(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】色変換組成物、色変換シートならびにそれを含む光源ユニット、ディスプレイおよび照明装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20230606BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20230606BHJP
H10K 50/00 20230101ALI20230606BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
G02B5/20
C09K11/06
H05B33/14 A
H05B33/12 E
(21)【出願番号】P 2019042197
(22)【出願日】2019-03-08
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】境野 裕健
(72)【発明者】
【氏名】神崎 達也
(72)【発明者】
【氏名】田中 大作
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2017/141795(JP,A1)
【文献】特開2015-194637(JP,A)
【文献】特開2015-194638(JP,A)
【文献】再公表特許第2006/120895(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
C09K 11/06
H10K 50/00
H05B 33/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を、その入射光よりも長波長の光に変換する色変換シートであり、
有機発光材料およびバインダー樹脂を含む色変換組成物を硬化してなる色変換層を含む、色変換シートであって、
前記有機発光材料が、少なくとも、第1の有機発光材料および第2の有機発光材料を含有し、
前記第1の有機発光材料および前記第2の有機発光材料の両方が一般式(1)で表される化合物であり、
前記第1の有機発光材料および前記第2の有機発光材料の両方が同一層に含まれ、
該第1の有機発光材料および該第2の有機発光材料の最も発光強度の強い発光のピーク波長をそれぞれλ
1(nm)およびλ
2(nm)とするとき、以下の(式1-1)および式(1-2)を満た
し、
580≦λ
2<λ
1≦750 (式1-1)
0<λ
1-λ
2≦
15 (式1-2)
前記第1の有機発光材料と前記第2の有機発光材料の含有量をそれぞれw
1
(mоl)およびw
2
(mоl)とするとき、
w
1
≧w
2
(式2-1)
である、色変換シート。
【化1】
(XはC-R
7またはNである。R
1~R
9はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、スルホ基、ホスフィンオキシド基、および隣接置換基との間に形成される縮合環および脂肪族環の中から選ばれる。)
【請求項2】
前記一般式(1)において、XがC-R
7であり、R
7が一般式(2)で表される基である、請求項1に記載の色変換シート。
【化2】
(rは、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、スルホ基、ホスフィンオキシド基からなる群より選ばれる。kは1~3の整数である。kが2以上である場合、rはそれぞれ同じでも異なってもよい。)
【請求項3】
前記一般式(1)において、R
1、R
3、R
4およびR
6が、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のフェニル基である、請求項1
または2に記載の色変換シート。
【請求項4】
前記一般式(1)において、R
1、R
3、R
4およびR
6が、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換のフェニル基であり、前記置換基が、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、フッ素から選ばれる、請求項1~
3のいずれかに記載の色変換シート。
【請求項5】
2層以上の色変換層を含む色変換シートであって、該2層以上の色変換層の少なくとも1層が、前記色変換組成物を硬化してなる色変換層である、請求項1~
4のいずれかに記載の色変換シート。
【請求項6】
2層以上の色変換層を含む色変換シートであって、該2層以上の色変換層の少なくとも1層が、前記色変換組成物を硬化してなる色変換層であり、かつ、当該色変換層以外の層のうち少なくとも1層が、励起光照射時にピーク波長が500nm以上580nm未満の領域に観測される発光を示す層である、請求項
5に記載の色変換シート。
【請求項7】
前記励起光照射時にピーク波長が500nm以上580nm未満の領域に観測される発光を示す層が、一般式(1)で表される化合物を含む、請求項
6に記載の色変換シート。
【化3】
(XはC-R
7またはNである。R
1~R
9はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、スルホ基、ホスフィンオキシド基、および隣接置換基との間に形成される縮合環および脂肪族環の中から選ばれる。)
【請求項8】
光源と、請求項1~
7のいずれかに記載の色変換シートと、を備える、光源ユニット。
【請求項9】
前記光源が、波長400nm以上500nm以下の範囲に極大発光を有する発光ダイオードである、請求項
8に記載の光源ユニット。
【請求項10】
請求項
8または
9に記載の光源ユニットを備える、ディスプレイまたは照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色変換組成物、色変換シート、ならびにそれを含む光源ユニット、ディスプレイおよび照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
色変換方式によるマルチカラー化技術を、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ、照明装置等へ応用することが盛んに検討されている。色変換とは、発光体からの発光をより長波長な光へと変換することであり、例えば青色発光を緑色や赤色発光へと変換することを表す。
【0003】
この色変換機能を有する組成物(以下、「色変換組成物」という)をシート化し、例えば青色光源と組み合わせることにより、青色光源から、青、緑、赤色の3原色を取り出すこと、すなわち白色光を取り出すことが可能となる。このような青色光源と色変換機能を有するシート(以下、「色変換シート」という)とを組み合わせた白色光源をバックライトユニットとし、このバックライトユニットと、液晶駆動部分と、カラーフィルターとを組み合わせることで、フルカラーディスプレイの作製が可能になる。また、液晶駆動部分が無ければ、そのまま白色光源として用いることができ、例えばLED照明等の白色光源として応用できる。
【0004】
色変換方式を利用する液晶ディスプレイの課題として、色再現性の向上が挙げられる。色再現性の向上には、バックライトユニットの青、緑、赤の各発光スペクトルの半値幅を狭くし、青、緑、赤各色の色純度を高めることが有効である。
【0005】
これを解決する手段として、無機半導体微粒子による量子ドットを色変換組成物の成分として用いる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、量子ドットの代わりに有機物の発光材料を色変換組成物の成分として用いる技術も提案されている。有機発光材料を色変換組成物の成分として用いる技術の例としては、クマリン誘導体を用いたもの(例えば、特許文献2参照)、ローダミン誘導体を用いたもの(例えば、特許文献3参照)、ピロメテン誘導体を用いたもの(例えば、特許文献4参照)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-22028号公報
【文献】特開2007-273440号公報
【文献】特開2001-164245号公報
【文献】特開2011-241160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、これらの有機発光材料を用いる技術では、色再現性および輝度の向上の両立が不十分であった。特に、ピーク波長が580nm以上750nm以下の領域に観測される発光については、長波長であるほど色再現性が高くなるが、短波長であるほど視感度が大きくなり、輝度が高くなる。そのため、高色純度の発光を示す有機発光材料を用いて広い色域を達成し、かつ、輝度を十分に向上させる技術が、不十分であった。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、ディスプレイや照明装置等に用いられる色変換シートにおいて、高い色再現性と高輝度を両立することができる色変換シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明者らは、鋭意検討の結果、色再現性に寄与する第1の有機発光材料および輝度に寄与する第2の有機発光材料を組み合わせることによって、簡便に高い色再現性と高輝度を両立することができることを見出した。すなわち、本発明は、
入射光を、その入射光よりも長波長の光に変換する色変換組成物であり、
有機発光材料およびバインダー樹脂を含む色変換組成物であって、
前記有機発光材料が、少なくとも、第1の有機発光材料および第2の有機発光材料を含有し、
該第1の有機発光材料および該第2の有機発光材料の最も発光強度の強い発光のピーク波長をそれぞれλ1(nm)およびλ2(nm)とするとき、以下の(式1-1)および式(1-2)を満たす色変換組成物である。
580≦λ2<λ1≦750 (式1-1)
0<λ1-λ2≦30 (式1-2)
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る色変換シートは、高い色再現性および高輝度を両立することが可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の色変換シートの一例を示す模式断面図。
【
図2】本発明の色変換シートの一例を示す模式断面図。
【
図3】本発明の色変換シートの一例を示す模式断面図。
【
図4】本発明の色変換シートの一例を示す模式断面図。
【
図5】本発明の色変換シートの一例を示す模式断面図。
【
図6】本発明の色変換シートの一例を示す模式断面図。
【
図7】本発明の色変換シートの一例を示す模式断面図。
【
図8】本発明の色変換シートの一例を示す模式断面図。
【
図9】本発明の実施例1における色変換シートの発光スペクトルを例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、目的や用途に応じて種々に変更して実施することができる。
【0014】
<色変換組成物>
本発明の実施の形態に係る色変換組成物は、入射光を、その入射光よりも長波長の光に変換する色変換組成物であり、有機発光材料およびバインダー樹脂を含む色変換組成物であって、前記有機発光材料が、少なくとも、第1の有機発光材料および第2の有機発光材料を含有し、該第1の有機発光材料および該第2の有機発光材料の最も発光強度の強い発光のピーク波長をそれぞれλ1(nm)およびλ2(nm)とするとき、
580≦λ2<λ1≦750 (式1-1)
0<λ1-λ2≦30 (式1-2)
を満たす色変換組成物である。
【0015】
有機発光材料の発光のピーク波長は、その溶液の蛍光スペクトル測定により確認できる。この蛍光スペクトル測定に用いる溶媒は、特に限定されるものではないが、トルエンやジクロロメタン、テトラヒドロフラン等の溶媒を好適に用いることができる。有機発光材料の溶解性に問題がない限り、この溶媒としてトルエンを用いることがより好ましい。
【0016】
以後、ピーク波長が500nm以上580nm未満の領域に観測される発光は、「緑色の発光」という。ピーク波長が580nm以上750nm以下の領域に観測される発光は、「赤色の発光」という。
【0017】
式1-1は第1の有機発光材料および第2の有機発光材料が赤色の発光を示す材料であり、第2の有機発光材料における最も発光強度の強い発光のピーク波長が第1の有機発光材料における最も発光強度の強い発光のピーク波長よりも短波長であることを示す。ここで、最も発光強度の強い発光のピーク波長とは、観測されるピーク波長のうち、最も発光強度の大きいピークの波長をいう。
【0018】
赤色光のピーク波長の上限は、可視域の上界付近である750nm以下であればよいが、700nm以下である場合、視感度が大きくなるため、より好ましい。その効果をより大きくする上で、さらに好ましくは680nm以下であり、特に好ましくは660nm以下である。
【0019】
また、赤色光のピーク波長の下限は、580nm以上であればよいが、緑色光と合わせて利用する場合、600nm以上であると、緑色光と赤色光との発光スペクトルの重なりが小さくなり、色再現性が向上するため、より好ましい。その効果をより大きくする上で、さらに好ましくは610nm以上であり、特に好ましくは615nm以上である。
【0020】
本発明の実施の形態に係る色変換組成物およびシートでは、入射光により第1の有機発光材料および第2の有機発光材料がそれぞれ発光することで、それらの発光が重なり合った発光を示す。そのため、第1の有機発光材料と第2の有機発光材料との組み合わせおよび混合比率により、発光のスペクトル形状やピーク波長、発光強度の調整を簡便に行うことができる。
【0021】
重ね合わさった発光のスペクトルの半値幅が小さく、色純度が高いほど、色再現性が高くなる。そのため、第1の有機発光材料と第2の有機発光材料の発光のピーク波長は互いに近接している必要があり、具体的には式1-2の通り、第1の有機発光材料発光のピーク波長および第2の有機発光材料の発光のピーク波長の差が30nm以下である必要がある。より好ましくは、25nm以下であり、さらに好ましくは、20nm以下であり、特に好ましくは15nm以下である。
【0022】
第1の有機発光材料および第2の有機発光材料の含有量をそれぞれw1(mоl)およびw2(mоl)とするとき、
w1≧w2 (式2-1)
の関係であることが好ましい。これは、色変換組成物中における第1の有機発光材料の含有量が、第2の有機発光材料の含有量と同じか、第2の有機発光材料の含有量よりも多い場合、高い輝度を維持したまま、色再現性を向上させることができ、高い色再現性と高輝度の両立が達成できるためである。色変換組成物中における第1の有機発光材料の含有量が、第2の有機発光材料の含有量よりも多い場合、より好ましい。
【0023】
<有機発光材料>
本発明の実施の形態に係る色変換組成物は、有機発光材料を含む。ここで、本発明における発光材料とは、何らかの光が照射されたときに、その光とは異なる波長の光を発する材料のことをいう。有機発光材料は、有機物の発光材料である。
【0024】
高効率な色変換を達成するためには、発光材料が発光量子収率の高い発光特性を示す材料であることが好ましい。一般に、発光材料としては、無機蛍光体、蛍光顔料、蛍光染料、量子ドット等の公知の発光材料が挙げられる。中でも、分散の均一性、使用量の低減、環境負荷の低減の観点からは、有機発光材料が好ましい。
【0025】
有機発光材料としては、以下に示すもの等が挙げられる。例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、トリフェニレン、ペリレン、フルオランテン、フルオレン、インデン等の縮合アリール環を有する化合物やその誘導体等が、好適な有機発光材料として挙げられる。また、フラン、ピロール、チオフェン、シロール、9-シラフルオレン、9,9’-スピロビシラフルオレン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、イミダゾピリジン、フェナントロリン、ピリジン、ピラジン、ナフチリジン、キノキサリン、ピロロピリジン等のヘテロアリール環を有する化合物やその誘導体、ボラン誘導体等が、好適な有機発光材料として挙げられる。
【0026】
また、1,4-ジスチリルベンゼン、4,4’-ビス(2-(4-ジフェニルアミノフェニル)エテニル)ビフェニル、4,4’-ビス(N-(スチルベン-4-イル)-N-フェニルアミノ)スチルベン等のスチルベン誘導体、芳香族アセチレン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、アルダジン誘導体、ピロメテン誘導体、ジケトピロロ[3,4-c]ピロール誘導体等が、好適な有機発光材料として挙げられる。また、クマリン6、クマリン7、クマリン153等のクマリン誘導体、イミダゾール、チアゾール、チアジアゾール、カルバゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール等のアゾール誘導体およびその金属錯体、インドシアニングリーン等のシアニン系化合物、フルオレセイン、エオシン、ローダミン等のキサンテン系化合物やチオキサンテン系化合物等が、好適な有機発光材料として挙げられる。
【0027】
また、ポリフェニレン系化合物、ナフタルイミド誘導体、フタロシアニン誘導体およびその金属錯体、ポルフィリン誘導体およびその金属錯体、ナイルレッドやナイルブルー等のオキサジン系化合物、ヘリセン系化合物、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(3-メチルフェニル)-4,4’-ジフェニル-1,1’-ジアミン等の芳香族アミン誘導体等が、好適な有機発光材料として挙げられる。また、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、オスミウム(Os)、及びレニウム(Re)等の有機金属錯体化合物等が、好適な有機発光材料として挙げられる。しかし、本発明における有機発光材料は、上述したものに限定されない。
【0028】
有機発光材料は、蛍光発光材料であっても、リン光発光材料であってもよいが、高い色純度を達成するためには、蛍光発光材料が好ましい。これらの中でも、熱的安定性および光安定性が高いことから、縮合アリール環を有する化合物やその誘導体が好ましい。
【0029】
また、有機発光材料としては、溶解性や分子構造の多様性の観点から、配位結合を有する化合物が好ましい。半値幅が小さく、高効率な発光が可能である点で、フッ化ホウ素錯体等のホウ素を含有する化合物も好ましい。
【0030】
これらの化合物の中でも、高い蛍光量子収率を与え、耐久性が良好である点で、ピロメテン誘導体を好適に用いることができる。より好ましくは、一般式(1)で表される化合物である。
【0031】
また、重ね合わさった発光のスペクトルの半値幅を小さくするためには、第1の有機発光材料および第2の有機発光材料の少なくとも一方の半値幅が小さいことが好ましいため、第1の有機発光材料および第2の有機発光材料の少なくとも一方が、一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。第1の有機発光材料および前記第2の有機発光材料の両方が一般式(1)で表される化合物である場合、重ね合わさった発光の色純度がより高くなるため、特に好ましい。
【0032】
【0033】
XはC-R7またはNである。R1~R9はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、スルホ基、ホスフィンオキシド基、および隣接置換基との間に形成される縮合環および脂肪族環の中から選ばれる。
【0034】
上記の全ての基において、水素は重水素であってもよい。このことは、以下に説明する化合物またはその部分構造においても同様である。また、以下の説明において、例えば、炭素数6~40の置換もしくは無置換のアリール基とは、アリール基に置換した置換基に含まれる炭素数も含めて全ての炭素数が6~40となるアリール基である。炭素数を規定している他の置換基も、これと同様である。
【0035】
また、上記の全ての基において、置換される場合における置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、スルホ基、ホスフィンオキシド基が好ましく、さらには、各置換基の説明において好ましいとする具体的な置換基が好ましい。また、これらの置換基は、さらに上述の置換基により置換されていてもよい。
【0036】
「置換もしくは無置換の」という場合における「無置換」とは、水素原子または重水素原子が置換したことを意味する。以下に説明する化合物またはその部分構造において、「置換もしくは無置換の」という場合についても、上記と同様である。
【0037】
上記の全ての基のうち、アルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等の飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは、置換基を有していても有していなくてもよい。置換されている場合の追加の置換基には特に制限は無く、例えば、アルキル基、ハロゲン、アリール基、ヘテロアリール基等を挙げることができ、この点は、以下の記載にも共通する。また、アルキル基の炭素数は、特に限定されないが、入手の容易性やコストの点から、好ましくは1以上20以下、より好ましくは1以上8以下の範囲である。
【0038】
シクロアルキル基とは、例えば、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等の飽和脂環式炭化水素基を示し、これは、置換基を有していても有していなくてもよい。アルキル基部分の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、3以上20以下の範囲である。
【0039】
複素環基とは、例えば、ピラン環、ピペリジン環、環状アミド等の炭素以外の原子を環内に有する脂肪族環を示し、これは、置換基を有していても有していなくてもよい。複素環基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、2以上20以下の範囲である。
【0040】
アルケニル基とは、例えば、ビニル基、アリル基、ブタジエニル基等の二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは、置換基を有していても有していなくてもよい。アルケニル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、2以上20以下の範囲である。
【0041】
シクロアルケニル基とは、例えば、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基等の二重結合を含む不飽和脂環式炭化水素基を示し、これは、置換基を有していても有していなくてもよい。
【0042】
アルキニル基とは、例えば、エチニル基等の三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは、置換基を有していても有していなくてもよい。アルキニル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、2以上20以下の範囲である。
【0043】
アルコキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のエーテル結合を介して脂肪族炭化水素基が結合した官能基を示し、この脂肪族炭化水素基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アルコキシ基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、1以上20以下の範囲である。
【0044】
アルキルチオ基とは、アルコキシ基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたものである。アルキルチオ基の炭化水素基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アルキルチオ基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、1以上20以下の範囲である。
【0045】
アリールエーテル基とは、例えば、フェノキシ基等、エーテル結合を介した芳香族炭化水素基が結合した官能基を示し、芳香族炭化水素基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アリールエーテル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、6以上40以下の範囲である。
【0046】
アリールチオエーテル基とは、アリールエーテル基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたものである。アリールチオエーテル基における芳香族炭化水素基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アリールチオエーテル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、6以上40以下の範囲である。
【0047】
アリール基とは、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ベンゾフェナントリル基、ベンゾアントラセニル基、クリセニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ベンゾフルオランテニル基、ジベンゾアントラセニル基、ペリレニル基、ヘリセニル基等の芳香族炭化水素基を示す。中でも、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基が好ましい。アリール基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アリール基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは6以上40以下、より好ましくは6以上30以下の範囲である。
【0048】
R1~R9が置換もしくは無置換のアリール基である場合、アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基が好ましく、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基がより好ましい。さらに好ましくは、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基であり、フェニル基が特に好ましい。
【0049】
それぞれの置換基がさらにアリール基で置換される場合、アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基が好ましく、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基がより好ましい。特に好ましくは、フェニル基である。
【0050】
ヘテロアリール基とは、例えば、ピリジル基、フラニル基、チエニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ピラジニル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、ナフチリジニル基、シンノリニル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基、ベンゾカルバゾリル基、カルボリニル基、インドロカルバゾリル基、ベンゾフロカルバゾリル基、ベンゾチエノカルバゾリル基、ジヒドロインデノカルバゾリル基、ベンゾキノリニル基、アクリジニル基、ジベンゾアクリジニル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フェナントロリニル基等の、炭素以外の原子を一個または複数個環内に有する環状芳香族基を示す。ただし、ナフチリジニル基とは、1,5-ナフチリジニル基、1,6-ナフチリジニル基、1,7-ナフチリジニル基、1,8-ナフチリジニル基、2,6-ナフチリジニル基、2,7-ナフチリジニル基のいずれかを示す。ヘテロアリール基は、置換基を有していても有していなくてもよい。ヘテロアリール基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、2以上40以下、より好ましくは2以上30以下の範囲である。
【0051】
R1~R9が置換もしくは無置換のヘテロアリール基である場合、ヘテロアリール基としては、ピリジル基、フラニル基、チエニル基、キノリニル基、ピリミジル基、トリアジニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フェナントロリニル基が好ましく、ピリジル基、フラニル基、チエニル基、キノリニル基がより好ましい。特に好ましくは、ピリジル基である。
【0052】
それぞれの置換基がさらにヘテロアリール基で置換される場合、ヘテロアリール基としては、ピリジル基、フラニル基、チエニル基、キノリニル基、ピリミジル基、トリアジニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フェナントロリニル基が好ましく、ピリジル基、フラニル基、チエニル基、キノリニル基がより好ましい。特に好ましくは、ピリジル基である。
【0053】
ハロゲンとは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選ばれる原子を示す。また、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基は、置換基を有していても有していなくてもよい。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基等が挙げられ、これら置換基は、さらに置換されてもよい。
【0054】
アミノ基とは、置換もしくは無置換のアミノ基である。置換する場合の置換基としては、例えば、アリール基、ヘテロアリール基、直鎖アルキル基、分岐アルキル基等が挙げられる。アリール基、ヘテロアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、キノリニル基が好ましい。これら置換基は、さらに置換されてもよい。炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、2以上50以下、より好ましくは6以上40以下、特に好ましくは6以上30以下の範囲である。
【0055】
シリル基とは、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基等のアルキルシリル基や、フェニルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基、トリナフチルシリル基等のアリールシリル基を示す。ケイ素上の置換基は、さらに置換されてもよい。シリル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、1以上30以下の範囲である。
【0056】
シロキサニル基とは、例えば、トリメチルシロキサニル基等のエーテル結合を介したケイ素化合物基を示す。ケイ素上の置換基は、さらに置換されてもよい。また、ボリル基とは、置換もしくは無置換のボリル基である。置換する場合の置換基としては、例えば、アリール基、ヘテロアリール基、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、アリールエーテル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基等が挙げられる。中でも、アリール基、アリールエーテル基が好ましい。また、スルホ基とは、置換もしくは無置換のスルホ基である。置換する場合の置換基としては、例えば、アリール基、ヘテロアリール基、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、アリールエーテル基、アルコキシ基等が挙げられる。中でも、直鎖アルキル基、アリール基が好ましい。また、ホスフィンオキシド基とは、-P(=O)R10R11で表される基である。R10R11は、R1~R9と同様の群から選ばれる。
【0057】
隣接置換基との間に形成される縮合環および脂肪族環とは、任意の隣接する2置換基(例えば一般式(1)のR1とR2)が互いに結合して、共役または非共役の環状骨格を形成することをいう。このような縮合環および脂肪族環の構成元素としては、炭素以外にも、窒素、酸素、硫黄、リンおよびケイ素から選ばれる元素を含んでいてもよい。また、これらの縮合環および脂肪族環は、さらに別の環と縮合してもよい。
【0058】
第1の有機発光材料および第2の有機発光材料の発光中心骨格は、同一でも異なっても良い。第1の有機発光材料および第2の有機発光材料が同一の発光中心骨格を有する場合、合成中間体の同一化や、製造プロセスの類似化による設備投資の最小化により、製造コストを低減できるため、第1の有機発光材料と第2の有機発光材料が、同一の発光中心骨格を有することが好ましい。ここで、発光中心骨格とは、有機発光材料の発光機能を発現する部位を示す。例えば、クマリン誘導体であれば、発光中心骨格はクマリン骨格であり、縮合アリール環を有する蛍光材料であれば、アントラセン骨格やピレン骨格、ペリレン骨格などである。一般式(1)では、例えばXがC-R7の場合、発光中心骨格がボロンジピロメテン骨格であることを示している。
【0059】
一般式(1)で表される化合物は、高い発光量子収率を示し、かつ、発光スペクトルの半値幅が小さいため、効率的な色変換と高い色純度との双方を達成することができる。さらに、一般式(1)で表される化合物は、適切な置換基を適切な位置に導入することで、発光効率、色純度、熱的安定性、光安定性および分散性等の様々な特性や物性を調整することができる。例えば、R1、R3、R4およびR6が全て水素である場合に比べ、R1、R3、R4およびR6の少なくとも1つが置換もしくは無置換のアルキル基や置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基である場合の方が、より良い熱的安定性および光安定性を示す。
【0060】
R1、R3、R4およびR6の少なくとも1つが置換もしくは無置換のアルキル基である場合、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基といった炭素数1~6のアルキル基が好ましい。さらに、このアルキル基としては、熱的安定性に優れるという観点から、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が好ましい。また、濃度消光を防ぎ、発光量子収率を向上させるという観点では、このアルキル基として、立体的にかさ高いtert-ブチル基がより好ましい。また、合成の容易さ、原料入手の容易さという観点から、このアルキル基として、メチル基も好ましく用いられる。
【0061】
R1、R3、R4およびR6の少なくとも1つが置換もしくは無置換のアリール基である場合、アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基が好ましく、さらに好ましくは、フェニル基、ビフェニル基である。特に好ましくは、フェニル基である。
【0062】
R1、R3、R4およびR6の少なくとも1つが置換もしくは無置換のヘテロアリール基である場合、ヘテロアリール基としては、ピリジル基、キノリニル基、チエニル基が好ましく、さらに好ましくは、ピリジル基、キノリニル基である。特に好ましくは、ピリジル基である。
【0063】
R1、R3、R4およびR6が全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアルキル基である場合、バインダー樹脂や溶媒への溶解性が良好なため、好ましい。この場合、アルキル基としては、合成の容易さ、原料入手の容易さという観点から、メチル基が好ましい。
【0064】
R1、R3、R4およびR6が全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアリール基または置換もしくは無置換のヘテロアリール基である場合、より良い熱的安定性および光安定性を示すため、好ましい。この場合、R1、R3、R4およびR6が全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアリール基であることがより好ましい。
【0065】
R1、R3、R4およびR6が、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアリール基である場合、R1、R3、R4およびR6は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のフェニル基であることが好ましい。R1、R3、R4およびR6が、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換のフェニル基の場合、置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、フッ素から選ばれることが好ましい。さらに好ましくは、炭素数1~8のアルキル基または炭素数1~8のアルコキシ基が好ましく、特に好ましくは、メチル基、tert-ブチル基、メトキシ基が好ましい。
【0066】
中でも、R1、R3、R4およびR6が、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のフェニル基の場合、R1、R3、R4およびR6は、それぞれ以下のAr-1~Ar-6から選ばれることがより好ましい。
【0067】
【0068】
一般式(1)において、Xは、C-R7であることが、光安定性の観点から好ましい。XがC-R7であるとき、一般式(1)で表される化合物の耐久性、すなわち、この化合物の発光強度の経時的な低下には、置換基R7が大きく影響する。具体的には、R7が水素である場合、この部位の反応性が高いため、この部位と空気中の水分や酸素とが容易に反応してしまう。このことは、一般式(1)で表される化合物の分解を引き起こす。また、R7が例えばアルキル基のような分子鎖の運動の自由度が大きい置換基である場合は、確かに反応性は低下するが、色変換組成物中で化合物同士が経時的に凝集し、結果的に濃度消光による発光強度の低下を招く。したがって、R7は、剛直で、かつ運動の自由度が小さく凝集を引き起こしにくい基であることが好ましく、具体的には、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基のいずれかであることが好ましい。
【0069】
より高い蛍光量子収率を与え、より熱分解しづらい点、また光安定性の観点から、XがC-R7であり、R7が置換もしくは無置換のアリール基であることが好ましい。アリール基としては、発光波長を損なわないという観点から、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基が好ましい。
【0070】
さらに、一般式(1)で表される化合物の光安定性を高めるには、R7とピロメテン骨格の炭素-炭素結合のねじれを適度に抑える必要がある。何故ならば、過度にねじれが大きいと、励起光に対する反応性が高まる等、光安定性が低下するからである。このような観点から、R7としては、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のビフェニル基、置換もしくは無置換のターフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基が好ましく、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のビフェニル基、置換もしくは無置換のターフェニル基であることがより好ましい。特に好ましくは、置換もしくは無置換のフェニル基である。
【0071】
また、R7は、適度にかさ高い置換基であることが好ましい。R7が、ある程度のかさ高さを有することで分子の凝集を防ぐことができ、その結果、一般式(1)で表される化合物の発光効率や耐久性がより向上する。
【0072】
このようなかさ高い置換基のさらに好ましい例としては、下記一般式(2)で表されるR7の構造が挙げられる。
【0073】
【0074】
一般式(2)において、rは、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、スルホ基、ホスフィンオキシド基からなる群より選ばれる。kは1~3の整数である。kが2以上である場合、rはそれぞれ同じでも異なっても良い。
【0075】
より高い発光量子収率を与えることができるという観点から、rは、置換もしくは無置換のアリール基であることが好ましい。このアリール基の中でも、特に、フェニル基、ナフチル基が好ましい例として挙げられる。rがアリール基である場合、一般式(2)のkは、1もしくは2であることが好ましく、中でも、分子の凝集をより防ぐという観点から2であることがより好ましい。さらに、kが2以上である場合、rの少なくとも1つは、アルキル基で置換されていることが好ましい。この場合のアルキル基としては、熱的安定性の観点から、メチル基、エチル基およびtert-ブチル基が特に好ましい例として挙げられる。
【0076】
また、蛍光波長や吸収波長を制御したり、溶媒との相溶性を高めたりするという観点から、rは、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基またはハロゲンであることが好ましく、メチル基、エチル基、tert-ブチル基、メトキシ基がより好ましい。分散性の観点からは、tert-ブチル基、メトキシ基が特に好ましい。rがtert-ブチル基またはメトキシ基であることは、分子同士の凝集による消光を防ぐことについて、より有効である。
【0077】
また、一般式(1)で表される化合物の別の態様として、R1~R7のうち少なくとも1つが電子求引基であることが好ましい。特に、(1)R1~R6のうち少なくとも1つが電子求引基であること、(2)R7が電子求引基であること、または(3)R1~R6のうち少なくとも1つが電子求引基であり、かつ、R7が電子求引基であること、が好ましい。このように上記化合物のピロメテン骨格に電子求引基を導入することで、ピロメテン骨格の電子密度を大幅に下げることができる。これにより、上記化合物の酸素に対する安定性がより向上し、その結果、上記化合物の耐久性をより向上させることができる。
【0078】
電子求引基とは、電子受容性基とも呼称し、有機電子論において、誘起効果や共鳴効果により、置換した原子団から、電子を引き付ける原子団である。電子求引基としては、ハメット則の置換基定数(σp(パラ))として、正の値をとるものが挙げられる。ハメット則の置換基定数(σp(パラ))は、化学便覧基礎編改訂5版(II-380頁)から引用することができる。なお、フェニル基も、上記のような正の値をとる例もあるが、本発明において、電子求引基にフェニル基は含まれない。
【0079】
電子求引基の例として、例えば、-F(σp:+0.06)、-Cl(σp:+0.23)、-Br(σp:+0.23)、-I(σp:+0.18)、-CO2R12(σp:R12がエチル基の時+0.45)、-CONH2(σp:+0.38)、-COR12(σp:R12がメチル基の時+0.49)、-CF3(σp:+0.50)、-SO2R12(σp:R12がメチル基の時+0.69)、-NO2(σp:+0.81)等が挙げられる。R12は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の環形成原子数5~30の複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のシクロアルキル基を表す。これら各基の具体例としては、上記と同様の例が挙げられる。
【0080】
好ましい電子求引基としては、フッ素、含フッ素アリール基、含フッ素ヘテロアリール基、含フッ素アルキル基、置換もしくは無置換のアシル基、置換もしくは無置換のエステル基、置換もしくは無置換のアミド基、置換もしくは無置換のスルホニル基またはシアノ基が挙げられる。何故なら、これらは、化学的に分解しにくいからである。
【0081】
より好ましい電子求引基としては、含フッ素アルキル基、置換もしくは無置換のアシル基、置換もしくは無置換のエステル基またはシアノ基が挙げられる。何故なら、これらは、濃度消光を防ぎ、発光量子収率を向上させる効果につながるからである。特に好ましい電子求引基は、置換もしくは無置換のエステル基である。
【0082】
R2およびR5は、熱的安定性の観点から、水素、アルキル基、アリール基のいずれかであることが好ましく、発光スペクトルにおいて狭い半値幅を得やすいという観点から、水素がより好ましい。
【0083】
また、耐久性を向上させる観点から、R2およびR5の少なくとも一方が、それぞれ同じでも異なっていてもよく、電子求引基であることも好ましい。中でも、R2およびR5の少なくとも一方が、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のエステル基であることが、色純度を落とすことなく、耐久性を向上させることができるため、好ましい。特に、R2およびR5が共に、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のエステル基であることが、耐久性の向上の観点から、特に好ましい。
【0084】
R8およびR9は、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、フッ素、含フッ素アルキル基、含フッ素ヘテロアリール基または含フッ素アリール基、シアノ基が好ましい。特に、励起光に対して安定でより高い蛍光量子収率が得られることから、R8およびR9は、フッ素、含フッ素アリール基またはシアノ基であることがより好ましい。
【0085】
ここで、含フッ素アリール基とは、フッ素を含むアリール基であり、例えば、フルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基およびペンタフルオロフェニル基等が挙げられる。含フッ素ヘテロアリール基とは、フッ素を含むヘテロアリール基であり、例えば、フルオロピリジル基、トリフルオロメチルピリジル基およびトリフルオロピリジル基等が挙げられる。含フッ素アルキル基とは、フッ素を含むアルキル基であり、例えば、トリフルオロメチル基やペンタフルオロエチル基等が挙げられる。
【0086】
ホウ素原子上の電子密度を下げることにより、一般式(1)で表される化合物の酸素に対する安定性がより向上し、その結果、上記化合物の耐久性をより向上させることができるため、フッ素またはシアノ基であることがより好ましい。特に、R8およびR9の少なくとも一方がシアノ基である場合、ホウ素原子上の電子密度がより下がるため、好ましい。一方、高い蛍光量子収率が得られる点、および合成の容易さから、R8およびR9は、フッ素であることも好ましい。
【0087】
一般式(1)で表される化合物の好ましい例の1つとして、R1、R3、R4およびR6が全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアルキル基であって、さらに、XがC-R7であり、R7が、一般式(2)で表される基である場合が挙げられる。この場合、R7は、rが置換もしくは無置換のフェニル基として含まれる一般式(2)で表される基であることが特に好ましい。
【0088】
また、一般式(1)で表される化合物の好ましい例の別の1つとして、R1、R3、R4およびR6が全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、上述のAr-1~Ar-6から選ばれ、さらに、XがC-R7であり、R7が、一般式(2)で表される基である場合が挙げられる。この場合、R7は、rがtert-ブチル基、メトキシ基として含まれる一般式(2)で表される基であることがより好ましく、rがメトキシ基として含まれる一般式(2)で表される基であることが特に好ましい。
【0089】
また、一般式(1)で表される化合物の好ましい例の別の1つとして、R1、R3、R4およびR6が全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアルキル基であって、かつ、R2およびR5がそれぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のエステル基であり、さらに、XがC-R7であり、R7が、一般式(2)で表される基である場合が挙げられる。この場合、R7は、rが置換もしくは無置換のフェニル基として含まれる一般式(2)で表される基であることが特に好ましい。
【0090】
また、一般式(1)で表される化合物の好ましい例の別の1つとして、R1、R3、R4およびR6が全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、上述のAr-1~Ar-6から選ばれ、かつ、R2およびR5がそれぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のエステル基であり、さらに、XがC-R7であり、R7が、一般式(2)で表される基である場合が挙げられる。この場合、R7は、rがtert-ブチル基、メトキシ基として含まれる一般式(2)で表される基であることがより好ましく、rがメトキシ基として含まれる一般式(2)で表される基であることが特に好ましい。
【0091】
一般式(1)で表される化合物の一例を以下に示すが、この化合物は、これらに限定されるものではない。
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
一般式(1)で表される化合物は、例えば、特表平8-509471号公報や特開2000-208262号公報に記載の方法で合成することができる。すなわち、ピロメテン化合物と金属塩とを塩基共存下で反応させることにより、目的とするピロメテン系金属錯体が得られる。
【0103】
また、ピロメテン-フッ化ホウ素錯体の合成については、J.Org.Chem.,vol.64,No.21,pp.7813-7819(1999)、Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.,vol.36,pp.1333-1335(1997)等に記載されている方法を参考にして、一般式(1)で表される化合物を合成することができる。例えば、下記一般式(3)で表される化合物と一般式(4)で表される化合物とをオキシ塩化リン存在下、1,2-ジクロロエタン中で加熱した後、下記一般式(5)で表される化合物をトリエチルアミン存在下、1,2-ジクロロエタン中で反応させ、これにより、一般式(1)で表される化合物を得る方法が挙げられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。ここで、R1~R9は、上記説明と同様である。Jは、ハロゲンを表す。
【0104】
【0105】
さらに、アリール基やヘテロアリール基の導入の際は、ハロゲン化誘導体とボロン酸あるいはボロン酸エステル化誘導体とのカップリング反応を用いて炭素-炭素結合を生成する方法が挙げられるが、本発明は、これに限定されるものではない。同様に、アミノ基やカルバゾリル基の導入の際にも、例えば、パラジウム等の金属触媒下でのハロゲン化誘導体とアミンあるいはカルバゾール誘導体とのカップリング反応を用いて炭素-窒素結合を生成する方法が挙げられるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0106】
本発明の実施の形態に係る色変換組成物は、一般式(1)で表される化合物以外に、必要に応じてその他の化合物を適宜含有することができる。例えば、励起光から一般式(1)で表される化合物へのエネルギー移動効率を更に高めるために、ルブレン等のアシストドーパントを含有してもよい。また、一般式(1)で表される化合物の発光色以外の発光色を加味したい場合は、所望の有機発光材料、例えば、クマリン系色素、ローダミン系色素等の有機発光材料を添加することができる。その他、これらの有機発光材料以外でも、無機蛍光体、蛍光顔料、蛍光染料、量子ドット等の公知の発光材料を組み合わせて添加することも可能である。
【0107】
以下に、一般式(1)で表される化合物以外の有機発光材料の一例を以下に示すが、本発明は、特にこれらに限定されるものではない。
【0108】
【0109】
本発明の実施の形態に係る色変換組成物における発光材料の含有量は、化合物のモル吸光係数、発光量子収率および励起波長における吸収強度、ならびに作製する色変換組成物や色変換部材のサイズや厚み、透過率にもよるが、通常はバインダー樹脂の100重量部に対して、1.0×10-4重量部~30重量部である。中でも、1.0×10-3重量部~10重量部であることがさらに好ましく、5.0×10-3重量部~5重量部であることが特に好ましい。
【0110】
<バインダー樹脂>
本発明の実施の形態に係る色変換組成物において、バインダー樹脂は、成形加工性、透明性、耐熱性等に優れる材料が好適に用いられる。バインダー樹脂の例としては、例えば、アクリル酸系、メタクリル酸系、ポリケイ皮酸ビニル系、環ゴム系等の反応性ビニル基を有する光硬化型レジスト材料、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂(シリコーンゴム、シリコーンゲル等のオルガノポリシロキサン硬化物(架橋物)を含む)、ウレア樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロース樹脂、脂肪族エステル樹脂、芳香族エステル樹脂、脂肪族ポリオレフィン樹脂、芳香族ポリオレフィン樹脂等の公知のものが挙げられる。また、バインダー樹脂としては、これらの樹脂の混合物や共重合体を用いても構わない。これらの樹脂を適宜設計することで、本発明の実施の形態に係る色変換組成物に有用なバインダー樹脂が得られる。
【0111】
これらの樹脂の中でも、透明性および有機発光材料の分散性の観点から、アクリル樹脂、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル部位を含む共重合樹脂、ポリエステル樹脂、シクロオレフィン樹脂、エポキシ樹脂のいずれかであることが好ましい。
【0112】
バインダー樹脂のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されるものではないが、30℃以上180℃以下であることが好ましい。Tgが30℃以上の場合、光源からの入射光による熱や機器の駆動熱によるバインダー樹脂の分子運動が抑制され、発光材料の分散状態の変化が抑制されることで耐久性の悪化を防ぐことができる。また、Tgが180℃以下の場合、シート等に成形した場合の可撓性が確保できる。バインダー樹脂のTgは、より好ましくは50℃以上170℃以下であり、さらに好ましくは70℃以上160℃以下であり、特に好ましくは、90℃以上150℃以下である。
【0113】
バインダー樹脂の分子量は、樹脂の種類にもより、特に限定されるものではないが、3000以上1500000以下であることが好ましい。分子量が3000よりも小さい場合、樹脂が脆くなり、成形した場合の可撓性が低くなる。また、分子量が1500000よりも大きい場合、成形時の粘度が過度に大きくなることや、樹脂自体の化学的安定性が低下するといった問題がある。バインダー樹脂の分子量は、より好ましくは5000以上1200000以下であり、さらに好ましくは7000以上1000000以下であり、特に好ましくは、10000以上800000以下である。
【0114】
有機発光材料をバインダー樹脂中に分散させると、バインダー樹脂と有機発光材料との間の相互作用により、溶液の場合と比較して、発光のピーク波長が長波長側にシフトすることが多い。また、バインダー樹脂の溶解パラメータであるSP値と、有機発光材料の発光ピーク波長とには強い関係がある。SP値が大きいバインダー樹脂中では、バインダー樹脂と有機発光材料との間の相互作用により、有機発光材料の励起状態が安定化される。そのため、SP値が小さいバインダー樹脂中と比較して、この有機発光材料の発光ピーク波長は、長波長側にシフトする。したがって、有機発光材料を分散させるバインダー樹脂のSP値を最適化することで、有機発光材料の発光ピーク波長を最適化することが可能である。
【0115】
<添加剤>
本発明の実施の形態に係る色変換組成物は、前記発光材料およびバインダー樹脂以外に、酸化防止剤、加工および熱安定化剤、紫外線吸収剤等の耐光性安定化剤、可塑剤、エポキシ化合物等の架橋剤、アミン、酸無水物、イミダゾール等の硬化剤、シリカ粒子やシリコーン微粒子等の無機粒子およびシランカップリング剤等、の添加剤を含有することができる。
【0116】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。また、酸化防止剤は、単独で使用してもよく、複数併用してもよい。
【0117】
加工および熱安定化剤としては、例えば、リン系安定化剤を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。また、安定化剤は、単独で使用してもよく、複数併用してもよい。
【0118】
耐光性安定化剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール類を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。また、耐光性安定化剤は、単独で使用してもよく、複数併用してもよい。
【0119】
これらの添加剤は、光源からの光や発光材料の発光を阻害しないという観点から、可視域での吸光係数が小さいことが好ましい。具体的には、波長400nm以上800nm以下の波長域全域で、これらの添加剤のモル吸光係数εは、200以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましい。さらに好ましくは80以下であり、50以下であることが特に好ましい。
【0120】
また、耐光性安定化剤としては、一重項酸素クエンチャーとしての役割を持つ化合物も好適に用いることができる。一重項酸素クエンチャーは、酸素分子が光のエネルギーにより活性化してできた一重項酸素をトラップして不活性化する材料である。色変換組成物中に一重項酸素クエンチャーが共存することで、発光材料が一重項酸素により劣化することを防ぐことができる。
【0121】
一重項酸素クエンチャーとしての役割を持つ化合物としては、例えば、特定の、3級アミンおよび金属塩を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。また、これらの化合物(耐光性安定化剤)は、単独で使用してもよく、複数併用してもよい。
【0122】
また、耐光性安定化剤としては、ラジカルクエンチャーとしての役割を持つ化合物も好適に用いることができる。中でも、ヒンダードアミン系化合物が好適な例として挙げられる。
【0123】
本発明の実施の形態に係る色変換組成物において、これらの添加剤の含有量は、化合物のモル吸光係数、発光量子収率および励起波長における吸収強度、ならびに作製する色変換シートや色変換部材のサイズや厚み、透過率にもよるが、バインダー樹脂の100重量部に対して、1.0×10-3重量部以上であることが好ましく、1.0×10-2重量部以上であることがより好ましく、1.0×10-1重量部以上であることがさらに好ましい。また、これらの添加剤の含有量は、バインダー樹脂の100重量部に対して、30重量部以下であることが好ましく、15重量部以下であることがより好ましく、10重量部以下であることがさらに好ましい。
【0124】
<溶媒>
本発明の実施の形態に係る色変換組成物は溶媒を含んでいてもよい。流動状態の樹脂の粘度を調整でき、発光物質の発光および耐久性に過度な影響を与えないものであれば、特に限定されない。溶媒は、乾燥により除去することができる。このような溶媒として、例えば、水、2-プロパノール、エタノール、トルエン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ヘキサン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、テルピネオール、テキサノール、1,2-ジメトキシエタン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、1-メトキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられ、これらの溶媒を2種類以上混合して使用することも可能である。これらの溶媒の中で、特にトルエンは、一般式(2)で表される化合物の劣化に影響を与えない点で好適に用いられる。また、メチルエチルケトンや酢酸メチル、酢酸エチル、テトラヒドロフランは、乾燥後の残存溶媒が少ない点で好適に用いられる。
【0125】
<色変換シート>
本発明の実施の形態に係る色変換シートは、本発明の実施の形態に係る色変換組成物を硬化してなる色変換層を含む。また、本発明に係る色変換シートは少なくとも第1の有機発光材料および第2の有機発光材料に由来する赤色の発光を示す。
【0126】
また、本発明の実施の形態に係る色変換シートは、2層以上の色変換層を含むことができる。2層以上の色変換層を含む場合、該2層以上の色変換層の少なくとも1層が、本発明の実施の形態に係る色変換組成物を硬化してなる色変換層であることが好ましく、該色変換層以外の層のうち少なくとも1層が、励起光照射時にピーク波長が500nm以上580nm未満の領域に観測される発光を示す層であることがより好ましい。赤色の発光を示す層と緑色の発光を示す層を含む色変換シート、および、励起光として波長400nm以上500nm以下の範囲の光(青色の光)を用いた場合、励起光の一部がシートを透過するため、青・緑・赤の3色が揃い、白色光を得ることができる。
【0127】
さらに、前記励起光照射時にピーク波長が500nm以上580nm未満の領域に観測される発光を示す層が、一般式(1)で表される化合物を含む場合、緑色の光のスペクトルの半値幅が小さくなるため、色純度の良い白色光を得ることができ、好ましい。特に、青色光として発光ピークが鋭い青色LEDを使用した場合、さらに色純度の良い白色光を得ることができる。中でも、青色光として青色LEDを使用し、前記励起光照射時にピーク波長が500nm以上580nm未満の領域に観測される発光を示す層が、一般式(1)で表される化合物を含み、かつ、第1の有機発光材料と第2の有機発光材料の少なくとも一方が、一般式(1)で表される化合物である場合、青・緑・赤の各色において鋭い形状の発光スペクトルを示し、色純度の良い白色光を得ることができる。その結果、特にディスプレイにおいては、色彩が一層鮮やかであり且つより大きな色域を効率的に作ることができる。また、照明用途においては、現在主流となっている青色LEDと黄色蛍光体とを組み合わせた白色LEDに比べ、特に緑色領域および赤色領域の発光特性が改善されるため、演色性が向上した好ましい白色光源を得ることができる。
【0128】
<色変換組成物の製造方法>
以下に、本発明の実施の形態に係る色変換組成物の製造方法の一例を説明する。前述した有機発光材料、バインダー樹脂、後述する溶媒等の材料を所定量混合する。これらの材料を所定の組成になるよう混合した後、ホモジナイザー、自公転型攪拌機、3本ローラー、ボールミル、遊星式ボールミル、ビーズミル等の撹拌・混練機で均質に混合分散することで、色変換層作製用の組成物、すなわち、色変換組成物が作製される。混合分散後、もしくは混合分散の過程で、真空もしくは減圧条件下で脱泡することも好ましく行われる。また、ある特定の成分を事前に混合することや、エージング等の処理をしても構わない。エバポレーターによって溶媒を除去して所望の固形分濃度にすることも可能である。
【0129】
<色変換シートの作製方法>
本発明の実施の形態に係る色変換シートは、色変換組成物を硬化してなる層である色変換層を含んでいればその構成に限定はない。色変換シートの代表的な構造例として、
図1に示すように、基材層10と、色変換組成物を硬化することにより得られる色変換層11との積層体、または、
図2に示すように、色変換層11が複数の基材層10によって挟まれた積層体が挙げられる。色変換シート1には、色変換層の酸素、水分や熱による劣化を防ぐために、さらに
図3に示すようにバリア層12を設けても良い。
【0130】
また、前述のように、本発明の実施の形態に係る色変換シートは2層以上の色変換層を含むことができる。例えば、
図4に示すように、基材層10と、色変換層11Aおよび色変換層11Bとの積層体、または、
図5に示すように、色変換層11Aおよび色変換層11Bが複数の基材層10によって挟まれた積層体や
図6に示すように、色変換層11Aおよび色変換層11Bの間に透明中間層13を設けた積層体が挙げられる。また、色変換層11A/11A/11Bや色変換層11A/11B/11B、色変換層11A/11A/11B/11Bのように、同じ色変換層が連続する構成も挙げられる。
【0131】
なお、これらは例示であって本発明の実施の形態に係る色変換シートの具体的な構成はこれらに限られず、以下の説明から導かれる事項により適宜変更を加えた構成も本発明の範囲に含まれる。
【0132】
(色変換層)
次に、本発明の実施の形態に係る色変換シートの色変換層の製造方法の一例を説明する。上述した方法で作製した色変換組成物を基材層やバリア層等の下地上に塗布し、乾燥させる。塗布は、リバースロールコーター、ブレードコーター、スリットダイコーター、ダイレクトグラビアコーター、オフセットグラビアコーター、キスコーター、ナチュラルロールコーター、エアーナイフコーター、ロールブレードコーター、リバースロールブレードコーター、トゥーストリームコーター、ロッドコーター、ワイヤーバーコーター、アプリケーター、ディップコーター、カーテンコーター、スピンコーター、ナイフコーター等により、行うことができる。色変換層の膜厚均一性を得るためには、スリットダイコーターで塗布することが好ましい。
【0133】
色変換層の乾燥は、熱風乾燥機や赤外線乾燥機等の一般的な加熱装置を用いて行うことができる。色変換シートの加熱には、熱風乾燥機や赤外線乾燥機等の一般的な加熱装置が用いられる。この場合、加熱条件は、通常、40℃~250℃で1分~5時間、好ましくは60℃~200℃で2分~4時間である。また、ステップキュア等の段階的に加熱硬化することも可能である。
【0134】
色変換層を作製した後、必要に応じて基材層を変更することも可能である。この場合、簡易的な方法としては、例えば、ホットプレートを用いて貼り替えを行なう方法や、真空ラミネーターやドライフィルムラミネーターを用いた方法等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0135】
本発明の実施の形態に係る色変換シートが2層以上の色変換層を含む場合、各層を積層させる方法は、塗布やドライラミネート等、公知の方法を用いることができる。本発明において各層の積層方法は特に限定されないが、例えば、(L1)層と(L2)層という2つの色変換層を積層させる場合、(L1)層の上に(L2)層を塗布および乾燥により形成する手法や、(L2)層の上に(L1)層を塗布および乾燥により形成する手法、(L1)層の上に別途成形した(L2)層用自立フィルムを貼り合わせる手法、(L2)層の上に別途成形した(L1)層用自立フィルムを貼り合わせる手法、「基材層/(L1)層」という積層構造の積層ユニットと「(L2)層/基材層」という積層構造の積層ユニットとを貼り合わせる等のように、個々に作製した積層ユニットを貼り合わせる手法が挙げられる。色変換シートの安定性を高めるため、各層を積層させた後に、さらに熱硬化工程や光硬化工程、熟成工程等を行うことも好ましい。
【0136】
色変換層の厚みは、特に制限はないが、1μm~1000μmであることが好ましく、10μm~1000μmであることがより好ましい。色変換層の厚みが1μmより小さいと、色変換シートの強靭性が小さくなるという問題がある。色変換層の厚みが1000μmを超えると、クラックが生じやすくなり、色変換シート成形が難しい。色変換層の厚みとして、より好ましくは5μm~100μmであり、さらに好ましくは10μm~100μmであり、特に好ましくは15μm~100μmである。
【0137】
本発明における膜厚(層の厚み)は、JIS K7130(1999)プラスチック-フィルム及びシート-厚さ測定方法における機械的走査による厚さの測定方法A法に基づいて測定される膜厚(平均膜厚)のことをいう。
【0138】
(基材層)
基材層としては、特に制限無く、公知の金属、フィルム、ガラス、セラミック、紙等を使用することができる。具体的には、基材層として、アルミニウム(アルミニウム合金も含む)、亜鉛、銅、鉄等の金属板や箔、セルロースアセテート、PET、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、アラミド、シリコーン、ポリオレフィン、熱可塑性フッ素樹脂、テトラフルオロエチレンとエチレンとの共重合体(ETFE)等のプラスチックのフィルム、α-ポリオレフィン樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂およびこれらとエチレンとの共重合樹脂からなるプラスチックのフィルム、前記プラスチックがラミネートされた紙、または前記プラスチックによりコーティングされた紙、前記金属がラミネートまたは蒸着された紙、前記金属がラミネートまたは蒸着されたプラスチックフィルム等が挙げられる。また、基材層が金属板である場合、その表面にクロム系やニッケル系等のメッキ処理やセラミック処理が施されていてもよい。
【0139】
これらの中でも、色変換シートの作製のし易さや色変換シートの成形のし易さから、ガラスや樹脂フィルムが好ましく用いられる。また、フィルム状の基材層を取り扱う際に破断等の恐れがないように、強度が高いフィルムが好ましい。それらの要求特性や経済性の面で樹脂フィルムが好ましく、これらの中でも、経済性、取り扱い性の面でPET、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリプロピレンからなる群より選ばれるプラスチックフィルムが好ましい。また、色変換シートを乾燥させる場合や色変換シートを押し出し機により200℃以上の高温で圧着成形する場合は、耐熱性の面でポリイミドフィルムが好ましい。シートの剥離のし易さから、基材層は、予め表面が離型処理されていてもよい。同様に、層間の接着性の向上のため、基材層は、予め表面が易接着処理されていてもよい。
【0140】
基材層の厚さは、特に制限はないが、下限としては12μm以上が好ましく、38μm以上がより好ましい。また、上限としては5000μm以下が好ましく、3000μm以下がより好ましい。
【0141】
(バリア層)
本発明の実施の形態に係る色変換シートは、バリア層を更に有していてもよい。バリア層は、色変換層に対して酸素、水分や熱による劣化を防ぐために適宜用いられる。このバリア層としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化イットリウム、酸化マグネシウム等の無機酸化物や、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、炭化窒化ケイ素等の無機窒化物、またはこれらの混合物、またはこれらに他の元素を添加した金属酸化物薄膜や金属窒化物薄膜、あるいはポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、酢酸ビニルのケン化物等のポリビニルアルコール系樹脂等の各種樹脂から成る膜を挙げることができる。
【0142】
本発明において、バリア層は、
図3に例示したバリア層12のように色変換層11の積層方向両側の各端面に設けられてもよいし、積層方向両側のうち一端面に設けられてもよい。また、2層以上の色変換層を含む場合、
図7に例示したバリア層12のように、色変換層11Aおよび色変換層11Bの両面に設けられてもよいし、片面だけに設けられてもよい。また、
図8に例示したバリア層12のように、色変換層11Aの両面と色変換層11Bの両面の両方に設けられてもよい。
【0143】
(その他の機能性層)
本発明の実施の形態に係る色変換シートには、要求される機能に応じて、光拡散層、反射防止機能、防眩機能、反射防止防眩機能、ハードコート機能(耐摩擦機能)、帯電防止機能、防汚機能、電磁波シールド機能、赤外線カット機能、紫外線カット機能、偏光機能、調色機能を有した補助層をさらに設けてもよい。
【0144】
(接着層)
本発明の実施の形態に係る色変換シートにおいて、それぞれの層の間には、必要に応じて接着層を設けてもよい。接着層としては、色変換シートの発光および耐久性に過度な影響を与えないものであれば、特に制限無く、公知の材料を用いることができる。例えば、強固な接着が必要な場合、接着層としては、光硬化材料や熱硬化材料、嫌気性硬化材料、熱可塑性材料を好ましく用いることができる。中でも、熱硬化材料がより好ましく、特に、0℃~150℃での硬化が可能である熱硬化材料が好ましい。
【0145】
接着層の厚みは、特に制限はないが、0.01μm~100μmであることが好ましく、より好ましくは0.01μm~25μmである。さらに好ましくは、0.05μm~5μmであり、特に好ましくは、0.05μm~1μmである。
【0146】
<励起光>
励起光の種類は、本発明に用いられる有機発光材料が吸収可能な波長領域に発光を示すものであれば、いずれの励起光でも用いることができる。例えば、熱陰極管や冷陰極管、無機エレクトロルミネッセンス(EL)素子等の蛍光性光源、有機EL素子光源、LED光源、白熱光源、あるいは太陽光等、いずれの光源からの励起光でも利用可能である。中でも、LED光源からの励起光が好適である。ディスプレイや照明用途では、青色光の色純度を高められる点で、400nm以上500nm以下の波長範囲の励起光を持つ青色LED光源からの励起光が、さらに好適である。
【0147】
励起光の極大発光波長としては、430nm以上500nm以下であることが、励起エネルギーがより小さくなり、有機発光材料の劣化を抑止できるため、より好ましく、440nm以上500nm以下であることがさらに好ましい。特に好ましくは450nm以上500nm以下である。また、励起光の極大発光波長としては、励起光と緑色光との発光スペクトルの重なりを小さくし、色再現性を向上させることができるため、480nm以下であることがより好ましく、470nm以下であることがさらに好ましい。
【0148】
励起光は、1種類の発光ピークを持つものでもよく、2種類以上の発光ピークを持つものでもよいが、色純度を高めるためには、1種類の発光ピークを持つものが好ましい。また、発光ピークの種類の異なる複数の励起光源を任意に組み合わせて使用することも可能である。
【0149】
<光源ユニット>
本発明の実施の形態に係る光源ユニットは、少なくとも上述の光源および色変換組成物または色変換シートを備える構成である。光源ユニットが色変換組成物を備える場合は、光源と色変換組成物との配置方法については特に限定されず、光源に色変換組成物を直接塗布した構成を取ってもよいし、光源とは離したフィルムやガラス等に色変換組成物を塗布した構成を取ってもよい。光源ユニットが色変換シートを備える場合は、光源と色変換シートとの配置方法については特に限定されず、光源と色変換シートとを密着させた構成を取ってもよいし、光源と色変換シートとを離したリモートフォスファー形式を取ってもよい。また、光源ユニットは、色純度を高める目的で、さらにカラーフィルターを備える構成を取ってもよい。
【0150】
前述の通り、波長400nm以上500nm以下の範囲の励起光は、比較的小さい励起エネルギーであり、一般式(1)で表される化合物等の発光物質の分解を防止できる。したがって、光源ユニットが備える光源は、波長400nm以上500nm以下の範囲に極大発光を有する発光ダイオードであることが好ましい。さらに、この光源は、波長430nm以上480nm以下の範囲に極大発光を有することが好ましく、波長450nm以上470nm以下の範囲に極大発光を有することが、さらに好ましい。本発明における光源ユニットは、ディスプレイ、照明、インテリア、標識、看板等の用途に使用できるが、特にディスプレイや照明用途に好適に用いられる。
<ディスプレイ、照明装置>
本発明の実施の形態に係るディスプレイは、少なくとも、上述したように光源および色変換シート等を含む光源ユニットを備える。例えば、液晶ディスプレイ等のディスプレイには、バックライトユニットとして、上述の光源ユニットが用いられる。
【0151】
また、本発明の実施の形態に係る照明装置は、少なくとも、上述したように光源および色変換シート等を含む光源ユニットを備える。例えば、この照明装置は、光源ユニットとしての青色LED光源と、この青色LED光源からの青色光をこれよりも長波長の光に変換する色変換シートまたは色変換組成物とを組み合わせて、白色光を発光するように構成される。
【実施例】
【0152】
以下、実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0153】
下記の実施例および比較例において、化合物R-1、R-2、R-3、G-1は以下に示す化合物である。ただし、化合物R-1、R-2、R-3、G-1は、公知の手法を用いて合成して使用した。
【0154】
【0155】
化合物R-1、R-2、R-3、G-1のトルエン溶液(1.0×10-5mоl/L)の蛍光スペクトル測定により測定した発光のピーク波長を表1に示す。測定には、蛍光分光光度計FluoroMax-4(HORIBA, Ltd.)を用いた。
【0156】
【0157】
また色変換特性、光耐久性に関する評価方法を下記に示す。
【0158】
<色変換特性の測定>
色変換特性の測定では、発光ピーク波長457nmの青色LED素子を搭載した面状発光装置に各色変換部材およびプリズムシートを載せた状態で、この面状発光装置に30mAの電流を流して、この青色LED素子を点灯させ、分光放射輝度計(CS-1000、コニカミノルタ社製)を用いて、発光スペクトル、色度および輝度を測定した。
【0159】
<色域の算出>
上記色変換特性の測定によって得られた発光スペクトルと、カラーフィルターの透過率のスペクトルデータとから、カラーフィルターにより色純度を向上させた場合の(u’,v’)色空間における色域を算出した。また、算出された(u’,v’)色空間における色域の面積は、BT.2020規格の色域面積を100%とした場合の割合により、以下の基準で評価した。この(u’,v’)色空間における色域の面積の評価結果として、「A」は、上記の割合が94%以上であることを示す。「B」は、上記の割合が92%以上94%未満であることを示す。「C」は、上記の割合が90%以上92%未満であることを示す。「D」は、上記の割合が90%未満であることを示す。この評価結果において、上記の割合が高いほど、色域が広く、色変換シートの色再現性が良好である。
【0160】
実施例1
本発明の実施例1では、バインダー樹脂としてポリエステル樹脂T11を用い、第1の有機発光材料として化合物R-1を、第2の有機発光材料として化合物R-2を用いた。このバインダー樹脂の100重量部に対して、化合物R-1とR-2を合わせて0.01重量部、溶剤としてメチルエチルケトンを100重量部となるように混合した。その際、化合物R-1とR-2の混合モル比が75:25となるように調整した。その後、これらの混合物を、遊星式撹拌・脱泡装置“マゼルスター”KK-400(クラボウ製)を用いて300rpmで20分間撹拌・脱泡し、これにより、赤色発光層作製用の色変換組成物を得た。
【0161】
同様に、バインダー樹脂としてアクリル樹脂T21を用い、このバインダー樹脂の100重量部に対して、化合物G-1を0.5重量部、溶剤としてトルエンを300重量部、混合した。その後、これらの混合物を、遊星式撹拌・脱泡装置“マゼルスター”KK-400(クラボウ製)を用いて300rpmで20分間撹拌・脱泡し、これにより、緑色発光層作製用の色変換組成物を得た。
【0162】
ついで、スリットダイコーターを用いて、緑色発光層作製用の色変換組成物を、基材層Aである“ルミラー”U48(東レ株式会社製、厚さ50μm)上に塗布し、100℃で20分加熱、乾燥して、平均膜厚20μmの緑色発光層を形成した。このようにして、基材層Aと緑色発光層とを含む積層体のユニットを作製した。
【0163】
同様に、スリットダイコーターを用いて、赤色発光層作製用の色変換組成物を、基材層Bと光拡散層とを備えた光拡散フィルムである ケミカルマット125PW(株式会社きもと製、厚さ138μm)のPET基材層側(基材層B側)に塗布し、100℃で20分加熱、乾燥して、平均膜厚11μmの赤色発光層を形成した。このようにして、光拡散層と基材層Bと赤色発光層とを含む積層体のユニットを作製した。
【0164】
次に、上記2つのユニットを、緑色発光層と赤色発光層とが直接積層されるように加温ラミネートした。これにより、「基材層A/緑色発光層/赤色発光層/基材層B/光拡散層」という構成の色変換シートを作製した。
【0165】
この色変換シートを用いて発光ピーク波長447nmの青色LED光を色変換させたところ、発光スペクトルは
図9に示す通り赤色領域と緑色領域と青色領域とに鋭い発光ピークを示し、XY色座標が(X,Y)=(0.25,0.22)である白色光が得られた。緑色光の発光領域のみを抜粋すると、ピーク波長528nm、ピーク波長における発光スペクトルの半値幅29nmの高色純度緑色発光が得られた。また、赤色光の発光領域のみを抜粋すると、ピーク波長643nm、ピーク波長における発光スペクトルの半値幅53nmの高色純度赤色発光が得られた。(u’,v’)色空間における色域の面積は、BT.2020規格の色域面積に対して94%であった。実施例1の評価結果は、後述の表2に示す。表2において、「色座標(X,Y)」は、XY色座標の値である。「色域面積」は、(u’,v’)色空間における色域の面積である。また、「色域面積」欄の「A」~「D」は、この色域の面積の評価結果を示すものである。表2において、「相対輝度」とは、後述の比較例1における輝度を100%としたときの相対値である。これらのことは、各表について同様である。
【0166】
実施例2~4および比較例1,2
本発明の実施例2~4および本発明に対する比較例1、2では、赤色発光層作製用の色変換組成物において、化合物R-1、R-2、R-3の混合モル比を表2に示す通りに変更し、緑色発光層および赤色発光層の膜厚を、XY色座標が(X,Y)=(0.25,0.22)となるように調整した以外は、実施例1と同様にして色変換シートを作製して評価した。評価結果は、表2に示す。
【0167】
【符号の説明】
【0168】
1 色変換シート
10 基材層
11 色変換層
11A 色変換層
11B 色変換層
12 バリア層
13 透明中間層