉄道車両間に配置する通信ケーブルの耐久性を確保するために導電性金属製のテンションメンバ31をケーブル中心に配置した場合、そのテンションメンバ31が電気的にどこにも接続されていない状態であると、その周囲に配置した信号線32a~32hの通信状態に悪影響を及ぼしてしまう畏れがあることから、そのテンションメンバ31をコネクタ内に固定する固定金具15を導電性のものとして、通信ケーブル30一端側に装着したコネクタ10又は通信ケーブル30他端側に装着した図示しないコネクタをアース接続した車両側のコネクタ20(
図4参照)に接続してシールド層をアース接続させることで、固定金具15を介してテンションメンバ31がアース接続されるようにしたものである。
【0027】
これにより、テンションンメンバ31が電位的に安定するため、信号線32a~32hの通信状態にテンションメンバ31が及ぼす悪影響を最小限に軽減可能なものとしている。尚、テンションメンバ31だけにケーブル30の張力を負荷させるようにするためには、
図3に示すように、ケーブル本体先端側に露出したテンションメンバ31の長さに対し、信号線32a~32hの露出部分の長さに余長をとっておくことが必要である。
【0028】
斯かる機能を備えたコネクタ10は、
図1(A)の正面図に示すように、その接続側となる先端面に、合成樹脂等の非導電性素材からなる絶縁台14の先端面が露出しており、この先端面には、信号線32a~32hの端部側を接続・固定するとともに相手方のコンタクトに接続する筒状の信号線用のコンタクト16を各々挿入・保持している挿入孔141,142,143,144,145,146,147,148が開口している。
【0029】
また、この絶縁台14の中心部分には、
図1(B)に示すように、上述した通信ケーブル30のテンションメンバ31の端部側を基端側に接続・固定しながら絶縁台14から脱抜不能な状態で固定金具15を保持している挿入孔149が開口しており、その固定金具15は、導電性金属製のテンションメンバ31の端部側を基端側の筒状部に挿入して圧着固定する圧着端子である。
【0030】
この固定金具15は、コネクタ内におけるコンタクトの固定方法として一般的に採用されているものと同様に、それを絶縁台14の挿入孔149に基端側から挿入することで、円柱状の本体中央部に形成したくびれに配設したクリップで絶縁台14側に係止されて脱抜不能に取り付けられるものである。また、その固定金具15の素材としては、テンションメンバ31を構成する各素線が圧着により変形することが必要であるため、ジャンパ線等のテンションメンバ31を構成している導電性金属の硬度と同等以上の硬度を有した導電性金属を用いることが好ましく、これにより、テンションメンバ31の端部側を簡易な手順で固定金具15の基端側に確実且つ堅固に固定することができる。
【0031】
また、固定金具15や8本の信号線用のコンタクト16を内部に固定しながらこれらの絶縁状態を確保して保持する絶縁台14は、その基端側を円筒状で非導電性樹脂製のカラー13に挿入されているとともに、その外周側を円筒状で導電性金属製の外部接触片12で覆われており、その外部接触片12の基端側は、その内周側に通信ケーブル30の端部側を挿入して固定する導電性金属製の上オサエ111、下オサエ112を組合せてなる電線オサエ11で覆われており、その外部接触片12、カラー13、電線オサエ11でコネクタ10における円筒状のコンタクト収装体を構成している。
【0032】
図2の分解斜視図を参照しながら、本実施の形態のコネクタ10の構成をさらに詳細に説明すると、コネクタ10の内部には、装着する通信ケーブル30の中心軸延長線位置に、上述したように柱状の固定金具15がその長手方向をその中心軸延長線に一致させて挿設されており、その外周側を取り囲むように通信ケーブル30の信号線32a~32h端部側が接続・固定される複数本の筒状のコンタクト16が固定金具15に並行に挿設されてなる絶縁台14が配置されている。
【0033】
そして、その固定金具15の先端側には、二点鎖線で示すケーブル30の中心軸延長線を中心として遠心方向に等間隔で4本のアーム17a,17b,17c,17dが延設されてその先端側を基端方向に折り曲げた外側面を外部接触片12の内周面に弾性的に各々接するものとしたアース接続金具17が付設されている。このアース接続金具17は、通信ケーブル30端部側で折り返されて露出したシールド編組35が内接する導電性のケーブル装着部である電線オサエ11に対し外部接触片12を介して固定金具15を電気的に接続させるための接続手段となっており、固定金具15の先端側にアース接続金具17の中心になるネジ孔176の部分をネジ72で固定されている。
【0034】
この構成により、通信ケーブル30一端側に装着したコネクタ10又は通信ケーブル30他端側に装着した図示しないコネクタをアース接続している車両側のコネクタ20に接続してシールド編組35によるシールド層をアース接続させることにより、固定金具15、アース接続金具17、外部接触片12を介してテンションメンバ31がアース接続されるようになっている。
【0035】
また、その絶縁台14においては、上述したように、8本の信号線用のコンタクト16が所定間隔を有して正面視円形を描くように並んで配置されているが、その隣り合う異なる対の信号線用のコンタクト16,16との間には二点鎖線で示す中心軸延長線及び固定金具15の中心軸に沿って延びるスリット14a,14b(切り欠き部のため図示せず),14c,14dが形成されており、これらにアース接続金具17の中心部から遠心方向に複数条放射状に延びたアーム17a,17b,17c,17dの中間部分が各コンタクト16の先端側から基端側をカバーするように板状に延長されて、隣り合う異なる対のコンタクト16,16間に隔壁を形成する導電性の遮蔽板171,172,173,174が各々挿設された構成となっている。
【0036】
これにより、異なる対の隣り合うコンタクト16,16の間にアース接続されたシールド壁が各々形成されることになるため、ケーブル30にコネクタ10を装着する際にコネクタ内のコンタクト16が信号線32a~32hの線径よりも太くなることでツイストペア線の各対間の位置関係がケーブル30における状態よりも広がって反射が生じることによる漏話等の通信性能上の問題を、有効に回避することができる。
【0037】
尚、
図4に示したように、本実施の形態のコネクタ10は、通信ケーブル30の一端側に装着されてコネクタ付通信ケーブル1を構成するものであるが、そのコネクタ10と図示しない他端側のコネクタを、縦列した車両間において対向している車両側のコネクタ20,20に各々接続することにより、その外部接触片12内部の8本の筒状のコンタクト16(メス)に、車両側の外部接触片22内部の図示しない8本のピン状のコンタクト(オス)が挿入されて電気的接続が完了する。
【0038】
以上、述べたように、鉄道車両間に配置される高速通信用のケーブルについて、本発明により、その通信性能と耐久性を高レベルで確保できるようになった。
【符号の説明】
【0039】
1 コネクタ付通信ケーブル、10,20 コネクタ、12,22 外部接触片、14 絶縁台、14a,14b,14c,14d スリット、15 固定金具、16 コンタクト、17 アース接続金具、17a,17b,17c,17d アーム、30 通信ケーブル、31 テンションメンバ、32a,32b,32c,32d,32e,32f,32g,32h 通信線、171,172,173,174 遮蔽板