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特許7290132活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去材料
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  • 特許-活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去材料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去材料
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20230606BHJP
   B01D 15/00 20060101ALI20230606BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
A61M1/36 165
B01D15/00 M
B01J20/26 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020049013
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021145918
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小町 駿介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 博
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-136499(JP,A)
【文献】国際公開第2018/047929(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
B01D 15/00
B01J 20/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミド基を含むリガンドを有する繊維からなる編地又は織地を含み、
該編地の編目又は該織地の織目一つ当たりの平均開孔面積は、0.080mm以上0.100mm以下である、活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去材料。
【請求項2】
前記編地は、よこ編編地であり、
前記編目における開孔部の縦横比は、0.75~1.30である、請求項1記載の除去材料。
【請求項3】
前記繊維は、ポリスチレン又はポリスチレン誘導体を含む、請求項1又は2記載の除去材料。
【請求項4】
前記繊維は、海島複合繊維であり、
該海島複合繊維の海成分は、ポリスチレン又はポリスチレン誘導体であり、
該海島複合繊維の島成分は、ポリプロピレンである、請求項1~3のいずれか一項記載の除去材料。
【請求項5】
前記平均開孔面積は、0.083mm以上0.089mm以下である、請求項1~4のいずれか一項記載の除去材料。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項記載の除去材料を備える、血液浄化器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去材料に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺傷害(ALI)、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、クローン病等の炎症性疾患の治療方法として、サイトカイン等の炎症性物質の供給源である白血球や血小板等の血液成分を生体内から除去可能な材料を用いた体外循環療法が用いられている。
【0003】
体外循環療法をする場合、一般的に、治療患者の血液中からリンパ球が除去されると治療患者の免疫機能が低下し、治療中や治療後に感染症を発症するリスクにつながる。そのため、体外循環療法に血液成分除去材料を用いる場合、除去材料によるリンパ球の除去量は少ない方が望ましい。
【0004】
近年、炎症性疾患を引き起こす新しい原因物質として、活性化顆粒球-活性化血小板複合体が注目されている。活性化顆粒球-活性化血小板複合体は、顆粒球単独又は活性化顆粒球単独と比較して炎症反応を呈している組織への遊走能が高く、活性化顆粒球と活性化血小板との相互作用により、顆粒球単独又は活性化顆粒球単独と比較して炎症性物質の放出量が増加することが報告されている(非特許文献1)。
【0005】
体外循環療法に用いることができる材料として、例えば、特許文献1には、アミド基量を規定した活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去材料が開示されている。
【0006】
特許文献2には、編地の開口率及び充填密度を規定した血液成分吸着カラムが開示されている。
【0007】
特許文献3には、アミド基量とアミノ基量を規定した活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去性能を有する血液浄化用の材料が開示されている。
【0008】
特許文献4には、顆粒球及び単球の選択的除去材を製造するためのエチレン-ビニルアルコール共重合体を含む組成物からなる多孔質粒子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2019-136499号公報
【文献】特開2018-102659号公報
【文献】国際公開2018/047929号
【文献】特開2010-233825号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】Alexander Zarbockら、J. Clin. Invest. 2006年、第116巻、P.3211-3219
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1の実施例において用いた繊維の平均開孔面積は、その製法から0.041~0.045mm程度と推定され、体外循環療法に使用した際に、リンパ球が除去されると考えられる。また、特許文献1では、特定のアミド基構造により血球除去を制御しているが、平均開孔面積に関する記載は一切なく、アミド基量と平均開孔面積との関連性や平均開孔面積と白血球除去性能との関連性は一切示唆されていない。さらに、特許文献1中には、リンパ球の除去を抑制することに関連する記述はない。
【0012】
特許文献2記載の血液成分吸着カラムは、除去対象としてリンパ球(白血球)の記載があり、リンパ球の除去を抑制する発想はない。さらに、実施例において用いた繊維の平均開孔面積はその製法から0.079mm以下と推定される。特許文献2には、上記血液成分吸着カラムと活性化顆粒球-活性化血小板複合体の関係、さらに活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去に関して一切記載がない。また、白血球と活性化顆粒球-活性化血小板複合体とでは血球表面に発現しているタンパク質の種類が異なり、血球の大きさも異なるため、白血球を除去する場合と活性化顆粒球-活性化血小板複合体を除去する場合とで、そのメカニズムは同一ではないと考えられる。
【0013】
特許文献3記載の血液浄化用の材料は、除去対象として白血球成分の記載があり、リンパ球の除去を抑制する発想はない。さらに、実施例において用いた繊維の平均開孔面積はその製法から0.008~0.027mm程度と推定され、体外循環療法に使用した際に、リンパ球が除去されると考えられる。
【0014】
特許文献4記載の除去材は、多孔質粒子であることを特徴としており、平均開孔面積の概念はない。また、顆粒球及び単球と活性化顆粒球-活性化血小板複合体とでは血球表面に発現しているタンパク質の種類が異なり、血球の大きさも異なるため、顆粒球及び単球を除去する場合と活性化顆粒球-活性化血小板複合体を除去する場合とで、そのメカニズムは同一ではないと考えられる。
【0015】
以上のような背景の下、リンパ球の除去を抑制し、かつ、活性化顆粒球-活性化血小板複合体を除去できる材料の開発が切望されている。
【0016】
そこで本発明は、リンパ球の除去を抑制し、かつ、活性化顆粒球-活性化血小板複合体を選択的に除去できる材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは上記課題を解決すべく、検討を進めた結果、アミド基を含むリガンドを有し、特定の平均開孔面積を有する繊維材料が、活性化顆粒球-活性化血小板複合体を選択的に除去できることを見出した。
【0018】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[6]を包含する。
[1] アミド基を含むリガンドを有する繊維からなる編地又は織地を含み、該編地の編目又は該織地の織目一つ当たりの平均開孔面積は、0.080mm以上0.100mm以下である、活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去材料。
[2] 上記編地は、よこ編編地であり、上記編目における開孔部の縦横比は、0.75~1.30である、[1]記載の除去材料。
[3] 上記繊維は、ポリスチレン又はポリスチレン誘導体を含む、[1]又は[2]記載の除去材料。
[4] 上記繊維は、海島複合繊維であり、該海島複合繊維の海成分は、ポリスチレン又はポリスチレン誘導体であり、該海島複合繊維の島成分は、ポリプロピレンである、[1]~[3]のいずれかに記載の除去材料。
[5] 上記平均開孔面積は、0.083mm以上0.089mm以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の除去材料。
[6] [1]~[5]のいずれかに記載の除去材料を備える、血液浄化器。
【発明の効果】
【0019】
本発明の除去材料は、炎症性疾患の患者等の血液中に含まれるリンパ球の除去を抑制し、活性化顆粒球-活性化血小板複合体を選択的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】編地形状の活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去材料における開孔部を示す図である。
図2】織地形状の活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去材料における開孔部を示す図である。
図3】編地形状の活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去材料において、開孔部の縦横比の算出方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0022】
本発明の活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去材料は、アミド基を含むリガンドを有する繊維からなる編地又は織地を含み、該編地の編目又は該織地の織目一つ当たりの平均開孔面積は、0.080mm以上0.100mm以下であることを特徴としている。
【0023】
「編地」とは、繊維を編むことによりつくられる構造体である。編地の編成方法に特に制限はない。例えば、よこ編編地(平編編地、ゴム編編地、パール編編地)やたて編編地(シングルトリコット編編地、シングルコード編編地、シングルアトラス編編地)が挙げられるが、血球の透過に適した開孔部形状の観点から、よこ編編地が好ましい。
【0024】
「織地」とは、繊維を織ることによりつくられる構造体である。織地の織成方法に特に制限はない。例えば、平織織地、綾織織地、畳織織地、綾畳織織地が挙げられるが、血球の透過に適した開孔部形状の観点から、平織織地又は綾織織地が好ましい。
【0025】
「編目」とは、編地を構成する繊維のループの組み合わせにより囲まれてできる構造であり、開孔部を有する。
【0026】
「織目」とは、織地を構成する経糸及び緯糸に囲まれてできる構造であり、開孔部を有する。
【0027】
「開孔部」とは、平面に接地させた1枚の編地又は織地を真上から見た際に、編地又は織地を構成する繊維が存在しない領域のことを指し、一つの編目又は織目は一つの開孔部を有する。例えば、図1の「1」や「2」、図2の「4」が開孔部である。ここで、平面に接地させた1枚の編地又は織地とは、編地又は織地を構成する繊維のどの一部をとっても、反り、重なり、撚れ又は折れなどのない編地又は織地を指す。また、編地又は織地の端部を含む部分は、繊維が存在しない部分であっても「開孔部」とはみなさない。
【0028】
「平均開孔面積」とは、編地の編目又は織地の織目一つ当たりの開孔部の面積の平均値である。平均開孔面積を算出する際に測定する開孔部の数は、100個以上である必要がある。平均開孔面積の測定方法を以下に示す。平面に接地させた1枚の編地又は織地を真上から見た画像を取得し、取得した画像から画像解析ソフトImageJ(アメリカ国立衛生研究所)を用いて、編地の編目又は織地の織目一つ当たりの開孔部の面積を解析する。開孔部の面積の解析方法は、次の通りである。はじめに「Threshоld」機能で画像を二値化することで、開孔部のみを抽出する。次に、解析する範囲を選択し「Analyse Particles(Sizeは0.001mm~0.5mmに設定)」を実行する。算出された開孔部の面積(Areaとして出力される)の平均値(Average Sizeとして出力される)を平均開孔面積とする。なお、解析する範囲として、編地又は織地の端部を含む範囲を選択してはならない。ここで、活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去率とリンパ球の除去率の比が高いことにより、リスクを低減した体外循環治療を達成できる。そのため、平均開孔面積は、0.080mm以上0.100mm以下である必要があり、0.083mm以上0.089mm以下が好ましい。
【0029】
「開孔率」とは、平面に接地させた1枚の編地又は織地を真上から見た際に、視野中に開孔部が占める割合を指す。また、開孔率を測定する際の視野内には、開孔部が100個以上含まれている必要がある。開孔率の測定方法を以下に示す。平面に接地させた1枚の編地又は織地を真上から見た画像を取得し、取得した画像から画像解析ソフトImageJ(アメリカ国立衛生研究所)を用いて、開孔率を算出する。はじめに「Threshоld」機能で画像を二値化することで、開孔部のみを抽出する。次に、解析する範囲を選択し「Analyse Particles(Sizeは0.001mm~0.5mmに設定)」を実行し、開孔面積を求める。解析範囲の面積に占める、開孔面積の総和(Tоtal Areaとして出力される)の割合を開孔率(%Areaとして出力される)とする。なお、解析する範囲として、編地又は織地の端部を含む範囲を選択してはならない。
【0030】
「開孔部の縦横比」とは、編地の開孔部のウェール方向の長さを開孔部のコース方向の長さで除した値の平均値である。ここで、開孔部のウェール方向の長さとは、開孔部内にひくことができるウェール方向と平行な直線の長さの最大値(図3の開孔部「7」の場合は「8」の長さ)を指す。開孔部のコース方向の長さとは、開孔部内にひくことができるコース方向と平行な直線の長さの最大値(図3中の開孔部「7」の場合は「9」の長さ)を指す。したがって、開孔部の縦横比とは、開孔部のウェール方向の長さの最大値を、開孔部のコース方向の長さでの最大値で除した値の平均値ということもできる。ランダムに選んだ10個の開孔部について、各開孔部の開孔部のウェール方向の長さと開孔部のコース方向の長さを測定し、開孔部のウェール方向の長さを開孔部のコース方向の長さで除した値を算出し、得られた10個の値の平均値を開孔部の縦横比とする。開孔部の縦横比は、除去性能の観点から0.75~1.30が好ましく、0.85~1.15がより好ましい。
【0031】
編地の平均開孔面積、開孔率、開孔部の縦横比は、編立に使用する編機の編針の針密度や度目調整目盛の値により制御することができる。例えば、針密度を下げると、編地の開孔部のコース方向の長さが短くなるため、平均開孔面積及び開孔率は小さくなり、開孔部の縦横比は大きくなる。また、度目調整目盛の値を大きくすると、編地の開孔部のウェール方向の長さが長くなるため、平均開孔面積及び開孔率は大きくなり、開孔部の縦横比も大きくなる。
【0032】
織地の平均開孔面積、開孔率は、経糸密度、緯糸密度、繊維径により制御することができる。例を挙げると、平均開孔面積あるいは開孔率を大きくする方法として、経糸密度を下げる、緯糸密度を下げる、繊維径を細くする方法がある。
【0033】
編地又は織地を構成する繊維は、単一の成分からなる繊維であっても、複数の成分からなる繊維であってもよい。繊維へのリガンドの付与のしやすさから、繊維は、その成分として、ポリスチレン又はポリスチレン誘導体を含むことが好ましい。ここで、ポリスチレン誘導体とは、ポリスチレンの一部(例:ベンゼン環)が官能基により置換されているポリマーのことを指し、一例として、ポリp-クロロメチルスチレン、ポリα-メチルスチレン、ポリβ-メチルスチレン、ポリp-tert-ブトキシスチレン、ポリp-アセトキシスチレン、ポリp-(1-エトキシエトキシ)スチレンなどが挙げられる。繊維の成分としてポリスチレン又はポリスチレン誘導体を含む場合は、加工性の観点から、補強材を用いることが好ましい。
【0034】
補強材を用いた繊維の形態としては特に制限はなく、補強材と他の成分とをブレンドした繊維や、補強材を芯材とした芯鞘繊維、補強材を島成分とした海島複合繊維等が挙げられるが、繊維表面への除去物質の吸着性の確保の観点から、補強材を芯材とした芯鞘繊維や補強材を島成分とした海島複合繊維が好ましく、繊維の強度向上効果が高い海島複合繊維がより好ましい。
【0035】
海島複合繊維とは、あるポリマーからなる島成分が、別種のポリマーからなる海成分の中に点在する断面構造を有している繊維である。
【0036】
海成分とは、海島複合繊維の表面側に存在するポリマーを意味する。
【0037】
上記繊維が海島複合繊維の場合、その海成分は、ポリスチレン又はポリスチレン誘導体であることが好ましい。
【0038】
島成分とは、海島複合繊維の繊維軸方向に対して垂直方向に見たとき、海成分中に点在している、海成分とは別種のポリマーを意味する。
【0039】
上記繊維が海島複合繊維の場合、その島成分は、繊維の強度を確保する観点からポリプロピレン、ポリカーボネート又はポリエチレンから選択されることが好ましい。海島複合繊維の好ましい実施形態としては、例えば、海成分がポリスチレン又はポリスチレン誘導体であり、島成分がポリプロピレンである海島複合繊維が挙げられる。
【0040】
「アミド基を含むリガンド」とは、活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去性能を付与するために、繊維に付与したアミド基を含む化学構造を意味する。アミド基を含むリガンドの構造は、アミド基を少なくとも1つ含む化学構造であれば、特に制限はないが、血球除去性能の発現の観点からアミド基周辺の立体障害が少ないことが好ましい。そのため、アミド基に隣接する化学構造に環状構造(例:芳香族炭化水素又は環状炭化水素及びその置換体)を含まないことが望ましい。アミド基を含むリガンドの好ましい一態様としては、アミド基に隣接する化学構造が、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、すなわち、アミド基を含むリガンドとして、アセトアミドアルキル基(例えば、アセトアミドメチル基)やハロゲン化アセトアミドアルキル基(例えば、クロロアセトアミドメチル基、クロロプロピオンアミドメチル基、クロロアセトアミドエチル基など)が挙げられ、クロロアセトアミドメチル基が好適である。
【0041】
アミド基を含むリガンドの繊維への付与方法として、アミド基を含むリガンドを有するポリマーを繊維化する方法や、重合反応後のポリマーを繊維化した後に、得られた繊維にリガンドを導入する方法があるが、重合反応後のポリマーを繊維化した後に、得られた繊維にリガンドを導入する方法が好ましい。アミド基を含むリガンドを有するポリマーを繊維化する場合、側鎖構造にアミド基を含むモノマーを重合させ、得られたポリマーを繊維化してもよいし、重合反応後にアミド基を結合させ、その後に繊維化してもよい。アミド基を含むリガンドを有するポリマーを繊維化する方法としては、例えば、ポリスチレンとN-ヒドロキシメチル-2-クロロアセトアミドを反応させることで、クロロアセトアミドメチル基が結合したポリスチレンを合成し、合成したクロロアセトアミドメチル化ポリスチレンを繊維化する方法が挙げられる。重合反応後のポリマーを繊維化した後に、得られた繊維にリガンドを結合する場合、繊維にアミド基を含むリガンドを結合させる方法や繊維と化合物を反応させることでアミド結合を生成する方法が挙げられるが、繊維にアミド基を含むリガンドを結合する方法が好ましい。繊維にアミド基を含むリガンドを結合させる方法としては、例えば、芳香族炭化水素構造を有する繊維表面に、アミド基を含むハロゲン化炭化水素誘導体を反応させる方法が挙げられる。例えば、海成分がポリスチレン、島成分がポリプロピレンである海島複合繊維の場合、ポリスチレンとN-ヒドロキシメチル-2-クロロアセトアミドを反応させることで、リガンドであるクロロアセトアミドメチル基が海成分であるポリスチレンに結合した海島複合繊維を得ることができる。繊維と化合物を反応させることでアミド結合を生成させる方法としては、カルボン酸構造を有する繊維表面にアミンを反応させる方法やアミン構造を有する繊維表面にカルボン酸を反応させる方法、ニトリル繊維を酸加水分解する方法などが挙げられる。また、アミド基を含むリガンドに影響のない範囲であれば、さらなる化学修飾をすることが可能である。例えば、クロロアセトアミドメチル基を付与したポリスチレンのクロロ基にテトラエチレンペンタミン等のポリアミンを付与することもできる。
【0042】
繊維とアミド基を含むリガンドとの結合様式に関して、特に制限はないが、繊維との結合の安定性の観点から、イオン結合、水素結合又はファンデルワールス結合により、繊維とリガンドとが結合していることが好ましく、共有結合又はイオン結合により直接結合していることがより好ましい。アミド基を含むリガンドは繊維表面に結合していることが好ましい。
【0043】
本明細書において、活性化顆粒球-活性化血小板複合体は、活性化顆粒球と活性化血小板とが結合した複合体であれば特に限定はされない。炎症性疾患の患者においては、活性化顆粒球-活性化血小板複合体は、自己組織への貪食及びサイトカインの放出により病態に直接関与していると考えられる。そのため、活性化顆粒球-活性化血小板複合体を除去することが、炎症性疾患の治療に必要と考えられる。活性化顆粒球-活性化血小板複合体の濃度の測定は、例えば、活性化顆粒球-活性化血小板複合体を含む液体に、活性化血小板と特異的に結合する活性化検出試薬と、活性化顆粒球と特異的に結合する活性化検出試薬を反応させ、両方の試薬と結合した血球分画を測定することにより行われる。当該測定には、フローサイトメーターを用いることができる。
【0044】
「活性化顆粒球」とは、サイトカインやlipopolysaccharide(以下、LPS)等によりサイトカインや活性酸素、タンパク質分解酵素等を放出する顆粒球を意味し、例えば、活性化好中球が挙げられる。活性化の程度は、顆粒球が放出するサイトカイン量や活性酸素量、タンパク質分解酵素量を測定することで判別できる。また、活性化顆粒球と活性化していない顆粒球の表面抗原は異なるため、活性化顆粒球特有の表面抗原の発現を免疫蛍光染色法やフローサイトメトリー法等で測定することでも判別でき、例えば、CD11b(activated)陽性の顆粒球を活性化顆粒球とすることができる。
【0045】
「活性化血小板」とは、サイトカイン、アデノシン二リン酸及びセロトニン等を放出する血小板を意味する。活性化の程度は、血小板が放出するサイトカイン量を測定することで判別できる。また、活性化血小板と活性化していない血小板の表面抗原は異なるため、活性化血小板特有の表面抗原の発現を免疫蛍光染色法やフローサイトメトリー法等で測定することでも判別でき、例えば、CD62P陽性血小板を活性化血小板とすることができる。
【0046】
本発明の活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去材料は、活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去用の体外循環カラム向けの担体として利用できる。
【0047】
また、本発明は、上記の活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去材料を備える血液浄化器を提供することを特徴としている。
【0048】
「血液浄化器」とは、血液を体外に循環させて、血液中の老廃物や有害物質を取り除くことを目的とする医療材料を少なくとも一部に有する製品のことをいい、例えば、編地や織地を充填した体外循環カラムが挙げられる。
【0049】
さらに、上記の活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去材料を備える血液浄化器は、炎症性疾患の治療用途に好適に用いることができる。炎症性疾患治療用として使用する場合、上記の活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去材料を備える血液浄化器と患者とを血液回路で接続し、本発明の血液浄化器に当該患者から取り出した血液を通過させ、これを患者に戻すという血液体外循環方法が好ましい。
【0050】
上記の活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去材料を備える血液浄化器は、他の体液処理方法や医療機器、医薬品と併用しても構わない。他の体液処理方法や医療機器、医薬品としては、例えば、血漿交換、腹膜透析、血漿分離器、ヘモフィルター、人工心肺又はECMO(Extracorporeal membrane oxygenation)、抗凝固剤、血小板製剤、昇圧剤が挙げられる。
【0051】
上記の活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去材料の、活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去性能やリンパ球の除去性能の評価方法としては、例えば、活性化顆粒球-活性化血小板複合体やリンパ球を含む液体に上記除去材料を含浸し、含浸後に液体中の活性化顆粒球-活性化血小板複合体とリンパ球の減少量を評価し、それらの除去率をそれぞれ算出する方法が挙げられる。また、入口及び出口を有する容器に上記除去材料を充填し、活性化顆粒球-活性化血小板複合体、リンパ球を含む液体を通液させて、入口及び出口でのそれらの濃度の変化からそれらの除去率をそれぞれ算出する方法を用いることもできる。
【0052】
リンパ球の濃度の測定は、例えば、リンパ球を含む液体にリンパ球検出試薬を反応させ、試薬と結合した血球分画を測定することにより行われる。当該測定には、フローサイトメーターや血球計算機を用いることができる。
【0053】
血小板の濃度の測定は、例えば、血小板を含む液体に血小板検出試薬を反応させ、試薬と結合した血球分画を測定することにより行われる。当該測定には、フローサイトメーターや血球計算機を用いることができる。
【0054】
活性化血小板検出試薬は、非活性化血小板及び顆粒球と結合せず、活性化血小板と結合性を有するものであり、例えば、活性化血小板特異的な細胞表面マーカーを認識する抗CD62P抗体)を用いることができる。また、活性化顆粒球検出試薬は、非活性化顆粒球及び血小板と結合せず、活性化顆粒球と結合性を有するものであり、所望の白血球成分に特異的な又は共通の細胞表面マーカーの抗体が挙げられ、活性化顆粒球の検出試薬としては、例えば、抗CD11b抗体を用いることができる。なかでも、活性化したコンフォメーションを特異的に検出することができるactivated抗CD11b抗体を用いることで活性化顆粒球を特異的に検出することが可能となる。また、顆粒球及びリンパ球の検出には抗CD45抗体を用いることができる。顆粒球の検出には、前方散乱光と側方散乱光を組み合わせてもよいが、抗CD45抗体と側方散乱光を組み合わせてもよく、抗CD45抗体と抗CD66b抗体を組み合わせてもよい。リンパ球の検出には、前方散乱光と側方散乱光を組み合わせてもよいが、抗CD45抗体と側方散乱光を組み合わせてもよく、抗CD4抗体や抗CD8抗体を組み合わせてもよく、また、CD45陽性細胞からCD66b陽性細胞とCD14陽性細胞を差し引いた細胞集団をリンパ球とすることも可能である。血小板の検出には抗CD41抗体を用いることができる。
【0055】
上記検出試薬には、結合の確認のための指標が付されているのが好ましい。当該指標は、採用する検出方法に従い、任意に選択される。操作の簡便さや定量性の観点からフローサイトメーターによる測定を用いることが好ましいが、この場合に、検出試薬は蛍光標識される。蛍光標識に特に限定はなく、例えば、FITC(fluorescein isothiocyanate)、PE(phycoerythrin)、若しくはAPC(Allophycocyanin)による標識を採用することができる。活性化顆粒球検出試薬と活性化血小板検出試薬とは異なる蛍光物質で標識される。これらの標識された検出試薬は、常法に従い製造できるが、市販品としても入手できる。
【実施例
【0056】
以下、本発明の活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去材料について、実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0057】
(紡糸)
以下の成分を用いて、紡糸速度1250m/分の製糸条件で、1フィラメントあたり256島の海島繊維(繊度:3dtex、繊維径:20μm)を36フィラメント束ねた繊維(以下、繊維A)を得た。
島成分: ポリプロピレン
海成分: ポリスチレン
複合比率(重量比率): 島:海=50:50
【0058】
(編地Aの作製)
繊維Aを用いて、筒編み機(機種名:丸編み機 MR-1、丸善産業株式会社)の度目調整目盛りを2.50に調整し、筒編み機の釜の直径を7.00インチ、針の本数を480本(針密度:8.6本/cm)で編立を行い、編地Aを得た。
【0059】
(編地Bの作製)
筒編み機の度目調整目盛りを2.75に調整する以外は、編地Aと同様の操作を行うことで、編地Bを得た。
【0060】
(編地Cの作製)
筒編み機の度目調整目盛りを3.00に調整する以外は、編地Aと同様の操作を行うことで、編地Cを得た。
【0061】
(編地Dの作製)
筒編み機の度目調整目盛りを3.50に調整する以外は、編地Aと同様の操作を行うことで、編地Dを得た。
【0062】
(編地Eの作製)
筒編み機の度目調整目盛りを5.00に調整する以外は、編地Aと同様の操作を行うことで、編地Eを得た。
【0063】
(編地Fの作製)
筒編み機の釜の直径を5.25インチ、針の本数を252本(針密度:6.0本/cm)とする以外は、編地Aと同様の操作を行うことで、編地Fを得た。
【0064】
(編地Gの作製)
筒編み機の度目調整目盛りを2.75に調整する以外は、編地Fと同様の操作を行うことで、編地Gを得た。
【0065】
(編地Hの作製)
筒編み機の度目調整目盛りを3.00に調整する以外は、編地Fと同様の操作を行うことで、編地Hを得た。
【0066】
(編地Iの作製)
筒編み機の度目調整目盛りを3.50に調整する以外は、編地Fと同様の操作を行うことで、編地Iを得た。
【0067】
(除去材料Aの作製)
ニトロベンゼン46wt%、硫酸46wt%、パラホルムアルデヒド1wt%及びN-ヒドロキシメチル-2-クロロアセトアミド(以下、NMCA)7wt%を10℃以下で混合、撹拌、溶解させた反応液(以下、NMCA化反応液)を調製した。5℃に冷却した当該NMCA化反応液40mLに、1.0gの上記編地Aを加え、反応液を5℃に保ったまま2時間反応させた。その後、反応液から編地Aを取り出し、40mLのニトロベンゼンに編地Aを浸漬し洗浄した。続いて編地Aを取り出し、メタノールに浸漬し洗浄を行い、アミド化編地A(以下、除去材料A)を得た。
【0068】
(除去材料Bの作製)
編地Aを編地Bとする以外は、除去材料Aの製法と同様の操作を行うことで、アミド化編地B(以下、除去材料B)を得た。
【0069】
(除去材料Cの作製)
編地Aを編地Cとする以外は、除去材料Aの製法と同様の操作を行うことで、アミド化編地C(以下、除去材料C)を得た。
【0070】
(除去材料Dの作製)
編地Aを編地Dとする以外は、除去材料Aの製法と同様の操作を行うことで、アミド化編地D(以下、除去材料D)を得た。
【0071】
(除去材料Eの作製)
編地Aを編地Eとする以外は、除去材料Aの製法と同様の操作を行うことで、アミド化編地E(以下、除去材料E)を得た。
【0072】
(除去材料Fの作製)
編地Aを編地Fとする以外は、除去材料Aの製法と同様の操作を行うことで、アミド化編地F(以下、除去材料F)を得た。
【0073】
(除去材料Gの作製)
編地Aを編地Gとする以外は、除去材料Aの製法と同様の操作を行うことで、アミド化編地G(以下、除去材料G)を得た。
【0074】
(除去材料Hの作製)
編地Aを編地Hとする以外は、除去材料Aの製法と同様の操作を行うことで、アミド化編地H(以下、除去材料H)を得た。
【0075】
(除去材料Iの作製)
編地Aを編地Iとする以外は、除去材料Aの製法と同様の操作を行うことで、アミド化編地I(以下、除去材料I)を得た。
【0076】
(実施例1)
除去材料Fの活性化顆粒球-活性化血小板複合体及びリンパ球の除去性能を確認するため、カラムに除去材料Fを積層して充填し、健常ヒト血液を所定時間接触させ、接触前後の溶液中の活性化顆粒球-活性化血小板複合体及びリンパ球の濃度を測定した。以下に測定方法を示す。
【0077】
除去材料Fを直径1cmの円板状に切り抜いた後、厚みを測定した。上下に液体の出入り口のある円筒状カラム(内径1cm×高さ1.2cm、内容積0.94cm、外径2cm、ポリカーボネート製)に、測定した厚みと充填枚数の積が0.98cmとなるように円板状に切り抜いた除去材料Fを積層して充填した。充填枚数が整数にならない場合は、小数点以下を四捨五入した。LPSを70EU/mLとなるように添加した健常ヒト血液を37℃、30分間、65rpmで振盪することで血球を活性化させた後、上記カラムに流量0.63mL/minで上記血液を通液し、カラムの入口側及び出口側で血液の採取を行った。カラムの出口側の血液は、カラム内に血液が流入した時点を0分とし、そこから3.5分~6.5分後の間に通液したものを採取した。通液終了後に得られた血液を、血球計算機(シスメックス,多項目自動血球分析装置 XT-1800i)で測定し、顆粒球及びリンパ球の濃度を算出した。また、通液後の血液中に存在する血球の表面抗原を、表1に示した蛍光標識抗体を用いて染色した後、VersaLyseを用いて溶血処理することで、血液サンプルを調製した。調製した血液サンプルは、フローサイトメーターを用いた測定まで、氷冷、暗所にて保管した。その後、フローサイトメーター(BD Cytometer Setup and Tracking Beads(Becton, Dickinson and Company))を用いた測定により、各血液サンプルにおいて顆粒球を母数としたときの活性化顆粒球-活性化血小板複合体の割合を測定した。活性化顆粒球-活性化血小板複合体の濃度は、式1に従い算出した。なお、生細胞の判定には、ethidium monoazide bromideを用いた。解析にはFLOWJO(トミーデジタルバイオロジー株式会社)を使用した。以下の式2、式3によりカラムを通液した際の活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去率とリンパ球の除去率をそれぞれ算出した。そして、該活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去率と該リンパ球の除去率の比を式4に従い算出した。結果を表2に示す。

活性化顆粒球-活性化血小板複合体の濃度=(顆粒球の濃度)×(顆粒球を母数としたときの活性化顆粒球-活性化血小板複合体の割合) ・・・式1

活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去率(%)={(カラム入口側の活性化顆粒球-活性化血小板複合体の濃度)-(カラム出口側の活性化顆粒球-活性化血小板複合体の濃度)}/(カラム入口側の活性化顆粒球-活性化血小板複合体の濃度)×100 ・・・式2

リンパ球の除去率(%)={(カラム入口側のリンパ球の濃度)-(カラム出口側のリンパ球の濃度)}/(カラム入口側のリンパ球の濃度)×100 ・・・式3

活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去率とリンパ球の除去率の比=(活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去率)/(リンパ球の除去率) ・・・式4
【0078】
【表1】
【0079】
(実施例2)
除去材料Gについて、実施例1と同様の操作を行い、活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去率、リンパ球の除去率、活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去率とリンパ球の除去率の比を示した。結果を表2に示す。
【0080】
(実施例3)
除去材料Hについて、実施例1と同様の操作を行い、活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去率、リンパ球の除去率、活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去率とリンパ球の除去率の比を示した。結果を表2に示す。
【0081】
(比較例1)
除去材料Aについて、実施例1と同様の操作を行い、活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去率、リンパ球の除去率、活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去率とリンパ球の除去率の比を示した。結果を表2に示す。
【0082】
(比較例2)
除去材料Bについて、実施例1と同様の操作を行い、活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去率、リンパ球の除去率、活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去率とリンパ球の除去率の比を示した。結果を表2に示す。
【0083】
(比較例3)
除去材料Cについて、実施例1と同様の操作を行い、活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去率、リンパ球の除去率、活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去率とリンパ球の除去率の比を示した。結果を表2に示す。
【0084】
(比較例4)
除去材料Dについて、実施例1と同様の操作を行い、活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去率、リンパ球の除去率、活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去率とリンパ球の除去率の比を示した。結果を表2に示す。
【0085】
(比較例5)
除去材料Eについて、実施例1と同様の操作を行い、活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去率、リンパ球の除去率、活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去率とリンパ球の除去率の比を示した。結果を表2に示す。
【0086】
(比較例6)
除去材料Iについて、実施例1と同様の操作を行い、活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去率、リンパ球の除去率、活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去率とリンパ球の除去率の比を示した。結果を表2に示す。
【0087】
【表2】
【0088】
(実施例4)
除去材料Fの平均開孔面積、開孔率及び開孔部の縦横比を測定した。以下に測定方法を示す。
【0089】
1枚の除去材料Fを平面に置き、イメージスキャナ(EPSON、GT-X980)で編地の画像を取得した。取得した画像は、ImageJ(アメリカ国立衛生研究所)を用いて解析した。解析方法は、次の通りである。はじめに「Threshоld」機能で画像を二値化することで、開孔部のみを抽出した。次に、解析する範囲を選択し「Analyse Particles(Sizeは0.001mm~0.5mmに設定)」を実行した。なお、解析する範囲として、編地の端部を含む範囲を選択してはならない。算出された開孔部の面積(Areaとして出力される)の平均値(Average Sizeとして出力される)を平均開孔面積とし、解析範囲の面積に占める開孔面積の総和(Tоtal Areaとして出力される)の割合を開孔率(%Areaとして出力される)とした。さらに、開孔部のウェール方向の長さと開孔部のコース方向の長さを、ImageJを用いて測定した。ランダムに選んだ10個の開孔部について、それぞれ開孔部のウェール方向の長さと開孔部のコース方向の長さを測定し、開孔部のウェール方向の長さを開孔部のコース方向の長さで除した値を算出し、得られた10個の値の平均値を、開孔部の縦横比とした。結果を表3に示す。
【0090】
(実施例5)
除去材料Gについて、実施例4と同様の操作を行い、平均開孔面積、開孔率及び開孔部の縦横比を測定した。結果を表3に示す。
【0091】
(実施例6)
除去材料Hについて、実施例4と同様の操作を行い、平均開孔面積、開孔率及び開孔部の縦横比を測定した。結果を表3に示す。
【0092】
(比較例7)
除去材料Aについて、実施例4と同様の操作を行い、平均開孔面積、開孔率及び開孔部の縦横比を測定した。結果を表3に示す。
【0093】
(比較例8)
除去材料Bについて、実施例4と同様の操作を行い、平均開孔面積、開孔率及び開孔部の縦横比を測定した。結果を表3に示す。
【0094】
(比較例9)
除去材料Cについて、実施例4と同様の操作を行い、平均開孔面積、開孔率及び開孔部の縦横比を測定した。結果を表3に示す。
【0095】
(比較例10)
除去材料Dについて、実施例4と同様の操作を行い、平均開孔面積、開孔率及び開孔部の縦横比を測定した。結果を表3に示す。
【0096】
(比較例11)
除去材料Eについて、実施例4と同様の操作を行い、平均開孔面積、開孔率及び開孔部の縦横比を測定した。結果を表3に示す。
【0097】
(比較例12)
除去材料Iについて、実施例4と同様の操作を行い、平均開孔面積、開孔率及び開孔部の縦横比を測定した。結果を表3に示す。
【0098】
【表3】
【0099】
表2及び表3の結果から、編目一つ当たりの平均開孔面積を特定の範囲に限定した除去材料では、活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去率が高いだけではなく、活性化顆粒球-活性化血小板複合体とリンパ球の除去率の比も高くなることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去材料は、活性化顆粒球-活性化血小板複合体の除去用途に好適に用いることができるため、炎症性疾患、特にARDSの治療用の体外循環カラムとして利用できる。
【符号の説明】
【0101】
1 開孔部その1
2 開孔部その2
3 繊維
4 開孔部
5 経糸
6 緯糸
7 開孔部
8 開孔部のウェール方向の長さ
9 開孔部のコース方向の長さ
図1
図2
図3