(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】遊技機
(51)【国際特許分類】
A63F 7/02 20060101AFI20230605BHJP
【FI】
A63F7/02 304D
(21)【出願番号】P 2020034528
(22)【出願日】2020-02-29
【審査請求日】2022-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】599104196
【氏名又は名称】株式会社サンセイアールアンドディ
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】松山 敬一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 哲平
(72)【発明者】
【氏名】森 大城
【審査官】篠崎 正
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-070486(JP,A)
【文献】特開2013-180146(JP,A)
【文献】特開平02-152851(JP,A)
【文献】特開2010-220710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、前記モータを駆動源とする可動演出部材と、前記モータの回転出力の位置を制御するモータ制御部とを備え、前記モータから前記可動演出部材までの間にバックラッシを有し、
前記モータの回転出力を、予め定められたモータ停止位置ま
で移動して停止したときに、前記可動演出部材が、前記モータ停止位置に対応する演出停止位置まで移動してから、さらに、その移動方向に前記バックラッシに対応するガタ移動量だけ移動する可動範囲を備える遊技機であって、
前記モータ制御部には、前記モータの回転出力を、前記モータ停止位置まで一方向に移動した後、前記バックラッシに対応する補正量だけその一方向と逆の他方向に移動して前記ガタ移動量を抑える戻し補正手段が備えられ
、
前記戻し補正手段は、前記モータの回転出力を他方向に移動して停止するときに前記バックラッシに対応する補正量だけ一方向に戻して前記ガタ移動量を抑える遊技機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、モータにより駆動される可動演出部材を備えた遊技機が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような遊技機では、モータから可動演出部材までの間にギヤやカム等によるバックラッシが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-110862号公報(段落[0024]、[0026]等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の遊技機では、モータを一方向に回転出力させて可動演出部材を移動してから、モータの回転出力を停止したときに、可動演出部材がその移動方向にバックラッシに起因してさらに移動するため、見栄えが良くなかった。そのため、モータにより駆動される可動演出部材の見栄えを良くすることが可能な遊技機が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた発明の第1態様は、モータと、前記モータを駆動源とする可動演出部材と、前記モータの回転出力の位置を制御するモータ制御部とを備え、前記モータから前記可動演出部材までの間にバックラッシを有し、前記モータの回転出力を、予め定められたモータ停止位置まで一方向に移動して停止したときに、前記可動演出部材が、前記モータ停止位置に対応する演出停止位置まで移動してから、さらに、その移動方向に前記バックラッシに対応するガタ移動量だけ移動する可動範囲を備える遊技機であって、前記モータ制御部には、前記モータの回転出力を、前記モータ停止位置まで一方向に移動した後、前記バックラッシに対応する補正量だけその一方向と逆の他方向に移動して前記ガタ移動量を抑える戻し補正手段が備えられている遊技機である。
【0006】
発明の第2態様は、前記モータは、ステッピングモータであって、前記補正量は、ステップ数で特定されている第1態様に記載の遊技機である。
【0007】
発明の第3態様は、前記可動演出部材の可動範囲内に、前記モータ停止位置が複数設定され、前記モータ停止位置毎に前記補正量が定められている第1態様又は第2態様に記載の遊技機である。
【0008】
発明の第4態様は、前記演出停止位置に配置された前記可動演出部材に近接配置される近接部材を備え、前記モータ制御部は、前記可動演出部材を前記近接部材で跳ね返るように見せる演出を実行する、第1態様から第3態様の何れか1の態様に記載の遊技機である。
【0009】
発明の第5態様は、前記可動演出部材は、上下方向に上端位置と下端位置の間を移動し、前記下端位置に配置された前記可動演出部材に下方で近接する近接部材が設けられ、前記モータ制御部は、前記可動演出部材を上下動させて前記近接部材の上でバウンドしているように見せるバウンド演出を実行する、第1態様から第3態様の何れか1の態様に記載の遊技機である。
【発明の効果】
【0010】
発明の第1態様では、モータの回転出力を、モータ停止位置まで一方向に移動した後、バックラッシに対応する補正量だけその一方向と逆の他方向に移動して、バックラッシに対応するガタ移動量を抑えることができる。従って、モータを回転出力させてから停止させたときの可動演出部材の見栄えを良くすることが可能となり、モータにより駆動される可動演出部材の見栄えを良くすることが可能となる。
【0011】
発明の第2態様のように、可動演出部材を駆動するモータは、ステッピングモータであってもよい。この場合、バックラッシに対応する補正量は、ステップ数で特定することができる。
【0012】
発明の第3態様では、可動演出部材の可動範囲内に、モータが停止されるモータ停止位置が複数設定され、それらモータ停止位置毎に補正量が定められている。従って、モータ停止位置により、重力等の影響でガタ移動量が異なる場合でも、ガタ移動量を抑えることが容易となる。
【0013】
発明の第4態様では、ガタ移動量を抑える戻し補正手段を有することで、可動演出部材を近接部材で跳ね返るように見せることを容易にすることが可能となる。
【0014】
発明の第5態様では、モータの駆動により可動演出部材を近接部材の上でバウンドしているように見せることができるという、従来にない斬新な演出を実行することが可能となり、演出の趣向性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】(A)モータの回転出力が原点位置のときの可動演出部材の正面図、(B)モータの回転出力が終端位置のときの可動演出部材の正面図
【
図4】従来の遊技機の(A)モータの回転出力が原点位置から移動開始するときの第1ギヤと第2ギヤの正面図、(B)モータの回転出力が停止したときの第1ギヤと第2ギヤの正面図、(C)モータの回転出力が停止した状態でバックラッシに起因して移動するアームの正面図
【
図5】第1実施形態に係る遊技機の(A)モータの回転出力が原点位置から移動開始するときの第1ギヤと第2ギヤの正面図、(B)モータの回転出力が停止したときの第1ギヤと第2ギヤの正面図、(C)モータが回転出力を反転させたときの第1ギヤとアームの正面図
【
図7】第2実施形態に係る遊技機の(A)モータの回転出力が原点位置のときの可動演出部材の正面図、(B)モータの回転出力が終端位置のときの可動演出部材の正面図
【
図8】(A)モータの回転出力が途中位置のときの可動演出部材の正面図、(B)モータの回転出力が終端位置のときの可動演出部材の正面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
図1に示されるように、本実施形態の遊技機10は、ぱちんこ遊技機であって、前面枠10Zを備え、その前面枠10Zの内側に設けられたガラス窓10Wを通して、遊技盤11の前面に形成された遊技領域R1が視認可能になっている。
【0017】
前面枠10Zのうちガラス窓10Wより下方には、上皿27Aと下皿27Bが上下2段にして設けられ、下皿27Bの右側には、発射ハンドル28が備えられている。そして、発射ハンドル28が回動操作されると、上皿27Aに収容された遊技球が遊技領域R1に向けて弾き出される。
【0018】
遊技領域R1には、例えば、液晶モジュールで構成された表示装置13が備えられている。表示装置13は、遊技に関する種々の演出が表示される表示画面13Gを前面に有し、その表示画面13Gが、遊技領域R1内で前側に臨んでいる。具体的には、遊技盤11には、遊技領域R内に表示開口11Hが貫通形成され、その表示開口11Hを通して表示画面13Gが前方から視認可能となっている。なお、表示開口11Hの開口縁には、装飾枠23が取り付けられている。
【0019】
遊技領域R1のうち表示画面13Gの下方には、第1の始動入賞部14A、第2の始動入賞部14B、大入賞部15及びアウト口16が、上から順に間隔を開けて並べて設けられている。表示画面13Gの左側には、始動ゲート18が設けられている。また、遊技領域R1には、図示しない複数の一般入賞部が設けられている。なお、遊技領域R1には、各種入賞部14A,14B,15や始動ゲート18等の役物以外に、遊技球の流下方向を変化させる障害釘や風車等が配置されている。
【0020】
始動ゲート18は、遊技球が1球ずつ通過可能となっていて、始動ゲート18を通過した遊技球は始動ゲート18に内蔵されたゲートセンサ73(
図6参照)によって検出され、その検出信号に基づいて、普通図柄当否判定(以下、適宜、普図判定という。)が行われる。普図判定の判定結果は、普通図柄表示装置18X(
図6参照)にて、普通図柄が変動表示された後に確定停止表示される判定報知により、遊技者に報知される。
【0021】
第1の始動入賞部14Aは、遊技盤11から突出した部材の上面に、遊技球が1つずつ入球可能な常時開放の第1入賞口を備えている。また、第2の始動入賞部14Bは、遊技盤11から突出した部材の上面に第2始動入賞口を備えている。この第2始動入賞口は、通常は、開閉部材14Cにより閉塞されていて、上述した普図判定が当りとなったときには、開閉部材14Cによって開放され、これにより、遊技球が第2の始動入賞部14Bに入球可能となる。
【0022】
各始動入賞部14A,14Bに遊技球が入球(入賞)すると、その遊技球は、それぞれ第1と第2の始動入賞部センサ71,72(
図6参照)によって検出され、その検出信号に基づいて、所定個数の遊技球が賞球として上皿27Aに払い出されると共に、特別図柄当否判定(以下、適宜、特図判定という。)が行われる。
【0023】
この特図判定の判定結果は、特別図柄表示装置14X(
図6参照)にて表示されると共に、表示装置13の表示画面13Gにおいて図柄の組み合わせで表示される。具体的には、表示画面13Gでは、特別図柄13A,13B,13Cが、変動表示後に、確定停止表示される判定報知が行われる。確定停止表示では、特別図柄13A~13Cが特図判定の判定結果を示す組合せで停止表示され、その組み合わせによって判定結果が報知される。
【0024】
より詳細には、各特別図柄13A,13B,13Cには、例えば、「0」~「9」の数字がそれぞれ表記されている。そして、特図判定結果が「大当り」の場合には、各特別図柄13A,13B,13Cが大当りに対応する特別図柄(例えば、
図1に示すように全て同じ図柄(ゾロ目))が確定停止表示され、遊技が「大当り遊技」に移行する。当否判定結果が外れの場合には、大当りに対応する特別図柄以外の組み合わせの特別図柄が確定停止表示され、「大当り遊技」ではない通常遊技が続く。
【0025】
大入賞部15は、横長矩形の大入賞口を有し、大入賞口は、通常は、可動扉15Tにて閉塞されている。そして、「大当り遊技」が実行されると、可動扉15Tが所定期間に亘って前側に倒されて大入賞口が開放し、可動扉15Tを案内にして、大入賞口に多くの遊技球が入賞可能となる。ここで、可動扉15Tが、開放してから閉じるまでの動作を「ラウンド」と称すると、1回の大当り遊技は、所定回数のラウンドが実行されるまで継続する。1回のラウンドは、大入賞口に所定個数の遊技球が入球した場合、又は、大入賞口が開放されてから所定時間経過した場合に終了する。大入賞部15(大入賞口)に遊技球が入賞すると、例えば、1個の入賞につき所定個数の遊技球が賞球として上皿27Aに払い出される。
【0026】
さて、
図1及び
図2に示されるように、本実施形態の遊技機10は、上述した入賞部14A,14B,15や表示装置13等の他に、可動演出部材31の動作により演出を行う役物装置30が備えられている。役物装置30は、遊技盤11及び装飾枠23の後側に配置され、所定の演出条件の成立を起因にして可動演出部材31を上下に移動させる演出を行う。
【0027】
具体的には、役物装置30は、例えば、遊技盤11の後側に配置された機構枠17の前面に固定される(
図3参照)。役物装置30は、可動演出部材31が先端部に取り付けられたアーム32を有し、アーム32は、その基端部が機構枠17に軸支されて、前後方向に延びる軸回りに回転可能となっている。これにより、アーム32の基端部の回転軸を中心として、可動演出部材31が上端位置と下端位置との間を上下に回動可能となっている。なお、例えば、可動演出部材31の前面には、装飾が施され、アーム32は、透明材料で構成されている。
【0028】
図3に示されるように、役物装置30には、可動演出部材31(アーム32)の駆動源としてのモータ41が備えられている。モータ41の出力軸は、前後方向に延び、その出力軸には、第1ギヤ43が固定されている。また、アーム32には、アーム32の基端部の回転軸と同軸に第2ギヤ33が固定されている。そして、第1ギヤ43と第2ギヤ33が噛合することで、モータ41の回転出力によりアーム32、即ち、可動演出部材31が駆動される。
【0029】
本実施形態では、モータ41の回転出力は、原点位置と終端位置(特許請求の範囲に記載の「モータ停止位置」に相当する。)との間を移動する。モータ41の回転出力が原点位置のときには、アーム32が右斜め上方に延び(
図2(A)及び
図3)、モータ41の回転出力が終端位置に到達した時には、アームが右方に水平に延びる(
図2(B))。なお、可動演出部材31が移動範囲の下端位置に配置されるときには、可動演出部材31に機構枠17の下辺部であるベース部17Aが下方で近接する。従って、この状態では、可動演出部材31がベース部17Aに衝突したように見せることが可能となり、演出の趣向性を高めることが可能となる。
【0030】
図4には、従来の遊技機において、モータ41を原点位置から終端位置まで回転出力させたときのアーム32(即ち、可動演出部材31)の位置が示されている。モータ41を原点位置から終端位置に向かって一方向に回転出力させると(
図4(A))、モータ41に直結した第1ピニオン43が前方から見て左回りに回転し、これにより、第2ギヤ33が前方から見て右回りに回転すると共にアーム32も右回りに回動する。そして、モータ41の回転出力は、終端位置に到達するとその終端位置で停止する(
図4(B))。モータ41の回転出力が終端位置に到達した時には、アーム32が水平に配置される(このときの可動演出部材31の位置を、適宜、モータ41の回転出力の終端位置に対応する「演出停止位置」ということとする。)。ここで、モータ41と可動演出部材31の間(詳細には、第1ギヤ43と第2ギヤ33の間)にはバックラッシが存在するので、
図4(C)に示されるように、モータ41の回転出力が停止しても、例えば慣性力や重力等により、さらにアーム32(即ち、可動演出部材31)が右回りに上記バックラッシに対応するガタ移動量だけ移動する(垂れ下がる)。詳細には、
図4(B)では、第1ギヤ43に第2ギヤ33の歯33Aが上側から当接していたが、
図4(C)では、アーム32が角度αだけ右回りに回動して右下がりに配置され、第1ギヤ43に、第2ギヤ33のうち上記した歯33Aの下隣りの歯33Bが下側から当接し、アーム32が停止する。
【0031】
これに対し、本実施形態の遊技機10では、モータ41が原点位置から終端位置まで回転出力される間は(
図5(A)及び
図5(B))、従来の遊技機と同様であるが、モータの回転出力が終端位置に到達してからが従来の遊技機とは異なる。具体的には、遊技機10では、モータ41の回転出力が一方向(
図5(A)及び
図5(B)では左回り)に移動して終端位置に到達したときに、その後、その一方向とは逆の他方向(
図5(C)では右回り)に移動する(以下、適宜、「逆回転出力する」という。)。詳細には、この他方向への逆回転出力は、バックラッシに対応する予め設定された補正量だけ行われ、この逆回転出力により、可動演出部材31の上記したガタ移動量を抑えられる。詳細には、例えば、
図5(B)から
図5(C)への変化に示されるように、第2ギヤ33に第1ギヤ43の歯43Aが下側から当接していた状態から、第1ギヤ43が逆回転出力することで、第2ギヤ33に第1ギヤ43のうち上記した歯43Aの上隣りの歯43Bが上側から当接し、アーム32が水平となった状態で停止する。即ち、モータ41が逆回転出力することで、可動演出部材31のガタ移動量を相殺することが可能となり、可動演出部材31をモータ41の回転出力の終端位置に対応する演出停止位置に、停止させることが可能となる。これにより、アーム32及び可動演出部材31が垂れ下がることが抑えられ、可動演出部材31の停止する際の見栄えを良くすることが可能となる。
【0032】
本実施形態の遊技機10には、バックラッシに対応する上記補正量と、モータ41を上記補正量だけ逆回転出力させる時間(逆回転時間)が、記憶されている。これら補正量と逆回転時間は、例えば、実際に可動演出部材31を駆動して、モータ41の回転出力を終端位置で停止させたときに、その終端位置に対応する演出停止位置からさらに可動演出部材31が移動したガタ移動量を測定し、そのガタ移動量に基づいて設定してもよい。例えば、複数回、可動演出部材31を駆動したときのガタ移動量の平均値又は最大値を、上記補正量とすることができる。また、逆回転時間は、可動演出部材31が、実際にガタ移動量だけ移動するのにかかった移動時間に基づいて設定すればよい。例えば、逆回転時間としては、この移動時間の平均値又は最大値を設定することができる。また、ガタ移動量やその移動時間の測定が難しい場合等には、実際に補正量と逆回転時間を複数水準、仮に設定して、それらのうちガタ移動量の低減に最も効果があった補正量と逆回転時間を、最終的な設定値としてもよい。以上のような補正量と逆回転時間を設定することで、可動演出部材31のガタ移動量を効果的に抑えることが可能となる。なお、本実施形態では、モータ41は、ステッピングモータであり、バックラッシに対応する上記補正量は、ステップ数で特定されている。また、上記逆回転時間の代わりに、モータ41を逆回転出力させるときの回転出力の速度を設定してもよい。
【0033】
また、可動演出部材31による移動演出が実行される演出条件が複数設けられ、各演出条件に対してそれぞれ可動演出部材31の動作パターン(移動速度や停止位置、折り返し位置等)が異なる場合には、動作パターン毎に、上記補正量と逆回転時間を設定しておけばよい。この場合、例えば、可動演出部材31の可動範囲には、可動演出部材31を停止させるべき演出停止位置に対応するモータ停止位置(終端位置も含まれる。)が、複数設定されていて、それらモータ停止位置毎に、上記補正量と上記逆回転時間を設定すればよい。そして、可動演出部材31を停止させる際に、モータ41の回転出力をモータ停止位置に到達させてから逆回転出力させればよい。なお、これら補正量と逆回転時間は、例えば、後述のサブ制御基板82に備えられた不揮発性で書き換え可能なフラッシュメモリ82Fに、各動作パターンに対応付けられて記憶される。
【0034】
次に、遊技機10の電気的な構成について説明する。
図6に示されるように、符号80は、主制御基板80であって、CPU80AとRAM80B及びROM80C、複数のカウンタを備えたマイクロコンピュータと、このマイクロコンピュータとサブ制御基板82を結ぶ入出力回路を備えると共に、第1始動入賞センサ71、第2始動入賞センサ72、ゲートセンサ73、一般入賞センサ、大入賞センサ等が接続された中継回路、及び、発射ハンドル28のタッチセンサや払出される賞球を検出する払出センサ等が接続された払出制御回路、と接続される入出力回路も備え、遊技に関わる主制御を行う。CPU80Aは、当否判定部、制御部、演算部、各種カウンタ、各種レジスタ、各種フラグ等を備え、演算制御を行う他、特別図柄当りや普通図柄当りに関する乱数等も生成し、制御信号をサブ制御基板82等へ出力(送信)可能に構成されている。RAM80Bは、CPU80Aで生成される各種乱数値用の記憶領域、各種データを一時的に記憶する記憶領域やフラグ、CPU80Aの作業領域を備える。ROM80Cには、CPU80Aが実行するメインプログラムや、制御データ等が書き込まれている他、特別図柄当り及び普通図柄当りの判定値や確変移行抽選の判定値が書き込まれている。
【0035】
サブ制御基板82は、主制御基板80と同様に、CPU82AとRAM82B、ROM82C、フラッシュメモリ82F、複数のカウンタ等を備えたマイクロコンピュータ82Mを備える。また、サブ制御基板82は、マイクロコンピュータ82Mと主制御基板80を結ぶ入出力回路を備えると共に、表示制御基板84、ランプ制御回路、演出用操作ボタン29、モータ41(演出部材用モータ41)等を結ぶ入出力回路を備えている。CPU82Aは、制御部、演算部、各種カウンタ、各種レジスタ、各種フラグ、タイマー等を備え、演算制御を行う他、制御信号を表示制御基板84及びランプ制御回路、音声制御回路等へ出力(送信)可能に構成されている。RAM82Bは、各種データの記憶領域とCPU82Aによる作業領域を有している。ROM82Cには、CPU82Aが実行するメインプログラムや、各種演出の制御データ等が記憶されている。フラッシュメモリ82Fには、上述のように、可動演出部材31の複数種類の動作パターンについての情報(モータ41の回転出力の速度、モータ停止位置等)が記憶されていると共に、各モータ停止位置毎(詳細には、各動作パターン毎)に、バックラッシに対応する補正量や逆回転時間等が記憶されている。
【0036】
なお、表示制御基板84は、表示装置13に設けられていて、サブ制御基板82からの制御信号に基づきCPU84AがROM84Cから所定の表示制御データを読み出し、RAM84Bの記憶領域で制御用データを生成してVDP(図示せず)に出力する。VDPは、CPU84Aからの指令に基づいてROM84Cから必要なデータを読み出し、表示画面13Gで表示する表示画像(特別図柄、大当り遊技演出を含む各種演出、及び確変遊技状態への移行の有無の表示画像等)のマップデータを作成し、VRAMに格納する。VRAMに格納記憶された画像データは、入出力回路に備えるD/A変換回路にてRGB信号に変換されて表示画面13Gに出力される。なお、主制御基板80、サブ制御基板82、表示制御基板84及びその他の回路(音声制御回路、ランプ制御回路等)は、電源基板85からの電源供給を受けて作動する。
【0037】
サブ制御基板82のマイクロコンピュータ82Mは、主制御基板80から所定の演出条件の成立に対応する出力信号を受信すると、役物装置30(モータ41)を作動させる。この際、マイクロコンピュータ82Mは、その演出条件に対応付けて記憶されている動作パターンをフラッシュメモリ82Fから読み出し、その動作パターンで可動演出部材31を駆動するようにモータ41の回転出力の位置を制御する。また、マイクロコンピュータ82Mは、当該動作パターン及びモータ停止位置に対応付けられた上記補正量(ステップ数)や逆回転時間を読み出しておく。そして、マイクロコンピュータ82Mは、モータ41の回転出力が、予め設定されたモータ停止位置(終端位置)になると、そのモータ停止位置に到達した時から上記逆回転時間の間に、上記補正量だけモータ41の回転出力を他方向に移動させる(逆回転出力する)。そして、マイクロコンピュータ82Mは、その逆回転出力した後の位置に、モータ41の回転出力を停止させる。なお、モータ41を他方向に回転出力したことにより、可動演出部材31に、当該他方向のガタ移動量がさらに発生した場合には、当該反対方向のガタ移動量を抑えるように、モータ41を再度、一方向に回転出力させてもよい。この場合、一方向への再度の回転出力の補正量(ステップ数)及び回転出力時間も、上述のように実際に可動演出部材31を移動させてみることで最適値を設定すればよい。
【0038】
なお、本実施形態では、サブ制御基板82のマイクロコンピュータ82Mが、特許請求の範囲に記載の「モータ制御部」、「戻し補正手段」に相当する。
【0039】
本実施形態の遊技機10では、モータ41の回転出力を、モータ停止位置まで一方向に移動した後、バックラッシに対応する補正量だけ一方向と逆の他方向に移動して、バックラッシに対応するガタ移動量が抑えることができる。従って、モータ41を回転出力させてから停止させたときに可動演出部材31が、ガタついたり、垂れ下ったりすることを抑制でき、可動演出部材31の見栄えを良くすることが可能となる。
【0040】
また、本実施形態では、可動演出部材31の可動範囲内に、モータ41が停止されるモータ停止位置が複数設定され、それらモータ停止位置毎にバックラッシに対応する補正量が定められている。従って、モータ停止位置により、重力等の影響で可動演出部材31のガタ移動量が異なる場合でも、ガタ移動量を抑えることが容易となる。
【0041】
[第2実施形態]
本実施形態の遊技機10では、役物装置30Vの構成が上記第1実施形態とは異なる。
図7及び
図8に示されるように、本実施形態では、可動演出部材31の移動が、上下方向に延びるレール39にガイドされる。具体的には、
図9に示されるように、レール39は、可動演出部材31に上下に延びるように形成された貫通孔(図示せず)に挿通されて摺動自在に嵌合される。また、アーム32の先端部には、前後方向に貫通してアーム32の延在方向に延びた長孔32Hが設けられ、可動演出部材31の後面の中心部には、係合突部31Tが設けられる。そして、長孔32Hに係合突部31Tが嵌合することで、アーム32の先端部に可動演出部材31が、回動可能でかつアーム32の延在方向にスライド可能に連結される。なお、レール39は、例えば透明材料からなる。
【0042】
本実施形態の役物装置30Vでは、モータ41と可動演出部材31の間に存在し、可動演出部材31にガタ移動量を生じさせるバックラッシとしては、第1ギヤ43と第2ギヤ33の間のバックラッシに加えて、アーム32の長孔32Hと可動演出部材31の係合突部31Tとの間のバックラッシも含まれる。本実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、ガタ移動量を抑えるためのバックラッシに対応する補正量と逆回転時間を、実際にモータ41を作動させて可動演出部材31を駆動してみたときのガタ移動量に基づいて設定することができる。
【0043】
本実施形態の遊技機10では、第1実施形態と同様に、モータ41の回転出力が終端位置になったときには、
図7(B)に示されるように、可動演出部材31に機構枠17のベース部17Aが下方から近接する。ここで、本実施形態の遊技機10では、所定の演出条件の成立に起因して、モータ41の駆動により、可動演出部材31を上下動(具体的には減衰振動)させて機構枠17のベース部17A上でバウンドするように見せるバウンド演出が実行される。なお、本実施形態では、可動演出部材31は、例えば、ボールを模した装飾がなされている。
【0044】
バウンド演出では、例えば、まず、サブ制御基板82のマイクロコンピュータ82Mは、モータ41の回転出力を原点位置(
図7(A))から終端位置へと移動し(
図7(B))、その後、モータ41の回転出力を終端位置から原点位置側へと向かわせ、その途中位置まで戻す(
図8(A))。次に、マイクロコンピュータ82Mは、再度、モータ41の回転出力を終端位置へ移動し(
図8(B))、その後、モータ41の回転出力を停止させる。この際、上記第1実施形態と同様に、マイクロコンピュータ82Mは、モータ41を逆回転出力してから停止させる。これにより、モータ41が停止するときに、可動演出部材31がずり落ちる等のガタ移動量が生じることを抑えることが可能となり、可動演出部材31の見栄えを良くすることが可能となる。
【0045】
なお、バウンド演出では、モータ41の回転出力を原点位置から終端位置へと移動してから(可動演出部材31を下方へ移動してから)、モータ41の回転出力を原点位置側へと戻す(可動演出部材31を上方へ戻す)という上下動を行うが、この上下動は、自由落下と反発の物理法則を用いてモータ41の回転出力の位置を制御することで、可動演出部材31をバウンドしているように見せることが容易となる。具体的には、これら物理法則に基づいてバウンドする物体の軌道をなぞるように可動演出部材31を移動させるようにモータ41の回転出力の位置を制御すればよい。これにより、可動演出部材31に、モータ41の回転出力の終端位置に対応する演出停止位置を振幅の下端とした、上下方向の減衰振動を行わせてバウンドしているように見せることができる。なお、可動演出部材31が演出停止位置となるときに、可動演出部材31の下端がベース部17Aの上面と同じ高さかわずかに高くなるようにすれば、バウンドの動作によりリアリティを出させることが可能となる。この際、可動演出部材31の後面よりもベース部17Aの前面を後ろ側に配置しておくことが好ましい。なお、この上下動の終了条件としては、上下動を予め定められた規定回数だけ行ったら、可動演出部材31が演出停止位置に位置するようにモータ41の回転出力を停止させるようにしてもよい。このようにすれば、ほとんど視認できない程度の上下動を何回も繰り返すことを防ぐことが可能となる。
【0046】
ここで、上記第1実施形態と同様にして、バックラッシに対応する補正量と逆回転時間を設定しておき、モータ41の回転出力を原点位置側から下端位置にしてから再度、原点位置側に戻す際に(即ち、可動演出部材31が弾んでいるように見せる際に)、モータ41の回転出力を終端位置に到達させた時から、上記逆回転時間以内に上記補正量以上、逆回転出力させることが好ましい。このようにすれば、可動演出部材31が、上記演出停止位置から下方にずり落ちることを抑えることが可能となり、バウンド演出における可動演出部材31の動作の見栄えを良くすることが可能となる。
【0047】
以上のように、本実施形態の遊技機10では、モータ41の駆動により可動演出部材31をベース部17Aの上でバウンドしているように見せることができるという、従来にない斬新な演出を実行することが可能となり、演出の趣向性を向上させることが可能となる。
【0048】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態では、モータ41の動力を可動演出部材31に伝達する複数のギヤ(第1ギヤ43、第2ギヤ33)間にバックラッシが設けられていたが、モータ41の動力を可動演出部材31に伝達する複数のカムが設けられ、それらカム間にバックラッシが設けられていてもよいし、モータ41の動力を可動演出部材31に伝達するボール螺子機構が設けられ、そのボール螺子機構にバックラッシが設けられてもよい。
【0049】
(2)上記実施形態では、役物装置30,30Vにおいて、モータ41の動力を可動演出部材31に伝達する伝達部材が、2つ(第1ギヤ43、第2ギヤ33)設けられていたが、3つ以上設けられていてもよい。この場合、例えば、モータ41の出力軸に減速機が取り付けられ、その減速機の内部に、伝達部材としてのギヤが設けられていてもよい。これらの場合においても、可動演出部材31を実際に駆動したときのガタ移動量に基づいて補正量や逆回転時間を設定すればよい。
【0050】
(3)上記実施形態では、可動演出部材31を上下に移動させていたが、左右に移動させてもよい。この場合、可動演出部材31が移動方向の端(例えば、演出停止位置)に配置されたときに、可動演出部材31に近接配置される近接部材が設けられてもよい。そして、可動演出部材31をこの近接部材で跳ね返るように見せる演出が実行されてもよい。この場合でも、可動演出部材31が折り返し動作を行う際に(跳ね返るように動作する際に)、モータ41を逆回転時間内で補正量以上、逆回転出力させることで、可動演出部材31の動作の見栄えを良くすることが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
10 遊技機
30 役物装置
31 可動演出部材
41 モータ
80 主制御基板
82 サブ制御基板