(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】電動車両
(51)【国際特許分類】
B60L 3/00 20190101AFI20230606BHJP
【FI】
B60L3/00 H
(21)【出願番号】P 2019169325
(22)【出願日】2019-09-18
【審査請求日】2021-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平井 啓太
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-304695(JP,A)
【文献】特開2002-002247(JP,A)
【文献】特開2010-087261(JP,A)
【文献】実開昭55-165801(JP,U)
【文献】特開2016-088297(JP,A)
【文献】特開2012-076501(JP,A)
【文献】特開2011-250583(JP,A)
【文献】特開2000-310296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両であって、
車輪と
、
前記車輪を支持し、トレーリングアームを備えるサスペンションと、
前記サスペンションに搭載されていない状態で前記電動車両に搭載されたモータと、
前記モータの回転を前記車輪に伝えるドライブシャフトと、
前記トレーリングアームに取り付けられているブッシュと、
ブラケットを備えるボディであって、前記ブラケットがカップ形状を有し、前記ブラケットの内部に前記トレーリングアームと前記ブッシュが挿入されており、前記ブラケットが前記ブッシュを介して前記トレーリングアームに接続されている
、前記ボディと、
前記トレーリングアームと
前記ブラケットを電気的に接続する配線、
を有する、電動車両。
【請求項2】
前記トレーリングアームが、前記ブッシュから斜め下後方向に伸びる部分を有しており、
前記配線が、前記トレーリングアームの前記部分のうちの前記ブッシュの中心軸よりも下側に配置された部分と、前記ブラケットのうちの前記ブッシュの前記中心軸よりも前側かつ下側に配置された部分とを接続している、
請求項1に記載の電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、電動車両に関する。なお、本明細書において、電動車両とは、バッテリに蓄えられた電力によって走行する車両を意味する。電動車両には、電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車等が含まれる。
【0002】
特許文献1に開示の電動車両は、車輪と、車輪を回転させるモータと、車輪を支持するサスペンションを有している。モータを駆動させると、モータのロータで電気ノイズが発生する。ロータで発生した電気ノイズは、駆動系を介してサスペンションに伝わる。特許文献1に開示の電動車両は、サスペンションのナックルと車両のボディとを電気的に接続するアース用ハーネスを有する。サスペンションとボディが電気的に接続されると、サスペンションからボディに電気ノイズが伝わる。これによって、サスペンションから外部にラジオノイズ(電波ノイズ)が放射されることが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ナックルとボディの間の間隔は広い。このため、ナックルとボディを接続するアース用ハーネスは長くなる。さらに、ナックルが振動すると、ナックルとボディの間の間隔が変動する。このような間隔の変動を吸収するために、アース用ハーネスをさらに長くする必要がある。このため、特許文献1の電動車両では、アース用ハーネスが長く、車両が重くなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する電動車両は、車輪と、前記車輪を回転させるモータと、前記車輪を支持するとともにトレーリングアームを備えるサスペンションと、前記トレーリングアームに取り付けられているブッシュと、前記ブッシュを介して前記トレーリングアームに接続されているボディと、前記トレーリングアームと前記ボディを電気的に接続する配線を有する。
【0006】
この電動車両では、サスペンションのトレーリングアームが、ブッシュを介してボディに接続されている。ブッシュは絶縁性の弾性部材(ゴム等)によってトレーリングアームを支持するので、ブッシュはトレーリングアームとボディの間を電気的には接続していない。しかしながら、この電動車両では、配線によって、トレーリングアームがボディに電気的に接続されている。したがって、モータからサスペンションに伝わった電気ノイズは、トレーリングアームから配線を介してボディに伝わる。このため、サスペンションからラジオノイズが放射されることが抑制される。また、トレーリングアームはブッシュを介してボディに接続されているので、トレーリングアームとボディの間の間隔は狭い。さらに、ブッシュを中心にしてトレーリングアームがボディに対して揺動するので、トレーリングアームが揺動した場合にブッシュの近傍ではトレーリングアームとボディの間の間隔がほとんど変化しない。したがって、トレーリングアームとボディを接続する配線を短くすることができる。これによって、車両を軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態の電動車両のバッテリ、インバータ、及び、駆動系を示すブロック図。
【
図2】サスペンションを左側(車両中心側)から見た平面図。
【
図3】ブッシュの拡大図(ブラケットを破線で示す図)。
【
図4】ブラケットの取り付け部分を斜め後方から見た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に示すように、実施形態の電動車両では、バッテリ12からインバータ14に直流電力が供給される。インバータ14は、直流電力を交流電力に変換し、交流電力をモータ16に供給する。これによって、モータ16が駆動し、モータ16のロータが回転する。ロータの回転は、トランスアスクル18とドライブシャフト20を介して車輪22へ伝えられる。したがって、車輪22が回転する。モータ16が駆動するときに、ロータで電気ノイズが発生する。また、インバータ14で生じた電気ノイズが、ロータに伝わる場合もある。電気ノイズは、モータ16のロータからトランスアスクル18とドライブシャフト20を介して、車輪22を支持するサスペンションに伝わる。実施形態の電動車両は、サスペンションに伝わった電気ノイズが、ラジオノイズとして放射されることを抑制する。
【0009】
図2は、実施形態の電動車両が備えるサスペンション30を示している。なお、
図2を含む各図において、矢印FRは車両前方向を示し、矢印RHは車両右方向を示し、矢印UPは車両上方向を示す。
図2は、サスペンション30を左側(車両中心側)から見た平面図である。
図2に示すように、サスペンション30は、車輪22を回転可能に支持している。車輪22は、右後部の車輪である。
【0010】
サスペンション30は、ナックル32、アッパーアーム34、前方ロアアーム36、後方ロアアーム38、ショックアブソーバ40、コイルスプリング42、及び、トレーリングアーム50を有している。
【0011】
ナックル32は、車輪22を回転可能に支持している。ナックル32は、アッパーアーム34、前方ロアアーム36、及び、後方ロアアーム38によって電動車両のボディ(図示省略)に周知の構成で連結されている。ナックル32とボディの間には、ショックアブソーバ40が介装されている。また、後方ロアアーム38とボディの間に、コイルスプリング42が介装されている。
【0012】
トレーリングアーム50は、ナックル32にボルト44によって締結されている。トレーリングアーム50は、ナックル32から前側に向かって伸びている。トレーリングアーム50の先端には、トレーリングアーム50を左右方向に貫通する貫通孔50aが形成されている。貫通孔50a内に、ブッシュ60が配置されている。
【0013】
図3に示すように、ブッシュ60は、外周部材61と軸部材62と弾性部材66を有している。軸部材62は、金属により構成されており、ブッシュ60の中心軸60aを含む部分に配置されている。外周部材61は、金属により構成されており、ブッシュ60の外周面を構成している。弾性部材66は、軸部材62と外周部材61の間に配置されている。弾性部材66は、軸部材62と外周部材61とを接続している。弾性部材66は、ゴム等の弾性体により構成されている。弾性部材66は、絶縁体である。したがって、外周部材61は、弾性部材66によって軸部材62から絶縁されている。弾性部材66が弾性変形することで、軸部材62は外周部材61に対して中心軸60a周りに揺動することができる。外周部材61は、トレーリングアーム50に固定されている。
【0014】
図5に示すように、トレーリングアーム50は、ブッシュ60を介してボディ80に接続されている。ボディ80は、ブラケット70、フロアパネル82、フロアクロスメンバ84、及び、リアサイドメンバ86を有している。
図3~5に示すように、トレーリングアーム50の先端部は、カップ形状を有するブラケット70の内部に挿入されている。トレーリングアーム50の先端部は、ブッシュ60と共にブラケット70の内部に挿入されている。
【0015】
フロアパネル82は、キャビンのフロアを構成する鋼板である。フロアクロスメンバ84は、フロアパネル82から下側に突出するように設けられた梁状の部材である。フロアクロスメンバ84は、左右方向に長く伸びており、左右のロッカ(図示省略)同士を接続している。リアサイドメンバ86は、フロアパネル82から下側に突出するように設けられた長尺部材である。リアサイドメンバ86の前端は、フロアクロスメンバ84に接合されている。リアサイドメンバ86は、フロアパネル82の右縁に沿ってフロアクロスメンバ84から後側に向かって伸びている。
図4、5に示すように、リアサイドメンバ86の底面の一部に、貫通孔86aが設けられている。
【0016】
上述したように、ブラケット70は、カップ形状を有している。
図4、5に示すように、ブラケット70は、凹部が下側を向く向きで、リアサイドメンバ86の貫通孔86a内に挿入されている。ブラケット70は、ボルト72によってリアサイドメンバ86に締結されている。
【0017】
ブッシュ60の軸部材62は、ブラケット70の内部でブラケット70に固定されている。上述したように、ブッシュ60の外周部材61は、トレーリングアーム50に固定されている。したがって、ブッシュ60の中心軸60aを中心に、トレーリングアーム50はブラケット70に対して所定角度範囲内で揺動することができる。すなわち、ブッシュ60の中心軸60aを中心にして、トレーリングアーム50がボディ80に対して揺動することができる。
【0018】
図2に示すように、トレーリングアーム50は、ブッシュ60から斜め下後方向に伸びる第1部分51と、第1部分51からナックル32に向かって伸びる第2部分52を有している。第2部分52は、第1部分51よりも水平に近い方向に沿って伸びている。
【0019】
図3、4に示すように、トレーリングアーム50の第1部分51は、突起50bを有している。突起50bは、第1部分51の下面から下側に突出している。突起50bは、ブッシュ60の中心軸60aよりも下側に配置されている。また、ブラケット70は、そのフランジから下側に突出する突起70aを有している。突起70aは、ブッシュ60の中心軸60aよりも下側に配置されている。突起70aは、ブッシュ60の中心軸60aよりも前側に配置されている。突起50bと突起70aには、ハーネス90が接続されている。ハーネス90は、導電性を有する配線である。ハーネス90によって、トレーリングアーム50とブラケット70が電気的に接続されている。トレーリングアーム50、及び、ボディ80は、金属により構成されている。したがって、ハーネス90を介して、トレーリングアーム50がボディ80に電気的に接続されている。このため、モータ16のロータからサスペンション30に伝わった電気ノイズは、トレーリングアーム50からボディ80へ伝わる。これによって、サスペンション30からラジオノイズが放射されることが抑制される。
【0020】
上述したように、実施形態の電動車両では、ハーネス90がブッシュ60の近傍に設けられている。ブッシュ60の近傍では、トレーリングアーム50とブラケット70の間の間隔が短い。また、ブッシュ60を中心にしてトレーリングアーム50がブラケット70に対して揺動するため、路面からの振動等によってトレーリングアーム50が揺動しても、ブッシュ60の近傍ではトレーリングアーム50とブラケット70の間の間隔が変動し難い。すなわち、トレーリングアーム50がブラケット70に対して揺動した場合に、ハーネス90の両端の接続点(すなわち、突起50bと突起70a)の間の間隔の変化量が少ない。したがって、ハーネス90を短くすることができる。これによって、車両が軽量化されている。
【0021】
また、ハーネス90の両端の接続点(すなわち、突起50bと突起70a)の間の距離の変化量が少ないので、トレーリングアーム50がブラケット70に対して揺動した場合に、ハーネス90の変形量(撓み量)が少なく、ハーネス90に対するストレスが小さい。また、ハーネス90がトレーリングアーム50とブラケット70との接続部に設けられていると、ハーネス90が路面から離れた位置に配置される。このため、路面から跳ね上げられた異物によるハーネス90へのストレスが抑制される。以上のように、ハーネス90へのストレスが抑制されるので、ハーネス90は高い信頼性を有する。
【0022】
また、トレーリングアーム50の突起50bがブッシュ60の中心軸60aよりも下側に配置されており、ブラケット70の突起70aがブッシュ60の中心軸60aよりも前側かつ下側に配置されているので、ハーネス90は、トレーリングアーム50とブラケット70の間の角度(
図3の角度θ)が鈍角となる部分でトレーリングアーム50とブラケット70とを接続している。このため、トレーリングアーム50が揺動したときに、トレーリングアーム50とブラケット70の間にハーネス90が挟まれ難い。これによって、挟み込みによるハーネス90の損傷が抑制される。
【0023】
なお、上述した実施形態では、ブッシュ60の軸部材62がボディ80の一部であるブラケット70に接続されていた。しかしながら、軸部材62がボディ80の他の部材に接続されていてもよい。例えば、軸部材62がリアサイドメンバ86に接続されていてもよい。この場合、ハーネス90が、トレーリングアーム50とリアサイドメンバ86を接続していてもよい。
【0024】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0025】
30 :サスペンション
32 :ナックル
50 :トレーリングアーム
60 :ブッシュ
70 :ブラケット
80 :ボディ
82 :フロアパネル
84 :フロアクロスメンバ
86 :リアサイドメンバ
90 :ハーネス