(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】アミン化合物の製造方法およびアミン組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 209/68 20060101AFI20230606BHJP
C07C 211/27 20060101ALI20230606BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230606BHJP
【FI】
C07C209/68
C07C211/27
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2019032384
(22)【出願日】2019-02-26
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 与一
(72)【発明者】
【氏名】上等 和良
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/175740(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/175741(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物の製造方法であって、
芳香環と、前記芳香環に結合している基であって、式(1-1)で表される基および式(1-2)で表される基からなる群から選択される基を少なくとも1つ有
し、一分子中に、式(1-1)で表される基および式(1-2)で表される基を合計で2つ有する化合物(X-2)に、塩基の存在下で、エチレンを充填し、
化合物(X-2)において、式(1-1)で表される基および式(1-2)で表される基が有する水素原子(-NH
2
に結合している水素原子を除く)の少なくとも1つをアルキル化することを含み、前記エチレン充填時の反応液の温度が0~10℃、エチレンの充填圧力が1.5~2.3MPaである、
式(1)で表される化合物の製造方法。
【化1】
(式(1-2)において、R
xは置換基である。式(1-1)および式(1-2)において、*はベンゼン環上の炭素原子との結合部位である。)
【化2】
(式(1)中、R
A
~R
D
のうち少なくとも2つは、エチル基であり、それら以外のR
A
~R
D
は、水素原子である。nは1である。但し、R
A
およびR
B
の少なくとも一方は、エチル基であり、R
C
およびR
D
の少なくとも一方は、エチル基である。)
【請求項2】
前記塩基が、炭酸ルビジウム、水酸化ルビジウム、炭酸セシウム、および、水酸化セシウムからなる群より選択される1種以上のアルカリ金属含有化合物(A)と、金属ナトリウム(B)と、を含有する塩基組成物である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記塩基を、2回以上に分割して反応系中に導入することを含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記化合物(X-2)が、式(3)で表される化合物を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【化3】
(式(3)中、R
1は水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、R
2
のうち1つはアミノメチル
基であ
り、他は水素原子である。)
【請求項5】
前記化合物(X-2)が、o-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、
および、p-キシリレンジアミ
ンからなる群より選択される1種以上の化合物を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記化合物(X-2)が、m-キシリレンジアミンを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
式(1)中、R
A~R
Dのうち少なくとも3つは、エチル基であり、それら以外のR
A~R
Dは、水素原子である、請求項
6に記載の製造方法。
【請求項8】
式(1)で表される化合物を含むアミン組成物の製造方法であって、
芳香環と、該芳香環に結合している基であって、式(1-1)で表される基および式(1-2)で表される基からなる群から選択される基を少なくとも1つ有
し、一分子中に、式(1-1)で表される基および式(1-2)で表される基を合計で2つ有する化合物(X-2)に、塩基の存在下で、エチレンを充填し、
化合物(X-2)において、式(1-1)で表される基および式(1-2)で表される基が有する水素原子(-NH
2
に結合している水素原子を除く)の少なくとも1つをアルキル化することを含み、
前記エチレン充填時の反応液の温度が0~10℃、エチレンの充填圧力が1.5~2.3MPaである、
式(1)で表される化合物を含むアミン組成物の製造方法。
【化4】
(式(1-2)において、R
xは置換基である。式(1-1)および式(1-2)において、*はベンゼン環上の炭素原子との結合部位である。)
【化5】
(式(1)中、R
A
~R
D
のうち少なくとも2つは、エチル基であり、それら以外のR
A
~R
D
は、水素原子である。nは1である。但し、R
A
およびR
B
の少なくとも一方は、エチル基であり、R
C
およびR
D
の少なくとも一方は、エチル基である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミン化合物の製造方法およびアミン化合物を含むアミン組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アミン化合物は、医薬品や農薬等として使用される化合物の原料および中間体等として有用であるため、多種多様なアミン化合物が知られている。
アミン化合物の1種として、ベンゼン等の芳香環にアミノメチル基を2つ以上有する化合物である芳香族ジアミン化合物が知られている。芳香族ジアミン化合物としては、例えば、メタキシリレンジアミン等が挙げられる。
【0003】
また、特許文献1には、キシリレンジアミンと共役ジエンとを塩基性触媒の存在下で付加反応させる工程を有する下記ポリアミン化合物の製造方法が開示されている。
【化1】
式(I)中、R
1~R
4はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数2~10の鎖状不飽和脂肪族炭化水素基、又は環員炭素数5~10の環状不飽和脂肪族炭化水素基である。但し、R
1~R
4のうち少なくとも1つは水素原子である。R
5~R
8はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数2~10の鎖状不飽和脂肪族炭化水素基、又は環員炭素数5~10の環状不飽和脂肪族炭化水素基である。但し、R
1~R
8のすべてが水素原子になることはなく、R
1~R
8のうち少なくとも1つは炭素数2~10の鎖状不飽和脂肪族炭化水素基又は環員炭素数5~10の環状不飽和脂肪族炭化水素基である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、アミン化合物は、医薬品や農薬等の原料および中間体として使用することができ、新規な医薬品や農薬を創出するためにも、これらの用途に用いられる化合物の構造の多様化を実現できるように、様々な構造のアミン化合物が求められている。
【0006】
かかる状況下、芳香環と、前記芳香環に結合しているアルキル基を有し、前記芳香環に結合しているアルキル基のα位の炭素原子にアミノ基が結合している化合物が求められている。特に、芳香環に結合しているアミノメチル基の炭素原子にエチレンを付加した化合物であって、下記に示すような、アミノメチル基の炭素原子に高い頻度でエチレンを付加した化合物が求められている。
【化2】
【0007】
本発明は上記需要に鑑みてなされたものであって、芳香環と、前記芳香環に結合しているアルキル基のα位の炭素原子にアミノ基が結合している所定の化合物(X-1)または前記化合物(X-1)を含む組成物を容易に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題のもと、発明者が検討を行った結果、低温、かつ、高い圧力でエチレンを充填した雰囲気下で、塩基の存在下、エチレンの付加を行うことにより、上記課題を解決しうることを見出した。具体的には、下記手段<1>により、好ましくは<2>~<10>により、上記課題は解決された。
<1>芳香環と、前記芳香環に結合しているアルキル基を有し、前記芳香環に結合しているアルキル基のα位の炭素原子にアミノ基が結合している化合物(X-1)の製造方法であって、芳香環と、前記芳香環に結合している基であって、式(1-1)で表される基および式(1-2)で表される基からなる群から選択される基を少なくとも1つ有する化合物(X-2)に、塩基の存在下で、エチレンを充填し、アルキル化することを含み、前記エチレン充填時の反応液の温度が0~10℃、エチレンの充填圧力が1.5~2.3MPaである、化合物(X-1)の製造方法。
【化3】
(式(1-2)において、R
xは置換基である。式(1-1)および式(1-2)において、*はベンゼン環上の炭素原子との結合部位である。)
<2>前記塩基が、炭酸ルビジウム、水酸化ルビジウム、炭酸セシウム、および、水酸化セシウムからなる群より選択される1種以上のアルカリ金属含有化合物(A)と、金属ナトリウム(B)と、を含有する塩基組成物である、<1>に記載の製造方法。
<3>前記塩基を、2回以上に分割して反応系中に導入することを含む、<1>または<2>に記載の製造方法。
<4>前記化合物(X-2)が、式(3)で表される化合物を含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の製造方法。
【化4】
(式(3)中、R
1は水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、R
2はそれぞれ独立に、水素原子、アミノメチル基、炭素数1~6のアルキル基、アルコキシ基、フェノキシ基、フェニル基、ナフチル基およびビフェニル基からなる群から選択される基である。)
<5>前記化合物(X-2)が、一分子中に、式(1-1)で表される基および式(1-2)で表される基を合計で1~3つ有する化合物を含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の製造方法。
<6>前記化合物(X-2)が、ベンジルアミン、α-メチルベンゼンメタンアミン、α-エチルベンゼンメタンアミン、o-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、1,2,3-ベンゼントリメタンアミン、1,2,4-ベンゼントリメタンアミンおよび1,2,4,5-ベンゼンテトラメタンアミンからなる群より選択される1種以上の化合物を含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の製造方法。
<7>前記化合物(X-2)が、m-キシリレンジアミンを含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の製造方法。
<8>前記化合物(X-1)が式(1)で表される化合物を含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の製造方法。
【化5】
(式(1)中、R
A~R
Dのうち少なくとも2つは、エチル基であり、それら以外のR
A~R
Dは、水素原子である。nは1~3の整数である。)
<9>式(1)中、R
A~R
Dのうち少なくとも3つは、エチル基であり、それら以外のR
A~R
Dは、水素原子である、<8>に記載の製造方法。
<10>芳香環と、前記芳香環に結合しているアルキル基を有し、前記芳香環に結合しているアルキル基のα位の炭素原子にアミノ基が結合している化合物(X-1)を含むアミン組成物の製造方法であって、芳香環と、前記芳香環に結合している基であって、式(1-1)で表される基および式(1-2)で表される基からなる群から選択される基を少なくとも1つ有する化合物(X-2)に、塩基の存在下で、エチレンを充填してアルキル化することを含み、前記エチレン充填時の反応液の温度が0~10℃、エチレンの充填圧力が1.5~2.3MPaである、化合物(X-1)を含むアミン組成物の製造方法。
【化6】
(式(1-2)において、R
xは置換基である。式(1-1)および式(1-2)において、*はベンゼン環上の炭素原子との結合部位である。)
【発明の効果】
【0009】
芳香環と、前記芳香環に結合しているアルキル基を有し、前記芳香環に結合しているアルキル基のα位の炭素原子にアミノ基が結合している所定の化合物または前記化合物を含む組成物を容易に製造することが可能になった。特に、芳香環に結合しているアミノメチル基にエチレンを高い頻度で付加することが可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0011】
本発明の製造方法は、芳香環と、前記芳香環に結合しているアルキル基を有し、前記芳香環に結合しているアルキル基のα位の炭素原子にアミノ基が結合している化合物(X-1)の製造方法であって、芳香環と、前記芳香環に結合している基であって、式(1-1)で表される基および 式(1-2)で表される基からなる群から選択される基を少なくとも1つ有する化合物(X-2)に、塩基の存在下で、エチレンを充填してアルキル化することを含み、前記エチレン充填時の反応液の温度が0~10℃、エチレンの充填圧力が1.5~2.3MPaであることを特徴とする。
【化7】
(式(1-2)において、R
xは置換基である。式(1-1)および式(1-2)において、*はベンゼン環上の炭素原子との結合部位である。)
このように、塩基存在下、低温かつ所定の圧力でエチレンを充填してアルキル化することにより、容易にエチレン付加体が得られる。特に、芳香環に結合している式(1-1)または式(1-2)で表される基の水素原子を高い割合でエチレンに置換することが可能になる。
【0012】
<エチレンガスの充填>
本発明の製造方法では、エチレン充填時の反応液の温度が0~10℃であり、エチレンの充填圧力が1.5~2.3MPaである。エチレン充填時の反応液の温度を10℃以下とすることにより、反応初期に発生する活性種を安定に取り扱うことが可能になる。そして、エチレンの充填圧力を2.3MPa以下とすることにより、エチレンの付加反応が進行しやすくなる。また、エチレン充填時の反応液の温度を0℃以上とすることにより、反応温度までの昇温にかかる時間を短くでき、反応成績を向上させることができる。また、エチレンの充填圧力を1.5MPa以上とすることにより、エチレン付加反応を効果的に促進させることができる。
本発明の製造方法では、通常、エチレンガスを充填する。
エチレン充填時の反応液の温度は、下限値が、1℃以上であることが好ましく、2℃以上であることがより好ましい。また、前記反応液の温度は、上限値が8℃以下であることが好ましく、6℃以下であることがより好ましく、5℃以下であることがさらに好ましく、4℃以下であることが一層好ましい。
本発明における反応液の温度とは、エチレンガスを充填する際の反応液の液温を意味する。
エチレン充填時の圧力(エチレンの充填圧力)は、下限値が、1.7MPa以上であることが好ましく、1.8MPa以上であることがより好ましく、1.9MPa以上であることがさらに好ましい。エチレン充填時の圧力の上限は、2.2MPa以下であることが好ましく、2.1MPa以下であることがさらに好ましい。
【0013】
<アルキル化>
本発明の製造方法では、エチレンによって、アルキル化(エチレン付加)が進行する。
エチレン充填後の反応系の温度は、下限値が、10℃超であることが好ましく、12℃以上であることがより好ましく、14℃以上であることがさらに好ましく、16℃以上であることが一層好ましく、18℃以上であることがより一層好ましい。また、エチレン充填後の反応系の温度は、上限値が、35℃以下であることが好ましく、30℃以下であることがより好ましく、25℃以下であることが一層好ましい。
本発明の製造方法では、エチレン充填時とその後の反応系の温度の差が10℃以上であることが好ましく、10~20℃であることがより好ましい。このような構成とすることにより、エチレン付加反応がより効果的に進行する。
エチレン付加反応の時間は、1時間~100時間であることが好ましく、10~60時間であることがより好ましい。詳細を後述するとおり、塩基を2回以上に分割して反応系に導入する場合は、合計が上記範囲となることが好ましい。
【0014】
化合物(X-2)に対するエチレンの比は、エチレンを付加させる量に応じて適宜調整すればよいが、化合物(X-2)1モルに対し、エチレンをモル比で好ましくは1~30、より好ましくは3~20、さらに好ましくは4~15の範囲で充填する。
【0015】
反応方式としては、例えば、塩基を仕込んだ反応器に原料をバッチ方式やセミバッチ方式にて供給する方法、反応器に塩基および原料を連続的に供給する完全混合流通方式、または、塩基を反応器に充填し原料を流通させる固定床流通方式等が挙げられる。反応方式は、バッチ方式が好ましい。バッチ方式を用いることによって、反応を行うための操作が煩雑とならず、水分混入による塩基の失活を抑制し、塩基の活性をより効果的に維持することができる。
【0016】
本実施形態の製造方法における付加反応は、溶媒の存在下で行っても、非存在下で行ってもよい。溶媒は反応温度や反応物等によって適宜選択される。溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、1、4-ジオキサン、1、3、5-トリオキサン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテルが例示される。
上記有機反応で溶媒を用いる場合、得られた反応液を必要に応じて濃縮した後、残渣をそのまま化合物(X-1)として用いてもよく、適宜な後処理を行った後に、化合物(X-1)として用いてもよい。後処理の具体的な方法としては、蒸留、クロマトグラフィー等の公知の精製方法を挙げることができる。
【0017】
<化合物(X-1)>
本発明の製造方法で製造される化合物(X-1)は、芳香環と、前記芳香環に結合しているアルキル基を有し、前記芳香環に結合しているアルキル基のα位の炭素原子にアミノ基が結合している化合物である。
【0018】
化合物(X-1)における芳香環は、ベンゼン環、ナフタレン環が例示され、ベンゼン環が好ましい。芳香環は、上記アルキル基以外の置換基を有していてもよいが、有していなくてもよい。芳香環が有していてもよい置換基は、炭素数1~6のアルキル基、アルコキシ基、フェノキシ基、フェニル基、ナフチル基およびビフェニル基が例示される。本発明では、前記芳香環は置換基を有さない方が好ましい。
前記芳香環に結合しているアルキル基は、(R)x(H)2-X(NH2)C-で表される基であることが好ましい。ここで、Rはアルキル基であり、少なくとも1つはエチル基である。Xは1または2であり、2が好ましい。前記芳香環は、(R)x(H)2-X(NH2)C-で表される基を1~3つ有することが好ましく、1つまたは2つ有することがより好ましく、2つ有することがさらに好ましい。前記アルキル基であるRのうち、エチル基以外の基としては、炭素数1~10の(好ましくは炭素数1~5の、より好ましくは炭素数1~3の)直鎖または分岐のアルキル基が例示され、直鎖アルキル基が好ましい。
【0019】
化合物(X-1)は式(1)で表されることがより好ましい。
【化8】
(式(1)中、R
A~R
Dのうち少なくとも2つは、エチル基であり、それら以外のR
A~R
Dは、水素原子である。nは1~3の整数である。)
【0020】
式(1)中、nは、1または2が好ましく、より好ましくは1である。nが1のとき、-C(RC)(RD)(NH2)基は、オルト位、メタ位、パラ位のいずれであってもよいが、好ましくはメタ位である。
より好ましくは、式(1)中、RA~RDのうち少なくとも3つは、エチル基であり、それら以外のRA~RDは、水素原子である。
【0021】
式(1)で表される化合物は、好ましくは式(2)で表される。
【0022】
【化9】
(式(2)中、R
A~R
Dのうち少なくとも2つは、エチル基であり、それら以外のR
A~R
Dは、水素原子である。)
より好ましくは、式(2)中、R
A~R
Dのうち3つまたは4つ(さらに好ましくは4つ)は、エチル基であり、それら以外のR
A~R
Dは、水素原子である。
【0023】
化合物(X-1)の分子量は、160以上であることが好ましく、180以上であることがより好ましく、190以上であることがさらに好ましい。また、化合物(X-1)の分子量は、500以下であることが好ましく、350以下であることがより好ましく、250以下であることがさらに好ましい。
【0024】
以下、化合物(X-1)の例を示す。本発明はこれらに限定されるものではないことは言うまでもない。
【化10】
【0025】
<化合物(X-2)>
本発明の製造方法では、芳香環と、前記芳香環に結合している基であって、式(1-1)で表される基および式(1-2)で表される基からなる群から選択される基を少なくとも1つ有する化合物(X-2)に、エチレンを付加してアルキル化することを含む。
【化11】
(式(1-2)において、R
xは置換基である。式(1-1)および式(1-2)において、*はベンゼン環上の炭素原子との結合部位である。)
化合物(X-2)の一実施形態は、式(1-2)で表される基を含むことである。
【0026】
化合物(X-2)は、一分子中、式(1-1)で表される基および式(1-2)で表される基(好ましくは式(1-2)で表される基のみ)を合計で1~3つ有することが好ましく、2つ有することがより好ましい。
【0027】
Rxは、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基およびイソプロピル基がより好ましく、エチル基がさらに好ましい。
【0028】
化合物(X-2)における芳香環は、ベンゼン環、ナフタレン環が例示され、ベンゼン環が好ましい。芳香環は、式(1-1)で表される基および式(1-2)で表される基以外の置換基を有していてもよいが、有していなくてもよい。芳香環が有していてもよい置換基は、炭素数1~6のアルキル基、アルコキシ基、フェノキシ基、フェニル基、ナフチル基およびビフェニル基が例示される。本発明では、芳香環は、式(1-1)で表される基および式(1-2)で表される基以外の置換基を有さない方が好ましい。
【0029】
化合物(X-2)は、式(3)で表される化合物を含むことが好ましい。
【化12】
(式(3)中、R
1は水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、R
2はそれぞれ独立に、水素原子、アミノメチル基、炭素数1~6のアルキル基、アルコキシ基、フェノキシ基、フェニル基、ナフチル基およびビフェニル基からなる群から選択される基である。)
【0030】
式(3)中、R1は水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基およびイソプロピル基が好ましく、水素原子またはエチル基がより好ましく、水素原子がさらに好ましい。
R2はそれぞれ独立に、水素原子、アミノメチル基、炭素数1~6のアルキル基、アルコキシ基、フェノキシ基、フェニル基、ナフチル基およびビフェニル基からなる群から選択される基であり、水素原子またはアミノメチル基が好ましく、アミノメチル基がより好ましい。アミノメチル基は、上記式(1-1)で表される基または式(1-2)で表される基が好ましい。具体的には、式(1-2)で表される基を用いる形態が例示される。
【0031】
化合物(X-2)は、具体的には、ベンジルアミン、α-メチルベンゼンメタンアミン、α-エチルベンゼンメタンアミン、o-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、1,2,3-ベンゼントリメタンアミン、1,2,4-ベンゼントリメタンアミンおよび1,2,4,5-ベンゼンテトラメタンアミンからなる群より選択される1種以上の化合物を含むことが好ましく、m-キシリレンジアミンを含むことがより好ましい。
化合物(X-2)は1種のみ用いても、2種以上用いてもよい。2種以上用いた場合、得られる化合物(X-1)も混合物となる。
【0032】
<塩基>
本発明の製造方法では、化合物(X-2)のアルキル化は、塩基の存在下で行う。
塩基は、エチレン付加反応において、触媒として作用する一方で不可逆的な反応開始剤としても機能する。したがって、エチレン付加反応の進行に伴って、塩基の系内での量は減少していく。そこで、本発明の製造方法では、塩基を2回以上に分割して反応系中に導入することが好ましい。塩基の添加の回数の上限は特にないが、10回以下であることが実際的である。このように塩基を分割して添加することにより、式(2)で表される化合物に対し、RA~RDの3つ以上、さらには3つまたは4つに、特には、4つに、エチレンを付加させることが容易になる。
塩基を2回以上に分割して反応系中に導入する場合、エチレンガスの充填およびアルキル化も、都度行うことが好ましい。すなわち、塩基の存在下で、エチレンを充填し、アルキル化することを2回以上繰り返すことが好ましい。
また、塩基を一定速度で連続的あるいは断続的に反応液中に投入してもよい。また、投入する速度は一定であってもよいし、経時で変化させてもよい。
【0033】
本発明の製造方法における塩基の質量は、化合物(X-2)1質量部に対して、一般的には、0.001~10質量部、好ましくは0.005~5質量部、より好ましくは0.01~4質量部、さらに好ましくは0.05~3質量部である。複数回に分けて添加する場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0034】
上記塩基としては、具体的には、炭酸ルビジウム、水酸化ルビジウム、炭酸セシウム、および、水酸化セシウムからなる群より選択される1種以上のアルカリ金属含有化合物(A)と、金属ナトリウム(B)と、を含有する塩基組成物を好適に用いることができる。
【0035】
上記塩基組成物は、具体的には、アルカリ金属含有化合物(A)、金属ナトリウム(B)を含有する組成物を、不活性ガス雰囲気下で熱処理することによって得られる。また、上記塩基組成物は、上記アルカリ金属含有化合物(A)および上記金属ナトリウム(B)の混合物の加熱処理物である。上記混合物において、炭酸ルビジウム、水酸化ルビジウム、炭酸セシウム、および水酸化セシウムからなる群より選択される1種以上のアルカリ金属含有化合物(A)と、金属ナトリウムとは、同一系内に存在することが好ましい。
【0036】
上記塩基組成物におけるアルカリ金属含有化合物(A)は、炭酸ルビジウム、水酸化ルビジウム、炭酸セシウム、および水酸化セシウムである。これらのアルカリ金属含有化合物(A)の中でも、化合物(X-2)に対してエチレンを付加させる反応を進行させる触媒としての活性をより高める観点から、好ましくは炭酸ルビジウムおよび炭酸セシウムであり、より好ましくは炭酸セシウムである。また、これらのアルカリ金属含有化合物(A)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
上記塩基組成物におけるアルカリ金属含有化合物(A)に含まれるルビジウムおよび/またはセシウムの物質量と、前記金属ナトリウム(B)の物質量との比(ルビジウムおよび/またはセシウムの物質量:ナトリウムの物質量(モル比))は、反応を効率良く進行させる観点から、0.50:1~8.0:1であり、好ましくは1.0:1~4.0:1であり、より好ましくは1.0:1~3.0:1であり、さらに好ましくは1.5:1~2.5:1である。
【0038】
上記塩基組成物における、アルカリ金属含有化合物(A)と、金属ナトリウム(B)とを含有する組成物が、さらに、アルカリ土類金属含有化合物(周期表第2元素を含有する化合物)を含有することが好ましい。アルカリ土類金属含有化合物(C)は、Mc(OH)2、McCO3、McO(Mcはアルカリ土類金属)がより好ましく、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、および炭酸マグネシウムからなる群より選択される1種以上のアルカリ土類金属含有化合物を含有することがさらに好ましい。アルカリ土類金属含有化合物(C)を含有することにより、塩基組成物のべたつきを抑え、ハンドリング性を向上することができる。
アルカリ土類金属含有化合物(C)(好ましくはマグネシウム化合物)の含有量は、アルカリ金属含有化合物(A)および金属ナトリウム(B)の総量を100質量部としたとき、好ましくは30質量部以上であり、より好ましくは40質量部以上であり、さらに好ましくは50質量部以上であり、60質量部以上であってもよい。上限値としては、好ましくは150質量部以下であり、より好ましくは130質量部以下であり、さらに好ましくは100質量部以下である。アルカリ土類金属化合物(C)の含有量が30質量部以上であることにより、塩基組成物のべたつきを抑えられる傾向にある。また、アルカリ土類金属化合物(C)の含有量が150質量部以下であることにより、塩基組成物の触媒としての活性に影響せず、反応を進行させる傾向にある。
【0039】
上記塩基組成物は、アルカリ金属含有化合物(A)と、金属ナトリウム(B)とを含有する混合物を、不活性ガス雰囲気下で100℃~500℃の温度で熱処理することにより製造することができる。アルカリ金属含有化合物(A)および金属ナトリウム(B)を混合する順番は特に限定されない。
不活性ガスとしては、例えば、ヘリウム、窒素、アルゴン等を挙げることができる。
塩基組成物の調製における温度は、好ましくは98℃~500℃であり、より好ましくは110℃~300℃であり、さらに好ましくは120℃~280℃である。温度が、98℃~500℃であることにより、金属ナトリウムが融解するために、分散混合しやすく、且つ、十分に焼成され、活性の高い触媒となる傾向にある。
塩基組成物の調製における加熱時間は、好ましくは10分~5時間であり、より好ましくは30分~3時間であり、さらに好ましくは30分~2時間である。加熱時間が、10分~5時間であることにより、十分に焼成され、活性の高い触媒となる傾向にある。
【0040】
アルカリ土類金属含有化合物(C)は、アルカリ金属含有化合物(A)および金属ナトリウム(B)の混合物に添加すればよいが、アルカリ金属含有化合物(A)、金属ナトリウム(B)およびアルカリ土類金属含有化合物(C)を混合する順番は特に限定されない。
【0041】
アルカリ金属含有化合物(A)およびアルカリ土類金属含有化合物(C)は吸湿性が高いことから、塩基組成物の調製前に熱処理を加えてもよい。調製前の熱処理は、不活性ガス下または真空下で行うことが好ましい。調製前の熱処理の温度は、不要な水分を取り除くことができる温度であれば特に限定されないが、通常200℃~500℃であり、好ましくは250℃~400℃である。
熱処理の温度を200℃~500℃とすることにより、化合物中の水分を十分に取り除くことができ、活性の高い触媒となる傾向にある。調製前の熱処理の時間は、好ましくは10分~5時間であり、より好ましくは30分~3時間であり、さらに好ましくは30分~2時間である。加熱時間が、10分~5時間であることにより、十分に水分を取り除くことができ、活性の高い触媒となる傾向にある。
【0042】
反応終了後における反応液と塩基組成物とは、分沈降、遠心分離、濾過等の一般的な方法により分離できる。
【0043】
<アミン組成物およびその製造方法>
化合物(X-1)製造方法では、化合物(X-1)は、精製して単独化合物として用いてもよいし、化合物(X-1)の1種または2種以上を含むアミン組成物であってもよい。
【0044】
すなわち、本発明では、芳香環と、前記芳香環に結合しているアルキル基を有し、前記芳香環に結合しているアルキル基のα位の炭素原子にアミノ基が結合している化合物(X-1)を含むアミン組成物の製造方法であって、芳香環と、前記芳香環に結合している基であって、式(1-1)で表される基および 式(1-2)で表される基からなる群から選択される基を少なくとも1つ有する化合物(X-2)に、塩基の存在下で、エチレンを充填してアルキル化することを含み、前記エチレン充填時の反応液の温度が0~10℃、エチレンの充填圧力が1.5~2.3MPaである、化合物(X-1)を含むアミン組成物の製造方法も開示する。
【化13】
(式(1-2)において、R
xは置換基である。式(1-1)および式(1-2)において、*はベンゼン環上の炭素原子との結合部位である。)
上記アミン組成物の製造方法における好ましい範囲は、上記化合物(X-1)の製造方法の好ましい範囲と同じである。
【0045】
本発明のアミン組成物の製造方法では、例えば、2種以上の化合物(X-1)を含むアミン組成物が得られる。
また、本実施形態では、式(2)で表される化合物であって、RA~RDのうち、3つまたは4つがエチル基である化合物の合計割合が、式(2)で表される化合物の合計量の80質量%以上(好ましくは90質量%以上)であるアミン組成物が例示される。
さらには、本実施形態では、式(2)で表される化合物であって、RA~RDのうち、4つがエチル基である化合物の合計割合が、式(2)で表される化合物の合計量の80質量%以上(好ましくは90質量%以上)であるアミン組成物が例示される。
【0046】
<用途>
本発明の製造方法で得られる化合物(X-1)およびアミン組成物は、化合物の中間原料、工業材料、医薬品、香料等の分野において好ましく用いられる。
特に、エポキシ樹脂の硬化剤、ウレタンプレポリマーを硬化させる硬化剤等として好ましく用いられる。
化合物(X-1)をエポキシ樹脂の硬化剤として用いる場合の詳細は、国際公開第2017/175741号の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0047】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0048】
<アミノ基含有アルキル置換芳香族化合物の分析>
(1)ガスクロマトグラフィー(GC分析)
装置:株式会社島津製作所製、GC-2025
カラム:アジレント・テクノロジー株式会社製、CP-Sil 8 CB for Amines (0.25μm×0.25mm×30m)
カラム温度:80℃で2分間保持し、8℃/分の速度で昇温し、150℃で5分間保持し、15℃/分の速度で昇温し、300℃で5分間保持した。
【0049】
(2)飛行時間型質量分析(TOFMS分析)
装置:日本電子株式会社製、AccuTOF GCX
イオン化手法;FI+
【0050】
(3)核磁気共鳴吸収法(1HNMR、13CNMR)
BRUKER社製、核磁気共鳴装置AVANCEII600MHzを用いて、重水素置換クロロホルム溶媒中で測定を行った。尚、後述のδ(ppm)は次式で表される化学シフトを示す。
δ(ppm)=106×(νS-νR)/νR
νS:試料の共鳴周波数(Hz)
νR:標準物質のトリメチルシラン(TMS)の共鳴周波数(Hz)
【0051】
<塩基組成物調製>
磁気撹拌子を備えた200mLのナスフラスコにアルゴン雰囲気下で、炭酸セシウム(Cs2CO3、富士フイルム和光純薬社製)4.25g、金属ナトリウム(富士フイルム和光純薬社製)0.3g、酸化マグネシウム(MgO、富士フイルム和光純薬社製)3.2gを仕込んだ。このナスフラスコをアルミブロックヒータースターラーに設置して、250℃で、1時間加熱撹拌した後に、アルミブロックヒータースターラーから取り外した。上記ナスフラスコを空冷で室温まで冷却して、塩基組成物を得た。
【0052】
<実施例1>
30mLオートクレーブにアルゴン雰囲気下で、マグネチックスターラーバー、上記塩基組成物の調製にて調製した塩基組成物1.16g、および、MXDA(東京化成工業社製)0.80g、テトラヒドロフラン(富士フイルム和光純薬社製、超脱水、安定剤不含グレード)5.57gを入れフタをした。オートクレーブを1℃の水浴に入れ、700rpmで15分間撹拌して反応液温を3℃とした。水浴中での撹拌を継続しながら、エチレンガスボンベに接続し、エチレンガス(ジャパンファインプロダクツ社製、エチレン純度:99.9vol.%超)を2.0MPaの圧力で充填した。水浴の温度を20℃に変更し、700rpmで24時間反応を行った。反応液に4mLのイソプロピルアルコールを加えて反応を停止し、シリンジフィルター(孔径0.45μm、PTFE社製)を用いて、塩基組成物を取り除き、ガスクロマトグラフィー分析を行った。結果を表1に示す。
【0053】
<実施例2>
30mLオートクレーブにアルゴン雰囲気下で、マグネチックスターラーバー、上記塩基組成物にて調製した塩基組成物1.16g、および、MXDA0.80g、テトラヒドロフラン5.57gを入れフタをした。オートクレーブを1℃の水浴に入れ、700rpmで15分間撹拌して反応液温を3℃とした。水浴中での撹拌を継続しながら、エチレンガスボンベに接続し、エチレンガスを2.0MPaの圧力で充填した。水浴の温度を20℃に変更し、700rpmで24時間撹拌をおこなった。24時間経過後に撹拌を一時停止して塩基組成物1.16gを追加した。塩基組成物の追加後、再度オートクレーブを1℃の水浴に入れ、700rpmで15分間撹拌、反応液温を3℃とし、水浴中での撹拌を継続しながらエチレンガスを2.0MPaの圧力で充填した。エチレンガス充填後24時間反応を行った。反応液に4mLのイソプロピルアルコールを加えて反応を停止し、シリンジフィルター(孔径0.45μm、PTFE社製)を用いて、塩基組成物を取り除き、ガスクロマトグラフィー分析を行った。結果を表1に示す。
【0054】
<参考例1>
30mLオートクレーブにアルゴン雰囲気下で、マグネチックスターラーバー、上記塩基組成物にて調製した塩基組成物1.16g、および、MXDA0.80g、テトラヒドロフラン5.57gを入れフタをした。オートクレーブを20℃の水浴に入れ、700rpmで撹拌して反応液温を20℃に調整し、エチレンガスボンベに接続し、エチレンガスを0.99MPaの圧力で充填した。24時間、エチレンガスを吹き込みながら撹拌を継続した。反応液に4mLのイソプロピルアルコールを加えて反応を停止し、シリンジフィルター(孔径0.45μm、PTFE社製)を用いて、塩基組成物を取り除き、ガスクロマトグラフィー分析を行った。結果を表1に示す。
【0055】
<参考例2>
30mLオートクレーブにアルゴン雰囲気下で、マグネチックスターラーバー、上記塩基組成物にて調製した塩基組成物1.16g、および、MXDA0.80g、テトラヒドロフラン5.57gを入れフタをした。オートクレーブを20℃の水浴に入れ、700rpmで撹拌して反応液温を20℃に調整し、エチレンガスボンベに接続し、エチレンガスを0.99MPaの圧力で充填した。24時間、エチレンガスを吹き込みながら撹拌を継続した。24時間経過後にエチレンボンベからのガス供給、および撹拌を一時停止して塩基組成物1.16gを追加した。塩基組成物の追加後、再度エチレンの供給と撹拌を開始し、さらに24時間反応を行った。反応液に4mLのイソプロピルアルコールを加えて反応を停止し、シリンジフィルター(孔径0.45μm、PTFE社製)を用いて、塩基組成物を取り除き、ガスクロマトグラフィー分析を行った。結果を表1に示す。
【0056】
<参考例3>
30mLオートクレーブにアルゴン雰囲気下で、マグネチックスターラーバー、上記塩基組成物にて調製した塩基組成物1.16g、および、MXDA(東京化成工業社製)0.80g、テトラヒドロフラン(富士フイルム和光純薬社製、超脱水、安定剤不含グレード)5.57gを入れフタをした。オートクレーブを20℃の水浴に入れ、700rpmで撹拌して反応液温を20℃に調整し、エチレンガスボンベに接続し、エチレンガス(ジャパンファインプロダクツ社製、エチレン純度:99.9vol.%超)を2.0MPaの圧力で充填した。エチレン充填後700rpmで24時間反応を行った。反応液に4mLのイソプロピルアルコールを加えて反応を停止し、シリンジフィルター(孔径0.45μm、PTFE社製)を用いて、塩基組成物を取り除き、ガスクロマトグラフィー分析を行った。結果を表1に示す。
【0057】
<参考例4>
30mLオートクレーブにアルゴン雰囲気下で、マグネチックスターラーバー、上記塩基組成物にて調製した塩基組成物1.16g、および、MXDA(東京化成工業社製)0.80g、テトラヒドロフラン(富士フイルム和光純薬社製、超脱水、安定剤不含グレード)5.57gを入れフタをした。オートクレーブを1℃の水浴に入れ、700rpmで15分間撹拌して反応液温を3℃とした。水浴中での撹拌を継続しながら、エチレンガスボンベに接続し、エチレンガス(ジャパンファインプロダクツ社製、エチレン純度:99.9vol.%超)を0.99MPaの圧力で充填した。水浴の温度を20℃に変更し、700rpmで24時間反応を行った。反応液に4mLのイソプロピルアルコールを加えて反応を停止し、シリンジフィルター(孔径0.45μm、PTFE社製)を用いて、塩基組成物を取り除き、ガスクロマトグラフィー分析を行った。結果を表1に示す。
【0058】
【0059】
なお、実施例1、2および、参考例1、2により得られたエチレン3分子付加体の構造は、以下のとおりであった。
【0060】
【0061】
α,α,α’-トリエチルメタキシリレンジアミンの各種スペクトルデータは以下のとおりであった。
1H NMR(CDCl3、テトラメチルシラン) δ(ppm):0.702、0.717、0.732(6H、t、Ar-C(NH2)-CH2-CH3におけるCH3の水素)、0.837、0.851、0.866(3H、t、Ar-CH(NH2)-CH2-CH3におけるCH3の水素)、1.623~1.751(4H、m、Ar-C(NH2)-CH2-CH3におけるCH2の水素)、1.808~1.882(2H、m、Ar-CH(NH2)-CH2-CH3におけるCH2の水素)、3.792、3.806、3.820(1H、t、Ar-CH(NH2)-CH2-CH3におけるCHの水素)7.140、7.143、7.146、7.154、7.157、7.160(1H、Ar)7.244~7.301(2H、Ar)、7.313~7.320(1H、Ar)。
13C NMR(CDCl3、テトラメチルシラン) δ(ppm):8.1(×2)、11.0、32.6、36.1(×2)、58.0、58.2、123.7、124.1、124.5、128.0、146.0、146.8。
TOFMS分析:m/eの理論値(C14H25N2+H)+として221.20123、実測値221.199。
【0062】
なお、実施例1、2および、参考例1、2により得られたエチレン4分子付加体の構造は以下のとおりであった。
【0063】
【0064】
α,α,α’,α’-テトラエチルメタキシリレンジアミンの各種スペクトルデータは以下のとおりであった。
1H NMR(CDCl3、テトラメチルシラン) δ(ppm):0.689、0.704、0.719(12H、t、Ar-C(NH2)-CH2-CH3におけるCH3の水素)、1.639~1.711(4H、m、Ar-C(NH2)-CH2-CH3におけるCH2の水素)、1.817~1.890(4H、m、Ar-C(NH2)-CH2-CH3におけるCH2の水素)、7.214~7.235(2H、Ar)、7.267~7.298(1H、Ar)、7.396~7.403(1H、Ar)。
13C NMR(CDCl3、テトラメチルシラン) δ(ppm):8.1(×2)、36.2(×2)、58.2、123.4、123.5、127.6、146.1。
TOFMS分析:m/eの理論値(C16H28N2+H)+として249.2285、実測値249.231。
【0065】
上記結果から明らかなとおり、エチレン充填時の反応液の温度が0~10℃、エチレンの充填圧力が1.5~2.3MPaであるとき(実施例1、実施例2)、エチレン3分子付加体やエチレン4分子付加体などの、エチレンが高い比率で付加された化合物が得られた(実施例1、2)。特に、塩基組成物を2回以上に分けて添加した場合(実施例2)、エチレン4分子付加体が高い比率で得られた。
これに対し、本発明の範囲を満たさない場合、エチレン3分子付加体やエチレン4分子付加体などの、エチレンが高い比率で付加された化合物が得られる割合が低かった(参考例1~4)。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、化合物の中間原料等として有用なアミノ基含有アルキル置換芳香族化合物を提供することができ、樹脂等の工業製品、医薬品、香料等の分野において産業上の利用可能性を有する。