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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】吸着パッド
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20230605BHJP
【FI】
B25J15/06 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018227818
(22)【出願日】2018-12-05
(65)【公開番号】P2020089936
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】590000558
【氏名又は名称】コンバム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110434
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 勝
(72)【発明者】
【氏名】及川 謙介
(72)【発明者】
【氏名】津藤 亮介
(72)【発明者】
【氏名】小野 慶秀
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-122788(JP,U)
【文献】特開2018-065194(JP,A)
【文献】特開平05-004723(JP,A)
【文献】実開平03-117583(JP,U)
【文献】特開2018-130810(JP,A)
【文献】特表2010-524712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引路を設けた支持体と、前記支持体の下部周回に設けられ前記吸引路を介した吸引動作の際に被搬送体と当接するスカート部材とを有する吸着パッドであって、
前記スカート部材にはその外周から内周までの範囲に形成された複数の凹部によって分離された弾性花弁状部が形成され、
前記弾性花弁状部は、前記支持体の軸方向断面で前記スカート部の外端部から立ち上がる第1の傾斜面と、該第1の傾斜面から連続して形成され前記支持体の下部周回に至る第2の傾斜面とを備え、
前記弾性花弁状部にはその内側表面から突設されたリブ部が形成され、前記第2の傾斜面上に前記スカート部材の径方向に延長された前記リブ部が形成されていること
を特徴とする吸着パッド。
【請求項2】
前記リブ部には前記スカート部材の径方向に亘り傾斜面が形成されること
を特徴とする請求項1に記載の吸着パッド。
【請求項3】
前記弾性花弁状部は前記吸引路を介した吸引動作の際に前記リブ部を基に山折りに変形すること
を特徴とする請求項1に記載の吸着パッド。
【請求項4】
前記被搬送体が前記弾性花弁状部の変形に伴い山折りに変形し、前記凹部を基に谷折りに変形すること
を特徴とする請求項に記載の吸着パッド。
【請求項5】
前記支持体と前記スカート部材とが互いに一体に形成されること
を特徴とする請求項1に記載の吸着パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被搬送体を吸着して搬送するための吸着パッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
被搬送体(以下、ワークと称する)を吸着して保持、搬送するために、真空エジェクターや真空ポンプといった真空源で発生した負圧を利用してワークを吸着保持する吸着パッドが知られている。例えば、特許文献1には、特に変形し易いワークの吸着保持に適した吸着パッドが開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されている吸着パッドは、吸引路を介してスカート部の内側に負圧を発生させてワークを吸引する際、弾性体で形成されたスカート部の変形領域(第1の傾斜面領域)がワークの変形に追従することで、薄物ワークや内容物が充填された袋物ワーク等の変形し易いワークであっても、確実で円滑な吸着保持が可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-65194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に係る吸着パッドでは、スカート部が円錐台形状に形成されており、その外周縁形状は円形とされている。そのため、スカート部の変形量や変形容易性を大きくすることには限りがあり、ワークの変形に対して確実にスカート部を追従させるには限界があった。一方で、スカート部の厚み(肉厚)を薄くすることで、スカート部の変形量や変形容易性を大きくすることも可能であるが、スカート部の厚みを薄くすると、耐久性が低下するといった問題があった。
【0006】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、変形し易いワークに対しても吸着時における追従性を確実なものとし、当該追従性の確保に係る部材の耐久性を損なうことがない吸着パッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、吸引路を設けた支持体と、前記支持体の下部周回に設けられ前記吸引路を介した吸引動作の際に被搬送体と当接するスカート部材とを有する吸着パッドであって、前記スカート部材にはその外周から内周までの範囲に形成された複数の凹部によって分離された弾性花弁状部が形成され、前記弾性花弁状部は、前記支持体の軸方向断面で前記スカート部の外端部から立ち上がる第1の傾斜面と、該第1の傾斜面から連続して形成され前記支持体の下部周回に至る第2の傾斜面とを備え、前記弾性花弁状部にはその内側表面から突設されたリブ部が形成され、前記第2の傾斜面上に前記スカート部材の径方向に延長された前記リブ部が形成されていることを特徴としている。


【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、変形し易いワークに対しても吸着時における追従性を確実なものとし、当該追従性に係る部材の耐久性を損なうことがない吸着パッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態に係る吸着パッドの斜視図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る吸着パッドの断面図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る吸着パッドの底面図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る吸着パッドがワークを吸着保持する際の様子を説明する状態図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る吸着パッドの斜視図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る吸着パッドの断面図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る吸着パッドの底面図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係る吸着パッドがワークを吸着保持する際の様子を説明する状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨に逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0011】
[第1の実施形態]
図1の斜視図、図2の断面図、及び図3の底面図は、本実施形態に係る吸着パッド10を、外力を受けずに実質的に変形していない状態で示している。本実施形態に係る吸着パッド10は、支持体20の下部周回に設けられたスカート部材としてのスカート部40に被搬送体であるワークを当接させ、スカート部40に形成された内部空間を吸着パッド10周囲環境よりも減圧状態とすることにより、当該スカート部40をワーク表面に吸着させてワークを保持するものである。
【0012】
図1図3に示すように、吸着パッド10を構成する支持体20及びスカート部40は、一体的に又はそれぞれを別体として成形した後接合することにより形成することができる。支持体20とスカート部40とは同じ樹脂材により形成することもでき、異なる樹脂材を組み合わせることも可能である。支持体20及びスカート部40を構成する樹脂材としては、これらの部材が弾性体となるように、例えば、ニトリルゴム、水酸化ニトリルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、フッ化シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム等の合成ゴム材や天然ゴム材を用いることができる。また、熱可塑性エラストマーや熱硬化性エラストマーを用いることができる。
【0013】
また、上記樹脂材に対してフィラーが添加されることにより特定の性質を呈する樹脂材を用いることも可能である。具体的には、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維、金属粉、又は金属箔等の添加により導電性を獲得した樹脂材、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、タルク、炭酸カルシウム等の添加により耐熱性を獲得した樹脂材、金属粉の添加により金属探知機での検知性を獲得した樹脂材等を挙げることができる。さらに、構造上の強度向上を図る上で、例えば、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、ゾノトライト、石膏繊維、アルミボレート、MOS、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、タルク、マイカ、ガラスフレーク、又はポリオキシベンゾイルウイスカー等が添加された樹脂材、軽量化を図る上で、例えば、シリカバルーン、ガラスバルーン、又はシラスバルーン等が添加された樹脂材等も用いることができる。
【0014】
そして、本実施形態に係る吸着パッド10は、コンプレッション成型、トランファー成型、インジェクション成型、又は注型成型といった公知の成型によって形成することができる。
【0015】
支持体20は、吸引路22が形成された円筒形状として構成されている。吸引路22の開口部24は、例えば、ロボットアーム等の物品搬送機械が有する物品保持部と螺合する、図示せぬ止めねじ等の構造体が挿入可能となるように所定の内径D1をもって形成されている。吸引路22の内壁26の一部分には、開口部24内径D1よりも大きな内径D2を有し、開口部24を介して挿入された止めねじ等の構造体が係合可能な被係合凹部28が設けられている。吸着パッド10は、被係合凹部28と止めねじ等の構造体との係合を介して接続された物品搬送機械に設けられた真空エジェクターや真空ポンプ等の真空源が吸引路22直下に連通する内部空間30及び後述する独立内部空間50の空気を排出し、当該内部空間30及び独立内部空間50を周囲環境よりも減圧状態とすることで、スカート部40をワーク表面に吸着させて当該ワークを保持することができるように構成されている。なお、支持体20は、一例として円筒(円柱)形状とされるが、これに限定されず他の多角形状とすることも可能である。また、支持体20の全体又は一部を図2における上下方向に伸縮する蛇腹構造とし、吸着パッド10がワークWと当接する際のバッファ機能を付与しても構わない。なお、支持体20の径(開口部24外径)は、ワークの特性や物品搬送機械が有する物品保持部の寸法等に応じて任意のサイズとすることが可能である。
【0016】
支持体20の外周面21の下部にはスカート部40が形成されている。スカート部40は、支持体20の外周面21の下部から径方向外側かつ下側に向かって末広がりに延びて形成されている。支持体20の外周面21の下部周回を内周(IC)とし、スカート部40の外端部41を最大径とする外周(OE)とした場合、スカート部40にはその外周(OE)から内周(IC)までの範囲に形成された複数の凹部60によって分離された弾性花弁状部42が形成されている。すなわち、スカート部40の周縁部は、弾性花弁状部42と凹部60とが交互に連続して出現するように構成されている。なお、本実施形態においては、10箇所の凹部60によって分離された10個の弾性花弁状部42が形成された例を示している。本実施形態に係る弾性花弁状部42は、以下で説明する第2の傾斜面46の外面側に対応し、略矩形状に形成された第2の外表面461の各辺から鉛直方向に延在し、第1の傾斜面44の外面側に対応する第1の外表面441によって略角桶状に形成された外観を有し、ワークとの当接により弾性変形しワークの変形に追従可能な弾性部材として構成されている。すなわち、本実施形態に係る弾性花弁状部42は、隣り合う凹部60によって分離された第2の外表面461の形状が略矩形状となるように、スカート部40の周縁部が2ヶ所の変曲点を有する様に構成されている。
【0017】
図2の断面視において、弾性花弁状部42は、外端部41から立ち上がる第1の傾斜面44と第1の傾斜面44の中心側端部43から連続して形成され支持体20の下部周回に至る第2の傾斜面46とを有する。第1の傾斜面44、第2の傾斜面46は吸引路22の直下に位置する内部空間30から連通する独立した独立内部空間50の輪郭を形成する。第1の傾斜面44は下側に向かって、所定の肉厚を有する断面形状を有し、第2の傾斜面46を含めたこれらの面を輪郭とする各独立内部空間50は、ワークの変形に独立して追従することが可能であるため、ワークを確実に吸着保持することができる。この場合、吸着パッド10の外端部のワーク追従性を良好にして真空漏れを防ぐため、第1の傾斜面44の肉厚は第2の傾斜面46の肉厚よりも薄くすることが好ましい。本実施形態では、ワークの変形に対する追従性の向上を目的として、第1の傾斜面44の断面視肉厚を下側に向かって徐々に薄くする必要が無いため、ワークの変形に対する追従性に係る部材の耐久性を損なう恐れが無い。
【0018】
スカート部40の内部空間30に臨むように、第2の傾斜面46から当該スカート部40の径方向に延長され、第1の傾斜面44に至る独立内部空間50までリブ部48が複数本形成されている(本実施形態においては10本)。複数本のリブ部48はスカート部40の内側表面からそれぞれの弾性花弁状部42が構成する独立内部空間50に向かって突設される突条部材であり、スカート部40と同じ材質で一体的に形成することができる。なお、リブ部48はスカート部40と別体に形成することもでき、例えば、スカート部40よりも剛性を有する樹脂材を用いることも可能である。リブ部48自体は、その長手方向はスカート部40の径方向であり、それぞれが第1の傾斜面44に至るまで等間隔で放射状に延在している。リブ部48の底面は、径方向外側に向かって緩やかに下るような傾斜面480とされている。吸排気を円滑にすると共に、ワークの横滑り現象の発生を抑制する上で、リブ部48の形状や材質は、ワーク等に合わせて適宜選択されるものであるが、内部空間30に生じさせた減圧状態を維持できる様に、リブ部48の底面(傾斜面480)は、スカート部40外端部41の外周(OE)よりも支持体20側に位置する様に構成することが好ましい。
【0019】
吸引の際、第1の傾斜面44にワークが当接すると、当該第1の傾斜面44はワークの形状に追従しながら図3中矢印X(拡径)方向に弾性変形する。第1の傾斜面44の変形に伴い、ワークはリブ部48の傾斜面480最外部から徐々に当接する。そして、リブ部48を基に独立内部空間50の輪郭を構成する第1の傾斜面44及び第2の傾斜面46が図3中矢印Y方向(径方向に沿って)に折れ曲がり、その結果、ワークは山折りに変形する。独立内部空間50内でワークが山折りに変形することにより、ワークは隣り合う凹部60を基に谷折りに変形することになる。このように、本実施形態に係る吸着パッド10では、ワークを山折りと谷折りとが交互に繰り返される蛇腹折りの状態に変形させて吸着することにより、独立内部空間50においてのスカート部40とワークとの隙間発生を抑制することができ、変形し易いワークを確実に吸着保持することができる。本実施形態に係る吸着パッド10は、弾性花弁状部42が略矩形状に形成された第2の外表面461の各辺から鉛直方向に延在する第1の外表面441によって略角桶状に構成されていることから、弾性花弁状部42における吸着面積を大きくすることができるため、吸着力を大きくすることができる。
【0020】
ここで、本実施形態に係る吸着パッド10が取り扱うことに適したワークは、例えば、薄物や袋物のように、吸着時に比較的弱い力でその表面形状が変形するものであるが、特に限定されるものではない。
【0021】
図4は、本実施形態に係る吸着パッド10がワークWを吸着保持する際の様子を説明する状態図である。吸着の際には、吸着パッド10は、図示せぬ物品保持部と螺合する止めねじ等の構造体を介してロボットアーム等の物品搬送機械に接続されている。なお、ワークWの重量や形状に応じて、同時に作動させる吸着パッド10の数を調整できることは無論である。吸着パッド10のスカート部40の外端部41、すなわち、弾性花弁状部42にワークWが当接したところで、真空源による空気の吸引(排気)を開始する。すると、吸引路22直下に位置する内部空間30及び独立内部空間50の空気が排出され、内部空間30及び独立内部空間50は周囲環境よりも減圧状態となる。第1の傾斜面44にワークWが当接すると、当該第1の傾斜面44はワークWの形状に追従しながら図3中矢印X(拡径)方向に弾性変形する。第1の傾斜面44の変形に伴い、ワークWはリブ部48の傾斜面480最外部から徐々に当接する。そして、リブ部48を基に独立内部空間50の輪郭を構成する第1の傾斜面44及び第2の傾斜面46が図3中矢印Y方向(径方向に沿って)に折れ曲がり、その結果、ワークWは山折りMFに変形する。独立内部空間50内でワークWが山折りMFに変形することにより、ワークWは隣り合う凹部60を基に谷折りVFに変形することになる。ワークWは山折りMFと谷折りVFとが交互に繰り返される蛇腹折りの状態に変形することにより吸着パット10に吸着されることになる。
【0022】
ワークWに吸着した吸着パッド10を取り外す場合、真空源による空気の吸引(排気)を停止後、例えば、図示せぬ物品搬送機械に設けられた通気用ベントを開放し、空気を吸引路22直下に位置する内部空間30及び独立内部空間50に流入させることにより、減圧状態を解除する。減圧状態の解除に伴い、ワークWに当接している第1の傾斜面44の弾性変形も解除され、第1の傾斜面44とワークWは離間する。次いで、ワークWはリブ部48の傾斜面480から離間し、ワークWの独立空間50内における山折りMFの変形も解除される。独立内部空間50内におけるワークWの山折りMF変形が解除されることにより、隣り合う凹部60における谷折りVFの変形も解除されることになるため、ワークWから吸着パッド10を取り外すことができる。
【0023】
[第2の実施形態]
図5の斜視図、図6の断面図、及び図7の底面図は、本実施形態に係る吸着パッド10’を、外力を受けずに実質的に変形していない状態で示している。本実施形態に係る吸着パッド10’は第1の実施形態に係る吸着パッド10と同様に、支持体20’の下部周回に設けられたスカート部材としてのスカート部40’に被搬送体であるワークを当接させ、スカート部40’に形成された内部空間を吸着パッド10’周囲環境よりも減圧状態とすることにより、当該スカート部40’をワーク表面に吸着させてワークを保持するものである。
【0024】
図5図7に示すように、吸着パッド10’を構成する支持体20’及びスカート部40’は、一体的に又はそれぞれを別体として成形した後接合することにより形成することができる。支持体20’とスカート部40’とは第1の実施形態で示した同じ樹脂材により形成することもでき、異なる樹脂材を組み合わせることも可能である。
【0025】
支持体20’は、吸引路22’が形成された円筒形状として構成されている。吸引路22’の開口部24’は、例えば、ロボットアーム等の物品搬送機械が有する物品保持部と螺合する、図示せぬ止めねじ等の構造体が挿入可能となるように所定の内径D1’をもって形成されている。吸引路22’の内壁26’の一部分には、開口部24’内径D1’よりも大きな内径D2’を有し、開口部24’を介して挿入された止めねじ等の構造体が係合可能な被係合凹部28’が設けられている。吸着パッド10’は、被係合凹部28’と止めねじ等の構造体との係合を介して接続された物品搬送機械に設けられた真空エジェクターや真空ポンプ等の真空源が吸引路22’直下に位置する内部空間30’及び後述する独立内部空間50’の空気を排出し、当該内部空間30’及び独立内部空間50’を周囲環境よりも減圧状態とすることで、スカート部40’をワーク表面に吸着させてワークを保持することができるように構成されている。なお、支持体20’は、一例として円筒(円柱)形状とされるが、これに限定されず他の多角形状とすることも可能である。また、支持体20’の全体又は一部を図6における上下方向に伸縮する蛇腹構造とし、吸着パッド10’がワークWと当接する際のバッファ機能を付与しても構わない。なお、支持体20’の径(開口部24’外径)は、ワークの特性や物品搬送機械が有する物品保持部の寸法等に応じて任意のサイズとすることが可能である。
【0026】
支持体20’の外周面21’の下部にはスカート部40’が形成されている。スカート部40’は、支持体20’の外周面21’の下部から径方向外側かつ下側に向かって末広がりに延びて形成されている。支持体20’の外周面21’の下部周回を内周(IC)とし、スカート部40’の外端部41’を最大径とする外周(OE)とした場合、スカート部40’にはその外周(OE)から内周(IC)までの範囲に形成された複数の凹部60’によって分離された弾性花弁状部42’が形成されている。すなわち、スカート部40’の周縁部は、弾性花弁状部42’と凹部60’とが交互に連続して出現するように構成されている。なお、本実施形態においては、6箇所の凹部60’によって分離された6個の弾性花弁状部42’が形成された例を示している。本実施形態に係る弾性花弁状部42’は、以下で説明する第2の傾斜面46’の外面側に対応し、角丸の略三角形状に形成された第2の外表面461’の各辺から緩やかな傾斜角をもって鉛直方向に延在し、第1の傾斜面44’の外面側に対応する第1の外表面441’によって略三角桶状に形成された外観を有し、ワークとの当接により弾性変形しワークの変形に追従可能な弾性部材として構成されている。すなわち、本実施形態に係る弾性花弁状部42’は、隣り合う凹部60’によって分離された第2の外表面461’の形状が角丸の略三角形状となるように、スカート部40の周縁部が1ヶ所の変曲点を有する様に構成されている。
【0027】
図6の断面視において、弾性花弁状部42’は、外端部41’から立ち上がる第1の傾斜面44’と第1の傾斜面44’の中心側端部43’から連続して形成され支持体20’の下部周回に至る第2の傾斜面46’とを有する。第1の傾斜面44’、第2の傾斜面46’は吸引路22’の直下に位置する内部空間30’から連通する独立した独立内部空間50’の輪郭を形成する。第1の傾斜面44’は下側に向かって、例えば、所定の肉厚を有する断面形状を有し、第2の傾斜面46’を含めたこれらの面を輪郭とする各独立内部空間50’は、ワークの変形に独立して追従することが可能であるため、ワークを確実に吸着保持することができる。この場合、吸着パッド10’の外端部のワーク追従性を良好にして真空漏れを防ぐため、第1の傾斜面44’の肉厚は第2の傾斜面46’の肉厚よりも薄くすることが好ましい。本実施形態では、ワークの変形に対する追従性の向上を目的として、第1の傾斜面44’の断面視肉厚を下側に向かって徐々に薄くする必要が無いため、ワークの変形に対する追従性に係る部材の耐久性を損なう恐れが無い。
【0028】
スカート部40’の内部空間30’に臨むように、第2の傾斜面46’から当該スカート部40’の径方向に延長され、第1の傾斜面44’に至る独立内部空間50’までリブ部48’が複数本形成されている(本実施形態においては6本)。複数本のリブ部48’はスカート部40’の内側表面からそれぞれの弾性花弁状部42’が構成する独立内部空間50’に向かって突設される突条部材であり、スカート部40’と同じ材質で一体的に形成することができる。なお、リブ部48’はスカート部40’と別体に形成することもでき、例えば、スカート部40’よりも剛性を有する樹脂材を用いることも可能である。リブ部48’自体は、その長手方向はスカート部40’の径方向であり、それぞれが第1の傾斜面44’に向かって等間隔で放射状に延在している。リブ部48’の底面は、径方向外側に向かって緩やかに下るような傾斜面480’とされている。吸排気を円滑にすると共に、ワークの横滑り現象の発生を抑制する上で、リブ部48’の形状や材質は、ワーク等に合わせて適宜選択されるものであるが、内部空間30’に生じさせた減圧状態を維持できる様に、リブ部48’の底面(傾斜面480’)は、スカート部40’外端部41’の外周(OE)よりも支持体20’側に位置する様に構成することが好ましい。
【0029】
吸引の際、第1の傾斜面44’にワークが当接すると、当該第1の傾斜面44’はワークの形状に追従しながら図7中矢印X’(拡径)方向に弾性変形する。第1の傾斜面44’の変形に伴い、ワークはリブ部48’の傾斜面480’最外部から徐々に当接する。そして、リブ部48’を基に独立内部空間50’の輪郭を構成する第1の傾斜面44’及び第2の傾斜面46’が図7中矢印Y’方向(径方向に沿って)に折れ曲がり、その結果、ワークは山折りに変形する。独立内部空間50’内でワークが山折りに変形することにより、ワークは隣り合う凹部60’を基に谷折りに変形することになる。このように、本実施形態に係る吸着パッド10’では、ワークを山折りと谷折りとが交互に繰り返される蛇腹折りの状態に変形させて吸着することにより、独立内部空間50’においてのスカート部40’とワークとの隙間発生を抑制することができ、変形し易いワークを確実に吸着保持することができる。本実施形態に係る吸着パッド10’は、弾性花弁状部42’が角丸の略三角形状に形成された第2の外表面461’の各辺から緩やかな傾斜角をもって鉛直方向に延在する第1の外表面441’によって略三角桶状に構成されていることから、弾性花弁状部42’のワーク追従性を大きくすることができるため、変形し易いワークの吸着保持の確実性を向上させることができる。
【0030】
図8は、本実施形態に係る吸着パッド10’がワークWを吸着保持する際の様子を説明する図である。吸着の際には、吸着パッド10’は、図示せぬ物品保持部と螺号する止めねじ等の構造体を介してロボットアーム等の物品搬送機械に接続されている。なお、ワークWの重量や形状に応じて、同時に作動させる吸着パッド10’の数を調整できることは無論である。吸着パッド10’のスカート部40’の外端部41’、すなわち、弾性花弁状部42’にワークWが当接したところで、真空源による空気の吸引(排気)を開始する。すると、吸引路22’直下に位置する内部空間30’及び独立内部空間50’の空気が排出され、内部空間30’及び独立内部空間50’は周囲環境よりも減圧状態となる。第1の傾斜面44’にワークWが当接すると、当該第1の傾斜面44’はワークWの形状に追従しながら図7中矢印X(拡径)方向に弾性変形する。第1の傾斜面44’の変形に伴い、ワークWはリブ部48’の傾斜面480’最外部から徐々に当接する。そして、リブ部48’を基に独立内部空間50’の輪郭を構成する第1の傾斜面44’及び第2の傾斜面46’が図7中矢印Y方向(径方向に沿って)に折れ曲がり、その結果、ワークWは山折りMFに変形する。独立内部空間50’内でワークWが山折りMFに変形することにより、ワークWは隣り合う凹部60’を基に谷折りVFに変形することになる。ワークWは山折りMFと谷折りVFとが交互に繰り返される蛇腹折りの状態に変形することにより吸着パット10’に吸着されることになる。
【0031】
ワークWに吸着した吸着パッド10’を取り外す場合、真空源による空気の吸引(排気)を停止後、例えば、図示せぬ物品搬送機械に設けられた通気用ベントを開放し、空気を吸引路22’直下に位置する内部空間30’及び独立内部空間50’に流入させることにより、減圧状態を解除する。減圧状態の解除に伴い、ワークWに当接している第1の傾斜面44’の弾性変形も解除され、第1の傾斜面44’とワークWは離間する。次いで、ワークWはリブ部48’の傾斜面480’から離間し、ワークWの独立空間50’内における山折りMFの変形も解除される。独立内部空間50’内におけるワークWの山折りMF変形が解除されることにより、隣り合う凹部60’における谷折りVFの変形も解除されることになるため、ワークWから吸着パッド10’を取り外すことができる。
【0032】
以上のように、本発明によれば、変形し易いワークに対しても吸着時における追従性を確実なものとし、当該追従性に係る部材の耐久性を損なうことがない吸着パッドを提供することができる。
【0033】
なお、本実施形態の説明においては、10個又は6個の弾性花弁状部がスカート部に形成された吸着パッドの形態について説明したが、スカート部に形成される弾性花弁状部の個数はこれに限定されるものではなく、吸着保持するワークの材質、形状、変形の容易さ等を考慮し、適宜変更可能である。また、弾性花弁状部の外観的形状についても、第1の実施形態で例示した角桶形状又は第2の実施形態で例示した三角桶形状に限定されるものでなく、交互に連続して設けられる凹部によってその内部が独立した空間を形成することが可能な形状であれば、その形状に制限は無い。すなわち、弾性花弁状部として、隣り合う凹部によって分離された第2の外表面の形状が矩形状又は三角形状以外の所定の形状(例えば、五角形状)となるように、スカート部の周縁部に複数の変曲点(3箇所以上)を有する構成としても構わない。
【符号の説明】
【0034】
10,10’ 吸着パッド
20,20’ 支持体
21,21’ 外周面
22,22’ 吸引路
24,24’ 開口部
26,26’ 内壁
28,28’ 被係合凹部
30,30’ 内部空間
40,40’ スカート部
41,41’ 外端部
42,42’ 弾性花弁状部
44,44’ 第1の傾斜面
441,441’ 第1の外表面
46,46’ 第2の傾斜面
461,461’ 第2の外表面
48,48’ リブ部
480,480’ 傾斜面
50,50’ 独立内部空間
60,60’ 凹部
W ワーク
MF 山折り
VF 谷折り
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8