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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-06
(45)【発行日】2023-06-14
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20230607BHJP
【FI】
F16H57/04 P
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019165154
(22)【出願日】2019-09-11
(65)【公開番号】P2021042811
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大場 才恵子
(72)【発明者】
【氏名】白川 裕介
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-204746(JP,A)
【文献】実開昭61-66259(JP,U)
【文献】特開2017-155888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動変速機を収容する変速機ケースと、
前記変速機ケースの下部に配されたオイルパンと、
前記オイルパンと別体に形成されたオイルタンクと、
前記オイルタンクと前記変速機ケースとを連通する連通部と、
前記オイルパンに貯留されるオイルを吸引するストレーナーと、
前記ストレーナーに設けられ、前記オイルパンの一方側に位置する吸引口と、
前記オイルタンクの底面から前記連通部に近接する方向に傾斜し、前記一方側とは反対側に向かって鉛直上方に傾斜するテーパ面と、
を備える動力伝達装置。
【請求項2】
車両の最大登坂時において、前記テーパ面のうち前記オイルタンクの底面側は、前記連通部側よりも鉛直方向上側に位置する請求項1に記載の動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、遊星歯車機構と、オイルパンと、オイルタンク機構とを備えた自動変速機について開示がある。オイルパンは、自動変速機内の各回転体に供給するオイルを貯留する。オイルタンク機構は、オイルタンクと、還流路と、バルブ機構とを備える。オイルタンクは、オイルパンと別体で構成され、オイルパン内に貯留されるオイルの一部を貯留する。還流路は、オイルパンとオイルタンクとを連通し、オイルタンクに貯留されたオイルをオイルパンに戻す。バルブ機構は、還流路に設けられ、還流路を開閉する。
【0003】
自動変速機は、低変速段が選択される場合、オイルの温度が上昇し難く、高変速段が選択される場合、オイルの温度が上昇しやすい。オイルは、温度が低下するほど体積が収縮し、温度が上昇するほど体積が増加する。バルブ機構は、オイルが比較的低温となる低変速段が選択される場合、還流路を開放し、オイルタンクからオイルパンにオイルを戻すことでストレーナーから空気が吸引されることを防止する。バルブ機構は、オイルが比較的高温となる高変速段が選択される場合、還流路を閉塞し、オイルタンクにオイルを貯留することで、自動変速機内のフリクションロスを低下させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-256187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、オイルパンとオイルタンクとを連通する還流路にバルブ機構が設けられると、オイルタンク機構の構造が複雑化する。
【0006】
本発明は、オイルタンク機構の構造を簡易化することが可能な動力伝達装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の動力伝達装置は、自動変速機を収容する変速機ケースと、変速機ケースの下部に配されたオイルパンと、オイルパンと別体に形成されたオイルタンクと、オイルタンクと変速機ケースとを連通する連通部と、オイルパンに貯留されるオイルを吸引するストレーナーと、ストレーナーに設けられ、オイルパンの一方側に位置する吸引口と、オイルタンクの底面から連通部に近接する方向に傾斜し、一方側とは反対側に向かって鉛直上方に傾斜するテーパ面と、を備える。
【0008】
車両の最大登坂時において、テーパ面のうちオイルタンクの底面側は、連通部側よりも鉛直方向上側に位置してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、オイルタンク機構の構造を簡易化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、車両の構成を示す図である。
図2図2は、本実施形態の変速機ケースの概略斜視図である。
図3図3は、図2に示すIII矢視図である。
図4図4は、車両が傾斜路に位置する場合の変速機ケースの状態を示す図である。
図5図5は、車両が最大登坂角で傾斜路に位置するときのオイルタンクの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0012】
図1は、車両1の構成を示す図である。図1に示すように、車両1は、エンジン3と、動力伝達装置5と、車輪7とを含んで構成される。
【0013】
エンジン3は、例えばレシプロエンジンであり、燃焼室における燃焼圧力でピストンを往復動させてクランクシャフトCSを回転させる。クランクシャフトCSは、動力伝達装置5に接続される。
【0014】
動力伝達装置5は、コンバータケース9と、変速機ケース11と、トランスファーケース13とに収容される動力伝達機構を備える。動力伝達装置5(動力伝達機構)は、エンジン3の動力を車輪7(前輪7a、後輪7b)に伝達する。
【0015】
コンバータケース9は、トルクコンバータ15を収容する。トルクコンバータ15は、フロントカバー17と、ポンプインペラ19と、タービンライナ21と、タービンシャフト23と、ステータ25と、クラッチプレート27とを含んで構成される。トルクコンバータ15の内部には、オイルが封入される。
【0016】
フロントカバー17は、クランクシャフトCSに接続され、クランクシャフトCSと一体的に回転する。ポンプインペラ19は、フロントカバー17の内側に固定される。タービンライナ21は、フロントカバー17内において、ポンプインペラ19と対向して配される。
【0017】
ポンプインペラ19およびタービンライナ21には、多数のブレードが設けられる。タービンライナ21には、タービンシャフト23が接続され、タービンシャフト23と一体的に回転する。ステータ25は、ポンプインペラ19とタービンライナ21との間の内周面側に配される。
【0018】
クランクシャフトCSが回転すると、フロントカバー17およびポンプインペラ19は、クランクシャフトCSと一体的に回転する。ポンプインペラ19が回転すると、オイルは、ポンプインペラ19の外周側に送出され、フロントカバー17の内周面に沿ってタービンライナ21の外周側に移動する。
【0019】
タービンライナ21に流入したオイルは、タービンライナ21を回転させる。タービンライナ21が回転すると、タービンライナ21と一体的にタービンシャフト23が回転する。これにより、クランクシャフトCSからタービンシャフト23に動力が伝達される。
【0020】
ステータ25は、タービンライナ21からポンプインペラ19に向けてオイルを送出する。ステータ25は、オイルをポンプインペラ19に還流させ、ポンプインペラ19の回転を促進させる。これにより、トルクコンバータ15は、入力側(クランクシャフトCS側)から出力側(タービンシャフト23側)への伝達トルクを増幅できる。
【0021】
クラッチプレート27は、タービンシャフト23に固定される。クラッチプレート27は、フロントカバー17の内面に対向して配される。クラッチプレート27は、油圧によりフロントカバー17の内面に押し付けられると、クランクシャフトCSとタービンシャフト23とを直結させる。これにより、クランクシャフトCSからタービンシャフト23に伝達される動力の伝達効率を向上させることができる。
【0022】
クラッチプレート27は、油圧が制御されることで、フロントカバー17の内面に対する押圧力が制御される。押圧力が小さくなるにつれ、クラッチプレート27は、フロントカバー17の内面に対し滑りながら当接する。これにより、クラッチプレート27は、クランクシャフトCSからタービンシャフト23に伝達される動力を調整することができる。
【0023】
変速機ケース11は、自動変速機29を収容する。自動変速機29は、プライマリプーリ31と、セカンダリプーリ33と、ベルト35とを含んで構成される。ただし、自動変速機29は、複数のギヤを備えた遊星歯車機構を含んで構成されてもよい。
【0024】
プライマリプーリ31は、タービンシャフト23に接続され、タービンシャフト23と一体的に回転する。セカンダリプーリ33は、タービンシャフト23に対して平行に配された回転軸37に接続され、回転軸37と一体的に回転する。
【0025】
ベルト35は、リンクプレートをピンで連結したチェーンベルトで構成される。ただし、ベルト35は、例えば、2つのリングで複数のコマ(エレメント)を挟持して構成される金属ベルトで構成されてもよい。ベルト35は、プライマリプーリ31とセカンダリプーリ33との間に掛け渡され、プライマリプーリ31とセカンダリプーリ33との間で動力を伝達する。
【0026】
プライマリプーリ31は、固定シーブ31aと、可動シーブ31bとを含んで構成される。固定シーブ31aは、可動シーブ31bとタービンシャフト23の軸方向に対向して配される。固定シーブ31aおよび可動シーブ31bは、互いに対向する対向面31cを備える。対向面31cは、略円錐形状である。対向面31cによってベルト35が掛け渡される溝が形成される。可動シーブ31bは、不図示の油圧ポンプから供給されるオイルの油圧により、タービンシャフト23の軸方向の位置が可変に構成されている。
【0027】
セカンダリプーリ33は、固定シーブ33aと、可動シーブ33bとを含んで構成される。固定シーブ33aは、可動シーブ33bと回転軸37の軸方向に対向して配される。固定シーブ33aおよび可動シーブ33bは、互いに対向する対向面33cを備える。対向面33cは、略円錐形状である。対向面33cによってベルト35が掛け渡される溝が形成される。可動シーブ33bは、不図示の油圧ポンプから供給されるオイルの油圧により、回転軸37の軸方向の位置が可変に構成されている。
【0028】
このように、プライマリプーリ31は、固定シーブ31aおよび可動シーブ31bの対向間隔が可変に構成され、セカンダリプーリ33は、固定シーブ33aおよび可動シーブ33bの対向間隔が可変に構成される。対向面31cおよび対向面33cの対向間隔は、径方向内側ほど狭く、径方向外側ほど広くなる。そのため、可動シーブ31bおよび可動シーブ33bが軸方向に移動すると、ベルト35の掛け渡される位置が径方向に変化する。
【0029】
プライマリプーリ31は、対向面31cの対向間隔が広くなるほど、ベルト35の掛け渡される位置が径方向内側に移動し、ベルト35の巻き付け径が小さくなる。プライマリプーリ31は、対向面31cの対向間隔が狭くなるほど、ベルト35の掛け渡される位置が径方向外側に移動し、ベルト35の巻き付け径が大きくなる。
【0030】
同様に、セカンダリプーリ33は、対向面33cの対向間隔が広くなるほど、ベルト35の掛け渡される位置が径方向内側に移動し、ベルト35の巻き付け径が小さくなる。セカンダリプーリ33は、対向面33cの対向間隔が狭くなるほど、ベルト35の掛け渡される位置が径方向外側に移動し、ベルト35の巻き付け径が大きくなる。
【0031】
こうして、自動変速機29は、タービンシャフト23と回転軸37との間の変速比を連続的(無段階)に変化させる。
【0032】
トランスファーケース13は、第1ギヤ機構39と、第2ギヤ機構41とを収容する。第1ギヤ機構39は、回転軸37とフロントドライブピニオン43とを連結する。フロントドライブピニオン43は、フロントディファレンシャル45およびフロントドライブシャフト47を介して前輪7aに接続される。回転軸37から伝達される動力は、第1ギヤ機構39、フロントドライブピニオン43、フロントディファレンシャル45およびフロントドライブシャフト47を介して前輪7aに伝達される。
【0033】
第2ギヤ機構41は、回転軸37とプロペラシャフト49とを連結する。プロペラシャフト49は、リヤディファレンシャル51およびリヤドライブシャフト53を介して後輪7bに接続される。回転軸37から伝達される動力は、第2ギヤ機構41、プロペラシャフト49、リヤディファレンシャル51およびリヤドライブシャフト53を介して後輪7bに伝達される。
【0034】
図2は、本実施形態の変速機ケース11の概略斜視図である。図2に示すように、変速機ケース11は、オイルパン55と、ストレーナー57と、不図示の油圧ポンプと、オイルタンク機構100とを含んで構成される。オイルタンク機構100の詳細については後述する。
【0035】
図3は、図2に示すIII矢視図である。図3では、車両1が平坦路に位置する場合の変速機ケース11の状態を示している。以下では、車両1の進行方向を前方(前側)、車両1の後退方向を後方(後側)として説明する。また、車両1の鉛直方向上側を上方(上側)、車両1の鉛直方向下側を下方(下側)として説明する。
【0036】
図3に示すように、オイルパン55は、変速機ケース11の下部に配され、内部にオイルOを貯留する。ここで、車両1が平坦路に位置する場合、オイルOの油面L1は、オイルパン55の底面55a(水平面)と大凡平行である。
【0037】
ストレーナー57は、不図示の油圧ポンプと接続し、下面に形成された吸引口57aからオイルパン55に貯留されるオイルOを吸引する。ストレーナー57は、オイルOを吸引する際に、オイルOから異物を除去する。ストレーナー57の吸引口57aは、オイルパン55の底面55aと対向して配される。
【0038】
本実施形態では、ストレーナー57および吸引口57aは、変速機ケース11の前方側(すなわち、車両1の進行方向側)に配される。つまり、ストレーナー57および吸引口57aは、オイルパン55の前方側(一方側)に位置する。ただし、ストレーナー57および吸引口57aは、変速機ケース11(オイルパン55)の後方側(すなわち、車両1の後退方向側)に配されてもよいし、変速機ケース11(オイルパン55)の側方(すなわち、車両1の進行方向に対し左側あるいは右側)に配されてもよい。
【0039】
油圧ポンプは、ストレーナー57を介して吸引したオイルOを自動変速機29の各部に供給する。例えば、油圧ポンプは、自動変速機29の各油圧機構(プライマリプーリ31、セカンダリプーリ33等)や各回転体(ベルト35、ギヤ等)にオイルOを供給する。油圧ポンプにより自動変速機29の各部に供給されたオイルOは、不図示のオイル還流路あるいは自重によりオイルパン55へと戻り、オイルパン55に貯留される。
【0040】
ところで、車両1が傾斜路に位置する場合、傾斜路の傾斜角に応じて、オイルパン55内のオイルOの油面L1が傾斜する。
【0041】
図4は、車両1が傾斜路に位置する場合の変速機ケース11の状態を示す図である。図4では、車両1が登坂路(すなわち、車両1の進行方向に対し鉛直方向上側に傾斜する傾斜路)に位置する状態を例示的に示している。図4に示すように、車両1が傾斜路に位置するとき、オイルOの油面は、油面L1(図3参照)から油面L2に傾斜する。オイルOの油面L1が油面L2に傾斜すると、ストレーナー57の吸引口57aは、オイルOと非接触になる。そのため、ストレーナー57は、オイルOを吸引できなくなる。
【0042】
ストレーナー57がオイルOを吸引できなくなると、不図示の油圧ポンプは、自動変速機29の各部にオイルOを供給することができなくなり、自動変速機29の各部で動作不良が生じたり、騒音が生じたりする。
【0043】
この問題を回避するために、オイルパン55に貯留されるオイルOの油量を増大させると、図3に示されるように、車両1が平坦路に位置するとき、オイルOの油面は、油面L1よりも高くなる。オイルOの油面が図3に示す油面L1よりも高くなると、オイルOは、自動変速機29の各回転体(例えば、ベルト35)と接触する。各回転体がオイルOと接触すると、各回転体は、オイルOを撹拌し、フリクションロスが増大する。フリクションロスが増大すると、車両1の燃費が低下する。
【0044】
そこで、本実施形態では、図2図3および図4に示すように、変速機ケース11は、オイルタンク機構100を備えている。図3および図4では、図面を見やすくするため、オイルタンク機構100を破線で示している。オイルタンク機構100は、オイルガイド101と、オイル導入管103と、オイルタンク105とを含んで構成される。
【0045】
オイルガイド101は、変速機ケース11の内面に接続され、自動変速機29の回転体(例えば、ベルト35)側に向かって突出する平板状の部材である。オイルガイド101は、例えば、変速機ケース11の内面からベルト35に向かって突出し、ベルト35に近接する端部から鉛直方向上側に突出する略L字形状の平板である。ただし、オイルガイド101は、略U字形状や略J字形状など他の形状であってもよい。オイルガイド101は、オイルタンク105よりも鉛直方向上側に位置する。
【0046】
オイルガイド101は、変速機ケース11と一体的に形成される。ただし、オイルガイド101は、変速機ケース11と別体で形成され、変速機ケース11の内面に取り付けられてもよい。図3に示すように、車両1が平坦路に位置する場合、オイルガイド101の底面101aは、変速機ケース11の前方側(すなわち、車両1の進行方向側)ほど鉛直方向下側に位置するように傾斜している。
【0047】
オイルガイド101は、変速機ケース11内の自重で落下するオイルOを底面101aにより受けとめる。また、オイルガイド101は、自動変速機29のベルト35で掻き上げられたオイルOを底面101aで受けとめる。オイルガイド101で受けとめられたオイルOは、底面101aに沿ってオイルガイド101の前方側(すなわち、車両1の進行方向側)および鉛直方向下側に向かって流れる。
【0048】
オイル導入管103は、変速機ケース11の外面に接続される。変速機ケース11には、開口11aが形成され、オイル導入管103は、開口11aを介して、変速機ケース11の内部空間と連通する。オイル導入管103は、オイルガイド101の前方側(すなわち、車両1の進行方向側)に位置する。オイル導入管103は、オイルガイド101の前方側で自動変速機29の内部空間と連通する。
【0049】
オイル導入管103は、一端が開口11aに接続され、他端がオイルタンク105に接続される。オイルガイド101の底面101aを流れるオイルOは、開口11aからオイル導入管103に導入され、オイル導入管103を通ってオイルタンク105に導入される。
【0050】
オイルタンク105は、変速機ケース11の外面に接続される。オイルタンク105は、オイルパン55とは別体に形成される。変速機ケース11には、開口(連通部)11bが形成され、オイルタンク105は、開口11bを介して変速機ケース11の内部空間と連通する。換言すれば、開口11bは、オイルタンク105の内部空間と、変速機ケース11の内部空間とを連通する。開口11bは、オイルガイド101および開口11aよりも鉛直方向下側に位置する。また、開口11bは、開口11aよりも変速機ケース11の後方側(すなわち、車両1の後退方向側)に位置する。
【0051】
オイルタンク105は、一端がオイル導入管103に接続され、他端が開口11bに接続される。オイル導入管103を流通したオイルOは、オイルタンク105の底面105aに貯留される。つまり、オイルタンク105は、自動変速機29のベルト35で掻き上げられ、オイルガイド101で受け止められたオイルO(すなわち、オイルパン55に貯留されたオイルOの一部)を貯留する。
【0052】
オイルタンク105は、オイルタンク105の底面105aと開口11bとの間にテーパ面TSを備えている。図3に示すように、テーパ面TSは、オイルパン55の一方側(ストレーナー57の吸引口57aが配される側、車両1の進行方向側)とは反対側に向かって鉛直上方に傾斜する。テーパ面TSの後方側(すなわち、車両1の後退方向側)の端部には、開口11bが配される。つまり、テーパ面TSは、オイルタンク105の底面105aから開口11bに向かって近接する方向に傾斜している。
【0053】
図3に示すように、車両1が平坦路に位置するとき、オイルOの油面が油面L1よりも高い場合は、自動変速機29のベルト35によりオイルOが掻き上げられ、掻き上げられたオイルOは、オイルタンク105に貯留される。そのため、オイルパン55に貯留されるオイルOの油量が低下し、オイルOの油面が油面L1まで低下する。
【0054】
オイルOの油面が油面L1まで低下すると、自動変速機29のベルト35は、オイルパン55に貯留されるオイルOと非接触になる。自動変速機29のベルト35がオイルOと非接触になると、ベルト35は、オイルOを撹拌しなくなり、フリクションロスが低減する。フリクションロスが低減すると、車両1の燃費が向上する。
【0055】
一方、図4に示すように、車両1が傾斜路に位置するとき、車両1の傾斜とともに、変速機ケース11およびオイルタンク機構100が傾斜する。オイルタンク機構100が傾斜すると、オイルタンク105は、貯留したオイルOを、開口11bを介してオイルパン55に戻す。これにより、オイルパン55に貯留されるオイルOの油面は、油面L2から油面L3(図4中、一点鎖線)まで上昇する。
【0056】
オイルOの油面が油面L3まで上昇すると、ストレーナー57の吸引口57aは、オイルOに油没(接触)する。そのため、ストレーナー57は、車両1が傾斜路に位置する場合でも、オイルOを吸引することができる。その結果、自動変速機29の各部で動作不良および騒音が生じることを回避できる。
【0057】
このように、本実施形態のオイルタンク機構100は、車両1(変速機ケース11)の傾斜によって、オイルタンク105内のオイルOがオイルパン55に自動的に戻される。したがって、オイルタンク機構100は、オイルタンク105内のオイルOをオイルパン55に戻すためのバルブ機構が不要となる。これにより、オイルタンク機構100の構造を簡易化することができる。
【0058】
図4に示すように、例えば車両1の登坂時、オイルパン55内のオイルOは、車両1の進行方向とは反対側(後退方向側)に移動する。同様に、オイルタンク105内のオイルOは、車両1の進行方向とは反対側(後退方向側)に移動する。このとき、オイルタンク105内のオイルOは、底面105aからテーパ面TS側に向かって移動する。テーパ面TSは、底面105aに貯留されたオイルOを開口11bに導きやすくする。
【0059】
これにより、車両1が傾斜路に位置するとき、オイルタンク105がテーパ面TSを備えることで、テーパ面TSを備えない場合よりも、オイルタンク105内のオイルOをオイルパン55内に戻しやすくすることができる。
【0060】
図5は、車両1が最大登坂角で傾斜路に位置するときのオイルタンク105の状態を示す図である。図5に示すように、車両1が最大登坂角(例えば、58%)で傾斜路に位置するとき、テーパ面TSは、水平面HPに対し、傾斜角度αで傾斜している。テーパ面TSは、開口11bのうち鉛直方向下側の最下端BEから離隔する位置ほど、鉛直方向上側に位置する。したがって、オイルタンク105の底面105aは、開口11bの最下端BEよりも鉛直方向上側に位置する。そのため、オイルタンク105の底面105aに貯留されたオイルOは、テーパ面TSを介して開口11bに導かれやすくなる。
【0061】
このように、車両1の最大登坂時において、テーパ面TSのうちオイルタンク105の底面105a側は、開口11b側(連通部側)よりも鉛直方向上側に位置する。これにより、車両1が最大登坂角で傾斜路に位置するとき、オイルタンク105内に貯留されたオイルOの全てを、オイルパン55に戻すことができる。
【0062】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0063】
上記実施形態では、オイル導入管103およびオイルタンク105が変速機ケース11の外部に配される例について説明した。しかし、これに限定されず、オイル導入管103およびオイルタンク105は、変速機ケース11の内部に配されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、動力伝達装置に利用できる。
【符号の説明】
【0065】
5 動力伝達装置
11 変速機ケース
11b 開口(連通部)
29 自動変速機
55 オイルパン
57 ストレーナー
57a 吸引口
105 オイルタンク
105a 底面
O オイル
TS テーパ面
図1
図2
図3
図4
図5